説明

薄膜形成装置

【課題】均一性に優れた高品質な薄膜が形成可能な、酸化物薄膜原料を含んだ水溶液の霧化による薄膜形成用の量産装置を提供する。
【解決手段】基板が成長室6の上側に固定して設置され、その下側に設置された貫通孔プレート4とそのさらに下側に設置された整流羽根5の両者が回転することにより、基板に対して均一にミスト7を供給することが可能となる。また、回転部分である貫通孔プレート4と整流羽根5の両者が一体で、これが固定されている基板2に対して回転する。これにより、両者を一体で製作するため部品数が少なくなり、かつ回転部分を一箇所のみにすることができるため、装置構造を簡略化することができる。また、基板回転を行わないため、基板加熱機構(ヒータ)1も簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物薄膜の形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化物薄膜は、太陽電池やディスプレイの透明導電膜としてスズ添加酸化インジウム(ITO)等が使用されている。また、照明用光源材料である窒化ガリウムに次ぐ発光材料として酸化亜鉛も注目されている。通常、これら酸化物薄膜は、スパッタなど真空を用いた装置により形成される。今後、低コスト化の要求に応じるため、真空を用いない薄膜形成装置の開発が必要である。酸化物薄膜原料を含んだ水溶液の霧化による薄膜形成は既に30年程前から研究開発されているが、量産装置としてはほとんど実用化されていない。この一つの要因としては、均一性に優れた高品質な薄膜が形成困難であることが理由と思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は均一性に優れた薄膜が形成できる装置を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の図である。
【0005】
通常の薄膜形成装置では、基板2が成長室6内の下側に設置されるが、基板温度が高温の場合、ミスト7を含んだ気体が対流により上昇し、基板2への付着確率が減少すると共に、基板上における流れが乱れる。そこで、本発明では基板が成長室6の上側に固定して設置され、その下側に設置された貫通孔プレート4とそのさらに下側に設置された整流羽根5の両者が回転することにより、基板に対して均一にミスト7を供給することが可能となる。また、本発明では基板2が上側に設置されるため、ミスト7が結露して液垂れを起こしても基板上に垂れることが無い。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、回転部分である貫通孔プレート4と整流羽根5の両者が一体で、これが固定されている基板2に対して回転する。これにより、両者を一体で製作するため部品数が少なくなり、かつ回転部分を一箇所のみにすることができるため、装置構造を簡略化することができる。また、基板回転を行わないため、基板加熱機構(ヒータ)1も簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
回転部分である貫通孔プレート4と基板2の間隔は、10mm以下の狭い間隔とする。また、好ましくは5mm以下、さらに最適寸法としては2mm以下である。この狭い間隔であることのメリットは、ミスト7が基板の熱で爆発的に気化する際、その気化した圧力を基板側に加え、薄膜の原料を十分に基板2に供給できる点である。例えば、酸化物薄膜を形成する際、酸素欠陥を削減するためには、十分な酸素供給が必要であり、この狭い間隔が有効に機能する。
【0009】
上記のようなミストを用いた薄膜形成装置を製作する際、ミストとして酸やアルカリを用いる場合が多く、材料の腐食を避けるため、貫通孔プレート4と整流羽根5を石英ガラスまたは金属母材上に耐酸性コーティングした材料により形成する。また、耐酸性コーティングの一例としては、ほとんどの酸に耐性を有する酸化スズが挙げられる。
【0010】
成長室内においてはミスト7の結露が生じるため、この液体を抜き取る孔14、および液体が成長室下部の例えばモータに垂れるのを防止する傘13を設置することが必要となる。
【0011】
薄膜形成中に膜厚を測定するため、上側に設置した基板2のさらに上側から光ファイバーまたは直接光を導き基板に照射し、その反射光または透過光を検出することにより、膜厚を検出することができる。
【符号の説明】
【0012】
1…ヒータ
2…基板
3…基板ホルダ
4…貫通孔プレート
5…整流羽根
6…成長室
7…ミスト
8…キャリアガス導入管
9…原料溶液
10…超音波振動子
11…カップリング
12…モータ
13…液垂れ防止傘
14…液抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が上側に固定して設置され、その下側に設置された貫通孔プレートとそのさらに下側に設置された整流羽根の両者が回転する構造を備えたミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項2】
回転部分である貫通孔プレートおよび整流羽根が一体であり、これが固定されている基板に対して回転する構造を備えたミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項3】
回転部分である貫通孔プレートおよび整流羽根と基板の間隔が10mm以下の間隔であることを特徴とするミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項4】
上記請求項において、貫通孔プレートおよび整流羽根を石英ガラスまたは金属母材上に耐酸性コーティングした材料により形成することを特徴とするミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項5】
上記請求項4において、貫通孔プレートおよび整流羽根を金属母材上に酸化スズで耐酸性コーティングした材料により形成することを特徴とするミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項6】
上記請求項において、成長室内におけるミストの結露による液体を抜き取る孔、および液体が成長室下部に垂れるのを防止する傘を設置することを特徴とするミストを用いた薄膜形成装置。

【請求項7】
光を用いて薄膜形成中に膜厚を測定することを特徴とするミストを用いた薄膜形成装置。




【図1】
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【公開番号】特開2012−243988(P2012−243988A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113547(P2011−113547)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(508305270)
【Fターム(参考)】