説明

航空機用直流電源装置の内部冷却構造

【課題】本発明は、電流を通電させるダイオードバスバーに直立する放熱部を形成し、ファンと放熱部によって航空機内の直流電源装置の放熱を高効率に行うことを目的とする。
【解決手段】本発明による航空機用直流電源装置の内部冷却構造は、ファン(20A)を有する筐体(1)内のブラケット(21)に各絶縁シート(23,23A)及びダイオードバスバー(24)を介してダイオード(22)を設け、このダイオードバスバー(24)の両端に放熱部(30)を設け、ダイオード(22)からの発熱は各放熱部(30)及びファン(20A)により行われる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用直流電源装置の内部冷却構造に関し、特に、電流を通電させるダイオードバスバーに直立する放熱部を形成し、ファンとダイオードバスバーの放熱部によって航空機内の直流電源装置の放熱を高効率に行うようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられいたこの種の航空機用直流電源装置の内部冷却構造としては、図3及び図5で示される構成が本出願人が開発した従来構成として開示されているが、航空機用ではなく、一般的な電気・電子機器用としては、後述の特許文献1〜3に開示された構成を挙げることができる。
【0003】
すなわち、図5で示される特許文献1の構成においては、基板3上にリード線2を介して抵抗器1が設けられ、基板3と抵抗器1との間に放熱板5が介装されている。
従って、この放熱板5によって抵抗器1に発生した熱を外気に自然放熱するように構成されている。
【0004】
また、図6で示される特許文献2の構成においては、電子回路装置10の基板11上に積層状のシャント抵抗13が設けられ、このシャント抵抗13上に接着剤16を介して凹状をなす放熱器15が設けられている。
前記放熱器15は、平板部15aとこの平板部15aの両端に設けられた一対のフィン部15a,15bとから構成されている。
従って、前記シャント抵抗13から発生した熱は、接着剤16を経て放熱器15から外気に自然放熱される。
【0005】
また、図7で示される特許文献3の構成においては、プリント基板11の孔7にグランド用ピン8が挿入されることにより、ICパッケージ14が前記プリント基板11上に取り付けられている。
前記ICパッケージ14上には、接着剤16を介して金属板18が設けられ、この金属板18のリード17は前記孔7内に挿入固定されている。
前記金属板18上には、接着剤16aを介して多数のフィン部15bを有する放熱器としての金属ブロック15Aが設けられている。
従って、前記ICパッケージ14から発生した発熱は、金属板18を経て金属ブロック15Aのフィン部15bを介して外気に放熱される。
【0006】
前述の図5、図6及び図7に開示された各放熱構造は、何れも、地上において用いられる電気・電子機器に採用されているため、通常の使用状態では、前述の自然放熱で十分であるが、航空機のように、空気が希薄な真空に近いような状態の高度を飛行する場合、前述の従来構成では十分な放熱効果を得ることができなかった。
【0007】
前述の状況により、本出願人は、図3及び図4で示される放熱装置を開発し、航空機に搭載を目指していた。
すなわち、図3において符号20で示されるものは筐体であり、この筐体20にはファン20Aが設けられている。
前記筐体20内の板状のブラケット21には、複数のダイオード22が所定間隔で設けられており、このブラケット21の両面には第1、第2絶縁シート23,23Aが設けられている。
【0008】
前記第1絶縁シート23の上面には、電流を通電させるためのダイオードバスバー24が設けられている。
前記ダイオードバスバー24側には、複数のダイオード22の取付ロッド22aが前記ダイオードバスバー24、第1絶縁シート23、ブラケット21及び第2絶縁シート23Aを貫通すると共に、前記ブラケット21に設けられた絶縁ブッシュ25を介して取付けられている。
前記各ダイオード22は、前記第2絶縁シート23Aから突出した取付ロッド22aに取付ナット26を螺合させることにより、前記ブラケット21に対して各ダイオード22を固定することができる。
【0009】
従って、前述の構成において、電源装置の各ダイオード22には、前記ダイオードバスバー24及びダイオード22の頂部の電極22bを介して電流が通電され、各ダイオード22からの発熱は、前記ファン21Aからの空気流によって自冷方式による冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭55−149902号公報
【特許文献2】特開2009−10082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の航空機用直流電源装置の内部冷却構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、航空機のように、高々度環境で飛行すると、ほぼ真空に近い状態であるため、ファンによる自冷だけでは冷却効果を高めることができず、発熱体であるダイオードからの放熱を十分に行うことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による航空機用直流電源装置の内部冷却構造は、筐体に設けられたファンと、前記筐体内に設けられ前記ファンの近傍に配設されたブラケットと、前記ブラケットの第1面と第2面に設けられた第1、第2絶縁シートと、前記第1絶縁シート上に設けられ電流が通電されるダイオードバスバーと、前記ダイオードバスバー、各絶縁シート及びブラケットを貫通して設けられたダイオードと、前記ダイオードバスバーの両端に設けられ互いに直立して対向配置された一対の放熱部と、を備え、前記ダイオードからの発熱は、前記各放熱部を有するダイオードバスバー及び前記ファンにより放熱される構成であり、また、前記放熱部を有するダイオードバスバーは、銅で構成されている構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による航空機用直流電源装置の内部冷却構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筐体に設けられたファンと、前記筐体内に設けられ前記ファンの近傍に配設されたブラケットと、前記ブラケットの第1面と第2面に設けられた第1、第2絶縁シートと、前記第1絶縁シート上に設けられ電流が通電されるダイオードバスバーと、前記ダイオードバスバー、各絶縁シート及びブラケットを貫通して設けられたダイオードと、前記ダイオードバスバーの両端に設けられ互いに直立して対向配置された一対の放熱部と、を備え、前記ダイオードからの発熱は、前記各放熱部を有するダイオードバスバー及び前記ファンにより放熱されることにより、ダイオードからの発熱をダイオードバスバーの放熱部とファンからの冷却用風との相乗効果により、高高度の航空機に搭載した状態においても、十分な放熱効果を得ることができる。
また、前記放熱部を有するダイオードバスバーは、銅で構成されていることにより、ダイオードバスバーの放熱部の放熱が高効率に行われることになり、高高度で使用される航空機用直流電源装置の確実な放熱状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による航空機用直流電源装置の内部構造を示す一部の正面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】従来の航空機用直流電源装置の内部冷却構造を示す一部の正面図である。
【図4】図3の要部の拡大図である。
【図5】従来の抵抗器の放熱構造を示す斜視図である。
【図6】従来の電子回路装置の放熱構造を示す正面図である。
【図7】従来のICパッケージの放熱構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、電流を通電させるダイオードバスバーに直立する放熱部を形成し、ファンとダイオードバスバーによって航空機内の直流電源装置の放熱を高効率に行うようにした航空機用直流電源装置の内部冷却構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明による航空機用直流電源装置の内部冷却構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号20で示されるものは筐体であり、この筐体20にはファン20Aが設けられている。
前記筐体20内の板状のブラケット21には、複数のダイオード22が所定間隔で設けられており、このブラケット21の両面には第1、第2絶縁シート23,23Aが設けられている。
【0017】
前記第1絶縁シート23の上面には、電流を通電させるためのダイオードバスバー24が設けられている。
前記ダイオードバスバー24側には、複数のダイオード22の取付ロッド22aが前記ダイオードバスバー24、第1絶縁シート23、ブラケット21及び第2絶縁シート23Aを貫通すると共に、前記ブラケット21に設けられた絶縁ブッシュ25を介して取付けられている。
前記各ダイオード22は、前記第2絶縁シート23Aから突出した取付ロッド22aに取付ナット26を螺合させることにより、前記ブラケット21に対して各ダイオード22を固定することができる。
【0018】
前記ダイオードバスバー24の両端には、互いに直立して対向配置された一対の板状の放熱部30が設けられ、各放熱部30はダイオードバスバー24と一体又は別体に形成されると共に、この各放熱部30とダイオードバスバー24とは銅で形成されている。
【0019】
従って、前述の構成において、電源装置の各ダイオード22には、前記ダイオードバスバー24及びダイオード22の頂部の電極22bを介して電流が通電され、各ダイオード22からの発熱は、前記ダイオードバスバー24の各放熱部30からの放熱、及び、ファン20Aによる空気流とによる相乗効果により、各ダイオード22の放熱による冷却が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、ダイオードの放熱だけではなく、トランジスタ等の他の発熱素子の放熱にも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
20 筐体
20A ファン
21 ブラケット
22 ダイオード
22b 電極
23 第1絶縁シート
23A 第2絶縁シート
24 ダイオードバスバー
25 絶縁ブッシュ
26 取付ナット
30 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(20)に設けられたファン(20A)と、前記筐体(20)内に設けられ前記ファン(20A)の近傍に配設されたブラケット(21)と、前記ブラケット(21)の第1面(21a)と第2面(21b)に設けられた第1、第2絶縁シート(23,23A)と、前記第1絶縁シート(23)上に設けられ電流が通電されるダイオードバスバー(24)と、前記ダイオードバスバー(24)、各絶縁シート(23,23A)及びブラケット(21)を貫通して設けられたダイオード(22)と、前記ダイオードバスバー(24)の両端に設けられ互いに直立して対向配置された一対の放熱部(30)と、を備え、
前記ダイオード(22)からの発熱は、前記各放熱部(30)を有するダイオードバスバー(24)及び前記ファン(20A)により放熱されることを特徴とする航空機用直流電源装置の内部冷却構造。
【請求項2】
前記放熱部(30)を有するダイオードバスバー(24)は、銅で構成されていることを特徴とする請求項1記載の航空機用直流電源装置の内部冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72073(P2011−72073A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218929(P2009−218929)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】