説明

蓄電デバイス

【課題】耐振動、耐衝撃性、耐水性、放熱性を改良した高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス100は、正極、負極、および電解液が収容された外装体12を有する蓄電セル10と、蓄電セル10が収容された筐体20と、筐体20内に充填され、蓄電セル10を固定する樹脂体30と、を含む。筐体内は外装体収容領域21と端子収容領域22に区画される。さらに複数の蓄電セルを接続し、蓄電セル間には放熱板を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの構成要素である蓄電セルは、例えば、シート状の正極および負極をセパレータを介して対向配置させながら所定数積層してなる電極体を、電解液とともに外装体内に密封したものである。このような密閉型蓄電セルは、例えば、アルミ材などの部材を箱状に形成してなる筐体に、収容されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−228610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓄電デバイスは、外部から衝撃が加えられる場合がある。そして、外部からの衝撃により、筐体内の蓄電セルが振動し、例えば蓄電セルの端子(正極端子および負極端子)に亀裂が入ってしまうことがあった。また、外部からの衝撃により、蓄電セルが所望の位置がずれてしまうことがあった。そのため、蓄電デバイスの信頼性が低下することがあった。
【0005】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[適用例1]
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記蓄電セルが収容された筐体と、
前記筐体内に充填され、前記蓄電セルを固定する樹脂体と、
を含む。
【0008】
[適用例2]
適用例1において、
前記樹脂体の材質は、シリコーン樹脂であることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2において、
前記樹脂体には、熱伝導性フィラーが分散されている、蓄電デバイス。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか1例において、
前記蓄電セルは、
前記正極と電気的に接続され、前記外装体から延出された正極端子と、
前記負極と電気的に接続され、前記外装体から延出された負極端子と、
を有し、
前記筐体内は、
前記外装体が収容された外装体収容領域と、前記正極端子および前記負極端子の少なくとも一方が収容された端子収容領域と、に区画され、
前記樹脂体は、前記外装体収容領域に充填されていることができる。
【0011】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか1例において、
前記蓄電セルは、複数設けられ、
複数の前記蓄電セルは、直列に接続されており、
前記放熱板は、隣り合う前記蓄電セルの間に設けられていることができる。
【0012】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれか1例において、
前記外装体の外表面に形成された放熱板を、さらに含むことができる。
【0013】
[適用例7]
適用例6において、
前記放熱板と接合されたヒートシンクを、さらに含むことができる。
【0014】
[適用例8]
適用例7において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る蓄電デバイスによれば、蓄電セルは、筐体内に充填された樹脂体によって固定されている。そのため、例えば、本発明に係る蓄電デバイスに外部から衝撃が加えられたとしても、蓄電セルが振動したり、蓄電セルが所望の位置からずれたりすることを抑制できる。すなわち、蓄電セルの耐震性を向上させることができる。したがって、本発明に係る蓄電デバイスは、高い信頼性を有することができる。さらに、本発明に係る蓄電デバイスによれば、樹脂体によって、蓄電セルの耐水性や防塵性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す平面図。
【図3】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る蓄電デバイスの蓄電セルを模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す平面図。
【図10】本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図11】本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す平面図。
【図13】本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
1. 蓄電デバイス
まず、本実施形態に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しなら説明する。図1は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す平面図であって、図1のX軸方向から見た図である。図3は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のIII−III線断面図(XY平面の断面図)である。図4は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のIV−IV線断面図(XZ平面の断面図)である。
【0019】
なお、便宜上、図1では、筐体20を簡略化かつ透視して図示し、図2では、筐体20の一部を透視して図示している。また、便宜上、図3および図4では、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0020】
蓄電デバイス100は、図1〜図4に示すように、蓄電セル10と、筐体20と、樹脂体30と、を含む。
【0021】
蓄電セル10の形態としては、リチウムイオンキャパシタ、二次電池、電気二重層キャパシタなどを例示することができる。蓄電セル10は、外装体12と、正極端子16と、負極端子18と、を有する。
【0022】
外装体12は、正極、負極、および電解液を収容している。外装体12の形状は、正極、負極、および電解液を収容することができれば特に限定されず、例えば、2枚のフィルムを張り合わせたラミネート型でもよし、箱型でもよいし、円筒型でもよい。図1〜図4の例では、外装体12をラミネート型(ラミネートフィルム)として図示している。
【0023】
ラミネートフィルムからなる外装体12は、図3および図4に示すように、第1扁平面13と、第1扁平面13と反対を向き(図示の例では+X方向を向き)第1扁平面13より面積の小さい第2扁平面14と、を有することができる。外装体12は、例えば、凸の部分を有し、第2扁平面14は、凸の部分を形成する面であるともいえる。第1扁平面13と第2扁平面14との間の距離(蓄電セル10の厚み)は、例えば、5mm程度である。
【0024】
ラミネートフィルムの材質としては、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂の一部を、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔としたものなどが挙げられる。このようなフィルム状の外装体12を用いることにより、例えば、金属等からなる硬質の外装体(金属缶等)を用いる場合に比べて、蓄電セル10の小型化や軽量化を図ることができる。
【0025】
正極端子16および負極端子18は、図2に示すように、外装体12から延出して(突出して)設けられている。より具体的には、正極端子16および負極端子18は、外装体12の密閉性を保持した状態で、外装体12の内側から外側まで延出している。図示の例では、正極端子16および負極端子18は、外装体12から互いに反対方向に延出している。より具体的には、正極端子16は、外装体12から−Y方向に向けて延出し、負極端子18は、外装体12から+Y方向に向けて延出している。なお、図示はしないが、正極端子16および負極端子18は、ともに同じ方向(例えば−Y方向)に向けて延出していてもよい。
【0026】
正極端子16は、外装体12内の正極と電気的に接続されており、負極端子18は、外装体12内の負極と電気的に接続されている。正極端子16の材質としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。負極端子18の材質としては、例えば、銅、ニッケルが挙げられる。なお、外装体12の内部構造については、後述する。
【0027】
筐体20は、蓄電セル10を収容することができる。筐体20の形状は、蓄電セル10を収容できれば特に限定されないが、例えば、箱型の形状を有する。図2に示す例では、筐体20は、基部25および蓋部26を有し、基部25内に蓄電セル10を配置し、基部25の開口を蓋部26で塞ぐことにより、蓄電セル10を収容している。蓋部26には、ネジ部27が装着されていてもよく、ネジ部27を締緩することにより、蓋部26が開閉されてもよい。筐体20の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、マグネシウム、銅が挙げられる。
【0028】
筐体20内は、図1〜図3に示すように、例えば、仕切板23,24によって、外装体収容領域21と端子収容領域22とに区画されている。図示の例では、端子収容領域22は、2つ設けられ、外装体収容領域21は、2つの端子収容領域22の間に配置されている。仕切板23は、外装体収容領域21と、一方の端子収容領域22aと、を区画している。仕切板24は、外装体収容領域21と、他方の端子収容領域22bと、を区画している。仕切板23,24は、絶縁性を有することが望ましい。これにより、仮に端子16,18と仕切板23,24とが接触したとしても、リーク電流の発生を抑制することができる。
【0029】
外装体収容領域21には、外装体12が収容されている。端子収容領域22aには、正極端子16が収容されている。例えば、仕切板23には、開口部(スリット部)が形成されており、正極端子16は、外装体12から延出し該開口部を通って、端子収容領域22aに収容されていてもよい。端子収容領域22bには、負極端子18が収容されている。例えば、仕切板24には、開口部(スリット部)が形成されており、負極端子18は、外装体12から延出し該開口部を通って、端子収容領域22bに収容されていてもよい。
【0030】
なお、図示はしないが、正極端子16および負極端子18が、ともに同じ方向に向けて延出している形態では、1つの端子収容領域22を有していてもよい。この場合、1つの端子収容領域22に、正極端子16および負極端子18が収容されていてもよい。
【0031】
樹脂体30は、筐体20内に充填されている。樹脂体30は、蓄電セル10を固定している。図示の例では、樹脂体30は、筐体20の外装体収容領域21に充填されている。樹脂体30は、端子収容領域22には設けられていない。すなわち、外装体12の一部は、樹脂体30に覆われており、正極端子16および負極端子18は、露出している。樹脂体30は、図4に示すように、Z軸方向において外装体12の半分以上を覆うように充填されていることが望ましい。これにより、蓄電セル10を確実に固定することができる。 なお、図示はしないが、樹脂体30は、端子収容領域22にも充填されていてもよい。
【0032】
樹脂体30としては、低温(例えば80℃以下)で硬化する熱硬化樹脂や、紫外線硬化樹脂などが挙げられる。より具体的な樹脂体30の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるが、蓄電セル10の発熱量が大きい場合には、伝熱性の高いシリコーン樹脂などを好ましく用いることができる。樹脂体30には、熱伝導性フィラーが分散されていてもよい。熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミセラミックス、銀、ニッケル、カーボン、パラジウムが挙げられる。なお、熱伝導性フィラーは、導電性を有していてもよいが、端子16,18間の短絡などを考慮すると、樹脂体30全体としては、絶縁性を有していることが望ましい。
【0033】
仮に、樹脂体が、例えば80℃より高温で硬化する熱硬化樹脂の場合は、樹脂体の硬化の際に、熱によって蓄電セルの充放電特性が劣化する場合がある。したがって、樹脂体30は、上記のとおり、低温で硬化する熱硬化樹脂や、紫外線硬化樹脂であることが望ましい。樹脂体30は、筐体20(基部25)に蓄電セル10を収容したのち、外装体収容領域21に樹脂体30の前駆体を充填させ、該前駆体を熱や紫外線で硬化させることによって形成されることができる。
【0034】
次に、蓄電セル10の内部構造について説明する。図5は、図3に示した本実施形態に係る蓄電デバイス100の蓄電セル10を示す断面図あって、蓄電セル10の(外装体12の)内部構造を模式的に示す断面図である。以下では、一例として、蓄電セル10がリチウムイオンキャパシタである場合について説明する。
【0035】
蓄電セル10は、図5に示すように、外装体12に収容された電極積層体5および電解液(図示せず)を有する。図示の例では、電極積層体5および電解液は、第1ラミネートフィルム12aと第2ラミネートフィルム12bとからなる外装体12内に収容されている。
【0036】
電極積層体5は、電解液に浸漬されている。電極積層体5は、正極1と、負極2と、リチウム極3と、セパレータ4と、を有する。正極1、負極2、リチウム極3、およびセパレータ4は、シート状の形状を有する。図示の例では、電極積層体5は、第1ラミネートフィルム12aの内側の底面から、リチウム極3、負極2、正極1、負極2、正極1、負極2、リチウム極3の順で積層され、極と極との間、および極とラミネートフィルムとの間にセパレータ4を介することによって構成されている。電極積層体5において、正極1および負極2は、それぞれ並列に接続されている。
【0037】
なお、正極1および負極2の数は、特に限定されない。同様に、リチウム極3の数および設置場所も特に限定されない。また、電極積層体5の形態は、図示の例に限定されず、例えば、正極、負極、リチウム極、およびセパレータを重ねて積層シートを形成し、該積層シートを捲回させてなる捲回構造体でもよい。
【0038】
正極1は、正極集電体1aと、正極活物質層1bと、を有する。正極集電体1aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。正極集電体1aの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレスが挙げられる。正極集電体1aの厚みは、例えば、15μm以上50μm以下である。正極集電体1aは、正極リード6を介して、正極端子16に接続されている。
【0039】
正極活物質層1bは、正極集電体1aに形成されている。図示の例では、正極活物質層1bは、正極集電体1aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。正極活物質層1bの厚みは、例えば、60μm以上90μm以下である。
【0040】
正極活物質層1bは、正極活物質を含有している。正極活物質は、ヘキサフルオロホスフェート(PF)や、テトラフルオロボレート(BF)のようなアニオンを可逆的に担持できる物質である。より具体的には、正極活物質としては、活性炭、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であるポリアセン系物質(PAS)が挙げられる。
【0041】
正極活物質層1bの形成方法としては、まず、正極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを正極集電体1aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、正極活物質層1bを得ることをできる。
【0042】
負極2は、負極集電体2aと、負極活物質層2bと、を有する。負極集電体2aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。負極集電体2aの材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケルが挙げられる。負極集電体2aの厚みは、例えば、10μm以上50μm以下である。負極集電体2aは、負極リード7を介して、負極端子18に接続されている。
【0043】
負極活物質層2bは、負極集電体2aに形成されている。図示の例では、負極活物質層2bは、負極集電体2aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。負極活物質層2bの厚みは、例えば、20μm以上50μm以下である。
【0044】
負極活物質層2bは、負極活物質を含有している。負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵できる物質である。より具体的には、負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、もしくはそれらの粉砕品が挙げられる。
【0045】
負極活物質層2bの形成方法としては、まず、負極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを負極集電体2aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、負極活物質層2bを得ることをできる。
【0046】
リチウム極3は、リチウム極集電体3aと、リチウム箔3bと、を有する。リチウム極集電体3aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。リチウム極集電体3aの材質としては、例えば、銅、ステンレスが挙げられる。リチウム極集電体3aの厚みは、例えば、10μm以上200μm以下である。
【0047】
リチウム箔3bは、例えば、リチウム極集電体3aの一方の面に圧着されている。リチウム箔3bの材質は、リチウムである。リチウム箔3bは、リチウムイオンの供給源として機能することができる。すなわち、リチウム極集電体3aと負極集電体2aとを負極リード7を介して接続させて短絡させることにより、リチウム箔3bは、電解液に溶解してリチウムイオンとなることができる。そして、リチウムイオンは、電気化学的に電解液を介して負極活物質層2bにドープ(「プレドープ」ともいえる)される。その結果、負極2の電位を下げることができる。リチウム箔3bの厚みは、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0048】
なお、リチウム箔3bは、プレドープによって、例えば完全に電解液に溶解するが、図示の例では、便宜上、電解液の図示を省略し、電解液に溶解する前のリチウム箔3bを図示している。
【0049】
電解液としては、リチウム塩を電解質とする非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いる。非プロトン性有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CSONなどが挙げられる。
【0050】
本実施形態に係る蓄電デバイス100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0051】
蓄電デバイス100によれば、蓄電セル10は、筐体20内に充填された樹脂体30によって固定されている。そのため、例えば、蓄電デバイス100に外部から衝撃が加えられたとしても、蓄電セル10が振動したり、蓄電セル10が所望の位置からずれたりすることを抑制できる。すなわち、蓄電セル10の耐震性を向上させることができる。したがって、蓄電デバイス100は、高い信頼性を有することができる。さらに、蓄電デバイス100によれば、樹脂体30によって、蓄電セル10の耐水性や防塵性を向上させることができる。
【0052】
蓄電デバイス100によれば、樹脂体30の材質は、シリコーン樹脂であることができる。そのため、蓄電セル10を高温(例えば80℃より高温)に曝すことなく、樹脂体30の前駆体を硬化させることができる。したがって、熱によって蓄電セル10の充放電特性が劣化することを抑制することができる。
【0053】
蓄電デバイス100によれば、樹脂体30には、熱導電性フィラーが分散されていることができる。これにより、樹脂体30の放熱性を向上させることができる。したがって、蓄電セル10が発熱して高温となることを抑制することができる。例えば、樹脂体30の量および熱導電性フィラーの量を調整することにより、蓄電デバイス100の放熱性を設計することもできる。
【0054】
蓄電デバイス100によれば、筐体20内は、外装体12が収容された外装体収容領域21と、正極端子16および負極端子18の少なくとも一方が収容された端子収容領域22と、に区画され、樹脂体30は、外装体収容領域21に充填されていることができる。そのため、正極端子16および負極端子18は、樹脂体30に覆われておらず露出している。したがって、正極端子16および負極端子18と、外部の端子(図示せず)と、を容易に接続することができ、蓄電デバイス100の利便性を向上させることができる。
【0055】
2. 変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す断面図であって、図3に対応している。図7は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す断面図であって、図4に対応している。なお、図6および図7では、便宜上、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0056】
以下、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200において、本実施形態に係る蓄電デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
蓄電デバイス100の例では、図3および図4に示すように、1つの蓄電セル10を有していた。これに対し、蓄電デバイス200は、図6および図7に示すように、複数の蓄電セル10を有する。図示の例では、蓄電デバイス10は、4つ設けられているが、その数は特に限定されず、蓄電デバイス200の用途に応じて適宜変更することができる。複数の蓄電デバイス10は、樹脂体30によって固定されている。
【0058】
図示の例では、複数の蓄電セル10は、X軸方向に沿って積層されている。隣り合う蓄電セル10は、互いに接していてもよい。これにより、蓄電デバイス200全体の小型化を図ることができる。隣り合う蓄電セル10は、例えば、第1扁平面13と第2扁平面14とが対向するように、配置されている。図示はしないが、隣り合う蓄電セル10は、第1扁平面13同士、または第2扁平面14同士が対向するように配置されていてもよい。
【0059】
図6に示す例では、隣り合う蓄電セル10の正極端子16および負極端子18は、配線17を介して接続され、複数の蓄電セル10は、直列に接続されている。図示はしないが、蓄電デバイス200の用途に応じて、複数の蓄電セル10は、並列に接続されてもよい。
【0060】
蓄電デバイス200によれば、例えば蓄電デバイス100に比べて、高エネルギー化を図ることができる。さらに、蓄電デバイス200によれば、樹脂体30に熱伝導性フィラーが分散されている場合には、樹脂体30は高い熱伝導率を有することができるため、複数の蓄電セル10の温度の均一化を図ることができる。すなわち、複数の蓄電セル10を熱的に連結することができる。これにより、複数の蓄電セル10の劣化速度や充放電特性の差を小さくすることができ、蓄電デバイス200は、高い信頼性を有することができる。
【0061】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイス300を模式的に示す斜視図であって、図4および図7に対応している。なお、図8では、便宜上、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0062】
以下、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイス300において、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイス400についても、同様である。
【0063】
蓄電デバイス200の例では、図7に示すように、樹脂体30は、Z軸方向において外装体12の半分程度を覆うように充填されていた。これに対し、蓄電デイバス300では、図8に示すように、樹脂体30は、外装体12の外表面が露出しないように外装体12の外表面を覆っている。すなわち、図8に示すようにY軸方向から平面視して、外装体12は、樹脂体30の外周の内側に位置している。図示の例では、筐体20の外装体収容領域21は、樹脂体30で満たされている。
【0064】
蓄電デバイス300によれば、蓄電デバイス200の例に比べて、より確実に蓄電セル10を固定することができる。さらに、蓄電デバイス300によれば、蓄電セル10の耐水性や防塵性をより向上させることができる。また、蓄電セル10が安全弁を備える場合には、安全弁が作動しても電解液の飛散を抑制することができ、蓄電デバイスを安定的に動作させることができる。
【0065】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイス400を模式的に示す平面図であって、図2に対応している。図10は、本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイス400を模式的に示す断面図であって、図3および図6に対応している。図11は、本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイス400を模式的に示す断面図であって、図4,7,8に対応している。なお、図9では、筐体20の一部を透視して図示している。また、便宜上、図10および図11では、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0066】
蓄電デバイス400は、図9〜図11に示すように、放熱板40と、ヒートシンク50と、を含むことができる。
【0067】
放熱板40は、外装体12の外表面に形成されている。蓄電セル10と放熱板40とは、図10および図11に示すように、X軸方向に沿って、交互に積層されていてもよい。図示の例では、4つの蓄電セル10の各々を挟むように5つの放熱板40が設けられている。隣り合う蓄電セル10の間に設けられた放熱板40は、一方の蓄電セル10の第1扁平面13と、他方の蓄電セル10の第2扁平面14と、に接合されていてもよい。放熱板40と蓄電セル10との接合は、例えば接着剤を用いて行われる。接着剤としては、例えば、粘着性および熱伝熱率が高く、熱抵抗の低い、アクリル系熱伝導シートや、アクリル接着剤付グラファイトシートを用いることができる。
【0068】
放熱板40としては、熱伝導率の高い材料を用いることができる。具体的に放熱板40の材質としては、アルミニウム、銅が挙げられる。放熱板40は、蓄電セル10において発生した熱を、放熱させながら、ヒートシンク50に伝熱させることができる。すなわち、放熱板40は、伝熱板としての機能を有することができる。
【0069】
放熱板40は、例えば、X軸方向を厚み方向とする板状の形状を有し、その厚みは、0.2mm以上20mm以下である。放熱板40のY軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下であり、放熱板40のZ軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下である。
【0070】
放熱板40は、図9および図11に示すように、端部42を有することができる。端部42は、放熱板40のZ軸方向における端部である。端部42は、例えば、放熱板40の端部42以外の部分に比べて、大きな厚みを有することができる。すなわち、端部42は、X軸方向の長さが大きい。これにより、ヒートシンク50との接合面積を大きくすることができる。端部42は、放熱板40のヒートシンク50と接合されている部分であるともいえる。
【0071】
ヒートシンク50は、放熱板40と接合されている。図11に示すように、放熱板40が複数設けられている場合は、ヒートシンク50は、複数の放熱板40と接合されていてもよい。より具体的には、複数の放熱板40は、Z軸方向に沿って延出されて、放熱板40の端部42においてヒートシンク50と接合されている。図示の例では、ヒートシンク50は、全ての放熱板40と接合されている。蓄電セル10において発生した熱は、放熱板40をZ軸方向に伝わり、端部42からヒートシンク50へ伝熱されて、ヒートシンク50から放熱されることができる。ヒートシンク50の材質としては、例えば、アルミニウム、銅が挙げられる。
【0072】
ヒートシンク50と放熱板40との接合は、特に限定されないが、例えば、予め、ヒートシンク50および放熱板40の端部42に複数の穴(図示せず)を設け、ヒートシンク50の穴と端部42の穴とが重なるように両者を配置したのち、該穴径(直径)より外径の大きいノックピン(図示せず)を圧入することにより行うことができる。ノックピンは、塑性変形しながら穴に挿入されるため、ノックピンと穴との間に空隙が生じず、ヒートシンク50と放熱板40と間の熱抵抗を小さくすることができる。これにより、放熱板40に伝わった蓄電セル10の熱を、効率よくヒートシンク50から放熱することができる。さらに、ヒートシンク50と端部42との間に、シリコングリスや銀入りペースト等の高い伝熱特性を示す材料を塗布して、放熱板40とヒートシンク50等との間の空隙を充填してもよい。これにより、放熱板40とヒートシンク50等との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0073】
ヒートシンク50は、例えば、直方体の一面に複数の凹部を形成してなる凸部52を有する。凸部52は、ヒートシンク50の放熱板40と接合された面と反対側の面に形成されている。凸部52の数は、特に限定されない。凸部52により、ヒートシンク50の表面積を大きくすることができ、放熱性を向上させることができる。
【0074】
蓄電デバイス400によれば、蓄電デバイス300の例に比べて、放熱性を向上させることができる。さらに、複数の放熱板40をヒートシンク50に接続させることができるので、複数の放熱板40を熱的に連結することができる。これにより、複数の蓄電セル10の温度差を、さらに小さくすることができる。その結果、蓄電セル10の劣化速度や充放電特性の差を小さくすることができる。
【0075】
なお、図示はしないが、ヒートシンク50は、複数設けられていてもよい。例えば、Z軸方向において、放熱板40を挟むように、2つのヒートシンク50が対向配置されていてもよい。このような形態においても、複数の蓄電セル10の温度の均一化を考慮すると、2つのヒートシンク50の各々は、複数の放熱板40と接合されていることが望ましい。
【0076】
2.4. 第4変形例
次に、本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図12は、本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイス500を模式的に示す平面図であって、図2および図9に対応している。図13は、本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイス500を模式的に示す平面図であって、図12のY軸方向から見た図である。なお、図12では、筐体20の一部を透視して図示している。
【0077】
以下、本実施形態の第4変形例に係る蓄電デバイス500において、本実施形態の第3変形例に係る蓄電デバイス400の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
蓄電デバイス500は、図12および図13に示すように、冷却部60を有する。冷却部60としては、ヒートシンク50を冷却することができれば、その形態は特に限定されないが、例えば、冷却ファンを用いることができる。冷却部60の配置は、例えば、ヒートシンク50の凸部52に直接送風できるように、ヒートシンク50に接続されている。これにより、ヒートシンク50は、より効率よく放熱することができる。図示はしないが、冷却部60は、複数設けられていてもよい。
【0079】
蓄電デバイス500によれば、例えば蓄電デバイス400に比べて、放熱性を向上させることができる。
【0080】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、本発明は、例えば、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0081】
1 正極、1a 正極集電体、1b 正極活物質層、2 負極、2a 負極集電体、
2b 負極活物質層、3 リチウム極、3a リチウム極集電体、3b リチウム箔、
4 セパレータ、5 電極積層体、6 正極リード、7 負極リード、10 蓄電セル、
12 外装体、12a 第1ラミネートフィルム、12b 第2ラミネートフィルム、
13 第1扁平面、14 第2扁平面、16 正極端子、17 配線、18 負極端子、
20 筐体、21 外装体収容領域、22 端子収容領域、23 仕切板、
24 仕切板、25 基部、26 蓋部、27 ネジ部、30 樹脂体、40 放熱板、
42 端部、50 ヒートシンク、60 冷却部、100〜500 蓄電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記蓄電セルが収容された筐体と、
前記筐体内に充填され、前記蓄電セルを固定する樹脂体と、
を含む、蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記樹脂体の材質は、シリコーン樹脂である、蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記樹脂体には、熱伝導性フィラーが分散されている、蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記蓄電セルは、
前記正極と電気的に接続され、前記外装体から延出された正極端子と、
前記負極と電気的に接続され、前記外装体から延出された負極端子と、
を有し、
前記筐体内は、
前記外装体が収容された外装体収容領域と、前記正極端子および前記負極端子の少なくとも一方が収容された端子収容領域と、に区画され、
前記樹脂体は、前記外装体収容領域に充填されている、蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記蓄電セルは、複数設けられ、
複数の前記蓄電セルは、直列に接続されており、
前記放熱板は、隣り合う前記蓄電セルの間に設けられている、蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記外装体の外表面に形成された放熱板を、さらに含む、蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項6において、
前記放熱板と接合されたヒートシンクを、さらに含む、蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項7において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含む、蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−174972(P2012−174972A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37100(P2011−37100)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】