説明

血小板凝集薬を用いる併用療法

本発明は、血小板凝集を阻害するため、凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患を治療するため、及び心血管疾患又は脳血管疾患のリスクを低減するため、血小板凝集阻害剤及びピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を含む医薬組成物、並びに血小板凝集阻害剤とピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患を治療するための医薬組成物及びそれらの医薬組成物の使用に関し、具体的には、本発明は、血小板凝集薬を用いる併用療法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症及び血栓性事象の病態生理学における血小板の役割はよく知られている。血小板凝集を阻害する抗血小板薬の長期間にわたる予防使用は、既にアテローム性動脈硬化症を患っている又はアテローム血栓症の病歴を有する患者を含めて、虚血性脳卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、末梢動脈疾患、血管バイパス又は血管形成術を必要とする状態及び血管死のような発症のリスクの高い患者に於いて、そのような発症を防ぐ上で有益であることが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、広く利用可能な多数の抗血小板薬があり、併用療法も今まで研究されてきたが、更に、研究が続けられている。殆どの抗血小板薬は副作用を有しており、用量を増やすほどその副作用もまた増加する。そのため、併用療法が試行されている。しかしながら、多くの併用療法は種々の理由から効果的ではない。例えば、多くの薬剤が配合禁忌であり、その他のケースでは、種々の薬剤が、(時々、不明の)作用メカニズムによる働きで、試行された併用療法の相乗効果が欠如した結果となる。
【0004】
本発明者らは、P5P(ピリドキサール−5−リン酸)及び同様に抗血栓特性を有する特定のP5P関連化合物が、全く重大な副作用を伴わない、良好に許容される薬剤であることを見出した。更に、P5P及びP5P関連化合物は、リポタンパク質及びホモシステインレベルを含め、心血管に関する多数のリスクファクターを望ましい方に調節する。以前の幾つかの開示文献で、ビタミンB6(ピロキシジン)を抗血小板薬剤と一緒に使用すると、ビタミンB6を包含することによりホモシステインレベルを低減させることが教示されている。例えば米国特許第6,323,188号では、脳卒中、原発性心臓発作及びあらゆる続発性の脳卒中又は心臓発作、の発症率及び重篤性を低減させる方法が開示されており、その方法は、アセチルサリチル酸(ASA)、ビタミンB12化合物、葉酸化合物及びビタミンB6を毎日投与することである。米国特許第6,121,249号では、アテローム性動脈硬化症、アテローム動脈硬化性中枢神経系疾患、跛行、冠動脈疾患、ホモシステイン関連障害、高血圧症、末梢血管疾患、初老期痴呆及び/又は再狭窄、の発症率及び重篤性を低減させる方法が開示されており、その方法は、ASA、ビタミンB12化合物、葉酸化合物及びビタミンB6を毎日投与することである。米国特許第6,274,170号では、アテローム動脈硬化性心血管疾患を治療するための化合物が開示されており、その化合物には、ASA、アスコルビン酸、葉酸、ビタミンE、ビタミンB6及びビタミンB12が含まれる。しかし、現在、抗血小板薬剤と一緒にピリドキサール−5’−リン酸又はピリドキサール−5’−リン酸関連化合物を用いる併用療法はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、(b)血小板凝集阻害剤、及び(c)薬学的に許容される担体、を含んでなる新規な医薬組成物を提供する。
【0006】
第二の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、哺乳動物における血小板凝集を阻害する方法を提供する。
【0007】
第三の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、心血管疾患のリスクがある哺乳動物患者を治療する方法を提供する。
【0008】
本発明の1つの態様において、前記心血管疾患は、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心臓内膜疾患、心筋疾患、心臓炎、鬱血性心不全、心内膜炎、虚血性心臓疾患、心臓弁膜症(心臓の血管における1つ又は複数の弁の機能不全)、川崎病、虚血性損傷、動脈硬化症(動脈の硬化)、深部静脈血栓症又は急性冠不全症候群である。
【0009】
第四の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、脳血管疾患のリスクがある哺乳動物患者を治療する方法を提供する。
【0010】
本発明の1つの態様においては、前記脳血管疾患は、脳虚血、脳出血、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中である。
【0011】
第五の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患を有する哺乳動物を治療する方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの態様においては、凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる前記疾患は、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固障害又は肺動脈塞栓症である。
【0013】
第六の態様において、本発明は、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を、心血管の外科的処置を受ける前又は外科的処置を受けた後に、投与することを含んでなる、心血管の外科的処置を受ける哺乳動物患者を治療する方法を提供する。
【0014】
本発明の1つの態様において、前記外科的処置は、冠動脈バイパス移植、経皮的冠動脈インターベンション又は冠動脈ステントの設置である。
【0015】
第七の態様において、本発明は、薬剤を調製するための(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物及び(b)血小板凝集阻害剤の使用を提供する。
【0016】
第八の態様において、本発明は、血小板凝集を阻害するための(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物及び(b)血小板凝集阻害剤の使用を提供する。
【0017】
第九の態様において、本発明は、心血管疾患、脳血管疾患、並びに凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患からなる群より選択される疾患状態のリスクを軽減するための、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物及び(b)血小板凝集阻害剤の使用を提供する。
【0018】
第十の態様において、本発明は、外科的処置後の血栓症を治療及び予防するための、(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物及び(b)血小板凝集阻害剤の使用を提供する。
【0019】
本発明の更なる1つの態様において、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物は、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、ピリドキシンリン酸類似体又はこれらの混合物である。
【0020】
本発明の別の態様において、血小板凝集阻害剤は、トロンボキサンA阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、アデノシン二リン酸拮抗薬、フィブリノーゲン−血小板結合阻害剤又はcAMPホスホジエステラーゼ阻害剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の詳細な説明の前に、本発明は特定の剤形、担体などに限定されるものでなく、変化しえるものと理解されたい。また、本明細書で用いる専門用語は、特定の態様を説明するだけの目的で使用され、本発明を何ら限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0022】
本明細書で記載の幾つかの化合物は、1つ又はそれ以上の不斉中心を含み、これによりエナンチオマー、ジアステレオマー、及び(R)−又は(S)−のような絶対立体化学の表現で定義することができるその他の立体異性体となる。本発明は、ジアステレオマー及びエナンチオマーとして可能なもの、更にそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態のすべてを含むものとする。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を用いて調製することができる、又は従来の技術を用いて分割されてもよい。本明細書で記載の化合物が、オレフィン性二重結合又はその他の幾何学的対称性の中心を含む場合は、特定されない限り、それらの化合物は、E幾何異性体及びA幾何異性体の両方を含むことを意味する。同様に、すべての互変異性体も含むことを意味する。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈においてはっきりと明示しない限り、複数形の指示対象を含む。従って、例えば、「活性薬剤(an active agent)」又は「薬理活性薬剤(a pharmacologically active agent)」というのは、単一の活性薬剤、更には2つ又はそれ以上の異なる活性薬剤の併用を含み、「担体(a carrier)」というのは、単一の担体、更に2つ又はそれ以上の担体の混合物などを含む。
【0024】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される塩」などの「薬学的に許容される」とは、生物学的かどうかの如何に関わらず望ましくない物質ではないもの、即ち、望ましくない生物学的作用を一切生じることなく、また、それを含む組成物のその他の何れの成分とも有害に相互作用することなく、患者に投与される医薬組成物に組み込むことができる物質を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「担体」又は「賦形剤」という用語は、薬剤を投与するのに適した、従来の薬学的に許容される担体材料を示し、非毒性で、医薬組成物又は薬剤送達系のその他の成分と有害に相互作用しない、当該技術分野において公知のあらゆる材料を含む。
【0026】
薬剤又は薬理活性薬剤の「有効」量又は「治療有効量」とは、非毒性であるが、望ましい効果を提供する薬物又は薬剤の充分な量を意味する。本発明の併用療法において、併用薬剤の1つの成分の「有効量」は、当該併用薬剤のその他の成分と併用した場合に望ましい効能効果を提供するのに効果的である当該化合物の量である。「有効」である量は、対象毎に異なり、個体の年齢及び全身の健康状態、特定の活性薬剤(1つ又は複数)などに依存する。従って、正確な「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかし、当業者であれば、通常の実験により、どのような個々のケースにおいても適切な「有効」量を決定することができる。
【0027】
本明細書で使用される「心血管疾患のリスクを軽減する」及び「心血管疾患のリスクの軽減」という用語は、心血管に関する事象の発症率上昇と関連する潜在的な原因又はバイオマーカーの減少又は消失を意味する。
【0028】
本明細書で使用される「心血管疾患」とは、心臓の血管に関するあらゆる疾患を意味する。心血管疾患の例には、これらに限定されるものではないが、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞(MI)、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢動脈疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心臓内膜疾患、心筋疾患、心臓炎、鬱血性心不全、心内膜炎、虚血性心臓疾患、心臓弁膜症(心臓の血管における1つ又は複数の弁の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠不全症候群(ACS)、高コレステロール、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、末梢血管疾患、虚血性損傷及び心臓移植が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される「脳血管疾患」は、脳への血液供給に影響を及ぼすあらゆる疾患を意味する。脳血管疾患の例には、これらに限定されるものではないが、脳虚血、、脳出血、虚血性脳卒中又は出血性脳卒中が含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患」又は凝固性亢進状態から引き起こされる疾患は、Virchowの3徴候:a)血管壁の変化、b)血流パターンの変化、及びc)血液構成成分の変化のうちの1つ又はそれ以上の徴候を有する要件を満たし、且つ、静脈血栓症及び/又は動脈血栓症の素因と関係する、遺伝性若しくは後天性又はそれら両方のあらゆる疾患を意味する。遺伝性疾患の場合、一般的なリスクファクターは、これらに限定されるものではないが、抗トロンビン欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症、第V因子Leiden欠損症、異常フィブリノーゲン血症第XII因子欠損症、プロトロンビン20210突然変異、高ホモシステイン血症、第XIII因子レベル亢進及びプラスミン産生障害を含む。後天性の凝固性亢進状態の場合には、リスクファクターは、これらに限定されるものではないが、妊娠、不動状態、外傷、術後状態、経口避妊薬の使用、エストロゲンの使用及び抗リン脂質症候群を含む。このような疾患の例には、これらに限定されるものではないが、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固障害及び肺動脈塞栓症が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される「ピリドキサール−5’−リン酸化合物」又は「ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物」は、あらゆるビタミンB6前駆体、代謝産物、誘導体又は類似体を意味するが、ビタミンB6(ピロキシジン)は除外される。
【0032】
本明細書で使用される「血小板凝集阻害剤」及び「抗血小板薬剤」という用語は、血小板の活性化、凝集及び付着を阻害するあらゆる化合物を意味する。
【0033】
ビタミンB6の抗血栓性作用は、当分野において公知である。本発明者らは、ピリドキサール−5’−リン酸及びピリドキサール−5’−リン酸関連化合物の血小板凝集阻害特性が、ビタミンB6(ピロキシジン)の特性より著しく大きいことを発見した。また、本発明者らは、現在利用可能な血小板凝集阻害剤との併用に於いて、ピリドキサール−5’−リン酸及びピリドキサール−5’−リン酸関連化合物が相乗効果的に血栓の形成を低減させ、そして心血管疾患のリスクを軽減し、心血管の事象の発症率を低下させるのに有効であることを見出した。
【0034】
これらの発見を踏まえて、本発明は、血小板凝集を阻害するため、凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患を治療するため、並びに心血管疾患のリスクを軽減するための、新規な医薬組成物及びそれら医薬組成物の使用を提供する。本発明の医薬組成物は、現在利用可能な併用抗血小板療法よりも更に効果的である。その上、本医薬組成物は、リポタンパク質、ホモシステイン、血管収縮及び炎症を含む、心血管疾患の多数のリスクファクターを改善する。本発明の医薬組成物は、血小板凝集阻害剤、ピリドキサール−5’−リン酸若しくはピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を包含する。
【0035】
本発明により使用される血小板凝集阻害剤の例には、これらに限定されるものではないが、トロンボキサンA阻害剤(例えば、アセチルサリチル酸(ASA))、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤(例えば、アブキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン、キセミロフィバン、オルボフィバン、シブラフィバン、フラダフィバン、ロキシフィバン、ロトラフィバン)、アデノシン二リン酸(ADP)拮抗薬(例えば、クロピドグレル(Plavix(商標))、チクロピジン、スルフィンピラゾン、AZD6140、AZD6933)、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、ジピリダモル、シロスタゾール(Pletal(商標))、ペントキシフィリン(Trental(商標)))又はフィブリノーゲン血小板結合阻害剤(例えば、チクロピジン)が含まれる。
【0036】
本発明による医薬組成物は、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸の薬学的に許容される塩、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はピリドキサール−5’−リン酸関連化合物の薬学的に許容される塩から選択される化合物を用いて調製することができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、ピリドキサール−5’−リン酸を含む。
【0037】
本発明に従って使用できるピリドキサール−5’−リン酸関連化合物の例には、これらに限定されるものではないが、ピリドキサール−5−リン酸(P5P)、ピリドキサール及びピリドキサミンが含まれる。同じく使用できるその他のピリドキサール−5’−リン酸関連化合物は、米国特許第6,585,414号及び米国特許出願第20030114424号(これらの特許及び特許出願の両方とも、参照して本明細書に取り込む)に開示されているピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、及びピリドキシンホスホン酸類似体を含む。
ピリドキサールの3−アシル化類似体は、
【0038】
【化011】

【0039】
[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)である]
で表される化合物を含む。
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体は、
【0040】
【化012】

【0041】
[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)であり、
は、第二級アミノ基である]
で表される化合物を含む。
ピリドキシンリン酸類似体は、
【0042】
【化013】

【0043】
[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ若しくはアリールアミノであるか、又は
及びRは、ハロであり、そして
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される化合物、
【0044】
【化014】

【0045】
[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1〜6である]で表される化合物、及び
【0046】
【化015】

【0047】
[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
及びRは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
及びRは、水素であるか、又は
及びRは、ハロであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される化合物、
を含む。
【0048】
本発明による医薬組成物は、ピリドキサール5’−リン酸、ピリドキサール5’−リン酸の薬学的に許容される塩、ピリドキサール5’−リン酸関連化合物又はピリドキサール5’−リン酸関連化合物の薬学的に許容される塩を用いて調製できる。好ましくは、これらの医薬組成物は、ピリドキサール5’−リン酸を用いて調製される。ピリドキサール5’−リン酸の一水和物及び無水物のどちらの形態も、本発明の医薬組成物を調製するのに適している。ピリドキサール5’−リン酸又はピリドキサール5’−リン酸関連化合物は、薬剤学的に適合性を有する対イオンを伴う塩の形態、例えば、これらに限定されるものではないが、クエン酸塩、酒石酸塩、重硫酸塩などの形態で提供できる。これらの薬剤学的に適合性を有する塩は、多数の酸を用いて形成してもよく、そのような酸は、これらに限定されるものではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む。これらの塩の形態は、対応する遊離塩基の形態よりも、水性溶媒又は他のプロトン性溶媒によく溶ける傾向がある。
【0049】
本発明の好ましい態様において、本医薬組成物は、ASA及びピリドキサール−5’−リン酸を含む。本発明の別の好ましい態様において、本医薬組成物は、クロピドグレル(Plavix(商標))及びピリドキサール−5’−リン酸を含む。本発明の更なる好ましい態様において、本医薬組成物は、エプチフィバチド(Integrilin(商標))及びピリドキサール−5’−リン酸を含む。
【0050】
本発明に基づいて使用する医薬組成物は、活性化合物を薬剤学的に使用可能な製剤にするのを促進する賦形剤及び補助剤を含む、生理学的に許容される1つ又はそれ以上の担体を用いて通常の方法で製剤化することができる。適切な剤形は、選択される投与経路に依存する。
【0051】
注射用に、本発明の薬剤は、水溶液、好ましくは、例えばハンクス(Hanks)溶液、リンガー(Ringer)溶液又は生理的食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液に製剤化することができる。
【0052】
経口投与用に、本化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と混ぜ合わせることにより容易に製剤化することができる。そのような担体によって、本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口で服用するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化できる。経口用の医薬製剤は、固体の賦形剤により得ることができ、必要により、適切な補助剤を加えた後、得られた混合物を場合によっては粉砕し、その顆粒混合物を処理して錠剤又は糖衣錠のコアを得ることができる。適切な賦形剤は、特に、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む)のような充填剤、又は(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドンのような)セルロース製剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのような塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0053】
好ましくは、本発明の医薬組成物は経口で投与される。好ましい経口剤形は、各活性薬剤の治療有効単位用量を含み、この場合の単位用量は、1日1回の経口投与に適する用量である。何れの活性薬剤の治療有効単位用量も、当業者及び本明細書から明らかである多数のファクターに依存する、。特に、これらのファクターには、投与される化合物の素性、剤形、投与経路、患者の性別、年齢及び体重、並びに治療する状態の重篤性が含まれる。提供される用量が、例えばPlatelet Function Analyzer PFA−100(登録商標)を用いて閉止時間(CL)により測定する、又は出血時間(BL)を測定することにより、血小板凝集レベルを治療の少なくとも10日後に適切なレベルにまで低減させない場合には、用量を増やすことができる。
【0054】
血小板凝集阻害剤の治療有効単位用量は、使用される特定の阻害剤及び治療する症状によって変更される。本発明による医薬組成物は、血小板凝集を阻害することが望ましい場合に使用することができる。また、本発明による医薬組成物は、心血管疾患のリスクがある患者を治療するために使用することもできる。更に、本発明による医薬組成物は、外科的処置、好ましくは心臓血管の外科的処置を受ける患者を治療するためにも使用することができ、そのような外科的処置は、これらに限定されるものではないが、例えば、冠動脈バイパス移植、経皮的冠動脈インターベンション又は冠動脈ステントの設置である。本医薬組成物は、外科的処置後の血栓症の発症を予防又は治療するために使用することができる。
【0055】
使用される血小板凝集阻害剤がASAであり、そして心筋梗塞(MI)、一過性の虚血性発作(TIA)又は虚血性脳卒中を予防するために使用される場合には、治療有効単位用量は1日当たり5〜500mg、好ましくは1日当たり30〜81mgである。より好ましい単位用量は1日当たり75〜81mgとなり、尚一層好ましい単位用量は1日当たり81mgとなる。ASAが冠動脈バイパス移植(CABG)又は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の場合の手術後に使用される時には、有効量は、好ましくは1日に3回325mgであり、医師から次の通知があるまで続けられる。
【0056】
使用される血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドであり、そして経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に関連する血栓症を予防するために使用される場合には、治療有効単位用量は30〜500μg/kgである。135μg/kgのボーラス静脈注射で手術の直前に投与してもよく、また、手術後の20〜24時間に亘り、0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入により、より好ましくは0.5μg/kg/分の静脈内持続注入により投与してもよい。
【0057】
使用される血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドであり、そして急性冠不全症候群を治療するために使用される場合には、エプチフィバチドの治療有効単位用量は、好ましくは30〜500μg/kgである。診断後、できるだけ速やかに180μg/kgのボーラス注射で投与することができ、その後直ちに、退院するまで(最大72時間まで)、0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入により、より好ましくは2μg/kg/分の静脈内持続注入により投与することができる。
【0058】
使用される血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドであり、そして冠動脈ステント挿入に対する予防用に使用される場合には、エプチフィバチドの治療有効単位用量は、好ましくは30〜500μg/kgである。好ましくは、180μg/kgのエプチフィバチドを初回のボーラス注射で投与し、次いで、10分間、0.1〜5μg/kg/分の持続注入、より好ましくは2μg/kg/分の静脈内持続注入により投与し、その後、180μg/kgを2回目のボーラス注射で投与する。その後、再び18〜24時間の持続注入が可能である。
【0059】
使用される血小板凝集阻害剤がクロピドグレルであり、そしてMI、脳卒中、又は血栓性損傷若しくは血管損傷に対する予防策として使用される場合、治療有効単位用量は、1日当たり10〜1000mgであり、好ましくは1日当たり75〜150mgである。より好ましくは、1日当たりの単位用量は75mgとなる。手術の直前に使用される場合には、治療有効な投薬単位は300〜500mgとなる。より好ましくは、単位用量は300〜350mgとなり、更に一層好ましくは、単位用量は300mgとなる。
【0060】
ピリドキサール−5’−リン酸又はピリドキサール−5’−リン酸関連化合物に対する好ましい治療有効単位用量は、1日当たり0.1〜50mg/kg体重である。より好ましくは、単位用量は、1日当たり1〜5mg/kg体重となる。
【0061】
脳血管疾患のリスクを軽減するには、経口で0.1〜100mg/kgの同様な用量範囲、より好ましくは0.5〜50mgを使用することができる。ピリドキサール−5’−リン酸の場合、使用される用量は同様であり、例えば脳卒中が起こった直後、医師により別の指示があるまで、1日当たり1〜15mg/kgで患者に静脈内投与される。より好ましくは、静脈内投与される用量は、1日当たり10〜15mg/kgとなる。心血管疾患のリスクを軽減するには、1日の用量は脳卒中の場合と同じであってよい。
【0062】
例示的な態様に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれらの態様の細部にわたって限定されるものではなく、当業者であれば様々な改変及び変更を実施することができるものと理解されたい。このような改変及び変更の全ては、添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
【実施例1】
【0063】
冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害の低減に対するピリドキサール−5 −リン酸の有効性
方法−試験概要
4つの施設で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた60人の患者を、2:1の二重盲検方式でP5P又はプラシーボによる治療にランダムに振り分けた。対象患者の要件には、先ず単一血管の病変(複数を含む)に対するPCIの非緊急性が確認され、虚血性合併症(Califf RM, Abdelmeguid AE, Kuntz RE, Popma JJ, Davidson CJ, Cohen EA, Kleiman NS, Mahaffey KW, Topol EJ, Pepine CJ,らの「血管再生術後筋壊死(J Am Coll Cardiol 1998; 31:241-251)」及びESPRIT研究者らの「計画冠動脈ステント移植におけるエプチフィバチドの新規投与計画:ランダムでプラシーボ対照の試験(Lancet 2000; 356:2037-2044)」)のリスクが高いことが決定的である以下の臨床的特性:急性冠不全症候群の存在(PCI後の48時間以内における胸痛)、最近のAMI(≦7日間)、心外膜血流減少、血管造影性血栓、(心臓の)駆出率≦30又は静脈ブラフト病変、の1つ以上が特定されることである。
PCI処置又は標準的な併用療法に対するあらゆる一般的な禁忌事項に加えて、PCI直前のクレアチンキナーゼ(CK−MB)の正常上限を超えた上昇、心房細動若しくは左脚ブロックの心電図に於ける徴候、又は臨床的に有意な検査所見上の異常に関連した徴候(トランスアミナーゼ、ビリルビン又はアルカリホスファターゼ値が、正常な上限値の1.5倍より高い、又は血清クレアチニンが1.8mg/dlより高い)を、組み入れ除外の主な基準とした。高いトロポニン測定値を有する患者は、血管再生前の漸減値の証拠書類の提出と共に、予定されたPCI実施の24時間より前にピークトロポニン値を提出することを条件に、この試験への参加が許された。インフォームドコンセントをした後、P5P治療にランダムに振り分けられた患者に、腸溶性コーティングのP5PをPCI実施の4時間以上前に10mg/kgの経口用量で投与し、その後、5mg/kgの経口用量を1日2回、14日間投与した。中止した治療についてのコンプライアンス及び理由を、すべての患者について記録した。
【0064】
試験のエンドポイント及びその定義
本試験の第一の目的は、リスクの高い経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において心臓保護薬剤としてP5Pを用いる治療の実施可能性を評価することであった。梗塞サイズの第一のエンドポイントは、PCI開始直前に開始し、ベースライン及び6時間毎に24時間実施した経時的なCK−MB酵素の測定を利用して、台形則(Press WH, Teukolsky SA, Vetterling WT, Flannery BP, Numerical Recipes, Cambridge, UK: Cambridge University Press, 1994: 127-133)により評価した。12誘導心電図の連続モニタリング(Northeast Monitoring, Boston, Massachusetts)を用いて、PCI後の24時間以内の心筋虚血の発症を第二のエンドポイントとして評価した。処置周辺時の虚血の徴候は、PCI間の60分内に100μV以上のSTセグメント低下が1分以上継続し、1分以上発作を起こさないものと定義した。曲線STセグメント偏差の曲線下面積は、初回の造影剤注入開始から最終の造影剤注入まで測定された。すべての心臓マーカー及びSTセグメントのモニタリングデータは、治療方式の振り分けを知らされていない中核の研究所(University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland; Duke Ischemia Monitoring Laboratory, Durham, North Carolina)で分析された。
事前に指定されていた第二のエンドポイントの追加として、複合的及び個別事象の30日間の死亡率;致命的でない梗塞;新たな若しくは悪化しつつある心不全、又は主要な有害の虚血性事象が存在しないと定義される、臨床上の安全性とは別の再発性虚血;心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)の重大な出血;及び肝機能又は凝固テストの異常;を含む。急性心筋梗塞(AMI)は、正常上限(正常上限:7ng/ml)を3倍以上のCK−MB上昇及び/又は正常上限(正常上限:0.1ng/ml)を1.5倍以上のトロポニンTレベルと定義された。以前のトロポニン(又はCKMB)値が、正常上限より高かった場合、値は、AMIの定義に合致する正常上限値を2倍以上(CK−MBについては3倍以上)であることに加えて、ベースライン測定値の50%より高いことが要求される。通常の化学的処理、完全血球数算定、及び凝固アッセイを、ベースライン並びにランダムな振り分けを行った7日後及び30日後に実施した。処置周辺時のピークCK−MB及びPCI後の24時間以内のトロポニンレベルのベースラインからの最大差異についても検討した。
【0065】
データ収集及び統計的分析
本試験薬剤を1用量以上摂取し、PCIを受けた患者を、第一及び第二の効能並びに安全性のエンドポイントのすべてについて分析した。本試験薬剤を1用量以上摂取したが、PCIを受けなかった患者は、第一の効能及びSTセグメントモニタリングの分析からは除外したが、安全性の分析には含めた。統計的検定は、αレベルを0.05に設定した両側検定であり、包括解析(intent-to-treat)原理を用いた。ウィルコクソンの順位和検定(Wilcoxon rank-sum test)を用いてすべての連続変数を解析した。サンプルサイズが小さいため、カテゴリー変数は、STセグメントモニタリングデータを除外して、フィッシャーの直接確率検定(Fisher's exact test)を用いて比較し、STセグメントモニタリングデータは、パーソンのカイ二乗検定(Pearson's chi-square)を用いた。統計分析は、SASバージョン8.2(SAS Institute, Cary, North Carolina)を用いて実施した。
【0066】
結果
ハイリスクのPCIにおけるP5Pの本試験に登録した60人の患者のうち、すべての患者がP5P又はプラシーボによる治療を受けた。しかし、4人の患者(3人 P5P、1人 プラシーボ)は、予定の血管再生を受けなかった。更に3人の患者は、心筋酵素のデータ収集が不完全であったため、曲線下面積の分析から除外した。結果として、53人及び60人の患者が、それぞれ、第一の効能及び30日間の臨床分析及び/又は安全性分析に組み入れた。
【0067】
確立した心血管性の疾患、血管再生の既往症及び心血管リスクファクターが存在する点では、P5P又はプラシーボ治療にランダムに振り分けられた患者と、急性冠不全症候群に罹患している患者を調べた今回の全体の患者集団の代表とでは似通っていた(表1)。全体として、この集団の平均年齢は58歳であり、患者の81.7%が男性であり、21.7%が以前にPCI及び/又はバイパス手術を受けていた。血管再生についての指標である最近のAMIの発症は、P5Pで治療を受けた患者において、より一般的なものとなっっていたが、各グループで略同数の患者が急性冠不全症候群に罹患しており、全患者の約半数はPCI前に高いトロポニンレベルを有していた。
【0068】
対照の患者群に心外膜の血流量減少の発症率が高いことを除けば、ベースラインの血管造影及び処置特性もこれらの治療グループ間で似通っていた(表1)。P5P又はプラシーボの投与は、それぞれPCIの平均6.1時間前及び8.4時間前に実施した。ステント移植は、プラシーボ及びP5P治療グループのそれぞれ100%及び97.3%に実施した。1例の静脈グラフトインターベンションのみが、遠位塞栓保護を用いて実施した。両グループとも右冠動脈を最も一般的に治療したが、プラシーボで治療した数人の患者には伏在静脈グラフトの血管再生を施した(表2)。血管造影の処置に関わる合併症(例えば、重大な切開、突然の血管閉鎖)は、希であった(表2)。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
処置周辺時のCK−MBの曲線下面積の中央値に従って測定した処置周辺時の梗塞サイズの第一のエンドポイントは、32.9ng/mlから18.6ng/mlへ低減した(p=0.038)。これは、CK−MBの分布のシフトに反映している(表3及び図1)。同様に、処置周辺時のCK−MBの最高レベルは、P5Pを摂取した患者では有意に低下した。カテゴリー分類により、致命的でないAMIの30日間の発症率は、両グループ間で差異がなかった(P5Pでの12.8%対プラシーボでの10.0%、p=1.0)。死亡例はなく、30日間の複合的有害事象の発症率(死亡、致命的でないAMI、新たな及び/又は悪化しつつある心不全、又は再発性虚血)は、ほぼ同じであった(P5Pでの17.9%対プラシーボでの15.0%、p=1.0)。
【0072】
心電図STモニタリングデータは、PCIを受け、且つ治療を受けた患者の94.6%で利用可能であった(表3)。PCI後の虚血は、両グループとも患者の約15%で発症した。P5Pで治療した方が、PCI後の虚血の発症率が低くなることが観察された(14.7%対17.6%、p=0.78)が、心電図での継続的なモニタリングでは虚血パラメーターに有意差がなかった(表3)。
【0073】
【表3】

【0074】
P5Pでの治療に関連した安全上の問題点は全く確認されなかった。重大な出血の発生(P5Pでの2.8%対プラシーボでの10.5%、p=0.27)及び血液製剤注入の必要性(P5Pでの2.5%対プラシーボでの10.0%、p=0.26)は、希であり、両グループ間に有意な差はなかった。7日目及び30日目における通常の化学的処理及び凝固試験での異常性には明確な差はなかった。しかし、両グループとも、患者の約1/4が、2週間分の処方が完了する前に薬物療法を中止した(P5Pでの30.8%対プラシーボでの25.0%、p=0.77)。P5Pを摂取していたがPCIを受けなかった患者(3人の患者、7.5%)についての早期中止の最も一般的な原因は、胃腸での耐性がないことと、その後の非特異性の骨格筋痛であった。
【0075】
結論
処置周辺時の虚血性合併症のリスクが高い患者において、P5Pでの治療は心筋障害の減少に関与し、PCI後に放出されるCK−MBの総量の減少にも反映された。また、P5P療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させ、CK−MB分布をより低いレベルへとシフトさせる(図1)ことに関与し、そして処置周辺時の梗塞サイズを小さくした。
【実施例2】
【0076】
冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害の低減に対するアスピリン併用でのピリドキサール−5’−リン酸の有効性
方法
実施例1の試験データを調べた。実施例1に記載されている患者60人のうち、35人の患者に、P5P治療に加えて、アセチルサリチル酸[82mg(6人の患者)及び325mg(29人の患者)]での補助治療を施した。
結果
P5PとASAで治療された患者では、第二のエンドポイントである処置周辺時のCK−MBの最高レベルが、3.41ng/ml(プラシーボとASA)から2.09ng/ml(P5PとASA;表4)へ低下した。
【0077】
【表4】

【0078】
結論
P5PとASAとの併用療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させることに関与し、そして処置周辺時の梗塞サイズを小さくした。
【実施例3】
【0079】
冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害の低減に対するエプチフィバチド(Integrilin)との併用でのピリドキサール−5’−リン酸の有効性
方法
実施例1の試験データを調べた。実施例1に記載されている患者60人のうち、19人の患者に、P5P治療に加えて、エプチフィバチドでの補助治療を施した。
結果
P5Pとエプチフィバチドで治療された患者では、第二のエンドポイントである処置周辺時のCK−MBの最高レベルが、3.40ng/ml(プラシーボとエプチフィバチド)から1.36ng/ml(P5Pとエプチフィバチド)へ低下した。
結論
P5Pとエプチフィバチドとの併用療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させる(表4)ことに関与し、そして処置周辺時の梗塞サイズを小さくした。
【実施例4】
【0080】
冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害の低減に対するクロピドグレル(Plavix)との併用でのピリドキサール−5’−リン酸の有効性
方法
実施例1の試験データを調べた。実施例1に記載されている患者60人のうち、25人の患者に、P5P治療に加えて、クロピドグレル[75mg(16人の患者)及び300mg(9人の患者)]での補助治療を施した。
結果
P5Pとクロピドグレルで治療された患者では、第二のエンドポイントである処置周辺時のCK−MBの最高レベルが、3.41ng/ml(プラシーボとクロピドグレル)から2.14ng/ml(P5Pとクロピドグレル)へ低下した。
結果
P5Pとエプチフィバチドとの併用療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させる(表4)ことに関与し、そして処置周辺時の梗塞サイズを小さくした。
【図面の簡単な説明】
【0081】
(表1) 表1は、ピリドキサール−5’−リン酸(P5P)又はプラシーボで治療された患者における、ベースライン時の臨床、心電図及び血管造影に於ける特性をまとめたものである。
(表2) 表2は、P5P又はプラシーボで治療された患者に対する処置及び血管造影の結果をまとめたものである。
(表3) 表3は、P5P又はプラシーボで治療された患者に対する処置周辺時の心臓マーカー及びSTモニタリングの結果をまとめたものである。
(表4) 表4は、アセチルサリチル酸、エプチフィバチド又はクロピドグレルと併用したP5Pで治療された患者、及びアセチルサリチル酸、エプチフィバチド又はクロピドグレルと併用したプラシーボで治療された患者に対する処置周辺時の心臓マーカーの結果をまとめたものである。
【図1】図1は、P5P(A)及びプラシーボ(B)で治療された患者に対する、CK−MB曲線下面積を対数正規分布に当てはめたグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、(b)血小板凝集阻害剤、及び (c)薬学的に許容される担体、を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、ピリドキシンリン酸類似体及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化合物がピリドキサール−5’−リン酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化001】

[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)である]
で表される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化002】

[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)であり、
は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ピリドキシンリン酸類似体が、
【化003】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ若しくはアリールアミノであるか、又は
及びRは、ハロであり、そして
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される基、
【化004】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1〜6である]で表される基、及び
【化005】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
及びRは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
及びRは、水素であるか、又は
及びRは、ハロであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される基、
からなる群より選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記血小板凝集阻害剤が、トロンボキサンA阻害剤である、請求項1〜6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記トロンボキサンA阻害剤が、アセチルサリチル酸(ASA)である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記血小板凝集阻害剤が、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤である、請求項1〜6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記血小板・糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤が、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン、キセミロフィバン、オルボフィバン、シブラフィバン、フラダフィバン、ロキシフィバン、ロトラフィバン及びアブシキシマブからなる群より選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記血小板凝集阻害剤が、アデノシン二リン酸拮抗薬である、請求項1〜6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記アデノシン二リン酸拮抗薬が、クロピドグレル、チクロピジン、スルフィンピラゾン、AZD6140及びAZD6933からなる群より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記血小板凝集阻害剤が、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤である、請求項1〜6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤が、ジピリダモル、シロスタゾール及びペントキシフィリンからなる群より選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、哺乳動物における血小板凝集を阻害する方法。
【請求項16】
前記ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、ピリドキシンリン酸類似体及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がピリドキサール−5−リン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化006】

[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)である]
で表される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化007】

[式中、
は、アルキル又はアルケニル(ここに於けるアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、そして置換されていないか又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル又はアルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、又は
は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(ここに於けるアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシで置換されていてもよい)であり、
は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ピリドキシンリン酸類似体が、
【化008】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ若しくはアリールアミノであるか、又は
及びRはハロであり、そして
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される基、
【化009】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1〜6である]で表される基、及び
【化010】

[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、−CHO−、−CHOH、−CH又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
は、−CH−O−アルキル(ここに於けるアルキルは、Rの代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
は、水素であり、そしてRは、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
及びRは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
及びRは、水素であるか、又は
及びRは、ハロであり、
は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO(ここに於けるRは、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]で表される基、
からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記血小板凝集阻害剤が、トロンボキサンA阻害剤である、請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記トロンボキサンA阻害剤が、アセチルサリチル酸(ASA)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血小板凝集阻害剤が、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤である、請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記血小板・糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤が、エプチフィバチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血小板凝集阻害剤が、アデノシン二リン酸拮抗薬である、請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アデノシン二リン酸拮抗薬が、クロピドグレル、チクロピジン、AZD6140及びAZD6933からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記血小板凝集阻害剤が、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤である、請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤が、ジピリダモル、シロスタゾール及びペントキシフィリンからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜14の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含んでなる、心血管疾患のリスクがある哺乳動物患者を治療する方法。
【請求項30】
前記心血管疾患が、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢動脈疾患、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心臓内膜疾患、心筋疾患、心臓炎、鬱血性心不全、心内膜炎、虚血性心臓疾患、心臓弁膜症(心臓の血管における1つ又は複数の弁の機能不全)、末梢血管疾患、虚血性損傷、川崎病、動脈硬化症(動脈の硬化)、深部静脈血栓症及び急性冠不全症候群からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜14の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含んでなる、凝固カスケードが活性化される血栓状態及び血栓前状態から引き起こされる疾患を有する哺乳動物を治療する方法。
【請求項32】
前記疾患が、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固障害及び肺動脈塞栓症からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜14の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含んでなる、脳血管疾患のリスクがある哺乳動物患者を治療する方法。
【請求項34】
前記脳血管疾患が、脳虚血、脳出血、虚血性脳卒中及び出血性脳卒中からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ピリドキサール−5’−リン酸又はピリドキサール−5’−リン酸関連化合物の用量が、1日当たり0.1〜50mg/kgである、請求項15〜34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ピリドキサール−5’−リン酸又はピリドキサール−5’−リン酸関連化合物の用量が、1日当たり1〜5mg/kgである、請求項15〜34の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を投与することを含んでなる、心血管疾患のリスクがある哺乳動物患者を治療する方法。
【請求項38】
前記心血管疾患が、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢動脈疾患、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心臓内膜疾患、心筋疾患、心臓炎、鬱血性心不全、心内膜炎、虚血性心臓疾患、心臓弁膜症(心臓の血管における1つ又は複数の弁の機能不全)、末梢血管疾患、虚血性損傷、川崎病、動脈硬化症(動脈の硬化)、深部静脈血栓症及び急性冠不全症候群からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記心血管疾患が、心筋梗塞、一過性の虚血性発作又は虚血性脳卒中であり、そして前記血小板凝集阻害剤がアセチルサリチル酸(ASA)であり、前記化合物がピリドキサール−5’−リン酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アセチルサリチル酸の治療有効用量が、5〜500mg/日である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アセチルサリチル酸の治療有効用量が、30〜81mg/日である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記アセチルサリチル酸の治療有効用量が、75〜81mg/日である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記心血管疾患が、急性冠不全症候群であり、そして前記血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドであり、前記化合物がピリドキサール−5’−リン酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記エプチフィバチドの治療有効用量が、30〜500μg/kgである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記エプチフィバチドが、静脈内に投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記エプチフィバチドが、急性冠不全症候群と診断された後に180μg/kgのボーラス注射で投与され、その後最大72時間まで、0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入により投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記エプチフィバチドが、2μg/kg/分の静脈内持続注入により投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記血小板凝集阻害剤がクロピドグレルであり、そして前記化合物がピリドキサール−5’−リン酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記クロピドグレルの治療有効用量が、1日当たり10〜1000mgである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記クロピドグレルの治療有効用量が、1日当たり75〜150mgである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記クロピドグレルの治療有効用量が、1日当たり75mgである、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
(a)ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物、及び(b)血小板凝集阻害剤、の治療有効用量を、心血管の外科的処置を受ける前又は外科的処置を受けた後に、投与することを含んでなる、心血管の外科的処置を受ける哺乳動物患者を治療する方法。
【請求項53】
前記外科的処置が、経皮的冠動脈インターベンションであり、そして前記血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記エプチフィバチドの治療有効用量が、30〜500μg/kgである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記エプチフィバチドが、前記経皮的冠動脈インターベンションの直前に135μg/kgのボーラス静脈注射で投与され、そして経皮的冠動脈インターベンション後20〜24時間に亘り0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記外科的処置が冠動脈ステントの設置であり、そして前記血小板凝集阻害剤がエプチフィバチドである、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記エプチフィバチドが、前記冠動脈ステントを設置する直前に180μg/kgで初回のボーラス静脈注射で投与され、次いで、冠動脈ステントの設置後に10分間、0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入により投与され、その後、180μg/kgで2回目のボーラス静脈注射で投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記エプチフィバチドが、2μg/kg/分の静脈内持続注入により投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記エプチフィバチドが、2回目のボーラス静脈注射で投与された後、0.1〜5μg/kg/分の静脈内持続注入により18〜24時間投与される、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項60】
前記血小板凝集阻害剤が、クロピドグレルである、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記治療有効用量が300〜500mgであり、そして前記クロピドグレルが前記外科的処置の前に投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記治療有効用量が300〜350mgであり、そして前記クロピドグレルが前記外科的処置の前に投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記治療有効用量が300mgであり、そして前記クロピドグレルが前記外科的処置の前に投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記外科的処置が、冠動脈バイパス移植又は経皮的冠動脈インターベンションであり、そして前記血小板凝集阻害剤がアセチルサリチル酸である、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
前記治療有効用量が325mgであり、そして前記アセチルサリチル酸が前記外科的処置後に投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記治療有効用量が325mgであり、そして前記アセチルサリチル酸が前記外科的処置後の3日間毎日投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
薬剤を製造するための、血小板凝集阻害剤、及びピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物の使用。
【請求項68】
血小板凝集を阻害するための、血小板凝集阻害剤、及びピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5 −リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物の使用。
【請求項69】
心血管疾患、脳血管疾患、並びに凝固カスケードが活性化される血栓前状態及び血栓状態から引き起こされる疾患からなる群より選択される疾患状態のリスクを軽減するための、血小板凝集阻害剤及びピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物の使用。
【請求項70】
外科的処置後の血栓症を治療及び予防するための、血小板凝集阻害剤及びピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物の使用。
【請求項71】
前記外科的処置が、冠動脈バイパス移植、経皮的冠動脈インターベンション及び冠動脈ステントの設置からなる群より選択される心血管の外科的処置である、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
前記ピリドキサール−5’−リン酸関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、ピリドキシンリン酸類似体及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項67〜71の何れか一項に記載の使用。
【請求項73】
前記化合物がピリドキサール−5’−リン酸である、請求項67〜71の何れか一項に記載の使用。
【請求項74】
前記血小板凝集阻害剤が、トロンボキサンA阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、アデノシン二リン酸拮抗薬及びcAMPホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群より選択される、請求項67〜73の何れか一項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−505126(P2008−505126A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519583(P2007−519583)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001056
【国際公開番号】WO2006/002549
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506214943)メディキュア インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】