蒸着装置及び薄膜形成方法
【課題】ホスト材料とドーパントとからなる膜層のドーパントの混合比率を、コストを抑制しつつ測定する。
【解決手段】第1の基板11を、周縁部を除いて開放した状態で基準面25上を第1の方向線51に沿って搬送する第1の搬送手段31と、第1の搬送手段31と隣り合う搬送手段であって、第2の基板12を周縁部を除いて開放した状態で基準面25上を第1の方向線51に沿って搬送する第2の搬送手段32と、基準面25上において第1の方向線51と直行する第2の方向線52を中心とする所定の幅を有する帯状の領域40と第1の基板11とが重なり得る第1の領域41及び帯状の領域40と第2の基板12とが重なり得る第2の領域42、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源62と、第1の蒸着材料を第1の領域41にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源61と、を備えることを特徴とする蒸着装置。
【解決手段】第1の基板11を、周縁部を除いて開放した状態で基準面25上を第1の方向線51に沿って搬送する第1の搬送手段31と、第1の搬送手段31と隣り合う搬送手段であって、第2の基板12を周縁部を除いて開放した状態で基準面25上を第1の方向線51に沿って搬送する第2の搬送手段32と、基準面25上において第1の方向線51と直行する第2の方向線52を中心とする所定の幅を有する帯状の領域40と第1の基板11とが重なり得る第1の領域41及び帯状の領域40と第2の基板12とが重なり得る第2の領域42、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源62と、第1の蒸着材料を第1の領域41にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源61と、を備えることを特徴とする蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話あるいはパーソナルコンピュータ等における表示手段として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と称する。)装置を適用することが考えられている。有機EL装置は、対向するように形成された陽極と陰極との間に、少なくとも発光層(有機EL層)を含む複数の材料層から成る機能層を形成し、上述の陽極と陰極との間に電流を流すことで発光層から光を出射させて表示光とするものである。
【0003】
上記材料層(の各々)は、成膜性に重点を置いて選択されたホスト材料に、発光性あるいは正孔輸送性等の機能に重点を置いて選択されたドーパントを混入させて形成することが一般的である。また、上記材料層の形成方法としては、蒸着源内に配置された蒸着材料を加熱により蒸発させ、蒸発した蒸着材料を基板等の表面に付着させて成膜する蒸着法が一般的である(特許文献1参照)。したがって、2(あるいは3以上)の蒸着源から、夫々異なる蒸着材料を同時に蒸発させて、基板面上に同時に付着させることで、2種類(あるいは3種類以上)の材料が混合された材料層を成膜している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−227128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる場合問題となるのが、ドーパントの蒸着量の管理である。ドーパントの混合比率は略5%であるため、ホスト材料の蒸着量は上述の材料層の層厚から推測できる。一方、ドーパントの蒸着量を測定するためには、製品用の基板とは別に、該ドーパントのみを蒸着するモニター基板を作成して、層厚を測定する必要がある。
しかし、製品用の基板とは別にモニター基板を作成することは、コスト増大の問題がある。さらに、上述の材料層の層厚が10nm程度であることが多いため、ドーパントのみを蒸着した場合の層厚は0.5nm程度であり、触針式層厚測定機はもちろん、光学式層厚測定機を用いても正確な測定が困難という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
第1の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で、基準面上を第1の方向線に沿って搬送する第1の搬送手段と、上記第1の搬送手段と隣り合う搬送手段であって、第2の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で上記基準面上を上記第1の方向線に沿って搬送する第2の搬送手段と、上記基準面上において上記第1の方向線と直行する第2の方向線を中心とする所定の幅を有する帯状の領域と上記第1の基板とが重なり得る第1の領域及び上記帯状の領域と上記第2の基板とが重なり得る第2の領域、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源と、第1の蒸着材料を上記第2の領域には飛翔させずに、上記第1の領域にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源と、を備えることを特徴とする蒸着装置。
【0008】
所定の領域に蒸着材料が飛翔するということは、該領域に基板があれば、該蒸着材料からなる膜層が形成されるということである。したがって、このような構成により、上記第1の基板と上記第2の基板を同時に搬送して、上記第1の基板の表面には上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料との双方からなる膜層を形成でき、上記第2の基板の表面には上記第2の蒸着材料のみからなる膜層を形成できる。したがって、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率を、上記第2の基板表面に形成される膜層の層厚を測定することで算出でき、該比率の管理精度を向上できる。
【0009】
なお、第1の搬送手段と第2の搬送手段とは、第1の方向線に沿って基板を搬送する。したがって、第1の基板と第2の基板とは、基準面上を平行に搬送される。また、「重なり得る」ということは搬送される基板が該帯状の領域を通過する際に重なるということであり、該帯状の領域を基板の幅(第2の方向線の方向の長さ)で区切った領域である。
【0010】
[適用例2]
上述の蒸着装置であって、上記第2の蒸着材料の蒸着レートは、上記第1の蒸着材料の蒸着レートとの比は0.1以下であることを特徴とする蒸着装置。
【0011】
このような構成であれば、上記第1の基板の表面に形成された膜層の層厚が、上記第1の蒸着材料のみで形成した場合の膜層の層厚と略同一となる。したがって、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率の管理精度をより一層向上できる。
【0012】
[適用例3]
上述の蒸着装置であって、上記第1の基板と上記第2の基板とを同時かつ同速度で搬送可能であることを特徴とする蒸着装置。
【0013】
このような構成によれば、上記第1の基板及び上記第2の基板に対して、完全に同一の条件で上記第2の蒸着材料を蒸着させることができるため、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率を、より一層正確に求めることができる。なお、「同速度で搬送可能」ということは、上記第1の搬送手段と上記第2の搬送手段とが同時かつ同速度で動作するということである。
【0014】
[適用例4]
上述の蒸着装置であって、上記第1の搬送手段は複数の上記第1の基板を連続的に搬送可能であり、上記第2の搬送手段は、上記第2の基板を、N枚目の上記第1の基板と共に上記第2の領域を通過させた後に、上記第2の基板を逆方向に搬送してN+1枚目の上記第1の基板と並置し、該第2の基板を上記N+1枚目の上記第1の基板と共に上記第2の領域を再度通過させることが可能であることを特徴とする蒸着装置。
【0015】
このような構成によれば、上記第2の基板に上記第2の蒸着材料(ドーパント)を容易に複数回蒸着して、層厚測定が容易な、充分に厚い膜層を形成できる。そして、上記膜層の層厚測定結果を蒸着回数で割ることにより、1回当たりの蒸着量を算出できる。したがって、1回あたりのドーパントの蒸着量が少ない場合でも、蒸着量の測定が容易になる。なお、上記Nは任意の、1以上の整数である。
【0016】
[適用例5]
上述の蒸着装置であって、上記第1の蒸着源及び上記第2の蒸着源は、上記第1の基板及び上記第2の基板が搬送される方向に、所定の間隔をおいて連続して配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【0017】
第1の基板にホスト材料とドーパントとからなる膜層を、連続して複数回積層する場合において、それぞれの膜層に含まれるドーパントの蒸着量を容易に測定可能となる。なお、上述の所定の間隔とは、少なくとも、上記第2の基板に、2種類の第2の蒸着材料が同時に蒸着することを回避できる距離である。
【0018】
[適用例6]
上述の蒸着装置であって、上記第1の蒸着源の飛翔角度と上記第2の蒸着源の飛翔角度とは略同一であり、上記第1の蒸着源と上記第2の蒸着源とは上記基準面から所定の距離をもって上記第2の方向線に沿って、互いに所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【0019】
このような構成によれば、上記第1の領域及び上記第2の領域を容易に形成できる。なお、飛翔角度とは、有機材料が蒸発時に飛翔する広がり角度を指す。
【0020】
[適用例7]
基板を、基準面に沿って移動させつつ蒸着材料を蒸着させて、該蒸着材料からなる薄膜を形成する方法であって、上記基準面に、第1の蒸着材料が付着する領域と第2の蒸着材料が蒸着する領域とが重なり合う第1の領域と、上記第1の領域に隣接する、上記第2の蒸着材料のみが付着する第2の領域と、が形成されるように、上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料とを飛翔させる第1の工程と、第1の基板を、上記第1の領域を横切るように移動させて、上記第1の基板の表面に上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料とが混合された第1の材料層を形成する第2の工程と、第2の基板を上記第2の領域を横切るように移動させて、上記第2の基板の表面に上記第2の蒸着材料からなる第2の材料層を形成する第3の工程と、を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【0021】
このような蒸着方法によれば、上記第1の基板の表面に形成された上記第1の材料層に含まれる上記第2の蒸着材料の(単位面積当たりの)量と同量の上記第2の蒸着材料からなる上記第2の材料層を上記第2の基板の表面に形成できる。したがって、上記第2の材料層の層厚を測定することで上記第1の材料層に含まれる上記第2の蒸着材料の量を管理でき、製造コストを抑制しつつ発光特性等の管理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、構成要素の一部が本実施形態の蒸着装置による成膜対象となる、アクティブマトリクス型の有機EL装置の全体構成を示す回路構成図である。表示領域100には、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数のデータ線104と、データ線104と平行に延びる複数の電源供給線106が形成されている。上記3種類の配線で囲まれる方形の区画(破線で区画している領域)が画素122である。画素122は、赤色光を射出する赤画素122R、緑色光を射出する緑画素122G、青色光を射出する青画素122Bの計3種類があり、表示領域100に規則的に配置されている。
【0023】
各々の画素122は、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介してデータ線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106と導通する発光素子120と、図示しないカラーフィルタ等からなる。
【0024】
表示領域100の周辺には、走査線駆動回路114、及びデータ線駆動回路116が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路114から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、データ線104にはデータ線駆動回路116から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路114の動作とデータ線駆動回路116の動作とは、同期データ線118を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0025】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点のデータ線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から発光素子120に駆動電流が流れこむ。後述するように、発光素子120は、画素毎にパターニングされ駆動用TFT112と導通している陽極(図2参照)と、表示領域100の全範囲に渡って共通電位となる陰極(図2参照)との間に発光層160(図2参照)を含む機能層161(図2参照)を狭持している。発光層160が該駆動電流の大きさに応じて発光することにより、画素122が光を射出する。
【0026】
本実施形態の成膜対象となる有機EL装置は、上述の3種類の画素122に共通する、白色光を発光する発光層を備えている。そして画素122毎に備えられたカラーフィルタにより、赤色光、緑色光、青色光のいずれかに変換される。上述したように個々の画素122が独立に制御され、駆動電流の大きさに応じて発光することで表示領域100にカラー画像が形成される。
【0027】
図2は、発光素子120をカラーフィルタ130等と共に模式的に示す図である。発光素子120は、互いに対向する陽極131と陰極132、及び該一対の電極間に狭持される少なくとも発光層(有機EL層)160を含む機能層161からなる。電源129から陰極132を経由して供給される電子と、電源129から陽極131を経由して供給される正孔と、を発光層160内で結合させることで発光を生じさせる素子である。陽極131は、上述したように画素122毎に(すなわち発光素子120毎に)パターニングされており、保護層134及び反射層135を介して、後述する第1の基板としての素子基板11上に積層されている。一方、陰極132は、表示領域100の全域に形成されている。陰極132の上層には、ガスバリア性を有する封止層136、及び接着層137を介してカラーフィルタ130を備えるカラーフィルタ基板15が接着されている。
【0028】
陰極132は層厚10nm程のMgAg(マグネシウム・銀合金)からなり、半透過反射性を有している。したがって、発光層160で生じた光を透過させて、カラーフィルタ130側に向けて射出できる。陽極131は透過性を有するITO(酸化インジウム・錫合金)で形成されており、発光層160で生じた光のうち素子基板11側に向う光を透過させた後、反射層135で反射させて、カラーフィルタ130側に向けて射出できる。本実施形態の蒸着装置の対象となる有機EL装置はトップエミッション型であるため、素子基板11は透光性を要しない。
【0029】
機能層161は、発光層160の他に、正孔注入層140、正孔輸送層142、電子輸送層144、及び電子注入層146を備えている。正孔輸送層142及び電子輸送層144は、それぞれ発光層160への正孔輸送性、電子輸送性を高めて発光効率を向上させる層である。また、正孔注入層140及び電子注入層146は、それぞれ陽極131、陰極132からの正孔注入効率、電子注入効率を高めて発光効率を向上させる層である。上記各層の形成材料は、正孔注入層140がHI406(出光興産株式会社製)、正孔輸送層142がHT320(出光興産株式会社製)、電子輸送層144がAlq3(アルミニウムキノリノール)、そして、電子注入層146が層厚略1nmのLiF(弗化リチウム)である。
【0030】
発光層160は、導電性を担保するホスト材料に、電子と正孔との結合により発光する機能を有するドーパントを混入して形成されている。本実施形態の成膜対象となる発光層160は、通電により赤色光151を発光する赤色発光層160R、通電により緑色光152を発光する緑色発光層160G、通電により青色光153を発光する青色発光層160Bの計3種類の層を積層して形成されている。
【0031】
上記3種類の発光層は全て、ホスト材料として、出光興産株式会社製のBH215を用いている。ドーパントは各層が発光する光の色ごとに異なり、青色発光層160Bには青色ドーパント164B、緑色発光層160Gには緑色ドーパント164G、赤色発光層160Rには赤色ドーパント164R、が用いられている。具体的には、青色ドーパント164Bには出光興産株式会社製のBD052、緑色ドーパント164Gにはキナクリドン、赤色ドーパント164Rには出光興産株式会社製のRD001が、夫々用いられている。
【0032】
赤色光151と緑色光152と青色光153とが合わさって白色光154となり、該白色光がカラーフィルタ130を透過することで画素毎に赤、緑、青の3原色のいずれかの色の原色光155となる。かかる構成の発光層160は、画素毎に該画素の色に対応する発光層160を形成する構成と比べると、発光層160の積層工程を、マスク等を用いずに、かつ連続工程として実施できるという利点がある。
【0033】
上述の発光層160の形成材料は低分子系の材料であるため、成膜手法としては蒸着法が好ましい。機能層161を形成する各層のうち、電子注入層146以外の3層も蒸着により形成できる。ホスト材料とドーパントとでは溶融温度等の条件が異なる。したがって、任意のドーパント濃度の発光層を得るためには、ホスト材料とドーパントとに別個の蒸着源を用いることが好ましい。双方の蒸着源から、双方の材料(ホスト材料とドーパント)の分子を夫々最適な条件で飛翔させて、基板(素子基板11)表面に同時に蒸着させることで、好ましい発光層160を形成(成膜)できる。
【0034】
かかる成膜工程において問題となることの1つに、ドーパントの混入量、すなわちドーパント単独での蒸着量の測定が困難なことが挙げられる。ドーパントの混入量は発光特性を大きく左右するため、有機EL装置の表示品質を維持するためには、上記蒸着量の管理が重要である。しかし、ドーパントの混入率は5%程度である。赤色発光層160R等の各発光層の層厚は10nm〜20nmであるため、ドーパントのみを発光層の成膜時と同一の条件で蒸着させた場合の層厚は0.5nm〜1nm程となる。エリプソメトリ装置等の光学測定器を用いても、かかる極薄い膜層の厚さを測定することは困難である。ドーパントのみを発光層の成膜時と同一の条件で複数回(20回程度)蒸着させれば、測定可能な厚さの膜層を得ることができる。しかし、蒸着装置を層厚測定用の基板の作成にのみ用いることは製造コストを増大させるため、実行は困難である。
【0035】
以下に記載する本実施形態の蒸着装置は、ホスト材料とドーパントとからなる発光層を成膜しつつ、ドーパントのみが蒸着された層厚測定用の基板も同時に作成することで、製造コストを増大させることなくドーパント蒸着量の測定(及び管理)を可能にしている。
【0036】
図3は、本実施形態の蒸着装置における構成要素の概要を示す図である。蒸着装置は、真空チャンバー19と排気系21と搬送手段30と蒸着源60等からなっている。真空チャンバー19は図示しない開口部より基板10を出し入れ可能な構成であり、内部に少なくとも搬送手段30と1又は複数個の蒸着源60を備えている。排気系21は、真空チャンバー19内を所定の気圧の真空状態に保つことができる。
【0037】
搬送手段30は、基板10の一方の面を蒸着源60と対向させつつ、所定の速度で一定の方向に移動させることができる。該一方の面が表面(おもて側の面)である。
搬送手段30は直線状であり、基板10は所定の平面上を移動させられる。該所定の平面が基準面25である。
【0038】
各々の蒸着源は蒸着材料(上述のホスト材料及びドーパント)を指向的に飛翔させて、基板10の表面に膜層を形成できる。したがって、蒸着源の数の(種類の)膜層が順次積層される。本実施形態の蒸着装置は、搬送手段30が2つあり、後述するように2枚の基板を同時に平行な方向に搬送できる。
【0039】
図4は、蒸着源60の概要を示す図である。蒸着源60は、るつぼ24、蒸着材料76、及び図示しない加熱手段等からなる。るつぼ24内に備えられた常温では固体の蒸着材料を加熱手段により加熱して、溶融して液体とした後に、あるいは固体から直接的に、蒸着材料の粒子70として飛翔させることができる。ここで、蒸着材料の粒子70は、開口部22の形状に沿って飛翔する。例えば、開口部22の壁部が基準面25に対して垂直であれば該垂直方向に飛翔し、上記壁部が上方に向けて広がる形状であれば、所定の角度を持って広がるように飛翔する。該角度を飛翔角80と称する。
【0040】
ここで、開口部22の平面形状(平面視における形状)が円形であれば、飛翔角80はあらゆる方向から見て略同一となる。また、開口部22の平面視における形状が長円や方形であれば、飛翔角80は見る方向によって異なる。
【0041】
図5は、本実施形態の蒸着装置における、基板と蒸着源の位置関係を模式的に示す斜視図である。同時に搬送される2枚の基板と、該2枚の基板に対して同時に蒸着材料を飛翔させる2つの蒸着源を示している。
【0042】
本実施形態の蒸着装置は、第1の搬送手段31と第2の搬送手段32の2つの搬送手段(図6参照)を備えており、図示する2枚の基板、すなわち第1の基板としての素子基板11と第2の基板としてのモニター基板12とを同時に搬送できる。上記の双方の基板は、基準面25上を第1の方向線51の方向に互いに若干の間隔をもって搬送される。第1の方向線51が延在する軸方向がX軸である。基準面25に対して垂直の方向がZ軸である。X軸及びZ軸の双方に直行する軸がY軸であり、後述する第2の方向線52はY軸に沿った方向線である。
【0043】
上記2つの搬送手段は、基板の周縁部を保持し、該周縁部を除く領域は開放した状態で搬送することができる。したがって、該基板の、後述する蒸着源と対向する面には、該蒸着源から飛翔する蒸着材料の粒子が蒸着して、該蒸着材料からなる膜層(薄膜)が形成される。上述の、蒸着源と対向する側の面が表面(おもて側の面)である。
【0044】
本実施形態の蒸着装置は、るつぼ24内に第1の蒸着材料を備える第1の蒸着源61とるつぼ24内に第2の蒸着材料を備える第2の蒸着源62の2つの蒸着源を備えており、2種類の蒸着材料を同時に飛翔させることができる。第1の蒸着材料はホスト材料であり、第2の蒸着材料はドーパントである。上記2つの蒸着源は、基準面25からZ軸の方向に所定の距離をおいて、また、Y軸の方向に所定の間隔をおいて並置されている。
【0045】
上記2つの蒸着源の開口部22の平面形状は長方形である。したがって、各々の蒸着源は、基準面25上の長方形の範囲(領域)に蒸着材料を飛翔させて蒸着できる。Y軸の方向に並んでいるため、上述する双方の(長方形の)領域のY軸の方向の中心線は同一線上に位置する。かかる双方の長軸が位置する線が、第2の方向線52である。
【0046】
また、上記2つの蒸着源の、Y軸の方向から見たときの飛翔角は同一である。したがって、上述の双方の長方形の領域のX軸の方向の長さは一致する。このようなX軸の方向の長さを幅とする領域を、Y軸の方向に延伸させた領域が、帯状の領域40である。そして双方の蒸着源間の距離が極端に離れていない限り、上述する双方の長方形の範囲(領域)は、互いに重なり合う領域、すなわち双方の蒸着材料が蒸着される領域が生じる。また、蒸着源間の距離あるいはX軸の方向から見た飛翔角を調整することで、上述する双方の長方形の範囲(領域)重ならない領域、すなわち一方の蒸着材料のみが蒸着される領域を設定することもできる。
【0047】
本実施形態の蒸着装置では、双方の蒸着材料が蒸着される領域のY軸の方向の長さが、素子基板11のY軸の方向の長さ(以下、「幅」と称する。)よりも大きくなるように設定されている。したがって、素子基板11が、該基板の(X軸の方向の)中心線と上記双方の蒸着材料が蒸着される領域の(X軸の方向の)中心線とが重なるようにして、第1の方向線51の方向に搬送される場合、該基板の幅方向の全域が、上記双方の蒸着材料が蒸着される領域と重なる領域が生じる。かかる領域が、第1の領域41である。
【0048】
また、第2の蒸着材料のみが蒸着される領域のY軸の方向の長さは、モニター基板12の幅よりも大きくなるように設定されている。したがって、モニター基板12が、該基板の(X軸の方向の)中心線と上記第2の蒸着材料のみが蒸着される領域の(X軸の方向の)中心線とが重なるようにして、第1の方向線51の方向に搬送される場合、該基板の幅方向の全域が、上記第2の蒸着材料のみが蒸着される領域と重なる領域が生じる。かかる領域が、第2の領域42である。
なお、第1の領域41及び第2の領域42のX軸の方向の長さと、帯状の領域40のX軸の方向の長さと、は同一であるが、本図(図5)では若干の差を付けて判り易く示している。後述する、図6〜図11においても同様である。
【0049】
本実施形態の蒸着装置は、素子基板11とモニター基板12とを同時に搬送しつつ、素子基板11の表面には第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方が混合された膜層を形成し、モニター基板12の表面には第2の蒸着材料のみからなる膜層を形成できる。蒸着材料は上述の飛翔角内を略同一の密度で飛翔するため、素子基板11の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の密度すなわち面積あたりの量とモニター基板12の表面に形成される膜層を構成する第2の蒸着材料の密度は略同一となる。したがって、モニター基板12の表面に形成される膜層の層厚を測定することにより、素子基板11の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の密度を算出できる。
【0050】
ただし、上述したように、第2の蒸着材料はドーパントであり、ホスト材料である第1の蒸着材料に比べて著しく少ない量しか蒸着されないため、1回の成膜では測定可能な層厚の膜層を形成できない。本実施形態の蒸着装置は、モニター基板12の表面に同一条件で繰り返し成膜することにより、ドーパントである第2の蒸着材料からなる測定可能な膜層を形成できる。
【0051】
図6〜図8に、本実施形態の蒸着装置の構成を示す。図6は、本実施形態の蒸着装置を、搬送される基板の裏面方向から見た概略図である。図7は、本実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図である。図8は、第2の搬送手段32の構成を示す図である。
【0052】
本実施形態の蒸着装置は、発光層160(図2参照)の形成に用いられる蒸着装置である。図示しない真空チャンバー内に、3つの蒸着領域がX軸の方向に直列に配置されている。第1の蒸着領域37は青色発光層160Bを形成する領域、第2の蒸着領域38は緑色発光層160Gを形成する領域、そして第3の蒸着領域39は赤色発光層160Rを形成する領域である。
【0053】
各々の蒸着領域には、第1の蒸着源61と第2の蒸着源62が備えられている。上述したように、各々の蒸着源の開口部のX軸の方向の長さは略同一のため、第2の方向線52が双方の蒸着源の開口部の中心線上にあるとすると、第2の方向線52を中心線とする所定の幅を有する領域である帯状の領域40が、蒸着材料が飛翔し得る領域となる。そして、蒸着源の開口部の形状及び双方の蒸着源の間隔等の設定により、帯状の領域40は、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料との双方が飛翔する領域(すなわち基準面25上に基板がある場合、該基板の表面に双方の蒸着材料が蒸着される領域)と、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、が形成されている。その他に、第1の蒸着材料のみが飛翔する領域も存在する。
【0054】
上述したように、帯状の領域40のうちの第1の蒸着材料と第2の蒸着材料との双方が飛翔する領域と、第1の搬送手段31により搬送される素子基板11と、が重なり得る領域が、第1の領域41である。同じく、帯状の領域40のうちの第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、第2の搬送手段32により搬送されるモニター基板12と、が重なり得る領域が、第2の領域42である。かかる態様を、本実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図である図7に示す。
【0055】
図7に示すように、第1の蒸着源61が第1の蒸着材料を飛翔させる範囲をX軸の方向から見たときの角度である第1の飛翔角81と、第2の蒸着源62が第2の蒸着材料を飛翔させる範囲をX軸の方向から見たときの角度である第2の飛翔角82と、は略同一である。そして双方の蒸着源はY軸の方向に互いに間隔を空けて配置されている。その結果、基準面25上において、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方の蒸着材料が飛翔する領域と、第1の蒸着材料のみが飛翔する領域と、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、の3つの領域が生じる。そして、本実施形態の蒸着装置では、双方の蒸着源の飛翔角及び相互の間隔を調整することで、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方の蒸着材料が飛翔する領域の幅(Y軸の方向の長さ)が素子基板11の幅よりも若干広くなり、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域の幅がモニター基板12の幅よりも若干広くなるように設定されている。
【0056】
以上の設定は、第1の蒸着領域37、第2の蒸着領域38、及び第3の蒸着領域39の3つの蒸着領域で共通である。したがって、各々の蒸着領域に第1の領域41と第2の領域42とが形成される。
【0057】
第1の蒸着源61が備える蒸着材料は上述したようにホスト材料であり第1〜第3の蒸着領域間で共通である。第2の蒸着源62の蒸着材料はドーパントである。具体的には、第1の蒸着領域37に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は青色ドーパント164B、第2の蒸着領域38に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は緑色ドーパント164G、そして第3の蒸着領域39に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は赤色ドーパント164Rである。
【0058】
素子基板11を搬送する第1の搬送手段31は、該3つの蒸着領域を横切る構成である。つまり、チャンバー内に1つ備えられており、1つの駆動モータ85で駆動される。したがって、素子基板11は該3つの蒸着領域の各々の第1の領域41を順次通過する。上述したように第1の領域ではホスト材料とドーパントが同時に飛翔する。したがって、素子基板11の表面には青色発光層160B、緑色発光層160G、そして赤色発光層160Rの計3層の膜層が順次積層される。
【0059】
モニター基板12を搬送する第2の搬送手段32は、上述の各々の蒸着領域に夫々1つずつ備えられている。各々の第2の搬送手段32には駆動モータ85が備えられており、モニター基板12をスタート位置である第1の位置91から停止位置である第2の位置92まで搬送する。
【0060】
第1の位置91と第2の位置92は、第2の領域42の両側にあるため、モニター基板12は第2の領域42の全域を完全に横切るように搬送される。したがって、モニター基板12の表面には、素子基板11の表面に蒸着される第2の蒸着材料と単位面積当たりで同量の、第2の蒸着材料のみからなる膜層が形成される。
【0061】
つまり、第1の蒸着領域37で搬送されるモニター基板12の表面には青色ドーパント164Bからなる膜層が形成され、第2の蒸着領域38で搬送されるモニター基板12の表面には緑色ドーパント164Gからなる膜層が形成され、第3の蒸着領域39で搬送されるモニター基板12の表面には赤色ドーパント164Rからなる膜層が形成される。そして後述するように、各々の第2の搬送手段32は、第2の領域を通過して第2の位置92で停止したモニター基板12を逆方向に搬送して、第1の位置91まで送り返す機構を備えている。したがって、本実施形態の蒸着装置は、各々の蒸着領域においてモニター基板12の表面にドーパントからなる膜層を複数回積層できる。
【0062】
上述したように、モニター基板12の表面に1回の搬送で蒸着されるドーパントの量は、同時に搬送される素子基板11に蒸着されるドーパントの量と略同一である。層厚で言うと0.5nm程度であり、光学的な測定器を用いても精密な測定は困難である。しかし、かかる膜層を複数回積層することで、精密な測定が可能な層厚の膜層を形成できる。そして、かかる層厚を積層の回数で割ることで、1回の搬送で蒸着されるドーパントの量を精度よく求めることができる。上述したように、1回の膜層形成工程で形成されるドーパントからなる膜層の層厚は0.5nm程度であり、層厚測定が困難である。しかし、例えば100回繰り返して成膜すると50nmとなり、充分に高い精度で測定可能な層厚が得られる。そして、かかるドーパントの量は、上述したように、素子基板11に蒸着されるドーパントの(単位面積当たりの)量と略同一である。
【0063】
ここで、素子基板11の表面に形成される青色発光層160B等の層厚は充分に厚いため、複数回積層することなく測定できる。そして、青色発光層160B等は殆んどがホスト材料からなる。したがって、素子基板11の表面に形成される各発光層の層厚と、モニター基板12上に形成されるドーパントからなる膜層の層厚から、とから各々の発光層(160R等)のドーパント濃度を求めることができる。
【0064】
図8は、第2の搬送手段の構成を示す図である。図8(a)は本実施形態の蒸着装置で用いているタイプの搬送手段であり、図8(b)は、搬送ベルトに替えて搬送ローラを用いるタイプである。
第1の位置91は搬送が開始されるスタート位置であり、モニター基板12はこの位置から、隣り合う第1の搬送手段31で搬送される素子基板11の動きに合わせて、搬送ベルト95により第2の領域42へ向けて搬送される。そしてモニター基板12は、第2の領域42を完全に通過した後、ストッパ97により、第2の位置92で停止させられる。
【0065】
そして停止させられたモニター基板12は、吸着器99で第3の位置93まで持ち上げられた後搬送レール98に沿って第4の位置94まで移送される。そして、第1の位置91まで降ろされて、再度搬送ベルト95上に位置することとなる。そして、次の素子基板11が第1の領域41に差し掛かる動きにタイミングを合わせて、再び第2の領域42へ向けて搬送される。
かかる動作が繰り返されることにより、モニター基板12の表面には、測定可能な層厚を有する、ドーパントからなる膜層が形成される。
【0066】
図8(b)に示す第2の搬送手段32は、搬送ベルト95に替えて搬送ローラ96が用いられている。それ以外の点は、図8(a)に示す第2の搬送手段32と、特に差はない。モニター基板12は、搬送ローラ96により第1の位置91から第2の位置92に搬送される間に第2の領域42を通過する。そして該通過の際に、表面にドーパントからなる膜層が形成される。そして、第3の位置93及び第4の位置94を経由して再度第1の位置91に戻る。かかる動作を複数回繰り返されて、モニター基板12の表面に測定可能な層厚を有するドーパントからなる膜層が形成される。
【0067】
(発明の効果)
以上述べたように、本実施形態の蒸着装置であれば、素子基板11とモニター基板12とを並走させることができる。そして、量産品を製造しつつ、ドーパントのみから成る膜層を連続して複数回成膜して、モニター基板12の表面にドーパントのみから成る測定可能な層厚を有する膜層を形成できる。そしてかかる膜層の層厚と、製品である素子基板11上に形成される発光層の層厚と、から、該発光層のドーパント濃度を容易に算出できる。したがって、製造コスト等を殆んど増加させることなくドーパントの濃度を管理でき、表示品質の維持等が可能になる。
【0068】
(第2の実施形態)
図9に、第2の実施形態の蒸着装置の、X軸の方向から見た概略を示す。本実施形態の蒸着装置は基本的に第1の実施形態の蒸着装置と同様の構成を有しており、第1の蒸着材料の飛翔角のみが異なっている。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0069】
本実施形態の蒸着装置は、第1の蒸着源61の開口部22(図4参照)の広がりの程度が弱く、そのため、第1の飛翔角81が第2の飛翔角82に比べて若干狭くなっている。したがって、基準面25において第1の蒸着材料が飛翔する領域(幅)が狭くなり、素子基板11の幅に若干の余裕を加えた程度となっている。したがって、第2の蒸着材料のみが蒸着する領域は、第1の実施形態の蒸着装置と略同一であるが、第1の蒸着材料のみが蒸着する領域は殆んど存在していない。したがって、本実施形態の蒸着装置は第1の蒸着材料(すなわちホスト材料)の使用量を低減でき、製造コストを抑制できるという効果がある。
【0070】
(第3の実施形態)
図10に、第3の実施形態の蒸着装置の、X軸の方向から見た概略を示す。本実施形態の蒸着装置は、基本的に第1の実施形態の蒸着装置と同様の構成を有しているが、第3の蒸着源63、及び第3の基板13を搬送可能な第3の搬送手段33を備えている点で異なっている。その他の構成要素は第1の実施形態の蒸着装置と同様である。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0071】
第3の蒸着源には、第3の蒸着材料として第2のドーパントが備えられている。飛翔角については、第1の飛翔角81は、第2の飛翔角82及び第3の蒸着源の飛翔角である第3の飛翔角83に比べて小さい。そして、第3の飛翔角83の大きさは第2の飛翔角82の大きさと略同一である。したがって、基準面25の中央には、第1の蒸着源から飛翔するホスト材料と第2の蒸着源から飛翔するドーパントと第3の蒸着源から飛翔する第2のドーパントとが蒸着する領域が生じている。そして、該領域の向って右側には第2の蒸着源から飛翔するドーパントのみが蒸着する領域が生じ、該領域の向って左側には第3の蒸着源から飛翔する第2のドーパントのみが蒸着する領域が生じている。第2のドーパントのみが蒸着する領域と、第3の搬送手段33で搬送される第3の基板13と、が重なる領域が第3の領域43である。
【0072】
第3の基板13は、モニター基板12と略同一の平面形状の基板であり、また、第3の搬送手段33は第2の搬送手段32と同様に、蒸着領域を通過した基板をスタート位置まで送り返す機構を備えている。したがって、本実施形態の蒸着装置は、モニター基板12の表面にドーパントを複数回蒸着して測定が可能な層厚の膜層を形成するとともに、第3の基板13の表面に第2のドーパントを複数回蒸着して、測定が可能な層厚の膜層を形成できる。
【0073】
したがって、本実施形態の蒸着装置は、素子基板11の表面に、ホスト材料と2種類のドーパントとからなる膜層を形成しつつ、双方のドーパントが各々個別に複数回積層されたモニター基板(モニター基板12及び第3の基板13)を作製して、双方のドーパントの蒸着量を個別に測定できる。
【0074】
(第4の実施形態)
図11に、第4の実施形態の蒸着装置の、Z軸の方向から見た概略を示す。第1〜第3の3つの蒸着領域に加えて、第4の蒸着領域34、及び第5の蒸着領域35が連結されている点で第1の実施形態の蒸着装置とは異なっている。該2つの蒸着領域以外の構成要素は第1の実施形態の蒸着装置と共通である。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0075】
第1の搬送手段31は、上述の5つの蒸着領域を横切るような構成であり、第1の実施形態の蒸着装置と同様に1つの駆動モータ85を備えている。したがって、第1の搬送手段31は、素子基板11を、第4の蒸着領域34から第1〜第3の3つの蒸着領域を経由して第5の蒸着領域35まで連続して搬送可能である。
【0076】
第4の蒸着領域34と第5の蒸着領域35は、それぞれ蒸着源60を備えており、第1〜第3の3つの蒸着領域で形成される膜層とは別の、単一の材料からなる膜層を形成できる。したがって、発光素子120の機能層161の形成工程において、発光層160のみではなく、正孔輸送層142(図2参照)及び電子輸送層144(図2参照)を連続して形成できる。なお、さらに蒸着領域を連結させて、6層以上の膜層を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】アクティブマトリクス型の有機EL装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】発光素子をカラーフィルタ等と共に模式的に示す図。
【図3】蒸着装置の構成要素の概要を示す図。
【図4】蒸着源の概要を示す図。
【図5】第1の実施形態の蒸着装置における基板と蒸着源の位置関係を模式的に示す斜視図。
【図6】第1の実施形態の蒸着装置をZ軸の方向から見た概略図。
【図7】第1の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図8】第2の搬送手段の構成を示す図。
【図9】第2の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図10】第3の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図11】第4の実施形態の蒸着装置をZ軸の方向から見た概略図。
【符号の説明】
【0078】
10…基板、11…第1の基板としての素子基板、12…第2の基板としてのモニター基板、13…第3の基板、15…カラーフィルタ基板、19…チャンバー、21…排気系、22…開口部、24…るつぼ、25…基準面、30…搬送手段、31…第1の搬送手段、32…第2の搬送手段、33…第3の搬送手段、34…第4の蒸着領域、35…第5の蒸着領域、37…第1の蒸着領域、38…第2の蒸着領域、39…第3の蒸着領域、40…帯状の領域、41…第1の領域、42…第2の領域、43…第3の領域、51…第1の方向線、52…第2の方向線、60…蒸着源、61…第1の蒸着源、62…第2の蒸着源、63…第3の蒸着源、70…蒸着材料の粒子、76…蒸着材料、80…飛翔角、81…第1の飛翔角、82…第2の飛翔角、83…第3の飛翔角、85…駆動モータ、91…第1の位置、92…第2の位置、93…第3の位置、94…第4の位置、95…搬送ベルト、96…搬送ローラ、97…ストッパ、98…搬送レール、99…吸着器、100…表示領域、102…走査線、104…データ線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、114…走査線駆動回路、116…データ線駆動回路、118…同期データ線、120…発光素子、122…画素、122R…赤画素、122G…緑画素、122B…青画素、129…電源、130…カラーフィルタ、131…陽極、132…陰極、134…保護層、135…反射層、136…封止層、137…接着層、140…正孔注入層、142…正孔輸送層、144…電子輸送層、146…電子注入層、151…赤色光、152…緑色光、153…青色光、154…色光白、155…原色光、160…発光層(有機EL層)、160B…青色発光層、160G…緑色発光層、160R…赤色発光層、161…機能層、164B…青色ドーパント、164G…緑色ドーパント、164R…赤色ドーパント。
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話あるいはパーソナルコンピュータ等における表示手段として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と称する。)装置を適用することが考えられている。有機EL装置は、対向するように形成された陽極と陰極との間に、少なくとも発光層(有機EL層)を含む複数の材料層から成る機能層を形成し、上述の陽極と陰極との間に電流を流すことで発光層から光を出射させて表示光とするものである。
【0003】
上記材料層(の各々)は、成膜性に重点を置いて選択されたホスト材料に、発光性あるいは正孔輸送性等の機能に重点を置いて選択されたドーパントを混入させて形成することが一般的である。また、上記材料層の形成方法としては、蒸着源内に配置された蒸着材料を加熱により蒸発させ、蒸発した蒸着材料を基板等の表面に付着させて成膜する蒸着法が一般的である(特許文献1参照)。したがって、2(あるいは3以上)の蒸着源から、夫々異なる蒸着材料を同時に蒸発させて、基板面上に同時に付着させることで、2種類(あるいは3種類以上)の材料が混合された材料層を成膜している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−227128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる場合問題となるのが、ドーパントの蒸着量の管理である。ドーパントの混合比率は略5%であるため、ホスト材料の蒸着量は上述の材料層の層厚から推測できる。一方、ドーパントの蒸着量を測定するためには、製品用の基板とは別に、該ドーパントのみを蒸着するモニター基板を作成して、層厚を測定する必要がある。
しかし、製品用の基板とは別にモニター基板を作成することは、コスト増大の問題がある。さらに、上述の材料層の層厚が10nm程度であることが多いため、ドーパントのみを蒸着した場合の層厚は0.5nm程度であり、触針式層厚測定機はもちろん、光学式層厚測定機を用いても正確な測定が困難という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
第1の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で、基準面上を第1の方向線に沿って搬送する第1の搬送手段と、上記第1の搬送手段と隣り合う搬送手段であって、第2の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で上記基準面上を上記第1の方向線に沿って搬送する第2の搬送手段と、上記基準面上において上記第1の方向線と直行する第2の方向線を中心とする所定の幅を有する帯状の領域と上記第1の基板とが重なり得る第1の領域及び上記帯状の領域と上記第2の基板とが重なり得る第2の領域、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源と、第1の蒸着材料を上記第2の領域には飛翔させずに、上記第1の領域にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源と、を備えることを特徴とする蒸着装置。
【0008】
所定の領域に蒸着材料が飛翔するということは、該領域に基板があれば、該蒸着材料からなる膜層が形成されるということである。したがって、このような構成により、上記第1の基板と上記第2の基板を同時に搬送して、上記第1の基板の表面には上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料との双方からなる膜層を形成でき、上記第2の基板の表面には上記第2の蒸着材料のみからなる膜層を形成できる。したがって、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率を、上記第2の基板表面に形成される膜層の層厚を測定することで算出でき、該比率の管理精度を向上できる。
【0009】
なお、第1の搬送手段と第2の搬送手段とは、第1の方向線に沿って基板を搬送する。したがって、第1の基板と第2の基板とは、基準面上を平行に搬送される。また、「重なり得る」ということは搬送される基板が該帯状の領域を通過する際に重なるということであり、該帯状の領域を基板の幅(第2の方向線の方向の長さ)で区切った領域である。
【0010】
[適用例2]
上述の蒸着装置であって、上記第2の蒸着材料の蒸着レートは、上記第1の蒸着材料の蒸着レートとの比は0.1以下であることを特徴とする蒸着装置。
【0011】
このような構成であれば、上記第1の基板の表面に形成された膜層の層厚が、上記第1の蒸着材料のみで形成した場合の膜層の層厚と略同一となる。したがって、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率の管理精度をより一層向上できる。
【0012】
[適用例3]
上述の蒸着装置であって、上記第1の基板と上記第2の基板とを同時かつ同速度で搬送可能であることを特徴とする蒸着装置。
【0013】
このような構成によれば、上記第1の基板及び上記第2の基板に対して、完全に同一の条件で上記第2の蒸着材料を蒸着させることができるため、上記第1の基板の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の比率を、より一層正確に求めることができる。なお、「同速度で搬送可能」ということは、上記第1の搬送手段と上記第2の搬送手段とが同時かつ同速度で動作するということである。
【0014】
[適用例4]
上述の蒸着装置であって、上記第1の搬送手段は複数の上記第1の基板を連続的に搬送可能であり、上記第2の搬送手段は、上記第2の基板を、N枚目の上記第1の基板と共に上記第2の領域を通過させた後に、上記第2の基板を逆方向に搬送してN+1枚目の上記第1の基板と並置し、該第2の基板を上記N+1枚目の上記第1の基板と共に上記第2の領域を再度通過させることが可能であることを特徴とする蒸着装置。
【0015】
このような構成によれば、上記第2の基板に上記第2の蒸着材料(ドーパント)を容易に複数回蒸着して、層厚測定が容易な、充分に厚い膜層を形成できる。そして、上記膜層の層厚測定結果を蒸着回数で割ることにより、1回当たりの蒸着量を算出できる。したがって、1回あたりのドーパントの蒸着量が少ない場合でも、蒸着量の測定が容易になる。なお、上記Nは任意の、1以上の整数である。
【0016】
[適用例5]
上述の蒸着装置であって、上記第1の蒸着源及び上記第2の蒸着源は、上記第1の基板及び上記第2の基板が搬送される方向に、所定の間隔をおいて連続して配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【0017】
第1の基板にホスト材料とドーパントとからなる膜層を、連続して複数回積層する場合において、それぞれの膜層に含まれるドーパントの蒸着量を容易に測定可能となる。なお、上述の所定の間隔とは、少なくとも、上記第2の基板に、2種類の第2の蒸着材料が同時に蒸着することを回避できる距離である。
【0018】
[適用例6]
上述の蒸着装置であって、上記第1の蒸着源の飛翔角度と上記第2の蒸着源の飛翔角度とは略同一であり、上記第1の蒸着源と上記第2の蒸着源とは上記基準面から所定の距離をもって上記第2の方向線に沿って、互いに所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【0019】
このような構成によれば、上記第1の領域及び上記第2の領域を容易に形成できる。なお、飛翔角度とは、有機材料が蒸発時に飛翔する広がり角度を指す。
【0020】
[適用例7]
基板を、基準面に沿って移動させつつ蒸着材料を蒸着させて、該蒸着材料からなる薄膜を形成する方法であって、上記基準面に、第1の蒸着材料が付着する領域と第2の蒸着材料が蒸着する領域とが重なり合う第1の領域と、上記第1の領域に隣接する、上記第2の蒸着材料のみが付着する第2の領域と、が形成されるように、上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料とを飛翔させる第1の工程と、第1の基板を、上記第1の領域を横切るように移動させて、上記第1の基板の表面に上記第1の蒸着材料と上記第2の蒸着材料とが混合された第1の材料層を形成する第2の工程と、第2の基板を上記第2の領域を横切るように移動させて、上記第2の基板の表面に上記第2の蒸着材料からなる第2の材料層を形成する第3の工程と、を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【0021】
このような蒸着方法によれば、上記第1の基板の表面に形成された上記第1の材料層に含まれる上記第2の蒸着材料の(単位面積当たりの)量と同量の上記第2の蒸着材料からなる上記第2の材料層を上記第2の基板の表面に形成できる。したがって、上記第2の材料層の層厚を測定することで上記第1の材料層に含まれる上記第2の蒸着材料の量を管理でき、製造コストを抑制しつつ発光特性等の管理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、構成要素の一部が本実施形態の蒸着装置による成膜対象となる、アクティブマトリクス型の有機EL装置の全体構成を示す回路構成図である。表示領域100には、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数のデータ線104と、データ線104と平行に延びる複数の電源供給線106が形成されている。上記3種類の配線で囲まれる方形の区画(破線で区画している領域)が画素122である。画素122は、赤色光を射出する赤画素122R、緑色光を射出する緑画素122G、青色光を射出する青画素122Bの計3種類があり、表示領域100に規則的に配置されている。
【0023】
各々の画素122は、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介してデータ線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106と導通する発光素子120と、図示しないカラーフィルタ等からなる。
【0024】
表示領域100の周辺には、走査線駆動回路114、及びデータ線駆動回路116が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路114から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、データ線104にはデータ線駆動回路116から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路114の動作とデータ線駆動回路116の動作とは、同期データ線118を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0025】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点のデータ線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から発光素子120に駆動電流が流れこむ。後述するように、発光素子120は、画素毎にパターニングされ駆動用TFT112と導通している陽極(図2参照)と、表示領域100の全範囲に渡って共通電位となる陰極(図2参照)との間に発光層160(図2参照)を含む機能層161(図2参照)を狭持している。発光層160が該駆動電流の大きさに応じて発光することにより、画素122が光を射出する。
【0026】
本実施形態の成膜対象となる有機EL装置は、上述の3種類の画素122に共通する、白色光を発光する発光層を備えている。そして画素122毎に備えられたカラーフィルタにより、赤色光、緑色光、青色光のいずれかに変換される。上述したように個々の画素122が独立に制御され、駆動電流の大きさに応じて発光することで表示領域100にカラー画像が形成される。
【0027】
図2は、発光素子120をカラーフィルタ130等と共に模式的に示す図である。発光素子120は、互いに対向する陽極131と陰極132、及び該一対の電極間に狭持される少なくとも発光層(有機EL層)160を含む機能層161からなる。電源129から陰極132を経由して供給される電子と、電源129から陽極131を経由して供給される正孔と、を発光層160内で結合させることで発光を生じさせる素子である。陽極131は、上述したように画素122毎に(すなわち発光素子120毎に)パターニングされており、保護層134及び反射層135を介して、後述する第1の基板としての素子基板11上に積層されている。一方、陰極132は、表示領域100の全域に形成されている。陰極132の上層には、ガスバリア性を有する封止層136、及び接着層137を介してカラーフィルタ130を備えるカラーフィルタ基板15が接着されている。
【0028】
陰極132は層厚10nm程のMgAg(マグネシウム・銀合金)からなり、半透過反射性を有している。したがって、発光層160で生じた光を透過させて、カラーフィルタ130側に向けて射出できる。陽極131は透過性を有するITO(酸化インジウム・錫合金)で形成されており、発光層160で生じた光のうち素子基板11側に向う光を透過させた後、反射層135で反射させて、カラーフィルタ130側に向けて射出できる。本実施形態の蒸着装置の対象となる有機EL装置はトップエミッション型であるため、素子基板11は透光性を要しない。
【0029】
機能層161は、発光層160の他に、正孔注入層140、正孔輸送層142、電子輸送層144、及び電子注入層146を備えている。正孔輸送層142及び電子輸送層144は、それぞれ発光層160への正孔輸送性、電子輸送性を高めて発光効率を向上させる層である。また、正孔注入層140及び電子注入層146は、それぞれ陽極131、陰極132からの正孔注入効率、電子注入効率を高めて発光効率を向上させる層である。上記各層の形成材料は、正孔注入層140がHI406(出光興産株式会社製)、正孔輸送層142がHT320(出光興産株式会社製)、電子輸送層144がAlq3(アルミニウムキノリノール)、そして、電子注入層146が層厚略1nmのLiF(弗化リチウム)である。
【0030】
発光層160は、導電性を担保するホスト材料に、電子と正孔との結合により発光する機能を有するドーパントを混入して形成されている。本実施形態の成膜対象となる発光層160は、通電により赤色光151を発光する赤色発光層160R、通電により緑色光152を発光する緑色発光層160G、通電により青色光153を発光する青色発光層160Bの計3種類の層を積層して形成されている。
【0031】
上記3種類の発光層は全て、ホスト材料として、出光興産株式会社製のBH215を用いている。ドーパントは各層が発光する光の色ごとに異なり、青色発光層160Bには青色ドーパント164B、緑色発光層160Gには緑色ドーパント164G、赤色発光層160Rには赤色ドーパント164R、が用いられている。具体的には、青色ドーパント164Bには出光興産株式会社製のBD052、緑色ドーパント164Gにはキナクリドン、赤色ドーパント164Rには出光興産株式会社製のRD001が、夫々用いられている。
【0032】
赤色光151と緑色光152と青色光153とが合わさって白色光154となり、該白色光がカラーフィルタ130を透過することで画素毎に赤、緑、青の3原色のいずれかの色の原色光155となる。かかる構成の発光層160は、画素毎に該画素の色に対応する発光層160を形成する構成と比べると、発光層160の積層工程を、マスク等を用いずに、かつ連続工程として実施できるという利点がある。
【0033】
上述の発光層160の形成材料は低分子系の材料であるため、成膜手法としては蒸着法が好ましい。機能層161を形成する各層のうち、電子注入層146以外の3層も蒸着により形成できる。ホスト材料とドーパントとでは溶融温度等の条件が異なる。したがって、任意のドーパント濃度の発光層を得るためには、ホスト材料とドーパントとに別個の蒸着源を用いることが好ましい。双方の蒸着源から、双方の材料(ホスト材料とドーパント)の分子を夫々最適な条件で飛翔させて、基板(素子基板11)表面に同時に蒸着させることで、好ましい発光層160を形成(成膜)できる。
【0034】
かかる成膜工程において問題となることの1つに、ドーパントの混入量、すなわちドーパント単独での蒸着量の測定が困難なことが挙げられる。ドーパントの混入量は発光特性を大きく左右するため、有機EL装置の表示品質を維持するためには、上記蒸着量の管理が重要である。しかし、ドーパントの混入率は5%程度である。赤色発光層160R等の各発光層の層厚は10nm〜20nmであるため、ドーパントのみを発光層の成膜時と同一の条件で蒸着させた場合の層厚は0.5nm〜1nm程となる。エリプソメトリ装置等の光学測定器を用いても、かかる極薄い膜層の厚さを測定することは困難である。ドーパントのみを発光層の成膜時と同一の条件で複数回(20回程度)蒸着させれば、測定可能な厚さの膜層を得ることができる。しかし、蒸着装置を層厚測定用の基板の作成にのみ用いることは製造コストを増大させるため、実行は困難である。
【0035】
以下に記載する本実施形態の蒸着装置は、ホスト材料とドーパントとからなる発光層を成膜しつつ、ドーパントのみが蒸着された層厚測定用の基板も同時に作成することで、製造コストを増大させることなくドーパント蒸着量の測定(及び管理)を可能にしている。
【0036】
図3は、本実施形態の蒸着装置における構成要素の概要を示す図である。蒸着装置は、真空チャンバー19と排気系21と搬送手段30と蒸着源60等からなっている。真空チャンバー19は図示しない開口部より基板10を出し入れ可能な構成であり、内部に少なくとも搬送手段30と1又は複数個の蒸着源60を備えている。排気系21は、真空チャンバー19内を所定の気圧の真空状態に保つことができる。
【0037】
搬送手段30は、基板10の一方の面を蒸着源60と対向させつつ、所定の速度で一定の方向に移動させることができる。該一方の面が表面(おもて側の面)である。
搬送手段30は直線状であり、基板10は所定の平面上を移動させられる。該所定の平面が基準面25である。
【0038】
各々の蒸着源は蒸着材料(上述のホスト材料及びドーパント)を指向的に飛翔させて、基板10の表面に膜層を形成できる。したがって、蒸着源の数の(種類の)膜層が順次積層される。本実施形態の蒸着装置は、搬送手段30が2つあり、後述するように2枚の基板を同時に平行な方向に搬送できる。
【0039】
図4は、蒸着源60の概要を示す図である。蒸着源60は、るつぼ24、蒸着材料76、及び図示しない加熱手段等からなる。るつぼ24内に備えられた常温では固体の蒸着材料を加熱手段により加熱して、溶融して液体とした後に、あるいは固体から直接的に、蒸着材料の粒子70として飛翔させることができる。ここで、蒸着材料の粒子70は、開口部22の形状に沿って飛翔する。例えば、開口部22の壁部が基準面25に対して垂直であれば該垂直方向に飛翔し、上記壁部が上方に向けて広がる形状であれば、所定の角度を持って広がるように飛翔する。該角度を飛翔角80と称する。
【0040】
ここで、開口部22の平面形状(平面視における形状)が円形であれば、飛翔角80はあらゆる方向から見て略同一となる。また、開口部22の平面視における形状が長円や方形であれば、飛翔角80は見る方向によって異なる。
【0041】
図5は、本実施形態の蒸着装置における、基板と蒸着源の位置関係を模式的に示す斜視図である。同時に搬送される2枚の基板と、該2枚の基板に対して同時に蒸着材料を飛翔させる2つの蒸着源を示している。
【0042】
本実施形態の蒸着装置は、第1の搬送手段31と第2の搬送手段32の2つの搬送手段(図6参照)を備えており、図示する2枚の基板、すなわち第1の基板としての素子基板11と第2の基板としてのモニター基板12とを同時に搬送できる。上記の双方の基板は、基準面25上を第1の方向線51の方向に互いに若干の間隔をもって搬送される。第1の方向線51が延在する軸方向がX軸である。基準面25に対して垂直の方向がZ軸である。X軸及びZ軸の双方に直行する軸がY軸であり、後述する第2の方向線52はY軸に沿った方向線である。
【0043】
上記2つの搬送手段は、基板の周縁部を保持し、該周縁部を除く領域は開放した状態で搬送することができる。したがって、該基板の、後述する蒸着源と対向する面には、該蒸着源から飛翔する蒸着材料の粒子が蒸着して、該蒸着材料からなる膜層(薄膜)が形成される。上述の、蒸着源と対向する側の面が表面(おもて側の面)である。
【0044】
本実施形態の蒸着装置は、るつぼ24内に第1の蒸着材料を備える第1の蒸着源61とるつぼ24内に第2の蒸着材料を備える第2の蒸着源62の2つの蒸着源を備えており、2種類の蒸着材料を同時に飛翔させることができる。第1の蒸着材料はホスト材料であり、第2の蒸着材料はドーパントである。上記2つの蒸着源は、基準面25からZ軸の方向に所定の距離をおいて、また、Y軸の方向に所定の間隔をおいて並置されている。
【0045】
上記2つの蒸着源の開口部22の平面形状は長方形である。したがって、各々の蒸着源は、基準面25上の長方形の範囲(領域)に蒸着材料を飛翔させて蒸着できる。Y軸の方向に並んでいるため、上述する双方の(長方形の)領域のY軸の方向の中心線は同一線上に位置する。かかる双方の長軸が位置する線が、第2の方向線52である。
【0046】
また、上記2つの蒸着源の、Y軸の方向から見たときの飛翔角は同一である。したがって、上述の双方の長方形の領域のX軸の方向の長さは一致する。このようなX軸の方向の長さを幅とする領域を、Y軸の方向に延伸させた領域が、帯状の領域40である。そして双方の蒸着源間の距離が極端に離れていない限り、上述する双方の長方形の範囲(領域)は、互いに重なり合う領域、すなわち双方の蒸着材料が蒸着される領域が生じる。また、蒸着源間の距離あるいはX軸の方向から見た飛翔角を調整することで、上述する双方の長方形の範囲(領域)重ならない領域、すなわち一方の蒸着材料のみが蒸着される領域を設定することもできる。
【0047】
本実施形態の蒸着装置では、双方の蒸着材料が蒸着される領域のY軸の方向の長さが、素子基板11のY軸の方向の長さ(以下、「幅」と称する。)よりも大きくなるように設定されている。したがって、素子基板11が、該基板の(X軸の方向の)中心線と上記双方の蒸着材料が蒸着される領域の(X軸の方向の)中心線とが重なるようにして、第1の方向線51の方向に搬送される場合、該基板の幅方向の全域が、上記双方の蒸着材料が蒸着される領域と重なる領域が生じる。かかる領域が、第1の領域41である。
【0048】
また、第2の蒸着材料のみが蒸着される領域のY軸の方向の長さは、モニター基板12の幅よりも大きくなるように設定されている。したがって、モニター基板12が、該基板の(X軸の方向の)中心線と上記第2の蒸着材料のみが蒸着される領域の(X軸の方向の)中心線とが重なるようにして、第1の方向線51の方向に搬送される場合、該基板の幅方向の全域が、上記第2の蒸着材料のみが蒸着される領域と重なる領域が生じる。かかる領域が、第2の領域42である。
なお、第1の領域41及び第2の領域42のX軸の方向の長さと、帯状の領域40のX軸の方向の長さと、は同一であるが、本図(図5)では若干の差を付けて判り易く示している。後述する、図6〜図11においても同様である。
【0049】
本実施形態の蒸着装置は、素子基板11とモニター基板12とを同時に搬送しつつ、素子基板11の表面には第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方が混合された膜層を形成し、モニター基板12の表面には第2の蒸着材料のみからなる膜層を形成できる。蒸着材料は上述の飛翔角内を略同一の密度で飛翔するため、素子基板11の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の密度すなわち面積あたりの量とモニター基板12の表面に形成される膜層を構成する第2の蒸着材料の密度は略同一となる。したがって、モニター基板12の表面に形成される膜層の層厚を測定することにより、素子基板11の表面に形成される膜層に含まれる第2の蒸着材料の密度を算出できる。
【0050】
ただし、上述したように、第2の蒸着材料はドーパントであり、ホスト材料である第1の蒸着材料に比べて著しく少ない量しか蒸着されないため、1回の成膜では測定可能な層厚の膜層を形成できない。本実施形態の蒸着装置は、モニター基板12の表面に同一条件で繰り返し成膜することにより、ドーパントである第2の蒸着材料からなる測定可能な膜層を形成できる。
【0051】
図6〜図8に、本実施形態の蒸着装置の構成を示す。図6は、本実施形態の蒸着装置を、搬送される基板の裏面方向から見た概略図である。図7は、本実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図である。図8は、第2の搬送手段32の構成を示す図である。
【0052】
本実施形態の蒸着装置は、発光層160(図2参照)の形成に用いられる蒸着装置である。図示しない真空チャンバー内に、3つの蒸着領域がX軸の方向に直列に配置されている。第1の蒸着領域37は青色発光層160Bを形成する領域、第2の蒸着領域38は緑色発光層160Gを形成する領域、そして第3の蒸着領域39は赤色発光層160Rを形成する領域である。
【0053】
各々の蒸着領域には、第1の蒸着源61と第2の蒸着源62が備えられている。上述したように、各々の蒸着源の開口部のX軸の方向の長さは略同一のため、第2の方向線52が双方の蒸着源の開口部の中心線上にあるとすると、第2の方向線52を中心線とする所定の幅を有する領域である帯状の領域40が、蒸着材料が飛翔し得る領域となる。そして、蒸着源の開口部の形状及び双方の蒸着源の間隔等の設定により、帯状の領域40は、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料との双方が飛翔する領域(すなわち基準面25上に基板がある場合、該基板の表面に双方の蒸着材料が蒸着される領域)と、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、が形成されている。その他に、第1の蒸着材料のみが飛翔する領域も存在する。
【0054】
上述したように、帯状の領域40のうちの第1の蒸着材料と第2の蒸着材料との双方が飛翔する領域と、第1の搬送手段31により搬送される素子基板11と、が重なり得る領域が、第1の領域41である。同じく、帯状の領域40のうちの第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、第2の搬送手段32により搬送されるモニター基板12と、が重なり得る領域が、第2の領域42である。かかる態様を、本実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図である図7に示す。
【0055】
図7に示すように、第1の蒸着源61が第1の蒸着材料を飛翔させる範囲をX軸の方向から見たときの角度である第1の飛翔角81と、第2の蒸着源62が第2の蒸着材料を飛翔させる範囲をX軸の方向から見たときの角度である第2の飛翔角82と、は略同一である。そして双方の蒸着源はY軸の方向に互いに間隔を空けて配置されている。その結果、基準面25上において、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方の蒸着材料が飛翔する領域と、第1の蒸着材料のみが飛翔する領域と、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域と、の3つの領域が生じる。そして、本実施形態の蒸着装置では、双方の蒸着源の飛翔角及び相互の間隔を調整することで、第1の蒸着材料と第2の蒸着材料の双方の蒸着材料が飛翔する領域の幅(Y軸の方向の長さ)が素子基板11の幅よりも若干広くなり、第2の蒸着材料のみが飛翔する領域の幅がモニター基板12の幅よりも若干広くなるように設定されている。
【0056】
以上の設定は、第1の蒸着領域37、第2の蒸着領域38、及び第3の蒸着領域39の3つの蒸着領域で共通である。したがって、各々の蒸着領域に第1の領域41と第2の領域42とが形成される。
【0057】
第1の蒸着源61が備える蒸着材料は上述したようにホスト材料であり第1〜第3の蒸着領域間で共通である。第2の蒸着源62の蒸着材料はドーパントである。具体的には、第1の蒸着領域37に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は青色ドーパント164B、第2の蒸着領域38に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は緑色ドーパント164G、そして第3の蒸着領域39に備えられている第2の蒸着源の蒸着材料は赤色ドーパント164Rである。
【0058】
素子基板11を搬送する第1の搬送手段31は、該3つの蒸着領域を横切る構成である。つまり、チャンバー内に1つ備えられており、1つの駆動モータ85で駆動される。したがって、素子基板11は該3つの蒸着領域の各々の第1の領域41を順次通過する。上述したように第1の領域ではホスト材料とドーパントが同時に飛翔する。したがって、素子基板11の表面には青色発光層160B、緑色発光層160G、そして赤色発光層160Rの計3層の膜層が順次積層される。
【0059】
モニター基板12を搬送する第2の搬送手段32は、上述の各々の蒸着領域に夫々1つずつ備えられている。各々の第2の搬送手段32には駆動モータ85が備えられており、モニター基板12をスタート位置である第1の位置91から停止位置である第2の位置92まで搬送する。
【0060】
第1の位置91と第2の位置92は、第2の領域42の両側にあるため、モニター基板12は第2の領域42の全域を完全に横切るように搬送される。したがって、モニター基板12の表面には、素子基板11の表面に蒸着される第2の蒸着材料と単位面積当たりで同量の、第2の蒸着材料のみからなる膜層が形成される。
【0061】
つまり、第1の蒸着領域37で搬送されるモニター基板12の表面には青色ドーパント164Bからなる膜層が形成され、第2の蒸着領域38で搬送されるモニター基板12の表面には緑色ドーパント164Gからなる膜層が形成され、第3の蒸着領域39で搬送されるモニター基板12の表面には赤色ドーパント164Rからなる膜層が形成される。そして後述するように、各々の第2の搬送手段32は、第2の領域を通過して第2の位置92で停止したモニター基板12を逆方向に搬送して、第1の位置91まで送り返す機構を備えている。したがって、本実施形態の蒸着装置は、各々の蒸着領域においてモニター基板12の表面にドーパントからなる膜層を複数回積層できる。
【0062】
上述したように、モニター基板12の表面に1回の搬送で蒸着されるドーパントの量は、同時に搬送される素子基板11に蒸着されるドーパントの量と略同一である。層厚で言うと0.5nm程度であり、光学的な測定器を用いても精密な測定は困難である。しかし、かかる膜層を複数回積層することで、精密な測定が可能な層厚の膜層を形成できる。そして、かかる層厚を積層の回数で割ることで、1回の搬送で蒸着されるドーパントの量を精度よく求めることができる。上述したように、1回の膜層形成工程で形成されるドーパントからなる膜層の層厚は0.5nm程度であり、層厚測定が困難である。しかし、例えば100回繰り返して成膜すると50nmとなり、充分に高い精度で測定可能な層厚が得られる。そして、かかるドーパントの量は、上述したように、素子基板11に蒸着されるドーパントの(単位面積当たりの)量と略同一である。
【0063】
ここで、素子基板11の表面に形成される青色発光層160B等の層厚は充分に厚いため、複数回積層することなく測定できる。そして、青色発光層160B等は殆んどがホスト材料からなる。したがって、素子基板11の表面に形成される各発光層の層厚と、モニター基板12上に形成されるドーパントからなる膜層の層厚から、とから各々の発光層(160R等)のドーパント濃度を求めることができる。
【0064】
図8は、第2の搬送手段の構成を示す図である。図8(a)は本実施形態の蒸着装置で用いているタイプの搬送手段であり、図8(b)は、搬送ベルトに替えて搬送ローラを用いるタイプである。
第1の位置91は搬送が開始されるスタート位置であり、モニター基板12はこの位置から、隣り合う第1の搬送手段31で搬送される素子基板11の動きに合わせて、搬送ベルト95により第2の領域42へ向けて搬送される。そしてモニター基板12は、第2の領域42を完全に通過した後、ストッパ97により、第2の位置92で停止させられる。
【0065】
そして停止させられたモニター基板12は、吸着器99で第3の位置93まで持ち上げられた後搬送レール98に沿って第4の位置94まで移送される。そして、第1の位置91まで降ろされて、再度搬送ベルト95上に位置することとなる。そして、次の素子基板11が第1の領域41に差し掛かる動きにタイミングを合わせて、再び第2の領域42へ向けて搬送される。
かかる動作が繰り返されることにより、モニター基板12の表面には、測定可能な層厚を有する、ドーパントからなる膜層が形成される。
【0066】
図8(b)に示す第2の搬送手段32は、搬送ベルト95に替えて搬送ローラ96が用いられている。それ以外の点は、図8(a)に示す第2の搬送手段32と、特に差はない。モニター基板12は、搬送ローラ96により第1の位置91から第2の位置92に搬送される間に第2の領域42を通過する。そして該通過の際に、表面にドーパントからなる膜層が形成される。そして、第3の位置93及び第4の位置94を経由して再度第1の位置91に戻る。かかる動作を複数回繰り返されて、モニター基板12の表面に測定可能な層厚を有するドーパントからなる膜層が形成される。
【0067】
(発明の効果)
以上述べたように、本実施形態の蒸着装置であれば、素子基板11とモニター基板12とを並走させることができる。そして、量産品を製造しつつ、ドーパントのみから成る膜層を連続して複数回成膜して、モニター基板12の表面にドーパントのみから成る測定可能な層厚を有する膜層を形成できる。そしてかかる膜層の層厚と、製品である素子基板11上に形成される発光層の層厚と、から、該発光層のドーパント濃度を容易に算出できる。したがって、製造コスト等を殆んど増加させることなくドーパントの濃度を管理でき、表示品質の維持等が可能になる。
【0068】
(第2の実施形態)
図9に、第2の実施形態の蒸着装置の、X軸の方向から見た概略を示す。本実施形態の蒸着装置は基本的に第1の実施形態の蒸着装置と同様の構成を有しており、第1の蒸着材料の飛翔角のみが異なっている。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0069】
本実施形態の蒸着装置は、第1の蒸着源61の開口部22(図4参照)の広がりの程度が弱く、そのため、第1の飛翔角81が第2の飛翔角82に比べて若干狭くなっている。したがって、基準面25において第1の蒸着材料が飛翔する領域(幅)が狭くなり、素子基板11の幅に若干の余裕を加えた程度となっている。したがって、第2の蒸着材料のみが蒸着する領域は、第1の実施形態の蒸着装置と略同一であるが、第1の蒸着材料のみが蒸着する領域は殆んど存在していない。したがって、本実施形態の蒸着装置は第1の蒸着材料(すなわちホスト材料)の使用量を低減でき、製造コストを抑制できるという効果がある。
【0070】
(第3の実施形態)
図10に、第3の実施形態の蒸着装置の、X軸の方向から見た概略を示す。本実施形態の蒸着装置は、基本的に第1の実施形態の蒸着装置と同様の構成を有しているが、第3の蒸着源63、及び第3の基板13を搬送可能な第3の搬送手段33を備えている点で異なっている。その他の構成要素は第1の実施形態の蒸着装置と同様である。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0071】
第3の蒸着源には、第3の蒸着材料として第2のドーパントが備えられている。飛翔角については、第1の飛翔角81は、第2の飛翔角82及び第3の蒸着源の飛翔角である第3の飛翔角83に比べて小さい。そして、第3の飛翔角83の大きさは第2の飛翔角82の大きさと略同一である。したがって、基準面25の中央には、第1の蒸着源から飛翔するホスト材料と第2の蒸着源から飛翔するドーパントと第3の蒸着源から飛翔する第2のドーパントとが蒸着する領域が生じている。そして、該領域の向って右側には第2の蒸着源から飛翔するドーパントのみが蒸着する領域が生じ、該領域の向って左側には第3の蒸着源から飛翔する第2のドーパントのみが蒸着する領域が生じている。第2のドーパントのみが蒸着する領域と、第3の搬送手段33で搬送される第3の基板13と、が重なる領域が第3の領域43である。
【0072】
第3の基板13は、モニター基板12と略同一の平面形状の基板であり、また、第3の搬送手段33は第2の搬送手段32と同様に、蒸着領域を通過した基板をスタート位置まで送り返す機構を備えている。したがって、本実施形態の蒸着装置は、モニター基板12の表面にドーパントを複数回蒸着して測定が可能な層厚の膜層を形成するとともに、第3の基板13の表面に第2のドーパントを複数回蒸着して、測定が可能な層厚の膜層を形成できる。
【0073】
したがって、本実施形態の蒸着装置は、素子基板11の表面に、ホスト材料と2種類のドーパントとからなる膜層を形成しつつ、双方のドーパントが各々個別に複数回積層されたモニター基板(モニター基板12及び第3の基板13)を作製して、双方のドーパントの蒸着量を個別に測定できる。
【0074】
(第4の実施形態)
図11に、第4の実施形態の蒸着装置の、Z軸の方向から見た概略を示す。第1〜第3の3つの蒸着領域に加えて、第4の蒸着領域34、及び第5の蒸着領域35が連結されている点で第1の実施形態の蒸着装置とは異なっている。該2つの蒸着領域以外の構成要素は第1の実施形態の蒸着装置と共通である。そこで、第1の実施形態の蒸着装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略している。
【0075】
第1の搬送手段31は、上述の5つの蒸着領域を横切るような構成であり、第1の実施形態の蒸着装置と同様に1つの駆動モータ85を備えている。したがって、第1の搬送手段31は、素子基板11を、第4の蒸着領域34から第1〜第3の3つの蒸着領域を経由して第5の蒸着領域35まで連続して搬送可能である。
【0076】
第4の蒸着領域34と第5の蒸着領域35は、それぞれ蒸着源60を備えており、第1〜第3の3つの蒸着領域で形成される膜層とは別の、単一の材料からなる膜層を形成できる。したがって、発光素子120の機能層161の形成工程において、発光層160のみではなく、正孔輸送層142(図2参照)及び電子輸送層144(図2参照)を連続して形成できる。なお、さらに蒸着領域を連結させて、6層以上の膜層を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】アクティブマトリクス型の有機EL装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】発光素子をカラーフィルタ等と共に模式的に示す図。
【図3】蒸着装置の構成要素の概要を示す図。
【図4】蒸着源の概要を示す図。
【図5】第1の実施形態の蒸着装置における基板と蒸着源の位置関係を模式的に示す斜視図。
【図6】第1の実施形態の蒸着装置をZ軸の方向から見た概略図。
【図7】第1の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図8】第2の搬送手段の構成を示す図。
【図9】第2の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図10】第3の実施形態の蒸着装置をX軸の方向から見た概略図。
【図11】第4の実施形態の蒸着装置をZ軸の方向から見た概略図。
【符号の説明】
【0078】
10…基板、11…第1の基板としての素子基板、12…第2の基板としてのモニター基板、13…第3の基板、15…カラーフィルタ基板、19…チャンバー、21…排気系、22…開口部、24…るつぼ、25…基準面、30…搬送手段、31…第1の搬送手段、32…第2の搬送手段、33…第3の搬送手段、34…第4の蒸着領域、35…第5の蒸着領域、37…第1の蒸着領域、38…第2の蒸着領域、39…第3の蒸着領域、40…帯状の領域、41…第1の領域、42…第2の領域、43…第3の領域、51…第1の方向線、52…第2の方向線、60…蒸着源、61…第1の蒸着源、62…第2の蒸着源、63…第3の蒸着源、70…蒸着材料の粒子、76…蒸着材料、80…飛翔角、81…第1の飛翔角、82…第2の飛翔角、83…第3の飛翔角、85…駆動モータ、91…第1の位置、92…第2の位置、93…第3の位置、94…第4の位置、95…搬送ベルト、96…搬送ローラ、97…ストッパ、98…搬送レール、99…吸着器、100…表示領域、102…走査線、104…データ線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、114…走査線駆動回路、116…データ線駆動回路、118…同期データ線、120…発光素子、122…画素、122R…赤画素、122G…緑画素、122B…青画素、129…電源、130…カラーフィルタ、131…陽極、132…陰極、134…保護層、135…反射層、136…封止層、137…接着層、140…正孔注入層、142…正孔輸送層、144…電子輸送層、146…電子注入層、151…赤色光、152…緑色光、153…青色光、154…色光白、155…原色光、160…発光層(有機EL層)、160B…青色発光層、160G…緑色発光層、160R…赤色発光層、161…機能層、164B…青色ドーパント、164G…緑色ドーパント、164R…赤色ドーパント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で、基準面上を第1の方向線に沿って搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段と隣り合う搬送手段であって、第2の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で前記基準面上を前記第1の方向線に沿って搬送する第2の搬送手段と、
前記基準面上において前記第1の方向線と直行する第2の方向線を中心とする所定の幅を有する帯状の領域と前記第1の基板とが重なり得る第1の領域及び前記帯状の領域と前記第2の基板とが重なり得る第2の領域、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源と、
第1の蒸着材料を前記第2の領域には飛翔させずに、前記第1の領域にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源と、
を備えることを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置であって、前記第2の蒸着材料の蒸着レートと前記第1の蒸着材料の蒸着レートとの比は0.1以下であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸着装置であって、前記第1の基板と前記第2の基板とを同時かつ同速度で搬送可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、
前記第1の搬送手段は複数の前記第1の基板を連続的に搬送可能であり、
前記第2の搬送手段は、前記第2の基板を、N枚目の前記第1の基板と共に前記第2の領域を通過させた後に、前記第2の基板を逆方向に搬送してN+1枚目の前記第1の基板と並置し、該第2の基板を前記N+1枚目の前記第1の基板と共に前記第2の領域を再度通過させることが可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、前記第1の蒸着源及び前記第2の蒸着源は、前記第1の基板及び前記第2の基板が搬送される方向に、所定の間隔をおいて連続して配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、
前記第1の蒸着源の飛翔角度と前記第2の蒸着源の飛翔角度とは略同一であり、前記第1の蒸着源と前記第2の蒸着源とは前記基準面から所定の距離をもって前記第2の方向線に沿って、互いに所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【請求項7】
基板を、基準面に沿って移動させつつ蒸着材料を蒸着させて、該蒸着材料からなる薄膜を形成する方法であって、
前記基準面に、第1の蒸着材料が付着する領域と第2の蒸着材料が蒸着する領域とが重なり合う第1の領域と、前記第1の領域に隣接する、前記第2の蒸着材料のみが付着する第2の領域と、が形成されるように、前記第1の蒸着材料と前記第2の蒸着材料とを飛翔させる第1の工程と、
第1の基板を、前記第1の領域を横切るように移動させて、前記第1の基板の表面に前記第1の蒸着材料と前記第2の蒸着材料とが混合された第1の材料層を形成する第2の工程と、
第2の基板を前記第2の領域を横切るように移動させて、前記第2の基板の表面に前記第2の蒸着材料からなる第2の材料層を形成する第3の工程と、
を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項1】
第1の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で、基準面上を第1の方向線に沿って搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段と隣り合う搬送手段であって、第2の基板を、該基板の表面を周縁部を除いて開放した状態で前記基準面上を前記第1の方向線に沿って搬送する第2の搬送手段と、
前記基準面上において前記第1の方向線と直行する第2の方向線を中心とする所定の幅を有する帯状の領域と前記第1の基板とが重なり得る第1の領域及び前記帯状の領域と前記第2の基板とが重なり得る第2の領域、の双方の領域に第2の蒸着材料を同時に飛翔させることが可能な第2の蒸着源と、
第1の蒸着材料を前記第2の領域には飛翔させずに、前記第1の領域にのみ飛翔させることが可能な第1の蒸着源と、
を備えることを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置であって、前記第2の蒸着材料の蒸着レートと前記第1の蒸着材料の蒸着レートとの比は0.1以下であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸着装置であって、前記第1の基板と前記第2の基板とを同時かつ同速度で搬送可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、
前記第1の搬送手段は複数の前記第1の基板を連続的に搬送可能であり、
前記第2の搬送手段は、前記第2の基板を、N枚目の前記第1の基板と共に前記第2の領域を通過させた後に、前記第2の基板を逆方向に搬送してN+1枚目の前記第1の基板と並置し、該第2の基板を前記N+1枚目の前記第1の基板と共に前記第2の領域を再度通過させることが可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、前記第1の蒸着源及び前記第2の蒸着源は、前記第1の基板及び前記第2の基板が搬送される方向に、所定の間隔をおいて連続して配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蒸着装置であって、
前記第1の蒸着源の飛翔角度と前記第2の蒸着源の飛翔角度とは略同一であり、前記第1の蒸着源と前記第2の蒸着源とは前記基準面から所定の距離をもって前記第2の方向線に沿って、互いに所定の間隔を開けて配置されていることを特徴とする蒸着装置。
【請求項7】
基板を、基準面に沿って移動させつつ蒸着材料を蒸着させて、該蒸着材料からなる薄膜を形成する方法であって、
前記基準面に、第1の蒸着材料が付着する領域と第2の蒸着材料が蒸着する領域とが重なり合う第1の領域と、前記第1の領域に隣接する、前記第2の蒸着材料のみが付着する第2の領域と、が形成されるように、前記第1の蒸着材料と前記第2の蒸着材料とを飛翔させる第1の工程と、
第1の基板を、前記第1の領域を横切るように移動させて、前記第1の基板の表面に前記第1の蒸着材料と前記第2の蒸着材料とが混合された第1の材料層を形成する第2の工程と、
第2の基板を前記第2の領域を横切るように移動させて、前記第2の基板の表面に前記第2の蒸着材料からなる第2の材料層を形成する第3の工程と、
を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−120879(P2009−120879A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293983(P2007−293983)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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