説明

蓄光性熱収縮チューブ

【課題】 蓄光性熱収縮チューブの(1)発光強度を高めること、(2)耐水性を向上させること、および(3)蓄光性熱収縮チューブに識別手段を付加すること、を通じて蓄光性熱収縮チューブを使い、より広範囲の用途に対して、簡便で効果的な夜間あるいは暗所での識別手段を提供すること。
【解決手段】 (1)蓄光性の熱収縮層の内面に、光反射性の層を形成する。(2)蓄光性の熱収縮層2の外側に、撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む層4を形成する。(3)蓄光性の熱収縮層2の内側に、ホットメルト接着剤を含む層5を形成する。(4)蓄光性の熱収縮層の外側に、識別のための印を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安全標識や案内標識の支柱、自転車や車椅子等のフレームあるいは輪のスポーク、アンテナや電気配線、釣り具やスキューバ用品、カーアクセサリーやインテリア等種々の用途において、対象物の一部または全部を被覆して、対象物の保護、識別等に使用される蓄光性熱収縮チューブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】蓄光性を有する熱収縮チューブは、例えば、特開平7−107887号公報に示されるように、蓄光顔料を熱可塑性樹脂に添加して構成する方法が知られており、魚釣における釣針とテグスの結合部の上部に装着して、当該部分の傷つきを防止するとともに、その発光性により集魚効果を発揮する用途で考案がなされている。このような蓄光性チューブを、安全標識や案内標識の支柱、自転車や車椅子のフレーム等に被せて、夜間における視認性を高めるたり、また、各種電気部品やカーアクセサリーに被せて夜間や照明を落とした室内での識別を容易にしたりする用途に使用することが考えられるが、特別な電源が不要で、ある程度の対象物サイズをカバーし簡便に被覆ができるという熱収縮チューブの利便性にもかかわらず、あまり普及していない。
【0003】発明者等は、その理由を種々検討した結果、次のような問題があることを見出した。すなわち、熱収縮チューブを構成する熱可塑性樹脂に蓄光性顔料を添加しただけでは発光強度が十分でない場合が多く、熱収縮チューブを被せる対象が暗色の場合は発光強度が弱くなる傾向がある。また、前記の釣り具のように水分にさらされる環境下で使用した場合、チューブ内に浸透した水分により蓄光性顔料が劣化したり、あるいは外部に溶出するため発光性が低下し、長時間使用しているとその特性が低下してしまう。
【0004】また、熱収縮チューブを識別用途に使用する場合、通常は異なる色を用いる等により相互に区別することが行われるが、蓄光性顔料を添加した熱収縮チューブにおいては、現在得られる蓄光性顔料の色が緑、黄、青の付近に限られているため、色による識別ができず、単に発光する機能だけを利用する用途に限定せざるをえないという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の種々の問題点を考慮し、蓄光性を有する熱収縮チューブの(1)発光強度を高めること、(2)耐水性を向上すること、および(3)蓄光性熱収縮チューブに識別手段を付加すること、を通じて蓄光性熱収縮チューブにより、より広範囲の用途に対して、簡便で効果的な夜間あるいは暗所での物体の視認性を高めたり、識別を容易にする手段を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次に述べる手段により、これらを解決し利便性の高い蓄光性熱収縮チューブを得ることができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、蓄光性を有する熱収縮チューブの発光強度を高めるために、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の内面に、光反射性の層を形成したことを特徴とする。光反射性の層を蓄光層の内面に設けることにより、蓄光層から内側へ向かう光を反射させることができ、外側へ放射する光の強度を高めることができる。
【0007】また本発明は、光反射性の層を、明色の顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成したことを特徴とする。光反射性の層を、蓄光層と同様に熱可塑性樹脂組成物で形成するため二層押出等を使用することができ、同樹脂組成物に明色の顔料を含めることにより、容易に光反射層を形成することができる。
【0008】さらに本発明は、光反射性の層が、熱収縮性であることを特徴とする。光反射性の層を、蓄光層と同様に熱収縮性とすることにより、被覆対象への収縮加工をスムースに行なうことができ、被覆対象にしっかりフィットし良好な外観をえることができる。
【0009】また、耐水性について鋭意検討した結果、本発明者らは、水が蓄光層へ浸入する主要な経路が2つあり、少なくともその一方あるいは両方を抑える必要があることを見出した。その一方は、熱収縮チューブの表面から浸入する経路であり、もう一方は熱収縮チューブと被覆対象物の界面に浸入した水分が同チューブの内側表面から内部へ浸入する経路である。
【0010】まず、蓄光性熱収縮チューブの表面から浸入する水分を防止するために、本発明は、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の外側に、撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む層を形成したことを特徴とする。
【0011】次に、蓄光性熱収縮チューブと被覆対象物の界面に浸入した水分が同チューブの内側表面から内部へ浸入するのを防止するために、本発明は、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の内面の一部または全部に、ホットメルト接着剤を含む層を形成したことを特徴とする。
【0012】さらに、本発明は、内側から、ホットメルト接着剤を含む層、光反射性の層、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層、及び撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む層を順次形成したことを特徴とする。このような構成をとることにより、発光強度に優れ、水分の浸入による蓄光顔料の劣化を防ぎ長期使用に耐える蓄光性熱収縮チューブが得られる。
【0013】また、本発明は、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の外側に、識別のための印を形成させたことを特徴とする。前記印が蓄光性の熱収縮層から出た光を遮るため、その印として文字、数字、記号、絵等を使うことにより、熱収縮チューブを被覆した対象物に発光性の識別マークを施すことができる。
【0014】本発明において、光反射性の層が、明色の顔料を含む熱可塑性樹脂組成物であり同時にホットメルト接着剤であるように処方すれば、発光強度を高めると共に耐水性に優れた蓄光性熱収縮チューブを、より簡単な構造と製造方法で得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において、蓄光性熱収縮チューブは加熱することにより径方向に収縮する性質をもつもので、この製造に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体のようなエチレン系の共重合体,エチレンプロピレンゴムやクロロプレンゴム,フッ素ゴムのような合成ゴム,ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、12−ナイロンのようなポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等が例示でき、これらを単体で用いたり、ブレンドして使用するすることができる。特に、収縮チューブにした時の加工性、収縮時の作業性、蓄光顔料を添加した時の光透過性、およびコスト等を総合すると、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系の共重合体が好ましい。
【0016】前記の熱可塑性樹脂に添加する蓄光性顔料としては、例えば、蛍光体や燐光体等を用いて暗所で蓄光するようにした蛍光顔料を用いることができる。具体的な例としては、アルカリ土類アルミン酸塩に賦活剤としてユーロビウムを賦活助剤としてデスプロシウムまたはネオジウムを添加した無機蛍光顔料、2,5−ビス[5’−第三ブチルベンゾオキサゾリル(2)]チオフェン等の有機蛍光顔料が好ましい。蓄光性材料の使用量は特に限定されないが、熱収縮性材料の重量中に占める割合が5〜100重量%の範囲が好ましい。この割合が5%未満となると、発光度が不足し、一方100重量%を超えるとチューブの機械的強度が低下すると共にコスト的にも高くなってしまう。
【0017】蓄光性を有する熱収縮チューブの発光強度を高めるため、その内面に形成する光反射性の層としては、アウミニウム等の金属箔を当該チューブの内面に貼り付けたり、明色の顔料を含む熱可塑性樹脂組成物を当該チューブの内面に溶融押出する等により形成することができる。前記の熱可塑性樹脂組成物としては、蓄光性熱収縮チューブを構成するのと同じ樹脂を用いることができ、同じ理由からポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系の共重合体が好ましい。明色の顔料としては、白色、黄色、淡青色等の顔料を用いることができるが、光の反射特性や蓄光性の熱収縮層の色合いに与える影響が少ない点から、酸化チタン、亜鉛華、リトポン(硫化亜鉛/硫酸バリウムの混合物)、沈降性硫酸バリウムバライト(硫酸バリウムが主成分)、炭酸カルシウム、せっこう、沈降性シリカ(ホワイトカーボン)などの白色顔料が好ましい。この中でも、反射特性から酸化チタンが最も好ましい。
【0018】明色の顔料を含む熱可塑性樹脂組成物の層を蓄光性熱収縮チューブの内面に形成する方法としてとくに好ましいのは、熱収縮層と反射層を同時押出し、後述する方法により両方の層に熱収縮性をもたせる方法であり、この場合は、同チューブを熱収縮する際に収縮がスムースに進行し仕上がり外観が良好になるという利点がある。
【0019】次に、蓄光性熱収縮層の外側に形成する層に含まれる撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を主成分とする樹脂組成物が適している。この中でも、特にフッ素含有率の高いフッ素樹脂が好ましい。前記の撥水性もしくは遮水性を有する層の厚さは、その目的に反しない範囲に設定して透光性の低下を最小限に防ぐことが望ましい。
【0020】また、蓄光性熱収縮層の内面の一部または全部に形成する層に含まれるホットメルト接着剤としては、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体のようなエチレン系の共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等を含む樹脂組成物を、蓄光性熱収縮層および被覆する対象物の材質により、これらに対する接着性を考慮して選択すればよい。前記樹脂組成物には、収縮チューブを加熱した時の流動性を増加させたり接着性を増加させるために、石油樹脂、テルペン樹脂などの低分子量の樹脂添加剤を添加してもよい。この中でも、熱収縮チューブの内面に形成する際の加工性、収縮時の溶融しやすさ、被着物への接着性等から、酢酸ビニル含量が20重量%以上、メルトインデックスが100以上のエチレン酢酸ビニル共重合体が好ましい。ここで、メルトインデックスとは、190℃において2160gの荷重下で測定した値をいう。
【0021】前記のホットメルト接着剤を含む層は、蓄光性熱収縮チューブの内面全面に形成させてもよいが、チューブ両端から一定の長さ部分にのみ形成させても、防水性を十分に確保できる場合もあり、対象の物品の形状や使用される状況に応じて使い分ければよい。
【0022】また、酸化チタンなどの明色顔料を前記のホットメルト接着剤に添加して光反射性を持たせることも可能であり、この場合、ホットメルト接着剤層は、光反射層としての役割と防水層としての役割を担うことになり、構造および製造的に効率化を図ることができる。
【0023】以上の蓄光性熱収縮チューブ層、光反射性の層、撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む層およびホットメルト接着剤を含む層を構成する樹脂組成物には、それぞれの特性を損なわない範囲で、充填剤、老化防止剤、滑剤、架橋剤もしくは架橋助剤等の添加物を加えることができる。
【0024】本発明の蓄光性熱収縮チューブの製造には、通常の熱収縮チューブに関して行われる方法が適用できる。例えば、蓄光性熱収縮チューブの各層を構成する樹脂組成物の材料をそれぞれ、ロール混合機、ニーダー、押出機等により均一に混合し、押出機により一層もしくは多層のチューブに成形した後、化学架橋あるいは放射線照射架橋等により、架橋層を設け、このチューブを径方向に熱延伸し、この延伸状態を保持したまま冷却する方法である。ホットメルト接着剤の層は、前記のように多層押出により他の層と同時に形成することもできるが、熱収縮チューブを製造した後、その内面に塗布することも可能である。特に、熱収縮チューブ内面の一部にホットメルト接着剤の層を形成させる場合には、後者の方法が適している。
【0025】本発明において、蓄光性熱収縮チューブ上に設ける印は、グラビア印刷、熱転写、ホットスタンプ、インクジェット等の方式により、顔料ないしは染料を含むインクを、蓄光性熱収縮チューブの表面あるいは撥水性もしくは遮水性の層の表面に印刷することにより形成することができる。この印刷は、チューブを押出等により成形する段階で行うこともできるが、種々の印を印刷できるように、蓄光性熱収縮チューブを成形した後に行うことが適当である。
【0026】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明する。
比較例1エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名エバテートD2010F、住友化学製、酢酸ビニル含量5重量%、メルトフローレート1)100重量部に対して、酸化防止剤(商品名スミライザーWXR、住友化学製、4,4'-チオビス-(6-第三-ブチル-3-メチルフェノール))0.2重量部、及び、緑色の蛍光顔料(商品名N−夜光G−300M、根本特殊化学製、SrAl24:Eu2+,Dy3+)10重量部をロール混合機で均一に混合した。この混合物を押出機でチューブ状(内径8mm、肉厚1.2mm)に押出し、これに加速電圧2MeVの電子線を240kGy照射して架橋した。次に、このチューブを温度140℃で加熱し、内部に圧縮空気を送入して径方向に延伸し、延伸状態を保持したまま水中に浸漬して冷却することにより内径24mm、肉厚0.4mmの熱収縮チューブを得た。得られたチューブの蓄光強度を測定するため、チューブを直径15mmの黒色樹脂パイプに収縮させた後、D65常用電源を用い400ルックスの照度にて20分間励起し、TOPCON製色彩輝度計BM−5Aにて残光強度を測定したところ、5分後、10分後、60分後、120分後に表1に示す結果となった。
【0027】実施例1エチレン−酢酸ビニル共重合体(前記エバテートD2010F)100重量部に対して、白色顔料としてルチル型酸化チタン(石原産業製)10重量部をロール混合機で均一に混合した。この混合物を内層として厚み0.3mmで、外層は比較例1の材料を用いてかつ同サイズで、二層押出機を使用して二層チューブとして押出した。これを比較例1と同様に、電子線照射して架橋し、加熱して延伸後に冷却し、熱収縮チューブを得た。このチューブについて比較例1と同様の方法で残光強度を測定したところ、表1に示す結果となり、反射層のある実施例1の方が2.7倍から5.6倍と大幅に発光強度が増大し、実施例1のチューブは励起後60分までは字が読めるだけの明かりを保持していた。実施例1のチューブが比較例1のチューブに比較して大幅な発光強度を示した一つの理由は、内側が光反射性の白色である実施例1が、内側が黒色である比較例1より反射光の寄与が大きかったためと考えられる。しかしながら、蓄光性熱収縮チューブ層から発せられる光が、内側と外側へ均等に放射すると仮定し、実施例1では内側に向かった光が100%反射され、一方、比較例1では内側に向かった光が100%吸収される場合でも、発光強度の差は最大2倍と考えられ、前記のようにこれをはるかに上回る発光強度差がえられたのは、予想できない効果であった。
【0028】
【表1】


【0029】実施例2実施例1と同様に、エバテートD2010F/スミライザーWXR/N−夜光G−300Mの配合比が、■100/0.2/10、■100/0.2/50、■100/0.2/100である材料を用意した。これらを内層とし、撥水性樹脂であるポリフッ化ビニリデン(商品名カイナー2800、三菱化学製)を外層として、二層押出機を用い、内層は実施例1と同サイズ、外層は厚み0.3mmとして二層チューブを押出した。これら実施例1と同様に、電子線照射して架橋し、加熱して延伸後に冷却し、熱収縮チューブを得た。この熱収縮チューブの耐水性を調べるために、直径15mmの白色の樹脂パイプに収縮させ、24時間、水中に浸漬した。その後、実施例1と同様にして10分後の残光強度を測定し、結果を表2に示した。
【0030】比較例2実施例2と同じエバテートD2010F/スミライザーWXR/N−夜光G−300Mの配合比で、同サイズの一層チューブを3種押出成形し、実施例2と同様の方法で熱収縮チューブを作製した。実施例2と同様な方法と条件で耐水性試験を行ない、残光強度を測定し、結果を表2に示した。
【0031】
【表2】


【0032】実施例2と比較例2より、撥水層を設けることにより、残光強度が7〜61%増大することが判る。また、材料中の蓄光顔料が多いほど撥水層の効果が大きいが、これは材料中の蓄光顔料の多い方が表面に露出する顔料の割合が多く、水中への溶出等により発光特性が失われやすいためと考えられる。
【0033】実施例3二層押出機を用いて、実施例1の材料を外層、エチレン−酢酸ビニル共重合体(エバフレックスEV220、三井デュポン・ポリケミカル製、商品名、酢酸ビニル含量28%、メルトインデックス150)を内層として押出し、二層チューブを作製した。外層は実施例1と同サイズ、内層は厚み0.4mmとした。これを直径15mmの樹脂パイプに被せて水中に浸漬した。24時間後に取り出し、チューブを切断して内面を目視で調べると、チューブ内面への水の侵入は認められなかった。
【0034】実施例4三層押出機を用い、3層構造のチューブを作製した。最も内側はエバフレックスEV220、100重量部に実施例1のルチル型酸化チタン10重量部をロール混合機で均一に混合したもので、ホットメルト接着剤の機能を持った反射層である。中間層は実施例1の材料を用いた蓄光層、最も外側は実施例2の撥水層とした。この熱収縮チューブの耐水性を実施例2と同様な方法で調べ、その結果を表2に示した。この3層チューブは、撥水層を設けた実施例2の収縮チューブに比較してさらに残光強度が向上しており、防水と反射層の役割を併せ持つホットメルト接着剤層の効果が発現していると考えられる。
【0035】実施例5実施例1のチューブの表面に、約直径5mmの白および黒の文字を印字した。白の文字は市販の油性マジックインキを使用し、黒の文字はカーボンを顔料とするインクをコーティングしたテープを熱転写方式で印字した。このチューブを、直径15mmの樹脂パイプに収縮させて、実施例1と同様の条件で励起した後、暗所で見たところ、約50cm離れても白および黒の文字を識別することができた。
【0036】
【発明の効果】本発明の構成をとることにより、蓄光性熱収縮チューブの残光強度を高め、耐水性を改善し、また表面に印刷した印により識別機能を付与することができるため、種々の標識、フレーム、てすり、電気器具、部品等にこのチューブを収縮被覆することにより、視認性や識別機能を高め安全性や利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光反射性の層を内面に形成させた蓄光性熱収縮チューブの1例を示す断面図。
【図2】撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂組成物を含む熱収縮層を外側に形成させた蓄光性熱収縮チューブの1例を示す断面図。
【図3】ホットメルト接着剤層および撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂組成物を含む熱収縮層を設けた蓄光性熱収縮チューブの1例を示す断面図。
【図4】表面に識別のための印を設けた蓄光性熱収縮チューブの1例を示す斜視図。
【符号の説明】
1:蓄光性熱収縮チューブ
2:蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した蓄光性の熱収縮層
3:光反射性の層
4:撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂組成物を含む熱収縮層
5:ホットメルト接着剤を含む層
6:識別のための印

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の内面に、光反射性の層を形成したことを特徴とする蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項2】 光反射性の層を、明色の顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成したことを特徴とする請求項1記載の蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項3】 光反射性の層が、熱収縮性であることを特徴とする請求項2載の蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項4】 蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の外側に、撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む熱収縮層を形成したことを特徴とする蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項5】 蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の内面の一部または全部に、ホットメルト接着剤を含む層を形成したことを特徴とする蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項6】 内側から、ホットメルト接着剤を含む層、光反射性の層、蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層、及び撥水性もしくは遮水性を有する熱可塑性樹脂を含む層を順次形成したことを特徴とする蓄光性熱収縮チューブ。
【請求項7】 蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成した熱収縮層の外側に、識別のための印を形成させたことを特徴とする蓄光性熱収縮チューブ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開2000−29389(P2000−29389A)
【公開日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−197146
【出願日】平成10年7月13日(1998.7.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】