説明

花菅とたらの木の抽出物を含む組成物及びその用途

本発明は花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物及びその用途に関するものであり、前記組成物は炎症性皮膚疾患の予防又は治療する効果及びプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2004年10月19日付で出願された大韓民国特許出願番号第10-2004-83709号を優先権主張した。
本発明は花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物及びこれの用途に関わる。より具体的に本発明は花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物及びこれらの炎症性皮膚疾患に対する予防又は治療用途及びプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性皮膚疾患とは、皮膚上皮内に一連の炎症反応を起こす多様な刺激要因等により、痒み、浮腫、紅斑、剥がれ等のような一連の臨床的徴候と症状が誘発される疾患をいう。炎症性皮膚疾患には、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborrhoic dermatitis)及びにきび等が知られている。アトピー性皮膚炎は一般的に湿疹(eczema)と同じ意味で使われているものの、アトピー体質の人に生ずる湿疹状の皮膚病変にして、内因性湿疹又はベニエ痒疹ともいう。アトピー性皮膚炎の原因は今まで究明されておらず、遺伝的な傾向があるものと知られていて、現在は一種の自家免疫疾患という説が説得力を得ている。普通の湿疹や皮膚炎とは異なり特異な症状と経過を示すものの、小児湿疹の70〜80%がこれに該当し、最近には大人にも多く発生する。
【0003】
接触性皮膚炎は外部の物質に接触することにより生ずる皮膚の炎症である。急性湿疹のような症状を呈するものの、外部で作用する特定の物質に対する反応として起こる点が湿疹とは異なる点である。
【0004】
脂漏性皮膚炎は頭、額、脇等の皮脂の分泌が多い部位に良く発生する皮膚炎であり、脂漏性湿疹ともいう。紅斑と細い鱗屑(フケ)が多く生じ、20〜40代に多く現れる。普通の湿疹とは異なり、体質や皮脂分泌異常により発生する疾患にして、日光や温熱に敏感で春と秋に悪化する例が多く、再発し易い特徴がある。
【0005】
にきびは毛嚢及び皮脂腺に発生する慢性炎症性皮膚疾患にして、発生原因は大きく皮脂分泌の増加、嫌気性皮膚常在菌であるプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)の増殖が主原因といえる。さらに、多様なメカニズムが複合的に作用することもある。にきびが多く発生する部位の皮脂は男性ホルモンの一種であるテストステロン(testosterone)が5アルファー還元酵素(5α-Reductase)により活性形態のジハイドロテストステロン(dihydrotestosterone)に転換され、このホルモンの作用により皮脂が過剰分泌され生成される。前記にて生成された過剰の皮脂は毛嚢内に停滞するようになり、前記皮脂が毛嚢を塞いで常住する嫌気性細菌であるプロピオニバクテリウムアクネスで分泌される脂肪分解酵素と化学走性因子により、遊離脂肪酸及び各種低分子物質等に転換される。このようになると白血球が毛嚢周囲に集まり、これらが毛嚢壁を破壊すると、毛嚢内容物が真皮内に流出され、炎症反応が起こるようになる。
【0006】
今までは前記のような炎症性皮膚疾患治療の為に、主に抗ヒスタミン剤、ビタミン軟膏、副腎皮質ホルモン剤が用いられてきた。しかしながら、このような薬物はその効果が一時的な場合が殆どで副作用が甚だしい場合も多い。
【0007】
特に、アトピー性皮膚炎の場合には、多様な種類の5−リポキシゲナーゼ阻害剤が抗アレルギー剤の候補化合物として提案されており、クロモリンがアレルゲンと組織マスト細胞との反応を無効化させる作用をすることにより、症状を緩和するものとして知られているものの、前記物質等も臨床的に効果がはっきりしない短所がある。
【0008】
にきびの治療にはエリスロマイシン等の抗生剤を利用するか又は女性ホルモンであるエストロゲンを利用した皮脂を調節する方法等が利用されてきたが、副作用が随伴する問題点がある。にきびの治療の為の化粧料にビタミンA誘導体又はベンゾイルパーオキサイド、サリチル酸、トリクロロ酸等が用いられてきたものの、このような物質等はある程度の抗菌効果はあっても皮膚発赤、皮膚過敏、又は光過敏等の副作用を起こす問題点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに本発明者らは炎症性皮膚疾患を効果的に予防するか、又は治療できる副作用のない組成物を開発している中で、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物が単一抽出物に比べて炎症性皮膚疾患を予防又は治療する効果が著しく優れ、毒性を呈さないことから生体に安全に用いられることを確認することにより本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような本発明の目的を達成する為に、本発明は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物を提供する。
さらに、本発明は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物を含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
さらに、本発明は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物を含むプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌用組成物を提供する。
さらに、本発明は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療をする方法を提供する。
さらに、本発明は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の有効量を、それを必要とする個体に投与することを含むプロピオニバクテリウムアクネス菌の成育を抑制する方法を提供する。
さらに、本発明は、活性治療成分としての用途の為の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を提供する。
さらに、本発明は炎症性皮膚疾患の予防又は治療剤を製造する為の前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の用途を提供する。
さらに、本発明はプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌剤を製造する為の前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の用途を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
他の定義が無い限り、本明細書で用いられた全ての技術的及び科学的用語は当業者らにより通常的に理解される同一な意味を有する。
【0012】
本発明に伴う組成物は、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を有効成分として含むことを特徴とする。本発明の組成物は前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含むことにより、単一抽出物に比べて炎症性皮膚疾患の予防又は治療に相乗効果がある。
【0013】
本発明において、前記‘相乗効果’とは各抽出物を共に使用する場合に発生する効果が、単一抽出物を単独で使用する時に発生する効果の和よりさらに大きいことをいう。
【0014】
前記花菅(Anemarrhena asphodeloides)は百合(Liliaceae)科に属する植物にして、中国が原産地であり、韓国では中部地方で栽培される多年草である。普通根茎を乾燥して薬剤として用いられ、消炎、解熱、止瀉、利尿作用と腰痛緩和及び鎮静効果があるものと知られている。花菅の有効成分としてアスホニン(Asphonin)6%以外にも、サルサポニン(Sarsasaponin)、マルコゲニン(Markogenin; 2-hydroxy sarsasapogenin)等のステロイドサポケニン、フラボノイド(Flavonoids)及びタンニン等が含まれているものと知られている。前記花菅の抽出物はプロピオニバクテリウムアクネスに対して抗菌効果が優れていて、にきびの予防及び治療用として使用し得ることが大韓民国特許公開公報第2001-76516号に開示されている。
【0015】
たらの木(Aralia elata)はたらの木(Araliaceae)科に属する植物にして、東アジアで自生する多年生草本である。漢方ではたらの木の根、果実及び樹皮等は糖尿病、腎臓病、急性肝臓炎、リューマチ性関節炎、胃腸癌及び胃腸障害等に使用してきた。特に、東医宝鑑には根の皮を剥がして干したものを曾木皮と称し、糖尿病に使用し、頭痛、産痛、大腸炎、胃潰瘍及び強壮薬にも活用され、民間では全草を胃腸疾病に使用した。たらの木の皮にはサポニンを含む多様な種類のトリテルペノイド(triterpenoids)があり、樹皮には血糖降下効果があるエラトリサイド(elatoside)Eを含めてエラトリサイドFとオレノル酸グリコシド等の幾つかのグリコシドが含まれており、エタノール吸収を阻害するエラトリサイドAとBも含まれている(Yoshikawa M. et al., Chem. Pharm. Bull., 41:2069-2071, 1993)。
【0016】
本発明者らは花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の抗炎症効果を調査する為に、カラギーナン(carrageenin)により誘導されたマウスの脚浮腫抑制及びマウスの大食細胞におけるPGE2の生成抑制効果を測定した(実験例1参照)。実験結果、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物はそれぞれの単一抽出物に比べてカラチジンにより誘導されたマウスの脚浮腫を効果的に抑制し(表1参照)、マウスの大食細胞においてPGE2の生成を抑制する効果が優れていることが確認できた(表2参照)。さらに、前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物による効果は、花菅抽出物又はとたらの木の抽出物を単独で投入した場合の効果の和に比べて大きいものとして現れ、相乗効果のあることが確認できた。
【0017】
さらには、本発明者らは本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物がにきび菌に対する抗菌効果があるか否かを調査した結果(実験例3参照)、本発明の抽出物はにきび菌に対する抗菌効果が極めて優れていて、花菅又はたらの木の単独抽出物に比べてにきび菌抑制活性が6倍乃至20倍まで高い事実が確認できた(表4参照)。
【0018】
本発明の抽出物に含まれる花菅とたらの木は、自然界で採集するか又は商業的に購入して使用できる。本発明で使用される花菅とたらの木は全体部分を利用することができ、好ましくは花菅の場合には根茎部分、たらの木の場合には茎部分を利用する。
【0019】
本発明の抽出物の製造に利用される花菅とたらの木はその乾体を利用するのが好ましく、抽出効果を増大させる為に、粉砕機で粉砕したものを用いることができる。前記花菅とたらの木の乾燥方法は日干し、陰干し、熱風乾燥、凍結乾燥及び自然乾燥方法を全て利用することができる。好ましくは熱風乾燥、凍結乾燥の方法を利用することもできる。
【0020】
本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は、花菅とたらの木を共に抽出するか又は、前記花菅とたらの木をそれぞれその薬効成分の物理・化学的性質により、抽出した後それぞれの抽出物を混合することにより製造できる。好ましくは、乾燥された花菅とたらの木を一緒に粉砕して粉末を製造した後、抽出するか又は乾燥花菅粉末と乾燥たらの木の粉末を一定の比率で混合した後抽出できる。この際、前記花菅とたらの木の成分比率は1〜10:1〜15の乾燥重量比率が好ましい。より好ましくは成分比率が1〜5:1〜10の乾燥重量比率であり、最も好ましくは成分比率が3:2の乾燥重量比率の場合もあり得る。
本発明の1実施例において、花菅とたらの木の成分比率に伴うカラジナンにより誘導されたマウスの脚浮腫抑制効果を調査した結果(実験例2参照)、乾燥花菅粉末と乾燥たらの木の粉末を1〜5:1〜10の乾燥重量比率で使用して製造した抽出物の場合、全てのマウスの脚浮腫抑制効が優れたものとして現れ、特に、乾燥花菅粉末と乾燥たらの木粉末を3:2の乾燥重量比率で用いた場合に最も優れたものとして現れた(表3参照)。
【0021】
前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は当業界に公知された方法を利用できる。つまり、本発明の抽出物は原料を一定の大きさに切断して抽出溶媒で抽出、濾過、濃縮及び乾燥する段階を経て製造するか又は抽出溶媒を添加して2時間以上加温した後、濾過及び濃縮して製造できる。前記にて抽出物溶媒としては水、メタノール、エタノール等のアルコール類を初めとする各種の溶媒が利用できる。好ましくは、本発明の抽出物を製造する為の抽出溶媒としては水又はエタノールを利用することもできる。
【0022】
本発明の1実施例では、前記花菅とたらの木の抽出物(実施例2参照)及び花菅とたらの木のエタノール抽出物をそれぞれ製造し(実施例3参照)、これらの抗炎症作用を比較した結果、花菅とたらの木の水抽出物がエタノール抽出物に比べて抗炎症作用が若干優れたものとして現れたものの、有意的差は現れなかった(実験例1参照)。従って、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物が抽出溶媒に関係なく、抗炎症活性を示すことが確認できた。
【0023】
最も好ましくは、本発明の抽出物は下記のような方法により製造することができる。第1段階:乾燥した花菅とたらの木を一緒に粉砕して粉末を製造し、ここに水又はアルコールのような有機溶媒を添加して抽出する。
【0024】
この際、抽出溶媒として水を利用する場合には、熱湯又は120℃以上の温度及び15psiの圧力条件下で加熱抽出し、抽出溶媒としてアルコールを利用する時には常温で抽出する。前記にて抽出溶媒として用いられるアルコールは炭素数が1乃至6個のアルコールであることが好ましい。
第2段階:前記第1段階で収得した抽出物を遠心分離して沈殿物を除去する。
第3段階:前記第2段階で分離された濾液を対象にクロロホルム、ヘキサンジクロロメタン及びシクロへキサン等の有機溶媒、好ましくはクロロホルム、又はヘキサンを用いて抽出することにより、樹脂、繊維質等の不純物を除去し、樹層を再度タルク等を利用して精製することにより目的とする抽出物を収得する。
【0025】
前記抽出物は凍結乾燥して粉末状に製造するのが好ましい。
【0026】
一方、本発明者らは花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の安定性を確認する為に、前記抽出物をマウスに投与して薬物の急性毒性を測定し、病理組織学的検査を行った結果(実験例4参照)、前記抽出物は毒性を殆ど呈しない極めて安全な物質であることが確認できた(表5参照)。
【0027】
ここに、本発明者らは本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物をクリーム又はゲルタイプの剤形に製造し、これを臨床に適用し、その効果を確認した(実験例5及び実験例6参照)。その結果、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は脂漏性皮膚炎、にきび、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎のような炎症性皮膚疾患を治療する効果のあることが確認できた(図1及び表6参照)。
【0028】
従って、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は、炎症性皮膚疾患の予防又は治療の為に使用できる。前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は生体に毒性を殆ど表わさない、極めて安全な物質であることにより、化粧料組成物、食品組成物及び薬学的組成物等の多様な形態で製造できる。
【0029】
前記にて、‘炎症性皮膚疾患’とは、皮膚上皮内に一連の炎症反応を起こす多様な刺激要因等により、痒み、浮腫、紅斑、剥がれ等のような一連の臨床的徴候と症状が誘発される疾患をいう。前記炎症性皮膚疾患の例としてはこれに限定はされないものの、急・慢性湿疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性単純苔癬、間擦疹、剥脱皮膚炎、丘疹状蕁麻疹、乾癬、日光皮膚炎及びニキビ等が含まれる。好ましくは、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及びニキビが含まれる場合もある。
【0030】
本発明の組成物に含まれる花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は、どの段階の抽出物を本発明の組成物に適用するかにより、所期の効果を達成できるものの、必要な含量が異なる。本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を適用して、治療効果を得るためには、一般的に0.001乃至10.0重量%範囲の使用量が好ましい。より具体的に、溶媒抽出後濾過して直ぐに収得した抽出物を使用する場合には、液状を基準に0.05乃至10.0重量%を含ませることが好ましい。0.05重量%未満を含ませると、その効果が不十分な為、所期の目的を達成することができず、10.0重量%を越えて含ませると含量増加に伴う効果の増加が無く、非経済的であるばかりでなく、製品の安定性が低下して好ましくないからである。さらに、減圧濃縮装置と凍結乾燥機を利用した濃縮過程を通じて抽出物内有効成分の含量を選択的に増加させた抽出物の場合、その好ましい使用含量は乾燥物基準で0.001乃至5.0重量%範囲である。この範囲を脱する場合には前記抽出物に対して説明したのと同一な問題点が発生することもある。
【0031】
前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物は、化粧料組成物及び食品組成物の形態で製造できる。
【0032】
前記化粧料組成物の場合には、前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物と共に、化粧料組成物の製造分野で一般的に使用される一つ以上の賦形剤及び添加剤を含めて、当分野の公知の方法により容易に製造できる。
【0033】
より具体的に本発明の化粧料組成物は本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を有効成分として含み、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォータのような洗顔剤、パック、ボディーオイル)、色調化粧品組成物(ファウンデーション、リップスティック、マスカラ、メークアップベース)、頭髪製品組成物(シャンプ、リンス、ヘアコンディショーナ、ヘアゼル)及び石鹸等の形態で製造できる。前記賦形剤としてはこれに限定はされないものの、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含み得る。さらに、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤等を追加して含むことができ、物性改善を目的として漸増剤、無機塩類、合成高分子物質等を含むことができる。
【0034】
例えば、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む洗顔剤及び石鹸を製造する場合には、通常の洗顔剤及び石鹸ベースに花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を添加して容易に製造できる。クリームを製造する場合には一般的な水中留績型(O/W)のクリームベースに花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を添加して製造できる。ここに、香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤等と物性改善を目的とした、蛋白質、ミネラル、ビタミン等の合成又は天然素材を追加して添加できる。
【0035】
さらに、本発明の化粧料組成物には炎症性皮膚疾患の改善効果を向上させることができるパパイン(Papain)、ブロメライン(Bromelain)等の植物由来の蛋白質分解酵素と微生物由来の蛋白質分解酵素等の皮膚角質除去剤を追加して添加することができる。特に、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎の治療効果を向上させるためには、サリチル酸のような、炎症抑制物質と保湿剤等を追加して添加することができ、にきびの治療効果を向上させるためには、サリチル酸やトリクロロ酸等の物質を追加して添加できる。
【0036】
さらに、前記食品組成物の場合には前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物と共に、食品組成物の製造分野で一般的に使用される一つ以上の賦形剤及び添加剤を含み、当分野の公知の方法により容易に多様な形態で製造できる。前記にて本発明の食品組成物は機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。
【0037】
例えば、健康食品としては本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物自体をお茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用するようにするか又は、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取できる。さらに、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物と炎症性皮膚疾患の予防及び改善効果があると知られた公知の活性成分を一緒に混合して組成物の形態で製造できる。さらに、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末又は濃縮液形態に製造して使用できる。
【0038】
さらに、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物の場合には、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を単独で含むか又は、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を追加して含み得る。前記にて‘薬学的に許容される’とは、生理学的に許容され、人間に投与される時、通常的にアレルギー反応又はそれに類似した反応を起こさない組成物をいう。
【0039】
本発明の炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物は、哺乳動物に如何なる方法で以ても投与することができる。例えば、経口又は非経口的に投与できる。非経口的な投与方法としてはこれに限定はされないものの、経皮投与、皮下内、静脈内、筋肉内又は腹腔内投与できる。好ましくは、本発明の炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物は経皮投与できる。前記にて経皮投与とは、本発明の炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物を、細胞又は皮膚に投与して炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物に含まれた活性成分が、皮膚内に伝達されるようにすることをいい、塗布を含む。
【0040】
本発明の薬学的組成物は前記のような投与経路により、経口投与用又は非経口投与用製剤に剤型化できる。
【0041】
経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液等にして、当業界に公知された方法を利用して剤型化できる。例えば、経口用製剤は活性成分を固体賦形剤と配合し、これを粉砕して適合した補助剤を添加後顆粒混合物として加工することにより、錠剤又は糖衣錠剤を収得できる。適合した賦形剤の例としては、ラクトース、テキストロース、スクロース、ソルビトール、マニトール、キシレトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及びジャガ芋澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれ得る。さらに、場合によっては架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネート等を崩解剤として添加できる。さらには、前記炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物は抗擬集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を追加して含め得る。
【0042】
非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアローゾル及び鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知された方法により剤型化できる。これらの剤型は全ての製薬化学に一般的に公知された処方書の文献(Remington's Pharmaceutical Science, 15th Edition, 1975. Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania 18042, Chapter 87: Blaug, Seymour)に記載されている。
【0043】
前記本発明の薬学的組成物に含まれる花菅とたらの木の抽出物の含量は前記の通り、抽出物の濃縮如何により異なるものの、好ましくは0.001乃至10重量%範囲で含有できる。
【0044】
本発明に伴う炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物の適合した経口投与量は体重60kgを基準にする時、1000mg/day〜3000mg/dayであり、より好ましくは約1500mg/day〜2500mg/dayである。しかしながら、本発明に伴う組成物の投与量は投与経路、患者の年齢、性別、体重及び患者の重症度等の多くの因子により適切に選択できる。
【0045】
さらには、本発明は花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を有効成分として含むプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌用組成物を提供する。前記抗菌用組成物に含まれる花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の含量は前記の通り、抽出物の濃縮如何等により異なり得るものの、好ましくは 0.001乃至10重量%範囲で含まれ得る。
【0046】
本発明の一実施例では本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物のプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌作用を測定した結果(実施例3参照)、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の抗菌作用が単一抽出物に比べて6倍乃至20倍まで高く表われたことが確認できた(表4参照)。
【0047】
さらに、前記本発明の抗菌用組成物は前記抽出物以外に別途の薬学的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤を追加して含め得る。好ましくは担体、賦形剤及び希釈剤の例は上述した通りである。
【0048】
本発明の他の側面として、本発明は花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む炎症性皮膚疾患の予防又は治療する方法を提供する。
【0049】
さらに、本発明は抗菌用組成物の有効量をこれを必要とする個体に投与することを含む、プロピオニバクテリウムアクネス菌の成育を抑制する方法を提供する。
【0050】
本発明において、‘固体’とは動物、好ましくは哺乳動物の場合もあり得、動物より由来した細胞、組織、器官でもあり得る。
【0051】
前記にて‘有効量’とは前記の通り、抽出物の濃縮如何等により異なるものの、好ましくは0.001乃至10.0重量%範囲で含まれ得る。
【0052】
さらに、本発明は活性治療成分としての用途のための、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を提供する。
【0053】
さらに、本発明は炎症性皮膚疾患の予防又は治療剤を製造する為の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の用途を提供する。
【0054】
さらに、本発明はプロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌剤を製造する為の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物の用途を提供する。
以下、本発明を実施例によりより詳しく説明する。ただし、下記実施例等は本発明を例示するものにして、本発明の内容が実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ただし、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0056】
実施例1 花菅抽出物又はたらの木の抽出物の製造
乾燥された花菅を粉砕機で粉砕して製造した粉末300g又は、乾燥されたたらの木を粉砕機で粉砕して製造した粉末300gに精製水3000mlをそれぞれ加えて、蒸気圧121℃、15lb/in2下で1時間飽和抽出後、抽出液を分取し残渣を除去した。前記抽出物を遠心分離して沈殿物を除去し、上層液を濾過して残量が1500mlになるように濃縮した。前記濃縮液を分液漏斗に入れ、ヘキサン400mlを加え、樹脂及び繊維質等を溶出させ、有機溶媒層を分離して除去した。残りの層を回収して70℃に加熱し、タルク500gを加えて撹拌後減圧濾過することにより、タルクを除去した。タルクが除去された濾液を濾過した後、遠心分離して上層液を取り凍結乾燥して粉末化することにより、花菅抽出物とたらの木の水抽出物をそれぞれ製造した。
【0057】
実施例2 花菅とたらの木の水抽出物の製造
乾燥した花菅とたらの木は3:2の重量比率で入れ、これらを粉砕して粉末を収得した。前記粉末の内、300gを取り、前記実施例1と同一な方法で、花菅とたらの木の水抽出物の製造し、凍結乾燥後に粉末化した。
【0058】
実施例3 花菅とたらの木のエタノール抽出物の製造
乾燥した花菅とたらの木は3:2の重量比率で入れ、これらを粉砕して粉末を収得した。前記粉末の内、300gを取り、エタノール3000mlを添加して室温で2日間抽出し、抽出液を分取し、残渣を除去した。以降、前記抽出液を前記実施例1と同一な方法で、濃縮、分別、濾過及び凍結乾燥後に粉末化した。
【0059】
実験例1 本発明に伴う花菅とたらの木の抽出物の抗炎症作用調査
前記実施例2と3で製造して粉末化した本発明の抽出物の抗炎症作用をカラゲーニン足浮腫法及びPGE2の含量調査を利用して測定した。
【0060】
1-1) カラゲーニン足浮腫法(carrageenin paw-edema)を利用した抗炎症作用の調査
体重が200g程度の雄白鼠7匹ずつを一つのグループにし、対照群、花菅水抽出物投与群、たらの木の水抽出物投与群、花菅とたらの木の水抽出物投与群及び花菅とたらの木のエタノール抽出物投与群に区分した。前記対照群には生理食塩水を腹腔内注射(intraperitoneal injection, i.p.)し、前記4個の実験群にはそれぞれ実施例1で製造した花菅抽出物、たらの木抽出物、実施例2で製造した花菅とたらの木の水抽出物及び実施例3で製造した花菅とたらの木のエタノール抽出物をそれぞれ100mg/kgずつ腹腔内に注射した。抽出物の投与が完了すると、直ちに1%カラゲーニン(carrageenin)が含まれた食塩水溶液0.1mlを前記雄白鼠の足裏の皮膚内に注射した。1時間後に浮腫が生じた足首までの容量を容量測定器(plethysmo meter)で測定し、足浮腫の嵩を計算し、下記の式を利用して浮腫抑制効果(% inhibition)を求めた。
【0061】
浮腫抑制効果(% inhibition)=100-(実験群の足浮腫の嵩/対照群の足浮腫の嵩)×100
【0062】
試験結果、本発明に伴う花菅とたらの木の水抽出物及びエタノール抽出物の浮腫抑制効果は、それぞれ82.3%及び79.3%と最も高く表われた。これは対照群が3.2%として表われたものに比べて統計的に有意的な差が(p<0.001)あるものとして表われた。さらに、前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の浮腫抑制効果は、花菅抽出物又はたらの木の抽出物を単独で投与した場合の浮腫抑制効果の和に比べて大きいものとして表われ、相乗効果(synergy effect)があるものと判断された(表1)。
【0063】
【表1】

【0064】
1-2) PGE2生成量測定を通じた抗炎症作用の調査
本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物がマウスの大食細胞においてPGE2(prostaglandin E2)の生成に及ぼす影響を調査し、0%の抑制効果を表わす濃度を測定した。前記PGE2は異物質又は菌に感染された時皮膚浸潤された大食細胞において、COX-2酵素により、合成される物質にして炎症の程度と分泌されたPGE2の量とは密接な関係がある。つまり、炎症が悪化すると、PGE2の分泌量も増加する。
【0065】
一方、マウス大食細胞株であるRaw264.7細胞(韓国細胞株銀行から分譲を受けた)をRPMI培地で培養しながらLPS(Lipopolysaccharide)を16時間処理すると、PGE2生成が増加する。ここに、前記大食細胞株にLPSを処理する1時間前に実施例1で製造した花菅抽出物又はたらの木抽出物、実施例2で製造した花菅とたらの木抽出物及び実施例3で製造した花菅とたらの木のエタノール抽出物をそれぞれ濃度別(5mg/ml、1mg/ml、100μg/ml、500μg/ml、50μg/ml、10μg/ml)で処理し、前記生成されたPGE2の量を測定することにより、それぞれの抽出物がLPSの処理に伴う大食細胞のPGE2生成に及ぼす影響を調査した。生成されたPGE2量は抗-PGE2抗体を含むELISAキット(Amersham Biosciences)を用いて測定した。この時、陽性対照群にはアスピリンを処理し、陰性対照群にはRPLMI1640培地を処理した。PGE2の生成抑制程度はLPSを処理した群と処理しない群より生成されたPGE2の差を100%とし、各試料の処理に伴う抑制程度を測定し、これを基にしてPGE2の生成を50%に抑制するに必要な濃度のIC50値を計算することによりCOX-2酵素活性抑制の指標とした。
【0066】
実験結果、各実験群のIC50値は花菅とたらの木の抽出物又はエタノール抽出物を処理した場合が花菅抽出物又はたらの木の抽出物を単独で処理した場合に比べて有意的に低く表われた(表2)。
従って、前記実験結果から花菅抽出物又はたらの木の抽出物を単独で使用した場合に比べて、一緒に使用することにより、PGE2の生成をより効果的に抑制して炎症を抑制できることが確認できた。
【0067】
【表2】

【0068】
実験例2 花菅とたらの木の成分比率に伴う抗炎症作用
花菅とたらの木の成分比率に伴う抗炎症作用を前記試験例1-1)と同一にカラゲーニンマウスの足浮腫法で調査した。
先ず、乾燥花菅の粉末及び乾燥たらの木の粉末を5:1、3:2、1:1、1:6及び1:10の重量比率で入れ、前記混合物を100%ずつ取り、前記実施例1と同一な方法で、花菅とたらの木の水抽出物を製造し、前記抽出物の抗炎症作用を前記実験例1-1)と同一な方法で測定した。
【0069】
実験結果、前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は全て対照群に比べて抗炎症作用が有意的に優れたものとして表われた。特に、花菅とたらの木を3:2の重量比で使用して製造した抽出物の場合に、カラゲーニンにより誘導されたマウスの足浮腫を最も効果的に抑制するものとして表われた(表3)。
【0070】
【表3】

【0071】
実験例3 本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物のにきび菌に対する抗菌作用調査
本発明に伴う抽出物のにきび菌に対する抗菌作用を測定する為に、BHIブロス(brain heart infusion 3.7g/L)にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes KCTC 3314)培養液を1%(v/v)濃度で接種し、前記実施例1の花菅水抽出物又はたらの木の水抽出物、実施例2の花菅とたらの木の水抽出物、実施例3の花菅とたらの木のエタノール抽出物をそれぞれ濃度別(0.1%、1%、5%、10%、20%)に処理した。陰性対照群には生理食塩水を処理した。これを37℃で48-72時間嫌気培養した後、それぞれの実験群と陰性対照群の吸光度(O.D660nm)を測定し、菌の増殖が抑制できる最小濃度の成育最小沮止濃度(MIC: minimum inhibitory concentration)を調査した(Leyden JJ et al., J. Am Acad Dermatol, 8:41, 1983; Armold HL. et al., Andrew's Diseases of skin, Clinical dermatology, 8th Ed. WB Saunders Co. Philadelphia, 250-258, 1990; CTFA safety testing guideline, The Cosmetics, Toiletry, and Fragrance Association Inc, Washington D.C., 20023, 1991)。この際、陽性対照群としては抗にきび効能が知られているエリスロマイシン(Erythromycin)とトリクロサン(Triclosan)を使用した。
【0072】
実験結果、陽性対照群に用いられたエリスロマイシンやトリクロサンのMIC値は文献に報告されたものと類似して表われ、実験の信頼度を立証した(Felmingham D. et al. Drugs Exp. Clin. Res. 13(4):195-9, 1987; Nam C. et al. Skin Pharmacol Appl Skin Physiol. 16(2):84-90, 2003)。一方、本発明に伴う花菅とたらの木の水抽出物及びエタノール抽出物のMIC値は、それぞれ0.0029ppm及び0.0061ppmとして表われた。これは花菅抽出物又はたらの木の抽出物を単独で処理した場合のMIC値に比べて遥かに低い値にして、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物のにきび菌抑制活性は単一抽出物に比べて約6倍乃至20倍まで高いことが確認できた(表4)。
【0073】
【表4】

【0074】
実験例4 本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の毒性実験
4-1) 花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の経口投与に伴うマウスの致死量調査
本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の安全性を確認する為に、薬物の急性毒性を表わす指標となるLD50(実験動物の50%を致死させ得る量)値を下記のような方法により求めた。正常ICRマウス(雄、22±1g)36匹を1個群に6匹ずつA乃至Fの6個の群に分け、A群には体重1kg当り実施例3で製造した花菅とたらの木のエタノール抽出物5gを、B群には7.5g、C群には10g、D群には12.5g及びE群には15gをそれぞれ経口投与してベレンス-カルバ(Behrens-Krber)(高木敬次郎外:薬物実験、南山堂、Japan,p131,1960)を利用してLD50値を測定した。
【0075】
実験結果、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を投与することにより、斃死した動物は1匹も表われなかった。さらに、マウスに15g/体重kgの高容量で本発明の抽出物を投与しても斃死した動物が表われなかった。従って、花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物のLD50値が15g/kg以上であることが分かり、毒性が殆どない安全な物質であることが確認できた(表5)。
【0076】
【表5】

【0077】
4-2) 花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を経口投与したマウスの剖検及び病理組織学的検査
前記実験例4-1)にて花菅とたらの木のエタノール抽出物を経口投与したマウスに対して剖検及び病理組織学的試験を下記のような方法で行った。前記実験例4-1)の実験終了後、全ての生存動物に対してエーテル麻酔して放血致死させ、臓器を摘出して肉眼で全ての臓器の異常を検査した。病理組織検査の為、剖検した全ての臓器等は10%中性ホルマリン溶液に10日以上固定させ、脱水過程を経てパラピン包埋機(Fisher, Histomatic Tissue Processor, 166A)に包埋した後、ロータリーマイクロトム(AO Rotary Microtome)で5μm切片を作り、ヘマトキシリンとエオシン染色をして観察した。
【0078】
試験結果、本発明の抽出物をマウス体重1kg当り15gの高容量で投与した場合、マウスの肝臓組織と腎臓において、薬物投与による異常的な所見は観察されなかった。さらに、心臓の心筋細胞、胃腸、腸管、膵臓、肺臓、脾臓、副腎、脳、睾丸、卵巣、骨髄等において、薬物投与による異常所見は観察されなかった。
【0079】
従って、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物をマウスに投与できる最大容量の体重1kg当りに15gずつを投与する場合にも、本発明の抽出物は全ての臓器に対して急性毒性による副作用を表わすことなく、臓器損傷毒性も誘発しない安全な物質であると判断された。
【0080】
実施例4 本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む製剤の製造
4-1) 洗顔剤の製造
グリセリン6g、モノアルキルホスフェート2.0g、水酸化ナトリウム溶液0.5g、ミリスチン酸1.5g、香料微量が含まれた洗顔剤ベース12gに前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の抽出物又はエタノール抽出物 0.5%(w/w)を混合してホモミキサー機(homo mixer)で撹拌後、60℃で3分間加熱した後脱気して37℃に冷却して洗顔剤組成物を製造した。
【0081】
4-2) 石鹸の製造
石鹸ベース99.5%(水分を含む)と前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の抽出物又はエタノール抽出物0.5%(w/w)を混合機で混合して石鹸製造機で圧出、切断及び型打ちして固形石鹸組成物を製造した。
【0082】
4-3) クリームの製造
ステアリン酸1.5g、ステアリルアルコール2.2g、ステアリン酸ブチル0.5g、プロピレングリコール0.5g、モノステアリン酸グリセリン2.0g、水酸化カリウム0.3g、と同じ油性成分、水性成分、界面活性剤等が含まれたクリームベース40gに前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の水抽出物又はエタノール抽出物を0.05%(w/w)濃度に混合して混合機で乳化させ、脱気、濾過及び冷却してクリーム組成物を製造した。前記組成物に添加剤として、キレート剤、香料及び色素を添加し、少ない量の油性成分が存在するように処方は水中油型(oil/water)で製造した。
【0083】
4-4) ゲルの製造
1,3-ブチレングリコール3.0g、ポリアクリルアミド0.3g、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール(17/6)コポリマ1.0g、水酸化ナトリウム0.5gが含まれたベース25gに前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の抽出物又はエタノール抽出物を0.05%濃度に混合し、ホモミキサー機で撹拌、強力脱気及び冷却させ、組成物質を均一に混合させることによりゲルを組成した。
【0084】
4-5) 乳液の製造
エチレンジアミンテトラアセト酸ナトリウム0.5、DL-パンテノール1.0g、ベタイン1.5g、アラキジルアルコール/ベヘニルアルコール/アラキジルグルコサイト1.5g、ステアリン酸0.5g、シクロメチコン1.2g、イソステアリルラクテート0.5g、トリエタノールアミン0.3g、ポリアクリルアミン0.3gが含まれた乳液ベース8gに前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の水抽出物又はエタノール抽出物を0.05%濃度で使用して、ホモミキサー機で撹拌、強力、脱気及び冷却させ、組成物質を均一に混合させることにより乳液組成物を製造した。
【0085】
4-6) 錠剤の製造
実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の水抽出物又はエタノール抽出物250mgを賦形剤直打用ラクトース260mgとアビセル(未結晶セルロース)35mg、崩解補助剤のナトリウム澱粉グリコネート15mg、結合剤の直打用L-HPC(Low-hydroxyprophylcellulose)80mgと共にU型混合機に入れて20分間混合した。混合完了後に滑沢剤としてマグネシウムステアレート10mgを追加して添加し、3分間混合した。定量試験と恒湿度試験を経て、打錠してフィルムコーティングし、1錠当りに抽出物225mgを含む錠剤を製造した。
【0086】
4-7) シロップ剤の製造
一定量の水に適当量の白糖を溶解させ、ここに保存剤として、パラオキシメチルベンゾエート80mg及びパラオキシプロピルベンゾエート16mgを加え、実施例3で製造した花菅とたらの木の水抽出物又はエタノール抽出物を4.5gを入れ、60℃に維持させながら完全に溶解した後、冷却させ、蒸留水を加えて150mlに造り、3%シロップ剤を製造した。
【0087】
4-8) カプセル剤の製造
前記実施例3で製造した粉末状の花菅とたらの木の水抽出物又はエタノール抽出物450mgをラクトース50mgと混合させ、硬質ゼラチンカプセルに充填することによりカプセル剤を製造した。
【0088】
実施例5 本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の臨床におけるにきび治療効果
にきび患者(女性、20才)の患部に昼間は前記実施例4で製造した、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含むクリームを適量で2回塗布し、夜には前記実施例4で製造したゲルを患部に適量で1回塗布する方式で1週間塗布した後、患部の状態変化を観察した。前記ゲルタイプの剤型の場合、皮膚に塗布すると膜が形成され薬効が長く持続される長所があるものの、昼間に使用する場合には外観上及び便宜上好くないので、昼間はクリームタイプの剤型を使用するようにした。
【0089】
実験結果、本発明に伴う抽出物が含まれたクリームをにきび患者の患部に塗布した場合、にきびが著しく好転したことが観察された(図1)。つまり、本発明のクリーム又はゲルを塗布した患部の脂肪分泌が減少され、にきび発疹の大きさ及び炎症症状が減少する傾向を示した。
【0090】
実験例6 本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の臨床における炎症性皮膚疾患に対する治療効果
本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物の臨床における脂漏性皮膚炎、にきび、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎に対する治療効果を調査した。
この為、脂漏性皮膚炎、にきび、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎患者115名(男性:47名、女性:68名、患者の年齢は生後3ヶ月乃至60才)を対象に前記実施例4で製造した本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物が含まれたクリーム又はゲルを前記実験例5と同一な方式で(昼間はクリーム塗布、夜はゲル塗布)患部に1日2〜3回の頻度で14日間塗布後その効果を観察した。治療効果は患者らの好転症状により悪化(aggrevation)、効果無し(no change)、多少効果的(slightly effective)、効果あり(moderately effective)及び極めて効果的(significantly effective)に区分した。
【0091】
実験結果、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物はアトピー性皮膚炎患者1名を除いては、脂漏性皮膚炎、にきび、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎患者全てにおいて、効果的なものとして表われた。さらに、本発明の花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物は前記各種炎症性皮膚疾患患者に対して、効果的又は極めて効果的な場合が約86%として表われた(表6)。
【0092】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0093】
以上察した通り、本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を含む組成物は抗炎症活性及び抗菌活性が優れ、脂漏性皮膚炎、にきび、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎を含む各種の炎症性皮膚疾患を予防又は治療する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は本発明に伴う花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物のにきびの治療効果を表わした写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花菅とたらの木の、水又は有機溶媒抽出物を含む組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は炭素数が1乃至6個のアルコールであることを特徴とする請求項第1項記載の組成物。
【請求項3】
前記花菅とたらの木の成分比率が1-10:1-15であることを特徴とする請求項第1項記載の組成物。
【請求項4】
化粧料組成物及び食品組成物から選択される請求項第1項記載の組成物。
【請求項5】
前記花菅とたらの木の水又は有機溶媒抽出物を0.001-10.0重量%で含むことを特徴とする請求項第1項記載の組成物。
【請求項6】
請求項第1項記載の組成物を含む、炎症性皮膚疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項7】
請求項第1項記載の組成物を含む、プロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌用組成物。
【請求項8】
前記炎症性疾患は急・慢性湿疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性単純苔癬、間擦診、剥脱皮膚炎、丘疹状蕁麻疹、乾癬、日光皮膚炎及びにきびからなるグループの中で選ばれたことを特徴とする請求項第6項記載の組成物。
【請求項9】
請求項第1項記載の組成物の有効量を、これを必要とする固体に投与することを含む炎症性皮膚疾患を予防又は治療する方法。
【請求項10】
請求項第1項記載の組成物の有効量を、これを必要とする固体に投与することを含むプロピオニバクテリウムアクネス菌の成育を抑制する方法。
【請求項11】
有効治療成分として使用する請求項第1項記載の組成物。
【請求項12】
プロピオニバクテリウムアクネス菌に対する抗菌剤を製造する為の、請求項第1項記載の組成物の使用。
【請求項13】
炎症性皮膚疾患の予防又は治療剤を製造する為の、請求項第1項記載の組成物の使用。



【図1】
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【公表番号】特表2008−517052(P2008−517052A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537799(P2007−537799)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003466
【国際公開番号】WO2006/043771
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502397624)メドビル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】