説明

蒸気タービンロータの余寿命評価装置、蒸気タービンロータの余寿命評価方法、動翼および蒸気タービン

【課題】組成成分が分からない蒸気タービンロータにおいて、応力集中部となる蒸気タービンロータの翼植込み部などの強度および余寿命時間を、その後の運用に支障をきたすことなく、非破壊的に評価する蒸気タービンロータの余寿命評価装置および蒸気タービンロータの余寿命評価方法を提案することを目的とする。
【解決手段】組成成分が不明な蒸気タービンロータ10において、組成成分を特定して蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定し、特定された金属材料の情報、および蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づいて、記憶部103に記憶されている強度特定データと比較対照して、蒸気タービンロータ10の現状の強度を特定し、余寿命時間を推定することができる。また、蒸気タービンロータ10の以後の運転に支障を与えることなく、非破壊的に余寿命を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成成分などが不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に蒸気タービンロータの強度や余寿命時間などを特定する蒸気タービンロータの余寿命評価装置、蒸気タービンロータの余寿命評価方法に関する。さらに、本発明は、蒸気タービンロータの余寿命評価の結果に基づいて、その蒸気タービンロータに対応して設計された動翼およびその動翼を備えた蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
経年プラントにおける従来のタービン翼の強度や余寿命時間の評価方法では、経年プラントからタービン翼を抜き取り、その抜き取ったタービン翼から強度評価用試験片を採取して実際に強度試験を行い、この強度試験データと、未使用翼を用いて作成した材料の強度データとの比較評価を行う、破壊評価法が用いられている。
また、抜き取ったタービン翼から試験片の採取が不可能な場合には、例えば、タービン翼の応力集中部や最も高温で劣化が進んでいる部位について、局部的な組成分布や硬さ分布、組織変化を測定し、これらの測定データと、未使用翼を用いて作成した材料の強度データとを比較評価して、現状のタービン翼の強度や余寿命時間を推定する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、タービンロータの場合は、タービンロータから、強度、組成分析用の試験片を採取することが困難なため、上記したタービン翼において用いられている破壊試験や局部的な組成分布測定を行うことができない。さらに、タービンロータの場合には、評価すべき応力集中部がタービンロータ表面ではない場合が多いので、評価すべき部分の硬さ分布や組織変化を測定することができず、強度や余寿命時間を推定することが不可能である。ここで、タービンロータの非破壊的強度、余寿命予測方法として、磁気AE(Acoustic Emission)を用いた方法が開示されているが、この方法においても、タービンロータ内部の局部的な応力集中部の強度および余寿命時間を予測することは困難である(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−105882号公報
【特許文献2】特開平6−58911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の経年プラントのタービン翼の強度および余寿命評価方法を用いて、例えば、タービンロータ内部に位置する翼植込み部における応力集中部の強度および余寿命時間を評価する場合、タービンロータを破壊することなく、その後のタービンロータの運用に支障がない状態で評価することができないという問題があった。
【0005】
さらに、上記した従来の強度および余寿命評価方法では、既設タービンロータ材と同じ材質の未使用材のデータを比較対照としているため、既設タービンロータ材の組成が不明な場合には、参照するデータベースを特定することができず、既設タービンロータの強度および余寿命時間を評価することができないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、組成成分が分からない蒸気タービンロータにおいて、応力集中部となる蒸気タービンロータの翼植込み部などの強度および余寿命時間を、その後の運用に支障をきたすことなく、非破壊的に評価する蒸気タービンロータの余寿命評価装置および蒸気タービンロータの余寿命評価方法を提案することを目的とする。さらに、蒸気タービンロータの余寿命評価の結果に基づいて、その蒸気タービンロータに対応して設計された動翼およびその動翼を備えた蒸気タービンを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価装置は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの強度を定めるための強度特定データを格納した記憶手段と、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記入力された所定の作動条件、および前記強度特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価する評価手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価方法は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、前記特定された金属材料、前記格納された所定の作動条件、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて強度を定めるための強度特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価する評価ステップとを具備したことを特徴とする。
【0009】
ここで、強度特定データを特定するための蒸気タービンロータの作動条件として、例えば使用温度、応力、作動時間が挙げられる。また、入力される蒸気タービンロータの所定の作動条件として、少なくとも蒸気タービンロータの使用温度、応力、作動時間が挙げられる。なお、これらの作動条件は、上記例示した事項に限られるものではなく、強度特定データを特定するため、または蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価するために必要な事項を含むものとする。
【0010】
これらの蒸気タービンロータの余寿命評価装置および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータにおいて、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定し、この特定された金属材料、および蒸気タービンロータの所定の作動条件に基づいて、記憶手段に格納されている強度特定データと比較対照して、所定の強度特定データを特定することができる。そして、この所定の強度特定データから蒸気タービンロータの現状の強度を特定し、余寿命時間を推定することができる。
【0011】
また、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価装置は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの硬さを定めるための硬さ特定データを格納した記憶手段と、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出装置と、前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記入力された所定の作動条件、前記検出された硬さ、および前記硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価方法は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、少なくとも入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出ステップと、前記特定された金属材料、前記格納された所定の作動条件、前記検出された硬さ、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて硬さを定めるための硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価ステップとを具備したことを特徴とする。
【0013】
ここで、硬さ特定データを特定するための蒸気タービンロータの作動条件として、例えば使用温度、応力、作動時間が挙げられる。また、入力される蒸気タービンロータの所定の作動条件として、少なくとも蒸気タービンロータの使用温度、応力が挙げられる。なお、これらの作動条件は、上記例示した事項に限られるものではなく、硬さ特定データを特定するため、または蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価するために必要な事項を含むものとする。
【0014】
これらの蒸気タービンロータの余寿命評価装置および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータにおいて、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定し、蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出して、特定された金属材料、および蒸気タービンロータの所定の作動条件に基づいて、記憶手段に格納されている硬さ特定データと比較対照して、所定の硬さ特定データを特定することができる。さらに、特定された硬さ特定データと、検出された硬さを用いて、蒸気タービンロータの現状の硬さを特定し、余寿命時間を推定することができる。
【0015】
また、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価装置は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの硬さを定めるための硬さ特定データを格納した記憶手段と、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出装置と、前記蒸気タービンロータの所定部位の形状を3次元的に計測する形状計測装置と、前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記検出された硬さ、前記計測された蒸気タービンロータの形状、および前記入力された所定の作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの所定部位の温度および応力を解析する解析装置と、前記特定された金属材料、前記解析された温度と応力、前記検出された硬さ、および前記硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価手段とを具備したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価方法は、少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出ステップと、前記蒸気タービンロータの所定部位の形状を3次元的に計測する形状計測ステップと、前記特定された金属材料、前記検出された硬さ、前記格納された所定の作動条件、および前記計測された蒸気タービンロータの形状に基づいて、前記蒸気タービンロータの所定部位の温度および応力を解析する解析ステップと、前記特定された金属材料、前記解析された温度と応力、前記検出された硬さ、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて硬さを定めるための硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価ステップとを具備したことを特徴とする。
【0017】
ここで、硬さ特定データを特定するための蒸気タービンロータの作動条件として、例えば使用温度、応力、作動時間が挙げられる。また、入力される蒸気タービンロータの所定の作動条件として、少なくとも蒸気タービンロータの使用温度、応力、作動時間が挙げられる。また、この所定の作動条件は、例えば、所定の作動時間間隔毎の蒸気タービンロータの使用温度、応力の負荷履歴データでもよく、熱応力の解析における初期条件や境界条件などの設定、解析に必要な諸条件を満たすようなデータ形式としてもよい。なお、これらの作動条件は、上記例示した事項に限られるものではなく、硬さ特定データを特定するため、タービンロータの所定部位の温度および応力を解析するため、または蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価するために必要な事項を含むものとする。
【0018】
これらの蒸気タービンロータの余寿命評価装置および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータにおいて、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定することができ、また、蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出することができる。さらに、蒸気タービンロータの所定部位の形状および寸法を3次元的に計測し、この3次元的に計測された情報に基づいて、解析モデルを構成し、特定された蒸気タービンロータを構成する金属材料、蒸気タービンロータの所定部位の表面における硬さ、蒸気タービンロータの所定の作動条件などの情報に基づいて、熱解析および熱応力解析を行うことができる。これによって、所定部位、特に、温度や応力の実測が困難な蒸気タービンロータ内部に存在する応力集中部などにおける所定条件下での温度や応力の情報を得ることができる。さらに、この解析によって得られた温度や応力、特定された金属材料の情報に基づいて、記憶手段に記憶されている硬さ特定データと比較対照して、所定の硬さ特定データを特定し、検出された硬さを用いて、蒸気タービンロータの現状の硬さを特定し、余寿命時間を推定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価装置、蒸気タービンロータの余寿命評価方法によれば、組成成分が分からない蒸気タービンロータにおいて、応力集中部となる蒸気タービンロータの翼植込み部などの強度および余寿命時間を、その後の運用に支障をきたすことなく、非破壊的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態において、構成が同一部分には同一符号を付して、重複する説明を簡略または省略する。なお、ここでは余寿命評価部位として、翼植込み部を例にとり、多数ある形状のうちの1つを例にとって説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置100について図1〜4を参照して説明する。
【0022】
図1は、断面形状が略十字型の翼植込み部11が形成された蒸気タービンロータ10の断面図である。図2は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置100の構成を示す概要図である。
【0023】
図1に示すように、蒸気タービンロータ10の円周方向には、断面形状が略十字型の翼植込み部11が設けられている。この翼植込み部11に、順次タ−ビン翼を植設し、植設されたタ−ビン翼は、機械的に締結、連結されて配列される。このような形状の翼植込み部11を備える蒸気タービンロータ10では、例えば、翼植込み部11の蒸気タービンロータ10に沿って形成された十字型の横溝の端部付近に応力集中部12が存在する。
【0024】
図2に示された蒸気タービンロータの余寿命評価装置100は、組成分析装置101、制御部102、記憶部103、入力部104で主に構成されている。また、制御部102は、組成分析装置101、記憶部103および入力部104と情報の出入力可能に接続されている。
【0025】
組成分析装置101は、蒸気タービンロータ10の組成成分を、非破壊的に非接触で分析する装置である。この組成分析装置101には、例えば、X線を分析対象物に照射することで、分析対象物から放出される蛍光X線の波長および強度に基づいて、組成成分およびその含有量を分析可能な蛍光X線分析、または分析対象物に適当なエネルギを加えることで、原子を蒸発気化および発光させ、その発光を分光することで得られた波長および強度に基づいて、組成成分およびその含有量を分析可能な発光分光分析を利用した装置が使用される。
【0026】
制御部102は、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などから主に構成され、CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。また、制御部102は、上記したように、蒸気タービンロータの余寿命評価装置100を構成する各構成部と情報の通信が可能であり、各構成部の動作などを制御している。さらに、制御部102は、評価手段としても機能する。
【0027】
記憶部103は、記憶手段として機能し、例えば、所定の容量を備えたメモリーやハードディスクなどで構成される。この記憶部103には、例えば、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報や、その各種金属材料に応じて、蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づいて特定される強度と作動時間の関係などを示す強度特定データなどが記憶されている。ここで、強度として、例えば、クリープ強度、高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度などが挙げられ、これらの各強度毎に強度特定データが記憶されている。なお、記憶部103に記憶される情報は、これらに限られるものではなく適宜に設定可能である。また、記憶部103に、例えば、余寿命評価された蒸気タービンロータ10の現状の強度や余寿命時間などの情報を記憶させてもよい。さらに、記憶部103に、モニタなどの表示部を接続し、例えば、余寿命評価の結果や余寿命評価するために用いられた測定結果などの各種パラメータを表示部に表示させてもよい。
【0028】
入力部104は、蒸気タービンロータ10の少なくとも使用温度、応力、作動時間などを入力するもので、例えばキーボードなどで構成される。この入力部104によって入力された情報は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置100の入力手段によって入力され、記憶部103に記憶される。
【0029】
次に、蒸気タービンロータの余寿命評価装置100の動作について、図3を参照して説明する。
【0030】
図3は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置100の動作を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、入力部104によって入力された蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間の情報は、すでに蒸気タービンロータの余寿命評価装置100の記憶部103に入力された状態にあるものとして説明する。
【0031】
まず、制御部102は、余寿命評価開始の入力信号に基づいて、組成分析装置101を稼動させる。組成分析装置101は、蒸気タービンロータ10の所定部位における組成成分を分析し、その結果を制御部102に出力する(ステップS110)。
【0032】
続いて、制御部102は、組成分析装置101から出力された分析結果と、記憶部103に記憶された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報とを比較対照し、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定する(ステップS111)。
【0033】
続いて、制御部102は、入力された蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間を記憶部103から読み出す。さらに、その読み出した使用温度、応力、作動時間と、ステップS111で特定された金属材料の情報に基づいて、記憶部103に記憶されている、各種金属材料に応じて、蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づいて特定される強度と作動時間の関係を示す強度特定データと比較対照して、所定の強度特定データを特定する。そして、その所定の強度特定データから蒸気タービンロータ10の現状の強度を特定し、余寿命時間を推定する(ステップS112)。なお、蒸気タービンロータ10の余寿命評価は、図1に示したような応力集中部12について評価することが望ましく、例えば、使用温度や応力の値は、その応力集中部12における値として推定された値を使用することが望ましい。
【0034】
ここで、現状の強度および余寿命時間の評価方法について、図4を参照して説明する。
【0035】
図4には、例えば、鋼種A、鋼種Bまたは鋼種Cから構成される蒸気タービンロータ10の所定の使用温度、応力、作動時間に応じた、作動時間と強度との関係が示されている。
【0036】
図4に示すように、所定の使用温度、応力下において、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料に応じて、作動時間と強度との関係を示す特性ラインを得ることができる。例えば、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料が、図4の鋼種Cと特定されたとすると、鋼種Cの特性ラインに沿って作動時間とともに強度が低減していくことになる。ここで、現状の強度は、蒸気タービンロータの現状の作動時間における強度と特定される。さらに、予め設定された鋼種Cにおける限界強度に、鋼種Cの特性ラインが達したときの時間が寿命時間と推定され、この寿命時間から現状の作動時間を減算した時間が余寿命時間に相当する。
【0037】
ここで、図4の縦軸に示される強度として、例えば、クリープ強度、高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度などが挙げられ、これらの各強度において現状の強度を特定することができる。また、これらの各強度において、上記した方法で推定された余寿命時間のうち、安全性の観点から、一番短い時間を蒸気タービンロータ10の余寿命時間とすることが好ましい。
【0038】
また、ステップS110における組成成分の分析によって、蒸気タービンロータ10の表面に微小な損傷(ア−ク放電痕など)、いわゆる測定痕が形成されることがある。このような測定痕は、以後の蒸気タ−ビンの運転に支障を与える可能性は極めて低いが、応力集中部などでは亀裂発生の起点となることがあるため、例えば、研磨装置などにより測定痕を研磨し、除去、補修することが好ましい。
【0039】
第1の実施の形態における蒸気タービンロータの余寿命評価装置100および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータ10において、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定することができる。さらに、特定された金属材料の情報、および蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づいて、記憶部103に記憶されている強度特定データと比較対照して、所定の強度特定データを特定することができる。そして、その所定の強度特定データから蒸気タービンロータ10の現状の強度を特定し、余寿命時間を推定することができる。また、この余寿命評価方法によれば、蒸気タービンロータ10の以後の運転に支障を与えることなく、非破壊的に余寿命を評価することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置200について図5〜7を参照して説明する。
【0041】
図5は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置200の構成を示す概要図である。また、図6は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置200の動作を説明するためのフローチャートである。
【0042】
図5に示された蒸気タービンロータの余寿命評価装置200は、組成分析装置101、制御部102、記憶部103、入力部104、硬さ検出装置201で主に構成されている。また、制御部102は、組成分析装置101、記憶部103、入力部104および硬さ検出装置201と情報の出入力可能に接続されている。
【0043】
硬さ検出装置201は、蒸気タービンロータ10の表面の硬さを検出するものであり、その硬さ検出は、蒸気タービンロータ10の以後の運用に支障がないように非破壊的に行われる。この硬さ検出装置201における硬さ検出方式は、静荷重による硬さ試験方式または動荷重による硬さ試験方式が採用される。静荷重による硬さ試験方式、つまり圧入物による引張り・圧縮の複合変形強度試験方式を採用した硬さ試験機として、例えば、ブリネル硬さ計、ビッカ−ス硬さ計、ロックウェル硬さ計などが挙げられ、硬さ検出装置201をこれらのいずれかの硬さ計で構成することができる。また、動荷重による硬さ試験方式、つまり落下物による弾性変形強度試験方式を採用した硬さ試験機として、例えば、ショア硬さ計、エコ−チップ硬さ計、ハ−ドネステスタ、超音波硬さ計などが挙げられ、硬さ検出装置201をこれらのいずれかの硬さ計で構成することもできる。
【0044】
記憶部103には、例えば、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報などが記憶されている。また、記憶部103には、蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づく各種金属材料に応じた硬さと作動時間の関係などを示す硬さ特定データなどが記憶されている。なお、記憶部103に記憶される情報は、これらに限られるものではなく適宜に設定可能であり、例えば、余寿命評価された蒸気タービンロータの現状の強度や余寿命時間などの情報を記憶させてもよい。
【0045】
入力部104は、蒸気タービンロータ10の少なくとも使用温度、応力などを入力するもので、例えばキーボードなどで構成される。
【0046】
次に、蒸気タービンロータの余寿命評価装置200の動作について、図6を参照して説明する。なお、ここでは、入力部104によって入力された蒸気タービンロータ10の使用温度、応力の情報は、すでに蒸気タービンロータの余寿命評価装置200の記憶部103に入力された状態にあるものとして説明する。
【0047】
まず、制御部102は、余寿命評価開始の入力信号に基づいて、組成分析装置101を稼動させる。組成分析装置101は、蒸気タービンロータ10の所定部位における組成成分を分析し、その結果を制御部102に出力する(ステップS210)。
【0048】
続いて、制御部102は、組成分析装置101から出力された分析結果と、記憶部103に記憶された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報とを比較対照し、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定する(ステップS211)。
【0049】
続いて、制御部102は、硬さ検出装置201を稼動させる。硬さ検出装置201は、蒸気タービンロータ10の所定部位の表面における硬さを検出し、その結果を制御部102に出力する(ステップS212)。
【0050】
なお、ステップS210およびステップS212の処理は、この順に処理されることに限られず、順序を逆に行ってもよい。さらに、測定に支障をきたさなければ、ステップS210およびステップS212の処理を同時に行ってもよい。
【0051】
続いて、制御部102は、入力された蒸気タービンロータ10の使用温度、応力を記憶部103から読み出す。さらに、その読み出した使用温度、応力と、ステップS211で特定された金属材料の情報に基づいて、記憶部103に記憶されている、各種金属材料に応じた硬さと作動時間の関係を示す硬さ特定データと比較対照する。そして、図7に示すような、特定された金属材料に対応する硬さと作動時間との関係を示す特性ラインを得る。また、硬さ検出結果は、この特性ライン上に位置(図7中の点P)し、その硬さにおける作動時間(図7中の点Pに対応する作動時間)を現状の作動時間とする。そして、予め設定された限界硬さに、特性ラインが達したときの時間が寿命時間と推定され、この寿命時間から上記した現状の作動時間を減算した時間が余寿命時間に相当する(ステップS213)。
【0052】
ここで、蒸気タービンロータ10の表面の硬さと強度との間には相関関係があり、図7に示した硬さと作動時間との関係に基づいて、強度と作動時間との関係を示すこともできる。また、強度として、例えば、クリープ強度、高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度などが挙げられ、これらの各強度において余寿命時間を推定する場合には、安全性の観点から、一番短い時間を蒸気タービンロータ10の余寿命時間とすることが好ましい。
【0053】
また、ステップS210における組成成分の分析や、ステップS212の表面の硬さ検出によって、蒸気タービンロータ10の表面に微小な損傷(圧痕、ア−ク放電痕など)、いわゆる測定痕が形成されることがある。このような測定痕は、以後の蒸気タ−ビンの運転に支障を与える可能性は極めて低いが、応力集中部などでは亀裂発生の起点となることがあるため、例えば、研磨装置などにより測定痕を研磨し、除去、補修することが好ましい。
【0054】
第2の実施の形態における蒸気タービンロータの余寿命評価装置200および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータ10において、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定することができ、さらに、蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出することができる。さらに、特定された金属材料の情報、および蒸気タービンロータ10の使用温度、応力に基づいて、記憶部103に記憶されている硬さ特定データと比較対照して、所定の硬さ特定データを特定し、検出された硬さを用いて、蒸気タービンロータ10の現状の硬さを特定し、余寿命時間を推定することができる。また、第2の実施の形態における余寿命評価装置200および余寿命評価方法では、硬さ検出装置201を用いて、実際の蒸気タービンロータ10の表面における硬さを検出し、その検出結果を用いて余寿命時間の評価を行っているので、より信頼性の高い評価をすることができる。また、この余寿命評価方法によれば、蒸気タービンロータ10の以後の運転に支障を与えることなく、非破壊的に余寿命を評価することができる。
【0055】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置300について図8および9を参照して説明する。
【0056】
図8は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置300の構成を示す概要図である。また、図9は、蒸気タービンロータの余寿命評価装置300の動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
図8に示された蒸気タービンロータの余寿命評価装置300は、組成分析装置101、制御部102、記憶部103、入力部104、硬さ検出装置201、形状計測装置301、解析装置302で主に構成されている。また、制御部102は、組成分析装置101、記憶部103、入力部104、硬さ検出装置201、形状計測装置301および解析装置302と情報の出入力可能に接続されている。
【0058】
形状計測装置301は、蒸気タービンロータ10の少なくとも所定部位について、3次元的に形状および寸法を計測する装置で、計測法として、接触方式または非接触方式が採用される。接触方式を用いた形状計測装置301には、例えば、多間接型寸法測定機などが具備され、非接触方式を用いた形状計測装置301には、例えば、レーザースキャナまたはデジタルカメラなどが具備される。
【0059】
解析装置302は、形状計測装置301で計測された蒸気タービンロータ10の所定部位の形状および寸法、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料、蒸気タービンロータ10の所定部位の表面における硬さ、蒸気タービンロータ10における使用温度、応力、作動時間などの負荷履歴データなどの情報に基づいて、熱解析を行い、所定部位における所定条件下での温度分布解析、この温度分布結果を用いて起動停止による熱応力解析、運転中の遠心力を考慮した応力解析をする装置である。
【0060】
記憶部103には、例えば、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報などが記憶されている。また、記憶部103には、蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間に基づく各種金属材料に応じた硬さと作動時間の関係などを示す硬さ特定データなどが記憶されている。なお、記憶部103に記憶される情報は、これらに限られるものではなく適宜に設定可能である。また、記憶部103に、例えば、余寿命評価された蒸気タービンロータの現状の強度や余寿命時間などの情報を記憶させてもよい。
【0061】
入力部104は、蒸気タービンロータ10における少なくとも使用温度、応力、作動時間などの負荷履歴データなどを入力するもので、例えばキーボードなどで構成することができる。また、入力部104は、蒸気タービンを管理する制御装置と制御部102とを情報の出入力可能に接続するインターフェースとして機能するものでもよい。なお、負荷履歴データには、少なくとも所定の作動時間間隔毎の使用温度や応力の値などが含まれる。
【0062】
次に、蒸気タービンロータの余寿命評価装置300の動作について、図9を参照して説明する。なお、ここでは、入力部104によって入力された蒸気タービンロータ10の使用温度、応力、作動時間などの負荷履歴データは、すでに蒸気タービンロータの余寿命評価装置300の記憶部103に入力された状態にあるものとして説明する。
【0063】
まず、制御部102は、余寿命評価開始の入力信号に基づいて、組成分析装置101を稼動させる。組成分析装置101は、蒸気タービンロータ10の所定部位における組成成分を分析し、その結果を制御部102に出力する(ステップS310)。
【0064】
続いて、制御部102は、組成分析装置101から出力された分析結果と、記憶部103に記憶された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料として想定される各種金属材料の情報とを比較対照し、蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定する(ステップS311)。
【0065】
続いて、制御部102は、硬さ検出装置201を稼動させる。硬さ検出装置201は、蒸気タービンロータ10の所定部位の表面における硬さを検出し、その結果を制御部102に出力する(ステップS312)。
【0066】
続いて、制御部102は、形状計測装置301を稼動する。形状計測装置301は、蒸気タービンロータ10の所定部位の形状および寸法を計測し、その情報を解析装置302に出力する(ステップS313)。さらに、形状計測装置301は、計測した情報を制御部102に出力し、蒸気タービンロータ10における所定部位の形状情報として記憶部103に記憶し管理してもよい。
【0067】
なお、ステップS310、ステップS312およびステップS313の処理は、この順に処理されることに限られず、いずれを先に行ってもよい。さらに、測定に支障をきたさなければ、ステップS310、ステップS312およびステップS313の処理を同時に行ってもよい。
【0068】
続いて、制御部102は、特定された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料、蒸気タービンロータ10の所定部位の表面における硬さ、蒸気タービンロータ10における負荷履歴データなどの情報を解析装置302に出力する。そして、解析装置302は、これらの制御部102から出力された情報、および形状計測装置301で計測された蒸気タービンロータ10の所定部位の形状および寸法などの情報に基づいて、熱解析および熱応力解析を行い、所定部位における所定条件下での温度や応力を解析し、その解析結果を制御部102に出力する(ステップS314)。
【0069】
続いて、制御部102は、特定された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料、解析された温度や応力の情報に基づいて、記憶部103に記憶されている、各種金属材料に応じた硬さと作動時間の関係を示す硬さ特定データと比較対照する。そして、第2の実施の形態の場合と同様に、図7に示すような、特定された金属材料に対応する硬さと作動時間との関係を示す特性ラインを得る。また、硬さ検出結果は、この特性ライン上にほぼ位置(図7中の点P)し、その硬さにおける作動時間(図7中の点Pに対応する作動時間)を現状の作動時間とする。そして、予め設定された限界硬さに、特性ラインが達したときの時間が寿命時間と推定され、この寿命時間から上記した現状の作動時間を減算した時間が余寿命時間に相当する(ステップS315)。
【0070】
ここで、蒸気タービンロータ10の表面の硬さと強度との間には相関関係があり、図7に示した硬さと作動時間との関係に基づいて、強度と作動時間との関係を示すこともできる。また、強度として、例えば、クリープ強度、高サイクル疲労強度、低サイクル疲労強度などが挙げられ、これらの各強度において余寿命時間を推定する場合には、安全性の観点から、一番短い時間を蒸気タービンロータ10の余寿命時間とすることが好ましい。
【0071】
また、ステップS310における組成成分の分析や、ステップS312の表面の硬さ検出によって、蒸気タービンロータ10の表面に微小な損傷(圧痕、ア−ク放電痕など)、いわゆる測定痕が形成されることがある。このような測定痕は、以後の蒸気タ−ビンの運転に支障を与える可能性は極めて低いが、応力集中部などでは亀裂発生の起点となることがあるため、例えば、研磨装置などにより測定痕を研磨し、除去、補修することが好ましい。
【0072】
第3の実施の形態における蒸気タービンロータの余寿命評価装置300および余寿命評価方法によれば、組成成分が不明な蒸気タービンロータ10において、非破壊的に組成成分を特定して蒸気タービンロータ10を構成する金属材料を特定することができ、また、蒸気タービンロータ10の表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出することができる。さらに、蒸気タービンロータ10の所定部位の形状および寸法を3次元的に計測し、この3次元的に計測された情報に基づいて、解析モデルを構成し、特定された蒸気タービンロータ10を構成する金属材料、蒸気タービンロータ10の所定部位の表面における硬さ、蒸気タービンロータ10における使用温度、応力、作動時間などの負荷履歴データなどの情報に基づいて、熱解析および熱応力解析を行うことができる。これによって、所定部位、特に、温度や応力の実測が困難な蒸気タービンロータ10内部に存在する応力集中部など(例えば、図1の応力集中部12など)における所定条件下での温度や応力の情報を得ることができる。
【0073】
さらに、この解析によって得られた温度や応力、特定された金属材料の情報に基づいて、記憶部103に記憶されている硬さ特定データと比較対照して、所定の硬さ特定データを特定し、検出された硬さを用いて、蒸気タービンロータ10の現状の硬さを特定し、余寿命時間を推定することができる。これにより、さらに信頼性の高い評価をすることができる。また、この余寿命評価方法によれば、蒸気タービンロータ10の以後の運転に支障を与えることなく、非破壊的に余寿命を評価することができる。
【0074】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態では、上記した第1〜3の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価方法によって、評価された蒸気タービンロータ10の余寿命時間や強度などの情報に基づいて、動翼などを設計、交換する一例について、図10を参照して説明する。
【0075】
図10には、上記した第1〜3の実施の形態において、蒸気タービンロータ10における強度、硬さ、余寿命時間などを評価し、その後その評価に基づいて、動翼などを設計するための工程図が示されている。
【0076】
図10に示すように、評価された蒸気タービンロータ10の強度、余寿命時間などの情報に基づいて、例えば、動翼を交換する際に、蒸気タービンロータ10の翼植込み部の強度や余寿命時間を評価する(ステップS400)。そして、その結果、蒸気タービンロータ10の余寿命時間に余裕があれば、動翼のみの交換で蒸気タービンを修繕して、延命化を達成することが可能となる(ステップS401)。これによって、プラントの維持、補修コストを大幅に低減することができる。さらに、蒸気タービンロータ10の翼植込み部の強度を把握することができるので、現状の蒸気タービンロータ10の強度に見合った動翼の設計(例えば、重量の軽減化など)および使用が可能となる(ステップS401)。これによって、蒸気タービンロータ10を交換せずに、効率の向上や余寿命時間の延長を図ることができる。
【0077】
また、現在使用している蒸気タービンロータ10の余寿命時間や強度などを評価することで、今後の蒸気タービンロータ10の補修計画の検討に役立つとともに、蒸気タービンの運転の信頼性を向上させることができる。
【0078】
なお、上記した第1〜4の実施の形態では、本発明の蒸気タービンロータの余寿命評価装置および余寿命評価方法を用いて、蒸気タービンロータ10の余寿命時間などを評価する実施の形態について説明したが、本発明の余寿命評価装置および方法の利用は、蒸気タービンロータ10に限られるものではない。例えば、本発明の余寿命評価装置および方法を用いて、動翼、静翼、ケーシングなどの蒸気タービンの各構成部の余寿命評価などを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】断面形状が略十字型の翼植込み部が形成された蒸気タービンロータの断面図。
【図2】第1の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の構成を示す概要図。
【図3】第1の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】作動時間と強度との関係を示す図。
【図5】第2の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の構成を示す概要図。
【図6】第2の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図7】硬さと作動時間との関係を示す図。
【図8】第3の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の構成を示す概要図。
【図9】第3の実施の形態の蒸気タービンロータの余寿命評価装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図10】第4の実施の形態の動翼などを設計するための工程を示す図。
【符号の説明】
【0080】
10…蒸気タービンロータ、100…蒸気タービンロータの余寿命評価装置、101…組成分析装置、102…制御部、103…記憶部、104…入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、
前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの強度を定めるための強度特定データを格納した記憶手段と、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、
前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、
前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記入力された所定の作動条件、および前記強度特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価する評価手段と
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項2】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、
前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの硬さを定めるための硬さ特定データを格納した記憶手段と、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、
前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、
前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出装置と、
前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記入力された所定の作動条件、前記検出された硬さ、および前記硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価手段と
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項3】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価装置であって、
前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの硬さを定めるための硬さ特定データを格納した記憶手段と、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析装置と、
前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を入力する入力手段と、
前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出装置と、
前記蒸気タービンロータの所定部位の形状を3次元的に計測する形状計測装置と、
前記分析された組成成分に基づいて特定された前記蒸気タービンロータを構成する金属材料、前記検出された硬さ、前記計測された蒸気タービンロータの形状、および前記入力された所定の作動条件に基づいて、前記蒸気タービンロータの所定部位の温度および応力を解析する解析装置と、
前記特定された金属材料、前記解析された温度と応力、前記検出された硬さ、および前記硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価手段と
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項4】
前記組成分析装置は、蛍光X線分析装置、プラズマ発光分析装置、またはアーク放電発光分析装置で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項5】
前記硬さ検出装置における硬さ検出方式は、静荷重による硬さ試験方式または動荷重による硬さ試験方式によることを特徴とする請求項2または3記載の蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項6】
前記形状計測装置における計測方式は、接触方式または非接触方式によることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項7】
前記組成分析装置による組成成分の分析、および/または硬さ検出装置による硬さの検出に伴って前記蒸気タービンロータの表面に形成された測定痕を除去する測定痕除去手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価装置。
【請求項8】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、
入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、
前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、
前記特定された金属材料、前記格納された所定の作動条件、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて強度を定めるための強度特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価する評価ステップと
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価方法。
【請求項9】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、
少なくとも入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、
前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、
前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出ステップと、
前記特定された金属材料、前記格納された所定の作動条件、前記検出された硬さ、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて硬さを定めるための硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価ステップと
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価方法。
【請求項10】
少なくとも組成成分が不明な蒸気タービンロータについて、非破壊的に寿命を評価する余寿命評価方法であって、
入力された前記蒸気タービンロータの所定の作動条件を記憶手段に格納する格納ステップと、
前記蒸気タービンロータの組成成分を非破壊的に分析する組成分析ステップと、
前記分析された組成成分に基づいて前記蒸気タービンロータを構成する金属材料を特定する金属材料特定ステップと、
前記蒸気タービンロータの表面の所定部位の硬さを非破壊的に検出する硬さ検出ステップと、
前記蒸気タービンロータの所定部位の形状を3次元的に計測する形状計測ステップと、
前記特定された金属材料、前記検出された硬さ、前記格納された所定の作動条件、および前記計測された蒸気タービンロータの形状に基づいて、前記蒸気タービンロータの所定部位の温度および応力を解析する解析ステップと、
前記特定された金属材料、前記解析された温度と応力、前記検出された硬さ、および前記記憶手段に格納された、前記蒸気タービンロータを構成する各種の金属材料に応じて、前記蒸気タービンロータの作動条件に基づいて硬さを定めるための硬さ特定データに基づいて、前記蒸気タービンロータの現状の硬さおよび余寿命時間を評価する評価ステップと
を具備したことを特徴とする蒸気タービンロータの余寿命評価方法。
【請求項11】
前記組成分析ステップにおける組成成分の分析、および/または硬さ検出ステップにおける硬さの検出に伴って前記蒸気タービンロータの表面に形成された測定痕を除去する測定痕除去ステップをさらに具備したことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価方法によって評価された蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間に基づいて設計されたことを特徴とする動翼。
【請求項13】
動翼を交換する際に、請求項8乃至11のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価方法によって蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間を評価することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項14】
請求項8乃至11のいずれか1項記載の蒸気タービンロータの余寿命評価方法によって評価された蒸気タービンロータの現状の強度および余寿命時間に基づいて設計された動翼と、
前記動翼が装着された前記蒸気タービンロータと
を具備することを特徴とする蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−125299(P2006−125299A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314841(P2004−314841)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】