説明

船舶推進装置

【課題】定点に正確に保持可能な船舶推進装置を提供する。
【解決手段】船舶推進装置は、動力源30と、プロペラ41と、シフトポジション切換機構36と、制御装置91と、保持スイッチ94とを備えている。プロペラ41は、動力源30によって駆動され、推進力を発生させる。シフトポジション切換機構36は、動力源30側に接続される入力軸と、プロペラ側に接続される出力軸と、入力軸と出力軸との接続状態を変化させるクラッチ61,62とを有する。シフトポジション切換機構36では、クラッチ61,62が断続によってフォワード、ニュートラル及びリバースの間でシフトポジションが切り替えられる。制御装置91は、クラッチ61,62の接続力を調節する。保持スイッチは、制御装置91に接続されている。制御装置91は、操船者によって保持スイッチがオンの場合に、所定の位置に船体が保持されるようにクラッチ61,62の接続力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船舶の定点保持制御システムとして自動定点保持システム(DPS)が開示されている。具体的に、DPSとは、GPS(global positioning system)からの位置信号と位置指令値との偏差に基づいてアクチュエータが駆動されるシステムである。
【特許文献1】特許第3499204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の定点保持制御方法では、船舶を定点に正確に保持することが困難である。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、定点に正確に保持可能な船舶推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る船舶推進装置は、動力源と、プロペラと、出力軸と、シフトポジション切り替え機構と、制御装置と、保持スイッチとを備えている。プロペラは、動力源によって駆動される。プロペラは、推進力を発生させる。シフトポジション切り替え機構は、入力軸と、出力軸と、クラッチとを有する。入力軸は、動力源側に接続されている。出力軸は、プロペラ側に接続されている。クラッチは、入力軸と出力軸との接続状態を変化させる。シフトポジション切り替え機構では、クラッチが断続されることによってフォワード、ニュートラル及びリバースの間でシフトポジションが切り替えられる。制御装置は、クラッチの接続力を調節する。保持スイッチは、制御装置に接続されている。制御装置は、操船者によって保持スイッチがオンされた場合に、所定の位置に船体が保持されるようにクラッチの接続力を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、定点に正確に保持可能な船舶推進装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について、図1に示す船舶1、図21に示す船舶2、及び図34に示す船舶3を例に挙げて説明する。但し、以下の実施形態は、本発明を実施した好ましい形態の単なる例示である。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
また、本発明に係る船舶は、以下の実施形態とは異なり、船外機以外の船舶用推進システムを有するものであってもよい。本発明において、船舶用推進システムは、例えば、所謂船内機や、所謂スタンドライブであってもよい。スタンドライブは、船内外機ともいう。なお、「スタンドライブ」とは、少なくとも動力源が船体上に載置される船舶用推進システムをいう。「スタンドライブ」には、推進部以外のものが船体上に載置されているものも含まれる。
【0009】
《第1の実施形態》
図1及び図2に示すように、船舶1は、船体10と、ひとつの船外機20とを備えている。船外機20は、船体10の船尾11に取り付けられている。
【0010】
(船外機20の概略構成)
船外機20は、船外機本体21と、チルト・トリム機構22と、ブラケット23とを備えている。
【0011】
ブラケット23は、マウントブラケット24とスイベルブラケット25とを備えている。マウントブラケット24は、船体10に固定されている。スイベルブラケット25は、マウントブラケット24に対して、旋回軸26を中心として揺動可能である。
【0012】
チルト・トリム機構22は、船外機本体21をチルト操作及びトリム操作するためのものである。具体的には、スイベルブラケット25をマウントブラケット24に対して揺動操作するためのものである。
【0013】
船外機本体21は、ケーシング27と、カウリング28と、推進力発生装置29とを備えている。推進力発生装置29は、後述する推進部33の一部を除いて、ケーシング27とカウリング28との内部に配置されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、推進力発生装置29は、エンジン30と、動力伝達機構32と、推進部33とを備えている。
【0015】
なお、本実施形態では、船外機20が動力源としてエンジン30を有する例について説明する。但し、動力源は、回転力を発生させることができるものである限り、特に限定されない。例えば、動力源は、電動モーターであってもよい。
【0016】
エンジン30は、図6に示すスロットルボディ87を有する燃料噴射式のエンジンである。エンジン30では、スロットル開度を調節することで、エンジン回転速度及びエンジン出力が調節される。エンジン30は、回転力を発生させる。図2に示すように、エンジン30は、クランクシャフト31を備えている。エンジン30は、発生した回転力を、クランクシャフト31を通じて出力する。
【0017】
動力伝達機構32は、エンジン30と推進部33との間に配置されている。動力伝達機構32は、エンジン30において発生した回転力を推進部33に伝達する。図3に示すように、動力伝達機構32は、シフト機構34と、減速機構37と、連動機構38とを備えている。
【0018】
図2に示すように、シフト機構34は、エンジン30のクランクシャフト31に接続されている。図3にも示すように、シフト機構34は、変速比切り替え機構35と、シフトポジション切り替え機構36とを備えている。
【0019】
変速比切り替え機構35は、エンジン30と推進部33との間の変速比を高速変速比(HIGH)と低速変速比(LOW)との間で切り替える。ここで、「高速変速比」とは、出力側回転速度の入力側回転速度に対する比が比較的小さい変速比をいう。一方、「低速変速比」とは、出力側回転速度の入力側回転速度に対する比が比較的大きい変速比をいう。
【0020】
シフトポジション切り替え機構36は、シフトポジションをフォワード、リバース及びニュートラルとの間で切り替える。
【0021】
減速機構37は、シフト機構34と推進部33との間に配置されている。減速機構37は、シフト機構34からの回転力を、回転速度を減速して推進部33側に伝達する。なお、減速機構37の構造は、特に限定されない。減速機構37は、例えば、遊星歯車機構を有するものであってもよい。また、減速機構37は、例えば、減速ギア対を有するものであってもよい。
【0022】
連動機構38は、減速機構37と推進部33との間に配置されている。連動機構38は、図示しないベベルギア組を備えている。連動機構38は、減速機構37からの回転力を、方向を変えて推進部33に伝達させる。
【0023】
推進部33は、プロペラ軸40と、プロペラ41とを備えている。プロペラ軸40は、連動機構38からの回転力をプロペラ41に伝達する。推進部33は、エンジン30において発生した回転力を推進力に変換する。
【0024】
図2に示すように、プロペラ41は、第1のプロペラ41aと第2のプロペラ41bとの2つのプロペラを含んでいる。第1のプロペラ41aの螺旋方向と、第2のプロペラ41bの螺旋方向とは相互に逆方向である。動力伝達機構32から出力される回転力が正転方向であるとき、第1のプロペラ41aと第2のプロペラ41bとは互いに逆方向に回転し、前進方向の推進力が発生する。よって、シフトポジションがフォワードとなる。一方、動力伝達機構32から出力される回転力が逆転方向であるとき、第1のプロペラ41aと第2のプロペラ41bとのそれぞれは、前進時とは逆方向に回転する。これによって、後進方向の推進力が発生する。よって、シフトポジションがリバースとなる。
【0025】
なお、プロペラ41は、単一のプロペラまたは3つ以上のプロペラにより構成されていてもよい。
【0026】
(シフト機構34の詳細構造)
次に、主として図4を参照しながら、本実施形態におけるシフト機構34の構造について詳細に説明する。なお、図4は、シフト機構34を模式化して表している。このため、図4に示すシフト機構34の構造は、実際のシフト機構34の構造と厳密には一致しない。
【0027】
シフト機構34は、シフトケース45を備えている。シフトケース45は、外観視略円柱状である。シフトケース45は、第1のケース45aと、第2のケース45bと、第3のケース45cと、第4のケース45dとを備えている。第1のケース45aと、第2のケース45bと、第3のケース45cと、第4のケース45dとは、ボルトなどによって一体に固定されている。
【0028】
<変速比切り替え機構35>
変速比切り替え機構35は、入力軸としての第1の動力伝達軸50と、出力軸としての第2の動力伝達軸51と、変速ギア群としての遊星歯車機構52と、変速比切り替え用油圧式クラッチ53とを備えている。
【0029】
遊星歯車機構52は、第1の動力伝達軸50の回転を、低速変速比(LOW)または高速変速比(HIGH)で第2の動力伝達軸51に伝達する。遊星歯車機構52の変速比は、変速比切り替え用油圧式クラッチ53の断続により切り替えられる。
【0030】
第1の動力伝達軸50と第2の動力伝達軸51とは、同軸上に配置されている。第1の動力伝達軸50は、第1のケース45aによって回転可能に支持されている。第2の動力伝達軸51は、第2のケース45bと第3のケース45cとによって回転可能に支持されている。第1の動力伝達軸50は、クランクシャフト31に接続されている。また、第1の動力伝達軸50は、遊星歯車機構52に接続されている。
【0031】
遊星歯車機構52は、サンギア54と、リングギア55と、キャリア56と、複数のプラネタリギア57とを備えている。リングギア55は、略円筒状に形成されている。リングギア55の内周面に、プラネタリギア57と噛合する歯が形成されている。リングギア55は、第1の動力伝達軸50に接続されている。リングギア55は、第1の動力伝達軸50と共に回転する。
【0032】
サンギア54は、リングギア55の内部に配置されている。サンギア54とリングギア55とは同軸で回転する。サンギア54は、ワンウェイクラッチ58を介して、第2のケース45bに取り付けられている。ワンウェイクラッチ58は、正転方向の回転を許容する一方、逆転方向の回転を規制する。このため。サンギア54は、正転可能である一方、逆転不能である。
【0033】
サンギア54とリングギア55との間には、複数のプラネタリギア57が配置されている。各プラネタリギア57は、サンギア54とリングギア55との両方と噛合している。各プラネタリギア57は、キャリア56によって回転可能に支持されている。このため、複数のプラネタリギア57は、各々が回転しながら、第1の動力伝達軸50の軸心回りを相互に同速度で旋回する。
【0034】
なお、本明細書において、「回転」とは、部材が、その部材内に位置する軸を中心として回ることをいう。一方、「旋回」とは、部材が、その部材の外に位置する軸を中心として回ることをいう。
【0035】
キャリア56は、第2の動力伝達軸51に接続されている。キャリア56は、第2の動力伝達軸51と共に回転する。
【0036】
キャリア56とサンギア54との間には、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が配置されている。本実施形態では、この変速比切り替え用油圧式クラッチ53は、湿式多板式クラッチである。但し、本発明において、変速比切り替え用油圧式クラッチ53は、湿式多板式クラッチに限定されない。変速比切り替え用油圧式クラッチ53は、乾式多板式クラッチであってもよく、所謂ドッグクラッチであってもよい。
【0037】
なお、本明細書において「多板式クラッチ」とは、相互に回転可能な第1の部材及び第2の部材と、第1の部材と共に回転する1または複数の第1のプレートと、第2の部材と共に回転する1または複数の第2のプレートとを備え、第1のプレートと第2のプレートとが圧接されることによって第1の部材と第2の部材との回転が規制されるクラッチをいう。本明細書において「クラッチ」は、回転力が入力される入力軸と、回転力が出力される出力軸との間に配置され、前記入力軸と前記出力軸との間を断続させるものに限定されない。
【0038】
変速比切り替え用油圧式クラッチ53は、油圧式のシリンダ53aと、クラッチプレート及びフリクションプレートを含むプレート群53bとを備えている。油圧式シリンダ53aが駆動されることで、プレート群53bが圧接状態となる。このため、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が接続状態となる。一方、油圧式シリンダ53aが非駆動状態のときは、プレート群53bが非圧接状態となる。このため、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が切断状態となる。
【0039】
変速比切り替え用油圧式クラッチ53が接続状態となると、サンギア54とキャリア56とが相互に固定された状態となる。このため、プラネタリギア57の旋回に伴って、サンギア54とキャリア56とが一体に回転する。
【0040】
<シフトポジション切り替え機構36>
シフトポジション切り替え機構36は、フォワードと、リバースと、ニュートラルとを切り替える。シフトポジション切り替え機構36は、入力軸としての第2の動力伝達軸51と、出力軸としての第3の動力伝達軸59と、回転方向切り替え機構としての遊星歯車機構60と、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とを備えている。
【0041】
第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とは、入力軸としての第2の動力伝達軸51と、出力軸としての第3の動力伝達軸59との間を断続する。具体的には、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とが断続されることによって、第2の動力伝達軸51と第3の動力伝達軸59との間の接続状態が変化する。言い換えれば、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とは、第2の動力伝達軸51と第3の動力伝達軸59との間の接続状態を変化させるためのものである。具体的には、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との接続力が調整されることによって、第2の動力伝達軸51の回転速度に対する第3の動力伝達軸59の回転速度が調節される。より具体的には、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との接続力が調整されることによって、第2の動力伝達軸51の回転方向に対する第3の動力伝達軸59の回転方向、及び第2の動力伝達軸51の回転速度の絶対値に対する第3の動力伝達軸59の回転速度の絶対値の比が調節される。
【0042】
遊星歯車機構52は、第2の動力伝達軸51の回転方向に対する第3の動力伝達軸59の回転方向を切り替える。具体的には、遊星歯車機構52は、第2の動力伝達軸51の回転力を、正転方向または逆転方向の回転力として第3の動力伝達軸59に伝達する。遊星歯車機構52が伝達する回転力の回転方向は、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との断続によって切り替えられる。
【0043】
第3の動力伝達軸59は、第3のケース45cと第4のケース45dとにより回転可能に支持されている。第2の動力伝達軸51と、第3の動力伝達軸59とは同軸上に配置されている。本実施形態では、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62は湿式多板式クラッチである。但し、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62は、それぞれドッグクラッチであってもよい。
【0044】
なお、第2の動力伝達軸51は、変速比切り替え機構35とシフトポジション切り替え機構36とが共有する部材である。
【0045】
遊星歯車機構60は、サンギア63と、リングギア64と、複数のプラネタリギア65と、キャリア66とを備えている。
【0046】
キャリア66は、第2の動力伝達軸51に接続されている。キャリア66は、第2の動力伝達軸51と共に回転する。このため、第2の動力伝達軸51の回転に伴って、キャリア66が回転すると共に、複数のプラネタリギア65が相互に同じ速度で旋回する。
【0047】
複数のプラネタリギア65は、リングギア64と、サンギア63とに噛合している。リングギア64と第3のケース45cとの間には、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が配置されている。第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61は、油圧式のシリンダ61aと、クラッチプレートとフリクションプレートとを含むプレート群61bとを備えている。この油圧式のシリンダ61aが駆動されることで、プレート群61bが圧接状態となる。このため、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が接続状態となる。その結果、リングギア64が第3のケース45cに対して固定され、回転不能となる。一方、油圧式のシリンダ61aが非駆動状態のときは、プレート群61bが非圧接状態となる。このため、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が非接続状態となる。その結果、リングギア64が第3のケース45cに対して非固定状態となり、回転可能となる。
【0048】
キャリア66とサンギア63との間には、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が配置されている。第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62は、油圧式のシリンダ62aと、クラッチプレート及びフリクションプレートを含むプレート群62bとを備えている。この油圧式のシリンダ62aが駆動されることで、プレート群62bが圧接状態となる。このため、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が接続状態となる。その結果、キャリア66とサンギア63とが一体に回転する。一方、油圧式のシリンダ62aが非駆動状態のときは、プレート群62bが非圧接状態となる。このため、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が非接続状態となる。その結果、リングギア64とサンギア63とが相互に回転可能となる。
【0049】
なお、遊星歯車機構60の減速比は、1:1に限定されない。遊星歯車機構60は、1:1とは異なる減速比を有するものであってもよい。また、遊星歯車機構60が正転方向の回転として回転力を伝達する場合と、逆転方向の回転として回転力を伝達させる場合とで、遊星歯車機構60の減速比は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
本実施形態では、遊星歯車機構60が1:1とは異なる減速比を有し、且つ遊星歯車機構60が正転方向の回転として回転力を伝達する場合と、逆転方向の回転として回転力を伝達させる場合とで減速比が異なる場合について説明する。
【0051】
具体的に、本実施形態では、第1の動力伝達軸50の回転速度と、第3の動力伝達軸59の回転速度との比は、以下のようになっている。
高速フォワード : 1:1、減速比1
高速リバース : 1:1.08、減速比0.93
低速フォワード : 1:0.77、減速比1.3
低速リバース : 1:0.83、減速比1.21
【0052】
図3に示すように、シフト機構34は、制御装置91によって制御される。具体的には、変速比切り替え用油圧式クラッチ53と、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との断続が制御装置91によって制御される。
【0053】
制御装置91は、アクチュエータ70と、制御部としてのelectronic control unit(ECU)86とを備えている。アクチュエータ70は、変速比切り替え用油圧式クラッチ53と、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とを断続させる。ECU86は、アクチュエータ70を制御する。
【0054】
具体的には、図6に示すように、油圧式シリンダ53a、61a、62aは、アクチュエータ70によって駆動される。アクチュエータ70は、オイルポンプ71と、オイル経路75と、変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とを備えている。
【0055】
オイルポンプ71は、オイル経路75によって油圧式シリンダ53a、61a、62aに接続されている。変速比切り替え用電磁バルブ72は、オイルポンプ71と油圧式シリンダ53aとの間に配置されている。この変速比切り替え用電磁バルブ72によって油圧式シリンダ53aの油圧が調節される。後進シフト接続用電磁バルブ73は、オイルポンプ71と油圧式シリンダ61aとの間に配置されている。後進シフト接続用電磁バルブ73によって油圧式シリンダ61aの油圧が調節される。前進シフト接続用電磁バルブ74は、オイルポンプ71と油圧式シリンダ62aとの間に配置されている。前進シフト接続用電磁バルブ74によって油圧式シリンダ62aの油圧が調節される。
【0056】
変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とのそれぞれは、オイル経路75の経路面積を徐変可能である。このため、変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とを用いることによって、油圧式シリンダ53a、61a、62aの押圧力を徐変させることができる。従って、油圧式クラッチ53,61,62の接続力の徐変が可能となっている。よって、図7に示すように、第2の動力伝達軸51の回転速度に対する第3の動力伝達軸59の比を調節することができる。その結果、入力軸としての第2の動力伝達軸51の回転速度に対する出力軸としての第3の動力伝達軸59の回転速度の比を実質的に連続的に調節することができる。
【0057】
本実施形態では、変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とのそれぞれは、PWM(Pulse Width Modulation)制御されるソレノイドバルブにより構成されている。但し、変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とのそれぞれは、PWM制御されるソレノイドバルブ以外のバルブにより構成されていてもよい。例えば、変速比切り替え用電磁バルブ72と、後進シフト接続用電磁バルブ73と、前進シフト接続用電磁バルブ74とのそれぞれは、オン−オフ制御されるソレノイドバルブによって構成されていてもよい。
【0058】
(シフト機構34の変速動作)
次に、シフト機構34の変速動作について、主として図4と図7を参照しつつ詳細に説明する。図7は、油圧式クラッチ53,61,62の接続状態と、シフト機構34のシフトポジションとを表す表である。シフト機構34では、第1〜第3の油圧式クラッチ53,61,62の断続によって、シフトポジションが切り替えられる。
【0059】
<低速変速比と高速変速比との切り替え>
低速変速比と高速変速比との切り替えは変速比切り替え機構35において行われる。具体的には、変速比切り替え用油圧式クラッチ53の操作によって低速変速比と高速変速比とが切り替えられる。詳細には、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が切断状態にある場合に、変速比切り替え機構35の変速比が「低速変速比」となる。一方、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が接続状態である場合に、変速比切り替え機構35の変速比が「高速変速比」となる。
【0060】
図4に示すように、リングギア55は第1の動力伝達軸50に接続されている。このため、第1の動力伝達軸50の回転に伴って、リングギア55が正転方向に回転する。ここで、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が切断状態にある場合、キャリア56とサンギア54とは相互に回転可能となっている。よって、プラネタリギア57が回転すると共に旋回する。その結果、サンギア54が逆転方向に回転しようとする。
【0061】
しかしながら、図7に示すように、ワンウェイクラッチ58は、サンギア54の逆転方向回転を阻止する。このため、サンギア54はワンウェイクラッチ58によって固定される。その結果、リングギア55の回転に伴ってサンギア54とリングギア55との間でプラネタリギア57が旋回することで、キャリア56と共に第2の動力伝達軸51が回転する。この場合、プラネタリギア57は旋回すると共に回転するため、第1の動力伝達軸50の回転は、減速されて第2の動力伝達軸51に伝達される。従って、変速比切り替え機構35の変速比が「低速変速比」となる。
【0062】
一方、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が接続状態にある場合、プラネタリギア57とサンギア54とが一体に回転する。よって、プラネタリギア57の回転が禁止される。従って、プラネタリギア57とキャリア56とサンギア54とがリングギア55の回転に伴ってリングギア55と同じ回転速度で正転方向に回転する。ここで、図7に示すように、ワンウェイクラッチ58は、サンギア54の正転を許容する。その結果、第1の動力伝達軸50と第2の動力伝達軸51とが実質的に同じ回転速度で正転方向に回転する。言い換えれば、第2の動力伝達軸51に第1の動力伝達軸50の回転力が同じ回転速度且つ同じ回転方向で伝達される。従って、変速比切り替え機構35の変速比が「高速変速比」となる。
【0063】
<フォワード、リバース及びニュートラルの切り替え>
フォワード、リバース及びニュートラルの切り替えは、シフトポジション切り替え機構36において行われる。具体的には、図4に示す第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との操作によってフォワード、リバース及びニュートラルの切り替えが行われる。
【0064】
図7に示すように、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が切断状態である一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が接続状態である場合に、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「フォワード」となる。図4に示す第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が切断状態である場合、リングギア64は、シフトケース45に対して回転可能である。第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62は接続状態にある場合、キャリア66とサンギア63及び第3の動力伝達軸59とは一体に回転する。このため、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が接続状態である一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62は接続状態にある場合、第2の動力伝達軸51とキャリア66とサンギア63と第3の動力伝達軸59とが一体に正転方向に回転する。従って、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「フォワード」となる。
【0065】
図7に示すように、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が接続状態である一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が切断状態である場合に、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「リバース」となる。図4に示す第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が接続状態である一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62は切断状態にある場合、リングギア64はシフトケース45によって回転規制される。一方、サンギア63は、キャリア66に対して回転可能となる。従って、第2の動力伝達軸51が正転方向に回転するにともなって、プラネタリギア65が回転しながら旋回する。その結果、サンギア63と第3の動力伝達軸59とが逆転方向に回転する。従って、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「リバース」となる。
【0066】
また、図7に示すように、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との両方が切断状態である場合に、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「ニュートラル」となる。図4に示す第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61と第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との両方が切断状態にある場合、遊星歯車機構60は空転状態となる。このため、第2の動力伝達軸51の回転は第3の動力伝達軸59へと伝達されない。従って、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが「ニュートラル」となる。
【0067】
以上説明したように、低速変速比と高速変速比との間の切り替え及びシフトポジションの切り替えが行われる。従って、図7に示すように、変速比切り替え用油圧式クラッチ53及び第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が切断状態にある一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が接続状態にある場合に、シフト機構34のシフトポジションが「低速フォワード」となる。
【0068】
変速比切り替え用油圧式クラッチ53と第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とが接続状態である一方、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が切断状態である場合に、シフト機構34のシフトポジションが「高速フォワード」となる。
【0069】
第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61及び第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62との両方が切断状態の場合に、変速比切り替え用油圧式クラッチ53の接続状態に関わらず、シフト機構34のシフトポジションが「ニュートラル」となる。
【0070】
変速比切り替え用油圧式クラッチ53と第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62とが切断状態にある一方、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61が接続状態にある場合に、シフト機構34のシフトポジションが「低速リバース」となる。
【0071】
また、変速比切り替え用油圧式クラッチ53と第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61とが接続状態にある一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62が切断状態にある場合に、シフト機構34のシフトポジションが「高速リバース」となる。
【0072】
(船舶1の制御ブロック)
次に主として図6を参照しながら船舶1の制御ブロックについて説明する。
【0073】
まず、図6を参照して、船外機20の制御ブロックについて説明する。船外機20には、制御部としてのECU86が配置されている。ECU86は、図3に描画された制御装置91の一部を構成している。このECU86によって、船外機20の各機構が制御される。
【0074】
ECU86は、演算部としてのCPU(central processing unit)86aとメモリ86bとを備えている。メモリ86bには、後述するマップなどの各種設定などが記憶されている。メモリ86bは、CPU86aに接続されている。CPU86aは、各種演算を行う際に、メモリ86bに格納された必要な情報を読み出す。また、CPU86aは、必要に応じて、演算結果をメモリ86bに出力し、メモリ86bに演算結果などを記憶させる。
【0075】
ECU86には、エンジン30のスロットルボディ87が接続されている。スロットルボディ87は、このECU86によって制御される。これにより、エンジン30のスロットル開度が制御される。具体的には、コントロールレバー83の操作量と、感度切り替え信号とに基づいてエンジン30のスロットル開度が制御される。その結果、エンジン30の出力が制御される。
【0076】
また、ECU86には、エンジン回転速度センサ88が接続されている。エンジン回転速度センサ88は、図2に示すエンジン30のクランクシャフト31の回転速度を検出する。エンジン回転速度センサ88は、検出したエンジン回転速度をECU86に出力する。
【0077】
ECU86には、船速センサ97が接続されている。船速センサ97は、船舶1の推進速度を検出する。船速センサ97は、検出した船舶1の推進速度をECU86に対して出力する。
【0078】
なお、本実施形態では、船速センサ97をGPS93とは別に設ける例について説明する。但し、本発明はこれに限定されない、GPS93に船速センサの機能を兼ね備えさせてもよい。
【0079】
図3に示す動力伝達機構32の第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62よりもプロペラ41側には、プロペラ回転速度センサ90が配置されている。プロペラ回転速度センサ90は、直接または間接的にプロペラ41の回転速度を検出する。プロペラ回転速度センサ90は、検出した回転速度をECU86に対して出力する。なお、プロペラ回転速度センサ90は、具体的には、プロペラ41の回転速度、プロペラ軸40の回転速度、第3の動力伝達軸59の回転速度を検出するものであってもよい。
【0080】
また、ECU86には、変速比切り替え用電磁バルブ72と、前進シフト接続用電磁バルブ74と、後進シフト接続用電磁バルブ73とが接続されている。変速比切り替え用電磁バルブ72と、前進シフト接続用電磁バルブ74と、後進シフト接続用電磁バルブ73との開閉及び開度調整は、このECU86によって制御される。
【0081】
図6に示すように、船舶1は、local area network (LAN)80を備えている。LAN80は、船体10に巡らされている。船舶1では、このLAN80を介して装置間の信号の送受信が行われている。
【0082】
LAN80には、船外機20のECU86、コントローラー82及び表示装置81などが接続されている。コントローラー82は、船舶用推進システムとしての上記船外機20と共に、船舶推進装置4を構成している。表示装置81は、ECU86から出力された情報や、後述するコントローラー82から出力された情報を表示させる。具体的には、表示装置81は、船舶1の現在のスピード、シフトポジションなどを表示させる。
【0083】
コントローラー82は、コントロールレバー83と、アクセル開度センサ84と、シフトポジションセンサ85と、検出部としてのglobal positioning system(GPS)93と、入力部92とを備えている。
【0084】
GPS93は、船舶1の位置を随時検出することによって、船舶1の位置、移動などを検出する。なお、「船舶の移動」には、船舶の推進速度、移動距離、移動方向などが含まれる。以下、GPS93によって検出される情報を「GPS情報」として説明する。GPS93は、取得したGPS情報を、LAN80を介してECU86や表示装置81に対して送信する。
【0085】
GPS93には、入力部92が接続されている。入力部92には、操船者によって各種情報が入力される。
【0086】
コントロールレバー83は、操作部83aと、減速スイッチ95と、減速スイッチポジションセンサ96と、保持スイッチ94とを備えている。
【0087】
操作部83aには、船舶1の操船者の操作によってシフトポジションやアクセル開度が入力される。具体的には、図8に示すように、操船者が操作部83aを操作すると、操作部83aの位置に応じたアクセル開度及びシフトポジションが、アクセル開度センサ84とシフトポジションセンサ85とのそれぞれによって検出される。アクセル開度センサ84とシフトポジションセンサ85とのそれぞれは、LAN80に接続されている。アクセル開度センサ84とシフトポジションセンサ85とは、それぞれアクセル開度信号とシフトポジション信号とをLAN80に対して送信する。ECU86は、アクセル開度センサ84とシフトポジションセンサ85とから出力されたアクセル開度信号やシフトポジション信号を、LAN80を介して受信する。
【0088】
具体的には、コントロールレバー83の操作部83aが図8において「N」で示された中立位置に位置するときに、シフトポジションセンサ85は、ニュートラルに対応したシフトポジション信号を出力する。操作部83aが図8において「F」で示された前進領域に位置するときに、シフトポジションセンサ85は、フォワードに対応したシフトポジション信号を出力する。操作部83aが図8において「R」で示された後進領域に位置するときに、シフトポジションセンサ85は、リバースに対応したシフトポジション信号を出力する。
【0089】
アクセル開度センサ84は、操作部83aの操作量を検出する。具体的には、アクセル開度センサ84は、操作部83aが中央位置からどれだけ操作されたかを表す操作角度θを検出する。操作部83aは、その操作角度θをアクセル開度信号として出力する。
【0090】
図8及び図9に示すように、減速スイッチ95は、操作部83aの略水平方向に延びる握手部83bの下部に配置されている。減速スイッチ95は、船舶1を減速させるためのスイッチである。減速スイッチポジションセンサ96は、図9に示す減速スイッチ95の操作量Lを検出する。減速スイッチポジションセンサ96は、減速スイッチ95の操作量Lに応じた電圧の減速信号を、LAN80を介してECU86に対して送信する。具体的には、図10に示すように、減速スイッチポジションセンサ96は、減速スイッチ95の操作量Lが大きくなるほど高い電圧の減速信号を、LAN80を介してECU86に対して送信する。なお、減速スイッチ95には、所謂遊び領域が設けられている。具体的には、図10に示すように、減速スイッチ95の操作量Lが所定の操作量L1に達するまで、減速スイッチポジションセンサ96は、減速スイッチ95の操作を検出せず、減速信号を送信しない。
【0091】
ECU86は、減速スイッチ95が操船者によって操作された場合は、減速スイッチポジションセンサ96からの減速信号に基づいてスロットル開度を制御する。具体的には、図11に示すような、減速信号の電圧とスロットル開度低下率とを規定するマップがメモリ86bに記憶されている。CPU86aは、このマップに基づいて、スロットル開度を低下させる。詳細には、CPU86aは、減速スイッチ95の操作量Lが大きくなり、減速スイッチポジションセンサ96からの減速信号の電圧が大きくなるにともなって、スロットル開度を大きく低下させる。これにより、船舶1の推進力が低下する。その結果、船舶1の推進速度が徐々に低下する。
【0092】
図8及び図9に示すように、保持スイッチ94は、握手部83bの側部に配置されている。保持スイッチ94は、船舶1の移動を抑制するためのスイッチである。
【0093】
操船者によって保持スイッチ94が操作されると、保持スイッチ94から定点保持信号がLAN80を介してECU86に送信される。ECU86は、定点保持信号を受信した場合、後の詳述する定点保持制御を実施する。
【0094】
(船舶1の制御)
次に、船舶1の制御について説明する。
【0095】
<船舶1の基本的制御>
船舶1の操船者によりコントロールレバー83が操作されると、アクセル開度センサ84とシフトポジションセンサ85とによってコントロールレバー83の操作状況に応じたアクセル開度とシフトポジションとが検出される。検出されたアクセル開度とシフトポジションとは、LAN80に送信される。ECU86は、LAN80を介して出力されたアクセル開度信号とシフトポジション信号とを受信する。ECU86は、アクセル開度信号と図11に示すマップとから得られるアクセル開度に基づいてスロットルボディ87及びシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62を制御する。ECU86は、これによってプロペラ回転速度の制御を行う。
【0096】
また、ECU86は、シフトポジション信号に応じてシフト機構34を制御する。具体的には、「低速フォワード」のシフトポジション信号を受信した場合は、変速比切り替え用電磁バルブ72を駆動させて変速比切り替え用油圧式クラッチ53を切断すると共に、支部と接続用電磁バルブ73,74を駆動させて第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61を切断させる一方、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62を接続させる。これにより、シフトポジションが「低速フォワード」に切り替えられる。
【0097】
<船舶1の具体的制御>
(1)定点保持制御
本実施形態では、ECU86は、操船者によって保持スイッチ94がオンされた場合に、所定の位置に船体10が保持されるようにシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を制御する。本実施形態では、この制御を「定点保持制御」という。具体的に、本実施形態では、ECU86は、操船者によって保持スイッチ94がオンされたときの船体10の位置に船体10が保持されるようにシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を制御する。
【0098】
以下、図12〜図14を参照しながら、本実施形態における定点保持制御についてさらに詳細に説明する。
【0099】
図12に示すように、まずステップS1において、ECU86によって、保持スイッチ94がオン状態にあるか否かが判断される。ステップS1において、保持スイッチ94がオフ状態にあると判断された場合には、再びステップS1に戻る。
【0100】
一方、ステップS1において、保持スイッチ94がオン状態にあると判断された場合には、ステップS2に進む。ステップS2では、ECU86によって、船速の積分が開始される。具体的には、ステップS2において、ECU86は、船速センサ47から船舶1の推進速度である船速を取得する。ECU86は、取得した船速を時間で積分することによって、船速積分値を算出する。なお、図13に示すように、船舶1の推進方向が前進方向である場合は、船速積分値はプラスとして算出される。それに対して、船舶1の推進方向が後進方向である場合は、船速積分値はマイナスの値として算出される。
【0101】
ステップS2に続いて、ステップS3が行われる。ステップS3では、ECU86によって、船速積分値が0であるか否かが判断される。ステップS3において、船速積分値が0であると判断された場合は、ステップS1に戻る。
【0102】
一方、ステップS3において、船速積分値が0でないと判断された場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、ECU86によって、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が算出される。具体的には、ECU86のCPU86aは、メモリ86bに記憶された図14に示すマップを読み出す。ここで、図14に示すマップは、船速積分値と、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力との関係を定めたものである。CPU86aは、この図14に示すマップに対して算出された船速積分値を当てはめることによってシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を算出する。
【0103】
次に、ステップS5が行われる。ステップS5では、ECU86は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が、ステップS4において算出されたシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力となるようにシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を変更する。
【0104】
なお、本実施形態では、ステップS5において、ECU86は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を増大させる際に、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を目標とする接続力にまで漸増させる。但し、ステップS5において、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を増大させる際に、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を目標とする接続力にまで一気に増大させてもよい。
【0105】
ステップS5が終了すると、再びステップS1に戻る。このため、保持スイッチ94がオン状態にある場合は、ステップS2〜ステップS5が繰り返し行われる。
【0106】
なお、この定点保持制御が行われている期間にわたって、ECU86によって、スロットル開度は、略一定に保持される。具体的には、定点保持制御が行われている期間にわたって、スロットル開度は、アイドル時のスロットル開度と実質的に同じ開度に保持される。
【0107】
以下、図15に例示するタイムチャートを参照しつつ、本実施形態における定点保持制御について具体的に説明する。
【0108】
図15に示す例では、時間t10において、保持スイッチ94がオンされている。図15に示す例では、時間t11になるまでは船速は発生していない。時間t11〜において、波などの影響によって、後進方向の船速が発生している。このため、時間t11からマイナスの船速積分値が算出されている。そして、船速が0となる時間t12まで、マイナスの船速積分値が大きくなっている。ここで、船速積分値は、船舶1の移動距離に対応する。すなわち、船速積分値がマイナス側に大きくなるということは、船体10がその分後進方向に移動したことを意味する。
【0109】
図15(c)に示すように、時間t11〜時間t12において、船速積分値がマイナス側に大きくなっている。このため、時間t11〜時間t12において、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力が高められる。これにより、プロペラ41において、前進方向の推進力が発生する。その結果、時間t12において、図15(b)に示すように、船速は0となる。そして、時間t12以降は、前進方向の船速が発生している。このため、図15(c)に示すように、時間t12〜時間t13の間において、船速積分値が0に近づいていく。すなわち、船体10が時間t10における船体10の位置である定点に向かって推進している。
【0110】
なお、時間t12〜時間t13の間では、図15(c)に示すように、船速積分値が0に近づいていく。このため、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力は徐々に弱くなる。
【0111】
図15に示すタイムチャートでは、時間t13において船速積分値が0となる。そして、時間t13〜時間t14の間において、船速及び船速積分値が0となる。このため、時間t13〜時間t14の間は、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61及び第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の両方が切断された状態となる。
【0112】
図15に示す例では、時間t14において、今度は前進方向の船速が発生している。このため、時間t14から船体10は前進方向に移動し始める。その結果、図15(c)に示すように、プラスの船速積分値が算出される。従って、時間t14からにおいては第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力が高められる。これによって、時間t15からの時間において後進方向の船速が発生し、船舶1の位置が定点に向かう。
【0113】
なお、図15に示す例では、保持スイッチ94がオンされている状態では、スロットル開度は略一定に保持される。具体的には、保持スイッチ94がオンされている状態では、スロットル開度は、アイドル時のスロットル開度と実質的に同じ開度に保持される。
【0114】
(2)減速制御
次に、本実施形態において、減速スイッチ95が操船者によって操作されたときに行われる減速制御について、図16〜図20を参照しながら詳細に説明する。
【0115】
図16に示すように、まずステップS10において、ECU86によって、減速スイッチ95がオンされているか否かが判断される。すなわち、ステップS10において、減速スイッチポジションセンサ96の検出電圧が図10に示す電圧V1以上であるか否かが判断される。ステップS10において、減速スイッチがオフ状態にあると判断された場合は、ステップS11に進む。
【0116】
ステップS11では、ECU86によって、減速スイッチ95が操作されていないときの通常のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の制御が行われる。
【0117】
一方、ステップS10において、減速スイッチ95がオン状態にあると判断された場合は、ステップS20に進む。ステップS20では、ECU86によって減速制御が行われる。ステップS20が終了すると、再びステップS10に戻る。
【0118】
次に、ステップS20において行われる減速制御について、図17を主として参照しながら詳細に説明する。
【0119】
本実施形態における減速制御では、まずステップS21において、ECU86によって船舶1の推進方向が確認される。
【0120】
次にステップS22が行われる。ステップS22では、ECU86によって、船速センサ97の出力に基づいて、船速が閾値以上であるか否かが判断される。ここで、ステップS22における閾値は、船舶1の特性などに応じて適宜設定することができる。ステップS22における閾値は、例えば0.5〜1.5km/h程度に設定することができる。
【0121】
ステップS22において、船速が閾値以上と判断された場合は、ステップS30に進む。ステップS30では、ECU86によってその内に詳述する船速保持制御が行われる。
【0122】
一方、ステップS22において、船速が閾値以上であると判断された場合は、ステップS23に進む。ステップS23では、ECU86は、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションと、船舶1の推進方向とが同じ側、またはシフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがニュートラルであるか否かが判断される。ステップS23において、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションと、船舶1の推進方向とが逆側であると判断された場合は、ステップS24を行わず、ステップS25に進む。すなわち、ステップS23からステップS25に進む場合は、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがフォワードである一方、船舶1の推進方向が後進方向である場合及びシフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがリバースである一方、船舶1の推進方向が前進方向である場合である。
【0123】
一方、ステップS23において、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションと船舶1の推進方向とが同じ側であるか、またはシフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがニュートラルである場合は、ステップS24に進む。すなわち、ステップS23からステップS24に進む場合とは、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがフォワードであるとともに、船舶1の推進方向が前進方向である場合、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがリバースであるとともに船舶1の推進方向が後進方向である場合、及びシフトポジション切り替え機構36のシフトポジションがニュートラルである場合である。
【0124】
ステップS24では、ECU86によって、シフトチェンジが行われる。具体的には、ステップS24では、ECU86によって、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが、船舶1の推進方向と逆側となるようにシフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが切り換えられる。すなわち、ステップS24においては、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションが、船舶1の推進方向が前進方向である場合はリバースとされる。一方、船舶1の推進方向が前進方向である場合は、シフトポジション切り替え機構36のシフトポジションはリバースとされる。ステップS24に続いて、ステップS25が行われる。
【0125】
ステップS25では、ECU86によって、目標スロットル開度が算出される。具体的には、ECU86のCPU86aは、メモリ86bに記憶された図11に示すマップを読み出す。CPU86aは、この図11に示すマップに対して減速スイッチポジションセンサ96から出力される減速信号の電圧を適用することによって、目標スロットル開度を算出する。
【0126】
続いて、ステップS26が行われる。ステップS26では、ECU86によって、スロットル開度の上限値が設定される。具体的には、ステップS26では、ECU86のCPU86aは、メモリ86bに記憶された図18に示すマップを読み出す。ここで、図18に示すマップは、推進速度と、スロットル開度の上限値と定めたマップである。CPU86aは、この図18に示すマップに船速センサ97から出力された船舶1の推進速度を当てはめることによって、スロットル開度上限値を算出する。
【0127】
ステップS26に続いて、ステップS27が行われる。ステップS27では、ECU86によって、ステップS25で算出されたスロットル開度とステップS26で算出されたスロットル開度上限値とに基づいて、スロットル開度の調整が行われる。具体的には、CPU86aは、ステップS25において算出された目標スロットル開度が、ステップS26で算出されたスロットル開度上限値を下回っている場合は、スロットル開度をステップS25で算出された目標スロットル開度に調整する。一方、CPU86aは、ステップS25において算出された目標スロットル開度が、ステップS26において算出されたスロットル開度上限値を上回っている場合は、スロットル開度をステップS26において算出されたスロットル開度上限値に調整する。
【0128】
ステップS27が終了すると、図17及び図16に示すように、ステップS10に戻る。すなわち、減速スイッチ95がオン状態である期間に渡って、継続制御が折り返し行われる。
【0129】
次に、図17に示すステップS30において行われる船速保持制御の具体的内容について、図19及び図20を参照しながら詳細に説明する。
【0130】
図19に示すように、船速保持制御では、まずステップS31において、ECU86によって、現在のスロットル開度が保持される。
【0131】
次に、ステップS32が行われる。ステップS32では、ECU86によって、船速センサ97から出力される船速信号に基づいて、船速が閾値以下であるか否かが判断される。ステップS32において、船速が閾値以下であると判断された場合は、ステップS33〜ステップS36が行われず、ステップS37に進む。
【0132】
一方、ステップS32において、船速が閾値より大きいと判断された場合は、ステップS33に進む。
【0133】
なお、ステップS32における閾値は、船舶1の特性などに応じて適宜設定することができる。ステップS32における閾値は、例えば0.5〜1.5km/h程度に設定することができる。
【0134】
ステップS33では、ECU86によって、船速センサ97から出力される船速に基づいて、船舶1の推進方向が確認される。
【0135】
次に、ステップS34が行われる。ステップS34では、ECU86によって、船舶1の推進方向が判断される。ステップS34において、船舶1の推進方向が前進方向であると判断された場合は、ステップS35に進む。ステップS35では、CPU86aによって、第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力が算出される。一方、ステップS34において、推進方向が後進方向であると判断された場合は、ステップS36に進む。ステップS36では、ECU86によって、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力が算出される。
【0136】
具体的に、本実施形態では、ステップS35及びステップS36におけるシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力は以下のようにして算出される。すなわち、CPU86aは、プロペラ回転速度センサ90から出力される現在のプロペラ回転速度に(−1)を乗じて得られる。(−プロペラ回転速度)にゲインを乗ずる。ここで、ゲインの種類は特に限定されない。
【0137】
CPU86aは、算出された(ゲイン)×(−プロペラ回転速度)を、メモリ86bに記憶された図20に示すマップに当てはめることによって、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を算出する。
【0138】
ステップS35及びステップS36に続いて、ステップS37が行われる。ステップS37では、ECU86において、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が調節される。
【0139】
例えば特許文献1には、GPSからの位置信号と位置指令値との偏差に基づいてアクチュエータが駆動される定点保持制御システムが開示されている。特許文献1には、アクチュエータは、スラスタや舵や推進機の駆動手段であると記載されている。すなわち、特許文献1に開示された定点保持制御システムでは、位置信号と位置指令値との偏差に基づいてエンジンの出力が調節される。
【0140】
しかしながら、特許文献1に開示された船舶定点保持制御システムのように、エンジンの出力のみを制御したのでは、船舶に微小な推進力を発生させることが困難である。従って、船舶を定点に正確に保持することが困難である。
【0141】
それに対して、本実施形態では、制御装置としてのECU86は、操船者によって保持スイッチ94がオンされた場合に、第1及び第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を調節する。このため、例えばエンジン30の出力を調整する場合と比較して、船外機20において発生する推進力をより細かに微調整することができる。従って、本実施形態によれば、船舶1を定点に正確に保持することが可能となる。
【0142】
なお、本実施形態における定点保持制御では、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力のみが調整される例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。本発明において、定点保持制御は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続部を調整するとともに、エンジン30の出力を調整するものであってもよい。
【0143】
本実施形態では、保持スイッチ94がオンされているときの船体10の位置が定点とされる。このため、操船者は、停船を臨む位置において保持スイッチ94を操作することによって、容易に船舶1を所望の定点に保持することができる。
【0144】
本実施形態では、図12に示すステップS5において、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が目標とする接続力となるまで漸増される。このため、船舶1に発生する推進力の急激な変化を抑制することができる。
【0145】
本実施形態において、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の種類は特に限定されない。但し、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62は、多板式クラッチであることが好ましい。これによれば、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力の微調整が容易となるからである。
【0146】
本実施形態では、図14に示すように、船舶1の移動距離と相関する船速積分値に応じてシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が調整される。具体的には、船舶1の移動距離が大きくなり、船速積分値が大きくなるにつれてシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が大きくされる。このため、船舶1が定点から大きく離れた場合には、船舶1により大きな推進力が加わることとなる。従って、船舶1をより迅速に定点に戻すことが可能となる。
【0147】
また、船舶1の移動距離が小さい場合は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が小さくされる。このため、船舶1に発生する推進力をより小さくすることができる。従って、船舶1を定点により正確に保持することが可能となる。
【0148】
《第2の実施形態》
上記第1の実施形態では、船舶用推進システムとしての船外機20を1機のみ有する船舶1を例に挙げて本発明を実施した好ましい形態の一例について説明した。但し、本発明において、船舶は、複数の船舶用推進システムを有するものであってもよい。本実施形態では、図21に示す2機の船外機20a,20bを有する船舶2について説明する。
【0149】
なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に同じ機能を有する部材を同じ符号で参照し、説明を省略する。また、図2〜図5、図7〜図11及び図16〜図20は、上記第1の実施形態と共通に参照する。
【0150】
図21に示すように、第2の実施形態に係る船舶2は、2つの船外機20a,20bを備えている。船外機20a,20bは、船尾11に相互に並列に取り付けられている。図22に示すように、船外機20a,20bは、LAN80によってコントローラー82に接続されている。船外機20a,20bは、コントローラー82によって制御される。
【0151】
次に、図23〜図32を参照しながら本実施形態における定点保持制御の具体的内容について説明する。
【0152】
本実施形態では、図23に示すように、まずステップS40が行われる。ステップS40では、ECU86によって、保持スイッチ94から出力される信号に基づいて、保持スイッチ94がオンされているか否かが判断される。ステップS40において、保持スイッチ94がオフ状態にあると判断された場合は、再びステップS40が行われる。
【0153】
一方、ステップS40において、保持スイッチ94がオン状態にあると判断された場合は、ステップS41に進む。ステップS41では、ECU86によって、位置偏差ベクトルが算出される。具体的には、図24に示すように、ECU86は、目標位置である定点と、GPS93によって検知される現在の位置とに基づいて、位置偏差ベクトルを算出する。図25に位置偏差ベクトルVを示す。なお、図25におけるPは定点を表わす。図25に示すように、位置偏差ベクトルVには、現在位置と定点Pとの間の距離lと、角度θとが情報として含まれる。角度θが、定点Pが船舶2の現在の位置に対して右側にある場合はプラスの値となる。一方、定点Pが船舶2の現在の位置に対して左側にある場合はマイナスの値となる。
【0154】
図23に示すように、ステップS41に続いてステップS42が行われる。ステップS42では、ECU86によって、図25に示す距離lが0であるか否かが判断される。ステップS42において、距離lが0であると判断された場合は、ステップS40に戻る。
【0155】
一方、ステップS42において、距離lが0ではないと判断された場合は、ステップS43に進む。
【0156】
ステップS43では、ECU86のCPU86aによって、クラッチ接続力オフセット量が算出される。ここで、クラッチ接続力オフセット量とは、右側船外機20aのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力と、左側船外機20bのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力とのオフセット量である。具体的に、ステップS43では、CPU86aは、メモリ86bに記憶された図26に示すマップを読み出す。図26に示すマップは、角度θとクラッチ接続力オフセット量との関係を規定するマップである。CPU86aは、この図26に示すマップに角度θを当てはめることによって、クラッチ接続力オフセット量を算出する。
【0157】
次に、ステップS44が行われる。ステップS44では、ECU86のCPU86aによって、各船外機20a,20bにおけるシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が算出される。このステップS44において算出されるシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力は、右側船外機20aと左側船外機20bとに共通の値である。具体的には、図24に示すように、CPU86aは、距離lにゲイン(K)を乗じる。さらに、CPU86aは、θの絶対値が90°以下である場合は、(L×K)に対して(+1)を乗じる。一方、角度θの絶対値が90°よりも大きい場合は、(L×K)に対して(−1)を乗じる。これにより得られた値(L×K)または(−L×K)に基づいて、各船外機20a,20bにおけるシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力を算出する。そして、ステップS44において算出されたシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力と、ステップS43において算出されたクラッチ接続力オフセット量とを加算することによって、右側船外機20aのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力と、左側船外機20bのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力とを算出する。
【0158】
次に、ステップS45が行われる。ステップS45では、CPU86aによって、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が、算出された各船外機20a、20bのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力となるように調節される。
【0159】
なお、算出されたシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が100%を越える場合は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力は100%に設定される。また、算出されたシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力がマイナスの値になる場合は、逆側のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62の接続力が増大される。例えば、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力が−20%と算出された場合は、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力が20%に調整される。
【0160】
ステップS45が終了すると、ステップS40に戻る。従って、保持スイッチ94がオン状態である期間に渡って、ステップS41〜ステップS45が繰り返し行われる。
【0161】
図23に示す定点保持制御によって右側船外機20a及び左側船外機20bにおいて発生する推進力は、図27〜図31に示すようになる。具体的には、図27及び図28に示すように、定点Pが現在の船舶2の位置に対して右斜め前にある場合は、左側船外機20bの前進推進力が右側船外機20aの前進推進力よりも大きく調整される。
【0162】
図27及び図29に示すように、定点Pが船舶2の現在の位置に対して右斜め後ろにある場合は、左側船外機20bの後進推進力が、右側船外機20aの後進推進力よりも大きく調整される。
【0163】
図27及び図30に示すように、定点Pが船舶2の現在の位置に対して左斜め前にある場合は、右側船外機20aの前進推進力が左側船外機20bの前進推進力よりも大きく調整される。
【0164】
図27及び図31に示すように、定点Pが船舶2の現在の位置に対して左斜め後ろにある場合は、右側船外機20aの後進推進力が左側船外機20bの後進推進力よりも大きく調整される。
【0165】
なお、上述のように、図23に示すステップS41〜ステップS45は、保持スイッチ94がオン状態にある期間に渡って繰り返し行われる。このため、例えば図32に示すように、船舶2が定点Pに到達するまでに船外機20a,20bの推進力が、通常は複数回変更されることとなる。例えば、図32において船舶2がAに示す位置にあるときに、図23に示すステップS41〜ステップS45が一端行われ、船外機20a,20bの推進力が算出される。そして、船舶2の位置が図32に示すPの位置に達したときに、再びステップS41〜ステップS45が行われ、船外機20a,20bの推進力が再度算出される。そして、船舶2の位置が図32にCで示す位置に達し、船舶2が定点Pに戻る。
【0166】
以下、図33に例示するタイムチャートに基づいて、本実施形態における定点保持制御についてさらに具体的に説明する。
【0167】
図33に示す例では、時間t21において、保持スイッチ94がオンされている。
【0168】
図33に示す例では、時間t21〜時間t22の間において、船舶2は、定点Pから左斜め後方に移動している。このため、時間t22〜において、船外機20a,20bのそれぞれにおいて、第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力が高められている。これによって、船舶2に前進側の推進力が発生している。ただし、左側船外機20bの第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力の方が右側船外機20aの第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ62の接続力よりも大きくされている。このため、時間t22〜においては、左側船外機20bの前側推進力の方が、右側船外機20aの前側推進力よりも大きくなる。従って、船舶2が定点Pの方向である右斜め前に移動する。
【0169】
また、図33に示す例では、時間t23〜時間t24において、船舶2は、定点Pから前側に移動している。このため、時間t24〜において、右側船外機20aの第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力が高められるとともに、左側船外機20bの第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力が高められている。時間t24〜においては、右側船外機20aと、左側船外機20bとにおいて、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61の接続力は相互に略同一とされている。従って、時間t24〜においては、船舶2は定点Pの方向である真後ろ方向に推進する。
【0170】
本実施形態のように、船舶に多数の船外機を配置することによって、船体長手方向及び幅方向の両方向において、船舶を定点に正確に保持することが可能となる。
【0171】
≪第1の変形例≫
上記第2の実施形態では、船舶が船外機を2機有する場合について説明した。ただし、船舶は3機以上の船舶用推進システムを有していてもよい。
【0172】
例えば図34に示すように、船舶3は右側船外機20a及び左側船外機20bに加えて第3の船外機20cを有する場合は、定点保持制御において、ECU86において、第3の船外機20cのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62を切断状態に保持させてもよい。すなわち、第3の船外機20cのシフトポジションをニュートラルとしてもよい。
【0173】
≪第2の変形例≫
上記第1の実施形態では、保持スイッチ94と減速スイッチ95とが別個に設けられている例について説明した。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。
【0174】
例えば、減速スイッチ95に保持スイッチ94の機能を兼ねさせてもよい。その場合において、例えば図35に示すように、ステップS22において、船速が閾値未満となった場合に自動的にステップS30の定点保持制御が行われるようにしてもよい。例えば、ステップS22において船速が実質的に0となったときにステップS30の定点保持制御が自動的に行われるようにしてもよい。
【0175】
≪第3の変形例≫
上記第1の実施形態では、保持スイッチ94がオンされたときの船舶2の位置が定点とされる例について説明した。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、操船者が入力部92に対して定点を入力するようにしてもよい。すなわち、入力部92において入力された定点に船舶2が保持されるようにしてもよい。
【0176】
《その他の変形例》
上記実施形態では、シフトポジション切り替え機構36がひとつの遊星歯車機構60と2つのシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ61,62とによって構成されている例について説明した。但し、本発明において、シフトポジション切り替え機構の構成はこれに限定されない。例えば、連動機構部分に配置された前進/後進切り替え機構と、前進/後進切り替え機構とエンジン30との間を断続するクラッチとによってシフトポジション切り替え機構を構成してもよい。
【0177】
上記実施形態では、変速比切り替え機構35を制御するためのマップと、シフトポジション切り替え機構36を制御するためのマップとを船外機20に搭載されたECU86内のメモリ86bに記憶させている。また、電磁バルブ72,73,74を制御するための制御信号を船外機20に搭載されたECU86内のCPU86aから出力させている。
【0178】
但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、船体10に搭載したコントローラー82に、記憶部としてのメモリと、演算部としてのCPUとを、メモリ86b及びCPU86aと共に、またはメモリ86b及びCPU86aに替えて設けてもよい。この場合、コントローラー82に設けられたメモリに変速比切り替え機構35を制御するためのマップと、シフトポジション切り替え機構36を制御するためのマップとを記憶させてもよい。また、コントローラー82に設けられたCPUから電磁バルブ72,73,74を制御するための制御信号を出力させてもよい。
【0179】
上記実施形態では、ECU86がエンジン30と電磁バルブ72,73,74との両方の制御を行う例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、エンジンを制御するECUと、電磁バルブを制御するECUとを別個に設けてもよい。
【0180】
上記実施形態では、コントローラー82が所謂「電子制御式コントローラー」である例について説明した。ここで、「電子制御式コントローラー」とは、コントロールレバー83の操作量を電気信号に変換すると共に、その電気信号をLAN80に出力するコントローラーをいう。
【0181】
但し、本発明において、コントローラー82は電子制御式コントローラーでなくてもよい。コントローラー82は、例えば所謂機械式コントローラーであってもよい。ここで、「機械式コントローラー」とは、コントロールレバーと、コントロールレバーに接続されたワイヤを備え、コントロールレバーの操作量及び操作方向をワイヤの操作量及び操作方向という物理量として船外機に伝達するコントローラーをいう。
【0182】
上記実施形態では、シフト機構34が変速比切り替え機構35を有する例について説明した。但し、シフト機構34は、変速比切り替え機構35を有さないものであってもよい。例えば、シフト機構34は、シフトポジション切り替え機構36のみを有するものであってもよい。
【0183】
なお、本明細書において、クラッチの接続力とは、クラッチの接続状態を表す値である。すなわち、例えば、「変速比切り替え用油圧式クラッチ53の接続力が100%である」とは、プレート群53bが完全な圧接状態となるように油圧式シリンダ53aが駆動され、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が完全に接続された状態を意味する。一方、例えば、「変速比切り替え用油圧式クラッチ53の接続力が0%である」とは、油圧式シリンダ53aが非駆動状態となることによって、プレート群53bのプレート同士が離間して非圧接状態になり、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が完全に切断された状態を意味する。また、例えば、「変速比切り替え用油圧式クラッチ53の接続力が80%である」とは、プレート群53bが圧接状態となるように変速比切り替え用油圧式クラッチ53が駆動され、変速比切り替え用油圧式クラッチ53が完全に接続された状態に対して、入力軸としての第1の動力伝達軸50から出力軸としての第2の動力伝達軸51へ伝達される駆動トルクまたは、第2の動力伝達軸51の回転速度が80%となる状態で接続された、所謂半クラッチ状態であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】第1の実施形態に係る船舶を斜め後方から視たときの図である。
【図2】第1の実施形態に係る船舶の船尾部分を側面視した際の部分断面図である。
【図3】第1の実施形態における推進力発生装置の構成を表す模式的構成図である。
【図4】第1の実施形態におけるシフト機構の模式的断面図である。
【図5】第1の実施形態におけるオイル回路図である。
【図6】第1の実施形態における船舶の制御ブロック図である。
【図7】第1〜第3の油圧式クラッチの接続状態と、シフト機構のシフトポジションとを表す表である。
【図8】コントロールレバーの概略側面図である。
【図9】図8におけるIX矢視図である。
【図10】減速スイッチの操作量と減速スイッチポジションセンサの検出電圧との関係を示すグラフである。
【図11】減速信号の電圧とスロットル開度の低下率を表すグラフである。
【図12】第1の実施形態における船舶の定点保持制御を表すフローチャートである。
【図13】船速積分値を表すグラフである。横軸が時間で縦軸が船速である。
【図14】船速積分値とシフトポジション切り替え用油圧式クラッチの接続力との関係を規定したマップである。
【図15】第1の実施形態における船舶の定点保持制御の一例を表すタイムチャートである。
【図16】第1の実施形態における減速制御を表すフローチャートである。
【図17】第1の実施形態における減速制御を表すフローチャートである。
【図18】推進速度とスロットル開度との関係を規定したマップである。
【図19】第1の実施形態における船速保持制御を表すフローチャートである。
【図20】(ゲイン)×(−プロペラ回転速度)と、シフトポジション切り替え用油圧式クラッチの接続力とを規定したマップである。
【図21】第2の実施形態に係る船舶を斜め後方から視たときの図である。
【図22】第2の実施形態における船舶の制御ブロック図である。
【図23】第2の実施形態における船舶の定点保持制御を表すフローチャートである。
【図24】第2の実施形態における船舶の定点保持制御を表すブロック線図である。
【図25】位置偏差ベクトルを説明するための概念図である。
【図26】角度θと、クラッチ接続力オフセット量との関係を規定したマップである。
【図27】船舶の位置に対する定点の方向と、右側船外機及び左側船外機との推進力との関係を表したマップである。
【図28】船舶が定点に対して左斜め後方に位置するときの右側船外機と左側船外機との推進力を表す模式図である。
【図29】船舶が定点に対して左斜め前方に位置するときの右側船外機と左側船外機との推進力を表す模式図である。
【図30】船舶が定点に対して右斜め後方に位置するときの右側船外機と左側船外機との推進力を表す模式図である。
【図31】船舶が定点に対して右斜め前方に位置するときの右側船外機と左側船外機との推進力を表す模式図である。
【図32】第2の実施形態における船舶の定点保持制御の態様を表す概念図である。
【図33】第2の実施形態における船舶の定点保持制御の一例を表すタイムチャートである。
【図34】第1の変形例に係る船舶を斜め後方から視たときの図である。
【図35】第1の変形例における船舶の定点保持制御を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0185】
1 船舶
2 船舶
3 船舶
4 船舶推進装置
10 船体
20 船外機(船舶用推進システム)
20a 右側船外機(第1の船舶用推進システム)
20b 左側船外機(第2の船舶用推進システム)
20c 第3の船外機(第3の船舶用推進システム)
30 エンジン(動力源)
36 シフトポジション切り替え機構
41 プロペラ
51 第2の動力伝達軸(シフトポジション切り替え機構の入力軸)
59 第3の動力伝達軸(シフトポジション切り替え機構の出力軸)
61 第1のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ((第1の)クラッチ)
62 第2のシフトポジション切り替え用油圧式クラッチ((第2の)クラッチ)
70 アクチュエータ
71 オイルポンプ
73 後進シフトポジション切り替え用電磁バルブ(バルブ)
74 前進シフトポジション切り替え用電磁バルブ(バルブ)
75 オイル経路
86 ECU(制御部)
91 制御装置
92 入力部(保持位置入力部)
93 GPS(位置検出部)
94 保持スイッチ
95 減速スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、
前記動力源によって駆動され、推進力を発生させるプロペラと、
前記動力源側に接続される入力軸と、前記プロペラ側に接続される出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との接続状態を変化させるクラッチとを有し、前記クラッチが断続されることによってフォワード、ニュートラル及びリバースの間でシフトポジションが切り替えられるシフトポジション切り替え機構と、
前記クラッチの接続力を調節する制御装置と、
前記制御装置に接続された保持スイッチと、
を備え、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされた場合に、所定の位置に船体が保持されるように前記クラッチの接続力を制御する船舶推進装置。
【請求項2】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされた場合に、前記保持スイッチがオンされたときの前記船体の位置に前記船体が保持されるように前記クラッチの接続力を制御する船舶推進装置。
【請求項3】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記前記船体の位置を検出し、前記制御装置に前記検出した船体の位置を出力する位置検出部と、
操船者によって保持位置が入力され、前記入力された保持位置を前記制御装置に出力する保持位置入力部と、
をさらに備え、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされた場合に、前記入力された保持位置に前記船体が保持されるように前記クラッチの接続力を制御する船舶推進装置。
【請求項4】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記クラッチは、
前記シフトポジション切り替え機構のシフトポジションがリバースであるときに接続状態とされる一方、前記シフトポジション切り替え機構のシフトポジションがフォワードまたはニュートラルであるときに切断状態とされる第1のクラッチと、
前記シフトポジション切り替え機構のシフトポジションがフォワードであるときに接続状態とされる一方、前記シフトポジション切り替え機構のシフトポジションがリバースまたはニュートラルであるときに切断状態とされる第2のクラッチと、
を含み、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされているときにおいて、現在の前記船体の位置が前記所定の位置よりも前側に位置している際には前記第2のクラッチを切断状態にすると共に前記第1のクラッチの接続力を増大させる一方、現在の船体の位置が前記所定の位置よりも後側に位置している際には、前記第1のクラッチを切断状態にすると共に前記第2のクラッチの接続力を増大させる船舶推進装置。
【請求項5】
請求項4に記載された船舶推進装置において、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされているときにおいて、前記第1のクラッチまたは前記第2のクラッチの接続力を増大させる際に、前記第1のクラッチまたは前記第2のクラッチの接続力を漸増させる船舶推進装置。
【請求項6】
請求項4に記載された船舶推進装置において、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされているときにおいて、現在の前記船体の位置と前記所定の位置との間の距離に応じて前記第1のクラッチの接続力及び前記第2のクラッチの接続力を制御する船舶推進装置。
【請求項7】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記動力源と、前記プロペラと、前記シフトポジション切り替え機構とを備えた第1の船舶用推進システムと、
前記動力源と、前記プロペラと、前記シフトポジション切り替え機構とを備え、前記第1の船舶用推進システムに対して前記船体の幅方向一方側に配置された第2の船舶用推進システムと、
を備え、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオンされた場合に、前記船体が前記所定の位置に対して、前記船体の幅方向一方側に位置するときは、前記第2の船舶用推進システムのクラッチの接続力を前記第1の船舶用推進システムのクラッチの接続力よりも大きくする船舶推進装置。
【請求項8】
請求項7に記載された船舶推進装置において、
前記動力源と、前記プロペラと、前記シフトポジション切り替え機構とを備え、前記船体の幅方向において前記第1の船舶用推進システムと前記第2の船舶用推進システムとの間に配置された少なくともひとつの第3の船舶用推進システムをさらに備え、
前記制御装置は、操船者によって前記保持スイッチがオン状態にあるときは、前記第3の船舶用推進システムのクラッチを切断状態に保持する船舶推進装置。
【請求項9】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記制御装置に接続された減速スイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記減速スイッチが操船者によってオンされているときに、前記プロペラにおいて前記船体の現在の推進方向とは反対方向の推進力が発生するように、前記クラッチの接続力を制御すると共に、前記船体の推進速度が実質的にゼロとなったときに前記減速スイッチがオン状態のままである場合は、前記船体の推進速度が実質的にゼロとなった位置に船体が保持されるように前記クラッチの接続力を制御する船舶推進装置。
【請求項10】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記クラッチは、多板式クラッチである船舶推進装置。
【請求項11】
請求項1に記載された船舶推進装置において、
前記制御装置は、
アクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
前記アクチュエータは、
油圧を発生させ、前記油圧によって前記クラッチを断続させるオイルポンプと、
前記オイルポンプと前記クラッチとを接続するオイル経路と、
前記オイル経路に配置され、前記オイル経路の流路面積を徐変可能なバルブと、
を有する船舶推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−243590(P2009−243590A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90885(P2008−90885)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】