説明

薬草消毒剤組成物および該組成物の製法と使用

【課題】床のような表面を洗浄するための洗浄組成物及び消毒剤を提供する。
【解決手段】床のような表面を洗浄するための透明で清澄な均質組成物であって、下記の組成を有する該組成物:(a)ミドリハッカのビリジス変種植物の精油:0.01〜0.05%、(b)シトロネラ油:0.005〜0.05%、(c)2−エトキシエタノール:0.05〜1.0%、(d)塩化ベンザルコニウム:0.05〜5.0%、(e)水酸化ナトリウム:0.0001〜0.2Nおよび(f)ラウリル硫酸ナトリウム:0.001〜1.0%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚の洗浄および床等の表面の洗浄のための消毒剤組成物(disinfectant composition)に関する。該組成物は均質で清澄であり、消毒剤として有用である。本発明は洗浄組成物の製造法も提供する。本発明による組成物は植物から単離される精油(essential oil)を含有する。この種の組成物は、配合成分を明確に規定された特定の順序で混合することによって、病原性のバクテリアと真菌に対して有効な透明で清澄な溶液を得ることにより製造される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、非毒性で、生物学的に安全であり、しかも快い香りを放つ消毒剤の開発に関連する。市販されている既存の消毒剤は有害な薬品、例えば、ホルムアルデヒド、エタンジアルデヒド、n−プロパノール、塩化ベンザルコニウムおよびフェノール等を含有している。
【0003】
植物源から単離される精油が抗微生物性を有することは知られている。しかしながら、これらを病院、研究室、オフィスおよび住宅において消毒剤として使用するときには、種々の問題、例えば、水のような一般的な溶液中に均一に分散しない等の問題をもたらす。従って、このような問題を除去するような組成物は最も望ましく、該組成物が本発明の目的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主要な課題は、皮膚を洗浄するための消毒剤組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、表面洗浄用組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、表面洗浄用組成物の製法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は皮膚洗浄用組成物の製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は清澄な均質消毒剤組成物、例えば、手や表面を洗浄するための組成物であって、植物から単離された精油を含有する組成物の製法に関する。このような組成物は、実験に基づいて明確に規定された特定の順序で配合成分を混合することによって、病原性のバクテリアおよび真菌に対して有効な透明で清澄な溶液を得ることにより製造される。本発明によるこの製法には、実施例に記載のようにして全ての配合成分を十分に混合する一連の特定の工程が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、非常に有効な手や表面用の消毒剤であって、種々の植物精油を用いることによって病気をもたらす広範囲の微生物を死滅させると共に、汚れや染みの完全な除去を容易にする消毒剤の製法を提供する。このような消毒剤は、試験した全ての病原性のバクテリアと真菌の菌株を推奨された濃度で死滅させることができる。該消毒剤は非腐食性であって、生物学的に安全である。
【0007】
手用消毒剤組成物は手の即座の洗浄/清浄に有効である。このような用途においては、該組成物を数滴注ぎ出し、これを手と手のひら全体にわたって30秒間十分にこするだけでよい。この種の組成物は細胞を培養する微生物学研究所や病院において使用することができる。また、この種の組成物は、あらゆる研究者や専門家に対して健全な環境をもたらし、また一般家庭や化粧室における生物学的に安全な手の洗浄を可能にする。
【0008】
表面用消毒剤は、表面、例えばキッチンのプラットホーム、キャビネット、床、セラミック製タイルおよびバスルーム等の表面において使用することができる。これらの非常に有効な表面用消毒剤組成物は商品の洗浄並びに硬質表面の洗浄、すすぎおよび殺菌等において有用である。
【0009】
例えば、本発明は手およびヒトの他の皮膚表面を洗浄するための透明で清澄な均質組成物であって、下記の組成を有する該組成物が提供される:
(a)ミドリハッカ(オランダハッカ)のビリジス変種(Mentha spicata var. viridis)植物から得られる精油:0.01〜0.05%、
(b)メントール酢酸メンチル(MMA):0.05〜0.5%、
(c)エタノール:1〜25%、
(d)イソプロパノール:5〜50%、
(e)塩化ベンザルコニウム:0.1〜0.5%および
(f)蒸留水:全容積の残部。
上記組成物を「HK」と呼び、この用語を本願において用いる。
【0010】
上記の組成物「HK」は、好ましくは下記の組成を有する:
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油:0.02%、
(b)メントール酢酸メンチル:0.10%、
(c)エタノール:5.00%、
(d)イソプロパノール:30.00%、
(e)塩化ベンザルコニウム:0.30%および
(f)蒸留水:全容積の残部。
【0011】
本願の出願人は、上記成分を一緒に混合すると相乗組成物が形成されることを究明し、さらに、驚くべきことには、該相乗組成物が消毒特性と洗浄特性を発揮することを究明した。また、本願の出願人は、上記の成分をいずれかの別の順序で混合するとき、または別の割合で混合するときには、得られる組成物は望ましい効果をもたらさないことも究明した。本発明による組成物は多数の実験と試行をおこなった後で得られたものである。
【0012】
さらに、本発明は、表面を洗浄するための透明で清澄な均質組成物であって、下記の組成を有する組成物を提供する:
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油:0.01〜0.05%、
(b)シトロネラ油:0.005〜0.05%、
(c)2−エトキシエタノール:0.05〜1.0%、
(d)塩化ベンザルコニウム:0.05〜5.0%、
(e)水酸化ナトリウム:0.0001〜0.2Nおよび
(f)ラウリル硫酸ナトリウム:0.001〜1.0%。
この組成物を「SW」と呼び、この用語を本願において使用する。
【0013】
この組成物「SW」は、好ましくは下記の組成を有する:
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油:0.02%、
(b)シトロネラ油:0.01%、
(c)2−エトキシエタノール:0.1%、
(d)塩化ベンザルコニウム:0.1%、
(e)水酸化ナトリウム:0.0005Nおよび
(f)ラウリル硫酸ナトリウム:0.0025%。
【0014】
出願人は、上記の成分を一緒に混合すると相乗組成物が形成されることを究明し、さらに、驚くべきことには、該組成物が消毒特性と洗浄特性を発揮することを究明した。また、出願人は、上記の成分をいずれかの別の順序で混合するとき、または別の割合で混合するときには、得られる組成物は望ましい効果を発揮しないことを究明した。
【0015】
上記のようにして使用するミドリハッカのビリジス変種(Mentha spicata L. var. viridis)はインドのガンジス川の岸に自生する。このハッカ植物は、吸器によって栄養的に増殖される特有の変種である。この植物は特有の繁茂する天蓋(canopy)および全ての存在するハッカ変種を越える高さを示す。この植物の最も注目すべき点は、45日間またはこれよりも長期間生育させた該植物から抽出される精油が抗昆虫性および抗微生物性を発揮することである。この植物から得られる精油の収率は0.4〜0.6%であり、この値は他の存在する変種の場合よりもはるかに高い。この精油は次の組成を有する:(i)リモネン1.50〜6.52%、(ii)カルボン0.107〜4.42%および(iii)ピペリテノン28.50〜80.45%。
【0016】
このミドリハッカのビリジス変種植物は米国特許出願第09/633066号の対象である。この植物の種子は、インド国、ラクナウにある医薬・芳香植物の中央研究所から自由に入手することができる。この研究所は政府の資金を受けて設立された機関であり、この植物の種子は研究や商業的目的のために無料で提供されている。この植物の精油も該研究所およびその他のいくつかの機関から容易に入手することができる。
【0017】
さらに、本発明は、手および表面の洗浄と消毒のための組成物であって、病原性のバクテリアおよび真菌に対して有効な組成物(「HK」)の製法を提供する。該製法は下記の工程を含む:
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油を0.01〜0.05%の濃度で供給し、
(b)メントールと酢酸メンチルの混合物を0.05〜0.5%の濃度で工程(a)の精油に添加して十分に混合し、
(c)エタノールを5〜25%の濃度で工程(b)の混合物に添加して十分に混合し、
(d)イソプロピルアルコールを5〜50%の濃度で工程(c)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、
(e)蒸留水を工程(d)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、次いで
(f)塩化ベンザルコニウムを0.1〜0.5%の濃度で工程(e)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合して消毒剤組成物を得る。
【0018】
一つの実施態様においては、ミドリハッカのビリジス変種の精油は、クレヴェンジャー(Clevenger)装置を用いる直接蒸留(hydro-distillation)によって該植物の葉から入手する。
【0019】
別の実施態様においては、メントールと酢酸メンチルとの混合物を、メントールと酢酸メンチルを40:60(w/v)の割合で混合することによって調製される。
【0020】
さらに別の実施態様においては、メントールは、ハッカ属のアルヴェンシス(Mentha arvensis)から単離される精油の−60℃における結晶化によって得られる。
【0021】
他の実施態様においては、メントールは、酢酸を用いるメントールの直接的エステル化または共沸エステル化によって得られる。
【0022】
一つの実施態様においては、組成物「HK」は、該組成物を数滴注ぎ出し、30秒間にわたって手の全体に十分にこすることによって使用に供される。
【0023】
別の実施態様においては、表面の洗浄と消毒のための組成物(「SW」)の製法は下記の工程を含む:
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油を0.01〜0.05%の濃度で供給し、
(b)シトロネロール油を0.005〜0.5%の濃度で工程(a)の精油に添加して十分に混合し、
(c)2−エトキシエタノールを0.05〜1%の濃度で工程(b)の混合物に添加してこれらの成分を十分に混合し、
(d)塩化ベンザルコニウムを0.05〜5%の濃度で工程(c)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、
(e)水酸化ナトリウムを0.0001〜0.2N%の濃度で工程(d)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、
(f)ラウリル硫酸ナトリウムを0.001〜1%の濃度で工程(e)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、次いで
(g)蒸留水を工程(f)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合して表面の洗浄消毒用組成物を得る。
【0024】
一つの実施態様においては、ミドリハッカのビリジス変種の精油は、クレヴェンジャー装置を用いる直接蒸留によって該植物の葉から入手する。
【0025】
別の実施態様においては、シトロネラ油は、一般に「シトロネラ」またはシトロネラソウ(Cymbopogon winterianus)と呼ばれている植物の葉から入手する。
【0026】
さらに別の実施態様においては、シトロネラソウからの精油は直接蒸留によって入手する。
【0027】
他の実施態様においては、表面消毒用組成物「SW」を柔軟な湿潤布片に適用し、該湿潤布片を汚染領域上に広げて5分間放置することによって効果的な消毒をおこなう。
【0028】
さらにまた別の態様においては、組成物「SW」を使用することによってキッチンのプラットホーム、セラミック製タイル、大理石、キャビネットおよびテーブル等の表面を効果的に除染して清浄化する。この組成物は1X〜100Xの範囲で使用される。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例として示す以下の実験は、抗微生物作用を発揮する表面および手や皮膚を消毒するための薬草消毒剤を配合して使用するために臨界的におこなった。
【0030】
実施例1:第1レベル混合物の調製
メントールと酢酸メンチルを40:60(w/v)の割合で混合することによって第1レベル混合物(MMA)を調製した。メントールは、一般にメントール・ミント植物と呼ばれているハッカ属のアルヴェンシスから単離された精油を−60℃で結晶化させることによって得た。L−メントールの結晶化は該精油をディープフリーザー内において−60℃までゆっくりと漸進的に冷却させることによっておこなった(タンドンら、J.Med.
Arom.Plant Sci.、1998年、第20巻、第25〜27頁)。酢酸メンチルは天然のミント油中に含まれているが、その含有量は非常に少ないので、その単離操作は困難である。従って、酢酸メンチルは、対応する酸(即ち、酢酸)を用いる直接的エステル化または共沸的エステル化によって調製したが、これによって多量の酢酸メンチルを得ることができる(S.アルクタンダー、パフューム・アンド・フレーバー・ケミカルズ、第1巻、モントクレア、ニュージャージー、No.1845〜1852;A.アーマドら、J.Essent. Oil Res.、2000年、第12巻、印刷中)。H−NMR、13C−NMR、マススペクトルおよびIRスペクトルによって該アシル誘導体の構造は確認された。
【0031】
実施例2:ミドリハッカのビリジス変種の精油とシトロネラ油の調製
ミドリハッカのビリジス変種の葉の精油(ピペリテロンオキシドに富む)を、クレヴェンジャー装置を用いる直接蒸留によって単離した。直接蒸留は既知であり、当業者によって実施することができる。シトロネラ油は、一般に「シトロネラ」(シトロネラソウ)と呼ばれている植物の葉の直接蒸留によっても得ることができる。ミドリハッカのビリジス変種の精油とシトロネラ油は使用に供するまでは冷蔵庫内に保存した。これらの精油の主要な成分は標準的な気−液クロマトフラフィー(GLC)を用いることによって分析して同定した。これらの植物原料はCIMAP(医薬・芳香植物の中央研究所:ラクナウ、インド)において栽培用の苗/種子として入手することができる。さらに、シトロネラ油は市販品としても入手することができる。ミドリハッカのビリジス変種の精油およびシトロネラソウ(シトロネラ)の精油の組成を以下に示す。
【0032】
GLCによって決定されたミドリハッカのビリジス変種の精油の組成:
精油の全収率=0.36〜0.65%、リモネン=1.50〜6.52%、カルボン=0.10〜4.42%、ピペリテノンオキシド=28.5〜77.48%
GLCによって決定されたシトロネラソウの精油の組成:
精油の全収率=0.80%、メチルヘプテノン=0.97%、リナノオール=0.57%、ジェラニオール=23.3%、エレモール=10.67%、酢酸ジェラニル=3.27%、ビサファロール=1.48%、シトロネロール=9.92%、リモネン=1.50%、シトロネラール=35.94%
【0033】
実施例3:表面用消毒剤「SW」の調製
表面用消毒剤「SW」は以下に示すようにして段階的方法によって調製した。
(A)最初に、水酸化ナトリウム(0.0005N)とラウリル硫酸ナトリウム(0.0025%)の溶液(溶液Bと呼ぶ)を調製した。
(B)1リットルの100X「SW」を調製するために、次の順序に従って全ての配合成分を混合した。
1.ミドリハッカのビリジス変種の精油20mlを1000mlのメスシリンダー内へ入れた。
2.シトロネラ油10mlを該精油に添加して混合した。
3.2−エトキシエタノール100mlを添加して適度に混合した。
4.全容積を溶液Bを用いて調整した。
5.次いで塩化ベンザルコニウム100mlを添加した。
【0034】
SWの最終的組成は次の通りである。
ミドリハッカのビリジス変種の精油:0.02%(範囲0.01〜0.05%)
シトロネラ油:0.01%(範囲0.005〜0.05%)
2−エトキシエタノール:0.1%(範囲0.05〜1.0%)
塩化ベンザルコニウム:0.1%(範囲0.05〜5.0%)
水酸化ナトリウム:0.0005N(範囲0.0001〜0.2N)
ラウリル硫酸ナトリウム:0.0025%(範囲0.001〜1.0%)
上記の配合成分を前述の順序で混合しないときには、透明で清澄な溶液は得られず、該溶液はバクテリアと真菌に対して有効ではない。
【0035】
実施例4:手と皮膚用消毒剤「HK」の調製
多くの比較的高い植物の精油中で検知される抗微生物活性に基づいて、「HK」と呼ばれる手用消毒剤が開発された。該消毒剤は、抗微生物活性を有する薬草精油、イソプロパノール、エタノール、塩化ベンザルコニウム、認可された着色剤を含有する。
【0036】
「HK」の組成と製法について以下に説明する。
1リットルの「HK」を調製するために、全ての配合成分を次の順序で混合した。
1.ミドリハッカのビリジス変種の精油0.2mlをメスシリンダー内に入れた。
2.第1レベルの混合物(MMA)1.0mlを該精油に添加して混合した。
3.エタノール50mlを添加して十分に混合した。
4.イソプロピルアルコール300mlを添加して穏やかに混合した。
5.蒸留水を用いて全容積を997mlにした。
6.塩化ベンザルコニウム3.0mlを添加した。
これらの成分を上記の順序で混合しないときには得られる溶液は透明で清澄ではなく、バクテリアや真菌に対して有効ではない。
【0037】
得られた溶液の組成は以下の通りである。
ミドリハッカのビリジス変種の精油:0.02%(範囲0.01〜0.05%)
MMA:0.10%(範囲0.05〜0.5%)
エタノール:5.00%(範囲1〜25%)
イソプロパノール:30.00%(範囲5〜50%)
塩化ベンザルコニウム:0.30%(範囲0.1〜0.5%)
蒸留水:全容積の残部
【0038】
実施例5:消毒剤の防腐特性の評価
防腐特性を評価するために、消毒剤をヒトの病原性の選別したバクテリアと真菌に対する試験に付した。
使用したバクテリアを以下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
消毒剤はそのままで使用するか、または使用の直前にジメチルスルホキシドを用いて所望の濃度に希釈して使用に供した。原液およびサンプルは暗色壜内に入れて冷蔵庫(6〜8℃)内に保存した。抗菌活性の存在を検知するために、ディスク拡散アッセイをおこなった[A.W.バウエルら、アメリカン・J.クリニカル・パソロジー、1966年、第45巻(4)、第493頁〜第496頁]。この研究において使用した微生物菌株は微生物タイプ培養コレクション(MTCC)[微生物テクノロジー研究所(チャンディガル、インド)]から入手した。全ての微生物は、−80℃の保存培養からミュラー−ヒントンブイヨン(5ml)への継代培養に付した後、所望の温度で24時間培養した。接種物として使用するために、微生物の懸濁液の濁度をマクファーラント標準(0.5)まで調整した。プレートを所望の温度で48時間培養した後、観測結果を記録した。記録された培殖抑制ゾーンが高い場合には、消毒剤の抗菌特性も良好であると評価した。得られたデータを以下の表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例6:消毒剤の抗真菌特性の評価
消毒剤の抗真菌活性試験は次の文献に従っておこなった:
バンニソムら、「レモングラス油およびレモングラス油クリームの抗真菌活性」、フィトセラピー・リサーチ、第10巻、第551頁〜第554頁、1996年。真菌の培養物はSDA上において、28℃で7日間増殖させた。各々の真菌の懸濁液は、ツイーン(Tween)80を0.1%含有する0.85%標準塩類液を用いて調製した。接種物として使用するために、真菌の濁度もマックファーラント標準(0.5)に調整した。
【0043】
2倍連続希釈法を用いることによって、所定の配合物の最小抑制希釈度(minimum inhibitory dilution; MID)を評価した。各々のアッセイにおいては、前述のようにして調製した真菌の培養物20μL[約0.7×10個の胞子または0.2×10個のコロニー形成単位(CFU)(酵母の場合)]をチューブ内の培地に添加し、該チューブの内容物を適当な培養条件下においてインキュベートした後、可視濁度によって評価した。MIDは、被験配合物の可視増殖の出現を抑制する最低希釈度として評価した。両方の消毒剤の抗真菌特性を以下の表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例7:ボランティアによる実用試験
37人のボランティアの手と手のひらを生ゴミ置場から採取した粘土で汚染させた後、1人当たり20枚の無菌培養寒天プレート上へ親指の圧痕を形成させた。この場合、該圧痕は、手用消毒剤を推奨された濃度で吸収した綿棒を用いて親指を洗浄する前と洗浄した後で形成させた。水洗後の親指の圧痕を対照とした。これらの圧痕を形成させたプレートを37℃で3日間インキュベートした。寒天プレート上の微生物の増殖量を観察し、百分率で評価した。単一のコロニー(即ち、単一の細胞)が存在するに過ぎない場合は、有効でないものとして評価した。従って、20枚のプレートのいずれにおいても微生物の増殖が観測されないボランティアの場合は、100%の殺菌効率が得られたことを示す。結果を以下の表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
表4に示すデータから明らかなように、ボランティア37人のうちの32人(86%)が、手用消毒剤を用いて処理した後は100%の殺菌効率を示すことを報告した。ボランティアの残りの14%は90%またはそれよりも高い殺菌効率を報告した。
【0048】
実施例8:表面用消毒剤「SW」の使用方法
表面用消毒剤「SW」を使用して硬質表面を効果的に除染して清浄化した。被処理表面が重度の汚染状態にあって、微生物による汚染度が非常に高いことが予想される表面(例えば、病院内や汚染の危険率の高い区域における表面)に対しては、該消毒剤を非希釈状態で使用することによって最良の結果が得られる。このような場合には、消毒剤を柔軟な湿潤布片上に適用し、該湿潤布片を汚染域に拡げて5分間放置することによって除染を効果的におこなうことができる。汚染危険率の中程度の区域に対しては、該消毒剤は水で10倍に希釈した後で使用される。希釈は一般的には水を入れたバケツ内でおこない、散布は上述のようにしておこなう。住宅やオフィスのように汚染危険率の低い区域に対しては該消毒剤は100倍に希釈した後、使用に供される。
【0049】
実施例9:手用消毒剤「HK」の使用方法
手用消毒剤「HK」は手および他の表面(例えば、清浄な層状空気流の通る表面および外科手術前の手術台等)を効果的に除染して清浄化するのに使用される。手用消毒剤「HK」を数滴注ぎ出し、30秒間にわたって手全体に十分にこすりつける。該消毒剤は全く安全で無毒性であって、細胞培養研究所における微生物学や開業外科医のために使用することができる。該消毒剤は全ての研究者や専門家に対して健全な環境を提供し、また、住宅や化粧室において生物学的に安全な洗手手段を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの手やその他の皮膚を洗浄するための透明で清澄な均質組成物であって、下記の組成を有する該組成物(この場合、ミドリハッカのビリジス変種植物から得られる精油はリモネン1.50〜6.53%、カルボン0.107〜4.42%およびピペリテノン28.50〜80.45%を含有する):
(a)ミドリハッカのビリジス変種植物から得られる精油:0.01〜0.05%、
(b)メントール酢酸メンチル:0.05〜0.5%、
(c)エタノール:1〜25%、
(d)イソプロパノール:5〜50%、
(e)塩化ベンザルコニウム:0.1〜0.5%および
(f)蒸留水:全容量の残部。
【請求項2】
下記の組成を有する請求項1記載の組成物:
(a)ミドリハッカのビリジス変種植物の精油:0.02%、
(b)メントール酢酸メンチル:0.10%、
(c)エタノール:5.00%、
(d)イソプロパノール:30.00%、
(e)塩化ベンザルコニウム:0.30%および
(f)蒸留水:全容積の残部。
【請求項3】
床のような表面を洗浄するための透明で清澄な均質組成物であって、下記の組成を有する該組成物(この場合、ミドリハッカのビリジス変種植物から得られる精油はリモネン1.50〜6.53%、カルボン0.107〜4.42%およびピペリテノン28.50〜80.45%を含有する):
(a)ミドリハッカのビリジス変種植物の精油:0.01〜0.05%、
(b)シトロネラ油:0.005〜0.05%、
(c)2−エトキシエタノール:0.05〜1.0%、
(d)塩化ベンザルコニウム:0.05〜5.0%、
(e)水酸化ナトリウム:0.0001〜0.2Nおよび
(f)ラウリル硫酸ナトリウム:0.001〜1.0%。
【請求項4】
下記の組成を有する請求項3記載の組成物:
(a)ミドリハッカのビリジス変種植物の精油:0.02%、
(b)シトロネラ油:0.01%、
(c)2−エトキシエタノール:0.1%、
(d)塩化ベンザルコニウム:0.1%、
(e)水酸化ナトリウム:0.0005Nおよび
(f)ラウリル硫酸ナトリウム:0.0025%。
【請求項5】
病原性バクテリアと真菌に対して有効な請求項1記載の手と表面の洗浄消毒用組成物の製法であって、下記の工程を含む該製法(この場合、ミドリハッカのビリジス変種植物から得られる精油はリモネン1.50〜6.53%、カルボン0.107〜4.42%およびピペリテノン28.50〜80.45%を含有する):(HK)
(a)ミドリハッカのビリジス変種の精油を0.01〜0.05%の濃度で供給し、
(b)メントールと酢酸メンチルの混合物を0.05〜0.5%の濃度で工程(a)の精油に添加して十分に混合し、
(c)エタノールを5〜25%の濃度で工程(b)の混合物に添加して十分に混合し、
(d)イソプロピルアルコールを5〜50%の濃度で工程(c)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、
(e)蒸留水を工程(d)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合し、次いで
(f)塩化ベンザルコニウムを0.1〜0.5%の濃度で工程(e)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合することによって消毒用組成物を得る。
【請求項6】
ミドリハッカのビリジス変種植物の精油を、クレヴェンジャー装置を用いる直接蒸留によって該植物の葉から入手する請求項5記載の製法。
【請求項7】
メントールと酢酸メンチルの混合物を、メントールと酢酸メンチルとを40:60(w/v)の割合で混合して調製する請求項5記載の製法。
【請求項8】
メントールをハッカ属アルヴェンシス植物から単離された精油の−60℃での結晶化によって入手する請求項6記載の製法。
【請求項9】
メントールをメントールと酢酸の直接的エステル化または共沸エステル化によって入手する請求項6記載の製法。
【請求項10】
請求項3記載の床のような表面の洗浄消毒用組成物の製法であって、下記の工程を含む該製法:
(a)ミドリハッカのビリジス変種植物の精油を0.01〜0.05%の濃度で供給し、
(b)シトロネラ油を工程(a)の精油に0.005〜0.5%の濃度で添加して両成分を十分に混合し、
(c)2−エトキシエタノールを工程(b)の混合物に0.05〜1%の濃度で添加してこれらの成分を十分に混合し、
(d)塩化ベンザルコニウムを工程(c)の混合物に0.05〜5%の濃度で添加して全混合物を十分に混合し、
(e)水酸化ナトリウムを工程(d)の混合物に0.0001〜0.2N%の濃度で添加して全混合物を十分に混合し、
(f)ラウリル硫酸ナトリウムを工程(e)の混合物に0.001〜1%の濃度で添加して全混合物を十分に混合し、次いで
(g)蒸留水を工程(f)の混合物に添加し、全混合物を十分に混合することによって該表面の洗浄消毒用組成物を得る。
【請求項11】
ミドリハッカのビリジス変種植物の精油を、クレヴェンジャー装置を用いる直接蒸留によって該植物の葉から入手する請求項10記載の製法。
【請求項12】
シトロネラ油を、一般に「シトロネラ」またはシトロネラソウと呼ばれている植物の葉から入手する請求項10記載の製法。
【請求項13】
シトロネラ油をシトロネラソウ植物の直接蒸留によって入手する請求項10記載の製法。
【請求項14】
請求項3記載の表面消毒用組成物の使用方法を柔軟な湿潤布片に適用し、該湿潤布片を汚染領域上に広げて5分間放置して効果的な消毒をおこなう請求項10記載の製法。
【請求項15】
請求項3記載の組成物を使用して効果的に洗浄に除染される表面がキッチンのプラットホーム、セラミック製タイル、大理石、キャビネットおよびテーブル等である請求項10記載の製法。
【請求項16】
請求項3記載の組成物が1X〜100Xの範囲で使用される請求項10記載の製法。
【請求項17】
請求項1記載の組成物を数滴注ぎ出し、手全体にわたって30秒間十分にすりこむ請求項5記載の製法。

【公開番号】特開2008−274292(P2008−274292A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152017(P2008−152017)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【分割の表示】特願2003−580464(P2003−580464)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【出願人】(504363717)デパートメント・オブ・バイオテクノロジー (1)
【氏名又は名称原語表記】DEPARTMENT OF BIOTECHNOLOGY
【Fターム(参考)】