説明

蒸発冷却電気式機械

電気式機械(10、100)は、他の磁界発生手段が利用可能であるが、好ましくは永久磁石(24a、24b)を有しているローター(14a)とステーター(12)とを備えている。ステーターは、ローターとステーターとの間に画成される空隙(26a、26b)を横断する当該ロータの磁界と相互作用する、ステーター棒(16)に巻回されたコイル(22)を有している。ローター(14)は、冷却剤(82)を包含しているチャンバー(70)のハウジング(54)を備えている。当該ローターハウジング(54)は、開放環境によってアクセスされ得る熱消散フィン(96)を有し、それによって少なくともローターの回転によって発生されるハウジングに対する空気運動がフィンから熱を吸収する。当該機械は軸方向磁束機械でもよく、コイルがローターの回転軸線(80)を形成している機械の固定軸の周りに周方向に離間されて配置された棒上に巻回されている。当該機械は、車両用のホイールモーターであってもよく、ここでホイールはローターハウジング(14)に直接に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステーター及び当該ステーターの回りを回転するように軸受されたローターを備える電気式機械に関する。当該ステーターにはコイルが設けられ、そして当該ローターには、ローターとステーターとの間の空隙を横断して当該コイルと協働するためにローター磁界発生手段が設けられている。当該機械は通常はモーターであるが、しかし、それは発電機、そして多くの実施形態においては軸方向磁束機械であってもよい。特に、それはヨーク無しでかつセグメント化されたアーマチャ機械(以下、「Y機械」と呼ばれる)、特に永久磁石機械に関する。
【背景技術】
【0002】
Woolmer及びMcCullochは、Y機械のトポロジーを記述し、トルク密度を改善することが可能な、ステーターにおける低減された鉄の有利性について論じている(非特許文献1)。それは、理想的には軸線方向(すなわち、ローターの回転軸線に平行)に配置され、ステーターの周りで周方向に離間された棒の周りに巻回された一連のコイルを備えている。ローターは、ステーターの各コイルのいずれかの端部に面する永久磁石が設けられたディスクを備えている、2つのステージを有している。運転のステージにおける磁気経路は、第1のコイルを通ってローターの第1のステージの第1の磁石に入り、当該ローターのバックアイアンを横断して第1のステージの隣り合う第2の磁石に向い、当該ステーターの第1のコイルに隣り合う第2のコイルを通り、第1のステージの第2の磁石に整列された、当該ローターの第2のステージの第1の磁石に入り、第2のステージのバックアイアンを横断して第1のステージの第1の磁石に整列された、第2のステージの第2の磁石に向い、そして、第1のコイルを通って回路を完成させている。
【0003】
電気式機械に伴う一つの困難性は、一般に、適切な冷却をもたらすことである。これは、高トルクにおいてコイルにかなりの熱が発生される、高トルク密度を有するY機械に特有の問題であり、しばしば、少なくとも長期間に亘り用いられ得るそのトルクに対して制限要因となる。また、当該コイルは互いから隔離され、そしてそれ故に、コイルの間は低い熱伝導であるので、モーターの1つの領域のみを冷却することでは不十分である。
【0004】
特許文献1(WO-A-2006/066740)は、ステーターコイルを内部に搭載する円筒状スリーブを有するハウジングを備えるY機械を開示している。当該スリーブは中空であり、それによって冷却媒体が循環される。しかしながら、当該コイルはステーターのハウジングに熱を運ぶべく熱伝導材料に埋め込まれている。ローターはハウジングに回転可能に軸受されている。ステーターの棒は、Y機械をまた開示している特許文献2(GB-A-2379093)におけるように、特許文献3(WO-A-03/094327)と同じく積層されて見える。冷却配列は述べられていない。
【0005】
特許文献4(US-A-6720688)はY機械を開示し、そこでは、当該ローターが、ステーターハウジングによって画成されているチャンバー内に流体を循環させるためのベーンポンプとして作用し、ハウジング内にベアリングで支持され、当該ローターを保持しているローターシャフトがステーターハウジングを貫通して延在している。流体がステーターコイルを冷却している。
【0006】
もちろん、冷却の問題はYモーターに限定されない。
【0007】
蒸発冷却の考えは、例えば、特許文献5(SU-955379)に採用されている。そこでは、中空のローターシャフトが外部の回転ハウジングに延び、その結果、シャフト内で蒸発する冷却剤が当該ローターを冷却し、そしてベーパーが液体として戻る前に、その熱を解放する当該外部ハウジング内で凝縮するように見える。特許文献6(US5394040)は同じような配列を開示している。特許文献7(SE-A-7411152)は同様に、モーターの蒸発冷却を開示しているように見える。これらの装置は受動的で、ここで冷却回路が動力源を備えているが、より能動的な配列が開示されている。特許文献8(US-A-3217193)は、モーター又は発電機の熱い部分に液体の冷却剤を噴霧している。特許文献9(US-A-2007/0199339)は、ステーターと外部の熱交換器を通る通路間での正しい方向の流れを保証するバルブを備えた完全な冷却剤回路を開示している。この進展は、車両用のホイールモーターにおいて主な用途を見出している本発明にとって特に興味深い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO-A-2006/066740
【特許文献2】GB-A-2379093
【特許文献3】WO-A-03/094327
【特許文献4】US-A-6720688
【特許文献5】SU-955379
【特許文献6】US5394040
【特許文献7】SE-A-7411152
【特許文献8】US-A-3217193
【特許文献9】US-A-2007/0199339
【非特許文献1】TJ Woolmer and MD McCulloch "Analysis of the Yokeless and Segmented Armature Machine", International Electric Machines and Drives Conference (IEMDC),2007年5月3日ないし5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実際に、本発明の目的は、受動的ではあるが、効果的な蒸発冷却配列を備える電気式機械を提供することである。冷却に必要とされる追加のエレメント及び機器を最小にし、それにより冷却配列によっての動力損失に関してのコストが最小にできるべくすることが特有な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、ローター磁場を有するローター、及び当該ローターとステーターとの間に画成される空隙を横断する当該ローター磁場との磁気的相互作用のためのコイルを有するステーターを備え、当該ステーターは当該機械のための取付け台に関して固定された構成部品であり、かつ当該ローターは、ローターとステーターとの間に当該コイルを冷却する流体冷却媒体を包含するシールされたチャンバーを画成する回転ハウジングをステーターの外側に形成して、当該ステーターの周りを回転し、当該冷却媒体は、当該ステーターの運転設計温度よりも低く、当該ローターハウジングの運転設計温度よりも高い沸点を有し、そして、当該ローターハウジングは冷媒によってアクセスされ得る熱消散外表面を有していることを特徴とする電気式機械が提供される。好ましくは、当該冷媒は、開放環境の空気である。
【0011】
使用中の当該チャンバーは、液体であるときの前記冷却媒体でもって、好ましくは、容積で約25%よりも低く満たされている容積を備えている。液体のベーパーに対する容積比は、温度が上昇しそして圧力が増大するのに伴い変化する。25%よりも低い充填容積は、大気温度状態である。好ましくは、その残りの容積は、ベーパー形態の冷却媒体でのみ満たされる。当該チャンバー内の圧力は、機械が作動していないとき、好ましくは、大気圧である。圧力に順応する手段が設けられてもよい。
【0012】
好ましくは、当該電気式機械は、ローターの回転軸線を形成する当該機械の固定軸の周りに周方向に離間されて配置された棒にコイルが巻回されている軸方向磁束機械である。好ましくは、当該棒は回転軸線に平行であり、当該ローターは当該棒の端部の各々と相互に作用する永久磁石をそれぞれが有している2つのステージを備えている。
【0013】
好ましくは、当該ステーターは前記取付け台のスタブ軸に取り付けられ、当該スタブ軸に前記ローターが回転可能に軸受されている。
【0014】
好ましくは、当該ローターのステージの各々は環状の皿体を備え、それらの外縁はスリーブによって一緒に連結され、そして前記永久磁石を搭載し、一方のステージの内縁は前記スタブ軸に軸受され、他方のステージはプレートによって塞がれている。
【0015】
好ましくは、前記プレートはまた、前記ステーターを貫通して延在する前記スタブ軸の一端部に軸受されている。
【0016】
好ましくは、前記スリーブは熱を外部に発散させるためにフィンを有している。当該フィンは半径方向又は軸方向に向けられていてもよい。当該スリーブは、そのある領域の冷却媒体のベーパーによる接触に利用可能となることを保証すべく、錐体にされてもよい。当該チャンバーは、好ましくは、前記スタブ軸上でリップシールによってシールされている。しかしながら、適切な代替案が用いられてもよい。
【0017】
好ましくは、前記コイルの周り及び間に拡散性材料が配置され、それによって液体冷却媒体が捕捉されて当該コイルに運ばれ、そして当該コイルから蒸発する液体からのベーパーが逃げる。当該拡散性材料は、ヒートパイプにおけるその用途に類似する、芯材(ウィック)として作用する。
【0018】
好ましくは、当該ステーターの周りの液体冷却媒体を洗浄するために当該ローターハウジングの内部にへら(paddle)が配置されている。
【0019】
好ましくは、求心性加速度によって当該ローターハウジングの内側に対抗して保持されている液体冷却媒体を当該ステーターに掬うべく、スクレーパーが当該ステーターに配置されている。
【0020】
一つの実施形態において、前記機械はモーターである。実際には、それは車両のホイールモーターである。
【0021】
かくて、一形態において、本発明は車両から懸架されたスタブ軸を有し、上に規定されたモーターが当該スタブ軸に取り付けられていることを特徴とする車両を提供する。好ましくは、当該車両のホイールは前記ローターハウジングに取り付けられている。好ましくは、当該車両を制動すべく回生制動が用いられている。いずれにしても、好ましくは、ブレーキディスクが前記ローターハウジングに取り付けられている。前記ディスクは、当該ローターの一つのステージに取り付けられてもよい。ホイールは、好ましくは、当該ホイールを通って流れ当該ローターハウジングを冷却すべく、車両を通過する空気へのアクセスを許容する開口を有している。好ましくは、前記フィンは、前記開口を通して空気を引き込むべく形状付けられている。前記形状は、前記ハウジングで螺旋型を有しているフィンであってもよい。
【0022】
もう一つの実施形態において、前記機械は当該ローターを前記ステーターの回りに回転させるための手段が設けられている発電機である。前記手段はベルト及びプーリーを備えていてもよい。本発明は完全に都合よく発電機として運転できるが、その場合に、発電機が静止でユーザーによってアクセス可能であるなら、ユーザーとの偶発的な接触を防止するために回転しているローターを保護することが必要か、又は少なくとも望ましい。当該ガードは、当該ローターが熱を発散することができるように、冷媒の流れ(好ましくは、空気流)へのアクセスを有している必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態が添付の図面を参照して以下にさらに説明される。ここで、
【図1】本発明が(排他的ではないが)主に関係するヨーク無しでかつセグメント化されたアーマチャ機械の概略的な側面図である。
【図2】図1の配列の斜視図である。
【図3a】本発明によるモーターの側断面図である。
【図3b】図3aのB−B線での断面図である。
【図4a】図3のモーターのステーターの斜視図である。
【図4b】図4aの詳細部の側面図である。
【図5】ベアリング配列が修正されている、図3aに類似の図である。
【図6】本発明による発電機配列の概略的な略図である。
【図7】図4及び5の配列のもう一つの概略的な変形である。
【図8】モーター及びホイールを通る図3aに示されたのと同様な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ヨーク無しでかつセグメント化されたアーマチャ機械10が概略的に図1に図解されている。当該機械10は、ステーター12及び2つのローター14a、14bを備えている。当該ステーター12は、ローター14a、14bの回転軸線20の回りに周方向に離間されている別々のステーター棒16の集合である。棒16の各々は、回転軸線20に平行に配置されているそれ自体の軸線16aを有している。しかしながら、それは絶対的に必須というわけではない。軸方向磁束機械において、当該軸線16aは回転軸線20に実際に平行である。しかしながら、それは、回転軸線20に関して放射状であってさえも、如何なる角度に配置されてもよい。以下の議論は軸方向磁束機械に関するが、しかし、これは如何なる意味においても限定するものと理解されるべきでなく、状況が許す場合には、本発明は当該ステーター棒16の他の傾きに対しても等しく適用する。
4 ステーター棒の各々の各端部には、コイルのスタック22を閉じ込めるという物理的目的を果しているシュー18a、18bが設けられ、そのスタック22は、好ましくは、高いフィルファクター(曲線因子)が達成されるように、正方形断面の絶縁ワイヤー(又は、場合によっては矩形断面)のものである。当該コイル22は、(モーターの場合)当該コイルを流れる電流によって発生される結果としての磁界の磁極が、隣り合うステーターコイル22において反対であるように、当該コイルを励磁する電気回路(不図示)に接続されている。
【0025】
2つのローター14a、14bは、当該ステーターコイル22との間で互いに面している永久磁石24a、24bを保持している。実際に、軸方向磁束機械において、当該ローター及びそれらの磁石は半径方向に配置されているが、しかし、当該ステーター棒が傾けられているとき、それらは同様である。2つの空隙26a、26bが、シュー及び磁石の対18a/24a、18b/24bのそれぞれの間に配置されている。回転軸線20の回りに離間されて等しい数のコイル及び磁石が存し、そして好ましくは、コイルの各々が、当該ステーターに関しての当該ローターの同時でかつ同じ回転位置で、対応する磁石対に整列しないように、異なる数のコイル及び磁石が存する。これはコギングを低減するのに役立つ。
【0026】
(本発明が主として関連する)モーターにおいて、上述の電気回路は、コイルが異なる時に異なる磁石対に整列するのを生じさせるのに役立ち、そして当該ローターと当該ステーターとの間に適用されるトルクに帰すべく、コイルの極性が交番するように、当該コイル22を励磁すべく配列されている。ローター14a、14bは、一般に、(下で分かるが、例えば、不図示のシャフトによって)共に接続され、ステーター12に対して軸線20の回りに共に回転する。ステーター12は、一般に、(再度、下で分かるが、例えば、不図示のハウジングに)固定されている。当該配列によってもたらされる1つの利点は図1に図解されており、磁気回路30が2つの隣り合うステーター棒16及び2つの磁石対24a、24bによって、もたらされていることである。かくて、それぞれのコイル22から離れて面している磁石24a、24bの各々の背後の間で、磁束を結合する各ローターのためのバックアイアン32a、32bが必要とされるけれども、当該ステーター12のためのヨークが必要とされない。
【0027】
このように、モーターの場合、当該コイル22の適切な励磁によって、当該ローター14が軸線20の回りを回転するように付勢される。もちろん、発電機の場合には、ローター14a、14bの回転は、当該ローター14a、14bが回転するときに当該ステーター棒16に誘導される変化する磁束に従い、ステーターのコイル12に電流を誘導する。
【0028】
しかしながら、いずれにしても、熱が当該コイル22に発生され、当該機械の効率が低下され、そしてこの熱が除去されないなら、その能力が制限される。そこで、本発明は、ローターによって形成され、冷却剤の冷却媒体が供給されるハウジング内に当該ステーターコイル16を包囲することを提案している。
【0029】
図3aに向うと、本発明によるモーター100は、車両(不図示)のスタブ軸50に取り付けられたステーター12を備えている。当該ステーターは、スタブ軸50に固定されたステータープレート52の間で支持されている棒16に取り付けられたコイル22を備えている。ローター14は、スリーブ60によって外縁で連結されている2つの環状のプレート56、58から形成されたハウジング54を備えている。環状のプレート58は、環状のプレート58の開口64を貫通しているスタブ軸50上にベアリング62を介して回転可能に軸受されている。環状のプレート56は、ベアリング68を介してスタブ軸の端部50aにまた軸受されている中心のプレート66でもって満たされている。環状のプレート56、58、スリーブ60及び端部のプレート66で形成されたローターハウジング544は、環状のプレート58及びスタブ軸50の間に配置された回転リップシール72によってシールされたチャンバー70を包囲している。
【0030】
ロータープレート56、58は全ての好都合な、好ましくは、非磁性材料から作られる。その場合には、磁性結合材料であり、当該ステーター棒16に整列され、そしてそれとの間で空隙26a、26bを画定している永久磁石24a、24bが配置されている環状のバックアイアン32a、32bが設けられている。
【0031】
車両のホイール90は、当該ローターハウジング54に好都合な手段(不図示)によって取り付けられている。また、当該ハウジングプレート58の中央寄りで、スタブ軸50に取り付けられたキャリパー(不図示)と相互作用のために、ブレーキディスク(不図示)が当該ローターハウジング54に取り付けられてもよい。
【0032】
当該モーター100を作動させる動力電子機器92がスタブ軸50の前側フランジ50bに取り付けられてもよい。それらには、スタブ軸50を通るチャンネル(不図示)を介したケーブルでもって車両から供給され得る。動力電子機器92は、図1及び2を参照して上述したように、かつ、スタブ軸50の回りで回転軸線80の回りに当該ローターを駆動するために、磁石24a、24bとの磁気的相互作用を生じさせるべくコイル22の励磁を制御する。
【0033】
当該コイル22によって発生される熱は消散されねばならない、そうでなければ、モーターのトルク能力が制限されよう。この目的のために、チャンバー70は、車両が停止しているときに重力によってチャンバー70の最下点に集まる液体冷却剤の冷媒82を組み込んでいる。しかしながら、当該ローターが回転を開始したとき、スリーブ60の内部83に周期的に配置されているへら(paddle)84が当該液体冷媒82を掬い、そしてスタブ軸50の全周囲の周りのコイル16へ飛散させる。当該ローター14の回転速度が増大するにつれ、求心性の加速度が当該ローター14の内壁に対抗して流体を保持する。従って、当該ステーター12の頂部及び潜在的にはその周囲の周りの何処においても、液体を捕らえ、そして当該コイル22に飛散させて接触させる掬い(scoop)86が配置されている。
【0034】
当該へら84は、速度が上昇するまでは当該コイルの冷却は一般に必要とされないという根拠により、省略されてもよい。しかしながら、速度が一旦上昇すると、求心性の加速度及び液体と当該スリーブの内表面83との間での摩擦が液体を当該表面に対抗して保持する結果、それはまたスタブ軸50の周りで当該ローター14と共に回転する。この場合には、掬い86が当該スリーブ60の表面83のより近くに配列されてもよい。実際に、図3bを参照するに、回転(例えば、矢印Cの方向の車両についての標準の前方回転)の方向において、掬い86a、86b、86cは当該表面に次第により近付いてもよい。かくて、図示されたように90度配置でそれらの3つが存在するなら、へら86aは(底部に収集されて示されている)第1の深さの回転液体82をこすり落とし、掬い86bは表面83により近い第2の深さを、そして掬い86cは残存している大半をこすり落とすであろう。
【0035】
しかしながら、当該コイル22の間及び周りには、液体冷媒を吸収し、そして当該コイル22を濡らす拡散材料94(図4a、4bを見よ)が差し入れられている。実際に、当該材料は、例えばロックウールのような脱脂綿と同様な芯材料であってもよい。熱が当該コイル22によって発生され始めると、この熱は液体冷却剤へ移送される。これは、当該コイル22の所望の作動温度よりも低い沸点を有するように用意されている。したがって、その温度が到達されるとき、当該液体は沸騰して蒸発する。その結果、それは当該コイル22から追い散らされ、それと共に熱を奪い、さらに液体冷媒は芯材料94によって吸込まれる。そこで、チャンバー70に充満しているベーパーが、少なくともその周囲にフィン96が設けられているハウジング54の表面に接触する。大気温度において、当該冷媒は、凝縮してその熱を当該ローターハウジング54の当該材料に引き渡し、そして当該サイクルが繰り返され得る所から液体に戻るべく用意されている。
【0036】
モーターの温度が高まるときチャンバー70内のベーパー圧力も高まるが、リップシール72によってもたらされているシールが気密であれば、それは逃げることができない。より多くの熱が当該コイル22によって発生されるとき、それが逃げずに圧力が高まる間に、液体の沸騰温度が上昇し、その結果、当該ローターハウジングの温度もまた上昇して熱をより速やかに発散させる。その結果として、当該コイルの温度もまた上昇するが、システムは自己調節式で、熱くなればなるほどより速やかに熱を発散させる。しかしながら、蒸発熱移送の理由で、コイル22とハウジング54との間の温度勾配は、熱をいまだに輸送しているとしてもかなり小さい。
【0037】
本発明の利点は、当該ローターフィン96が、駆動されて回転中に、その自らの進行のみならず、(図3aに示されるように、モーターが車両に取り付けられているときは)車両の進行からの冷却空気流に露出されることである。図3aにまた示されるようなホイールモーターの場合、当該ホイール90は98の位置に開口を有してもよく、それによって空気流Aが車両の外側から当該ローターハウジング14を洗い流すことができる。実際に、ホイール90とフィン96との両者は、空気を掬いそしてそれをハウジング14上に引き込むべく用意されてもよい。例えば、当該ホイール90には、空気が当該ローターハウジング14に向けられるように、ホタテ貝の縁のように波を打った開口98が設けられてもよい。代わりに又は付加的に、フィン96が、例えば、図3aにおいて矢印BB方向に空気が圧送されるように、螺旋ねじとして用意されてもよい。
【0038】
ベアリング62、68はチャンバー70に接触して示されている。そうであれば、冷媒82がベアリングのための潤滑剤として作用することが重要である。代わりに、ベアリング68をチャンバー70から隔離することも可能であろう。例えば、シール72が(チャンバー70に関して)ベアリング64より中央寄りであり得る。もう一つのリップシールがベアリング68をチャンバー70から隔離するためには必要とされよう。当該冷媒82が電子機器92に悪影響を与えないこともまた重要である。
【0039】
図5に向うと、代替の実施形態のモーター100’が図解されている。ここで、車両(不図示)のスタブシャフト50’は中空の端部50a’を有しており、そのボア102内にロータープレート66’のシャフト104が受け入れられている。当該シャフト104はスペーサー106によって離間され、そしてサークリップ108,110によって保持されているベアリング62’、68’に支持されている。サークリップ110はベアリング62’、68’に予荷重を与えるべく機能するナットに置き換えられてもよい。シール112は、ベアリング62’、68’を液体冷却剤の冷媒82を包含しているチャンバー70'から隔離している。
【0040】
ローター14'は、ローターハウジングプレート56’に接続されているプレート66’を有し、ローターハウジングプレート56’自体はコーン状のスリーブエレメント60を介して対応するローターハウジングプレート58’に接続されている。当該スリーブ60のテーパーは、液体冷媒82が(回転軸線80から)最も半径方向に距離のあるチャンバーの隅部70aに集まる結果、当該スリーブ60の内表面60aの多くが、液体冷媒82によって遮断されるよりむしろ、チャンバー70内のベーパーに直接に接触するべく露出されることを保証する。
【0041】
フィン96は、上述の実施形態と同様に、当該スリーブ60上に配置されている。加えて、しかしながら、(軸方向に向けられそして周方向に配置されている)フィン96a、96bは、環状のプレート56'、58'上に設けられている。そうでなければ、当該配列は、ホイール90がプレート66’に受け入れられているスタッド120にナット118によってボルト留めされた状態で、上述とほぼ同じである。ブレーキディスク122が内側の環状のプレート58'に取り付けられ、そしてシール72'がチャンバー70'を外部の環境から隔離している。さらなるベアリング62aがブレーキディスク122を支持してもよい。
【0042】
図6において、発電機100"は、図5又は6に図解されているモーターの内部構造を基本的に有している。ここで、スタブ軸50"は地盤に取り付けられ、そしてローターハウジング14"がプーリー150及びベルト152によって駆動される。当該ローターはフィン96を有し、全体の回転アセンブリは開口付きのガード154で保護されている。
【0043】
図7において、ローターハウジング14xはハウジングのフランジ162に直接に取り付けられた車両のタイヤ160を有している。この場合、当該ローターは2つの部品であってもよく、すなわち、車両のハブ66xにボルト118によってボルト留めされている第1のハブ部品5660、及び当該ハブ部品5660にボルト162によって固定され、不図示の手段によりシールされている第2のフランジ部品58xである。図5の配列のように、当該ハブ66xは車両(不図示)から懸架されているスタブ軸50x内に回転すべく軸受されている。フィン96xが当該ローター14xの側部に存する。当該ローター14xは、液体冷媒82の溜まりを作るため、及び当該ローター14xの冷却表面へベーパーの直接のアクセスを与える液体がチャンバー70xの縁部/隅部70b、70cにないことを可能にするために、タイヤビード168の間の位置166で凹まされてもよい。
【0044】
図8において、モーター100は車両のサスペンション(不図示)に固定するためのハブ50"を備えている。当該ハブはローターフランジ56"を回転可能に搭載するベアリング62"を保持する。フランジ56"はローターハウジング部材54"及びブレーキディスク57"の両者を、スタッド及びナット手段59"によって取付ける。当該ローターハウジング部材54"は、図3aを参照して上述したように熱を発散すべく、96"の位置にフィン付けられている。
【0045】
当該ハブ50"はまた、多数のステーター棒16が固定されその周りにコイル22"が巻回されているステーターディスク52"を取付けている。当該ディスク52"は動力電子機器回路基板92"を取付けている。カップ状のローターハウジング部材54"の面縁部に対して開口付のロータープレート58"がファスナー53"によって固定されている。その開口61"は、ファスナー63"を取り外すことによって電子機器基板92"へのアクセスは得られるが、カバープレート66"によって閉じられかつシールされている。当該ローター構成部品54"、58"は、ステーターコイル22に隣り合って配置されている永久磁石24a"、24b"を取付けている。
【0046】
シール72"が、ローター14"及びハブ50"の間に画成され、ステーター12"を取り囲むチャンバー70"を閉じている。ハブ50"は、開いているが、シールを完成しチャンバー70"を閉じるべく(不図示のプラグによって)閉塞されている中心穴51"を有している。けれども、モーター100"への電力供給及び制御のための車両からの配線(不図示)は電子機器基板92"との接続のためにプラグを貫通するであろう。
【0047】
ロータープレート58"は、スタッド及びナット94"を介して取付ける目的のために内側フランジ92"を有しているホイール90"を取付けている。そうでなければ、配列は上述のようであり、チャンバー70"内の冷却剤が当該コイル22"及び電子機器基板92"の両者を冷却する。当該フィン96"は、当該ローターが当該ハブ50"の回りを回転するときに循環を促進するべく、当該ローターハウジング部材54"の面に螺旋状に配列されてもよい。
【0048】
(水、メチルアセテート、フルオロベンゼン、2−ヘプテンのような)適切な冷媒は当業者に知られ、用途に依存して、50-800Cの範囲内の冷媒の沸点で0.1barと5barとの圧力の間で、当該コイルが大気温度ないし150°Cの範囲内の作動温度を有するように用意されてもよい。このシナリオにおいて、ハウジング54の温度は大気温度ないし80°Cの範囲内であろう。
【0049】
この明細書の説明及び請求項の全体に亘り、語、「備える」及び「包含する」とそれらの変形は、「含むが、限定されない」ことを意味し、そしてそれらは他の半分、追加物、構成部品、完全体、又はステップを排除することは意図されていない(排除しない)。この明細書の説明及び請求項の全体に亘り、単数は、状況がそう要求していなければ、複数を包含する。特に、決められていない品目が用いられている場合、当該明細書は、状況がそう要求していなければ、単数のみならず複数を考慮しているものとして理解されるべきである。
【0050】
本発明の特別な形態、実施形態又は実施例に関連して説明された特徴、完全体、特性、合成物、化学的半分又はグループは、互換性が無いことがない限り、他の説明された形態、実施形態又は実施例にも適用可能であることが理解されるべきである。この明細書で開示された全ての特徴(添付の請求項、要約及び図面を含む)、及び/又はここに開示されている方法ないしはプロセスのステップは、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも幾つかが互いに排他的な組合せである場合を除き、如何なる組合せにも組み合わせられ得る。本発明は前述の実施形態の細部に制限されない。本発明は、この明細書(添付の請求項、要約及び図面を含む)に開示されている特徴の新規なもの又は新規な組合せ、又はそのように開示されている方法ないしはプロセスのステップの新規なもの又は新規な組合せに広がっている。
【0051】
この用途に関連してこの明細書と同時に又は以前に出願されている、及びこの明細書と共に公衆の閲覧に供されている全ての論文及び書類に読者の注意が向けられるべきで、そしてかかる論文及び書類の内容は参照によりここに組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローター磁場を有するローター、及び当該ローターとステーターとの間に画成される空隙を横断する当該ローター磁場との磁気的相互作用のためのコイルを有するステーターを備え、
当該ステーターは当該機械のための取付け台に関して固定された構成部品であり、かつ当該ローターは、ローターとステーターとの間に当該コイルを冷却する流体冷却媒体を包含するシールされたチャンバーを画成する回転ハウジングをステーターの外側に形成して、当該ステーターの周りを回転し、
当該冷却媒体は、当該ステーターの運転設計温度よりも低く、当該ローターハウジングの運転設計温度よりも高い沸点を有し、そして
当該ローターハウジングは冷媒によってアクセスされ得る熱消散外表面を有していることを特徴とする電気式機械。
【請求項2】
前記冷媒は、開放環境の空気であり、これにより、少なくとも前記回転により生じるハウジングに対する相対的な空気運動が前記外表面から熱を吸収することを特徴とする請求項1に記載の電気式機械。
【請求項3】
当該電気式機械は、前記ローター磁場が当該ローターに配置された永久磁石によって発現される永久磁石機械であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気式機械。
【請求項4】
当該電気式機械は、当該コイルが当該ローターの回転軸線を形成する当該機械の固定軸の周りに周方向に離間されて配置された棒に巻回されている軸方向磁束機械であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項5】
当該棒は回転軸線に平行であり、当該ローターは当該棒の端部の各々と相互に作用する永久磁石をそれぞれが有している2つのステージを備えていることを特徴とする請求項4に記載の電気式機械。
【請求項6】
当該ステーターは前記取付け台のスタブ軸に取り付けられ、当該スタブ軸に前記ローターが回転可能に軸受されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項7】
当該ローターのステージの各々は環状の皿体を備え、それらの外縁はスリーブによって一緒に連結され、そして前記永久磁石を搭載し、一方のステージの内縁は前記スタブ軸に軸受され、他方のステージはプレートによって塞がれていることを特徴とする請求項6に記載の電気式機械。
【請求項8】
前記プレートはまた、前記ステーターを貫通して延在する前記スタブ軸の一端部に軸受されていることを特徴とする請求項7に記載の電気式機械。
【請求項9】
前記プレート及び前記他方のステージは単一の構成部品であることを特徴とする請求項7又は8に記載の電気式機械。
【請求項10】
前記ローターハウジングは熱を外部に発散させるべく熱消散外表面を形成するフィンを有していることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項11】
前記チャンバーは、リップシールによって前記スタブ軸にシールされていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項12】
前記コイルの周り及び間には拡散性材料が配置され、それによって液体冷却媒体が捕捉されて当該コイルに運ばれ、そして当該コイルから蒸発する液体からのベーパーが逃げることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項13】
当該ステーターの周りの液体冷却媒体を洗浄するために、当該ローターハウジングの内部にへらが配置されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項14】
求心性加速度によって当該ローターハウジングの内側に対抗して保持されている液体冷却媒体を当該ステーターに掬うべく、スクレーパーが当該ステーターに配置されていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項15】
前記機械はモーターであることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項16】
当該機械は車両のホイールモーターであることを特徴とする請求項15に記載の電気式機械。
【請求項17】
車両のホイールが、前記ローターハウジングに、好ましくは、前記ローターハウジングに取付け可能であるブレーキディスクと共に、取付け可能であることを特徴とする請求項16に記載の電気式機械。
【請求項18】
車両から懸架されたスタブ軸を有し、請求項16又は17に記載の電気式機械であるモーターが当該スタブ軸に取り付けられていることを特徴とする車両。
【請求項19】
当該車両のホイールは前記ローターハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項18に記載の車両。
【請求項20】
当該車両を制動するべく回生制動が用いられ、そのとき、モーターはまた発電機として作用することを特徴とする請求項18又は19に記載の車両。
【請求項21】
ブレーキディスクが前記ローターハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項18、19、又は20に記載の車両。
【請求項22】
前記ディスクは、当該ローターの一つのステージに取り付けられていることを特徴とする請求項5に従属するときの請求項21に記載の車両。
【請求項23】
ホイールは、当該ホイールを通って流れ当該ローターハウジングを冷却するべく、車両を通過する空気へのアクセスを許容する開口を有していることを特徴とする請求項19ないし22のいずれかに記載の車両。
【請求項24】
前記フィンは、前記開口を通して空気を引き込むべく形状付けられ、前記形状は、好ましくは、前記ハウジングで螺旋型を有しているフィンであることを特徴とする請求項5に従属するときの請求項23に記載の車両。
【請求項25】
タイヤが前記ローターハウジングに直接に取り付けられていることを特徴とする請求項18ないし24のいずれかに記載の車両。
【請求項26】
前記機械が、当該ローターを前記ステーターの回りに回転させるための手段が設けられている発電機であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項27】
前記手段はベルト及びプーリーを備えていることを特徴とする請求項26に記載の電気式機械。
【請求項28】
当該ローターが熱を発散できるように、冷却空気流へのアクセスを有しているガードをさらに備えていることを特徴とする請求項26又は27に記載の電気式機械。
【請求項29】
大気温度状態で使用中の当該チャンバーは、液体の冷却媒体で約25%よりも低い容量に満たされている容積を備えていることを特徴とする請求項1ないし17、請求項26ないし28のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項30】
その残りの容積は、ベーパーの冷却媒体でのみ満たされていることを特徴とする請求項29に記載の電気式機械。
【請求項31】
当該機械の運転を制御する電子構成部品は、前記チャンバー内で当該ステーターに取り付けられ、前記冷却媒体によって冷却されることを特徴とする請求項1ないし17、請求項26ないし30のいずれかに記載の電気式機械。
【請求項32】
前記電子構成部品は前記スタブ軸に取り付けられていることを特徴とする請求項5に従属するときの請求項31に記載の電気式機械。
【請求項33】
添付の図面を参照して実質的に説明されたような電気式機械。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−523817(P2012−523817A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505237(P2012−505237)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050613
【国際公開番号】WO2010/119281
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(502144729)アイシス イノベイシヨン リミテツド (18)
【Fターム(参考)】