自律走行作業車の制御装置
【課題】走行予定領域において予め定められた走行パターンに従って走行すると共に、角速度センサの出力を適正に較正するようにした自律走行作業車の制御装置を提供する。
【解決手段】作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じるYawセンサと車輪速を示す出力を生じる車輪速センサの出力に基づいて算出される進行方位と走行距離に基づき、走行予定領域において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業させる走行作業制御において、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定し(S10からS18)、差が誤差許容値を超えると判断されるとき、Yawセンサの出力の中心値を補正する(S22)。
【解決手段】作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じるYawセンサと車輪速を示す出力を生じる車輪速センサの出力に基づいて算出される進行方位と走行距離に基づき、走行予定領域において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業させる走行作業制御において、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定し(S10からS18)、差が誤差許容値を超えると判断されるとき、Yawセンサの出力の中心値を補正する(S22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自律走行作業車の制御装置に関し、より具体的には走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車においては、走行予定領域の境界を検出する必要があることから、下記の特許文献1において境界上に磁石を埋設すると共に、それに感応するセンサを作業車に搭載して検出する技術が提案されている。
【0003】
特許文献2においては、境界に電線を埋設し、よって生じる磁界を作業車に搭載されたセンサで検出することで境界を検出する技術が提案されている。これら特許文献1,2記載の技術によって走行予定領域の境界を検出することができることから、例えば走行パターンを予め定めておき、搭載した角速度センサから算出される進行方位に基づいて走行車を走行させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−239812号公報
【特許文献2】特開平8−286738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように走行予定領域において予め定められた走行パターンに従って走行車を走行させる場合、角速度センサから算出される進行方位に誤差が生じると、所期の作業を達成するのが困難となる。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、走行予定領域において予め定められた走行パターンに従って走行すると共に、角速度センサの出力を適正に較正するようにした自律走行作業車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段と、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段とを備える如く構成した。
【0008】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させて前記予定走行距離と実走行距離の差が前記誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返す如く構成した。
【0009】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる如く構成した。
【0010】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、前記走行作業制御手段は、前記地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる如く構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出し、算出される進行方位と走行距離とに基づき、走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させると共に、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、差が誤差許容値を超えると判断されるとき、角速度センサの出力の中心値を補正する如く構成したので、角速度センサから算出される進行方位に誤差が生じるのを回避でき、所期の作業を達成できると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現でき、よって作業性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、作業車を再度直進走行させて予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、差が誤差許容値を超えると判断される限り、補正と再度直進走行とを繰り返す如く構成したので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0013】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、作業車を再度直進走行させるとき、作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる如く構成したので、換言すれば同一の走行状態で差が誤差許容値を超えるか否か判定するので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させる如く構成したので、地磁気センサの出力から得られる方位を基準とすることで正確に直進走行させることが可能となるため、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1の作業車に搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図である。
【図3】図1の作業車が走行する走行予定領域を示す平面図である。
【図4】図1に示す充電ST(ステーション)での充電を示す説明図である。
【図5】図4に示す充電STの構成を示すブロック図である。
【図6】図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図である。
【図7】図2に示す制御装置(電子制御ユニット)の動作を機能的に示すブロック図である。
【図8】図3の走行予定領域における走行パターンを示す説明図である。
【図9】図1の作業車の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図10】図9の動作を説明する説明図である。
【図11】図1の角速度センサの出力の温度ドリフトによるずれを示す説明図である。
【図12】同様に図9の動作を説明する説明図である。
【図13】同様に図9の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に即してこの発明に係る自律走行作業車の制御装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0017】
図1はこの発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図、図2はそれに搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図、図3は図1の作業車が走行する走行予定領域の平面図、図4は図1に示す充電ステーションでの充電を示す説明図、図5は図4に示す充電ステーションの構成を示すブロック図、図6は図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図、図7は図2に示す電子制御ユニット(制御装置)の動作を機能的に示すブロック図である。
【0018】
図1において、符号10は自律走行作業車(以下「作業車」という)を示す。図1と図2に示す如く、作業車10には走行用の電動モータ(原動機)12L,12Rが2基搭載される。
【0019】
電動モータ12L,12Rは作業車10のシャシ10aの後端側に取り付けられた左右の駆動輪14L,14R(左側のみ図示)に接続され、駆動輪14L,14Rを独立に正転(前進方向への回転)あるいは逆転(後進方向への回転)させる。
【0020】
作業車10のシャシ10aの前端側には左右の従動輪16L,16R(左側のみ図示)がステー10bを介して取り付けられる。シャシ10aの中央位置付近には、芝刈り作業用のブレード(ロータリブレード。作業機)20が取り付けられる。
【0021】
ブレード20は1基の作業用の電動モータ22に接続され、電動モータ22によって回転駆動される。ブレード20にはユーザの手動操作自在なブレード高さ調整機構24が接続される。
【0022】
ブレード高さ調整機構24はネジ(図示せず)を備え、そのネジをユーザが手で廻すことでブレード20の接地面grからの高さが調整可能に構成される。シャシ10aには車体フレーム10cが取り付けられ、電動モータ12,22、ブレード20などは車体フレーム10cで被覆される。
【0023】
作業車10の後部には充電ユニット(AC/DC変換器を含む)26とバッテリ30が格納されると共に、フレーム10cには充電端子32が2個(後で図4に示す)後方に突出するように取り付けられる。
【0024】
充電端子32は充電ユニット26に、充電ユニット26はバッテリ30に配線(図示せず)を介して接続される。バッテリ30は配線(図示せず)を介して電動モータ12,22に接続される。
【0025】
このように、作業車10は4輪の電動式の無人の芝刈り作業車として構成され、例えば全長500mm、全幅300mm、高さ300mm程度の大きさを備え、図3に示す走行予定領域(作業エリア)Aを走行するように構成される。
【0026】
図1の説明に戻ると、作業車10の前後端には障害物を検出するための超音波センサ34F,34Rが配置されると共に、車体フレーム10cには接触センサ36が取り付けられる。接触センサ36は、障害物や異物との接触によって車体フレーム10cがシャシ10aから外れるとき、オン信号を出力する。
【0027】
作業車10の中央位置付近には電子制御ユニット(Electronic Control Unit。制御装置。以下「ECU」という)40が配置される。より具体的には、ECU40はECU収納ボックス40aに収納された基板上に配置され、CPU,ROM,RAMなどを備えるマイクロコンピュータからなる。
【0028】
ECU収納ボックス40a内の基板上にはECU40に近接して方位センサ42が配置される。方位センサ42はx、y、zの3軸の出力mx、my、mzを有する3軸構造の地磁気センサからなる。尚、図4において、x:作業車10の進行方向、y:それに直交する左右方向、z:それに直交する重力軸方向(紙面を貫く方向)である。
【0029】
またECU収納ボックス40a内の基板上には方位センサ42に近接して作業車10の重心位置のz軸回りに生じる角速度(ヨーレート)を示す出力を生じる(検出する)Yawセンサ(角速度センサ)44と、作業車10に作用する前後方向(進行方向)加速度Gを示す出力を生じる(検出する)Gセンサ(加速度センサ)46が配置される。
【0030】
駆動輪14の付近には駆動輪14の車輪速を示す出力を生じる(検出する)車輪速センサ50が配置されると共に、作業車10には操作スイッチ(非常停止スイッチ)52がユーザの操作自在に設けられる。作業車10はユーザによって操作スイッチ52がオンされるとき、走行を停止する。
【0031】
上記した超音波センサ34、接触センサ36、方位センサ42、Yawセンサ44、Gセンサ46、車輪速センサ50、操作スイッチ52の出力は、ECU40に送られる。
【0032】
作業車10の車体フレーム10cは上面で大きく切り欠かれ、そこにディスプレイ54が設けられる。ディスプレイ54はECU40に接続され、ECU40の指令に応じて作業モードなどを表示する。
【0033】
前記したECU収納ボックス40aには受信アンテナ40bが取り付けられると共に、ECU収納ボックスの内部には受信アンテナに接続される無線機40cが配置される。
【0034】
ここで、図3に示す走行予定領域Aを説明すると、走行予定領域(作業エリア)Aは図示のような形状を呈し、そこには充電ST(ステーション)62が配置される。走行予定領域Aの境界にはエリアワイヤ(電線)64が敷設されると共に、図1に示すように作業車10の前後には作業エリアセンサ66F,66Rが配置される。
【0035】
作業エリアセンサ66は磁気センサからなり、後述するように交流が通電される結果、エリアワイヤ64に生じる磁界を示す出力を生じる。作業エリアセンサ66の出力もECU40に送出される。
【0036】
前記したように走行予定領域Aには充電ST62が配置され、図4に示す如く、作業車10は充電ST62と充電端子32を通じて接続され、充電ST62から充電されるように構成される。充電ST62は、図5に示す如く、商用電源70にコンセント72を介して接続される充電装置74を備える。
【0037】
充電装置74は、AC/AC変換器74aと、エリアワイヤ64に交流を通電して磁界(エリア信号)を発生させるエリア信号発生器74bと、それらの動作を制御するECU(電子制御ユニット)74cとを備え、充電端子76を介して作業車10の充電端子32と接続可能に構成される。
【0038】
即ち、充電ST62において商用電源70からコンセント72を通じて送られる交流は充電装置74に送られ、AC/AC変換器74aで適宜な電圧に降圧され、作業車10が充電端子32,76を介して充電ST62に接続されたとき、作業車10に送られ、充電ユニット26を介してバッテリ30に貯留される。
【0039】
作業車10に対するユーザの操作機器として、図6に示す如く、パーソナルコンピュータ80と、それに接続される無線機82と、リモートコントローラ(リモコン)84が用意される。無線機82とリモートコントローラ84は送信アンテナ82a,84aを備え、作業車10に配置された受信アンテナ40bと無線機40cを介してECU40に操作指令を送信可能に構成される。
【0040】
ECU40と充電装置74には、外部の診断機、盗難防止用の認証装置などが接続可能に構成される。
【0041】
図7に示す如く、ECU40は、Yawセンサ44の出力に基づいて作業車10の進行方位を算出すると共に、車輪速センサ50の出力に基づいて作業車10の走行距離を算出する方位距離算出部40dと、算出される進行方位と走行距離とに基づき、走行予定領域Aにおいて予め定められた走行パターンに従い、走行モータドライバ12aを介して作業車10を直進走行させつつ、作業モータドライバ22aを通じてブレード(作業機)を介して作業させる走行(芝刈り作業)制御部40eと、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定すると共に、差が誤差許容値αを超えると判断されるとき、Yawセンサ44の出力の中心値を補正するセンサ出力補正部40fとを備える如く構成した。
【0042】
さらにECU40は、超音波センサ34や接触センサ36の出力に基づいて異常を検知したとき、あるいは操作スイッチ52がオンされたとき、作業車10を停止させる異常検知部40gを備える。
【0043】
図8は走行予定領域Aにおける走行パターンPを示す説明図である。このように走行パターンPは、走行予定領域Aの両端を直進走行して往復するように予め定められる。尚、直進走行の方向は方位センサ42から得られる絶対方位(例えば、北。図8において紙面の上方向)を基準とする。
【0044】
図9はECU40の上記した動作、より具体的には図7の、異常検知部40gを除く、方位距離算出部40dなどの動作を示すフロー・チャート、図10から図12は図9の動作を説明する説明図である。
【0045】
以下説明すると、図示のプログラムは走行制御部40bによって作業車10が予め定められた走行パターンに従って走行し始め、エリアワイヤ64の一端側の地点、換言すれば走行予定領域Aの境界上の地点P1(図8に示す)に到達して開始する(S10)。
【0046】
次いで、エリアワイヤ64の他端側の地点P2を目指して走行しつつ、P1,P2間の距離、即ち、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1に対する実走行距離L2を測定(算出)を開始する(S12)。これは前記したように車輪速センサ50の出力から算出する。
【0047】
次いでS14で地点P2に到達したことが確認されると、S16に進み、実走行距離L2の測定(算出)を中止する。
【0048】
次いでS18に進み、実走行距離L2と予定走行距離L1の差の絶対値が誤差許容値αを超えるか否か判断(判定)する。誤差許容値αは、例えば作業車10のブレード20の刈り幅の1/2程度の値とする。
【0049】
走行予定領域Aの路面には凹凸や傾斜が存在し、あるいは路面が降雨などで摩擦係数が低下して作業車10に滑りなどが生じると、Yawセンサ44の出力に誤差が生じることから、図8あるいは図10に示す如く、作業車10の走行は直進から斜めの方向にずれて走行距離が増加する。
【0050】
S18で否定されるときはS20に進み、予め定められた走行パターンに基づく通常走行に移行(復帰)する。
【0051】
他方、S18で肯定されて予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えると判断(判定)されるとき、S22に進み、センサ出力を補正、即ち、Yawセンサ44の出力の中心値を補正する。
【0052】
図11に示す如く、Yawセンサ44の出力に対して直進時は角速度は零となるが、センサ出力は温度ドリフトで図示のようにずれを生じる場合があることから、中心値を補正、即ち、中心値を矢印で示すように再設定する。
【0053】
尚、ジャイロやGPS信号による計測装置を作業車10に搭載し、それらの出力を用いてYawセンサ44の出力を補正しても良い。
【0054】
次いでS24に進み、その場旋回、より正確には超信地旋回して地点P1を目指して走行を開始する。図12と図13に示す如く、通常走行(予め定められた走行パターンによる走行)のときの走行経路と異なり、S24の旋回では最初のS12,S14の走行経路上を走行する。
【0055】
次いでS26に進み、同様に2回目の実走行距離L3を測定(算出)し、S28に進み、実走行距離L3と予定走行距離L1の差の絶対値が誤差許容値αを超えるか否か判断(判定)する。
【0056】
S28で否定されるときはS20に進む一方、肯定されるときはS22に戻り、上記した処理を繰り返す。即ち、差が誤差許容値αを超えると判断される限り、S22の補正とS24からS26の再度の直進走行とを繰り返す。
【0057】
尚、ユーザの操作機器、即ち、パーソナルコンピュータ80と無線機82、あるいはリモートコントローラ84を介してユーザから直進走行を制御するようにしても良い。
【0058】
この実施例にあっては上記の如く、電動モータ(原動機)12と、前記電動モータ(原動機)12に接続される駆動輪14と、ブレード(作業機)20と、走行予定領域Aの境界に敷設されたエリアワイヤ(電線)64に生じる磁界を示す出力を生じる作業エリアセンサ(磁気センサ)66とを備え、前記作業エリアセンサ(磁気センサ)66の出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域Aを前記電動モータ(原動機)12を駆動して自律走行しつつ前記ブレード(作業機)20を介して作業する自律走行作業車10の制御装置(ECU(電子制御ユニット)40)において、前記作業車10の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じるYawセンサ(角速度センサ)44と、前記作業車10の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサ50と、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサ50の出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段(方位距離算出部40d)と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域A内において予め定められた走行パターンPに従い、前記作業車10を直進走行させつつ、前記ブレード(作業機)を介して作業させる走行作業制御手段(走行(芝刈作業)制御部40e、S20)、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンPで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定し(S10からS18)、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段(センサ出力補正部40f、S22)とを備える如く構成したので、Yawセンサ44から算出される進行方位に誤差が生じるときも適正に較正することができ、所期の作業を達成できると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現でき、よって作業性を向上させることができる。
【0059】
また、前記センサ出力補正手段は、前記作業車10を再度直進走行させて前記予定走行距離L1と実走行距離L3の差が前記誤差許容値αを超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返す(S24からS28)如く構成したので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0060】
また、前記センサ出力補正手段は、前記作業車10を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる(S24)如く構成したので、換言すれば同一の走行状態で差が誤差許容値αを超えるか否か判定するので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0061】
また、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる方位センサ(地磁気センサ)42を備え、前記走行作業制御手段は、前記方位センサ(地磁気センサ)42の出力から得られる方位(絶対方位)を基準とし、前記走行予定領域A内において予め定められた走行パターンPに従い、前記作業車10を直進走行させつつ、前記ブレード(作業機)20を介して作業させる如く構成したので、方位センサ42の出力から得られる方位を基準とすることで正確に直進走行させることが可能となるため、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0062】
尚、上記において原動機として電動モータを用いたが、それに限られるものではなく、内燃機関など他の原動機であっても良い。また作業機として芝刈り作業機を示したが、それに限られるものではない。さらに磁石として磁気ネイルを示したが、それ以外の磁石であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 自律走行作業車(作業車)、12 電動モータ(原動機)、14 駆動輪、16 従動輪、20 ブレード(作業機)、22 電動モータ、24 ブレード高さ調整機構、26 充電ユニット、30 バッテリ、32 充電端子、34 超音波センサ、36 接触センサ、40 ECU(電子制御ユニット)、40d 方位距離算出部、40e 走行(芝刈り作業)制御部、42f センサ出力補正部、40g 異常検知部、42 方位センサ(地磁気センサ)、44 Yawセンサ(角速度センサ)、46 Gセンサ(加速度センサ)、50 車輪速センサ、52 操作スイッチ(SW)、54 ディスプレイ、62 充電ST(ステーション)、64 エリアワイヤ(電線)、66 作業エリアセンサ(磁気センサ)、70 商用電源、72 コンセント、74 充電装置、76 充電端子、80 パーソナルコンピュータ、82 無線機、84 リモートコントローラ(リモコン)、A 走行予定領域、P 走行パターン
【技術分野】
【0001】
この発明は自律走行作業車の制御装置に関し、より具体的には走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車においては、走行予定領域の境界を検出する必要があることから、下記の特許文献1において境界上に磁石を埋設すると共に、それに感応するセンサを作業車に搭載して検出する技術が提案されている。
【0003】
特許文献2においては、境界に電線を埋設し、よって生じる磁界を作業車に搭載されたセンサで検出することで境界を検出する技術が提案されている。これら特許文献1,2記載の技術によって走行予定領域の境界を検出することができることから、例えば走行パターンを予め定めておき、搭載した角速度センサから算出される進行方位に基づいて走行車を走行させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−239812号公報
【特許文献2】特開平8−286738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように走行予定領域において予め定められた走行パターンに従って走行車を走行させる場合、角速度センサから算出される進行方位に誤差が生じると、所期の作業を達成するのが困難となる。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、走行予定領域において予め定められた走行パターンに従って走行すると共に、角速度センサの出力を適正に較正するようにした自律走行作業車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段と、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段とを備える如く構成した。
【0008】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させて前記予定走行距離と実走行距離の差が前記誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返す如く構成した。
【0009】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる如く構成した。
【0010】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、前記走行作業制御手段は、前記地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる如く構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出し、算出される進行方位と走行距離とに基づき、走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させると共に、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、差が誤差許容値を超えると判断されるとき、角速度センサの出力の中心値を補正する如く構成したので、角速度センサから算出される進行方位に誤差が生じるのを回避でき、所期の作業を達成できると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現でき、よって作業性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、作業車を再度直進走行させて予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、差が誤差許容値を超えると判断される限り、補正と再度直進走行とを繰り返す如く構成したので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0013】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、作業車を再度直進走行させるとき、作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる如く構成したので、換言すれば同一の走行状態で差が誤差許容値を超えるか否か判定するので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させる如く構成したので、地磁気センサの出力から得られる方位を基準とすることで正確に直進走行させることが可能となるため、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1の作業車に搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図である。
【図3】図1の作業車が走行する走行予定領域を示す平面図である。
【図4】図1に示す充電ST(ステーション)での充電を示す説明図である。
【図5】図4に示す充電STの構成を示すブロック図である。
【図6】図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図である。
【図7】図2に示す制御装置(電子制御ユニット)の動作を機能的に示すブロック図である。
【図8】図3の走行予定領域における走行パターンを示す説明図である。
【図9】図1の作業車の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図10】図9の動作を説明する説明図である。
【図11】図1の角速度センサの出力の温度ドリフトによるずれを示す説明図である。
【図12】同様に図9の動作を説明する説明図である。
【図13】同様に図9の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に即してこの発明に係る自律走行作業車の制御装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0017】
図1はこの発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図、図2はそれに搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図、図3は図1の作業車が走行する走行予定領域の平面図、図4は図1に示す充電ステーションでの充電を示す説明図、図5は図4に示す充電ステーションの構成を示すブロック図、図6は図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図、図7は図2に示す電子制御ユニット(制御装置)の動作を機能的に示すブロック図である。
【0018】
図1において、符号10は自律走行作業車(以下「作業車」という)を示す。図1と図2に示す如く、作業車10には走行用の電動モータ(原動機)12L,12Rが2基搭載される。
【0019】
電動モータ12L,12Rは作業車10のシャシ10aの後端側に取り付けられた左右の駆動輪14L,14R(左側のみ図示)に接続され、駆動輪14L,14Rを独立に正転(前進方向への回転)あるいは逆転(後進方向への回転)させる。
【0020】
作業車10のシャシ10aの前端側には左右の従動輪16L,16R(左側のみ図示)がステー10bを介して取り付けられる。シャシ10aの中央位置付近には、芝刈り作業用のブレード(ロータリブレード。作業機)20が取り付けられる。
【0021】
ブレード20は1基の作業用の電動モータ22に接続され、電動モータ22によって回転駆動される。ブレード20にはユーザの手動操作自在なブレード高さ調整機構24が接続される。
【0022】
ブレード高さ調整機構24はネジ(図示せず)を備え、そのネジをユーザが手で廻すことでブレード20の接地面grからの高さが調整可能に構成される。シャシ10aには車体フレーム10cが取り付けられ、電動モータ12,22、ブレード20などは車体フレーム10cで被覆される。
【0023】
作業車10の後部には充電ユニット(AC/DC変換器を含む)26とバッテリ30が格納されると共に、フレーム10cには充電端子32が2個(後で図4に示す)後方に突出するように取り付けられる。
【0024】
充電端子32は充電ユニット26に、充電ユニット26はバッテリ30に配線(図示せず)を介して接続される。バッテリ30は配線(図示せず)を介して電動モータ12,22に接続される。
【0025】
このように、作業車10は4輪の電動式の無人の芝刈り作業車として構成され、例えば全長500mm、全幅300mm、高さ300mm程度の大きさを備え、図3に示す走行予定領域(作業エリア)Aを走行するように構成される。
【0026】
図1の説明に戻ると、作業車10の前後端には障害物を検出するための超音波センサ34F,34Rが配置されると共に、車体フレーム10cには接触センサ36が取り付けられる。接触センサ36は、障害物や異物との接触によって車体フレーム10cがシャシ10aから外れるとき、オン信号を出力する。
【0027】
作業車10の中央位置付近には電子制御ユニット(Electronic Control Unit。制御装置。以下「ECU」という)40が配置される。より具体的には、ECU40はECU収納ボックス40aに収納された基板上に配置され、CPU,ROM,RAMなどを備えるマイクロコンピュータからなる。
【0028】
ECU収納ボックス40a内の基板上にはECU40に近接して方位センサ42が配置される。方位センサ42はx、y、zの3軸の出力mx、my、mzを有する3軸構造の地磁気センサからなる。尚、図4において、x:作業車10の進行方向、y:それに直交する左右方向、z:それに直交する重力軸方向(紙面を貫く方向)である。
【0029】
またECU収納ボックス40a内の基板上には方位センサ42に近接して作業車10の重心位置のz軸回りに生じる角速度(ヨーレート)を示す出力を生じる(検出する)Yawセンサ(角速度センサ)44と、作業車10に作用する前後方向(進行方向)加速度Gを示す出力を生じる(検出する)Gセンサ(加速度センサ)46が配置される。
【0030】
駆動輪14の付近には駆動輪14の車輪速を示す出力を生じる(検出する)車輪速センサ50が配置されると共に、作業車10には操作スイッチ(非常停止スイッチ)52がユーザの操作自在に設けられる。作業車10はユーザによって操作スイッチ52がオンされるとき、走行を停止する。
【0031】
上記した超音波センサ34、接触センサ36、方位センサ42、Yawセンサ44、Gセンサ46、車輪速センサ50、操作スイッチ52の出力は、ECU40に送られる。
【0032】
作業車10の車体フレーム10cは上面で大きく切り欠かれ、そこにディスプレイ54が設けられる。ディスプレイ54はECU40に接続され、ECU40の指令に応じて作業モードなどを表示する。
【0033】
前記したECU収納ボックス40aには受信アンテナ40bが取り付けられると共に、ECU収納ボックスの内部には受信アンテナに接続される無線機40cが配置される。
【0034】
ここで、図3に示す走行予定領域Aを説明すると、走行予定領域(作業エリア)Aは図示のような形状を呈し、そこには充電ST(ステーション)62が配置される。走行予定領域Aの境界にはエリアワイヤ(電線)64が敷設されると共に、図1に示すように作業車10の前後には作業エリアセンサ66F,66Rが配置される。
【0035】
作業エリアセンサ66は磁気センサからなり、後述するように交流が通電される結果、エリアワイヤ64に生じる磁界を示す出力を生じる。作業エリアセンサ66の出力もECU40に送出される。
【0036】
前記したように走行予定領域Aには充電ST62が配置され、図4に示す如く、作業車10は充電ST62と充電端子32を通じて接続され、充電ST62から充電されるように構成される。充電ST62は、図5に示す如く、商用電源70にコンセント72を介して接続される充電装置74を備える。
【0037】
充電装置74は、AC/AC変換器74aと、エリアワイヤ64に交流を通電して磁界(エリア信号)を発生させるエリア信号発生器74bと、それらの動作を制御するECU(電子制御ユニット)74cとを備え、充電端子76を介して作業車10の充電端子32と接続可能に構成される。
【0038】
即ち、充電ST62において商用電源70からコンセント72を通じて送られる交流は充電装置74に送られ、AC/AC変換器74aで適宜な電圧に降圧され、作業車10が充電端子32,76を介して充電ST62に接続されたとき、作業車10に送られ、充電ユニット26を介してバッテリ30に貯留される。
【0039】
作業車10に対するユーザの操作機器として、図6に示す如く、パーソナルコンピュータ80と、それに接続される無線機82と、リモートコントローラ(リモコン)84が用意される。無線機82とリモートコントローラ84は送信アンテナ82a,84aを備え、作業車10に配置された受信アンテナ40bと無線機40cを介してECU40に操作指令を送信可能に構成される。
【0040】
ECU40と充電装置74には、外部の診断機、盗難防止用の認証装置などが接続可能に構成される。
【0041】
図7に示す如く、ECU40は、Yawセンサ44の出力に基づいて作業車10の進行方位を算出すると共に、車輪速センサ50の出力に基づいて作業車10の走行距離を算出する方位距離算出部40dと、算出される進行方位と走行距離とに基づき、走行予定領域Aにおいて予め定められた走行パターンに従い、走行モータドライバ12aを介して作業車10を直進走行させつつ、作業モータドライバ22aを通じてブレード(作業機)を介して作業させる走行(芝刈り作業)制御部40eと、直進走行のとき、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定すると共に、差が誤差許容値αを超えると判断されるとき、Yawセンサ44の出力の中心値を補正するセンサ出力補正部40fとを備える如く構成した。
【0042】
さらにECU40は、超音波センサ34や接触センサ36の出力に基づいて異常を検知したとき、あるいは操作スイッチ52がオンされたとき、作業車10を停止させる異常検知部40gを備える。
【0043】
図8は走行予定領域Aにおける走行パターンPを示す説明図である。このように走行パターンPは、走行予定領域Aの両端を直進走行して往復するように予め定められる。尚、直進走行の方向は方位センサ42から得られる絶対方位(例えば、北。図8において紙面の上方向)を基準とする。
【0044】
図9はECU40の上記した動作、より具体的には図7の、異常検知部40gを除く、方位距離算出部40dなどの動作を示すフロー・チャート、図10から図12は図9の動作を説明する説明図である。
【0045】
以下説明すると、図示のプログラムは走行制御部40bによって作業車10が予め定められた走行パターンに従って走行し始め、エリアワイヤ64の一端側の地点、換言すれば走行予定領域Aの境界上の地点P1(図8に示す)に到達して開始する(S10)。
【0046】
次いで、エリアワイヤ64の他端側の地点P2を目指して走行しつつ、P1,P2間の距離、即ち、予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離L1に対する実走行距離L2を測定(算出)を開始する(S12)。これは前記したように車輪速センサ50の出力から算出する。
【0047】
次いでS14で地点P2に到達したことが確認されると、S16に進み、実走行距離L2の測定(算出)を中止する。
【0048】
次いでS18に進み、実走行距離L2と予定走行距離L1の差の絶対値が誤差許容値αを超えるか否か判断(判定)する。誤差許容値αは、例えば作業車10のブレード20の刈り幅の1/2程度の値とする。
【0049】
走行予定領域Aの路面には凹凸や傾斜が存在し、あるいは路面が降雨などで摩擦係数が低下して作業車10に滑りなどが生じると、Yawセンサ44の出力に誤差が生じることから、図8あるいは図10に示す如く、作業車10の走行は直進から斜めの方向にずれて走行距離が増加する。
【0050】
S18で否定されるときはS20に進み、予め定められた走行パターンに基づく通常走行に移行(復帰)する。
【0051】
他方、S18で肯定されて予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えると判断(判定)されるとき、S22に進み、センサ出力を補正、即ち、Yawセンサ44の出力の中心値を補正する。
【0052】
図11に示す如く、Yawセンサ44の出力に対して直進時は角速度は零となるが、センサ出力は温度ドリフトで図示のようにずれを生じる場合があることから、中心値を補正、即ち、中心値を矢印で示すように再設定する。
【0053】
尚、ジャイロやGPS信号による計測装置を作業車10に搭載し、それらの出力を用いてYawセンサ44の出力を補正しても良い。
【0054】
次いでS24に進み、その場旋回、より正確には超信地旋回して地点P1を目指して走行を開始する。図12と図13に示す如く、通常走行(予め定められた走行パターンによる走行)のときの走行経路と異なり、S24の旋回では最初のS12,S14の走行経路上を走行する。
【0055】
次いでS26に進み、同様に2回目の実走行距離L3を測定(算出)し、S28に進み、実走行距離L3と予定走行距離L1の差の絶対値が誤差許容値αを超えるか否か判断(判定)する。
【0056】
S28で否定されるときはS20に進む一方、肯定されるときはS22に戻り、上記した処理を繰り返す。即ち、差が誤差許容値αを超えると判断される限り、S22の補正とS24からS26の再度の直進走行とを繰り返す。
【0057】
尚、ユーザの操作機器、即ち、パーソナルコンピュータ80と無線機82、あるいはリモートコントローラ84を介してユーザから直進走行を制御するようにしても良い。
【0058】
この実施例にあっては上記の如く、電動モータ(原動機)12と、前記電動モータ(原動機)12に接続される駆動輪14と、ブレード(作業機)20と、走行予定領域Aの境界に敷設されたエリアワイヤ(電線)64に生じる磁界を示す出力を生じる作業エリアセンサ(磁気センサ)66とを備え、前記作業エリアセンサ(磁気センサ)66の出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域Aを前記電動モータ(原動機)12を駆動して自律走行しつつ前記ブレード(作業機)20を介して作業する自律走行作業車10の制御装置(ECU(電子制御ユニット)40)において、前記作業車10の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じるYawセンサ(角速度センサ)44と、前記作業車10の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサ50と、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサ50の出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段(方位距離算出部40d)と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域A内において予め定められた走行パターンPに従い、前記作業車10を直進走行させつつ、前記ブレード(作業機)を介して作業させる走行作業制御手段(走行(芝刈作業)制御部40e、S20)、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンPで予定される予定走行距離L1と実走行距離L2の差が誤差許容値αを超えるか否か判定し(S10からS18)、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段(センサ出力補正部40f、S22)とを備える如く構成したので、Yawセンサ44から算出される進行方位に誤差が生じるときも適正に較正することができ、所期の作業を達成できると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現でき、よって作業性を向上させることができる。
【0059】
また、前記センサ出力補正手段は、前記作業車10を再度直進走行させて前記予定走行距離L1と実走行距離L3の差が前記誤差許容値αを超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返す(S24からS28)如く構成したので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0060】
また、前記センサ出力補正手段は、前記作業車10を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させる(S24)如く構成したので、換言すれば同一の走行状態で差が誤差許容値αを超えるか否か判定するので、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0061】
また、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる方位センサ(地磁気センサ)42を備え、前記走行作業制御手段は、前記方位センサ(地磁気センサ)42の出力から得られる方位(絶対方位)を基準とし、前記走行予定領域A内において予め定められた走行パターンPに従い、前記作業車10を直進走行させつつ、前記ブレード(作業機)20を介して作業させる如く構成したので、方位センサ42の出力から得られる方位を基準とすることで正確に直進走行させることが可能となるため、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を一層良く実現でき、よって作業性を一層向上させることができる。
【0062】
尚、上記において原動機として電動モータを用いたが、それに限られるものではなく、内燃機関など他の原動機であっても良い。また作業機として芝刈り作業機を示したが、それに限られるものではない。さらに磁石として磁気ネイルを示したが、それ以外の磁石であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 自律走行作業車(作業車)、12 電動モータ(原動機)、14 駆動輪、16 従動輪、20 ブレード(作業機)、22 電動モータ、24 ブレード高さ調整機構、26 充電ユニット、30 バッテリ、32 充電端子、34 超音波センサ、36 接触センサ、40 ECU(電子制御ユニット)、40d 方位距離算出部、40e 走行(芝刈り作業)制御部、42f センサ出力補正部、40g 異常検知部、42 方位センサ(地磁気センサ)、44 Yawセンサ(角速度センサ)、46 Gセンサ(加速度センサ)、50 車輪速センサ、52 操作スイッチ(SW)、54 ディスプレイ、62 充電ST(ステーション)、64 エリアワイヤ(電線)、66 作業エリアセンサ(磁気センサ)、70 商用電源、72 コンセント、74 充電装置、76 充電端子、80 パーソナルコンピュータ、82 無線機、84 リモートコントローラ(リモコン)、A 走行予定領域、P 走行パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段と、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段とを備えることを特徴とする自律走行作業車の制御装置。
【請求項2】
前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させて前記予定走行距離と実走行距離の差が前記誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項3】
前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させることを特徴とする請求項2記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項4】
前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、前記走行作業制御手段は、前記地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項1】
原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位と走行距離とに基づき、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段と、前記直進走行のとき、前記予め定められた走行パターンで予定される予定走行距離と実走行距離の差が誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力の中心値を補正するセンサ出力補正手段とを備えることを特徴とする自律走行作業車の制御装置。
【請求項2】
前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させて前記予定走行距離と実走行距離の差が前記誤差許容値を超えるか否か判定し、前記差が前記誤差許容値を超えると判断される限り、前記補正と再度直進走行とを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項3】
前記センサ出力補正手段は、前記作業車を再度直進走行させるとき、前記作業車をその場旋回させて最初に走行した経路上を走行させることを特徴とする請求項2記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項4】
前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサを備え、前記走行作業制御手段は、前記地磁気センサの出力から得られる方位を基準とし、前記走行予定領域内において予め定められた走行パターンに従い、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−79023(P2012−79023A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222642(P2010−222642)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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