説明

自発光ディスプレイの画像表示方法および画像表示装置

【課題】昇圧回路を含む全体の消費電力を効果的に削減できる自発光ディスプレイの画像表示方法および画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像1データを表示している状態で、CPU14が画像2データを入力すると、電圧設定手段16は、RAM17の設定電圧テーブルを用いて次画面である画像2データの電圧値を取得し、当該画像2データの電圧値と現在表示中の画像1データの電圧値とを比較し(ステップS303)、大小関係を判定する(ステップS304)。画像2データの電圧値が画像1データの電圧値よりも小さい場合(画像2の方が画像1よりも暗い場合)、取得した画像2データの電圧値より1V低い値を、画像2データの電圧値に設定する(ステップS307)。そして、信号処理部15は、画像2データを表示中の画像1データと入れ替えて有機ELディスプレイ13に表示する(ステップS312)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光ディスプレイの画像表示方法および画像表示装置、特に、バッテリを電源とする携帯端末などに適用するに好適な画像表示方法および画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末として、電子メール機能、ウェブ閲覧機能、ゲーム機能、撮影機能、画像再生機能、テレビ放送受信機能等の画像表示を伴う機能を搭載したものが普及している。
【0003】
このような携帯端末では、画像を表示するディスプレイとして、一般に液晶ディスプレイが搭載されているが、最近では自発光型の有機EL素子をマトリックス状に配列してなる有機ELディスプレイを搭載したものが提案されている。
【0004】
この有機ELディスプレイは、有機EL素子単体で緑色(G)、青色(B)、赤色(R)等の単色に発光させることができることから、異なる色を発光する有機EL素子を組み合わせることで、高輝度、広視野角のマルチカラーディスプレイを構成することができ、また、液晶ディスプレイのようなバックライトを必要としないことから、これを搭載する携帯端末の薄型化および省電力化が図れる利点がある。
【0005】
しかし、有機ELディスプレイを携帯端末に搭載する場合、携帯端末に装填されるリチウム・イオン電池などの1セルのバッテリ電圧では、有機ELディスプレイを駆動できないため、バッテリ電圧を昇圧する昇圧回路が必要となり、その分、消費電力が増加してバッテリの使用時間が短くなる。
【0006】
一方、有機ELディスプレイは、発光輝度の高い有機EL素子程、電力を多く消費することから、全画素に占める輝度値の高い画素の割合が高ければ高い程、電力消費が大きくなる。
【0007】
したがって、有機ELディスプレイを搭載する携帯端末の更なる省電力化を図り、バッテリの使用時間を長くするためには、有機ELディスプレイの消費電力を少なくするのが最も効果的である。
【0008】
その一つの方法として、例えば、表示情報における背景の平均輝度が文字の平均輝度よりも低くなるように、例えば表示情報における文字を白色に、該文字の背景を黒色に補正するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、他の方法として、各有機EL素子を、輝度調整スイッチを介して電源部に接続し、映像信号に同期して輝度調整スイッチのデューティサイクルを変更することにより、階調制御に関係なく輝度を調整するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2002−199078号公報
【特許文献2】特開2003−108073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に開示の方法によると、全画素に占める輝度値の高い画素の割合を低くできるので、有機ELディスプレイ全体としての電力消費を低下させることができる。
【0012】
しかしながら、携帯端末に搭載されている昇圧回路は、一般にスイッチング・レギュレータであるDC−DCコンバータで構成されており、その電源効率は、例えば図10に示すような特性を有している。
【0013】
すなわち、図10から明らかなように、DC−DCコンバータからなる昇圧回路では、負荷の消費電流が同じ場合には、入出力電圧差が少ないほど電源効率は良くなる。したがって、出力電圧が低下することにより消費電流が増えた場合でも電源効率が改善され、回路全体の消費電力が低下することになる。なお、図10は、入力電圧を3.3Vと一定とした場合の出力電圧および消費電流による電源効率特性を示している。
【0014】
このため、特許文献1に開示の方法では、昇圧回路の出力電圧を一定とすると、有機ELディスプレイ全体としての電力消費は低下するが、昇圧回路の電源効率が低下して、結果としてバッテリ端では、十分な省電力効果が期待できない場合がある。
【0015】
また、上記特許文献2に開示の方法では、各有機EL素子に対し、電源部に接続した輝度調整スイッチを映像信号に同期してオン・オフしてデューティサイクルを変更することにより輝度を調整しているので、各有機EL素子の電源オン期間の消費電力を削減することができる。
【0016】
しかし、この場合、オン期間は各有機EL素子に対して、最大長の期間に亘って電圧を印加する必要があるため、昇圧回路の出力側では電流値が変化することになる。このため、上記の特許文献1の場合と同様に、昇圧回路の電源効率が低下して、結果としてバッテリ端では、十分な省電力効果が期待できない場合がある。
【0017】
なお、上述した省電力化の課題は、特にバッテリを電源として用いる場合に重大となるが、商用電源を整流する直流電源を用い、その出力電圧を昇圧回路で昇圧して有機ELディスプレイを駆動する場合にも同様に重要である。また、有機ELディスプレイに限らず、LEDディスプレイ等の他の自発光ディスプレイを、昇圧回路を用いて駆動する場合も同様である。
【0018】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、昇圧回路を含む全体の消費電力を効果的に削減できる自発光ディスプレイの画像表示方法および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成する請求項1に係る自発光ディスプレイの画像表示方法の発明は、直流の電源電圧を昇圧回路で昇圧し、その出力電圧により自発光ディスプレイを駆動して画像データを表示するにあたり、現在表示中の画像データに対応する電圧と、次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該次に表示する画像データの設定電圧を定める電圧設定工程と、前記電圧設定工程により定められた設定電圧により、自発光ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示する表示制御工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、前記電圧設定工程が、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧よりも低い場合に、前記次に表示する画像データに対応する電圧よりも低い電圧を、前記次に表示する画像データの設定電圧として定めることを特徴とする。
【0021】
請求項3に係る発明は、前記電圧設定工程が、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧よりも高い場合に、前記次に表示する画像データに対応する電圧を前記次に表示する画像データの設定電圧として定め、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧と等しい場合に、前記表示中の画像データの設定電圧を引き続き前記次に表示する画像データの設定電圧として定めることを特徴とする。
【0022】
請求項4に係る発明は、前記電圧設定工程が、表示制御工程により次に表示する画像データを表示する前に、さらに次の画像表示の要求がなされると、現在表示中の画像データに対応する電圧と、さらに次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該さらに次に表示する画像データの設定電圧を定めることを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る発明は、前記電圧設定工程が、表示制御工程により次に表示する画像データを表示する際に、さらに次の画像表示の要求がなされると、前記設定電圧よりも低い電圧を設定電圧として再度定め、前記表示制御工程が、電圧設定工程により再度定められた設定電圧により、ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示することを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明は、前記表示制御工程が、短時間表示する画像データの設定電圧を、一旦定めた設定電圧よりも低い電圧に再度定め、該再度定めた設定電圧により、前記短時間表示する画像データを表示することを特徴とする。
【0025】
さらに、上記目的を達成する請求項7に係る画像表示装置の発明は、直流の電源電圧を昇圧する昇圧回路と、その出力電圧で駆動する駆動回路により画像データを表示する自発光ディスプレイとが設けられた画像表示装置において、現在表示中の画像データに対応する電圧と、次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該次に表示する画像データの設定電圧を定める電圧設定手段と、前記電圧設定手段により定められた設定電圧により、自発光ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、現在表示中の画像データに対応する電圧と、次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、次に表示する画像データの設定電圧を定め、この設定電圧により画像データを表示するようにした。これにより、表示する画像データに応じた設定電圧を定めることができるから、昇圧回路を含む全体の消費電力を効果的に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の構成について説明する。図1は、画像表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0028】
この画像表示装置は、携帯電話やPDA等の携帯端末に搭載されるものであり、リチウム・イオン電池等のバッテリ11を電源として、そのバッテリ11の電源電圧をスイッチング・レギュレータであるDC−DCコンバータを有する昇圧回路12で昇圧し、その出力電圧により、複数の自発光の有機EL素子から構成される画素をマトリックス状に多数配列してなる自発光ディスプレイである有機ELディスプレイ13を駆動して画像データを表示するものである。なお、図示しないが、有機ELディスプレイ13は駆動回路を有している。
【0029】
CPU14は、画像データを入力すると、信号処理部15に供給し、信号処理部15において所要の信号処理を行い、信号処理した画像データを有機ELディスプレイ13に供給する。
【0030】
信号処理部15は、有機ELディスプレイ13に対し、順次のフレームの画像データの表示タイミングに同期して昇圧回路12の出力電圧をオン・オフして印加するとともに、その電圧印加タイミング信号または垂直同期信号をCPU14に供給する。
【0031】
また、CPU14は、入力した画像データのフレームの表示タイミングに同期して、当該フレームに対し、昇圧回路12により制御される電圧値を設定し、当該電圧値に基づいた電圧制御信号を昇圧回路12に送出し、昇圧回路12の出力電圧を制御する。なお、このCPU14からの電圧制御信号による昇圧回路12の出力電圧制御は、信号処理部15からの電圧印加タイミング信号による有機ELディスプレイ13への電圧印加のオフ期間または垂直同期信号に同期して実行する。
【0032】
このため、本実施の形態では、CPU14には電圧設定手段16およびRAM17が設けられ、信号処理部15には1フレーム分のフレームバッファ18が設けられている。ここで、電圧設定手段16は、入力した画像データにおいて、フレーム単位で電圧値を設定し、その電圧値が設定されたフレームの画像データを信号処理部15に供給する。この画像データは、信号処理部15のフレームバッファ18に一旦格納されてから、電圧設定手段16により送出される電圧制御信号と同期して、有機ELディスプレイ13に表示される。
【0033】
また、RAM17には、電圧設定手段16が画像データに基づいて電圧値を設定するために必要な設定電圧テーブルが格納されている。図2は、輝度平均値に対する設定電圧テーブルを示す図である。電圧設定手段16は、例えば、入力した画像データについてフレーム単位に輝度平均値を演算し、RAM17に格納された設定電圧テーブルを用いて、その輝度平均値に対応する電圧値を取得し、この取得した電圧値に基づいた電圧制御信号を昇圧回路12に送出する。したがって、本実施の形態では、CPU14、信号処理部15及び昇圧回路12を含んで表示制御手段を構成している。
【0034】
図2に示した設定電圧テーブルでは、100%から50%までの輝度平均値における電圧値が17Vであり、40%から10%までの輝度平均値における電圧値が16Vから徐々に低下させた値であるのは、以下の理由によるものである。すなわち、有機ELディスプレイ13は、例えば図3に示すような印加電圧に対する輝度変化特性を有している。図3において、明るさを最大輝度(RGB100%)に設定した場合に印加電圧を最低電圧(ここでは、11V)にすると、そのときの明るさ(輝度)は、明るさを40%輝度(RGB40%)に設定した場合に印加電圧を最大設定値(ここでは、17V)にしたときの明るさとほぼ同じになる。したがって、輝度が40%以下の場合は、印加電圧を低下させて輝度を調節しても殆ど違和感が生じないことになる。
【0035】
次に、図1に示した画像表示装置の動作について説明する。図4は、画像表示装置の動作を説明するフローチャートである。CPU14の電圧設定手段16は、有機ELディスプレイ13に表示する画像データを取得すると(ステップS201)、画像データのフレームにおける平均輝度値を算出し、RAM17に格納された設定電圧テーブルを用いて、その平均輝度値に対応する電圧値を取得し、現在表示中の画像データの電圧値、これから表示する画像データの電圧値(取得した電圧値)、及びその後の利用者の操作のタイミング等により、電圧値を設定する(ステップS202)。また、電圧設定手段16は、画像データのフレームを信号処理部15に転送する(ステップS203)。
【0036】
電圧設定手段16は、有機ELディスプレイ13への画像データのフレームの表示に同期した電圧印加タイミング信号を信号処理部15から入力すると、設定した電圧値に基づいた電圧制御信号を昇圧回路12に送出する。昇圧回路12は、電圧設定手段16から電圧制御信号を受けると、その電圧値の電源を有機ELディスプレイ13の駆動回路に供給する。これにより、電圧設定手段16は、昇圧回路12を介して駆動回路の電圧を変更することができる(ステップS204)。そして、信号処理部15は、画像データを有機ELディスプレイ13に表示する(ステップS205)。
【0037】
図5は、電圧設定手段16が設定する電圧値に従って、有機ELディスプレイ13に表示される画像データの明るさ(輝度)を示す第1の表示例である。左上の画面及び左下の画面の画像データに対する電圧値をそれぞれ電圧値(1)及び(3)とし、これらの表示は、本来の明るさを示しているものとする。電圧設定手段16は、RAM17の設定電圧テーブルから電圧値(1)を取得し、画面の最適表示のための処理を行い、電圧値(1)よりも輝度が約10%低くなるように、電圧値(2)を設定する。また、電圧設定手段16は、RAM17の設定電圧テーブルから電圧値(3)を取得し、画面の最適表示のための処理を行い、電圧値(3)よりも輝度が約10%低くなるように、電圧値(4)を設定する。これにより、左上の画面及び左下の画面よりも暗い(輝度の低い)画面を表示することができる(右上の画面及び右下の画面)。
【0038】
また、図5では、電圧値(1)(2)の画面(上図)の方が、電圧値(3)(4)の画面(下図)よりも明るい(輝度が高い)ことがわかる。電圧値(1)の画面から(2)の画面に輝度を落とした場合と、電圧値(3)の画面から(4)の画面に輝度を落とした場合とを比較すると、前者の方が輝度が極端に落ちているという印象を受けるが、後者の方はそれほどでもない。すなわち、明るい画面において輝度を落とした場合と、暗い画面において輝度を落とした場合とを比較すると、利用者は、暗い画面の方が輝度を落としたことに対する印象を受け難く、表示変化が少ない印象を受けることがわかる。
【0039】
次に、図1に示した画像表示装置の動作の詳細について、図6を用いて説明する。
有機ELディスプレイ13に画像1が表示されている状態で(ステップS301)、利用者の操作により画面の切り替え要求がなされると(ステップS302)、CPU14が画像2データを入力し、電圧設定手段16は、RAM17の設定電圧テーブルを用いて次画面である画像2データの電圧値を取得し、当該画像2データの電圧値と現在表示中の画像1データの電圧値とを比較し(ステップS303)、大小関係を判定する(ステップS304)。判定の結果、画像2データの電圧値が画像1データの電圧値よりも小さい場合(画像2の方が画像1よりも暗い場合)、取得した画像2データの電圧値より1V低い値を、画像2データの電圧値に設定する(ステップS307)。また、画像2データの電圧値と画像1データの電圧値とが等しい場合(画像2と画像1とが同じ明るさの場合)、前画像データである表示中の画像1データの電圧値を画像2データの電圧値に設定する(ステップS305)。また、画像2データの電圧値が画像1データの電圧値よりも大きい場合(画像2の方が画像1よりも明るい場合)、取得した画像2データの電圧値をそのまま画像2データの電圧値に設定する(ステップS306)。
【0040】
そして、利用者の操作を検出しなかった場合(ステップS308)、電圧設定手段16は、画像2データを信号処理部15に転送し(ステップS309)、信号処理部15は、フレームバッファ18に画像データがないと判断した場合に(ステップS310)、電圧印加タイミング信号をCPU14に出力し、電圧設定手段16は、ステップ305〜307において設定した画像データ2の電圧値に基づいた電圧制御信号を昇圧回路12に送出する(ステップS311)。そして、信号処理部15は、画像2データをステップ301において表示中の画像1データと入れ替えて有機ELディスプレイ13に表示する(ステップS312)。尚、有機ELディスプレイ13に表示される画像データは、利用者の操作により画像が更新されない限り、フレームバッファ18に格納された画像データで随時上書きされるから、表示は維持されることになる。
【0041】
また、ステップ310において、信号処理部15がフレームバッファ18に画像データがあると判断し、かつ、利用者の操作を検出しない場合に(ステップS314)、前述したステップ311及び312の処理を行う。一方、ステップ314において、利用者の操作を検出した場合は、電圧設定手段16は、ステップ305〜307において設定した画像データ2の電圧値を1/2に再設定する。信号処理部15は、電圧印加タイミング信号をCPU14に出力し、電圧設定手段16は、ステップ315において再設定した画像データ2の電圧値に基づいた電圧制御信号を昇圧回路12に送出する(ステップS311)。そして、信号処理部15は、画像2データをステップ301において表示中の画像1データと入れ替えて有機ELディスプレイ13に表示する(ステップS312)。この場合、画像表示の切り替わり(画像1→画像2→ステップ314における操作によって入力される画像の切り替わり)が速くなるため、中間画像である画像2に対して高い輝度を保持する必要がないが画像2は表示されるため、画像2データの電圧値を1/2に落としている。
【0042】
これに対し、ステップ308において、利用者の操作を検出した場合、CPU14は、画像3データを入力し、画像2データ及び画像2データの電圧値を廃棄する(ステップS313)。そして、ステップ303に戻り、電圧設定手段16は、画像1データの電圧値と、次画像データである画像3データの電圧値とを比較し、前述の処理を行う。
【0043】
図7は、電圧設定手段16が設定する電圧値に従って、有機ELディスプレイ13に表示される画像データの明るさ(輝度)を示す第2の表示例である。この例は、利用者の操作により、画像1の表示(上図左)から画像2の表示(上図中央)、そして画像3の表示(上図右)に移行することを示している。RAM17の設定電圧テーブルには、画像1に対して電圧値(1)、画像2に対して電圧値(2)、画像3に対して電圧値(3)が格納されており、電圧値(1)>電圧値(2)=電圧値(3)の関係を有するものとする。下図左は、電圧値(2)における画像2の表示(本来の画像2の表示)を、下図右は、電圧値(3)における画像3の表示(本来の画像3の表示)をそれぞれ示す。
【0044】
画像1が表示されている状態で、利用者の操作により着信履歴が選択されると、電圧設定手段16は、画像1データの電圧値(1)と画像2データの電圧値(2)とを比較し、画像2データの電圧値(2)が小さいから、画像2データの電圧値(2)よりも1V低い電圧値(2)’を設定する(図6のステップ301,302,303,304,307)。そして、信号処理部15は、画像2を表示する(ステップ312)。この場合、表示された画像2は、本来の画像2よりも暗い画像である。
【0045】
そして、利用者の操作によりアドレス帳が選択されると、電圧設定手段16は、画像2データの電圧値(2)と画像3データの電圧値(3)とを比較し、両値は等しいから、画像3データの電圧値として現在表示中の画像2データの電圧値(2)’を引き次ぐ。すなわち、電圧設定手段16は、画像3データの電圧値として電圧値(2)’を設定する(図6のステップ302,303,304,305)。そして、信号処理部15は、画像3を表示する(ステップ312)。この場合、表示された画像3は、以前に表示されていた画像2の明るさと同じであり、本来の画像3よりも暗い画像である。これにより、利用者に対しては、画像1→画像2(画像1よりも暗く、本来の画像2よりも暗い)→画像3(画像2と同じ明るさ、本来の画像3よりも暗い)の順で表示される。
【0046】
図8は、電圧設定手段16が設定する電圧値に従って、有機ELディスプレイ13に表示される画像データの明るさ(輝度)を示す第3の表示例である。この例は、利用者の操作により、画像1の表示(左図)から画像2の表示(中央図)をスキップして、画像3の表示(右図)に移行することを示している。画像1が表示されている状態で、利用者の操作により着信履歴が選択されると、電圧設定手段16は、画像1データの電圧値(1)と画像2データの電圧値(2)とを比較し、画像2データの電圧値(2)が小さいから、画像2データの電圧値(2)よりも1V低い電圧値(2)’を設定する(図6のステップ301,302,303,304,307)。そして、画像2が表示される前に利用者により画像2における「OK」に対応する操作がされると、電圧設定手段16は、画像2データ及び画像2データの電圧値を廃棄し、画像1データの電圧値(1)と画像3データの電圧値(3)とを比較し、画像3データの電圧値(3)が小さいから、画像3データの電圧値(3)よりも1V低い電圧値(3)’を設定する(ステップ308,313,303,304,307)。そして、信号処理部15は、画像3を表示する(ステップ312)。この場合、画像1の次画面である画像2が上述の画像2における「OK」に対応する操作によりスキップされ、本来の画像よりも暗い画像3が表示される。
【0047】
図9は、電圧設定手段16が設定する電圧値に従って、有機ELディスプレイ13に表示される画像データの明るさ(輝度)を示す第4の表示例である。この例は、利用者の操作により、画像1の表示(左図)、画像2の表示(中央図)、そして画像3の表示(右図)に移行することを示している。この場合、画像2はごく短い時間だけ表示される。画像1が表示されている状態で、利用者の操作により着信履歴が選択されると、電圧設定手段16は、画像1データの電圧値(1)と画像2データの電圧値(2)とを比較し、画像2データの電圧値(2)が小さいから、画像2データの電圧値(2)よりも1V低い電圧値(2)’を設定する(図6のステップ301,302,303,304,307)。
【0048】
そして、画像2データが信号処理部15に転送され、フレームバッファ18に画像データが存在する場合に、利用者により画像2における「OK」に対応する操作が画像2を表示する前にされると(ステップ309,310,314)、電圧設定手段16は、画像2データの電圧値(2)’を1/2に一時的に再設定する(ステップ315)。そして、信号処理部15は、強制的に明るさを落とした画像2を表示する(ステップ312)。さらに、ステップ302を経て、電圧設定手段16は、上述の画像2における「OK」に対応する操作(ステップ314)により画像2データの電圧値(2)と画像3データの電圧値(3)とを比較し、両値は等しいから、画像3データの電圧値として現在表示中の画像2データの電圧値(2)’(ステップ315において1/2に落とす前の値)を引き次ぐ。すなわち、電圧設定手段16は、画像3データの電圧値として電圧値(2)’を設定する(ステップ303,304,305)。そして、信号処理部15は、画像3を表示する(ステップ312)。このように、画像2は表示してからすぐに画像3の表示が行われ、ごく短い時間だけ表示されるから、その場合の画像2の電圧値を強制的に1/2に落とすことにより、消費減力を削減することができる。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態に係る画像表示装置によれば、電圧設定手段16が、表示される画像データに対応した電圧値を含む設定電圧テーブルを用いて、有機ELディスプレイ13の駆動回路の電圧値を設定するようにした。通常、有機ELディスプレイ13に表示される画面は、利用者の操作に応じて予め決まっている。これにより、有機ELディスプレイ13に表示される画像データ毎に電圧値が設定されるから、画像表示装置の消費電力を効果的に削減することができる。特に、画像が暗い場合には、利用者は表示変化が少ない印象を受ける。したがって、違和感を与えることなく、消費電力を削減することができる。
【0050】
また、前記画像表示装置が搭載される携帯電話等において、利用者の操作により、階層メニューを用いて目的の操作画面へ移行する場合、ボタンに予め割り当てられた操作画面へ移行する場合、さらには階層メニューの途中から操作画面へ移動する場合等、移行先である操作画面よりも一つ前の画面(前画面)が異なる場合がある。本発明の実施の形態に係る画像表示装置によれば、電圧設定手段16が、表示中の画像データの電圧値と次に表示する画像データの電圧値とを比較し、次に表示する画像データが暗い場合はその電圧値を下げ、等しい場合は表示中の画像データの電圧値を引き継ぎ、次に表示する画像データが明るい場合はその画像データの電圧値を設定するようにした。これにより、画像表示装置の消費電力を効果的に削減することができる。また、昇圧回路12の出力電圧が低下するから、出力電圧低下とそれに伴う消費電流の増加によって、図10において説明したように、昇圧回路12の電源効率を改善することができ、昇圧回路12を含む画像表示装置全体を含むバッテリ11端での消費電力を削減することができ、バッテリ11の長時間使用が可能となる。また、このように有機ELディスプレイ13への印加電圧を低下させるように制御することで、有機ELディスプレイ13自体の長寿命化も期待できる。
【0051】
また、例えば、利用者が階層メニューを用いて目的の操作画面へ移行する等して、階層が深くなると、操作画面が表示される間隔よりも利用者による操作の間隔の方が短くなってしまうことがある。この場合、画像が表示された直後に、その次の画像が表示される。本発明の実施の形態に係る画像表示装置によれば、電圧設定手段16が、一時的に表示される画像データの電圧値を強制的に1/2に落とすようにした。これにより、一時的に表示される中間画像は、輝度を押さえた暗い画像として極めて短い時間のみ表示されることになる。しかし、利用者は中間画像の次の画像が表示されることを期待しているから、暗い中間画像の表示によって違和感を受けることがない。したがって、利用者に違和感を与えることなく、画像表示装置の消費電力を効果的に削減することができる。これは、連続的に画像表示が切り替わる場合に、極めて短い時間のみ表示される画像に対して適用することができる。また、次の画像2の表示が完了する前に、さらに次の操作がなされた場合にも、その画像2の表示に対しても適用することができる。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。例えば、昇圧回路12の出力電圧制御は、信号処理部15からの電圧印加タイミング信号に限らず、垂直同期信号に同期して行うこともできる。
【0053】
また、前述した実施の形態では、電圧設定手段16が、RAM17に格納された設定電圧テーブルを用いて、画像データの電圧値を設定するようにしたが、この設定電圧テーブルのデータは、利用者により任意に設定できるようにすることもできるし、消費電力に関係する要因(例えば、昇圧回路12の入力電圧)に応じた複数のテーブルを格納して、その要因に応じたテーブルを選択して使用するようにしてもよい。また、電圧設定手段16は、設定電圧テーブルを用いることなく、所定の演算式を用いて画像データに基づいて電圧値を算出するようにしてもよい。つまり、画像データに対応する電圧値を設定することができればよい。
【0054】
また、前述した実施の形態において、電圧設定手段16は、図6に示したステップ307にて、設定電圧テーブルから取得した電圧値よりも1V低い電圧値に設定し、ステップ315にて、設定された電圧値を1/2に一時的に再設定するようにしたが、これらの値(1V,1/2)に限定されるものではなく、利用者は任意に設定することができる。この場合、元の電圧値よりも低い電圧値に設定または再設定することができればよい。
【0055】
さらに、本発明は、有機ELディスプレイに限らず、LEDディスプレイ等の他の自発光ディスプレイを昇圧回路を用いて駆動する場合も有効に適用することができるとともに、携帯電話やPDA等の携帯端末に限らず、商用電源を整流する直流電源を用い、その出力電圧を昇圧回路で昇圧して自発光ディスプレイを駆動する場合にも有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】輝度平均値に対する設定電圧テーブルを示す図である。
【図3】有機ELディスプレイにおける印加電圧に対する輝度変化特性を示す図である。
【図4】図1に示す画像表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】画像表示装置の第1の表示例を示す図である。
【図6】図1に示す画像表示装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】画像表示装置の第2の表示例を示す図である。
【図8】画像表示装置の第3の表示例を示す図である。
【図9】画面表示装置の第4の表示例を示す図である。
【図10】DC−DCコンバータからなる昇圧回路の電源効率特性を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
11 バッテリ
12 昇圧回路
13 有機ELディスプレイ
14 CPU
15 信号処理部
16 電圧設定手段
17 RAM
18 フレームバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電源電圧を昇圧回路で昇圧し、その出力電圧により自発光ディスプレイを駆動して画像データを表示するにあたり、
現在表示中の画像データに対応する電圧と、次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該次に表示する画像データの設定電圧を定める電圧設定工程と、
前記電圧設定工程により定められた設定電圧により、ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示する表示制御工程と、
を有することを特徴とする自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項2】
前記電圧設定工程は、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧よりも低い場合に、前記次に表示する画像データに対応する電圧よりも低い電圧を、前記次に表示する画像データの設定電圧として定めることを特徴とする請求項1に記載の自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項3】
前記電圧設定工程は、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧よりも高い場合に、前記次に表示する画像データに対応する電圧を前記次に表示する画像データの設定電圧として定め、次に表示する画像データに対応する電圧が現在表示中の画像データに対応する電圧と等しい場合に、前記表示中の画像データの設定電圧を引き続き前記次に表示する画像データの設定電圧として定めることを特徴とする請求項1に記載の自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項4】
前記電圧設定工程は、表示制御工程により次に表示する画像データを表示する前に、さらに次の画像表示の要求がなされると、現在表示中の画像データに対応する電圧と、さらに次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該さらに次に表示する画像データの設定電圧を定めることを特徴とする請求項1に記載の自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項5】
前記電圧設定工程は、表示制御工程により次に表示する画像データを表示する際に、さらに次の画像表示の要求がなされると、前記設定電圧よりも低い電圧を設定電圧として再度定め、
前記表示制御工程は、電圧設定工程により再度定められた設定電圧により、ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項6】
前記表示制御工程は、短時間表示する画像データの設定電圧を、一旦定めた設定電圧よりも低い電圧に再度定め、該再度定めた設定電圧により、前記短時間表示する画像データを表示することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の自発光ディスプレイの画像表示方法。
【請求項7】
直流の電源電圧を昇圧する昇圧回路と、その出力電圧で駆動する駆動回路により画像データを表示する自発光ディスプレイとが設けられた画像表示装置において、
現在表示中の画像データに対応する電圧と、次に表示する画像データに対応する電圧とに基づいて、該次に表示する画像データの設定電圧を定める電圧設定手段と、
前記電圧設定手段により定められた設定電圧により、自発光ディスプレイの駆動回路を制御して前記次に表示する画像データを表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−226135(P2007−226135A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50203(P2006−50203)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】