説明

蒸着マスクの洗浄装置

【課題】有機EL素子の大型蒸着マスクを効率よく洗浄し、蒸着マスクの利用回数を上げることができる装置を実現する。
【解決手段】蒸着マスク2は第1の面と第2の面を有し、前記第1の面には蒸着剤が付着しており、前記蒸着マスクの第1の面の周辺が前記蒸着マスクよりも厚さの大きい枠部3に取り付けられている。レーザ照射手段によって、第1の面にレーザ10を照射して蒸着剤を蒸着マスクから剥離する。ノズルを有する第1の洗浄手段6によって蒸着マスクの第1の面に洗浄液を照射し、ノズルを有する第2の洗浄手段6によって超音波を印加した洗浄液を蒸着マスクの第2の面に照射する。これによって、蒸着マスク2の近傍において、超音波が印加された洗浄液を照射することが出来る。したがって、蒸着マスクを効率よく洗浄することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに堆積した蒸着剤をレーザーにより除去した後、蒸着マスクに残留した蒸着剤を超音波スプレーで洗浄する蒸着マスクの洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL表示装置等は、画面がフラットで薄型であるということで、モニタ、TV等でのフラットディスプレイとして需要が拡大している。有機EL表示装置は自発光であることから、視野角特性が優れているとともに、バックライトが不用であるという特徴からディスプレイとして種々の応用分野が見込まれている。
【0003】
有機EL表示装置は発光をする複数の層からなる有機EL層と有機EL層を駆動するTFTとから画素が構成され、この画素がマトリクス状に配置されることによって表示領域が形成されている。光を発生する有機EL層は、画素部において、薄膜トランジスタ(TFT)等が形成された層の上の平坦化膜の上、あるいは、TFTが形成されていない層の上の平坦化膜の上に蒸着によって形成される。
【0004】
現在主流である有機EL素子の製造方法は、蒸着マスクを用いてパターンを成膜する方法である。素子パターンはチャンバ内で蒸着剤を加熱昇華し、蒸着マスクの開口部を通して基板に蒸着されることで形成される。蒸着マスクの開口部以外の場所には、蒸着剤が堆積するため、成膜枚数に応じて蒸着マスクの洗浄を行っている。
【0005】
蒸着マスクの洗浄方式はウェットによる浸漬方式が用いられているが、処理に時間を要する、有機の溶剤を用いるため環境負荷が増加する、微細パターンにダメージが発生する、蒸着剤の回収再利用が困難という理由で、レーザーを用いたドライ方式が開発されている。「特許文献1」には、蒸着マスクにレーザーを照射して蒸着剤を剥離し、これを超純水および有機溶媒に浸漬して洗浄する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−192426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
「特許文献1」に記載の技術では、マスクが大型化した場合、浸漬方式での洗浄であるため、超音波振動子と蒸着マスクの被洗浄面の距離が離れ、洗浄効果が低下する。また、超音波振動子と蒸着マスクの被洗浄面の距離を近づけるために、スプレー方式で洗浄する場合、スポット型ノズルでは蒸着マスク全面をスキャンするため、洗浄時間が大幅に増加し大型マスクに対応できない。また、ライン型ノズルで超音波をスプレーした場合、蒸着マスクのフレームが障害となりノズルを被洗浄面に接近させることができない。
【0008】
本発明の課題は、大型蒸着マスクにレーザーを照射することによって、蒸着剤を蒸着マスクから剥離するとともに、蒸着マスクに残留した蒸着剤を効率よく洗浄することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、レーザーで蒸着マスクの蒸着剤を剥離した後、被洗浄面の裏面から液体の超音波スプレーを照射し、マスクの開口部から被洗浄面に回りこんだ超音波により、被洗浄面を洗浄することを特徴とする装置を提供する。スプレーする液体は、洗浄後の液体に混入した蒸着剤を蒸留再利用するために、純水や炭化水素系の洗浄剤が望ましい。
【0010】
炭化水素系の洗浄剤としては、ハイドロフルーオロエーテル(R1−O−R2,R1CH3,C2H5,C3H7,C4H9,・・・・、R2=CF3,C2F5,C3F7,C4F9,・・・・)の混合液が望ましい。洗浄後の液は回収され、純水あるいは洗浄剤を蒸発させることで、残留した蒸着剤を精製処理し、再度蒸着に利用することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄装置を用いることで、大型蒸着マスクに付着した蒸着剤を効率よく除去できる。また、洗浄後の蒸着マスクへの再付着も発生しない。結果としてマスクの利用効率も大幅に向上し、蒸着剤の利用効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による有機EL素子の蒸着マスク洗浄装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明による有機EL素子製造装置のシステム構成を示す図である。
【図3】本発明を用いて製造される有機EL表示装置の例である。
【図4】本発明を用いて蒸着される有機EL層の例である。
【図5】洗浄液に含まれる蒸着剤の回収を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
具体的な実施例を説明する前に、本発明の製造方法が適用される、有機EL表示装置の構成の一例を説明する。有機EL表示装置は有機EL層からの発光が素子基板側に向かうボトムエミッション型と、素子基板の反対側に向かうトップエミッション型とがある。トップエミッション型はTFT等が形成された領域の上にも発光をする有機EL層を形成することが出来るので、輝度の点からは有利である。以下では、トップエミッション型を例にとって説明するが、ボトムエミッション型の場合も本質的には同じである。
【0014】
図3はトップエミッション型の有機EL表示装置の断面図である。トップエミッション型は有機EL層122の上にアノードが形成されるトップアノード型と、有機EL層122の上にカソードが形成されるトップカソード型とがある。図3はトップアノード型の場合であるが、トップカソード型の場合も同様にして本発明を適用することが出来る。
【0015】
図3において、素子基板110の上にはSiNからなる第1下地膜111と、SiO2からなる第2下地膜112が形成されている。ガラス基板からの不純物が半導体層113を汚染することを防止するためである。第2下地膜112の上には半導体層113が形成される。半導体層113はCVDによってa−Si膜が形成された後、レーザー照射によってpoly−Si膜に変換される。
【0016】
半導体層113を覆って、SiO2からなるゲート絶縁膜114が形成される。ゲート絶縁膜114を挟んで、半導体層113と対向する部分にゲート電極115が形成される。ゲート電極115をマスクにして、半導体層113にリンあるいはボロン等の不純物をイオンインプランテーションによって打ち込み、導電性を付与して、半導体層113にソース部あるいはドレイン部を形成する。
【0017】
ゲート電極115を覆って層間絶縁膜116がSiO2によって形成される。ゲート電極115と同層で形成されるゲート配線と、ドレイン配線117を絶縁するためである。層間絶縁膜116の上にはドレイン配線117が形成される。ドレイン配線117は層間絶縁膜116およびゲート絶縁膜114にスルーホールを介して半導体層113のドレインと接続する。
【0018】
その後、TFTを保護するために、SiNからなる無機パッシベーション膜118が被着される。無機パッシベーション膜118の上には、有機パッシベーション膜119が形成される。有機パッシベーション膜119は無機パッシベーション膜118とともに、TFTをより完全に保護する役割を有するとともに、有機EL層122が形成される面を平坦にする役割を有する。したがって、有機パッシベーション膜119は1〜4μmと、厚く形成される。
【0019】
有機パッシベーション膜119の上には反射電極121がAlまたはAl合金によって形成される。図3において、下部電極121は反射電極121が兼用している。AlまたはAl合金は反射率が高いので、反射電極121として好適である。反射電極121は有機パッシベーション膜119および無機パッシベーション膜118に形成されたスルーホールを介してドレイン配線17と接続する。
【0020】
本実施例はトップアノード型の有機EL表示装置なので、有機EL層122の下部電極121はカソードとなる。したがって、反射電極121として使用されるAlあるいはAl合金が有機EL層122の下部電極121を兼用することが出来る。AlあるいはAl合金は仕事関数が比較的小さいので、カソードとして機能することが出来るからである。なお、トップカソードの場合は、Alを反射電極とし、その上にITOをラミネートしてアノードとして用いる。
【0021】
下部電極121の上には有機EL層122が形成される。有機EL層122は複数の層から構成されている。トップアノード型の場合は、下層から、例えば、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層となる。これらの有機EL層はマスク蒸着によって形成される。一般には、電子注入層、電子輸送層等は、各色共通で蒸着され、発光層、ホール輸送層とは蒸着マスクを用いて各色別々に蒸着される。
【0022】
有機EL層122の上にはアノードとなる上部電極123が蒸着によって形成される。上部電極123としては透明電極であるIZO(Indium Zinc Oxide)を用いる。IZOは、表示領域全体に蒸着される。IZOの厚さは光の透過率を維持するために、30nm程度に形成される。上部電極としては、IZOと同様、金属酸化物導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を用いることが出来る。
【0023】
なお、有機EL層122が端部において段切れによって破壊することを防止するために、画素と画素の間にバンク120が形成される。バンクはアクリル樹脂あるいはポリイミド樹脂をフォトリソグラフィによって形成する。有機EL層122からの光は図3のLで示すように、素子基板110とは反対側に出射して画像を形成する。
【0024】
図4に有機EL層122部分の断面模式図を示す。図4において、下部電極121の上に電子注入層1221が形成される。電子注入層1221の役割は下部電極121である陰極からの電子の注入を容易にするものである。電子注入層1221は、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニューム(以下Alq3と略す)とLiをmol比が2<Li/Alq3<4となるように共蒸着する。この電子注入層1221の膜厚は3nmである。
【0025】
電子注入層1221の上には電子輸送層1222が形成される。電子輸送層1222は例えば、真空蒸着によりトリス(8−キノリノール)アルミニューム(以下Alq3と略す)を20nmの厚さに形成する。この層の役割は電子を発光層1223まで、出来るだけ抵抗なしに、効率よく運ぶ役割を持つ。その上には発光層1223が形成される。この発光層1223において、電子とホールが再結合することによるEL発光が生ずる。発光層1223は、例えば、Alq3とキナクリドン(Qcと略す)の共蒸着膜を20nmの厚さに形成する。Alq3とQcの蒸着速度の比は40:1である。1223の上にはホール輸送層1224が形成される。このホール輸送層1224は陽極から供給されたホールをできるだけ抵抗無しに効率よく発光層1223に運ぶ役割をもつ。ホール輸送層1224はα−NPDを蒸着により50nmの厚さに形成する。ホール輸送層1224の上にはホール注入層1225が形成される。このホール輸送層注入1225は、陽極からのホールの注入を容易にするものである。ホール注入層1225は銅フタロシアニンを蒸着により50nmの厚さに形成する。ホール注入層115の上に陽極である、上部電極12が形成される。
【0026】
なお、ホール注入層1225と上部電極123の間に、バッファー層として透明金属酸化物をEB蒸着等によって15nmの厚さに形成する場合もある。このバッファー層としての金属酸化物の材料としてはV2O5、MoO3、WO3等があげられる。バッファー層の主たる役割は陽極材料をスパッタリングするさいに、有機EL層11がダメージを受けるのを防止するためである。
【0027】
なお、発光層材料としては電子、ホールの輸送能力を有するホスト材料に、それらの再結合により蛍光もしくはりん光を発するドーパントを添加したもので共蒸着により発光層として形成できるものであれば特に限定は無く、例えば、ホストとしてはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]のような錯体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、等であっても良い。
【0028】
また、ドーパントとしてはホスト中で電子とホールを捉えて再結合させ発光するものであって、例えば赤ではピラン誘導体、緑ではクマリン誘導体、青ではアントラセン誘導体などの蛍光を発光する物質やもしくはイリジウム錯体、ピリジナート誘導体などりん光を発する物質であっても良い。
【0029】
以上にようにして、TFTおよび有機EL層が形成された基板を素子基板と称する。有機EL層は水分によって変質し、発光効率が低下する。発光効率の低下を抑え、有機EL表示装置の寿命を延ばすために、素子基板に対して、封止基板によって封止する。具体的には、封止基板の周辺に封止材をディスペンサ等で形成し、素子基板と接着する。封止基板は一般には、ガラスで形成される。
【0030】
素子基板と封止基板の接着は、負圧にした窒素雰囲気中で行われる。したがって、有機EL表示装置の内部に窒素が充填される。素子基板と封止基板をシールする封止材は、紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂が使用される。紫外線を照射する場合は、有機EL層に紫外線が照射されると有機EL層が破壊されるので、シール部のみに紫外線を照射する。
【実施例1】
【0031】
以下図表を用いて本発明の詳細を説明する。本発明の基本構成を図1に示す。パルスレーザ処理部281において、パルスレーザー10がレーザー照射窓1から被洗浄物である蒸着マスク2に照射される。蒸着マスク2は繰り返し蒸着に使われたもので、洗浄が必要な状態である。なお、パルスレーザーはパルス幅に対してパルスの周期が非常に長いもので、蒸着マスク2に照射すると蒸着マスク2が振動を生じ、蒸着マスク2に付着した蒸着剤を剥離する作用を有する。
【0032】
蒸着マスク2は進行方向4に移動する。パルスレーザー10は進行方向4と垂直にスキャンされるように制御されている。蒸着マスク2の進行とパルスレーザー10のスキャンが組み合わされて、蒸着マスク全面にパルスレーザー10が照射される。
【0033】
パルスレーザー10で洗浄された蒸着マスク2の被洗浄面201には極微量であるが、再付着などによる蒸着剤が残留する。蒸着マスクの開口部に残留した場合、パターン欠陥になるため、除去しなければならない。残留した蒸着剤を除去するために、蒸着マスク2は超音波スプレー処理部282に搬送される。
【0034】
超音波スプレー処理部282において、蒸着マスク2が進行方向41に移動し、ライン型スプレーノズル6より純水が蒸着マスク2の被洗浄面201に照射される。また、ライン型超音波スプレーノズル5より純水が蒸着マスク2の裏面202に照射される。裏面202に照射された超音波はマスクの開口部を透過して被洗浄面201に回り込み、残留した蒸着剤を除去する。
【0035】
図1において、蒸着マスク2はマスクフレーム3の裏側に溶接によって取り付けられている。蒸着マスク2はマスクフレーム3によってテンションをかけられた状態で溶接されている。蒸着マスク2の平面度を保つためである。ところで、ライン型超音波スプレーノズル5から照射される洗浄水に超音波を印加することが出来る距離は、ノズルから10mm程度である。マスクフレーム3の厚さは50mm程度である。一方、蒸着マスクの厚さは20μm〜30μmである。したがって、マスクフレーム3の前面から超音波の印加された純水を印加しようとすると、ライン型超音波スプレーノズル5の幅をマスクフレーム3の内径よりも小さくする必要がある。品種によって蒸着マスク2の大きさが異なると、品種毎にライン状スプレーノズル3の幅を変える必要が生じ、製造コストの上昇を招く。
【0036】
本発明のように、超音波の印加された純水をマスクフレーム3の裏側から照射すれば、ライン型超音波スプレーノズル5を蒸着マスク毎に換える必要は無くなる。すなわち、マスクフレーム3の裏側に蒸着マスク2が取り付けられているので、ライン型超音波スプレーノズル5は、幅に関係なく、蒸着マスクに近づけることが出来る。そして、上記に説明したように、蒸着マスク2の裏面202に照射された超音波はマスクの開口部を透過して被洗浄面201に回り込み、残留した蒸着剤を除去する。
【0037】
洗浄に使われた純水は回収し、蒸留することで蒸着剤が再利用される。 図2に、本発明を組み込んだ有機EL製造装置の構成を示す。図2では、図3で説明したトップエミッション型で、トップアノードの場合の有機EL表示装置の製造を例に説明するが、本発明は、これに限らず、トップエミッション型で、トップカソードの場合でも良いし、ボトムエミッション型でも良い。
【0038】
図2の製造装置は、大きく分けて、ステージA、ステージB、ステージC、および、ステージBに接続した蒸着マスク洗浄部から構成されている。各ステージには、ロボットアームが配置され、素子基板、封止基板あるいは蒸着マスク2を所定の位置に移動、設置する。
【0039】
図2において、左側から、下部電極まで形成された素子基板が投入される。素子基板は第1素子基板前処理部23において、紫外線を照射し、素子基板に付着した有機物等を分解して、除去しやすくする。その後、第2素子基板処理部24において、素子基板表面を清浄化する。
【0040】
清浄化した素子基板を電子注入層蒸着部25に搬送し、先に説明したような電子注入層を蒸着する。電子注入層は、各色とも共通に形成するので、電子注入層蒸着部25における蒸着マスク2は個々のサブ画素毎に開口を有する蒸着マスクではなく、大きな開口を有する蒸着マスクである。電子注入層を蒸着した素子基板は電子輸送層蒸着部22に搬送され、電子輸送層が蒸着される。電子輸送層も、各色とも共通に形成するので、電子輸送層蒸着部における蒸着マスク2も個々のサブ画素毎に開口を有する蒸着マスクではなく、大きな開口を有する蒸着マスクである。
【0041】
電子輸送層が形成された素子基板は、赤、緑、青の発光層の蒸着を行うために、各色の有機EL層の蒸着ステージに送られる。蒸着の順番は特に規定する必要は無いが、図2においては、まず、赤発光層蒸着部21において、赤発光有機ELが蒸着される。
【0042】
続いて、素子基板はステージBに搬送され、緑発光層蒸着部26において、緑発光有機ELが蒸着される。その後、素子基板は青発光層蒸着部30に搬送され、青発光有機ELが蒸着される。各発光の有機EL材料はサブ画素毎に、蒸着マスク2に形成されサブ画素の形状をした開口を介して蒸着される。なお、赤、緑、青のサブ画素が組み合わされて画素が構成される。各開口の径は小さく、正確な位置合わせが必要とされる。また、蒸着を重ねる毎に、各開口の側壁にも有機EL材料が蒸着されるために、蒸着マスク2の開口の径が小さくなる。この点からも、定期的な蒸着マスク2の洗浄が必要である。
【0043】
その後、素子基板は正孔輸送層蒸着部20に搬送され、正孔輸送層が蒸着される。正孔輸送層も各サブ画素毎に開口が形成された蒸着マスク2を用いて蒸着される。正孔輸送層が蒸着された後、素子基板は正孔注入層蒸着部19に搬送され、正孔注入層が蒸着される。正孔注入層も各サブ画素毎に開口が形成された蒸着マスク2を用いて蒸着される。
【0044】
その後、素子基板は陽極蒸着部18に搬送され、陽極となる例えば、IZOが蒸着される。IZOはサブ画素毎の蒸着ではなく、有機EL表示装置の表示領域全体にわたってベタで蒸着される。このようにして形成された素子基板は、ステージCに搬送されて、基板保管部31に保管される。
【0045】
図2の右側からは、素子基板に形成された有機EL層を水分から保護するための、封止基板が第1封止ガラス前処理部15に投入される。封止ガラス前処理部15においては、封止ガラスに紫外線が照射されて有機物を分解し、除去する。その後、封止基板は第2封止ガラス前処理部16に搬送され、ディスペンサ等によって封止材が塗布される。第2封止ガラス前処理部16においては、乾燥剤も封止基板に配置される。
【0046】
封止材が形成された封止基板は貼り合わせ封止部17に搬送され、基板保管部から搬送されてきた素子基板と張り合わされる。貼り合わせ封止部17においては、シール材の部分に紫外線が照射され、シール材を硬化させ、素子基板と封止基板を接着する。貼り合わせ封止部17におけるプロセスは減圧した窒素雰囲気中で行われる。以上のようにして、素子基板と封止基板が合わさった有機EL表示装置は、完成品排出部32に送られ、後工程に送られる。
【0047】
以上説明したプロセスにおいて、蒸着に使用される蒸着マスク2は、連続して使用されるが、数多く使用しているうちに、蒸着マスク2に有機EL材料が堆積して例えば、蒸着マスク2の開口の径を小さくするような現象を生ずる。また、有機EL材料は高価であるので、蒸着マスク2に付着した有機EL材料を再利用することがのぞましい。
【0048】
図2において、ステージBにおける蒸着マスク保管部271は、このように、多くの蒸着を行った蒸着マスク2を保管する。蒸着マスク保管部27は洗浄前蒸着マスク保管部271と洗浄後蒸着マスク保管部272に分かれている。洗浄前蒸着マスク保管部には、200時間程度の蒸着を行った蒸着マスク2が赤発光層蒸着部、緑発光層蒸着部、青発光層蒸着部等から搬送され保管される。
【0049】
洗浄前蒸着マスク保管部271から蒸着された蒸着マスク2が蒸着マスク洗浄部28に搬送され、図1に示すようなプロセスによって蒸着マスク2から有機EL材料が剥離され、蒸着マスク2が洗浄される。蒸着マスク洗浄部28は、有機EL層の色毎に分かれている。洗浄された蒸着マスク2は洗浄後蒸着マスク保管部272に搬送され、次の蒸着に用いられる。
【0050】
以下に上記基本構成を用いた具体例を示す。例えば、赤発光材料として使用される蒸着剤Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体)を用いて200時間の蒸着を行った蒸着マスク2を用いて、図1の基本装置で洗浄を実施した。
【0051】
レーザー処理部281にて、蒸着マスク2を進行方向4に移動しながら、レーザー照射窓1からパルスレーザー10を照射する。パルスレーザー10は進行方向4と垂直の方向に捜査するように制御する。
【0052】
レーザー照射が終了した蒸着マスク2の蒸着剤残留面積を蛍光顕微鏡で観察した結果、蒸着剤の残留面積は0.91%であった。
【0053】
次いで、超音波スプレー処理部282にて、レーザ照射終了後の蒸着マスク2を進行方向41に移動しながら、ライン型スプレーノズル6より純水を蒸着マスク2の被洗浄面201に照射する。また、ライン型超音波スプレーノズル5より純水を蒸着マスク2の裏面202に照射する。洗浄が終了すると、蒸着マスク2を進行方向42に移動しながら、ライン型乾燥用エアノズル7よりドライエアを照射する。乾燥終了後の蒸着マスク2の蒸着剤残留面積を蛍光顕微鏡で観察した結果、蒸着剤の残留面積は0.00%であった。
【0054】
図5は洗浄後の洗浄液に含まれる蒸着剤の回収を示す図である。図5において、超音波処理部282で使われた純水は、液回収部283に回収され、蒸留精製部284にて純水が除去され、蒸着剤が精製される。この回収精製された蒸着剤は、回収蒸着剤保管部29に搬送され、再利用される。
【実施例2】
【0055】
例えば、赤発光材料として使用される蒸着剤Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体)を用いて200時間の蒸着を行った蒸着マスク2を用いて、図1の基本装置で洗浄を実施した。
【0056】
レーザー処理部281にて、蒸着マスク2を進行方向4に移動しながら、レーザー照射窓1からパルスレーザー10を照射する。パルスレーザー10は進行方向4と垂直の方向に捜査するように制御する。
【0057】
レーザー照射が終了した蒸着マスク2の蒸着剤残留面積を蛍光顕微鏡で観察した結果、蒸着剤の残留面積は0.90%であった。
【0058】
次いで 超音波スプレー処理部282にて、レーザ照射終了後の蒸着マスクを進行方向41に移動しながら、ライン型スプレーノズル6より炭化水素系の洗浄液であるヘキサフルオロエチレン(C4F9OC2H5)を蒸着マスク2の被洗浄面201に照射する。また、ライン型超音波スプレーノズル5よりヘキサフルオロエチレン(C4F9OC2H5)を蒸着マスク2の裏面202に照射する。洗浄が終了すると、蒸着マスク2を進行方向42に移動しながら、ライン型乾燥用エアノズル7よりドライエアを照射する。乾燥終了後の蒸着マスク2の蒸着剤残留面積を蛍光顕微鏡で観察した結果、蒸着剤の残留面積は0.00%であった。
【0059】
図5は洗浄後の洗浄液に含まれる蒸着剤の回収を示す図であるが、本実施例においては、洗浄液はヘキサフルオロエチレンが使用されている。図5において、超音波処理部282で使われたヘキサフルオロエチレンは、液回収部283に回収され、蒸留精製部284にてヘキサフルオロエチレンが除去され、蒸着剤が精製される。この回収精製された蒸着剤は、回収蒸着剤保管部29に搬送され、再利用される。
【0060】
本実施例では、洗浄液として、炭化水素系の洗浄液を使用するので、洗浄液の乾燥のスピードが速い。したがって、洗浄液によっては、図1におけるライン型乾燥用エアノズル7を不要とすることも出来る。また、洗浄液の乾燥が速いので、有機EL層の蒸着剤の回収が容易である。すなわち、特別に加熱等して溶剤を飛散させなくとも、蒸着剤の回収が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 レーザー照射窓
2 蒸着マスク
3 マスクフレーム
4 マスクの進行方向
5 ライン型超音波スプレーノズル
6 ライン型スプレーノズル
7 ライン型乾燥用エアノズル
10 パルスレーザー
15 第1封止ガラス前処理部
16 第2封止ガラス前処理部
17 貼り合せ封止部
18 陽極膜蒸着部
19 正孔注入層蒸着部
20 正孔輸送層蒸着部
21 赤発光層蒸着部
22 電子輸送層蒸着部
23 第1基板前処理部
24 第2基板前処理部
25 電子注入層蒸着部
26 緑発光層蒸着部
27 蒸着マスク保管部
28 蒸着マスク洗浄部
29 回収蒸着剤保管部
30 青発光層蒸着部
31 基板保管部
32 完成品排出部
110 素子基板
111 第1下地膜
112 第2下地膜
113 半導体層
114 ゲート絶縁膜
115 ゲート電極
116 層間絶縁膜
117 SD配線
118 無機パッシベーション膜
119 有機パッシベーション膜
120 バンク
121 下部電極
122 有機EL層
123 上部電極
201 被洗浄面
202 裏面
271 洗浄前蒸着マスク保管部
272 洗浄後蒸着マスク保管部
281 レーザ処理部
282 超音波処理部
283 液回収部
284 蒸留精製部
1221 電子注入層
1222 電子輸送層
1223 発光層
1224 ホール輸送層
1225 ホール注入層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面には蒸着剤が付着しており、前記蒸着マスクの第1の面の周辺を前記蒸着マスクよりも厚さの大きい枠部に取り付けた蒸着マスクの洗浄装置であって、
前記第1の面に洗浄液を照射する第1の洗浄手段と、
前記第2の面に、超音波が印加された洗浄液を照射する第2の洗浄手段を有することを特徴とする蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項2】
前記第1の面にレーザを照射して蒸着剤を蒸着マスクから剥離するレーザ照射手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項3】
前記蒸着マスクは長方形であり、前記蒸着マスクの周辺部が前記枠部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置
【請求項4】
前記第1の洗浄手段はライン型スプレーノズルを有し、前記第2の洗浄手段はライン型超音波スプレーノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項5】
前記第1の洗浄手段および前記第2の洗浄手段の幅は、前記蒸着マスクの移動方向に直交する幅方向の大きさが、前記枠部の前記蒸着マスクの移動方向に直交する方向の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項6】
前記第1の洗浄手段および前記第2の洗浄手段は、前記蒸着マスクの移動方向に直交する幅方向に、前記蒸着マスクの幅よりも大きい幅で洗浄液を照射することが出来ることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液は、純水または、炭化水素系の洗浄液であることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの洗浄装置。
【請求項8】
洗浄後の洗浄液を蓄積する手段を有し、前記蓄積された洗浄液から蒸着剤を回収する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク洗浄装置。
【請求項9】
第1の面と第2の面を有し、前記第1の面には蒸着剤が付着しており、前記蒸着マスクの第1の面の周辺を前記蒸着マスクよりも厚さの大きい枠部に取り付けた蒸着マスクの洗浄方法であって、
前記第1の面に洗浄液を照射する第1の洗浄工程と、
前記第2の面に、超音波が印加された洗浄液を照射する第2の洗浄工程とを有することを特徴とする蒸着マスクの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183249(P2011−183249A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48107(P2010−48107)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】