説明

航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラム

【課題】少ない作業工数で詳細に航空障害物を抽出することができる航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】航空障害物抽出装置100は、制限表面から算出した二次表面と、DTMデータ又はDSMデータと、から調査範囲を限定し、この調査範囲内でのみ、現地測量などによる別途建造物の高さの調査や、その高さ等を示すDSMデータの高さ情報入力部20への入力が行われさえすれば、DSMデータが示す高さと制限表面とから航空障害物を判定することができる。これにより、航空障害物抽出装置100は、明らかに制限表面を侵害しない建造物の高さの現地測量などによる調査、及びその高さを示すDSMデータの高さ情報入力部20への入力を省略することが可能となるため、作業工数を削減することができるとともに、少ない作業工数でも航空障害物を詳細に抽出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラムに関し、特に制限表面と空港周辺の建造物の高さとから、航空障害物を抽出することができる航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港周辺には、航空機の航行空間の安全を確保するために空間の制限が設けられている。このような空間の制限は、空港制限表面(以下、単に「制限表面」ともいう。)と呼ばれ、空港の近辺に高い建造物などがあると航空機の安全な航行の妨げになるため、空港の近辺でそのような建造物の建築などを禁止することを目的として定められたものである。そして、制限表面上に出る建造物の設置は、航空法により禁止されている。
【0003】
このような空港の制限表面と空港周辺の建造物との干渉をチェックする技術の一例として、特許文献1には、航空制限表面チェック装置が記載されている。
【0004】
図7は、特許文献1に記載の航空制限表面チェック装置を機能的に示したブロック図である。航空制限表面チェック装置200は、図7に示すように、建造物高さ・制限表面高さ算出部70と、クリアランスチェック部80と、を備えている。航空制限表面チェック装置200は、空港周辺の建造物の平面位置と高さとを示す高さ情報が入力されると、建造物高さ・制限表面高さ算出部70において、建造物の絶対高さと、その平行位置における制限表面の高さと、を算出する。そして、航空制限表面チェック装置200は、クリアランスチェック部80において、建造物の絶対高さと制限表面の高さとを比較して、建造物と制限表面との干渉をチェックし、クリアランスチェック結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3459228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、航空制限表面チェック装置200は、明らかに制限表面を侵害する建造物がない場合でも、建造物の高さ情報が入力されるまで、その侵害状況を判断することができない。このため、オペレータは、対象範囲内における全ての建造物の高さを調査し、その高さ等を示す高さ情報を航空制限表面チェック装置200に入力する必要がある。このことから、建造物と制限表面との干渉のチェックには、多くの作業工数がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、航空制限表面チェック装置200に入力される既存の高さデータには、通常、避雷針などの屋上構造物のような細かい高さ情報まで含まれていない。このため、航空制限表面チェック装置200では、航空障害物の抽出を精密に行うことができないという問題もあった。
【0008】
さらに、航空制限表面チェック装置200は、個々の建造物について、個別に制限表面に抵触するか否かを判別するためのものに過ぎない。例えば建造者の故意・過失等によって制限表面を超える建造物が建てられた場合には、これを航空障害物として抽出することは事実上不可能であった。すなわち、航空制限表面チェック装置200は、飛行機の安全を確保するために、空港周辺の建造物が制限表面に抵触するか否かを判別するために用いるものとして、不十分であるという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、少ない作業工数で詳細に航空障害物を抽出することができる航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る航空障害物抽出装置は、ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行手段と、前記ステレオ処理実行手段によって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出手段と、前記障害物候補抽出手段によって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出手段と、を備える。
【0011】
また、本発明の第2の観点に係る航空障害物抽出方法は、ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行ステップと、前記ステレオ処理実行ステップによって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出ステップと、前記障害物候補抽出ステップによって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出ステップと、を備える。
【0012】
さらに、本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータに、ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行手順と、前記ステレオ処理実行手順によって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出手順と、前記障害物候補抽出手順によって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少ない作業工数で詳細に航空障害物を抽出することができる航空障害物抽出装置、航空障害物抽出方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る航空障害物抽出装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】複数の航空画像の撮影範囲の関係を示す模式図である。
【図3】複数の航空画像の撮影範囲の関係を示す模式図である。
【図4】中心投影画像示す模式図である。
【図5】正射画像を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係る航空障害物抽出装置の処理例を示すフローチャートである。
【図7】従来の航空制限表面チェック装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る航空障害物抽出装置100の構成例を示すブロック図である。航空障害物抽出装置100は、例えば汎用コンピュータなどによって実現され、図1に示すように、制限表面情報入力部10と、高さ情報入力部20と、二次表面算出部30と、調査範囲算出部40と、障害物候補算出部50と、障害物判定部60と、を備えている。
【0016】
制限表面情報入力部10は、例えばキーボードやマウスなどによって実現され、制限表面の位置と高さとの関係を示す制限表面情報を入力する。
【0017】
高さ情報入力部20は、例えばキーボードやマウスなどによって実現され、地表や建造物の平面位置及び高さを示す高さ情報を入力する。なお、高さ情報は、地表の平面位置及び高さのみを示すDTM(Digital Terrain Model)データであってもよいし、建造物の平面位置及び高さをも含むDSM(Digital Surface Model)データであってもよい。
【0018】
ここで、DTMデータ及びDSMデータはともに、高さを数値モデル(三次元座標(X,Y,Z))で表現したものである。DTMデータは、DEM(Digital Elevation Model)データとも呼ばれ、その例としては、国土地理院の数値地図などの地図データが挙げられる。
【0019】
これに対して、DSMデータは、航空写真などのデジタル写真画像から、ステレオマッチング処理などの自動計測を行うことにより作成され、具体的には、デジタル写真画像に写っている建造物の標高値(例えばビルが写っていればビルの屋上の標高値)データである。
【0020】
図2及び図3は、航空写真の一例を示す図である。図2及び図3に示される航空写真は、飛行機を飛ばして上空から連続撮影された、A地域が撮影されている航空写真101Aと、B地域が撮影されている航空写真101Bとからなる。また、航空写真101Aと、航空写真101Bとは、飛行機の進行方向に60%オーバーラップして(C地域)撮影されたものである。このような航空画像は、一般的な撮影条件の一つである1200dpiのスキャン解像度かつ1/5000の縮尺で撮影された際には、航空画像の解像度は12.5cm/pixelとなり、レーザデータよりも高解像度である。
【0021】
また、ステレオマッチング処理とは、異なる視点から撮影した複数の画像について、同一の点を撮像している各画像中の対応点を求め、その視差を用いて三角測量の原理によって対象までの奥行きや形状を求める処理のことである。すなわち、一組の航空写真101A、航空写真101B間では、対応する地物の位置が、所定の位置ずれ(視差)を生じているので、ステレオマッチング処理は、この位置ずれを計測することにより、地物の表層の高さを含む標高値を有する高さデータを求めることができる。
【0022】
なお、ステレオマッチング処理を行うための手法には、一般的な特徴量を求めて対応付けるものや、左右画像の相関を求めるものなど、様々なものが存在するが、本実施形態におけるステレオマッチング処理に使用される手法に制限はない。例えば、特公平8−16930に記載のステレオマッチング処理を使用してもよい。
【0023】
また、上記位置ずれの量は、通常2つの画像の中で、対応する付近の小領域の画像相関をとり、相関係数が最大となる位置から測定されるが、この画像相関を、取得された画像全体にわたって行うことにより、一定間隔の格子形状ごとに標高値を面的に計測することでDSMデータが生成される。
【0024】
本実施形態におけるDSMデータは、ステレオマッチング処理により作成されたDSMデータに対し、さらにオルソ化処理がなされたオルソDSMデータのことである。ここで、オルソ化処理とは、正射変換による正規化処理のことである。なお、本実施形態におけるオルソ化処理には、対地標定の処理が含まれる。すなわち、本実施形態におけるDSMデータとは、DSMデータが正規化処理され、対地標定により得られるデータのことである。なお、一般にオルソ化処理には、地形のみ補正する簡易オルソ化と建物まで補正する精密オルソ化とがあり、本実施形態では後者の精密オルソ化を指している。
【0025】
具体的に、本実施形態におけるDSMデータは、通常のカメラの場合、図4に示すように、中心投影および地形の起伏等のために傾いて撮影される対象を、正規化処理および対地標定により得られた画像に対応して、図5に示すように、DSMデータについて所定の面に対して正射影して得られたデータを対地標定することにより、生成される。
【0026】
通常のDSMデータは、中心投影および地形の起伏等のために各地点で正しい位置からのずれが発生し、高さの正しいデータが得られないので高さの比較が困難であるが、本実施形態のDSMデータ(オルソDSMデータ)は、正射変換し、さらに、対地標定を行うため、DSMデータに対応する緯度、経度、及び高さからなる正しい位置を持つことから、各データにおける高さを相互に比較することができる。
【0027】
二次表面算出部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブなどによって実現され、制限表面情報入力部10に入力された制限表面情報から、別途定義された演算によって、二次表面情報を算出する。
【0028】
ここで、二次表面とは、航空障害物の調査範囲を算出するための仮想的な制限表面のことで、具体的に、制限表面を一定の高さだけ(例えば20m)垂直方向に移動させた平面のことをいう。また、二次表面情報とは、二次表面の平面位置と高さとの関係を示す情報のことをいう。
【0029】
調査範囲算出部40は、例えばCPUや、ROM、RAM、ハードディスクドライブなどによって実現され、高さ情報入力部20に入力された高さ情報と、二次表面算出部30で算出された二次表面情報と、から、航空障害物の調査範囲を算出する。ここで、調査範囲とは、現地測量などによって別途高さを調査する必要がある建造物の平面位置のことをいう。
【0030】
具体的に、調査範囲算出部40は、高さ情報が示す地表や建造物の高さと、二次表面情報が示す二次表面の高さと、を比較し、二次表面よりも高い地表や建造物の平面位置を調査範囲として算出する。
【0031】
障害物候補算出部50は、例えばCPUや、ROM、RAM、ハードディスクドライブなどによって実現され、調査範囲算出部40で算出された調査範囲内にある航空障害物の候補(以下、単に「障害物候補」ともいう。)を算出する。ここで、障害物候補とは、航空障害物と判定される可能性のある地表や建造物のことをいう。
【0032】
具体的に、障害物候補算出部50は、調査範囲算出部40で算出された調査範囲を、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの画面上に表示する。また、障害物候補算出部50は、高さ情報入力部20に入力されたDSMデータのうち、平面位置が調査範囲内にあるものを障害物候補として算出する。なお、障害物候補算出部50は、画像処理を行うことによって、調査範囲内にある建造物の高さ等を自動的に抽出し、障害物候補として算出するようにしてもよい。
【0033】
障害物判定部60は、例えばCPUや、ROM、RAM、ハードディスクドライブなどによって実現され、障害物候補算出部50で算出された障害物候補と、制限表面情報入力部10に入力された制限表面情報と、から航空障害物を判定し、航空障害物を示す障害物データを出力する。ここで、航空障害物とは、制限表面よりも高い地表や建造物などのことをいう。なお、建造物には、地物(例えば建物や、電柱、鉄塔等)と、屋上構造物(柵や、アンテナ、避雷針、看板等)と、が含まれる。
【0034】
具体的に、障害物判定部60は、障害物候補算出部50で障害物候補として算出されたDSMデータが示す建造物の高さと、制限表面情報が示す制限表面の高さと、を比較し、制限表面よりも高い建造物を航空障害物として判定する。
【0035】
次に、上記構成を備える航空障害物抽出装置100が実行する航空障害物抽出処理について図面を参照して説明する。
【0036】
図6は、航空障害物抽出装置100が実行する航空障害物抽出処理例を示すフローチャートである。この処理において、航空障害物抽出装置100のCPUは、まず、制限表面情報が制限表面情報入力部10に入力されているか否かを判別し(ステップS1)、入力されていなければ(ステップS1;No)、ループして待つ。
【0037】
これに対して、ステップS1の処理で制限表面情報が入力されていると判別した場合(ステップS1;Yes)、CPUは、二次表面算出部30において、制限表面情報入力部10に入力された制限表面情報から二次表面情報を算出する(ステップS2)。
【0038】
ステップS2の処理を実行した後、CPUは、高さ情報が高さ情報入力部20に入力されているか否かを判別し(ステップS3)、入力されていなければ(ステップS3;No)、ループして待つ。
【0039】
これに対して、ステップS3の処理で高さ情報が入力されていると判別した場合(ステップS3;Yes)、CPUは、調査範囲算出部40において、高さ情報入力部20に入力された高さ情報と、ステップS2の処理で算出された二次表面情報と、から航空障害物の調査範囲を算出する(ステップS4)。
【0040】
続いて、CPUは、障害物候補算出部50において、ステップS4の処理で算出された航空障害物の調査範囲内にある障害物候補を算出する(ステップS5)。
【0041】
そして、CPUは、障害物判定部60において、ステップS5の処理で算出された障害物候補と、制限表面情報入力部10に入力された制限表面情報と、から航空障害物を判定し、航空障害物を示す障害物データを出力してから(ステップS6)、航空障害物抽出処理を終了する。
【0042】
続いて、上記処理を実行する航空障害物抽出装置100の動作について具体例を挙げつつ説明する。
【0043】
まず、高さ500m以上の建造物は、通常存在しないという仮定の下、制限表面から500m垂直下方に移動させた平面を二次表面とする場合を例に、航空障害物抽出装置100の動作を説明する。
【0044】
この場合、制限表面情報が制限表面情報入力部10に入力されると(ステップS1;Yes)、航空障害物抽出装置100のCPUは、ステップS2の処理において、制限表面情報が示す高さを一律500m減算することにより、制限表面と平面位置が同一で、制限表面よりも高さが500m低い二次表面を示す二次表面情報を算出する。
【0045】
その後、地表の平面位置及び高さのみを示すDTMデータが高さ情報として入力されると(ステップS3;Yes)、CPUは、ステップS4の処理において、DTMデータが示す地表の高さと、二次表面情報が示す二次表面の高さと、を比較し、二次表面よりも高い地表の平面位置を調査範囲として算出する。
【0046】
このようにして算出された調査範囲内では、高さ500m未満の建造物でも、制限表面を侵害する可能性があるので、現地測量などによって別途建造物の高さを調査し、その高さ等を示すDSMデータを高さ情報入力部20に入力する必要がある。
【0047】
これに対して、調査範囲外、即ち二次表面よりも低い地表の平面位置では、制限表面を侵害する建造物が存在しないことが明らかなので、別途建造物の存在及び高さを調査したり、DSMデータを高さ情報入力部20に入力したりする必要がない。
【0048】
次に、高さ20m以上の避雷針等の屋上構造物は、通常存在しないという仮定の下、制限表面から20m垂直下方に移動させた平面を二次表面とする場合を例に、航空障害物抽出装置100の動作を説明する。
【0049】
この場合、制限表面情報が制限表面情報入力部10に入力されると(ステップS1;Yes)、航空障害物抽出装置100のCPUは、ステップS2の処理において、制限表面情報が示す高さを一律20m減算することにより、制限表面と平面位置が同一で、制限表面よりも高さが20m低い二次表面を示す二次表面情報を算出する。
【0050】
その後、地物の平面位置及び高さのみを示すDSMデータが高さ情報として入力されると(ステップS3;Yes)、CPUは、ステップS4の処理において、DSMデータが示す地物の高さと、二次表面情報が示す二次表面の高さと、を比較し、二次表面よりも高い地物の平面位置を調査範囲として算出する。
【0051】
このようにして算出された調査範囲内では、高さ20m未満の屋上構造物でも、制限表面を侵害する可能性があるので、現地測量などによって別途屋上構造物の高さを調査し、その高さ等を示すDSMデータを高さ情報入力部20に入力する必要がある。
【0052】
これに対して、調査範囲外、即ち二次表面よりも低い地表の平面位置では、制限表面を侵害する屋上構造物が存在しないことが明らかなので、別途屋上構造物の存在及び高さを調査したり、DSMデータを高さ情報入力部20に入力したりする必要がない。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る航空障害物抽出装置100は、制限表面から算出した二次表面と、DTMデータ又はDSMデータと、から調査範囲を限定し、この調査範囲内でのみ、現地測量などによる別途建造物の高さの調査や、その高さ等を示すDSMデータの高さ情報入力部20への入力が行われさえすれば、DSMデータが示す高さと制限表面とから航空障害物を判定することができる。
【0054】
これにより、航空障害物抽出装置100は、明らかに制限表面を侵害しない建造物の高さの現地測量などによる調査、及びその高さを示すDSMデータの高さ情報入力部20への入力を省略することが可能となるため、作業工数を削減することができるとともに、少ない作業工数でも航空障害物を詳細に抽出することができる。
【0055】
また、DSMデータが示す高さには、一般に誤差が含まれる。このため、航空障害物抽出装置100は、想定される誤差の範囲分を考慮して垂直下方に移動させた二次表面を設定し、これを用いて航空障害物の調査範囲を算出するとともに、調査範囲内にある障害物候補を算出することで、障害物候補をより漏れなく抽出することができる。
【0056】
さらに、障害物候補の算出には、建造物の高さのみならず、避雷針などの屋上構造物も含めた高さが必要となるが、避雷針などの屋上構造物については、高さを正確に示すDSMデータを取得することが難しい。このため、航空障害物抽出装置100は、想定される屋上構造物の最大高さ分以上垂直下方に移動させた二次表面を設定し、これを用いて航空障害物の調査範囲を算出するとともに、調査範囲内にある障害物候補を算出することで、障害物候補をさらに漏れなく抽出することができる。
【0057】
加えて、航空障害物抽出装置100は、航空写真などのデジタル写真画像からステレオ処理などの自動計測を行うことによって作成されたDSMデータを用いて、航空障害物の調査範囲を算出するとともに、調査範囲内にある障害物候補を算出する。このため、オペレータは、航空写真などのデジタル写真画像を立体視により目視判読することで、障害物候補として算出された建造物の平面位置を正確に判読することができる。
【0058】
この結果、オペレータは、判読結果であるDSMデータ及びデジタル写真画像を、空中三角測量成果を用いて、地図データと正確に重ね合わせて、制限表面又は二次表面に抵触する建造物のDSMデータを地図データが示す地図上で容易に特定することができるようになる。このため、航空障害物抽出装置100は、現地測量等の調査に基づいて行われる判読結果の検証を容易にすることがでる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記実施形態の変形態様について、説明する。
【0060】
本実施形態における航空画像は、航空写真101A、航空写真101Bを一例とする航空写真がデジタル変換されて生成された画像であるが、あくまでも本発明を適用する画像の一例である。したがって、本発明を適用する画像は、航空画像に限定されるものではなく、デジタル化された衛星写真による画像や、一般的なデジタルカメラで撮影したデジタル画像や、一般的なアナログカメラで撮影したアナログ写真をスキャニングでデジタル化したデジタル画像等であってもよい。
【0061】
なお、本実施形態におけるDSMデータ(オルソDSMデータ)に含まれるデータとして、緯度および経度のデータを記述したが、これらのデータは、緯度および経度のデータに限定されるものではなく、他の座標系で表現される座標値のデータであってもよい。
【0062】
さらに、本実施形態におけるDSMデータ(オルソDSMデータ)に含まれる高さデータが有するデータとして、標高値を記述したが、この高さデータが有するデータは、標高値に限定されるものではなく、他の基準からの相対的な高さを示す値であってもよい。
【0063】
本発明に係る航空障害物の抽出は、専用のハードウェアに限られるものではなく、通常のコンピュータによっても実現することができる。具体的には、上記実施の形態では、プログラムが、ROM等に予め記憶されているものとして説明した。しかし、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、MO(Magneto-Optical disk)、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、コンピュータに上記動作を実行させるように構成してもよい。
【0064】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしてもよい。さらに、通信ネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0065】
加えて、上述の機能を、OS(Operating System)が分担又はOSとアプリケーションの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 制限表面情報入力部
20 高さ情報入力部
30 二次表面算出部
40 調査範囲算出部
50 障害物候補算出部
60 障害物判定部
70 建造物高さ・制限表面高さ算出部
80 クリアランスチェック部
100 航空障害物抽出装置
200 航空制限表面チェック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行手段と、
前記ステレオ処理実行手段によって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出手段と、
前記障害物候補抽出手段によって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出手段と、
を備える航空障害物抽出装置。
【請求項2】
前記障害物候補抽出手段は、前記DSMデータが示す高さが前記航空制限表面の高さを超える領域上の地表又は建造物を、前記航空障害物の候補として抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の航空障害物抽出装置。
【請求項3】
前記航空制限表面を垂直方向に所定高だけ移動させた二次表面を設定する二次表面設定手段をさらに備え、
前記障害物候補抽出手段は、前記二次表面設定手段によって設定された二次表面を超える地表又は地物上の建造物を、前記航空障害物の候補として抽出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の航空障害物抽出装置。
【請求項4】
前記二次表面設定手段は、前記地表上の建造物の高さとして想定される上限値分だけ、前記航空制限表面を垂直下方に移動させて、前記二次表面を設定し、
前記障害物候補抽出手段は、DTM(Digital Terrain Model)データが示す高さが前記二次表面の高さを超える地表上の建造物を、前記航空障害物の候補として抽出する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の航空障害物抽出装置。
【請求項5】
前記二次表面設定手段は、前記地物上の建造物の高さとして想定される上限値分だけ、前記航空制限表面を垂直下方に移動させて、前記二次表面を設定し、
前記障害物候補抽出手段は、DSMデータが示す高さが前記二次表面の高さを超える地物を、前記航空障害物の候補として抽出する、
ことを特徴とする請求項2、3、又は4に記載の航空障害物抽出装置。
【請求項6】
ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行ステップと、
前記ステレオ処理実行ステップによって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出ステップと、
前記障害物候補抽出ステップによって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出ステップと、
を備える航空障害物抽出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
ステレオ処理を行ってデジタル写真画像からDSM(Digital Surface Model)データを生成するステレオ処理実行手順と、
前記ステレオ処理実行手順によって生成されたDSMデータに基づいて、前記デジタル写真画像のうちから、航空制限表面に抵触しうる航空障害物の候補を抽出する障害物候補抽出手順と、
前記障害物候補抽出手順によって抽出された前記航空障害物の候補のうちから、前記航空制限表面に抵触する前記航空障害物を検出する航空障害物検出手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197414(P2010−197414A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38650(P2009−38650)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】