説明

色再現システム

【課題】 この発明の課題は、遠隔医療(美容整形などの理美容も含む)の分野において、遠隔地間の画像入力装置、画像出力装置の色特性や、患者の撮影されている場所の照明などの環境特性を画像補正し、色再現を安価に提供することにある。
【解決手段】 医療、理美容提供者から薬の提供時に同時に提供される、薬袋の媒体の裏などの通常なにも印刷されていない部分に、色再現用の色票を印刷し、これにより患者と医者で同一な色票を用意することが簡単にでき、これを活用した、安価な色票を利用して色再現を実施する色再現手段を備える。このときの色再現手段として、顔色である肌色の忠実な再現方法として、色票中のグレーパッチの補正を主に行うことで色再現を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠隔医療(美容整形などの理美容も含む)などの地域的に離れた状態で、画像を画像入力装置により入力し、画像出力装置でその画像を再生する場合に、装置の特性や撮影環境(照明など)などの違いにより、色が違って再生される現象に対し、これを遠隔地間で正しく色再現する技術に関し、薬袋などの安価な媒体を色票として利用し、色再現を安価に実現するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から地域的に離れた場所にいる患者を医者が、お互いの場所に設置された画像装置間の通信により、医者側のモニター装置に表示された患者の顔色を見ることで診断を行う遠隔医療が行われてきた。
【0003】
しかし、このような遠隔診断を行う場合、患者の本当の顔色と医者側のモニター装置に表示される患者の顔色では、画像入出力装置の色の特性や撮影されている場所の照明などの環境特性の違いにより、違った顔色で表示されてしまうことがあった。
【0004】
このような色の違いを補正し、正しい色を表示させる色再現には、患者側と医者側で色再現用の同一の色票を持ち、この色票をモニター装置に表示させたものと、実際に手元にある色票との色あわせを行う補正をかけることで、色再現を実施する方法が考案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、このような方法を用いるためには、患者側と医者側で必ず色再現用の同一の色票を持つことが必要とされ、通常色票は、数十万円以上する場合もある非常に高価なものであり、患者が多数いる場合には遠隔医療の設備として高額なものとなってしまうという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−134526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のごとく、従来の技術では次のような問題点がある。
【0008】
遠隔医療の分野においては、地域的に離れた患者と医者の間を通信可能な画像伝送装置を用いて、患者の顔色などを医者の利用するモニター装置に表示して診断を行っているが、患者側の画像入力装置や医者側の画像出力装置であるモニター装置の色特性や、患者を撮影している場所の照明などの環境特性などの違いにより、実際の患者の顔色と医者の利用しているモニター装置上に表示された顔色に相違が出る場合があった。
【0009】
正しく遠隔診断を行うためには、実際の患者の顔色と同じ顔色が医者が利用しているモニター装置上に表示される必要があるため、患者と医者で色再現用の同一の色票を持ち、この色票をモニター装置に表示させたものと、医者の手元にある色票と同じ色に色あわせを行う色補正をすることで、色再現を実施する方法が考案されている。
【0010】
しかし、通常色再現に使用するための色票は、長期間色あせなどしないように特殊なインクや用紙を使用するため、数十万円以上といった非常に高価なものとなり、遠隔医療のように患者が多数いる場合に、各患者がこれを用意するといったことが困難であるという問題があった。
【0011】
この発明の課題は、遠隔医療(美容整形などの理美容も含む)の分野において、遠隔地間の画像入出力装置の色再現を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題点を解決するために、この発明では次に示す手段を取った。
【0013】
医療、理美容提供者から薬の提供時に同時に提供される、薬袋の媒体の裏などの通常なにも印刷されていない部分に、色再現用の色票を印刷し、これにより患者と医者で同一な色票を用意することが簡単にでき、これを活用した、安価な色票を利用して色再現を実施する色再現手段を備える。
【0014】
このときの色再現手段として、顔色である肌色の忠実な再現方法として、色票中のグレーパッチの補正を主に行うことで色再現を実施する。
【発明の効果】
【0015】
この発明により、以下に示すような効果が期待できる。
【0016】
これまでの遠隔医療では、正確な診断を行うため、地域的に離れた場所に設置された画像入出力装置の特性や、患者のいる場所の照明などの撮影環境の特性を補正して色あわせを行い、医者側の画像出力装置であるモニター装置上に、患者が目の前に座っているような色再現を次のように行っていた。
【0017】
長期間色あせや劣化しないために、特殊なインクや用紙を使用した、非常に高価な色票を患者と医者とでお互いに同一のものを用意し、患者側でその色票を撮影したものを医者側のモニター装置に伝送表示し、医者の画像出力装置であるモニター装置に表示された色票と、医者の手元にある色票とを同じ色となるように色補正を行い色再現し、患者の顔色などをモニター装置を通して診ることで診断を行っていた。
【0018】
しかし、このような方法をとるためには患者と医者で同一の高額な色票を用意しておく必要があり、遠隔医療のコストが高くなるという問題があった。
【0019】
本発明を利用することにより、患者は最低でも2週間に1回は薬袋を薬とともに病院から提供されることから、この薬袋の裏などの何も印刷されていないようなスペースに色票を印刷することで、長期間色あせや劣化しない特殊なインクを使用する必要もなく、安価に患者と医者で同一の色票を用意することができ、この色票を利用して色再現を行うことで、安価に遠隔医療を実現することができるようになる。
【0020】
また、本発明では、遠隔医療の分野において得に忠実に色再現を行わなければならない顔色である肌色の色再現手段として、色票のグレーパッチの色あわせの補正を主にすることで、肌色の色再現を忠実に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明は、次に示す実施の形態を取った。
【0022】
遠隔医療において、薬袋の何も印刷されていないスペースに色票を印刷し、患者には定期的(通常2週間ごと)に薬を提供するときに、この薬袋に薬を入れて提供する。
【0023】
これにより、色票は常に新しい状態であることが保証されるため、従来色再現に使用するため、長期間色あせや劣化したりしない特殊なインクや用紙を使用した、高額な同一の色票を患者と医者で別途用意する必要がなくなる。
【0024】
提供された薬袋に印刷された患者側の色票を画像入力装置により入力し、この画像を通信により医者側の画像出力装置であるモニター装置上に表示する。医者は手元にある薬袋に印刷された色票を使用してモニター装置上に表示された色票に色あわせを行う補正を行う。
【0025】
これにより、遠隔医療に使用する画像入出力装置の色特性や、患者のいる場所の照明などの環境特性に影響されることなく、正しく色再現を行うことができる。
【0026】
色あわせを行う補正を行うときに、色票の中のグレーパッチの色値を主にあわせるように補正をかけるようにする。
【0027】
これにより、遠隔医療の診断において非常に重要となる顔色である肌色の色再現を忠実に行えるようになる。
【実施例】
【0028】
この発明による代表的な実施例を図によって説明する。なお、以下において、同じ箇所は同一の符号を付してあり、詳細な説明を省略することがある。
【0029】
図1は本発明の実施例を示す。
【0030】
遠隔医療を受ける患者4は、所定の周期(通常は2週間)で薬を受け取る際に、その薬袋の裏などの通常は何も印刷されていないスペースに色票を印刷された色票付き薬袋1を薬とともに受け取る。
【0031】
遠隔地で正確な診断を受けるためには、患者4の顔色である肌色の色調を医者5が正確に見分けることができなければならない。
【0032】
図1に示すように、遠隔医療を受ける患者4は、画像入力装置2により自身の映像を撮影し、これをネットワーク6を経由して通信し、医者5の側に備えられている画像出力装置3に表示するようにしている。
【0033】
医者5は画像出力装置3に表示されている患者4の状態をみて診断を行うのであるが、画像入力装置2、画像出力装置3の色特性や患者4の撮影されている場所の照明などの環境特性により、実際の患者4の色と画像出力装置3に表示された患者4の色では違った色となる場合がある。
【0034】
そこで、遠隔医療を行うにあたっては、診断の前に色再現を以下に示すように行うようにしている。
【0035】
医者5の側に備えられている画像出力装置3に色票付き薬袋1の色票を表示させる。色票としては、図2に示すように、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、CMY(グレー)、CM(ブルー)、CY(グリーン)、MY(レッド)の各色の濃度を10段階に変化させた各パッチを印刷しておいてもよい。
【0036】
医者5は、最も暗い部分と明るい部分のパッチ情報の差分を計算し、各パッチ情報が識別可能なダイナミックレンジを確保しているか検証する。
【0037】
ダイナミックレンジが十分に確保されている場合は、パッチの中心を示す50%、60%の濃度のパッチが中間になるようにブライトネスで増減し、パッチの最も暗い部分と明るい部分が適正な範囲になるようにコントラストを調整する。
【0038】
このような自動補正の補正パラメータは、次のような式となる。なお、各グレー系パターンの色変換前のRGB値をx、色変換後のRGB値をy、コントラストとブライトネスの範囲を−127から+128とする。
【0039】
y=x+brightness−contrast*cos(3.141592*x/256)+0.5、y=min(255,y)、y=max(0,y)
【0040】
最終的には目視で確認し、画像出力装置3上の調整や補正パラメータの増減で各パッチの濃度が適正に識別できるように調整する。
【0041】
この調整後、医者5は画像出力装置3に表示された患者4の色票付き薬袋1の色票と、手元にある色票付き薬袋1の色票を用いて、色再現、特に遠隔医療における診断に重要な顔色などの肌色の色再現処理を実施する。
【0042】
この色再現の方法は、多項式近似による方法で、下記の3×3行列を用いる。
【数1】

【0043】
医者5の画像出力装置3に表示された患者4の色票付き薬袋1の色票のグレーパッチのRGB値をS=(s1,s2,s3)、医者5の手元にある色票付き薬袋1の色票のグレーパッチのRGB値をD=(d1,d2,d3)、3×3の色再現行列Cとし、上記の行列式を用いて色再現変換を行う。
【0044】
行列Cの色再現パラメータを算出するには、下記の式による最適化を行う。
【数2】

【0045】
iはグレーパッチを識別するためのIDを示し(i=1、2、・・・10)、Eは平均誤差を示し、Eを最小にする行列Cを最小二乗法により求める。
【0046】
行列Cの色再現パラメータを算出したら、画像出力装置3の色補正パラメータとしてこの色再現パラメータを使用して画像変換を行うことで、医者5の画像出力装置3に表示される画像を患者4の実際の顔色などの色再現された映像として使うことができ、遠隔地から正しい診断を行えるようになる。
【0047】
以上のような色再現システムを利用することにより、患者4と医者5で同一の色票を安価に用意することができ、現実的で経済的な遠隔医療を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の全体構成図である。
【図2】色票付き薬袋に印刷された色票の実施例である。
【符号の説明】
【0049】
1:色票付き薬袋
2:画像入力装置
3:画像出力装置
4:患者
5:医者
6:ネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療、理美容などの忠実な肌色再現が必要とされる分野で、遠隔地に設置された画像入出力装置同士で、色再現を実施する色再現システムにおいて、
医療、理美容提供者から提供される薬袋の媒体に色票を印刷した色票付き薬袋を活用した、安価な色票を利用して色再現を実施する色再現手段を備える、
ことを特徴とする色再現システム。
【請求項2】
医療、理美容などの忠実な肌色再現が必要とされる分野で、遠隔地に設置された画像入出力装置同士で、色再現を実施する色再現システムにおいて、
前期色再現手段として肌色の再現方法としてグレーパッチの補正を主に行うことで色再現を実現する、
ことを特徴とする色再現システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−278710(P2007−278710A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101436(P2006−101436)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】