説明

芳香族系樹脂組成物、該芳香族系樹脂組成物を塗料成分としてなる耐熱性塗料及び摺動部コーティング塗料バインダー

【課題】ポリアミドイミド樹脂が有する耐熱性を保持し、機械的特性に優れ、硬く、低温硬化が可能である芳香族系樹脂組成物、耐熱性塗料及び、摺動部コーティング塗料バインダーの提供。
【解決手段】酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体、一般式(I)


[Rは芳香族基又は脂肪族基。]で表されるジカルボン酸又はその水素化物であるジカルボン酸及び一分子中に2個以上のアミノ基又はイソシアナト基を有し、一般式(II)で表される芳香族化合物及び一般式(III)で表される芳香族化合物を含有する芳香族化合物


[RはHであるか有機基、Rはアミノ基又はイソシアナト基。]を反応させて得られアミド基数/イミド基数の比が51/49〜80/20の範囲にあるポリアミドイミド樹脂を含有する芳香族系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族系樹脂組成物、該芳香族系樹脂組成物を塗料成分としてなる耐熱性塗料及び摺動部コーティング塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミドイミド樹脂組成物を用いた耐熱性塗料が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れているため、各種の基材のコート剤として広く使用され、例えば、エナメル線用ワニス、耐熱塗料などとして使用されている。
【0003】
しかし、この優れた特性を得るためには、通常250℃以上で硬化を行わなければならない。
また、近年の技術の進歩により、強い耐磨耗性が要求され従来のトリメリット酸無水物と4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートから得られるポリアミドイミド樹脂より強い機械的特性や硬さが求められており、従来のポリアミドイミド樹脂では耐摩耗性が満足しない不具合が発生している。
【特許文献1】特開平10−265670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂が有する耐熱性を保持し、汎用のポリアミドイミド樹脂より機械的特性に優れ、硬く、低温硬化が可能である芳香族系樹脂組成物、耐熱性塗料及び、摺動部コーティング塗料バインダーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体、(b)一般式(I)
【0006】
【化1】

[式中、Rは芳香族基又は脂肪族基である。]
で表されるジカルボン酸又はその水素化物であるジカルボン酸及び(c)一分子中に2個以上のアミノ基又はイソシアナト基を有し、一般式(II)で表される芳香族化合物及び一般式(III)で表される芳香族化合物を含有する芳香族化合物
【0007】
【化2】

[式中、Rは各々独立にHであるか、又はアミノ基及びイソシアナト基のいずれでもない有機基であり、Rはアミノ基又はイソシアナト基である。]
を反応させて得られアミド基数/イミド基数の比が51/49〜80/20の範囲にあるポリアミドイミド樹脂を含有する芳香族系樹脂組成物に関する。
なお、上記のポリアミドイミド樹脂、は一般式(IV−1)及び一般式(IV−2)で表される繰り返し単位を有する。
【化3】

(一般式(IV−1)及び一般式(IV−2)中、Arは(a)成分のイミド化及びアミド化反応残基を表し、Zは(c)成分のイミド化、又はイミド化及びアミド化、又はアミド化反応残基を表す。)
【0008】
また、本発明は、一般式(II)の式中RがH又はメチル基であり、ポリアミドイミド樹脂が、Rがイソシアナト基であり、(a)、(b)及び(c)を、(a)と(b)の配合割合(a)/(b)が、当量比で0.99/0.01〜0.4/0.6であり、(a)と(b)のカルボキシル基及び酸無水物基の総数に対する(c)のアミノ基及びイソシアナト基の総数の比が0.6〜1.4である量で反応させて得られたものである上記の芳香族系樹脂組成物に関する。
また、本発明は、ポリアミドイミド樹脂が、数平均分子量8,000〜90,000のものである上記の芳香族系樹脂組成物に関する。
また、本発明は、ポリアミドイミド樹脂が樹脂末端をアルコール、オキシム又はフェノールでブロックしてなるものである上記の芳香族系樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、さらに多官能エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を1〜40重量部含有してなる前記の芳香族系樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記の上記の芳香族系樹脂組成物を含有する塗料に関する。
さらに、本発明は、前記の上記の芳香族系樹脂組成物を含有する摺動部コーティング塗料バインダーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明になる芳香族系樹脂組成物は、機械的特性に優れ、硬く、低温での硬化が可能であり、種々の耐熱性塗料、摺動部コーティング塗料バインダー樹脂として応用することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造に用いられる(a)酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば一般式(V)及び(VI)で示す化合物を使用することができ、イソシアナト基又はアミノ基と反応する酸無水物基、又は酸無水物基及びカルボキシル基を有する3価のカルボン酸の誘導体であればよく、特に制限はない。耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独又は混合して用いられる。
【0012】
【化4】

(ただし、式中、Yは−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。)
【0013】
また、これらのほかに必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸二無水物等)などを使用することができる。
【0014】
本発明において、(b)成分のジカルボン酸を示す一般式(I)中、Rを示す芳香族基としては、フェニレン基、ナフチリレン基、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエーテルジイル基等が挙げられ、脂肪族基としては、例えば炭素数1〜16の2価の飽和又は不飽和脂肪族基等が挙げられる。これらジカルボン酸の具体例としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)などを使用することができる。また、これらの化合物の芳香環を水素化した化合物も用いることができる。
【0015】
ジカルボン酸の使用により、アミド基数/イミド基数の比を、51/49〜80/20にすることができる。アミド基数/イミド基数の比は、好ましくは55/45〜78/22、最も好ましいのは65/35〜75/25である。これらの比が51/49未満であると、可とう性及び密着性が低下する傾向があり、80/20を超えると、耐熱性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明における(c)成分の芳香族化合物としては、例えば、芳香族ジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを使用することができる。
【0017】
これらは、単独でもこれらを組み合わせて使用することもできる。必要に応じて、(c)成分の一部として、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式ジイソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0018】
本発明においては、機械的特性から、ビフェニル誘導体の構造を有する一般式(II)で表される芳香族化合物を(c)成分の必須成分として用いる。一般式(II)中、Rは各々独立にHであるか、又はアミノ基及びイソシアナト基のいずれでもない有機基を表すが、この有機基としては、例えば、炭素数1〜2のアルキル基等のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基等のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。なお、一般式(II)及び(III)中、Rはアミノ基又はイソシアナト基であるが、反応性の点から、イソシアナト基が好ましい。一般式(II)で表される芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。一般式(II)で表される芳香族ジイソシアネートの配合量は、(c)成分の芳香族化合物の総量中、55〜85モル%用いることが好ましく、最も好ましいのは70〜80モル%である。55モル%未満では、機械的特性が低下する傾向があり、85モル%を超えると、経日でワニス溶液が濁る傾向がある。
【0019】
また、本発明においては、塗膜の硬さ向上のために、ナフタレン環を含む一般式(III)で表される芳香族化合物を(c)成分の必須成分として用いる。一般式(III)で表される芳香族化合物の具体例としては、例えば、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。一般式(III)で表される芳香族化合物の配合量は、(c)成分の芳香族化合物の総量中、5〜30モル%用いることが好ましく、最も好ましいのは10〜20モル%である。10モル%未満では、塗膜硬度が低下する傾向があり、30モル%を超えると、柔軟性及び密着性が低下する傾向がある。
【0020】
一般式(II)及び(III)で表される芳香族化合物以外の(c)成分の芳香族化合物の配合量は、(c)成分の芳香族化合物の総量中、1〜40モル%とすることが好ましく、5〜40モル%とすることがより好ましく、10〜30モル%とすることが更に好ましい。このような残りの配合芳香族化合物は、コスト、機械的特性の伸び率の向上の点から4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを配合することが好ましい。
【0021】
(c)芳香族化合物の配合割合は、(a)と(b)のカルボキシル基及び酸無水物基の総数に対する(c)のアミノ基及びイソシアネート基の総数の比が0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。0.6未満又は1.4を超えると、樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0022】
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂は例えば次の製造法で得ることができる。
(1)酸成分(a)及び(b)とアミン又はイソシアネート成分(c)とを一度に使用し、反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
(2)酸成分(b)とアミン又はイソシアネート成分(c)の過剰量とを反応させて末端にアミノ基又はイソシアナト基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、酸成分(a)を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
(3)酸成分(a)の過剰量とアミン又はイソシアネート成分(c)を反応させて末端に酸又は酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、酸成分(b)とアミン又はイソシアネート成分(c)を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
【0023】
また、経日変化を避けるために、必要な場合、ブロック剤でポリマー末端のイソシアネート基を安定化したポリアミドイミド樹脂を使用してもよい。ブロック剤としてはアルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0024】
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は8,000〜90,000のものであることが好ましい。数平均分子量が8,000未満であると、塗料としたときの成膜性が悪くなる傾向があり、90,000を超えると、塗料として適正な濃度で溶媒に溶解したときに粘度が高くなり、塗装時の作業性が劣る傾向にあり、又、塗料やワニスが吸湿白化しやすく作業性に劣る。このことから、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、9,000〜90,000にすることがより好ましい。
なお、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時にサンプリングして、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定し、目的の数平均分子量になるまで合成を継続することにより上記範囲に管理される。
【0025】
本発明の芳香族系樹脂組成物は、上記ポリアミドイミド樹脂とともに、多官能エポキシ樹脂化合物、ポリイソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することが好ましい。これらの配合量は、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、1〜40重量部とすることが好ましく、5〜30重量部とすることがより好ましい。この量が1重量部未満となると、密着性向上効果が小さくなり、40重量部を超えると、塗膜の耐熱性が著しく低下する傾向があり、さらに塗膜強度の低下を示す傾向がある。
【0026】
多官能エポキシ樹脂化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0027】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、BL3475(商品名、住友バイエルウレタン(株)社製、β−ジケトンでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート化合物)、デスモジュールBL−1100(商品名、住友バイエルウレタン(株)製、ε−カプロラクタムでブロックされたトリレンジイソシアネート化合物)等を用いることができる。
【0028】
メラミン化合物としては、例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製商品名:サイメル300、サイメル303、サイメル325、サイメル327等、住友化学(株)製商品名:スミマールM−55、スミマールM−100、スミマールM−405等)、メチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製商品名:サイメル232、サイメル266等)等を用いることができる。
【0029】
本発明の芳香族系樹脂組成物は、N−メチル−2−ピロリドン、N,Nジメチルアセトアミド、N,N′−ジメチルホルムアミド及びγ―ブチロラクトン等の極性溶媒、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの溶媒に溶解され、適当な粘度に調整して塗料とすることができる。塗料とする場合、一般に固形分(芳香族系樹脂組成物の総量)は10〜50重量%とされる。
【0030】
本発明の芳香族性樹脂組成物を用いて塗料とする場合、本発明の芳香族系樹脂組成物及び溶媒に加え、フッ素樹脂、グラファイトフレーク、ガラス化合物等を配合することができる。
【0031】
また、本発明の芳香族性樹脂組成物を用いて摺動部コーティング塗料バインダーとする場合、本発明の芳香族系樹脂組成物及び溶媒に加え、自動車工学シリーズ「自動車用ピストンリング」平成9年10月6日、(株)山海堂出版発行、第153−154頁に記載のMoS2等の固体潤滑剤等を配合することができる。
【0032】
通常のポリアミドイミド樹脂組成物及び塗料は、基材に塗布した後、乾燥及び硬化のために熱処理され、少なくとも180℃以上で10分の加熱が必要である。これは、低温で硬化させると溶剤が残り、基材を保護する塗膜特性が劣る可能性がある。また、180℃未満の硬化では、塗膜の硬化が不十分で、極性溶媒に溶解又は膨じゅんする可能性がある。本発明の芳香族性樹脂組成物及び塗料は、通常、160〜380℃で10分〜60分の熱処理により、乾燥・硬化することができる。加熱時間は10分未満であると塗膜に残存溶媒がのこり、基材に塗布された塗膜の特性が劣ることがあり、60分を超えると、長期に熱を加えることにより、塗料として固体潤滑剤等を加えたときに副反応を起こすことがあり、塗膜の特性を劣化させることがある。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物172.9g(0.9モル)、(b)成分としてのイソフタル酸16.6g(0.1モル)、(c)成分としての3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート185.0g(0.7モル)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート21.0g(0.1モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート50.1g(0.2モル)、N−メチル−2−ピロリドン1040gを仕込み、120℃まで昇温し、約6時間反応させる。数平均分子量が24,000となったらN−メチル−2−ピロリドン297gを仕込み、不揮発分25重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0034】
実施例2
(2)攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物153.7g(0.8モル)、(b)成分としてのイソフタル酸32.2g(0.2モル)、(c)成分としての3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート211.4g(0.8モル)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート21.0g(0.1モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート25.0g(0.1モル)、N−メチル−2−ピロリドン1037gを仕込み、120℃まで昇温し、約6時間反応させる。数平均分子量が29,000となったらN−メチル−2−ピロリドン296gを仕込み、不揮発分25重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0035】
実施例3
(3)攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコにトリメリット酸無水物153.7g(0.8モル)、(b)成分としてのイソフタル酸32.2g(0.2モル)、(c)成分としての3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート158.6g(0.6モル)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート63.1g(0.3モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート25.0g(0.1モル)、N−メチル−2−ピロリドン1012gを仕込み、120℃まで昇温し、約6時間反応させる。数平均分子量が18,000となったらN−メチル−2−ピロリドン289gを仕込み、不揮発分25重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0036】
比較例1
(1)攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコに(a)成分としての無水トリメリット酸192.1g(1.00モル)、(c)成分としての4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート255.3g(1.02モル)及びN−メチル−2−ピロリドン1043.9gを仕込み、130℃まで昇温し、4時間反応させて、不揮発分30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液(樹脂の数平均分子量:24,000)を得た。
【0037】
比較例2
(2)攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコに(a)成分としての無水トリメリット酸153.7g(0.80モル)、(b)成分としてイソフタル酸33.2g(0.2モル)(c)成分としての4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート100.1g(0.4モル)と3,3−ジメチル−4,4−ジイソシアネートビフェニル158.6g(0.6モル)及びN−メチル−2−ピロリドン1040gを仕込み、130℃まで昇温し、4時間反応させて、不揮発分30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た(樹脂の数平均分子量:28,000)。
【0038】
比較例3
(3)攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットル四つ口フラスコに(a)成分としての無水トリメリット酸192.1g(1.0モル)、(c)成分としての4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート100.1g(0.4モル)とナフタレン−1,5−ジイソシアネート126.1g(0.6モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン976gを仕込み、130℃まで昇温し、4時間反応させて、不揮発分30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た(樹脂の数平均分子量:22,000)。
【0039】
試験例
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリアミドイミド樹脂100重量部に対してビスフェノールA型エポキシ樹脂を15重量部加えて芳香族性樹脂組成物を調製し、アルミ板上に膜厚が30μmになるように塗布した後、180℃で30分加熱処理を行った。
評価は以下の方法で測定した。その測定した結果をまとめて表1に示す。
(1)外観:目視により、塗膜の濁り、表面の肌荒れを調べた。
(2)密着性(クロスカット試験):JIS D0202に準じて試験を行った。
(3)鉛筆硬度:JIS K5600に準じて試験を行なった。
(4)硬化性:それぞれの芳香族製樹脂組成物を20×50mmの鋼板上に膜厚が20μmになるように塗布した後、180℃で30分熱処理をした。これを、N−メチル−2−ピロリドン中に1時間浸漬した後に次記により抽出率を求めた。
【0040】
【数1】

【0041】
(5)機械的特性:実施例及び比較例で得られた各々のポリアミドイミド樹脂溶液をガラス板に塗布し、180℃で30分間加熱して得られたフィルムを膜厚20μm、幅10mm、チャック間20mmに調整し、引張り速度5mm/minで引張り試験を行い、引張り強度、弾性率及び伸び率の測定を行った。
(6)安定性:ワニスの雰囲気温度25℃における経日粘度変化を次式により求めた。
【0042】
【数2】

【0043】
【表1】

【0044】
表1に示した結果から、本発明の実施例で得られた芳香族性樹脂組成物は、低温で硬化した場合でも密着性及び抽出率が優れていることがわかる。塗膜の硬度及び弾性率は実施例1、2、3が比較例1、2より優れており、また、実施例1、2で得られたポリアミドイミド樹脂は比較例1、2、3で得られた芳香族性樹脂組成物より伸び率が優れることから、塗膜の硬さや柔軟性のバランスが優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体、(b)一般式(I)
【化1】

[式中、Rは芳香族基又は脂肪族基である。]
で表されるジカルボン酸又はその水素化物であるジカルボン酸及び(c)一分子中に2個以上のアミノ基又はイソシアナト基を有し、一般式(II)で表される芳香族化合物及び一般式(III)で表される芳香族化合物を含有する芳香族化合物
【化2】

[式中、Rは各々独立にHであるか、又はアミノ基及びイソシアナト基のいずれでもない有機基であり、Rはアミノ基又はイソシアナト基である。]
を反応させて得られアミド基数/イミド基数の比が51/49〜80/20の範囲にあるポリアミドイミド樹脂を含有する芳香族系樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(II)の式中RがH又はメチル基であり、ポリアミドイミド樹脂が、Rがイソシアナト基であり、(a)、(b)及び(c)を、(a)と(b)の配合割合(a)/(b)が、当量比で0.99/0.01〜0.4/0.6であり、(a)と(b)のカルボキシル基及び酸無水物基の総数に対する(c)のアミノ基及びイソシアナト基の総数の比が0.6〜1.4である量で反応させて得られたものである請求項1記載の芳香族系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミドイミド樹脂が、数平均分子量8,000〜90,000のものである請求項1又は2記載の芳香族系樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミドイミド樹脂が、末端をアルコール、オキシム又はフェノールでブロックしてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族系樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、さらに多官能エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びメラミン化合物の群より選ばれる少なくとも1種を1〜40重量部含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族系樹脂組成物を含有する塗料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族系樹脂組成物を含有する摺動部コーティング塗料バインダー。

【公開番号】特開2007−146101(P2007−146101A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36711(P2006−36711)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】