説明

血管内腔径測定装置

【課題】生体の皮膚下の血管の内腔径を正確に測定することができる血管内腔径測定装置を提供する。
【解決手段】血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、少なくとも動脈20に対して刺激を与える前に設けられた安静期間Aにおいて、生体情報測定装置68により測定された生体情報が画像表示装置(表示器)34に表示出力されることから、安静期間Aにおける生体14の安静状態を容易に確認できるので、安静状態を確認できた生体についての測定値のみを採用することにより、生体14の皮膚18下の血管の内腔径dを正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内腔径の変化率を得るために、生体の皮膚下の血管の内腔径を繰り返し測定する血管内腔径測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、血管内皮機能を評価するために、特許文献1の図9において記載されているように、虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管径の変化率(%FMD)を求めるに際しては、阻血前および阻血解除後の血管径を正確に測定する必要がある。しかし、血管径に影響する生体の生理状態を考慮することなく、一定の安静時間後に一律に血管径測定されるので、測定された血管径について、内皮機能を反映した血管径の変化なのか、他の生体パラメータの変動や心理的な影響を受けた変化が含まれるのかが不明であり、必ずしも正確な内腔径の変化を測定したとは言い難いものであった。
【0003】
これに対し、非特許文献1の図3に示すように、血管径増加率と共に血流増加率を共通の時間軸上に表示したり、図4に示すように、血管径と共に血流速度を表示させることが行われている。しかしながら、FMDの成因として、阻血解除時の血流による剪断応力(シェアーストレス)の増加が一酸化窒素NOを産生し、結果として血管径を増加させるという有力な説明をモニターするために血流量を測定しているに過ぎない。このような装置では、阻血解除後の血流量の変化のみしか表示されるに過ぎず、生体情報を示しているものではないので、生体が安静状態であったか否かの判断ができない。
【特許文献1】特開2003−245280号公報
【非特許文献1】「血管不全フロンティア」2004年12月1日 株式会社 メディカルレビュー社発行、182−183頁、図3、4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、血管径測定装置は、僅かな径変化に基づいて動脈血管内皮機能を評価するための虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管径の変化率(%FMD)を求めるために用いられる。また、その動脈血管内皮機能検査は、たとえば15分程度に設定された安静期間経過時の動脈血管の内腔径を測定した後、阻血解除後の動脈血管の内腔径を測定し、安静時の内腔径に対する阻血解除後の動脈血管の内腔径最大値の割合である変化率(%FMD)を求めるという手順で行われる。
【0005】
しかしながら、個人差や測定直前の状況によって個々の生体が安静状態を得るまでの時間は異なるものであり、前記一律の安静期間の経過後の生体が必ずしも安静状態となっているとは限らないという問題があったが、生体が安静状態でないときに動脈血管の内腔径が測定されることにより、その内腔径に誤差が大きく含まれ、それから算出される内腔径の変化率(%FMD)には信頼性が得られなくなる可能性があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、生体の皮膚下の血管の内腔径を正確に測定することができる血管内腔径測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、血管の内腔径の変化率を得るために、生体に対して刺激を与えた後にその生体の血管の内腔径を繰り返し測定する血管内腔径測定装置であって、(a) 表示器と、(b) 生体の自律神経の活動に関連して発生する生体情報をその生体から測定する生体情報測定装置と、(c) 少なくとも前記刺激前に設けられた安静期間において前記生体情報測定装置により測定された生体情報を前記表示器に表示出力させる表示手段とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明の血管内腔径測定装置によれば、少なくとも血管に対して刺激を与える前に設けられた安静期間において、生体情報測定装置により測定された、生体の自律神経の活動に関連して発生する生体情報が表示器に表示出力されることから、安静期間における生体の安静状態をその自律神経の活動に関連して発生する生体情報から容易に確認できるので、安静状態を確認できた生体についての測定値のみを採用することにより、生体の皮膚下の血管の内腔径を正確に測定することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記生体情報測定装置は、前記安静期間において前記生体情報を繰り返し測定するものであり、前記表示手段は、前記安静期間において繰り返し測定された前記生体情報を、前記表示器に時系列的に表示させるものである。このようにすれば、安静期間において繰り返し測定された生体情報の変化に基づいて生体の安静状態を容易に認識できる利点がある。
【0010】
また、好適には、前記表示器は、前記安静期間および前記刺激解除後の期間を含む時間軸を有する二次元座標を表示するものであり、前記内腔径は、前記刺激解除後の期間において繰り返し測定されるものであり、前記表示手段は、前記内腔径またはその変化率と、前記生体情報とを前記時間軸に沿ってグラフ表示させるものである。このようにすれば、血管の内腔径が測定されるタイミングにおいて、生体情報を把握することができる利点がある。
【0011】
また、好適には、前記生体情報測定装置は、前記生体情報として、前記生体の心拍数、呼吸数、血圧、体温、脳波のうちの少なくとも1つを測定するものである。このようにすれば、容易に生体の安静状態が把握される利点がある。
【0012】
また、好適には、前記血管に対する刺激は、前記生体の一部を圧迫してその生体の一部内に連続する血管を阻血した後に、その圧迫を解除して血管内の血流を再開させたときに、その血管の内皮細胞に与えられる剪断応力である。このようにすれば、無侵襲で血管に対する刺激を与えることができる利点がある。
【0013】
また、好適には、前記時間軸における安静期間は、前記解放期間に対して単位長さあたりの時間が短く、さらに好適には前記阻血解除後の期間に対して単位長さ当たりの時間が長くなるように設定されている。このようにすれば、限られた表示領域内において生体情報の変化が見易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施例のセンサ保持装置10に保持された超音波プローブ(超音波探触子)12を用いて被検出体である生体14の上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する動脈血管20の横断面画像(短軸画像)或いは縦断面画像(長軸画像)を表示する血管画像表示装置22を備えた血管内皮機能検査装置30を説明する正面図である。この血管内皮機能検査装置30は、血管内皮機能を評価するために虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管径の変化率(%FMD)を求めるときには、前腕に巻回されたカフ88の圧迫によって一定時間の間阻血された後、そのカフ88の解放によって阻血が解除された以後の血管径の変化を求めるように構成されているので、血管内腔径測定装置としても機能する。
【0015】
上記超音波プローブ12は、血管径センサとしても機能するものであって、たとえば圧電セラミックスから構成された多数個の超音波振動子が一列に配列されることにより構成された1列または互いに平行な2列の超音波アレイ24aを含む先端部24が、3軸駆動機構26を介してプローブ本体28に備えられている。
【0016】
血管内皮機能検査装置30は、所謂マイクロコンピュータから構成された電子制御装置32と、モニタ用の画像表示装置34と、入力操作装置であるキーボード36およびマウス37、超音波駆動制御回路38とを備えており、電子制御装置32は、超音波駆動制御回路38から駆動信号を供給して超音波プローブ12の先端部24にある超音波アレイから超音波を放射させ、その先端部24の超音波アレイにより検知された超音波反射信号SRを受けてその超音波反射信号SRの処理を行うことによって、皮膚18下の超音波断面画像を発生させ、画像表示装置34に表示させる。先端部24の下端面が、超音波を放射する放射面Sに対応している。また、電子制御装置32は、血管20の横断面画像(短軸画像)を生成させるに際しては、上記超音波アレイを血管20に対して直交する位置となるように3軸位置決め機構26を駆動することによりに位置決めさせ、血管20の縦断面画像(長軸画像)を生成させるに際しては、上記超音波アレイを血管20に対して平行となるように3軸位置決め機構26に位置決めさせる。
【0017】
上記超音波駆動制御回路38は、電子制御装置32からの指令に従って、上記超音波アレイを構成する一列に配列された多数個の超音波振動子(圧電セラミックス)のうち、その端から、一定数の超音波振動子群毎に所定の位相差を付与しつつ10MHz程度の周波数でビームフォーミング駆動することにより超音波振動子の配列方向において収束性の超音波ビームを血管20に向かって順次放射させ、その放射毎の反射波を受信して電子制御装置32へ入力させる。また、上記超音波アレイの放射面には、その超音波振動子の配列方向に直交する方向に超音波ビームを収束させるための音響レンズが設けられている。
【0018】
電子制御装置32は、上記超音波アレイにより検出された反射波に基づいて超音波断面画像を合成し、皮膚18下における血管20の横断面画像(短軸画像)を生成させ、或いは血管20の縦断面画像(長軸画像)を生成させて、画像表示装置34に表示させる。また、その画像から、血管20の内径或いは内腔径(内膜径)が算出される。また、血管内皮機能を評価するために、虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管の内皮径(内膜径)の変化率(%)[=100×(dmax −d)/d](但し、dは安静時の血管内腔径、dmax は阻血解除後の最大血管内腔径)を算出する。また、上記血管内腔径が検出されると、血管20の正確な流通断面積が算出され、たとえば超音波ドプラー装置により検出される血流速度を用いて正確な血流量が算出され得る。
【0019】
上記超音波プローブ12は、三次元空間内の所望の位置すなわち所定の位置において被検出体である生体14の上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する血管20を変形させない程度に軽く接触させる状態でセンサ保持装置10に所望の姿勢で保持されるようになっている。上記超音波プローブ12の先端部24の端面と皮膚18との間には、通常、超音波の減衰、境界面における反射や散乱を抑制して超音波断面画像を明瞭とするためのよく知られたゼリー等のカップリング剤が介在させられる。このゼリーは、たとえば寒天等の高い割合で水を含むゲル状の吸水性高分子であって、空気よりは固有インピーダンス(=音速×密度)が十分に高く大きく超音波送受信信号の減衰を抑制するものである。また、そのゼリーに換えて、水を樹脂製袋内に閉じ込めた水袋、オリーブ油、グリセリン等が用いられ得る。
【0020】
上記センサ保持装置10は、机、台座等に位置固定に設けられ、垂直な回動軸心C方向に形成された嵌合穴40を備えた基台42と、その嵌合穴40内に相対回転可能に嵌合された嵌合軸44を備え、基台42に対して垂直な回動軸心Cまわりに回動可能に設けられた回動部材46と、その回動部材46に固定された第1固定リンク48aを含む4つのリンク48a乃至48dから成る第1リンク機構48と、第1リンク機構48の先端部に固定された第1固定リンク50aとして含む4つのリンク50a乃至50dから成る第2リンク機構50と、この第2リンク機構50の先端部において固定されて超音波プローブ12を回曲自在に連結してそれを支持する自在継手52と、操作レバー54の非操作によって前記自在継手52の回曲を常時固定し、操作レバー54の操作にしたがって常時固定されていた回曲を許容すなわち固定状態を解放するストッパ装置56とを備えている。
【0021】
上記第1リンク機構48は、互いに平行な1対の第1固定リンク48aおよび第1可動リンク48bと、平行4辺形を構成するようにそれら1対の第1固定リンク48aおよび第1可動リンク48bの両端部にそれぞれ回動可能に連結された互いに平行な1対の第1回動リンク48cおよび48dとを備え、その第1可動リンク48bが前記回動軸心Cを含む面内で移動するように第1固定リンク48aが前記回動部材46に固定されている。そして、この第1リンク機構48には、上記第1可動リンク48bに負荷される荷重に抗する方向成分の推力を発生させる第1付勢装置として機能する第1コイルスプリング49が設けられている。この第1コイルスプリング49は、第1回動リンク48cと第1固定リンク48aとの連結点と、第1回動リンク48dと第1可動リンク48bとの連結点との間に張設されており、この第1コイルスプリング49により発生させられている第1可動リンク48bを上方へ引き上げる方向のモーメントと、第1可動リンク48bに負荷される荷重により発生させられている第1可動リンク48bを下方へ引き下げる方向のモーメントとが略相殺されるようになっている。
【0022】
上記第2リンク機構50は、互いに平行な1対の第2回動リンク50cおよび50dと、平行4辺形を構成するようにそれら一対の第2回動リンク50cおよび50dの両端部にそれぞれ回動可能に連結された1対の第2固定リンク50aおよび第2可動リンク50bとを備え、その第2可動リンク50bが前記回動軸心Cを含む面内で移動するようにその第2固定リンク50aが第1可動リンク48bに略直交する姿勢で固定されている。そして、この第2リンク機構50には、第2可動リンク50bに負荷される荷重に抗する方向成分の推力を発生させる第2付勢装置として機能する第2コイルスプリング51が設けられている。この第2コイルスプリング51は、第2回動リンク50cと第2固定リンク50aとの連結点と、第2回動リンク50dと第1可動リンク50bとの連結点との間に張設されており、この第2コイルスプリング51により発生させられている第2可動リンク50bを上方へ引き上げる方向のモーメントと、第2可動リンク50bに負荷される荷重により発生させられている第2可動リンク50bを下方へ引き下げる方向のモーメントとが略相殺されるようになっている。このような第1コイルスプリング49および第2コイルスプリング51の相殺作用により、超音波プローブ12が三次元空間内の所望の位置に停止するか或いはゆっくりと下降する程度に保持され、血管20を変形させない程度で超音波プローブ12の先端部24がゼリー等のカップリング剤を介して面接触状態で軽く密着させられるようになっている。
【0023】
上記自在継手52は、図2に拡大して示すように、基端部が第2可動リンク50bに固定され且つ球状に形成された先端部58を備えた第1連結部材52aと、その第1連結部材52aの球状の先端部58が摺動可能に嵌め入れられた嵌合穴60を備え、その球状の先端部58の球心Bまわりに相対回曲可能に連結された第2連結部材52bとを備え、超音波プローブ12が所望の姿勢で保持されるようになっている。
【0024】
前記ストッパ装置56は、第2連結部材52bに設けられた一対の案内穴62、64によって球状の先端部58に対して接近離隔可能に案内された操作レバー54と、その操作レバー54を球状の先端部58に対して押圧する押圧スプリング66とを備え、常時は、操作レバー54の非操作状態ではその操作レバー54が押圧スプリング66によって球状の先端部58に対して押圧されることにより前記自在継手52の回曲が阻止されて常時固定されるが、その操作レバー54が押圧スプリング66の付勢力に抗して操作されることによりその操作レバー54が球状の先端部58から離隔されると、前記自在継手52の固定が解放され、その回曲が許容されるようになっている。
【0025】
図1に戻って、前記血管内皮機能検査装置30には、生体14の自律的な活動を表す情報である生体情報を測定して出力する生体情報測定装置68が備えられている。この生体情報は、生体14の自律神経の活動に密接に関連したものであり、自律神経特に交感神経の活動度に対応している。心拍センサ68aは、たとえば生体14に粘着された複数の電極間に発生する表面電位である心電誘導信号に周期的に含まれるR波を検出し、そのR波を表すパルス信号を生体情報測定装置68に供給する。生体情報測定装置68はそのR波の単位時間たとえば1分当たりの個数に基づいて生体14の心拍数HR(1/min)を算出する。呼吸数センサ68bは、たとえば鼻孔の呼気温度を検出し、その呼気温度を表す信号を生体情報測定装置68に供給する。生体情報測定装置68はその呼気温度の単位時間たとえば1分当たりの変化に基づいて生体14の呼吸数RR(1/min)を算出する。血圧センサ68cは、たとえば動脈血管をその管壁が平坦となるまで押圧することによりその内圧を検出し、その内圧を表す信号を生体情報測定装置68に供給する。生体情報測定装置68は予め求められた関係からその内圧を表す信号に基づいて最高血圧値Psys および最低血圧値Pdia を一拍毎に算出する。酸素飽和度センサ68dは、所謂光電式パルスオキシメータのセンサ(プローブ)であり、2波長の透過光強度を表す信号を生体情報測定装置68に供給する。生体情報測定装置68は予め求められた関係からその2波長の透過光強度を表す信号に基づいて酸素飽和度SpO2 (%)を算出する。脳波センサ68eは、生体の頭部に粘着される複数の電極間に発生する表面電位である脳波BWを検出し、その脳波を表す信号を生体情報測定装置68に供給する。
【0026】
生体情報測定装置68は、算出した心拍数HR、呼吸数RR、最高血圧値Psys および最低血圧値Pdia 、酸素飽和度SpO2 、脳波BWを、自己のモニタ画面68fに時系列的トレンド表示するとともに、画像表示装置34に表示させるためにそれら複数種類の生体情報を表す信号を前記血管内皮機能検査装置30に供給する。
【0027】
図3は、本実施例の超音波プローブ12の先端部24に設けられた超音波アレイ24aと、超音波駆動制御回路38と、電子制御装置32とを含む電気的構成を詳しく示す図である。図3において、超音波駆動制御回路38は、電子制御装置32からの指令に従って超音波振動子Eの配列方向に直交する方向に位置する血管20に向かって収束性の超音波ビームを順次放射させるために、超音波アレイ24aを構成するために血管20と交差する方向に沿って一列に配列された多数個の超音波振動子(圧電セラミックス)Eのうち、その端から1個ずつずれて順次、たとえば16〜32個程度の一定数(1群)の超音波振動子Eの群毎に所定の位相差が付与された10MHz程度の周波数の1周期の振動が出力されるように、ビームフォーミング回路70からの指令に従ってパルサー72から各超音波振動子Eへ1周期の超音波パルスを発生させるための駆動信号を供給させる。そのビームフォーミング駆動することにより発生させられた超音波の放射毎に、音響インピーダンスが急変する管壁の境界面からの反射波が超音波アレイ24aにより受信され、その受信信号はマルチプレクサ74、放射された超音波の回り込みを阻止するための切換スイッチ76、ゲイン調整および信号増幅機能を有するTGC付レシーバ78、超音波反射信号の周波数すなわち10MHzの信号を選択的に通過させるためのバンドパスフィルタ80、A/D変換器82、ビームフォーミング回路70を通して、電子制御装置32へ供給される。パルサー72、切換スイッチ76、TGC付レシーバ78、バンドパスフィルタ80、A/D変換器82は、図示されていないが、上記ビームフォーミングのために位相差が付与された超音波を発射する超音波のチャンネル数(一定数の超音波振動子)に相当する複数セットが設けられる。上記ビームフォーミング回路70では、バッファ機能および演算機能が備えられており、受信信号に関しては、各超音波振動子Eにより受信された各反射信号が処理され、超音波を発射した1群の超音波振動子Eの中央に位置する一個の超音波振動子Eで受けた信号の如くの反射信号が順次発生させられる。電子制御装置32は、超音波の反射波を表す反射信号SRを処理し、処理結果である血管内腔径dおよびその血管内腔径の変化率(%)を画像表示装置34に表示させる。また、電子制御装置32は、生体情報測定装置68が算出した心拍数HR、呼吸数RR、最高血圧値Psys および最低血圧値Pdia 、酸素飽和度SpO2 、脳波BWを、画像表示装置34に表示させる。
【0028】
図4は、上記電子制御装置32の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。反射信号検出手段90は、前記超音波アレイ24aにより受信された一連の反射信号SRのうち、血管20の中心付近を通る反射波を検出し、所定の記憶装置に読み込ませる。この反射信号SRは、たとえば100MHzのサンプリング周期でデジタル信号化されたものであり、たとえば図5の反射信号(RF信号)の画像に示されるデータポイントから構成される波形を示すものである。図5に示す反射波形の1周期は超音波の放射波の10MHzに対応している。図5では、1群の反射波形SR1しか示されていないが、血管20の中心付近を通る反射波には、その血管20の管壁から反射された2群の反射波SR1およびSR2が含まれ、それら反射波SR1およびSR2の相互間隔或いは反射波の振幅の最大のものが用いられる。
【0029】
超音波断面画像生成手段92は、よく知られているように、たとえば、その超音波の反射波信号を検波し且つ2乗化して信号パワーに対応する信号に変換し、その信号パワーを包絡線処理して平滑化することにより滑らかに変化する平滑化信号に変換し、その平滑化信号の大きさを段階的な濃淡に変換することにより濃淡信号を生成し、その濃淡により示される二次元の超音波断面画像MGを生成する。
【0030】
検波手段94は、上記図5に示される反射信号SRのうちの負の部分を正とする検波処理(全波整流処理)を実行し、図6に示されるように、反射信号SRの絶対値波形を示す信号に変換する。ピークタイム信号生成手段96は、上記検波された反射信号SRの波形のピークの大きさ(ピーク値)およびそのピークの時間位置を示すデータポイントで示されるピークタイム信号SPを生成する。図7はそのピークタイム信号SPを示しており、図6の検波後の反射信号SRに比較してデータポイントの数が1/5以下とされている。このピークタイム信号SPの上ピークは上記データポイントで示され、下ピークは上ピークの間に位置であって基線上に位置している。この図7の波形はそれらのピークを連絡する包絡線によって示されるものでもよい。
【0031】
計測位置決定手段98は、上記ピークタイム信号SPに含まれる、血管20の血管壁に対応する2群の波形に対応する2群のピークタイム信号波形の間の間隔として、その2群のピークタイム信号波形のうちの一方の群のピークタイム信号波形の終期に位置する波列の終点と他方の群のピークタイム信号波形の始期に位置する波列の始点とを、計測位置A1およびA2として決定する。図7では、皮膚に近い側の血管壁からの第1の群のピークタイム信号波形が示されており、その終期に位置する波列の終点である計測位置A1が示されている。
【0032】
内腔径算出手段100は、上記計測位置決定手段98により決定されたピークタイム信号SP中の計測位置A1と計測位置A2との間の時間間隔tを算出し、予め記憶された関係(d=t×V)からその時間間隔に基づいて、1拍中の所定のタイミングたとえば最低血圧時の血管20の内腔径dを、たとえば1拍毎に逐次繰り返し算出する。その関係においてVは生体中の音速であり、たとえば1530m/secが用いられる。なお、1拍中の最高血圧時のタイミングで血管20の内腔径dが測定されるようにしてもよい。
【0033】
内皮機能評価値算出手段102は、予め記憶された関係[=100×(dmax −d)/d](但し、dは阻血前の安静時の血管内腔径、dmax は阻血解除期間C内の最大血管内腔径)から、上記内腔径算出手段100により算出された血管内腔径dおよび最大血管内腔径dmax に基づいて、阻血解除期間Cにおける内腔径変化率Δd(%)を逐次算出し、阻血解除期間C終了後におけるその内腔径変化率Δdの最大値を血管内皮機能を評価するための評価値である%FMDとして決定する。上記阻血解除により血流が開始されることにより動脈20の内皮細胞に剪断応力が加えられると、その内皮細胞が一酸化窒素NOを産生し、結果として血管径を増加させるという生理現象が発生し、この血管径の増加現象は動脈硬化と密接に関連していると言われている。
【0034】
表示手段104は、上記内腔径算出手段100により算出された内腔径d、その内腔径dに対応する波形上の範囲と共に、その内腔径dの算出に用いられた前記ピークタイム信号SPの2群のピークタイム信号波形を、画像表示装置34上に表示させる。すなわち、図8の表示例に示すように、表示手段104は、内腔径dの算出に用いられたピークタイム信号SPの2群のピークタイム信号波形と、超音波断面画像生成手段92により生成された二次元の超音波断面画像MGとを、相互に対比可能に並列的に画像表示装置34上に表示させる。また、表示手段104は、内腔径算出手段100により算出された内腔径dの阻血解除後の経時的変化を示すトレンドグラフと、内皮機能評価値算出手段102によって算出された血管内皮機能を評価するための評価値である%FMDを、たとえば図9に示すように画像表示装置34の画面上の所定の表示場所において表示させる。
【0035】
図8の画像表示装置34における画面の表示例では、超音波断面画像生成手段92によって生成された濃淡により示される二次元の超音波断面画像MGが画面の左側に、ピークタイム信号生成手段96により生成され、血管20の血管壁に対応する2群の波形に対応する2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2を含むピークタイム信号SPのピーク値の包絡線で示す波形が画面の右側に、対比可能に並列的に表示されている。上記画面において、超音波断面画像MGは上下方向が皮膚からの深さ方向に対応するように表示され、ピークタイム信号SPの波形はその時間軸すなわち距離軸が上下方向となるようにすなわち上記深さ方向と平行となるように表示されるとともに、超音波断面画像MGには内腔径dの算出に用いられた反射信号SRの経路Lが、ピークタイム信号SPの波形には上記時間軸に相当する基線Mがそれぞれ表示される。また、上記ピークタイム信号SPに含まれる2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2には計測位置決定手段98により決定された計測位置A1およびA2が表示されるとともに、内腔径算出手段100により算出された血管20の内腔径dが、上記2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2の間に、矢印の長さで示す距離と数値とでそれぞれ表示されている。また、上記超音波断面画像MG内の血管20に対応する位置には、上記内腔径dが表示されている。また、上記超音波断面画像MGは、所謂Bモード画像と称される白黒の濃淡画像であり、その中の血管20の内部には、内腔径dの位置を示す矢印が表示される
【0036】
また、図4において、生体情報測定手段106は前記生体情報測定装置68に対応するものであり、生体14の自律的活動状態を示す複数種類の生体情報、たとえば心拍数HR、呼吸数RR、最高血圧値Psys および最低血圧値Pdia 、酸素飽和度SpO2 、脳波BWを測定し、血管内皮機能検査装置30の表示手段104へ供給する。表示手段104は、たとえば図9に示すように画像表示装置34の画面上の所定の表示場所において表示させる。図9に示すように、表示手段104は、時間軸108と生体パラメータ軸110とを有する二次元座標において、少なくとも阻血期間Bよりも前に設けられた安静期間Aにおいて上記生体情報測定手段106により繰り返し測定された生体情報を、内腔径dおよびその安静時の値に対する変化率と共に時系列的にトレンドグラフ表示させる。上記時間軸108は、少なくとも15分程度の安静期間Aと5分程度の阻血期間Bと阻血解除期間Cとを有しており、見易い表示となるように、安静時間Aは阻血期間Bよりも単位長さ当たりの時間が長く、阻血解除期間Cよりも単位長さ当たりの時間が短く設定されている。
【0037】
図9において、t1 は安静期間Aが終了して阻血期間Bが開始される時点を示し、t2 は阻血期間Bが終了して血流が開始される時点を示している。そのt2 時点が、血流増加によって動脈20の内皮細胞に対して血流増加による刺激(剪断応力の増加)を開始した時点を示している。
【0038】
上述のように、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、少なくとも動脈20に対して刺激を与える前に設けられた安静期間Aにおいて、生体情報測定装置68により測定された生体情報が画像表示装置(表示器)34に表示出力されることから、安静期間Aにおける生体14の安静状態を容易に確認できるので、安静状態を確認できた生体についての測定値のみを採用することにより、生体14の皮膚18下の血管の内腔径dを正確に測定することができる。
【0039】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、生体情報測定装置68は、安静期間Aにおいて生体情報を繰り返し測定するものであり、表示手段104は、安静期間Aにおいて繰り返し測定された生体情報を、画像表示装置34の表示画面において時間軸108に沿って時系列的に表示させるものであることから、安静期間Aにおいて繰り返し測定された生体情報の変化に基づいて生体の安静状態を容易に認識できる利点がある。
【0040】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、画像表示装置34は、安静期間Aおよび刺激解除後の期間Cを含む時間軸108を有する二次元座標を表示するものであり、内腔径dは、刺激解除後の期間Cにおいて繰り返し測定されるものであり、表示手段104は、内腔径dまたはその変化率(%)と生体情報とを時間軸108に沿ってグラフ表示させるものであることから、血管の内腔径dが測定されるタイミングにおいて、生体情報を容易に把握することができる利点がある。
【0041】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、生体情報測定装置68は、生体情報として、生体14の心拍数HR、呼吸数RR、血圧BP、酸素飽和度SpO2,脳波BWのうちの少なくとも1つを測定するものであるので、生体の自律神経の活動状態が容易に把握され、容易に生体14の安静状態が把握される利点がある。
【0042】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、動脈20の内皮細胞に対する刺激は、生体14の一部である前腕部をカフ88により圧迫してその生体14の前腕部内に連続する動脈20を阻血した後に、その圧迫を解放して動脈20内の血流を再開させたときに、その動脈20の内皮細胞に与えられる剪断応力であるので、無侵襲で動脈20に対する刺激を与えることができる利点がある。
【0043】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、時間軸108における安静期間Aは、重樹解除後の期間Cに対して単位長さあたりの時間が短く、さらに好適には前記阻血期間Bに対して単位長さ当たりの時間が長くなるように設定されているので、限られた表示領域内において生体情報の変化が見易くなる利点がある。
【0044】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、超音波プローブ12から超音波を放射したときの動脈血管20からの反射信号SRが検出されると、その反射信号SRに含まれる血管20の管壁からの2群の反射波信号SR1およびSR2に対応する、ピークタイム信号SPのうちの2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2の間の間隔に基づいて血管内腔径dを算出する内腔径算出手段100が備えられる。このため、反射信号SRおよびそれから変換されたピークタイム信号SPには微細な強弱の振幅がすべて含まれることにより重要な時間情報が残されており、上記超音波断面画像を表示させるための包絡線処理により消されてしまうような微細な動脈血管の内膜からの2群の反射波の間の間隔に基づいて血管内腔径dが算出されるため、血管内腔径dが正確に測定される。
【0045】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、(a) 血管20からの2群の反射波を含む反射信号SRが検波された信号から各波形のピークの大きさおよびそのピークの時間位置で示されるピークタイム信号SPを生成するピークタイム信号生成手段96を備え、(b) 前記内腔径算出手段100は、ピークタイム信号SPのうちの血管20の管壁からの反射による2群の波形に対応する2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2の間の間隔に基づいて血管内腔径dを算出するものであることから、血管内腔径dが正確に測定される。また、上記ピークタイム信号SPは各波形のピークの値およびそのピークの時間位置で示されることから、サンプリングされた時間離散系の反射信号SRに比較してデータ量が数分の1に減少し、メモリやハードディスクの容量を軽減でき、信号処理負荷も軽減される。
【0046】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、(a) ピークタイム信号SPのうちの2群のピークタイム信号波形に含まれる、前記ピークタイム信号波形SW1およびSW2の間の間隔を計測するための計測位置をそれぞれ決定する計測位置決定手段98を含み、(b) 内腔径算出手段100は、その計測位置決定手段98により決定された計測位置A1およびA2の間の距離に基づいて血管内腔径dを算出するものであることから、計測位置決定手段98によって決定された2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2に含まれる計測位置間の間隔に基づいて血管内腔径dが算出されるので、血管内腔径dが一層正確に測定される。
【0047】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、計測位置決定手段98は、ピークタイム信号SPのうちの血管20の管壁に対応する2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2の間の間隔として、その2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2のうちの第1群のピークタイム信号波形SW1の終期に位置する小波列の終点A1と第2群のピークタイム信号波形SW2の始期に位置する小波列の始点A2とを、計測位置として決定するものであることから、内腔径算出手段100は、それら第1群のピークタイム信号波形SW1の終期に位置する小波列の終点A1と第2群のピークタイム信号波形SW2の始期に位置する小波列の始点A2との間隔に基づいて血管内腔径dを算出するので、血管内皮を考慮した血管内腔径dが一層正確に測定される。
【0048】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、表示手段104によってピークタイム信号SPの波形が画像表示装置34上に表示されるので、画像表示装置34の画面上において血管内腔径dを視認することができる。
【0049】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、動脈20からの反射信号SRに基づいて生体14の皮膚下の断面画像MGを生成する超音波断面画像生成手段92が含まれ、表示手段104によって、ピークタイム信号SPの波形と上記断面画像MGとが、そのピークタイム信号SPの波形の時間軸とその断面画像の深さ方向とが平行なとなるように並列的に表示されるので、画像表示装置34上において、ピークタイム信号SPの波形が超音波断面画像MGと並列的に対比させた状態で血管内腔径dを視認することができる。
【0050】
また、本実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30によれば、動脈20からの反射信号SRに基づいて生体14の皮膚下の断面画像MGを生成する超音波断面画像生成手段92が含まれ、表示手段104によって、ピークタイム信号SPの波形と上記断面画像MGとが、そのピークタイム信号SPに含まれる2群のピークタイム信号波形SP1の終点A1およびSP2の始点A2の間隔寸法と断面画像MGに示される管壁の内腔径dとが同じ寸法となり且つ前記画像表示装置において相互に同じ位置となるように表示させるものであることから、画像表示装置34上において、ピークタイム信号SPの2群のピークタイム信号波形SP1およびSP2の間隔が超音波断面画像MGの内腔と同じ高さ且つ同じ寸法で並列的に対比させた状態で動脈20の内腔径dを一層容易に視認することができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得る。
【0052】
たとえば、前述の実施例において、心拍センサ68aにより検出された心拍数HRが用いられていたが、心音マイクロホンにより検出される心音の単位時間当たりの発生回数や、圧脈波センサにより検出される動脈の拍動すなわち脈拍の単位時間当たりの発生回数であってもよい。また、血圧センサ68cにより検出された一拍毎の血圧値が生体情報として用いられていたが、カフを用いてオシロメトリック法或いはコロトコフ音法により測定された血圧値が用いられても差し支えない。
【0053】
また、前記生体14の自律神経に関連する生体情報としては、前述の心拍数HR、呼吸数RR、最高血圧値Psys および最低血圧値Pdia 、酸素飽和度SpO2 、脳波BWのみならず、それらからの算出値であってもよい。たとえば、心拍数HRまたは心拍周期Tの変動に含まれる短周期変動成分HF、10秒前後の長周期変動成分LF、またはそれらの比(LF/HF)が生体14の自律神経に関連する生体情報として用いられてもよいし、さらに、自律神経そのものを評価し、%FMDとともに診断に用いてもよい。
【0054】
また、前述の実施例生体情報測定装置68は、前記生体14の自律神経に関連する生体情報として、生体14の心拍数HR、呼吸数RR、血圧BP、酸素飽和度SpO2、脳波BWを測定するものであったが、それらのうちの少なくとも1つを測定するものであればよい。
【0055】
また、前述の実施例では、生体14の心拍数HR、呼吸数RR、血圧BP、酸素飽和度SpO2、脳波BWが、表示手段104によって図9に示すようなトレンドグラフで画像表示装置34に表示されていたが、安静期間Aにおいて測定された生体情報の平均値が、複数種類の生体情報の値を示すための複数の軸を放射状に有するレーダーチャート上に表示されてもよい。
【0056】
また、前述の実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30では、反射信号SRから得られた2群のピークタイム信号波形SW1およびSW2間の間隔に基づいて動脈20の内腔径dが測定されていたが、たとえば図8に示す超音波断面画像MG中の動脈20の画像から内腔径dが測定されてもよい。
【0057】
また、前述の実施例の血管内皮機能検査装置(血管内腔径測定装置)30では、カフ88による圧迫によって動脈20を阻血した後にその圧迫を解放して動脈20内の血流を再開させることにより、その動脈20の内皮細胞に対して剪断応力としての刺激が与えられていたが、温度、薬剤による動脈20に対する刺激であっても差し支えない。上記温度による動脈20に対する刺激は、4℃の水に手を入れる所謂コールドプレッサテストと同様のものを用いることにより交感神経を亢進して血流を変化させ、剪断応力を内皮細胞に与えてそれを物理的に刺激するものである。また、上記薬剤による動脈20に対する刺激は、ニトログリセリンを舌下に或いは噴霧で投与してNO(ニトロ)を血管平滑筋に作用(刺激)させて血管を弛緩させるものである。この場合には、%NMD[=100×(dmax −d)/d](但し、dはニトロ投与前の安静時の血管内腔径、dmax はニトロ投与後の最大血管内腔径)が評価値として用いられる。
【0058】
また、前述の実施例の血管内皮機能検査装置30では、カフ88による前腕の圧迫によって動脈20が阻血されていたが、生体14の他の部位、たとえば上腕や足首が圧迫されてもよい。
【0059】
また、前述の実施例の血管内皮機能検査装置30では、図9に示す生体情報の表示がそれに備えられた画像表示装置34に表示されていたが、その血管内皮機能検査装置30とは別体の生体情報測定装置68に表示されてもよいし、生体情報と血管内腔径dおよび%FMDとは異なる画面に別々に表示されてもよい。
【0060】
また、前述の実施例では、超音波プローブ12を保持するために2つのリンク機構48、50から構成されたセンサ保持装置10が用いられていたが、伸縮アーム、ロボットアームなどを備えた他の構成のセンサ保持装置が用いられてもよいし、超音波プローブ12は腕帯等によって生体14の上腕等に直接装着されてもよい。また、上記超音波プローブ12はオペレータの手で保持された状態で使用されてもよい。
【0061】
なお、上述したのは、あくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例の血管内皮機能検査装置の構成を概略説明する図である。
【図2】図1のセンサ保持装置の先端部において、超音波アレイを保持する自在継手およびストッパ装置の構成を拡大して説明する図である。
【図3】図1の実施例において、超音波プローブの先端部に設けられた超音波アレイと超音波駆動制御回路と電子制御装置とを含む電気的構成を詳しく示す図である。
【図4】図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図3の反射信号検出手段により検出された反射信号の一部を示す図である。
【図6】図3の検波手段により検波された反射信号の一部を示す図である。
【図7】図3のピークタイム信号生成手段により生成されたピークタイム信号の一部を示す図である。
【図8】図3の表示手段による生体情報の超音波断面画像MGとピークタイム信号SPとの並列表示例を示す図である。
【図9】図3の表示手段による生体情報の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
14:生体
20:動脈(血管)
30:血管内皮機能検査装置(内腔径測定装置)
34:画像表示装置(表示器)
68:生体情報測定装置
104:表示手段
















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の内腔径の変化率を得るために、生体に対して刺激を与えた後に該生体の血管の内腔径を繰り返し測定する血管内腔径測定装置であって、

表示器と、
生体の自律神経の活動に関連して発生する生体情報を該生体から測定する生体情報測定装置と、
少なくとも前記刺激前に設けられた安静期間において前記生体情報測定装置により測定された生体情報を前記表示器に表示出力させる表示手段と
を、含むことを特徴とする血管内腔径測定装置。
【請求項2】
前記生体情報測定装置は、前記安静期間において前記生体情報を繰り返し測定するものであり、
前記表示手段は、前記安静期間において繰り返し測定された前記生体情報を、前記表示器に時系列的に表示させるものであることを特徴とする請求項1の血管内腔径測定装置。
【請求項3】
前記表示器は、前記安静期間および前記刺激解除後の期間を含む時間軸を有する二次元座標を表示するものであり、
前記内腔径は、前記刺激解除後の期間において繰り返し測定されるものであり、
前記表示手段は、前記内腔径またはその変化率と、前記生体情報とを前記時間軸に沿ってグラフ表示させるものであることを特徴とする請求項1または2の血管内腔径測定装置。
【請求項4】
前記生体情報測定装置は、前記生体情報として、前記生体の心拍数、呼吸数、血圧、体温、脳波のうちの少なくとも1つを測定するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの血管内腔径測定装置。
【請求項5】
前記血管に対する刺激は、前記生体の一部を圧迫して該生体の一部内に連続する血管を所定の阻血期間内において阻血した後に、該圧迫を解除して該血管内の血流を再開させたときに、該血管の内皮細胞に与える剪断応力であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの血管内腔径測定装置。
【請求項6】
前記時間軸における安静期間は、前記阻血期間に対して単位長さ当たりの時間が長く、前記阻血解除後の期間に対して単位長さあたりの時間が短くなるように設定されていることを特徴とする請求項5の血管内腔径測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−267977(P2007−267977A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97665(P2006−97665)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(304008175)株式会社ユネクス (16)
【Fターム(参考)】