説明

蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法

【課題】一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管や空気供給管から供給される燃料ガスや燃焼用空気の量を一定化させ、適切な燃焼が安定して行える蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナ20aにおいて、燃料ガス供給管及び空気供給管を通して供給する燃料ガス及び燃焼用空気の供給量を定常燃焼状態から減少させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナ20bにおいて、燃料ガス供給管及び空気供給管を通して供給する燃料ガス及び燃焼用空気の供給量を停止状態から増加させ、前記一対の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管及び空気供給管を通して供給される燃料ガス及び燃焼用空気の供給量を一定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する少なくとも一対の蓄熱式バーナが設けられ、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるようにした蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法に関するものである。特に、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉において、各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させて、適切な燃焼が安定して行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理材を熱処理するにあたり、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する少なくとも一対の蓄熱式バーナが設けられた蓄熱燃焼式熱処理炉を用い、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えることが行われている。
【0003】
また、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉において、被処理材を連続して熱処理するため、上記の熱処理炉に複数対の蓄熱式バーナを設け、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせるようにしたものも用いられている。
【0004】
また、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉において、上記の各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管に燃料ガスを供給するにあたり、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置から各燃料ガス供給管に燃料ガスを供給させることが一般に行われている。
【0005】
ここで、上記のような蓄熱燃焼式熱処理炉において、一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、従来においては、特許文献1,2に示されるように、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給を停止させた後、空気供給管における燃焼用空気の供給を停止させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管における燃焼用空気の供給を開始させた後、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給を開始させるようにしたものが示されている。
【0006】
しかし、上記のように蓄熱燃焼式熱処理炉に複数対の蓄熱式バーナを設け、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせると共に、燃料ガス供給装置から一定量の燃料ガスを各燃料ガス供給管に供給させるようにした蓄熱燃焼式熱処理炉の場合、燃焼動作と蓄熱動作との切り替えを行う一対の蓄熱式バーナにおいては、上記のように燃料ガス供給管を通してから供給される燃料ガスの量が一時的に停止する結果、燃料ガス供給装置から他の蓄熱式バーナ対における燃料ガス供給管に供給される燃料ガスの量が増加するようになる。このため、他の蓄熱式バーナ対においては、燃焼用空気に対する燃料ガスの比率が高くなって、燃焼状態が変動し、適切な燃焼を安定して行うことができなくなるという問題があった。特に、上記の燃料ガスとして、燃焼性の悪いガス、例えばプロパンガスを使用した場合、燃焼用空気に対するプロパンガスの比率が高くなると、不完全燃焼による黒煙(煤)が発生して、環境上問題が生じたり、被処理材に煤が付着して熱処理が適切に行えなくなったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−185176号公報
【特許文献2】特開平11−159744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する少なくとも一対の蓄熱式バーナが設けられ、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるようにした蓄熱燃焼式熱処理炉における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明においては、一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させて、適切な燃焼が安定して行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、上記のような課題を解決するため、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する少なくとも一対の蓄熱式バーナが設けられ、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替える蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、上記の一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを定常燃焼状態から減少させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを停止状態から増加させ、上記の一対の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させるようにした。
【0011】
ここで、上記のように一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを減少させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを増加させ、上記の一対の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させると、燃焼動作と蓄熱動作との切り替え時においても、この一対の蓄熱式バーナにより蓄熱燃焼式熱処理炉に供給される燃料ガスの量と燃焼用空気の量及びその割合が一定化して、適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【0012】
ここで、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉としては、複数対の蓄熱式バーナを設け、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせるようにしたものを用いることもできる。
【0013】
また、本発明の蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法においては、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置から各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管に燃料ガスを供給させるようにすることができる。この場合においても、上記のように燃焼動作と蓄熱動作との切り替えを行う一対の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とが一定化されるため、蓄熱燃焼式熱処理炉内に一定した量の燃料ガスと燃焼用空気とが供給されるようになる。
【0014】
また、上記のように蓄熱燃焼式熱処理炉に複数対の蓄熱式バーナを設け、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせた場合においても、上記のように燃焼動作と蓄熱動作との切り替えを行う一対の蓄熱式バーナにおいて、一定した量の燃料ガスと燃焼用空気とが供給される結果、上記の燃料ガス供給装置から他の蓄熱式バーナ対における燃料ガス供給管に供給される燃料ガスの量が増加するということがなく、他の蓄熱式バーナ対においても、燃焼用空気に対する燃料ガスの比率が一定に保たれるようになる。
【0015】
また、本発明の蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法においては、一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給と、空気供給管における燃焼用空気の供給を停止させた後、排ガス排出管から燃焼排ガスを排出させるようにする一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、排ガス排出管から燃焼排ガスを排出させる操作を停止した後、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給と、空気供給管における燃焼用空気の供給とを開始させるようにすることが好ましい。このようにすると、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替える際に、切替弁等による切り替え動作中に、空気供給管から蓄熱室に導かれる燃焼用空気の一部が、蓄熱室に行かずに排ガス排出管を通して排出されるのが確実に防止され、蓄熱燃焼式熱処理炉内に供給される燃料ガスと燃焼用空気との割合がより一定した状態になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法においては、上記のように一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを減少させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを増加させ、上記の一対の蓄熱式バーナ全体において、燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させるようにしたため、燃焼動作と蓄熱動作との切り替え時においても、蓄熱燃焼式熱処理炉内に一定した量の燃料ガスと燃焼用空気とが供給されるようになる。
【0017】
この結果、一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替える際においても、蓄熱燃焼式熱処理炉において燃焼状態が変化するのが抑制され、適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【0018】
また、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置から各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管に燃料ガスを供給させる場合においても、上記のように燃焼動作と蓄熱動作との切り替えを行う一対の蓄熱式バーナにおいて、一定した量の燃料ガスと燃焼用空気とが蓄熱燃焼式熱処理炉内に供給されるため、燃料ガス供給装置から各蓄熱式バーナに供給される燃料ガスの合計量が変動するということなく、適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【0019】
また、蓄熱燃焼式熱処理炉に複数対の蓄熱式バーナを設け、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせた場合においても、上記のように燃料ガス供給装置から他の蓄熱式バーナ対における燃料ガス供給管に供給される燃料ガスの量が増加するということがなく、他の蓄熱式バーナ対においても、燃焼用空気に対する燃料ガスの比率が一定に保たれて、適切な燃焼が安定して行えるようになる。このため、燃料ガス供給管から供給させる燃料ガスに燃焼性の悪いプロパンガス等を用いた場合にも、黒煙(煤)が発生するのが防止され、環境上問題が生じたり、被処理材に煤が付着したりするということがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、蓄熱燃焼式熱処理炉の内部状態を示した概略断面図である。
【図2】同実施形態において、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉の概略平面図である。
【図3】同実施形態において、一対の蓄熱式バーナにおける一方の蓄熱式バーナで燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナで蓄熱動作を行う状態を示した概略説明図である。
【図4】同実施形態において、各対の蓄熱式バーナにおけるそれぞれの蓄熱式バーナにおいて燃焼動作と蓄熱動作とを切り替える動作を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法は、特に下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0022】
ここで、この実施形態においては、図1に示すように、蓄熱燃焼式熱処理炉10の入口11から蓄熱燃焼式熱処理炉10内に導かれた鋼材からなる被処理材1を、ウォーキングビーム2により蓄熱燃焼式熱処理炉10内において搬送させて熱処理し、このように熱処理された被処理材1を蓄熱燃焼式熱処理炉10の出口12を通して蓄熱燃焼式熱処理炉10から取り出すようにしている。
【0023】
そして、この実施形態においては、図2に示すように、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉10において、バーナ部21と蓄熱室22とを有する一対の蓄熱式バーナ20が対向するようにして、上記の被処理材1の移動方向に沿って蓄熱燃焼式熱処理炉10に4対の蓄熱式バーナ20を設けると共に、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置30から各蓄熱式バーナ20におけるバーナ部21に対して燃料ガスを供給するようにしている。
【0024】
ここで、上記の一対の蓄熱式バーナ20においては、図3に示すように、一方の蓄熱式バーナ20aにおいて、蓄熱材23aが収容された蓄熱室22aに燃焼用空気を供給する空気供給管24aに設けられた空気供給用バルブ25aを開く一方、蓄熱室22aを通して燃焼排ガスを排出する排ガス排出管26aに設けられたガス排出用バルブ27aを閉じ、上記の空気供給管24aを通して蓄熱室22a内に導いた燃焼用空気をこの蓄熱室22a内に収容された蓄熱材23aによって加熱させる。
【0025】
そして、このように加熱された燃焼用空気をバーナ部21aに供給すると共に、このバーナ部21aの中心に設けられた燃料ガス供給管28aに燃料ガスを導くガス供給バルブ29aを開けて、上記の燃料ガス供給装置30から供給された燃料ガスをこの燃料ガス供給管28aから噴射させて、この燃料ガスを蓄熱燃焼式熱処理炉10内において燃焼させる燃焼動作を行うようにする。
【0026】
一方、他方の蓄熱式バーナ20bにおいては、燃料ガス供給管28bに燃料ガスを供給するガス供給バルブ29b及び空気供給管24bに設けられた空気供給用バルブ25bを閉じて燃焼を行わないようにする一方、蓄熱室22bを通して燃焼排ガスを排出する排ガス排出管26bに設けられたガス排出用バルブ27bを開くようにする。
【0027】
そして、上記のように蓄熱燃焼式熱処理炉10内において燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱室22bに導き、この蓄熱室22bに収容された蓄熱材23bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させ、その後、この燃焼排ガスを上記の排ガス排出管26bを通して外部に排出させる蓄熱動作を行うようにする。
【0028】
そして、上記の一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおいて、上記のような燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えて行うようにする。
【0029】
また、各対の蓄熱式バーナ20においても、上記のようにそれぞれ一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおいて、上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えて行うようにすると共に、各対の蓄熱式バーナ20において、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングを異ならせるようにしている。
【0030】
次に、上記の各対の蓄熱式バーナ20において、それぞれ一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替える動作を、図4に示すタイムチャートに基づいて説明する。
【0031】
ここで、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作を行っていた蓄熱式バーナ20aにおいては、開いた状態にある空気供給用バルブ25aとガス供給バルブ29aとを閉じる操作を開始して、空気供給管24aから蓄熱室22aを通してバーナ部21aに供給する燃焼用空気の量を徐々に減少させると共に、燃料ガス供給管28aから噴射させる燃料ガスの量を徐々に減少させる。
【0032】
そして、空気供給用バルブ25aとガス供給バルブ29aとが閉じられ、燃焼用空気と燃料ガスとが供給されなくなって燃焼が停止した時点で、閉じられた状態にあるガス排出用バルブ27aを開け、蓄熱室22aに導かれた燃焼排ガスの熱をこの蓄熱室22aに収容された蓄熱材23aに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを上記の排ガス排出管26aを通して外部に排出させるようにする。
【0033】
一方、蓄熱動作を行っていた蓄熱式バーナ20bにおいては、開いた状態にあるガス排出用バルブ27bを閉じて、排ガス排出管26bを通して燃焼排ガスを外部に排出させる動作を停止させた後、上記の蓄熱式バーナ20aにおける空気供給用バルブ25aとガス供給バルブ29aとを閉じる操作の開始させるのと同期させて、閉じた状態にある空気供給用バルブ25bとガス供給バルブ29bとを開ける操作を開始し、空気供給管24bから蓄熱室22bを通してバーナ部21bに供給させる燃焼用空気の量を徐々に増加させると共に、燃料ガス供給管28bから噴射させる燃料ガスの量を徐々に増加させて、燃焼を開始させるようにする。
【0034】
ここで、上記の各空気供給用バルブ25a,25bや各ガス供給バルブ29a,29bの開閉動作には、通常、数秒間を要するので、その間は、燃焼動作を行っていた蓄熱式バーナ20aにおける燃焼用空気や燃料ガスの減少量と、蓄熱動作を行っていた蓄熱式バーナ20bにおける燃焼用空気や燃料ガスの増加量を、常に等しくする制御が必要になる。そして、この実施例においては、図4に示すように、一方の空気供給用バルブ25a及びガス供給バルブ29aを閉じる動作と、他方の空気供給用バルブ25b及びガス供給バルブ29bを開ける動作とを同時に開始し、同じ時間をかけて動作させるようにしている。
【0035】
ここで、この一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおいては、上記のように各燃料ガス供給管28a,28bから供給される燃料ガス全体の供給量と、空気供給管24a,24bから供給される燃焼用空気全体の供給量とが変化しないようにし、一定した量の燃料ガスと燃焼用空気とが供給されるようにしている。
【0036】
このようにすると、一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおける燃焼動作と蓄熱動作との切り替え時においても、蓄熱燃焼式熱処理炉10に供給される燃料ガスの量と燃焼用空気の量及びその割合が一定化し、適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【0037】
また、上記のように蓄熱燃焼式熱処理炉10に複数対の蓄熱式バーナ20を設け、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置30から各対の蓄熱式バーナ20における各燃料ガス供給管28a,28bに燃料ガスを供給させる場合において、上記のように一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおける燃焼動作と蓄熱動作との切り替え時においても、この一対の蓄熱式バーナ20a,20b全体において、燃料ガス供給管28a,28bから供給される燃料ガスの供給量が変化しないようにすると、上記の燃料ガス供給装置30から他の蓄熱式バーナ20における各燃料ガス供給管28a,28bに供給される燃料ガスの量が変化するということもなくなる。
【0038】
このため、一対の蓄熱式バーナ20a,20bにおける燃焼動作と蓄熱動作との切り替え時に、他の蓄熱式バーナ20において、燃焼用空気に対する燃料ガスの割合が増加して燃焼状態が変化するということがなく、燃料ガスに燃焼性の悪いプロパンガス等を使用した場合においても、従来のように、不完全燃焼による黒煙(煤)が発生して、環境上問題が生じたり、被処理材に煤が付着して熱処理が適切に行えなくなったりするということがなく、適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【0039】
また、燃焼動作を行っていた蓄熱式バーナ20aにおいて、上記のように空気供給用バルブ25aとガス供給バルブ29aとが閉じられ、燃焼用空気と燃料ガスとが供給されなくなって燃焼が停止した時点で、閉じられた状態にあるガス排出用バルブ27aを開けるようにすると、空気供給管24aから蓄熱室22aに導かれる燃焼用空気の一部が、蓄熱室22aに行かずにバイパスして排ガス排出管26aを通して排出されるのが防止されるようになる。
【0040】
また、蓄熱動作を行っていた蓄熱式バーナ20bにおいて、上記のように開いた状態にあるガス排出用バルブ27bを閉じた後、閉じた状態にある空気供給用バルブ25bとガス供給バルブ29bとを開けるようにすると、空気供給管24bから蓄熱室22bに導かれる燃焼用空気の一部が、蓄熱室22bに行かずにバイパスして排ガス排出管26bを通して排出されるのが防止されるようになる。
【0041】
この結果、蓄熱燃焼式熱処理炉10内に供給される燃焼用空気の割合が減少するのが防止され、蓄熱燃焼式熱処理炉10内に供給される燃料ガスと燃焼用空気との割合がより一定した状態になって、より適切な燃焼が安定して行えるようになる。
【符号の説明】
【0042】
1 被処理材
2 ウォーキングビーム
10 蓄熱燃焼式熱処理炉
11 入口
12 出口
20,20a,20b 蓄熱式バーナ
21,21a,21b バーナ部
22,22a,22b 蓄熱室
23a,23b 蓄熱材
24a,24b 空気供給管
25a,25b 空気供給用バルブ
26a,26b 排ガス排出管
27a,27b ガス排出用バルブ
28a,28b 燃料ガス供給管
29a,29b ガス供給バルブ
30 燃料ガス供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する少なくとも一対の蓄熱式バーナが設けられ、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この一対の蓄熱式バーナにおける上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替える蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、上記の一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを定常燃焼状態から減少させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給量と、空気供給管における燃焼用空気の供給量とを停止状態から増加させ、上記の一対の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管から供給される燃料ガスの供給量と、空気供給管から供給される燃焼用空気の供給量とを一定化させることを特徴とする蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、上記の蓄熱燃焼式熱処理炉に複数対の蓄熱式バーナが設けられ、各対の蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるタイミングが異なっていることを特徴とする蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、一定量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置から、上記の各蓄熱式バーナにおける燃料ガス供給管に燃料ガスを供給させることを特徴とする蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法において、一対の蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り替えるにあたり、燃焼動作中の蓄熱式バーナにおいて、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給と、空気供給管における燃焼用空気の供給を停止させた後、排ガス排出管から燃焼排ガスを排出させる一方、蓄熱動作中の蓄熱式バーナにおいて、排ガス排出管から燃焼排ガスを排出させる操作を停止した後、燃料ガス供給管における燃料ガスの供給と、空気供給管における燃焼用空気の供給とを開始させることを特徴とする蓄熱燃焼式熱処理炉の燃焼制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−252669(P2011−252669A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127569(P2010−127569)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】