説明

蓄電素子

【課題】比較的簡単な構造により、集電体と、ケースと、導電性部材とを導通させつつ、ケースと導電性部材との隙間が生じることを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本電池は、所定の容積を有する容器1と、容器1内に収容された正極および負極を有する電極体2と、容器1の開口部1aに配置され、正極用および負極用の電極端子部10,20が取り付けられる蓋体3と、を備え、電極端子部10は、蓋体3,集電体4,上部パッキン5およびリベット7を備え、集電体4の他端が、蓋体3およびリベット7と導通することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースが正極あるいは負極と導通している蓄電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池やニッケルカドミウム電池あるいはニッケル水素電池などは、小型・軽量で、高エネルギー密度であるという特徴を生かし、携帯電話、パソコン、ビデオカメラなどの携帯用電子機器の電源として、広く普及している。最近では、こうした電池を大型にし、電気自動車などの産業用大型電気機器に応用しようとする動きが強まっている。こうした電池は、帯状電極をセパレータを介して巻回した巻回型発電要素、または平板状電極をセパレータを介して積層した積層型発電要素を電池ケースに収容し、電池蓋で密閉封口し、正極端子および負極端子を電池外部に取り付けたものである。電池ケースが一方の電極端子を兼ね、他方の電極端子が電池ケースと絶縁された状態で電池外部に取り付けられた構成が多く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−305644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ケースが、正極あるいは負極と電気的に接続、即ち、導通された従来の電池において、集電体と、ケースと、電極端子等の導電性部材とを導通させつつ、ケースと導電性部材との隙間が生じることを抑制するための構造が複雑で部品点数が多いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構造により、集電体と、ケースと、導電性部材とを導通させつつ、ケースと導電性部材との隙間が生じることを抑制することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電素子は、取付穴が形成されたケースと、前記ケース内に収容され、正極および負極を有する電極体と、一端側が前記電極体の前記正極あるいは前記負極と接続され、他端側が前記ケースの内面と導通する集電体と、前記ケースの前記内面のうち、前記取付穴と前記集電体の前記他端側との間の部分に接触する内パッキン部分を有するパッキンと、前記ケースの前記取付穴に挿入された胴体部、及び、前記胴体部のうち前記ケースの内側の端部に設けられ、当該胴体部よりも径が大きい内側径大部を有し、前記内側径大部が、前記集電体の前記他端側と導通し、前記内パッキン部分に接触し、且つ、前記ケースとの間で前記内パッキン部分および前記集電体の前記他端側を挟み込んでいる導電性部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、集電体の他端側が導電性部材と導通していることにより、正極あるいは負極の電位が、当該導電性部材を介して外部に取り出され、また、集電体の他端側がケースの内面と導通していることにより、ケースの電位が、上記正極あるいは負極と同電位とされている。そして、ケースの内面と導電性部材の内側径大部との間にパッキンが挟み込まれている。これにより、ケース、集電体および導電性部材を導通させつつ、ケースと導電性部材との隙間が生じるのを抑制することができる。
【0008】
上記蓄電素子では、前記内パッキン部分は、前記集電体の前記他端側と前記導電性部材の前記胴体部との間に挟み込まれていてもよい。
この構成によれば、パッキンは、集電体の他端側と導電性部材の胴体部との間に挟み込まれているため、集電体と導電性部材との間の隙間が生じるのを抑制することができる。
【0009】
上記蓄電素子では、前記導電性部材は、前記胴体部のうち前記ケースの外側の端部に設けられ、当該胴体部よりも径が大きい外側径大部を有し、前記パッキンは、前記内パッキン部分に加えて、前記導電性部材の前記外側径大部と前記ケースの外面との間に挟み込まれる外パッキン部分を有する構成でもよい。
この構成によれば、パッキンは、導電性部材の内側径大部とケースの内面との間に挟み込まれる内パッキン部分に加えて、導電性部材の外側径大部とケースの外面との間に挟み込まれる外パッキン部分を有する。このため、ケースと導電性部材との隙間が生じるのを、より確実に抑制することができる。
【0010】
上記蓄電素子では、前記導電性部材の前記外側径大部と前記外パッキン部分と間に配置され、前記外パッキンよりも径が小さい外ワッシャを備えていてもよい。
この構成によれば、パッキンに加えて外ワッシャを設けることにより、外側径大部と内側径大部とでケース、パッキン、集電体を、より強く挟み込むことができる。
また、上記蓄電素子では、前記外パッキン部分には、前記外ワッシャの外周面に当接する突起部が設けられていてもよい。これにより、外パッキンと外ワッシャとの位置ズレを抑制することができる。
【0011】
上記蓄電素子では、前記パッキンは、前記内パッキン部分と前記外パッキン部分とが別体であって、且つ、互いに材質が異なる構成でもよい。
この構成によれば、パッキンは、内パッキン部分と外パッキン部分とが別体であって、且つ、材質が異なる構成である。このため、例えば内パッキン部分を、外パッキン部分よりも弾性、機密性、耐熱性、絶縁性及び耐食性の少なくとも1つが高い材質で形成するなど、とすることで、内パッキン部分と外パッキン部分とでそれぞれに適した材料で形成したものを利用することができる。
【0012】
上記蓄電素子では、前記パッキンは、前記ケースの前記取付穴に接触する外周面、及び、前記導電性部材の前記胴体部に接触する内周面を有する筒状部分を有し、前記内パッキン部分及び前記外パッキン部分の少なくとも一方のパッキン部分は前記筒状部分と別体であって、当該一方のパッキン部分には前記筒状部分の外周面の全周に亘って接触する貫通穴が形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、パッキンは、ケースの取付穴に接触する外周面、及び、導電性部材の胴体部に接触する内周面を有する筒状部を備える。このため、ケースと導電性部材との位置関係を固定しつつ、両者間の隙間が生じることを抑制することができる。しかも、内パッキン部分及び外パッキン部分の少なくとも一方のパッキン部分は筒状部分と別体であって、当該一方のパッキン部分には筒状部分の外周面の全周に亘って接触する貫通穴が形成されている。このため、上記一方のパッキン部分が、筒状部を介さずに導電性部材に直接接触する構成に比べて、当該一方のパッキン部分を、柔軟に弾性変形させることができる。
【0014】
上記蓄電素子では、前記集電体の前記他端側と、前記内パッキン部分とは、前記導電性部材の前記胴体部の軸方向に対して傾斜した面同士で接触する構成でもよい。
この構成によれば、集電体の他端側と、内パッキン部分とは、導電性部材の前記胴体部の軸方向に対して傾斜した面同士で接触する。このため、集電体とパッキンとが上記軸方向に平行な面同士で接触する構成に比べて、両者の接触面積を大きくすることができ、隙間が生じるのを、より確実に抑制することができる。
【0015】
上記蓄電素子では、前記集電体の前記他端側と前記導電性部材の前記内側径大部との間に配置されている内ワッシャを備えてもよい。
この構成によれば、パッキンに加えて内ワッシャを設けることにより、外側径大部と内側径大部とでケース、パッキン、集電体を、より強く挟み込むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的簡単な構造により、集電体と、ケースと、導電性部材とを導通させつつ、ケースと導電性部材との隙間が生じることを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る電池の外観構成例を示す概略図
【図2】正極性の電極端子部の構成例を示す概略図
【図3】負極性の電極端子部の構成例を示す概略図
【図4】比較例の電池の構成を示す分解図
【図5】比較例の電池の部分的断面図
【図6】電池の電極端子部の他の構成例を示す概略図(その1)
【図7】電池の電極端子部の他の構成例を示す概略図(その2)
【図8】電池の電極端子部の他の構成例を示す概略図(その3)
【図9】電池の電極端子部の他の構成例を示す概略図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る電池(以下「本電池」という)は、ケースと、該ケース内に収容された正極および負極を有する電極体と、該ケースに設けられた正極用および負極用の電極端子部と、を備える。ここで、正極用または負極用の電極端子部は、集電体と、外パッキンと、内パッキンと、導電性部材とを有し、集電体が、該ケースおよび導電性部材と導通し、ケースが正極または負極と導通している構成である。ケースが負極と導通している構成でもよいが、以下の説明では、ケースが正極と導通している構成を例に挙げて説明する。なお、「ケース」は、所定の容積を有する容器と該容器の開口部に配置される蓋体から構成される。以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<本電池の外観構成例>
本電池の外観構成例の概要を、図1に示す。本電池は、所定の容積を有する容器1と、容器1内に収容され正極2Aおよび負極2Bを有する電極体2と、容器1の開口部1Aに配置される蓋体3と、を備える。
【0020】
蓋体3は、長方形の平板で、筐体として所定の強度を有し、一端側(図1の紙面左側)に正極用の電極端子部10が設けられ、他端側(同図の紙面右側)に負極用の電極端子部20が設けられている。正極用の電極端子部10には外部端子11及びリベット12が設けられ、負極用の電極端子部20には外部端子21及びリベット22が設けられている。
【0021】
容器1は、蓋体3に固定された電極体2を収容した状態で、開口部1Aと蓋体3の周端部を封じて、密閉状態を形成する。容器1は、上端が開口した扁平の箱形をなし、筐体として強度を有する金属製(例えばステンレスやアルミニウム等を挙げることができる)の成型体が用いられる。また、こうした金属製によって、ケース電位を形成することができる。容器1と蓋体3との封止方法は、ステンレス製容器の場合、通常周端部を溶接する方法が採られるが、これに限定されるものではなく、接着剤を用いた接着法、あるいは開口部1Aの周端部を挟持するように凸状体が形成された蓋体3の周縁部を圧着する圧着法などを用いることができる。
【0022】
〔本電池の電極端子部の構成例〕
(1)正極用の電極端子部の構造
図2は、正極用の電極端子部10の構成例の斜視断面を示す。電極端子部10は、集電体13,内パッキン14、外パッキン15およびリベット12を備える。集電体13は、その図示しない一端側が、電極体2の正極2Aに接続されており、その他端側13Aが、蓋体3の内面3Aに面接触しつつ、蓋体3およびリベット12と導通している。具体的には、蓋体3の上記一端側には、例えば円形であって、直径D1の取付穴3Bが貫通形成されている。集電体13の他端側13Aには、上記取付穴3Bと同軸上に位置し、上記直径D1よりも大きい直径D2の挿入穴13Bが貫通形成されている。
【0023】
内パッキン14は、全体として環状をなし、圧縮変形した状態で、外径が上記直径D2と略同一であり、内径が上記直径D1と略同一である。内パッキン14は、その外周面が全周に亘って集電体13の挿入穴13Bの内周面に密着し、上面が全周に亘って蓋体3の内面3Aに密着している。内パッキン14は、外パッキン15とリベット12および蓋体3間でのシール性を高める機能をも果すとともに、比較的高温となる集電体13から蓋体3への伝熱の緩衝機能を果している。
【0024】
外パッキン15は、上記内パッキン14とは別体であり、略円筒形の筒状部15A、及び、当該筒状部15Aの上部外周面に一体的に設けられ円盤状をなすベース部15Bを有する構成である。筒状部15Aは、圧縮変形した状態で、外径が上記直径D1と略同一であり、内径が、後述するリベット12の胴体部12Aの外径D3と略同一である。筒状部15Aは、蓋体3の取付穴3Bおよび集電体13の挿入穴13Bに圧入されており、当該筒状部15Aの外周面は、全周に亘って蓋体3及び内パッキン14に密着している。また、ベース部15Bは、その下面が、全周に亘って蓋体3の外面に密着している。
【0025】
リベット12は、胴体部12A、その胴体部12Aの一端(図2の上端)に一体的に設けられた頭部12B、及び、胴体部12Aの他端(図2の下端)に一体的に設けられたフランジ部12Cを有する。なお、リベット12は、導電性部材の一例であり、頭部12Bは外側径大部の一例であり、フランジ部12Cは内側径大部の一例である。胴体部12Aは、直径D3の外径を有する円柱径であって、上記外パッキンの筒状部15A内に圧入されている。頭部12B及びフランジ部12Cの外径は、胴体部12Aの外径よりも大きい。
【0026】
本実施形態では、電池の製造段階において、フランジ部12Cが形成される前のリベットが、外パッキン15の筒状部15A内に挿入され、その状態で胴体部12Aの下端側をかしめることで、フランジ部12Cが形成される。これにより、外パッキン15のベース部15B、蓋体3、集電体13の他端側13A、および、内パッキン14は、リベット12の頭部12Bとフランジ部12Cとの間に挟み込まれ、外パッキン15、集電体13、内パッキン14が、蓋体3に固定されている。
【0027】
また、フランジ部12Cが形成される前には、内パッキン14は、自然状態であり、集電体13よりも上下方向の厚さ寸法が大きく、集電体13よりも下方に突出している。従って、リベットがかしめられる過程において、内パッキン14の弾性力によって、フランジ部12Cが集電体13を押圧する力が軽減され、集電体13が損傷したりすることを抑制することができる。また、リベット12の胴体部12Aは、かしめ前よりもかしめ後の方が、直径が大きくなる。これにより、内パッキン14、および、外パッキン15の筒状部15Aは、圧縮変形しつつ、リベット12の胴体部12Aと集電体13の他端側13Aとの間に挟み込まれるため、蓋体3とリベット12と集電体13との間の隙間を、より確実に埋めることができる。
【0028】
また、集電体13の挿入穴13Bの内径D2は、フランジ部12Cの外径よりも小さい。このため、フランジ部12Cの外側部分が集電体4と接触し、電極端子部10から正極の電位を取り出すことができるとともに、蓋体3を介して容器1と導通させることによって、ケース電位を形成することができる。また、電極端子部10には、図1に示すように、リベット12に、図示しない連結体を介して外部端子11が導通接続されている。なお、外部端子11を設けないで、リベット12の頭部12Bを外部端子とする構成でもよい。
【0029】
このように、電極端子部10は、外パッキン15、蓋体3、集電体13および内パッキン14を、リベット12の頭部12Bとフランジ部12Cとで挟み込むことで、蓋体3、集電体13及びリベット12を導電させる構成である。従って、本電池の製造段階において、溶接等粉塵やスパッタ等のような電池の機能に悪影響を及ぼす可能性のある物質等の発生がない状態で、蓋体3,集電体13,リベット12を、互いに固定しつつ導通させることができる。また、外パッキン15によって、蓋体3およびリベット12間をシールし、外気との接触を遮断するとともに、蓋体3と集電体13の間、及び集電体13とリベット12との間以外の電気絶縁性を確保している。なお、本実施形態では、導電性部材の一例として、リベット12を例に挙げた。しかし、これに限らず、導電性部材は、頭部付きのネジとナットとを螺合させた構成でもよい。
【0030】
(2)負極用の電極端子部の構造
図3は、負極用の電極端子部20の構成例の斜視断面を示す。電極端子部20は、集電体23,外パッキン24,内パッキン25およびリベット22を備える。集電体23は、その図示しない一端側が、電極体2の負極2Bに接続されており、その他端側23Aが、内パッキン25によって蓋体3と絶縁され、リベット22と導通している。具体的には、蓋体3の他端側に、例えば円形の取付穴3Cが貫通形成されており、集電体23の他端側23Aには、その取付穴3Cよりも径が小さい挿入穴23Bが貫通形成されている。
【0031】
内パッキン25は、蓋体3の内面3Aと集電体23の上面との間に密着状態で配置され、上記取付穴3Cと略同一径の挿入穴25Aが貫通形成されている。外パッキン24は、上記外パッキン15の筒状部15A及びベース部15Bと略同一形状である筒状部24A及びベース24Bを有する構成である。筒状部24Aは、蓋体3の取付穴3Cおよび内パッキン25の挿入穴25Aに圧入されており、当該筒状部24Aの外周面は、全周に亘って蓋体3及び内パッキン25に密着している。また、筒状部24Aの下端面は、全周に亘って集電体23に密着している。
【0032】
リベット22は、胴体部22A、その胴体部22Aの一端(図2の上端)に設けられた頭部22B、及び、胴体部22Aの他端(図2の下端)に設けられたフランジ部22Cを有する。胴体部22Aの外径は、外パッキン24の筒状部24Aの内径、及び、集電体23の挿入穴23Bと略同一径であり、頭部22B及びフランジ部22Cの外径は、胴体部22Aの外径よりも大きい。本実施形態では、電池の製造段階において、フランジ部22Cが形成される前のリベットを、外パッキン24の筒状部24A内に挿入し、その状態で胴体部22Aの下端側をかしめることで、フランジ部22Cが形成される。これにより、外パッキン24のベース部24B,蓋体3,内パッキン25、および,集電体23の他端側23Aは、リベット22の頭部22Bとフランジ部22Cとの間に挟み込まれ、外パッキン24、内パッキン25及び集電体23が、蓋体3に固定されている。
【0033】
また、リベット22と集電体23とは導通接続されているが、蓋体3は、外パッキン24及び内パッキン25によって、リベット22及び集電体23と絶縁されている。電極端子部20には、図1に示すように、リベット22に、図示しない連結体を介して外部端子21が導通接続されている。なお、外部端子21を設けないで、リベット22の頭部22Bを外部端子とする構成でもよい。
【0034】
このように、電極端子部20は、外パッキン24、蓋体3、内パッキン25および集電体23を、リベット22の頭部22Bとフランジ部22Cとで挟み込むことで、蓋体3とリベット22とを導通接続する構成である。従って、本電池の製造段階において、溶接等粉塵やスパッタ等のような電池の機能に悪影響を及ぼす可能性のある物質等の発生がない状態で、集電体23及びリベット22を、互いに固定しつつ導通させることができる。また、外パッキン24及び内パッキン25によって、蓋体3およびリベット22間をシールし、外気との接触を遮断するとともに、集電体23とリベット22との間以外の電気絶縁性を確保している。
【0035】
蓋体3は、筐体として所定の強度を有し、ケース電位を形成するため、導電性を有するステンレスやアルミニウム等が用いられている。蓋体3は、正極用の電極端子部10において集電体13と導通接続され、容器1とそのまま接続されることによって、正極のケース電位を形成することができる。
【0036】
集電体13,23は、所定の強度を有し、加工が容易で、電気抵抗の小さな良導電性の材質が好適であり、銅またはアルミニウム等が用いられる。集電体13,23の材料は、導電性が良く、軽量な金属が用いられ、例えばアルミニウムや銅等が用いられる。集電体13,23は、リベット12,22のフランジ部12C、22Cと接触して導通し正極あるいは負極のいずれかの電位の取り出しを可能にするとともに、外パッキン15,24、内パッキン14,25と当接してシール性が確保されている。
【0037】
外パッキン15,24および内パッキン14,25は、絶縁体で、弾性,耐熱性,耐蝕性および機密性があり、蓋体3に密着して電解液の漏れを防止することができるように柔軟性がある材質が好適である。具体的には、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS),テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテフタレート(PET)等が用いられる。また、本実施形態では、外パッキン15,24と内パッキン14,25とは別体なので、特に耐蝕性、耐熱性が求められる内パッキン14,25には、高い耐蝕性等を有する高価な材質とし、外パッキン15,24には、内パッキン14,25に比べて耐蝕性等が低い安価な材質とすることで、パッキン全体のコストを低減することができる。なお、外パッキン24と内パッキン25とは、別体に限らず、一体形成されたものでもよい。
【0038】
リベット12,22は、導電性が良く、軽量で、カシメに適した柔軟度があるとともに、変形した状態を維持することができる強度を有することが求められる。従って、材質として、例えばアルミニウムや銅等の金属製のリベットが用いられる。図2、図3では、有頭リベットを用い、頭部12B、22Bを電極端子部10,20の上方に配置し、胴体部12A,22Aの下端部をかしめた形態を例示した。しかし、これに限らず、頭なしのリベットの両端を押しつぶしてかしめる形態や筒状のリベットの中空部に楔状体を打ち込みかしめる形態等を用いることが可能である。
【0039】
(3)比較例の電池
例えば、図4、図5には、比較例の電池が示されている。この比較例の電池は、容器101と、容器101の開口部に配置され、取付穴113を有する電池蓋105と、電池蓋105の取付穴113に挿入された筒状部118と、筒状部118の一方の開口端の周縁に形成された鍔部117とを有する絶縁ガスケット107と、絶縁ガスケット107の筒状部118に挿入された状態で電池蓋105にかしめ固定された軸部122と、軸部122の一端に形成され、絶縁ガスケット107の鍔部117を介して電池蓋105に配置された頭部120とを有し、正極または負極の出力端子用のリベット108と、リベット108の頭部120と絶縁ガスケット107の鍔部117との間か、電池蓋105と前記絶縁ガスケット107の鍔部117との間のうち少なくともいずれか一方に介在された絶縁パッキング110,111とを具備する電池が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、102は電極体,106aは円形穴,110a,111aはリベット挿入穴,114はベントを示す。
【0040】
また、このとき、封口部材の組み付けは、以下の手順で行われる。
(1)電池蓋105の凹部112内に第2の絶縁パッキング111を配置し、絶縁ガスケット107のボス部118を電池蓋105の取付穴113に挿入し、これらを嵌め合せる。
(2)絶縁ガスケット107のフランジ部117内に第1の絶縁パッキング110を挿入し、さらにリベット108の軸部121を絶縁ガスケット107の軸挿入穴119に挿入し、嵌め合せる。
(3)その後、電池蓋105から下方に貫通した軸部121に絶縁プレート106を介して孔開きのワッシャー109を挿入する。
(4)次いで、リベット108の頭部120を下方に加圧してその位置を固定しながらカシメ軸部122の下端を上方に加圧すると、リベット108の軸部121及びカシメ軸部122が自由状態よりも僅かに拡径変形(膨張変形)する。その結果、リベット108の軸部121が絶縁ガスケット107の軸挿入穴119と密着し、電池蓋105の取付穴113と絶縁ガスケット107との隙間が封止される、つまり、リベット108が電池蓋105に絶縁ガスケット107を介してかしめ固定される。
(5)ワッシャー109に負極側の導電タブ104を溶接し、正極側の導電タブ103を電池蓋105の内面に溶接する。
(6)この後に、電池蓋105を電池ケース101の開口部に嵌め合わせた後、電池蓋105と電池ケース101との嵌合面を溶接して封止する。
(7)最後に、電解液注入口115から電解液を電池ケース101内に注入したのち、電解液注入口115にプラグ116を挿入して溶接し、電解液注入口115を封止することにより電池を完成する。
【0041】
しかし、上記のような電池では、以下のような種々の課題が生じることがあった。
(i)ケースの電位を正極あるいは負極にとるためには、ケースと電位をとるための対象物とを溶接する必要があった。このとき、溶接によって発生する粉塵やスパッタ等は、電池の構成部品を汚染し腐蝕やショート等の原因となる可能性がある。また,溶接自体の欠陥によって導通不良やスパークの発生等の可能性がある。
(ii)電極の取出し部や端子台における接合においては、容器内部を外気と遮断するシール構造が要求される一方、こうした取出し部等には複数の部品を接合しあるいは組立てを必要とすることから、シール材の歪みやズレ等によって十分にシールできないあるいは使用時の加熱−冷却のサイクルに伴うシール機能の劣化が生じることがある。
(iii)また、こうしたシール材には、弾性,機密性,耐熱性,絶縁性および耐食性が要求されるが、こうした特性を全て満たす素材は少なく、高価であり、また繰り返しの使用に耐える素材は、さらに限定される。
【0042】
本実施形態の上記電池は、従前の課題に対して、以下のような機能を有するものである。
(a)ケースおよび集電体をリベットでカシメて挟持することによって、溶接等粉塵やスパッタ等のような電池の機能に悪影響を及ぼす可能性のある物質等の発生がなく、確実に固定された電極端子部を形成することができる。
(b)筐体として所定の強度を有し導電性を有するケースに対して集電体を重ね、同時に弾性を有する上部パッキンを挟持することによって、ケースや集電体を傷付けることなく、柔軟かつ強固に挟持し固定することができる。また、衝撃や振動等による接合部分のズレがなく確実にケースに対する導電性を有する電極端子部を形成することができる。
(c)容器としてのシール性は、弾性,耐熱性,耐蝕性および機密性のある上部パッキンを、リベットの頭部およびケースの外面に当接させることによって、確実にすることができる。特に、リベットがカシメられたときに、リベットとケースおよび集電体との隙間が生じないように、柔軟に変形しながら、より確実にこれらの当接を図ることができるとともに、絶縁性を確保することができる。
【0043】
〔電極端子部の他の構成例〕
本電池においては、正極用の電極端子部は、図2に例示するような構成のみならず、用途や要求仕様に対応した種々の形態を構成することができる。以下に、その形態をいくつか例示し、本電池における電極端子部10の特徴を明確にする。
【0044】
図6に示す正極用の電極端子部30は、上記電極端子部10に対し、内パッキン34と集電体33の挿入穴33Bとの接触部分の構成が異なるのみで他の構成は同じである。内パッキン34は、断面が略三角形であり、下方に向かうに連れて外径が小さくなる形状をなす。一方、集電体33の挿入穴33Bは、下方に向かうに連れて内径が小さくなる形状をなす。これにより、内パッキン34と集電体33とは、リベット12の胴体部12Aの軸方向に対して傾斜した面同士で接触している。このため、集電体とパッキンとが上記軸方向に平行な面同士で接触する構成に比べて、両者の接触面積を大きくすることができ、隙間が生じるのを、より確実に抑制することができる。
【0045】
図6の構成では、内パッキン34と集電体33との接触面は、下方に向かうに連れてリベット12に近づく方向に傾斜した面であった。しかし、これに限らず、内パッキンと集電体との接触面が、下方に向かうに連れてリベット12から離れる方向に傾斜した面でもよい。但し、図6の構成であれば、リベット12のかしめ前において、内パッキン34は、集電体33の傾斜面で保持されるため、内パッキン34がリベット12から抜け出ることを抑制することができる。
【0046】
図7に示す正極用の電極端子部40は、上記電極端子部10に対し、外パッキンの構成が異なるのみで他の構成は同じである。外パッキン41は、互いに別体の円筒形状体42と平板形状体43とで構成されている。円筒形状体42は、取付穴3Bに挿入され、平板形状体43は貫通口43Aを有し、当該貫通口43A内に円筒形状体42の上部が圧入されている。前述した筒状部15Aとベース部15Bとが一体化された外パッキン15では、リベット12の胴体部12Aで当接する部分と、リベット12の頭部12Bおよび蓋体3で当接する部分では、各部からの押圧の強度,方向(ベクトル)あるいは伝達される温熱量が異なることがあり、長期の使用において、局部的なひずみの発生の原因となる可能性がある。
【0047】
これに対して、外パッキン41は、円筒形状体42と平板形状体43とが互いに別体なので、これらの局部的な負荷を分散し、弾性,耐熱性,耐蝕性および機密性という諸機能を長期管維持することを可能とした。また、シール性がより強く要求される平板形状体43Cを柔軟性の高い例えばPPSによって形成し、特に接触面積が大きく耐熱性が強く要求される円筒形状体42を耐熱性の高い例えばFPAによって形成するといったように、各部によって使用する材質を変更することによって、より機能性の高いパッキン構造を形成することができる。
【0048】
図8に示す正極用の電極端子部50は、上記電極端子部40に対し、パッキンの構成が異なるのみで他の構成は同じである。内パッキン51は、図7に例示した構成における円筒形状体42と内パッキン14を一体化した部材で構成された場合を例示する。内パッキン51の内面でリベット12の胴体部12A7Cと当接し、外周面で蓋体3,集電体13および平板形状体43と当接する。図7に例示した構成と同様、内パッキン50に対する局部的な負荷を分散し、弾性,耐熱性,耐蝕性および機密性という諸機能を長期管維持することを可能とした。また、シール性がより強く要求される平板形状体43を柔軟性の高い例えばPPSによって形成し、特に接触面積が大きく耐熱性が強く要求される内パッキン51を耐熱性の高い例えばFPAによって形成することによって、より機能性の高いパッキン構造を形成することができる。
【0049】
図9は、外パッキン61とリベット62の頭部62Bの間に、ワッシャ63を挿入した場合を例示する。リベット62の頭部62Bの周端部62Dを包含する大きさのワッシャ63が挿入されるとともに、さらに外パッキン61がワッシャ63の周端部63Aを包含するように配設される。リベット62の頭部62Bの大きさでは、外パッキン61を十分挟持できず、外パッキン61の弾性を十分に活かすことができない場合に、ワッシャ63を挿入することによって、こうした外パッキン61の挟持機能および固定機能を補完すすることができる。また、このとき、図9のように、ワッシャ63の周端部63Aに対応する位置に、外パッキン61の突起61A等のエッジを設け、外パッキン61がワッシャ63の周端部63Aを包含するように配設することによって、外パッキン61とワッシャ63およびリベット62を確実に固定することができる。
【0050】
以上、5つの異なる形態の構成例を示したが、これらに限定されるものではなく、これらの組合せ、例えば、図2あるいは図7に例示された構成において、三角形状の内パッキン34を適用する形態や、これらにワッシャを挿入した形態等を適用することが可能である。例えばリベットのフランジ部と集電体との間にワッシャを挟む構成でもよい。また、蓄電素子の一例として電池を挙げたが、電気二重層キャパシタでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:容器 1A:開口部 2:電極体 3:蓋体 3B:取付穴 13,33:集電体 15,24,41,43,61:外パッキン 14,34,51:内パッキン 12,62:リベット 10:電極端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付穴が形成されたケースと、
前記ケース内に収容され、正極および負極を有する電極体と、
一端側が前記電極体の前記正極あるいは前記負極と接続され、他端側が前記ケースの内面と導通する集電体と、
前記ケースの前記内面のうち、前記取付穴と前記集電体の前記他端側との間の部分に接触する内パッキン部分を有するパッキンと、
前記ケースの前記取付穴に挿入された胴体部、及び、前記胴体部のうち前記ケースの内側の端部に設けられ、当該胴体部よりも径が大きい内側径大部を有し、前記内側径大部が、前記集電体の前記他端側と導通し、前記内パッキン部分に接触し、且つ、前記ケースとの間で前記内パッキン部分および前記集電体の前記他端側を挟み込んでいる導電性部材と、を備える蓄電素子。
【請求項2】
前記内パッキン部分は、前記集電体の前記他端側と前記導電性部材の前記胴体部との間に挟み込まれている、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記胴体部のうち前記ケースの外側の端部に設けられ、当該胴体部よりも径が大きい外側径大部を有し、
前記パッキンは、前記内パッキン部分に加えて、前記導電性部材の前記外側径大部と前記ケースの外面との間に挟み込まれる外パッキン部分を有する構成である、請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記導電性部材の前記外側径大部と前記外パッキン部分と間に配置され、前記外パッキンよりも径が小さい外ワッシャを備えている、請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記外パッキン部分には、前記外ワッシャの外周面に当接する突起部が設けられている、請求項4に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記パッキンは、前記内パッキン部分と前記外パッキン部分とが別体であって、且つ、互いに材質が異なる構成である、請求項3から5のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記パッキンは、前記ケースの前記取付穴に接触する外周面、及び、前記導電性部材の前記胴体部に接触する内周面を有する筒状部分を有し、
前記内パッキン部分及び前記外パッキン部分の少なくとも一方のパッキン部分は前記筒状部分と別体であって、当該一方のパッキン部分には前記筒状部分の外周面の全周に亘って接触する貫通穴が形成されている、請求項3から6のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項8】
前記集電体の前記他端側と、前記内パッキン部分とは、前記導電性部材の前記胴体部の軸方向に対して傾斜した面同士で接触する構成である、請求項1〜7に記載の蓄電素子。
【請求項9】
前記集電体の前記他端側と前記導電性部材の前記内側径大部との間に配置されている内ワッシャを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蓄電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178337(P2012−178337A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1986(P2012−1986)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】