説明

自走式ホーム可動柵

【課題】本発明は、プラットホーム上の積雪、氷等の影響を受けずに、自走することが可能な自走式ホーム可動柵を提供することを目的とする。
【解決手段】プラットホームに沿って配置されるレール21を備えるとともにプラットホームにおける列車軌道側の端部に埋設される床ユニット20に、ヒータ51〜54を設置する。ヒータ51〜54は、プラットホームに沿った方向に延びるヒータである。このように、床ユニット20は、プラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内において複数のヒータを備えて構成され、ヒータ51〜54により、レール21等を加熱し、積雪、氷等を除去して、扉体2を進退自在に収納するとともに車輪3を介してレール21上を移動可能な戸袋体1を走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の編成車両、乗降口数に対応する開口位置まで自走し、列車到着時に扉体を開閉して乗客の乗降を可能とする自走式ホーム可動柵に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の編成車両、乗降口数に対応する開口位置まで自走し、列車到着時に扉体を開閉して乗客の乗降を可能とする自走式ホーム可動柵として、例えば特許文献1に開示されるものがある。これは、戸袋体の下部に車輪が設けられ、プラットホームに埋設したレールの上面を転動することにより、戸袋体がプラットホームに沿って移動するものである。この戸袋体はレールの下面を転動するように設置されたガイド輪を有し、車輪とガイド輪とでレールを上下から挟みこんだ状態でプラットホーム上をレールに沿って移動する。
【0003】
【特許文献1】特開平2006−8068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている自走式ホーム可動柵では、豪雪地、寒冷地の駅舎に設置した場合、プラットホーム上の積雪、氷等が戸袋体の走行の障害となり、列車編成車両、乗降口数に対応した開口位置まで走行できなくなる虞がある。また、乗降口付近の積雪や氷等は、乗降の妨げとなり問題となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、プラットホーム上の積雪、氷等の影響を受けずに、自走することが可能な自走式ホーム可動柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明に係る自走式ホーム可動柵は、列車の編成車両、乗降口数に対応する開口位置まで自走し、列車到着時に扉体を開閉して乗客の乗降を可能とする自走式ホーム可動柵に関する。そして、本発明に係る自走式ホーム可動柵は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の自走式ホーム可動柵は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る自走式ホーム可動柵における第1の特徴は、プラットホームに沿って配置されるレールを備えるとともに前記プラットホームにおける列車軌道側の端部に埋設される床ユニットと、扉体を進退自在に収納するとともに車輪を介して前記レール上を移動可能な戸袋体と、を備える自走式ホーム可動柵であって、前記床ユニットは、前記プラットホームに沿った方向に延びるとともに前記プラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内において複数配置されたヒータを備えていることである。
【0008】
この構成によると、プラットホームに沿って延びるヒータにより床ユニットを加熱することができ、プラットホームに沿って延びる床ユニット上の積雪や氷等を融かして除去することが可能となる。また、プラットホームに沿って延びるヒータを用いることにより、プラットホームに沿った方向の広範囲の加熱を行うことが容易に可能となる。また、プラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内において複数配置されていることにより、床ユニットの当該断面の面内方向においても広範囲に亘って加熱することができ、より確実に積雪、氷等の除去が可能となる。これより、床ユニット上における戸袋体の移動が積雪や氷等により妨げられることを防止でき、豪雪地、寒冷地等においても自走障害を発生させることなく駆動することができる。また、積雪や氷等が床ユニット上を通る乗客の乗降の妨げとなることを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係る自走式ホーム可動柵における第2の特徴は、複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記床ユニットの上部表面である床面に近接して配置されていることである。
【0010】
この構成によると、乗客が乗降の際の踏面であり、また、戸袋体の車輪が接触して転動する踏面である床面をヒータにより集中的に加熱することができ、効率よく床ユニット上の積雪や氷等を融かして除去することができる。これより、ヒータの加熱に要するコストを削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る自走式ホーム可動柵における第3の特徴は、複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記床面の一部を形成する前記レールに埋設されていることである。
【0012】
従来の自走式ホーム可動柵においては、レールの踏面上に雪が積もった場合、戸袋体の車輪が踏面上の雪を押しつぶすことにより層状の氷を踏面上に形成しやすくなり、当該氷の層は戸袋体が移動して停止する際にスリップする原因となる。この構成によると、ヒータによりレールを集中的に加熱することができ、効率よくレールの踏面上の積雪や氷等を融かして除去することが可能である。したがって、スリップの原因となる氷の層の発生等も確実に防止することが可能である。
また、ヒータをレール内に埋設した場合、ヒータから外部空間への放熱を抑制して、レールに伝達される熱量を大きくすることができる。これより、更に効率よくレールを加熱することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る自走式ホーム可動柵における第4の特徴は、複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記レールと並設され前記床面の一部を形成するステップ部における前記床面と逆側の面に設けられていることである。
【0014】
この構成によると、床ユニットの上部表面である床面に近接して配置されたヒータと、床面と逆側の面に設けられたヒータによって、床ユニット内部を暖めることができ、床ユニット内部の機器、例えば、電力供給のための給電トロリー、位置検出センサ等の機器の凍結を防止でき、機器を保護することができる。
【0015】
また、本発明に係る自走式ホーム可動柵における第5の特徴は、前記戸袋体は、前記扉体を収納する空間から前記床面に向かって開口する開口部を有し、前記戸袋体の下部周囲を覆うカバー部材を備えていることである。
【0016】
この構成によると、カバー部材によりヒータによって加熱された暖かい空気が外部空間に逃げることを抑制できるとともに、当該空気を戸袋体の底面に形成される開口部から戸袋体内部の扉体を収容する空間に導くことが可能となり、当該空気の熱を戸袋体の加熱に効率よく利用することが可能となる。これより、扉体が凍結して駆動できなくなることを防止することができるとともに、戸袋体内部に設置された機器を寒冷環境から保護することができる。
【0017】
また、本発明に係る自走式ホーム可動柵における第6の特徴は、前記ヒータは、テープ状の電気加熱式ヒータであることである。
【0018】
この構成によると、ヒータが柔軟性を備えているため床ユニットへの設置作業を容易に行うことが可能である。また、電気加熱式ヒータを用いることにより、戸袋体の駆動等に用いる電源からの電力を利用して加熱することができるため、別途熱源設備を設ける必要がなく経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自走式ホーム可動柵を示す図である。本実施形態に係る自走式ホーム可動柵は、戸袋体1と戸袋体1が移動するためのレール21を備える床ユニット20から構成されている。戸袋体1はレール21上に複数配置されており、列車の乗降口(図中Eで示す)の位置に合わせて車輪3を介してレール21上をそれぞれ移動可能であり、扉体2を戸袋体1内部の収納空間から外部に向かって(図中矢印方向)進出させることにより、扉を閉じた状態(乗降できない状態)とすることができる。列車がプラットホームに到着したとき、扉体2を戸袋体1の内部に収納することで、乗客の列車への乗降が可能となる。乗降口Eの位置や乗降口の間隔が異なる他の列車が入ってきた場合にも、当該列車における乗降口の位置に合わせて戸袋体1がレール上を移動することにより、列車の乗降位置の変化に対応して同様に扉体2の進退動作を行う。図1に示すように戸袋体1は、戸袋体1A、1B、1Cで示すように一方の側面からのみ扉体2を進退可能なタイプのものだけでなく、戸袋体1Dで示すように左右両方の側面から扉体2を進退可能なタイプのものを用いることができる。
【0020】
図2は、図1に示す自走式ホーム可動柵における左右の両側面から扉体2を進退可能な戸袋体1及び戸袋体1の下に位置する床ユニット20の一部を示す正面概略図(ホーム側から見た図)である。また、図3に、図2におけるX−X断面矢視図(側面部分断面図)を示す。また、図4に戸袋体1の下部及び床ユニット20の拡大部分断面図を示す。
【0021】
〔戸袋体の構成〕
まず、戸袋体1について説明する。
図3に示すように、戸袋体1は、プラットホームの短手方向端部に埋設される一対のレール21・21に沿って走行可能となるように立設されている。図2に示すように、戸袋体1は、レール21上を走行可能に設けられた車輪である駆動輪3aと従動輪3bとを備えるとともに、戸袋体1の転倒を防止するためのガイド輪4を備えている。また、駆動輪3aを駆動するための走行モータ5を備えている。
【0022】
図4に拡大して示すように、駆動輪3aが固定される駆動軸71は、戸袋体1の底板13から垂下する軸支ブラケット72に軸受を介して回転自在に支持されており、適宜位置に固定された走行モータ5の駆動出力軸の回転がベルト(図2参照)を介してプーリ80に伝わり、プーリ80に固定されている駆動軸71に伝達できるようになっている。尚、走行モータ5に隣接した位置に減速ボックス5aが固定されている。当該減速ボックス5aの内部には傘歯車を用いた減速機構が備えられており、走行モータ5の駆動出力軸の回転を減速・トルク増強して駆動軸71に伝達できるようになっている。また、従動輪3bも同様に軸支ブラケット73に回転自在に支持されている。駆動輪3a及び従動輪3bはフランジ部がレール21・21の間(レール21とステップ部材22との間の隙間)に入れられており、これによって戸袋体1の走行方向が案内されるようになっている。
【0023】
ガイド輪4は、戸袋体1の底板13から垂下する支持部材74(図2参照)に回転自在に支持されており、駆動輪3a、従動輪3bとともにレール21を上下から挟み込むようにレール21の下面に接触して転動できるようになっている。これより、戸袋体1の転倒が防止される。
【0024】
そして、3扉車、4扉車など、乗降口の位置の異なる鉄道車両がプラットホームに到着するのに対応して、あるいはプラットホームでの列車の停止位置のズレに対応して、走行モータ5によって駆動輪3aを駆動して戸袋体1を自走させ、その鉄道車両の乗降口のすぐ脇の位置等、所定位置に移動できるようになっている。
【0025】
戸袋体1の位置制御は、図4に示すように例えば戸袋体1に取り付けられた近接センサ11からの検出信号に基づいて制御装置により行われる。近接センサ11は、戸袋体1から床ユニット20の内部に延びる支持部材12(図2参照)の端部に配置される。一方、床ユニット20には、検出片31が、近接センサ11に対応した位置に固定されている。検出片31は例えばプラットホームの長手方向に等ピッチで凹凸が形成されている細長い金属性のプレートなどを用いることができる。近接センサ11は検出片31の凹凸等を検出して検出信号を戸袋体1内部に設置される制御装置8に送り、制御装置8は当該検出信号に基づいて原点位置からの距離等を算出し、適宜走行モータ5駆動して戸袋体1を所定位置に移動させる。
【0026】
図2、図3に示すように戸袋体1は中空状に構成され、その内部を扉収納空間1rとしており、この扉収納空間1rに、扉体2、扉開閉駆動装置6等を収納できるように構成している。扉体2は扉開閉駆動装置6の駆動により、レール21に沿った方向に移動させることができる。尚扉体2の開閉方式として、例えば二重引き戸式(ダブルスライド式)を用いることで1枚の引き戸を単純に開閉する構成に比べ、扉収納空間1rの幅(プラットホーム長手方向の幅)を小さくすることができ、戸袋体1の幅をコンパクトにすることができる。
また、戸袋体1の最上面1a及び軌道側に突出した部分の上面1bは水平面に対して傾斜するように形成されており、雪等が積もりにくくなっている。
【0027】
戸袋体1の幅方向(プラットホーム長手方向)の両端には外部に通じる開口1cを形成しており(図3参照)、扉収納空間1rは当該開口1cを介して外部に通じている。この端部の開口1cを通じて、扉体2を進出させて乗降口を閉鎖し、また、扉体2扉収納空間1rに退避させて乗降口を開放し得るように構成している。
【0028】
また、戸袋体1の底板13は車輪3、ガイド輪4、走行モータ5等を固定するために、戸袋体1の幅方向(プラットホーム長手方向)において部分的に設置されたものであり、戸袋体1の下部全域を仕切るものではない。そのため、戸袋体1は扉収納空間1rから床ユニット20の上部表面である床面20aに向かって開口した状態となっている。即ち、戸袋体1は扉収納空間1rの下端(底面)において底板13が取り付けられていない部分(開口部)を有している。
【0029】
また、戸袋体1の下部周囲を覆うようにカバー部材7が設けられている。カバー部材7は床面20aと接触しない程度に下方に延ばして形成することが望ましく、このように形成することにより、戸袋体1の駆動部(走行モータ5等が設置されている部分)に異物が入り込み故障の原因となることを防ぐことができる。また、詳細は後述するが、床ユニット20の加熱によって暖められた空気を戸袋体1内に効率よく送り込むことも可能となる。
【0030】
また、戸袋体1の下部には給電ブラシ9が備えられており、床ユニット20に設置されている給電トロリー39と給電ブラシ9との接触状態を保ったまま戸袋体1はプラットホームに沿ってレール21上を走行できるようになっている。そして、走行モータ5、近接センサ11及び制御装置8、扉開閉駆動装置6等に供給される電力は、給電トロリー39及び給電ブラシ9を通じて供給されるようになっている。
【0031】
〔床ユニットの構成〕
次に床ユニット20について説明する。
図3、図4に示すように、プラットホームにおける列車軌道側の端部には所定の幅及び深さの凹部が形成されており、床ユニット20は内部の機器等を固定可能なベース部材25を介して当該凹部に設置されている。床ユニット20は、レール21・21及びステップ部材22、23、電力供給のための給電トロリー39、戸袋体1の位置決め用の検出片31等を備えている。また、床面20aは、レール21・21及びステップ部材22、23の上面で形成されており、乗客は床面20a上を通って列車への乗降を行う。
【0032】
レール21・21は、上面の高さがプラットホームの高さと略等しくなるように、レール支持部材29にボルト等により固定されており、プラットホームに沿って互いに平行に設置される。支持部材29はプラットホームの凹部側面やベース部材25に固定されている。また、1対のレール21・21には、それぞれレール21の長手方向に沿って電気加熱式のテープ状のヒータであるレール用ヒータ51が埋設されており、当該レール用ヒータ51によりレール21の加熱が可能である。当該電気加熱式ヒータとしては例えば抵抗加熱式のヒータを用いることができる。尚、図2に示すように本実施形態においてレール21はプラットホームに沿って所定の長さ(例えば1m)のレールブロック21aを直列に複数連結させて構成されているが、レール用ヒータ51は、例えば個々のレールブロックにそれぞれ一本ずつ設置してもよいし、複数のレールブロックに跨るように設置してもよい。
【0033】
ステップ部材22は、一対をなすレール21・21の間に配置される長板状の部材であり、ステップ部材22の上面がレール21・21の上面と略同じ高さになるようにベース部材25に取り付けられた固定部材24によって支持されている。また、ステップ部材22の下面におけるレール21・21間の略中央部には、プラットホームの長手方向に延びる電気加熱式のテープ状のヒータであるステップ用ヒータ52が金属性の薄板等で形成された取付部材22aとステップ部材22とにより挟みこまれて固定されている。尚、ステップ用ヒータ52は取付部材22aを用いて固定する場合に限らず接着剤等によりステップ部材22に接着することもできる。また、本実施形態においては、床ユニット20の軌道側端部に位置するステップ部材23には、ヒータを設置していないが、ステップ部材22と同様に、ヒータを設置することもできる。
【0034】
また、ベース部材25の上面には、プラットホームの長手方向に延びる電気加熱式のテープ状のヒータであるベース用ヒータ53・54がレール21・21の略垂下に位置するように設置されている。このベース用ヒータ53・54により、ベース部材25の加熱とともに、ベース用ヒータ53・54の周囲の空気を加熱することで床ユニット20の内部空間を加熱することができる。このように、ベース用ヒータ53・54を床ユニット20の下部に設けることにより、空気の対流を利用して床ユニット20の全体を効率よく加熱することが可能となる。また、ベース用ヒータ53・54近傍の部材に対しては輻射による加熱も行われるため更に効率よく加熱を行うことが可能である。
【0035】
尚、ベース部材25の上面には溝25aが形成されており、溝25aは排水口(図示しせず)に連結している。これにより、ヒータ51〜54による加熱により床面20a上の積雪や床ユニット20の内部に入り込んだ雪等が融けて形成される水が床ユニット20の下部に流れ込んだ場合でも確実に排出し、当該水による床ユニット20内部の機器の故障や漏電等を防ぐことができる。
【0036】
また、ヒータ51〜54はプラットホームに沿った方向に長く延びるように形成されているため、プラットホームの所定位置に固定される電源を用いてプラットホームの長手方向における広範囲の床ユニット20を加熱することができる。したがって、電源からヒータ51〜54までの電力供給のために長い電力リード線等を用いる必要はなく、床ユニット20内の配線が複雑になることを抑制できる。
【0037】
尚、プラットホームの長手方向において、ヒータを複数に分割して設けることもできる。この場合、ヒータの一部が断線するなどして故障した場合においても、他のヒータで床ユニットを加熱することができるため、故障により加熱ができなくなる範囲を小さくすることができる。
【0038】
本実施形態では以上説明したように、床ユニット20はプラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内(例えば図4に示す断面内)においてプラットホームに沿った方向に延びる複数のヒータ51〜54を備えている。従って、これらのヒータにより床ユニット20を加熱でき、プラットホームに沿って延びる床面20a上の積雪や氷等を融かして除去することが可能となる。また、床ユニット20に設置されるヒータはプラットホームに沿った方向に長く形成されているため、1本のヒータによりプラットホームに沿った方向の広範囲に亘って加熱可能である。また、プラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内における複数の位置にヒータが配置されていることにより、床ユニット20の断面内における広範囲を加熱することができ、より確実に積雪、氷等の除去が可能となる。これより、床面20aにおける戸袋体1の移動が積雪や氷等により妨げられることを防止でき、豪雪地、寒冷地等においても自走障害を発生させることなく駆動することができる。また、積雪や氷等が床ユニット20上を通る乗客の乗降の妨げとなることを防ぐことができる。
【0039】
また、ヒータ51・51及びヒータ52は、床面20aに近接するように、床面20aを形成するレール21・21及びステップ22に取り付けられている。従って、これらのヒータにより床面20aを集中的に加熱することができ、効率よく床面20aの積雪や氷等を融かして除去することができる。これより、ヒータの加熱に要するコストを削減することができる。また、ヒータから床面20aまでの距離が短く、ヒータで発生する熱が床面20aに伝わりやすい構成であるため、ヒータの作動から床面20a上の積雪等が融けるまでのタイムラグを小さくすることができる。
【0040】
また、ヒータ51・51はレール21・21に埋設した状態で設置されており、ヒータ51の周囲がレール21に覆われた構成となっているため、ヒータ51を作動させることによりレール21を集中的に加熱することができる。したがって、効率よくレールの踏面上の積雪や氷等を融かして除去することが可能である。また、ヒータ51の周囲がレール21に覆われているため、ヒータ51から発生する熱がよりレール21に伝わりやすくなり、外部空間への放熱が抑制される。これより、更に効率よくレール21を加熱することが可能となる。
【0041】
また、ヒータ52はステップ裏面に接触するように設けられているため、ヒータ52によりステップ部材22を集中的に加熱することができる。したがって、効率よくステップ部材22上の積雪や氷等を融かして除去することが可能である。また、ヒータ52をステップ裏面(床面と逆側の面)に設けることにより、ヒータ52が乗客の歩行の妨げになることはなく、また、乗客がステップ部材22上を歩行することによってヒータ52が受ける衝撃を小さくすることができるため、ヒータ52の劣化を抑制することができる。
【0042】
また、戸袋体1は、扉収納空間1rの下端において底板が取り付けられていない部分である開口部を有し、床面20aから扉体2を収納する空間1rに向かって開口している。そのため、床ユニット20に取り付けられたヒータによって加熱された暖かい空気を扉収納空間1rに流入させ、扉収納空間1rを暖気することができる。これより、戸袋体1内部の温度を高くすることができ、扉体2が凍結して駆動できなくなることを防止することができるとともに、戸袋体1内部に設置される制御装置8等の機器を寒冷環境から保護することが可能である。
【0043】
また、戸袋体1の下部周囲がカバー部材7で覆われているため、ヒータによって加熱された暖かい空気が外部空間に逃げることを抑制できるとともに、当該空気を扉収納空間1rに導き、当該空気の熱を戸袋体1の加熱に効率よく利用することが可能となる。また、当該空気からの熱伝達により戸袋体1の下部に設置されるモータ5等の駆動部を加熱することができるため、寒冷環境においても走行モータ等の暖気のために戸袋体1に別途暖機運転用の加熱装置を設置する必要がなくなるとともに、駆動部の凍結を防止し戸袋体1の走行を安定して行うことが可能である。
【0044】
また、ヒータ51〜54としてテープ状の電気加熱式ヒータを用いているため、1本のヒータによりプラットホームに沿った方向における広範囲の加熱を行うことができる。また、ヒータがフレキシブルに形成されているため、床ユニット20への設置作業を容易に行うことができる。また、電気加熱式ヒータを用いることにより、戸袋体1の駆動等に用いる電源からの電力を利用して加熱することができるため、床ユニット20に別途熱源設備を設ける必要がなく経済的である。
尚、ヒータは水等の浸入による漏電を防ぐために防水加工を施したものを用いることが望ましい。また、本実施形態で示したようにテープ状のヒータを用いる場合に限られず、例えばプラットホームに沿った方向に延びる棒状のヒータ等を用いることも可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る自走式ホーム可動柵であって、複数の戸袋体がプラットホーム上に配置された状態を示す図。
【図2】図1に示す自走式ホーム可動柵における戸袋体及び当該戸袋体の下に位置する部分のレールを示す正面概略図。
【図3】図2に示す自走式ホーム可動柵のX−X断面矢視図(側面部分断面図)。
【図4】図3に示す自走式ホーム可動柵の拡大図。
【符号の説明】
【0047】
1 戸袋体
1r 扉収納空間
2 扉体
3a 駆動輪(車輪)
3b 従動輪(車輪)
5 走行モータ
7 カバー部材
20 床ユニット
21 レール
22、23 ステップ
51 レール用ヒータ(ヒータ)
52 ステップ用ヒータ(ヒータ)
53 ベース用ヒータ(ヒータ)
54 ベース用ヒータ(ヒータ)
100 自走式ホーム可動柵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームに沿って配置されるレールを備えるとともに前記プラットホームにおける列車軌道側の端部に埋設される床ユニットと、扉体を進退自在に収納するとともに車輪を介して前記レール上を移動可能な戸袋体と、を備える自走式ホーム可動柵であって、
前記床ユニットは、前記プラットホームに沿った方向に延びるとともに前記プラットホームに沿った方向を法線方向とする断面内において複数配置されたヒータを備えていることを特徴とする自走式ホーム可動柵。
【請求項2】
複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記床ユニットの上部表面である床面に近接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式ホーム可動柵。
【請求項3】
複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記床面の一部を形成する前記レールに埋設されていることを特徴とする請求項2に記載の自走式ホーム可動柵。
【請求項4】
複数の前記ヒータのうち少なくとも一つは、前記レールと並設され前記床面の一部を形成するステップ部における前記床面と逆側の面に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の自走式ホーム可動柵。
【請求項5】
前記戸袋体は、前記扉体を収納する空間から前記床面に向かって開口する開口部を有し、前記戸袋体の下部周囲を覆うカバー部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の少なくともいずれか1項に記載の自走式ホーム可動柵。
【請求項6】
前記ヒータは、テープ状の電気加熱式ヒータであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の少なくともいずれか1項に記載の自走式ホーム可動柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−320438(P2007−320438A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153004(P2006−153004)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】