説明

薬液供給システム

【課題】 薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする。
【解決手段】 内部に薬液を収容して密閉可能とされた薬液タンク10と、この薬液タンク10に薬液供給パイプ7で接続され外部からの高圧気体の送気により内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンク10からの薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズル11と、上記薬液供給パイプ7に対しノズル11が接続された部位の近傍から分岐されて上記薬液タンク10の上面に接続されその内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段12と、上記薬液タンク10内に形成される負圧空間Sに対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段13とを備え、上記正圧供給手段13により薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズル11への薬液の供給流量を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体基板、ディスプレイ基板、ガラス、その他の工業用の膜形成対象物等に対し各種処理の薬液を塗布する際の薬液供給システムに関し、詳しくは、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする薬液供給システムに係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体装置、液晶表示装置などの製造工程において、半導体基板やディスプレイ基板などに薄膜を塗布するには、図7に示すように、例えばウェハ1を水平支持して高速回転させ、その上方から該ウェハ1の中心孔2寄りの位置に薬液3を滴下する薬液供給システムが用いられている。そして、上記高速回転するウェハ1上に滴下された薬液3に働く遠心力の作用により、該薬液3をウェハ1の表面上で放射状に伸ばして、該ウェハ1の表面全体に薄膜を塗布していた。
【0003】また他の例として、半導体基板やディスプレイ基板などにスプレーコーティングにより薬液を塗布する場合は、図8に示すように、内部に薬液5を収容した薬液タンク6と、この薬液タンク6に接続された薬液供給パイプ7と、この薬液供給パイプ7に接続され上記薬液タンク6から薬液5を供給されて吐出するノズル8とを有する薬液供給システムが用いられている。なお、上記薬液供給パイプ7の途中には、ノズル8への薬液5の供給流量を制御するための例えばニードルバルブ等の流量調整バルブ9が設けられている。そして、上記薬液タンク6内の薬液5を加圧したり、図示省略のポンプで圧送して、流量調整バルブ9で薬液供給の流量を制御してノズル8から薬液5を吐出して塗布していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図7に示す従来例では、ウェハ1上に滴下する薬液3の量があまり少なくては拡散せず、例えば10ml/min以上の量を滴下することとなる。そして、この場合、薬液3は高速回転するウェハ1により遠心力で外周方向へ拡散されて、一部はウェハ1の表面に塗布されるが、他の部分は該ウェハ1の外側に捨てられるものであった。このように、薬液3を滴下する量が多いことと、該薬液3がウェハ1の外側に捨てられる量が多いことから、薬液塗布の効率が低下すると共に、薬液が無駄に消費され非経済的であった。また、ウェハ1の外側に捨てられる薬液3によってその周辺が汚染されることがあった。
【0005】また、図8に示す従来例では、ノズル8に供給する薬液5の流量制御を、薬液供給パイプ7の途中に設けられたニードルバルブ等の流量調整バルブ9で行っていたので、このような流量調整バルブ9では例えば1ml/min程度或いはそれ以下のレベルでの流量制御はできないものであった。したがって、例えば1ml/min以下の流量制御により薬液5を供給して、対象物に対して薄膜を均一に塗布することが難しかった。また、薬液タンク6内の薬液5にゴミやカーボン等の異物が混入していると、ノズル8への供給途中で上記流量調整バルブ9のところで詰まりが発生して、ノズル8へ薬液5を供給できない状態となることがあった。したがって、薬液塗布の工程がスムーズに進まないことがあった。
【0006】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする薬液供給システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による薬液供給システムは、内部に薬液を収容して密閉可能とされた薬液タンクと、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続され外部からの高圧気体の送気により内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンクからの薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズルと、上記薬液供給パイプに対しノズルが接続された部位の近傍から分岐されて上記薬液タンクの上面に接続されその内部空間の空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段と、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段とを備え、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御するものである。
【0008】このような構成により、密閉可能とされた薬液タンクで内部に薬液を収容しておき、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続されたノズルに外部から高圧気体を送気し内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンクからの薬液を負圧吸引して該ノズルで薬液を噴射し、上記薬液供給パイプに対しノズルが接続された部位の近傍から分岐されて上記薬液タンクの上面に接続された空気吸引手段で内部空間の空気を吸引して負圧を発生させ、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し正圧供給手段で任意圧力の正圧ガスを供給し、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御する。これにより、薬液タンク内の圧力とノズルに発生する負圧との差により薬液供給の微少流量制御を可能とする。また、真空ポンプ等を用いずに薬液タンクの内部空間を負圧とすることができ、システム全体の構成を簡略化できる。
【0009】また、上記正圧供給手段と薬液タンクとの間には、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたものである。これにより、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整する。
【0010】さらに、上記圧力制御手段は、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いてもよい。これにより、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンクに供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整する。
【0011】さらにまた、上記正圧供給手段には、大気又は不活性ガスを供給するものである。特に、不活性ガスを供給した場合は、薬液タンク内の薬液に影響を与えず安定に保つことができる。
【0012】また、上記高圧気体の送気により内部に負圧が発生するノズルを、該ノズルに接続された配管系に対する真空吸引手段として用いてもよい。これにより、各配管系に別個に真空ポンプ等を設けなくてもよい。
【0013】さらに、上記薬液タンクと、ノズルと、それらを接続する配管系と、開閉バルブとを、一つの部材として一体型に形成してもよい。これにより、薬液タンク及びノズル等をコンパクトに形成できると共に、システム構成の全体を小型化し、システム構成が容易にできる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による薬液供給システムの実施の形態を示すシステム概要図である。この薬液供給システムは、例えば半導体基板、ディスプレイ基板、ガラス、その他の工業用の膜形成対象物等に対し各種処理の薬液を塗布する際に薬液を供給するもので、薬液タンク10と、ノズル11と、空気吸引手段12と、正圧供給手段13とを備えている。
【0015】上記薬液タンク10は、工業用の膜形成対象物等に塗布する各種の薬液5を内部に収容しておくもので、所定の大きさの容器状に形成され、上面に蓋をして密閉可能とされている。そして、薬液タンク10内には負圧空間が形成されるようになっている。なお、薬液タンク10の上面には、該薬液タンク10内に薬液5を供給するためのパイプライン14が接続されている。また、符号V1は上記パイプライン14の途中に設けられた開閉バルブを示している。
【0016】上記薬液タンク10の例えば底面には薬液供給パイプ7が接続され、この薬液供給パイプ7の先端にノズル11が接続されている。なお、上記薬液供給パイプ7の途中には、ノズル11への供給路を開閉する開閉バルブV2が設けられている。上記ノズル11は、外部からの高圧気体の送気により内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンク10からの薬液5を負圧吸引して該薬液5を噴射するもので、該ノズル11の側面部に上記薬液供給パイプ7の先端が接続され、ノズル11の軸心部に高圧気体供給パイプ17が接続されている。なお、符号18は上記高圧気体供給パイプ17の後端に設けられたコンプレッサを示している。
【0017】図2及び図3は、上記ノズル11の具体的な構造の一例を示す断面図である。図2は上記薬液供給パイプ7が接続される面を含む縦断面図であり、図3は図2の断面と直交する縦断面図である。図2において、ノズル11の側面部には薬液送入口19が形成され、この薬液送入口19に上記薬液供給パイプ7の先端が接続される。また、ノズル11の軸心部の後端には高圧気体送入口20が形成され、この高圧気体送入口20に上記高圧気体供給パイプ17の先端が接続される。
【0018】この状態で、図1に示すコンプレッサ18の運転により高圧気体供給パイプ17を介して送られた高圧気体は、図2に示す高圧気体送入口20からノズル11内の軸心部に流入し、小口径の一次気体噴出口21を通って高速噴射し内部混合室22に入る。このとき、図1に示す薬液供給パイプ7が接続された薬液送入口19の位置にベンチュリ管の原理により負圧を生じ、上記薬液供給パイプ7からの薬液5を内部混合室22内に吸引する。上記一次気体噴出口21から噴出する高速気体は、薬液送入口19より吸引する薬液5を破砕し、広くなった内部混合室22の中で薬液5と混合され、流速を落としてノズル先端の噴出口23から噴射される。
【0019】一方、図3に示すように、上記高圧気体送入口20からノズル11内に流入した高圧気体は、ノズル11内の軸心部の外側に形成された二次気体通路24を通って、ノズル11の先端部にスパイラル状に形成された二次気体噴出溝25に至り、高速な旋回流となって噴射される。このとき、上記噴出口23から噴射される薬液5を二次混合しながら破砕微粒化して前方に噴射する。なお、図2及び図3では、旋回流を発生して噴射するノズル11の例を示したが、本発明はこれに限られず、旋回流を発生しない通常のノズルであってもよい。
【0020】上記薬液供給パイプ7と薬液タンク10の上面との間には、図1に示すように、空気吸引手段12が接続されている。この空気吸引手段12は、上記薬液供給パイプ7に対しノズル11が接続された部位の近傍から分岐されて薬液タンク10の上面に接続されその内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させるもので、上記ノズル11内に発生した負圧を薬液タンク10の内部に連通するフィードバックラインから成る。なお、この空気吸引手段12としてのフィードバックラインの基端部は、上記薬液供給パイプ7上にて開閉バルブV2とノズル11との間に接続されている。また、このフィードバックライン12上にてその基端部の近傍には、薬液タンク10の内部への連通路を開閉する開閉バルブV3が設けられている。
【0021】また、上記薬液タンク10の例えば上面には、正圧供給手段13が接続されている。この正圧供給手段13は、上記薬液タンク10内に形成される負圧空間Sに対し任意圧力の正圧ガスを供給するもので、基端部に1〜2気圧の不活性ガス、例えば窒素ガス(N2)を供給する窒素ガスボンベなどが接続されたパイプラインから成る。そして、上記正圧供給手段13と薬液タンク10との間には、圧力コントローラ28が設けられている。この圧力コントローラ28は、薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段となるもので、上記窒素ガスボンベから供給される窒素ガスの圧力を制御するようになっている。なお、上記正圧供給手段13としてのパイプラインの途中には、薬液タンク10への正圧供給路を開閉する開閉バルブV4が設けられている。
【0022】そして、上記正圧供給手段13により薬液タンク10に正圧ガスを供給し、圧力コントローラ28により正圧ガスの圧力を調整することによって、上記ノズル11への薬液の供給流量を制御するようになっている。
【0023】次に、このように構成された薬液供給システムの動作について説明する。まず、図1において、薬液タンク10の底面に接続された薬液供給パイプ7の途中の開閉バルブV2を閉じると共に、パイプライン14の途中の開閉バルブV1を開いて薬液タンク10内に薬液5を所定量だけ供給する。その後、上記開閉バルブV1を閉じると共に、正圧供給手段13の途中の開閉バルブV4を閉じて、上記薬液タンク10内を密閉状態とする。
【0024】この状態で、薬液供給パイプ7から分岐したフィードバックライン12の開閉バルブV3を開けて、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、図2を参照して説明したようにノズル11内の薬液送入口19の位置に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して、この負圧が上記フィードバックライン12を介して薬液タンク10の内部空間Sに連通され、該内部空間Sの空気を吸引する。この空気吸引により、上記薬液タンク10の内部空間Sが負圧P2(例えば0.1〜0.4気圧)とされる。この状態で、上記フィードバックライン12の開閉バルブV3を閉じる。
【0025】次に、上記開閉バルブV2を開くと共に、図1に示すコンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル11内の薬液送入口19の位置に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して薬液供給パイプ7からの薬液5を吸引しようとする。このとき、薬液タンク10の内部空間Sは上述のように負圧とされているので、ノズル11内に発生する負圧(P1)と、上記内部空間Sの負圧(P2)とが等しくなるように調整する。ここで、開閉バルブV2よりも下流側の薬液供給パイプ7に圧力P1を計測する圧力計を取り付け、薬液タンク10の内部空間Sの圧力P2を計測する圧力計を取り付けてもよい。
【0026】この状態では、P1=P2となって薬液5は流れず、薬液供給パイプ7内で薬液5が安定して停止する。そして、この状態をもって薬液供給の初期状態とし、ここから薬液供給の工程がスタートする。なお、このとき、薬液5は図2に示すノズル11内の薬液送入口19の付近で停止することとなるので、ノズル11へ至る経路が乾くことがない。したがって、その後において、上記ノズル11から薬液5をすぐに噴射することができる。
【0027】次に、ノズル11の噴出口23を薬液5の塗布対象物に向けてセットし、上記と同様にコンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。しかし、この状態ではP1=P2であるので、薬液5はノズル11から噴射されない。そこで、図1に示す正圧供給手段13の途中の開閉バルブV4を開き、圧力コントローラ28を適宜調整して、薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を調整する。すると、上記薬液タンク10内の圧力が変化して圧力P2が大きくなって、P2とP1との差が生じてこの差圧により薬液タンク10からノズル11に薬液5が供給される。これにより、上記ノズル11から薬液5が噴射される。
【0028】このとき、上記圧力コントローラ28による圧力調整を細かく行うことにより、圧力P2とP1との差を微細に調整して、ノズル11への薬液5の供給流量を微少に制御することができる。例えば、従来は不可能であった1ml/min程度或いはそれ以下のレベル(例えば0.1~0.9ml/min程度)での流量制御が可能となる。また、ノズル11へ至る薬液供給パイプ7の途中には従来のようなニードルバルブ等の流量調整バルブが設けられていないので、この部分に異物が詰まることはなく、スムーズに薬液5がノズル11に供給される。さらに、薬液5が粘度の高いものであっても、ノズル11の負圧及び圧力P2とP1との差圧により薬液5が供給される。
【0029】なお、図1においては、正圧供給手段13の圧力制御手段として圧力コントローラ28を設けたものとしたが、本発明はこれに限られず、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラ(MFC)を用いてもよい。この場合は、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンク10に供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、該薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。また、上記正圧供給手段13に窒素ガスを供給する代わりに、大気を供給してもよい。
【0030】図4は、図1に示す実施形態による薬液供給システムの具体的な実施例を示す構成図である。この実施例では、薬液タンク10に薬液供給タンク31と第1の洗浄液タンク32aとを接続し、上記薬液タンク10内に薬液を供給したり、洗浄液を供給するようになっている。また、薬液供給パイプ7に第2の洗浄液タンク32bを接続し、上記ノズル11に洗浄液を供給するようになっている。
【0031】上記薬液供給タンク31には薬液吸上げパイプ33が挿入され、開閉バルブV1を介して薬液タンク10内に薬液5を供給するためのパイプライン14に接続されている。また、上記第1の洗浄液タンク32aには洗浄液吸上げパイプ35が挿入され、開閉バルブV5を介して上記パイプライン14に接続されている。さらに、上記第2の洗浄液タンク32bには洗浄液吸上げパイプ36が挿入され、開閉バルブV6を介してノズル11に洗浄液を供給するための他のパイプライン38に接続されている。
【0032】そして、上記薬液供給タンク31の上面には、薬液補充パイプ37が接続され、この薬液補充パイプ37の薬液補充口の手前には開閉バルブV7が設けられている。また、上記第1の洗浄液タンク32aの上面には、洗浄液補充パイプ39が接続され、この洗浄液補充パイプ39の洗浄液補充口の手前には開閉バルブV8が設けられている。さらに、上記第2の洗浄液タンク32bの上面には、他の洗浄液補充パイプ40が接続され、この洗浄液補充パイプ40の洗浄液補充口の手前には開閉バルブV9が設けられている。
【0033】このような構成で、薬液タンク10に薬液を供給するには、まず、洗浄液吸上げパイプ35の開閉バルブV5を閉じると共に、薬液吸上げパイプ33の開閉バルブV1を開き、正圧供給手段13の途中の開閉バルブV4を閉じ、且つ薬液タンク10の薬液供給パイプ7の開閉バルブV2を閉じておく。次に、フィードバックライン12の開閉バルブV3を開け、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル11内に負圧が発生して、この負圧が上記フィードバックライン12を介して薬液タンク10の内部空間Sに連通し、その内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる。これにより、上記内部空間Sの負圧によって薬液供給タンク31から薬液を吸い上げ、パイプライン14を介して薬液が薬液タンク10内に供給される。その後、上記開閉バルブV1を閉じて薬液の供給を終了する。このとき、上記薬液タンク10の内部空間Sは負圧に保たれる。
【0034】このように薬液が供給されたところで、上記薬液供給パイプ7の開閉バルブV2を開くと共に、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送ることにより、図1を参照して説明したと同様に動作してノズル11から薬液が噴射される。
【0035】次に、所定の薬液の塗布を終了して薬液タンク10及び薬液供給パイプ7等を洗浄するときは、上記薬液タンク10から薬液を排出して、該薬液タンク10に第1の洗浄液タンク32aから洗浄液を供給する。まず、薬液吸上げパイプ33の開閉バルブV1を閉じると共に、洗浄液吸上げパイプ35の開閉バルブV5を開き、薬液タンク10の薬液供給パイプ7の開閉バルブV2を閉じておく。次に、フィードバックライン12の開閉バルブV3を開け、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル11内に負圧が発生して、この負圧が上記フィードバックライン12を介して薬液タンク10の内部空間Sに連通し、その内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる。これにより、上記内部空間Sの負圧によって第1の洗浄液タンク32aから洗浄液を吸い上げ、パイプライン14を介して洗浄液が薬液タンク10内に供給される。
【0036】このようにして、洗浄液が薬液タンク10内に満杯になった状態で、引き続きノズル11へ高圧気体を送って該ノズル11内に負圧を発生させると、洗浄液は薬液タンク10から上記フィードバックライン12を通って吸引され、上記ノズル11から外部へ排出される。これにより、洗浄液を薬液タンク10及びフィードバックライン12並びにノズル11内に流して洗浄することができる。その後、ノズル11への高圧気体の送気を停止してフィードバックライン12による吸引を停止し、洗浄を終了する。
【0037】さらに、薬液タンク10内に薬液が入っている状態でノズル11のみを洗浄するには、該ノズル11に第2の洗浄液タンク32bから洗浄液を供給する。まず、洗浄液吸上げパイプ36の開閉バルブV6を開き、薬液タンク10の薬液供給パイプ7の開閉バルブV2を閉じると共に、フィードバックライン12の開閉バルブV3を閉じておく。そして、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル11内に負圧が発生して、この負圧がパイプライン38を介して第2の洗浄液タンク32b内に連通する。これにより、上記第2の洗浄液タンク32bから洗浄液を吸い上げ、パイプライン38を介して洗浄液がノズル11に供給され、外部へ排出される。この結果、洗浄液をノズル11内に流して、該ノズル11のみを洗浄することができる。その後、ノズル11への高圧気体の送気を停止して、洗浄を終了する。
【0038】図4に示すシステム構成においては、上記コンプレッサ18からの高圧気体の送気により内部に負圧が発生するノズル11を、該ノズル11に接続された各種配管系に対する真空吸引手段として用いることができる。したがって、それぞれの配管系に別個に真空ポンプ等を設けなくてもよく、システム構成を簡略化できると共に、コスト低下を図ることができる。
【0039】図5及び図6は、図4に示すシステム構成において用いる薬液タンク10やノズル11等の具体的な形状、構造を示す正面断面図及び左側断面図である。この例では、上記薬液タンク10と、ノズル11と、それらを接続する配管系と、開閉バルブV1〜V6とを、一つの部材として一体型に形成したものである。例えば、鉄やアルミニウム等の金属でできた直方体状のブロック部材を削り込んで、内部に薬液タンク10となる孔部が穿設され、この薬液タンク10からノズル11まで延びる薬液供給パイプ7となる配管が形成され、また、上記薬液タンク10から開閉バルブV3を介して薬液供給パイプ7までつながるフィードバックライン12となる配管が形成されている。
【0040】そして、このような削り込みをしたブロック部材に対して、その底面部に継手を介してノズル11が薬液供給パイプ7につながるように接続され、該ブロック部材の側面部には上記薬液供給パイプ7やフィードバックライン12等につながるように各開閉バルブV1〜V6が接続されている。なお、図6において、符号41a,41bは、薬液タンク10内に収容される薬液5の量を計測する透明パイプから成る液面計を取り付ける接続口部である。
【0041】このような状態で、図1又は図4に示す薬液タンク10及びノズル11並びにそれらを接続する配管系、開閉バルブV1〜V6等が一体型に形成される。したがって、薬液タンク10及びノズル11等をコンパクトに形成できると共に、システム構成の全体を小型化し、システム構成が容易にできる。また、コスト低下を図ることができる。
【0042】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、密閉可能とされた薬液タンクで内部に薬液を収容しておき、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続されたノズルに外部から高圧気体を送気し内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンクからの薬液を負圧吸引して該ノズルで薬液を噴射し、上記薬液供給パイプに対しノズルが接続された部位の近傍から分岐されて上記薬液タンクの上面に接続された空気吸引手段で内部空間の空気を吸引して負圧を発生させ、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し正圧供給手段で任意圧力の正圧ガスを供給し、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御することができる。これにより、薬液タンク内の圧力とノズルに発生する負圧との差により薬液供給を微少流量で制御することができる。したがって、対象物に対して薬液を均一に塗布することができる。また、薬液の使用量を低減して、薬液塗布の効率を向上できると共に、経済性を改善することができる。さらに、真空ポンプ等を用いずに薬液タンクの内部空間を負圧とすることができ、システム全体の構成を簡略化することができる。
【0043】また、請求項2に係る発明によれば、上記正圧供給手段と薬液タンクとの間に、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたことにより、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。したがって、薬液タンク内の圧力調整により、上記ノズルへの薬液供給を微少流量で制御することができる。
【0044】さらに、請求項3に係る発明によれば、上記圧力制御手段として、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いることにより、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンクに供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。したがって、薬液タンク内の圧力を容易かつ安定に調整して、上記ノズルへの薬液供給を微少流量で制御することができる。
【0045】さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上記正圧供給手段に、大気又は不活性ガスを供給するものとしたことにより、特に、不活性ガスを供給した場合は、薬液タンク内の薬液に影響を与えず安定に保つことができる。
【0046】また、請求項5に係る発明によれば、上記高圧気体の送気により内部に負圧が発生するノズルを、該ノズルに接続された配管系に対する真空吸引手段として用いることにより、各配管系に別個に真空ポンプ等を設けなくてもよい。したがって、システム構成を簡略化できると共に、コスト低下を図ることができる。
【0047】さらに、請求項6に係る発明によれば、上記薬液タンクと、ノズルと、それらを接続する配管系と、開閉バルブとを、一つの部材として一体型に形成することにより、薬液タンク及びノズル等をコンパクトに形成できると共に、システム構成の全体を小型化し、システム構成が容易にできる。また、コスト低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による薬液供給システムの実施の形態を示すシステム概要図である。
【図2】 上記薬液供給システムに用いるノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図3】 図2に示す断面と直交する断面における上記ノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図4】 図1に示す実施形態による薬液供給システムの具体的な実施例を示す構成図である。
【図5】 図4に示すシステム構成において用いる薬液タンクやノズル等の具体的な形状、構造を示す正面断面図である。
【図6】 図5の左側断面図である。
【図7】 従来技術において半導体基板やディスプレイ基板などに薄膜を塗布する状態を示す説明図である。
【図8】 従来技術において対象基板などにスプレーコーティングにより薬液を塗布する場合の薬液供給システムを示すシステム概要図である。
【符号の説明】
5…薬液
7…薬液供給パイプ
10…薬液タンク
11…ノズル
12…空気吸引手段
13…正圧供給手段
V1〜V9…開閉バルブ
17…高圧気体供給パイプ
18…コンプレッサ
28…圧力コントローラ
31…薬液供給タンク
32a,32b…洗浄液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に薬液を収容して密閉可能とされた薬液タンクと、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続され外部からの高圧気体の送気により内部に発生する負圧を利用して上記薬液タンクからの薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズルと、上記薬液供給パイプに対しノズルが接続された部位の近傍から分岐されて上記薬液タンクの上面に接続されその内部空間の空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段と、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段とを備え、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御することを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】上記正圧供給手段と薬液タンクとの間には、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の薬液供給システム。
【請求項3】上記圧力制御手段は、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いることを特徴とする請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項4】上記正圧供給手段には、大気又は不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬液供給システム。
【請求項5】上記高圧気体の送気により内部に負圧が発生するノズルを、該ノズルに接続された配管系に対する真空吸引手段として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬液供給システム。
【請求項6】上記薬液タンクと、ノズルと、それらを接続する配管系と、開閉バルブとを、一つの部材として一体型に形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2003−320280(P2003−320280A)
【公開日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−128893(P2002−128893)
【出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【出願人】(501423816)株式会社エヌシーエス (7)
【Fターム(参考)】