説明

薄板の平板への接着方法

【課題】接着剤を、複数の位置に、平坦に、かつ経済的に塗布する。
【解決手段】接着方法は、被接着物が接着される接着面を有する平板を、接着面を上面として配置するステップ(ステップ55)と、配置された平板の各接着面に接着剤を塗布する塗布ステップ(ステップ56)と、塗布された接着剤の粘性係数を増加させる半硬化ステップと、粘性係数の増加した接着剤の表面の少なくとも一部を除去して、表面を平坦化する平坦化ステップ(以上、ステップ57)と、接着剤の平坦化された表面に被接着物を密着させるステップと、その後に、接着剤を硬化させるステップ(以上、ステップ58)とを有している。平坦化ステップは、接着剤の少なくとも一部を第1のネットの上に露出させるステップと、スキージを第1のネットの面上を滑らせて、第1のネットの上方に露出させられた接着剤を除去するステップとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄板の平板への接着方法に関し、特に、非接触ICカードの製造ステップにおいて、チップ本体を補強板に接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、鉄道の出改札などの用途を中心に様々な分野で利用され、今後も多くの分野への適用が期待されている。非接触ICカードは、通信用アンテナおよび半導体チップ(ICチップ)を所定のシートで挟み込んで構成されている。ICチップは、シリコン等の基板上に回路を構成する積層膜が成膜されたチップ本体が、通常ステンレス鋼でできた補強板に支持されて構成されている。補強板はチップ本体が過度の変形を受けないようにチップ本体を保護するとともに、チップ本体からの発熱を吸収するヒートシンクとしての機能を有している。
【0003】
ICチップの製造方法としては種々のものが提案されているが、その一つとして、まず、チップ本体が多数形成されたウエハの裏面を薄化し、次に、薄化されたウエハを切断して個々のチップ本体に分離し、その後分離されたチップ本体を補強板に接着してICチップを製造する方法がある。
【0004】
分離されたチップ本体を補強板に接着するステップは、具体的には、スクリーン印刷技術を用いて、次の手順でおこなわれる。まず、複数の補強板を、接着剤が塗布される面を上にして、基台の上に固定する。次に、その上に、補強板に対応する部分に開口が設けられ、他の部分は塞がれたマスクをかぶせる。次に、マスクの上から適切な接着剤を塗布し、マスク上でスキージを動かし、接着剤を引き伸ばしながら、開口から流入させる。これによって、接着剤は、開口を経由して補強板に均一に塗布される(特許文献1参照。)。塞がれた部分には接着剤は塗布されない。次にマスクをはずし、接着剤の塗布面にチップ本体を密着させる。接着剤が高温硬化性の樹脂であれば、この状態で所定時間、所定温度で加熱(例えばエポキシ樹脂であれば、120℃で2時間加熱)することによって、接着剤が硬化し、ICチップは補強板に接着される。また、接着剤が紫外線硬化性樹脂であれば、加熱する代わりに紫外線を照射して硬化させればよい。
【0005】
開口の上に網目状のシートをかぶせ、シートの上からエラストマを供給し、スキージで引き伸ばすように押し込めば、必要な量だけがシートの下方に押しこまれ、エラストマが開口部の端部で盛り上がったり、傾いたりすることを防止できる(特許文献2参照。)。また、接着剤の塗布方法ではないが、コーティング剤の周縁部に生じる液溜りをへらで除去し、平坦度を確保する方法もある(特許文献3参照。)。
【0006】
さらに、スクリーン印刷技術以外にも、半導体分野において薄膜を形成する代表的な方法であるスピンコート法などが、接着剤の塗布に用いられることがある。
【特許文献1】特開平9−321067号公報
【特許文献2】特開平11−74289号公報
【特許文献3】特開2004−50108公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては以下の問題があった。すなわち、ICチップの接着剤として多用される高温硬化性の樹脂は、溶剤が時間の経過や加熱によって蒸発し、徐々に硬化していく性質を有している。このため、塗布後しばらくは溶剤の量が多く、流動性が高く、粘性が低いので、接着剤の塗布面の周辺部が、表面張力によって土手のように盛り上がり、平坦度が悪化する。この状態でICチップを接着剤に載置すると、接着剤の流動性が高く、ICチップが動いてしまうので、ICチップの正確な位置あわせができないことがある。これはICチップが補強板の正しい位置に固定されないことを意味する。また、接着剤の流動性が高いため、接着剤がICチップの前面側に回り込むことも考えられる。これらの現象は、ICチップの品質に重大な影響を与えるおそれがある。この問題は、網目状のシートの上から接着剤を塗布しても、流動性の高い材料の場合、シートをはずしたとたんに変形が生じ、解決されない。
【0008】
そこで、接着剤がある程度硬化し、流動性が小さくなった状態で、ICチップを接着剤に密着させることが考えられる。しかしこの時点では、接着剤は平坦度が悪化した状態で半硬化状態となっているため、接着剤がICチップの接着面にうまく回りこまずに、接着不良を起こしたり、傾いた状態で固定されてしまう可能性がある。これらの現象もまた、ICチップの品質に重大な影響を与えるおそれがある。この問題を回避するために、半硬化状態の接着剤の平坦度の悪化した部分をスキージでこすり取って平坦度を回復させることも考えられるが、接着剤は多数の互いに離れた補強板の上に塗布されており、いわば木が林立しているような状態であるから、その表面を端から順にスキージでこすっても全体を平坦にすることは著しく困難である。一つ一つの補強板を個別にこすって個々の塗布面を平坦にすることは不可能ではないが、作業効率の面で問題となる。
【0009】
また、ウエハの厚みは最終製品である非接触ICカードの厚さに影響し、非接触ICカードの使用中に受ける曲げに対する柔軟性を確保する目的もあって、ウエハは近年ますます薄化される傾向にある。このため、接着剤の膜厚もこれに伴って薄化していく必要があるが、従来技術では50μm程度の膜厚を形成するのが限界であり(特許文献1参照)、また、その精度も高いものではなかった。
【0010】
なお、スクリーン印刷以外の塗布方法、たとえばスピンコート法は、膜厚の制御という点では優れているが、専用の高価な装置を必要とし、コスト面で現実的でない場合がある。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、ICチップを基板に接着する際に、接着剤を、複数の補強板に、平坦に、かつ経済的に塗布する方法を提供することを目的とする。また本発明は、より一般的には、接着剤を、複数の位置に、平坦に、かつ経済的に塗布する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の接着方法は、上記課題を解決するために、被接着物が接着される接着面を有する平板を、接着面を上面として配置するステップと、配置された平板の各接着面に接着剤を塗布する塗布ステップと、塗布された接着剤の粘性係数を増加させる半硬化ステップと、粘性係数の増加した接着剤の表面の少なくとも一部を除去して、表面を平坦化する平坦化ステップと、接着剤の平坦化された表面に被接着物を密着させるステップと、その後に、接着剤を硬化させるステップとを有している。ここで、平坦化ステップは、第1の開口を有する第1のマスクであって、第1のマスクの上面と略同一面に設けられた第1のネットによって第1の開口が覆われている第1のマスクを、第1の開口が接着面の上方となる位置で、第1のネットの少なくとも一部が接着剤の内部に食い込む高さで、平板に取り付け、接着剤の少なくとも一部を第1のネットの上に露出させるステップと、スキージを第1のネットの面上を滑らせて、第1のネットの上方に露出させられた接着剤を除去するステップとを有している。
【0013】
平板の各接着面に接着剤を塗布すると、接着剤の粘性係数が小さい場合、表面張力によって接着剤の塗布面が変形する。しかしながら、接着剤をその状態で半硬化させ、形状保持力を発生させてから、第1のネットとスキージによって、接着剤の表面の一部または全部を除去するので、不要な部分だけを効率的に除去できる。しかもこの時点では接着力が十分に残っているので、その後に被接着物を密着させ、接着剤を硬化させて、十分な接着力を得ることができる。
【0014】
また、塗布ステップは、第2の開口を有する第2のマスクを、開口が接着面の上方となる位置で、平板に取り付けるステップと、第2のマスクの上に接着剤を供給するステップと、スキージを第2のマスクの面上を滑らせて、接着剤を第2の開口から接着面に移動させて、接着面に接着剤を塗布するステップとを有するように構成してもよい。
【0015】
さらに、平板を複数個配列し、第1のマスクの第1の開口、および第2のマスクの第2の開口を、各平板に対応する位置に設けるようにしてもよい。
【0016】
接着剤としてエポキシ樹脂を用い、半硬化ステップは、粘性係数を少なくとも30000mPa・s以上まで増加させるようにしてもよい。
【0017】
また、接着剤として紫外線硬化樹脂を用い、半硬化ステップは、紫外線を照射して、粘性係数を少なくとも30000mPa・s以上まで増加させるようにしてもよい。
【0018】
第1のネットの粗さは100〜600の範囲とすることが望ましい。
【0019】
本発明のICチップの製造方法は、チップ本体の一面が補強板に接着されて構成されるICチップの製造方法であって、複数のチップ本体を製造するステップと、複数の補強板を製造するステップと、複数の補強板を、補強板の接着面を上面にして基台に固定するステップと、チップ本体を被接着物として、補強板を平板として、上記のいずれかの接着方法を用いて、チップ本体を補強板に接着するステップとを有している。
【0020】
この場合、ICチップの厚さは75μm以下、接着剤の平坦化ステップ後の厚さは50μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の接着方法によれば、ICチップを基板に接着する際に、複数の箇所に塗布された接着剤を半硬化状態にした後に、簡易でかつ精度の高い方法によって、不要な部分をまとめて除去して、塗布面の平坦度を確保することができる。このため、接着剤を、複数の補強板に、平坦に、かつ経済的に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1に示すフロー図を参照して、本発明の接着方法を、非接触ICカードの製造方法を例に説明する。
【0023】
(ステップ51)まず、シリコン基板K上にチップ本体Cが多数形成されたウエハWを製作する。次に、必要に応じてウエハWの受入れ検査をおこない、不良のウエハWを選別する。図2にはウエハの平面図を示す。チップ本体Cは円形のシリコン基板K上に2次元状に整列して形成される。チップ本体C1つあたりの寸法は一例では約4mm×5mmである。なお、基板としては、シリコン以外にも、ガリウム砒素その他、ウエハ材料として一般に用いられている材料を用いることができる。
【0024】
(ステップ52)次に、ウエハWのチップ本体Cが形成された面の裏面を研磨する。ウエハWは一例では0.65mm程度の厚さを有しているが、例えば機械研磨で厚さをある程度落として、最終的にケミカルエッチングによって仕上げ、0.1mm以下まで、一例では0.075mm程度以下まで薄化する。
【0025】
(ステップ53)次に、ウエハWに加工用テープ(図示せず)を貼り付ける。加工用テープは、たとえばプラスチックシートに、紫外線硬化性樹脂や高温剥離性の樹脂を塗布したものである。加工用テープを用いることによって、切断抵抗を抑え、切断時のウエハWと砥石の動きを安定化させる(振れを防止)ことができ、ウエハWのチッピング(切断線に沿ったウエハの割れ)を防止することができる。
【0026】
(ステップ54)次に、加工用テープを固定具(図示せず)に保持して、ウエハWを砥石(図示せず)で切断する。砥石としては、例えば人工ダイヤモンドを砥粒とした砥石が用いられる。これによって、ウエハWは、個々のチップ本体Cに分離される。その後、チップ本体Cから加工用テープを剥離する。
【0027】
(ステップ55)次に、ステンレス製の補強板Hを作成し、基台11に搭載する。補強板Hは上述の通り、チップ本体Cの保護とヒートシンクとしての機能を有している。図3には、基台に搭載された補強板の斜視図を、図4には図3の部分拡大図を示す(いずれの図でも基台11は下側)。補強板Hはステンレス鋼製の薄板で、一例では、平面寸法5mm×6mm程度、厚さは0.1〜0.2mm程度である。補強板Hは、チップ本体Cとの接着面H1(図4参照)を上面として、基台11に格子状に複数個固定される。補強板Hと基台11との固定は、両面接着テープ等、適宜の手段を用いることができる。
【0028】
(ステップ56)次に、補強板Hに接着剤を塗布する。本ステップは、より具体的には、以下のサブステップに従っておこなわれる。
【0029】
まず、第2の開口13を有する第2のマスク12を準備する。図3には、マスクの斜視図を、図4には図3の部分拡大図を示す(いずれの図でも第2のマスク12は上側)。第2のマスク12の材料は接着剤Sが滑らかに移動できる表面材質を有していればよく、鋼板、プラスチック等種類を問わない。第2の開口13の面積および位置は、基台11に保持された補強板Hの接着面H1の面積および位置と一致している。第2の開口13の上面には第2のネット14が設けられている。第2の開口13の位置が対応するすべての接着面H1の位置と合うように位置決めをして、第2のマスク12を降ろし、第2のマスク12を基台11上の補強板Hに取り付ける。この結果、接着面H1は、第2のネット14および第2の開口13を介して、第2のマスク12の上方空間と連通し、接着面H1以外の部分は第2のマスク12によって覆われる。
【0030】
図5(a)には、補強板Hと、第2のマスク12および第2の開口13との位置関係を断面図で示す。第2のマスク12の厚さは接着剤Sの塗布厚さとほぼ同程度となるよう形成され、第2のネット14は第2のマスク12の上面とほぼ同一面となるように配置されている。接着剤Sの塗布厚さは、第2のマスク12を厚くしておいて、第2のマスク12と補強板Hとの相対高さを調整することによっても制御することができる。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、第2のマスク12の上に接着剤Sを供給する。接着剤Sとしては、例えば高温硬化性のエポキシ樹脂を用いることができる。次に、図5(c)に示すように、スキージ15を第2のマスク12および第2のネット14の面上を滑らせ、接着剤Sを第2の開口13から第2のネット14を介して接着面H1に移動させて、接着面H1に接着剤Sを塗布する。必要な場合、図5(d)に示すように、スキージ15を往復させてもよい。ここで、第2のネット14は、接着剤Sを第2の開口13の内部に均一に充填するために設けられる。したがって、接着剤Sの粘性係数が小さい場合には、必ずしも用いる必要はない。
【0032】
最後に、第2のマスク12を取外すと、図5(e)に示すように、接着面H1の上に接着剤Sが塗布された状態が得られる。
【0033】
(ステップ57)次に、基板に塗布した接着剤を平坦化する。前ステップで塗布された接着剤Sは、ある程度の粘性係数を有しているが、まだ流動性の高い状態にあるため、放置すると、図6(a)に示すように、表面張力によって、接着剤Sの塗布面の外周部が盛り上がり、その内側が低くなる。本ステップは、このような接着剤Sの流動性に起因する塗布面の凹凸を除去するために、以下のサブステップに従っておこなわれる。
【0034】
まず、図6(a)に示すような、接着剤Sの塗布面の外周部が盛り上がった状態でしばらく放置する。接着剤Sに含まれ、接着剤の流動性を確保している溶剤が蒸発し、エポキシ樹脂の成分比が高まると、徐々に粘性係数が増加し、半硬化状態となる。これに要する時間は80℃で10〜40分程度である。温度を下げて放置するとその分所要時間は増え、温度を上げると所要時間は短くなるが、温度と時間との関係は任意に選択できる。ここで半硬化状態とは、流動状態と硬化状態の中間であって、粘性係数は流動状態よりも小さく、表面張力や軽い振動では自由に動くことはできず、形状保持力を有しているが、例えばスキージ15でこすれば容易に変形し剥離する程度の状態である。また、接着力は十分に残っており、被接着物を載置すれば通常の接着状態が得られる。半硬化状態における粘性係数は、エポキシ樹脂の場合、30000〜250000mPa・s程度の範囲である。なお、流動状態とは、粘性係数が小さく、接着剤Sの流動性が大きい状態であり、表面張力等によって自由に変形することができる。硬化状態とは、接着剤Sの流動性がほとんどなくなり、固体状になった状態である。
【0035】
次に、図6(a)の上側に示すように、第1のマスク17を、接着剤Sが塗布され半硬化状態にされた補強板Hの上方にセットする。図7には、第1のマスクの斜視図を、図8には図7の部分拡大図を示す(いずれの図でも第1のマスク17は上側)。第1のマスク17の材料は半硬化状態になった接着剤Sが滑らかに移動できる表面材質を有していればよく、鋼板、プラスチック等種類を問わない。第1の開口18の面積および位置は、基台11に保持された補強板Hの接着面H1の面積および位置と一致している。第1の開口18は第1のネット19で覆われている。第1のネット19は、第1のマスク17の上面と略同一面に設けられている。第1のネット19はプラスチック製やステンレス製のものが用いられる。ネットの粗さは、前者で#100〜#350、後者で#400〜#600のものが一般的であるが、特に、#250程度が望ましい。なお、ネットの粗さは1インチ角の面積に何個の目があるかを示しており、例えば#250では、1インチ角に250個程度の目があることを意味する。
次に、図6(b)に示すように、第1のマスク17を、第1のネット19の少なくとも一部が接着剤Sの内部に食い込む高さまで降ろす。これによって、接着剤Sの少なくとも一部が第1のネット19の上方に露出する。図9は図6(b)の拡大図であり、このときの第1のネット19と接着剤Sとの関係を示している。接着剤Sは半硬化状態にあるので、第1のネット19と接触しても大きく変形することはなく、ほぼそのままの形状が維持される。すなわち、接着剤Sの外周部の盛り上がり部は第1のネット19によって切り込まれ、ほぼそのままの状態で第1のネット19の上方に露出する。
【0036】
次に、図6(c)に示すように、スキージ15を第1のマスク17および第1のネット19の面上を滑らせて、第1のネット19の上に露出した接着剤Sを除去する。第1のネット19は、第1のマスク17の上面と略同一面に設けられているので、スキージ15は第1のネット19と第1のマスク17との上を、段差なしにスムーズに動くことができ、余分な接着剤Sを効率的に除去できる。必要な場合、図6(d)に示すように、スキージ15を往復させてもよい。
【0037】
ここで、重要なことは、第1のネット19のメッシュ粗さを調整することによって、第1のネット19の上に露出する接着剤Sの量を調整することができることである。すなわち、粗いメッシュを用いれば多くの接着剤Sが第1のネット19の外側に露出し、細かいメッシュを用いれば、露出する接着剤Sの量は減少し、接着剤Sの塗布厚さの微妙な調整をおこなうことができる。接着剤Sの塗布厚さはまた、第1のネット19の接着剤Sに対する相対高さを調整することによっても可能である。
【0038】
次に、第1のマスク17を取外すと、図6(e)に示すように、接着面H1の上に平坦な接着剤Sが得られる。なお、このときの接着剤Sの塗布厚は50μm以下とすることができる。
【0039】
(ステップ58)次に、チップ本体Cを基板Hに取り付ける。具体的には、チップ本体Cの素子の形成されている面の反対面(ウエハの基板側の面)を接着剤Sの塗布面に密着させる。次に、全体を加熱して接着剤Sを硬化させる。硬化に要する時間は、エポキシ樹脂の場合、120℃で2時間程度である。その後、補強板Hを基台11から切り離す。以上のステップで、チップ本体Cに補強板Hが取り付けられたICチップが完成する。
【0040】
(ステップ59)その後、ICチップを洗浄し、外観検査をおこなう。さらに、完成したICチップを通信用アンテナとともにアンテナ基板上に搭載し、アンテナ基板上に、ICチップおよび通信用アンテナを被覆する保護膜を形成し、保護膜とアンテナ基板とを外装シートで覆って、非接触ICカードが完成する。
【0041】
本発明の効果をまとめると以下の通りである。
【0042】
まず、樹脂を基板に接着する際に、初期状態で流動性の大きい樹脂を用いた場合、表面張力によって平坦度が悪化する場合があるが、接着剤を塗布後、接着剤の溶剤を蒸発させて粘性係数を高めた上で、ネットとスキージを用いて余分な部分を除去することができる。このため、樹脂の粘性係数(流動性)によらず平坦な塗布面を得ることができる。
【0043】
また、ネットのメッシュ粗さを調整することによって、除去する接着剤の量を調整できるので、ICチップのような薄い素子を接着する場合にも、必要かつ十分な精度の塗布厚さを得ることができる。本願発明者は1μmオーダーでの塗布厚の調整ができることを確認した。
【0044】
なお、本発明の接着方法は、以上説明した実施形態に限定されない。例えば、エポキシ樹脂の代わりに紫外線硬化樹脂を用いることができる。紫外線硬化樹脂としては、例えばノーランド社製123S(使用紫外線波長254nm)が挙げられるが、一般的な紫外線硬化樹脂であればかまわない。具体的な手順は上記のエポキシ樹脂の場合と同様である。
【0045】
一実施例では、ステップ56と同様の手順で、スクリーン印刷で上記の樹脂を補強板に塗布した後、波長360nmの紫外線を照射して半硬化させた。このときの紫外線の全照射量は450mJ/cm2であった。次に、ステップ57と同様の手順で、第1のネットを用いて、樹脂面を平坦化した。スキージを第1のマスクおよび第1のネット上を滑らせることによって、樹脂の表面が平坦化されるとともに、樹脂の表面に形成された硬化膜が破られ、内部の未硬化の粘性の強い樹脂が表面に現れる。次に、ステップ58と同様の手順でチップ本体を接着剤に密着させ、120℃で1時間加熱する。これによって、チップ本体を補強板に接着することができる。なお、上記の樹脂を用いる場合、硬化のための加熱温度は最低65℃以上あればよい。このように、紫外線硬化樹脂を用いる場合、紫外線で半硬化させ、加熱により最終的に硬化させることによって、エポキシ樹脂を用いる場合と同様の接着が可能となる。
【0046】
また、例えば、最初から粘性係数の高い接着剤を用いる場合は、接着剤を半硬化状態にすることは不要であり、塗布後直ちに、第2のマスクによって接着剤を平坦化してもよい。また、より粘性係数の高い接着剤を用いる場合には、第1のマスクによって接着剤を塗布する際に同時にスキージで馴らすだけでも十分である。
【0047】
さらに、本発明は、IC同士を接着するハイブリッドIC(スタックドIC)の製造にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の接着方法を示すフロー図である。
【図2】ウエハの平面図である。
【図3】基台に搭載された補強板、および第2のマスクの斜視図である。
【図4】図3に示す補強板、および第2のマスクの部分拡大図である。
【図5】接着剤を塗布する手順を示すステップ図である。
【図6】接着剤を平坦化する手順を示すステップ図である。
【図7】基台に搭載された補強板、および第1のマスクの斜視図である。
【図8】図7に示す補強板、および第1のマスクの部分拡大図である。
【図9】接着剤を平坦化するステップにおける、第1のネットと接着剤との関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
11 基台
12 第2のマスク
13 第2の開口
14 第2のネット
15 スキージ
17 第1のマスク
18 第1の開口
19 第1のネット
C チップ本体
W ウエハ
H 補強板
H1 接着面
S 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接着物が接着される接着面を有する平板を、該接着面を上面として配置するステップと、
配置された前記平板の前記各接着面に接着剤を塗布する塗布ステップと、
塗布された前記接着剤の粘性係数を増加させる半硬化ステップと、
粘性係数の増加した前記接着剤の表面の少なくとも一部を除去して、表面を平坦化する平坦化ステップと、
前記接着剤の平坦化された表面に前記被接着物を密着させるステップと、
その後に、前記接着剤を硬化させるステップとを有し、
前記平坦化ステップは、
第1の開口を有する第1のマスクであって、該第1のマスクの上面と略同一面に設けられた第1のネットによって該第1の開口が覆われている第1のマスクを、該第1の開口が前記接着面の上方となる位置で、前記第1のネットの少なくとも一部が前記接着剤の内部に食い込む高さで、前記平板に取り付け、前記接着剤の少なくとも一部を該第1のネットの上に露出させるステップと、
スキージを前記第1のネットの面上を滑らせて、前記第1のネットの上方に露出させられた前記接着剤を除去するステップと
を有する、接着剤を用いた接着方法。
【請求項2】
前記塗布ステップは、
第2の開口を有する第2のマスクを、該開口が前記接着面の上方となる位置で、前記平板に取り付けるステップと、
前記第2のマスクの上に前記接着剤を供給するステップと、
スキージを前記第2のマスクの面上を滑らせて、前記接着剤を前記第2の開口から前記接着面に移動させて、該接着面に該接着剤を塗布するステップと
を有する、請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記平板は複数個配列され、
前記第1のマスクの前記第1の開口、および前記第2のマスクの前記第2の開口は、前記各平板に対応する位置に設けられる、
請求項2に記載の接着方法。
【請求項4】
前記接着剤としてエポキシ樹脂を用い、
前記半硬化ステップは、前記粘性係数を少なくとも30000mPa・s以上まで増加させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接着方法。
【請求項5】
前記接着剤として紫外線硬化樹脂を用い、
前記半硬化ステップは、紫外線を照射して、前記粘性係数を少なくとも30000mPa・s以上まで増加させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接着方法。
【請求項6】
前記第1のネットの粗さは100〜600の範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の接着方法。
【請求項7】
チップ本体の一面が補強板に接着されて構成されるICチップの製造方法であって、
複数の前記チップ本体を製造するステップと、
複数の前記補強板を製造するステップと、
前記複数の補強板を、該補強板の接着面を上面にして基台に固定するステップと、
前記チップ本体を前記被接着物として、前記補強板を前記平板として、請求項1から6のいずれか1項に記載の接着方法を用いて、前記チップ本体を前記補強板に接着するステップとを有する、
ICチップの製造方法。
【請求項8】
前記ICチップの厚さは75μm以下であり、
前記接着剤の前記平坦化ステップ後の厚さは50μm以下である、
請求項7に記載のICチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−165458(P2006−165458A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358227(P2004−358227)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】