説明

表皮一体発泡成形用の表皮材

【課題】袋状の表皮材中に発泡樹脂を入れて発泡成形する際、樹脂の染み出しを防止しつつ、内部の気体を表皮から滞りなく排出出来る表皮材を提供すること。
【解決手段】表生地11と、その内側に接着されるポリウレタンフォーム12と、その内側に接着される耐水圧450mmHO以上、好ましくは500mmHO以上、更に好ましくは550mmHO以上で、通気度0.1〜20cc/cm/s、好ましくは5〜15cc/cm/sであり、平均ポアサイズが0.1〜20μm、好ましくは5〜15μmである不織布13とからなる表皮材10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は表皮一体発泡成形用の表皮材に関し、表皮材を立体的に縫製してその内部に液状の発泡樹脂を注入して発泡させ、表皮材と一体とした成形体を得る場合に、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも気泡を排出して巣穴の発生を防止できる染み出し防止性と通気性を備えたもので、特に車両用のヘッドレストやアームレスト、コンソールボックスなどの成形に使用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
表皮材を立体的に縫製してその内部に液状の発泡樹脂を注入して発泡させ、表皮材と一体とした成形体を得る表皮一体発泡成形法で作られる製品のひとつに車両用のヘッドレストやアームレストなどがある(特許文献1参照)。
このような表皮一体発泡成形法で車両用のヘッドレストやアームレスト、コンソールボックスを成形する場合に用いる表皮材としては、風合い、伸縮性などの観点から織布、不織布、編布、合成皮革などの表生地の裏面に通常、軟質ポリウレタンフォームを接着することが行なわれるが、立体的に縫製後、液状の発泡樹脂を注入すると、軟質ポリウレタンフォームに浸透し、軟質ポリウレタンフォームが硬化したり、表生地まで浸出して硬化し風合いや外観を悪化させる。
【0003】
このため軟質ポリウレタンフォームの裏面にポリウレタンフィルムを接着することで、液状の発泡樹脂の浸透を防止することが行なわれている。
一方、このようなポリウレタンフィルムが接着された表皮材を縫製し、その内部に液状の発泡樹脂を注入すると、発泡の際に生じる気体(ガス)が抜けずに残り、冷えると収縮し巣穴と呼ばれる空洞が発生し、これにより表皮材にしわが生じてしまう。
【0004】
そこで、液状の発泡樹脂の浸透を防止すると同時に、気体(ガス)を通過させることができる表皮材が必要とされ、例えば表布とスラブフォームと微小通気孔が形成された遮蔽フィルムとの三層ラミネート表皮材を用いることで、浸透を防止する染み出し防止性と通気性を兼ね備えるようにしている手法がある。(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平4−314507号公報
【特許文献2】特開平1−228811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2に記載の三層ラミネート表皮材では、遮蔽フィルムとしてポリウレタンフィルムや塩化ビニルフィルムが使用されており、これらの合成樹脂フィルムに微小通気孔が形成してあるため注入する発泡樹脂との接触により、耐熱性の問題から孔の大きさが変化しやすく、変化して通気孔が大きくなると発泡樹脂の浸透による染み出しが生じ易く、変化しなくても通気孔が小さすぎると、通気性が不十分で気体(ガス)が抜けないという問題があり、微小通気孔の大きさなどを設定することが難しく、発泡樹脂の注入条件の管理も難しいという問題がある。
また、この表皮材は、合成樹脂製の遮蔽フィルムを備えるため裏面が滑りにくく、ミシンによる縫製がしにくく、ミシンの針が通り難いという問題がある。
【0006】
この発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止できる染み出し防止性を有するとともに、発泡の際に発生する気体(ガス)が適度に抜ける通気性を有する表皮一体発泡成形用の表皮材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決するためこの発明の請求項1記載の表皮一体発泡成型用の表皮材は、成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡樹脂を注入して発泡させ一体とする表皮一体発泡成形用の表皮材であって、成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームと、このポリウレタンフォームの内側に接着され染み出し防止性および通気性を有する不織布とからなり、この不織布の前記染み出し防止性が、耐水圧450mmHO以上であるとともに、前記通気性が、通気度0.1〜20cc/cm/sであり、平均ポアサイズが0.1〜20μmであることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、表生地とポリウレタンフォームと染み出し防止性および通気性を有する不織布とで表皮材を構成し、不織布の染み出し防止性を、耐水圧で450mmHO以上とし、通気性を、通気度で0.1〜20cc/cm/sとするとともに、平均ポアサイズを0.1〜20μmとすることで、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも熱による通気性の変化を防止して発泡の際の気体(ガス)の通気性を確保するようにしている。
これにより、通気孔の設定や微小孔の形成工程の必要がなく、発泡樹脂の注入条件も緩和してしわのない製品を成形することができるようになる。
【0008】
また、この発明の請求項2記載の表皮一体発泡成型用の表皮材は、請求項1記載の構成に加え、前記不織布の平均繊維径が、0.1〜10μmであることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布の平均繊維径を、0.1〜10μmとすることで、必要なポアサイズなどを容易に確保できるようになる。
【0009】
さらに、この発明の請求項3記載の表皮一体発泡成型用の表皮材は、請求項1または2記載の構成に加え、前記不織布の目付が、30〜70g/mであることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布の目付を、30〜70g/mとすることで、硬くなったり、成形不良が生じたりしないようにしている。
【0010】
さらに、この発明の請求項4記載の表皮一体発泡成形用の表皮材は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記不織布が、メルトブロー製法により得られた不織布であることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、メルトブロー製法で不織布を成形することで、柔軟でかつ極細の繊維径の不織布を得ることが容易であり、その結果、表生地の風合いに与える影響を少なく出来る。
【0011】
また、この発明の請求項5記載の表皮一体発泡成形用の表皮材は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成されることを特徴とするものである。この熱可塑性エラストマーの種類としては特に限定は無いが、スチレン系,オレフィン系,PVC系,ウレタン系,エステル系,アミド系などが上げられる。この内、比較的安価でメルトブロー製法により細繊維径が得られるスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布を、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成することで、必要な耐水性、通気度、ポアサイズを確保して、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも熱による通気性の変化を抑制して発泡の際の気体(ガス)の通気性に優れる。
【0012】
さらに、この発明の請求項6記載の表皮一体発泡成形用の表皮材は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記不織布が熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を設けた2層または3層の積層体で構成されることを特徴とするものである。
この表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを一層確実に防止するとともに、表面摩擦の小さいポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を設けているため縫製の際のミシン送り性にも優れる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、表生地とポリウレタンフォームと染み出し防止性および通気性を有する不織布とで表皮材を構成し、不織布の染み出し防止性を、耐水圧で450mmHO以上とし、通気性を、通気度で0.1〜20cc/cm/sとするとともに、平均ポアサイズを0.1〜20μmとしたので、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも熱による通気性の変化を防止して発泡の際の気体(ガス)の通気性を確保することができる。
これにより、通気孔の設定や微小孔の形成工程も必要なく、ミシンによる縫製も容易にでき、発泡樹脂の注入条件も緩和してしわのない製品を成形することができる。
【0014】
また、この発明の請求項2記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布の平均繊維径を、0.1〜10μmとしたので、必要なポアサイズを容易に確保することができ、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも発泡の際の気体(ガス)が適度に抜ける通気性を確保することができる。
【0015】
さらに、この発明の請求項3記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布の目付を、30〜70g/mとしたので、硬くなったり、成形不良が生じたりすることを防止でき、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、しかも発泡の際の気体(ガス)が適度に抜ける通気性を確保することができる。
【0016】
さらに、この発明の請求項4記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、メルトブロー製法により得られる不織布を使用したので、柔軟でかつ必要な耐水性、通気度、ポアサイズを容易にコントロールすることができ、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、発泡の際の気体(ガス)が適度に抜ける通気性を確保することができる。
【0017】
また、この発明の請求項5記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布を、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成するようにしたので、必要な耐水性、通気度、ポアサイズを確保することができ、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを防止し、発泡の際の気体(ガス)が適度に抜ける通気性を確保することができる。
また、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布を使用することで、より高い柔軟性を持たせることができる。表皮一体発泡成形用の表皮材は、硬いと表面に折れ皺(角)が出やすくなる為、出来るだけ柔軟な方が良い。この時の熱可塑性エラストマーの目付は不織布全体の目付の50%以上あれば効果がある。
【0018】
さらに、この発明の請求項6記載の表皮一体発泡成形用の表皮材によれば、不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を熱接着してなる2層または3層の積層体で構成してあるので、液状の発泡樹脂の浸透による染み出しを確実に防止し、しかも耐熱性に優れることで、熱による通気性の変化を防止して発泡の際に発生する気体(ガス)が適度に抜ける通気性を十分確保することができ、さらに縫製の際のミシン送り性にも優れる。
また熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布のポリウレタンフォーム側の一方面にポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を積層させる事により、ポリウレタンフォームとの接着強力を向上させる事が出来る。また、ポリウレタンフォームとの反対側の一方面にポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を積層させる事により、表皮一体発泡成形用の表皮材裏面の滑り性が向上し、縫製作業効率の向上を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材の一実施の形態について、詳細に説明する。
図1〜図3は、この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材の一実施の形態にかかり、図1は断面図、図2は成形体の一例の車両用のヘッドレストの概略斜視図、図3は成形工程の概略断面図である。
【0020】
この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材10は、例えば図2および図3に示す、車両用のヘッドレスト20の表皮材10として用いられ、ヘッドレスト20の外形に対応する形状に立体的に縫製され、その内部に補強材や支柱などのインサート部品21が装着され、これら装着されたインサート部品21と表皮材10との内部空間に液状の発泡樹脂が注入され、表皮材10と発泡した発泡樹脂とが一体となった表皮一体発泡成形体の製品であるヘッドレストとなる。この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材10は、表皮一体発泡成形体の表皮の一部において使用されても構わない。例えば、液状の発泡樹脂の注入圧が大きくかかる部分のみ使用することも可能である。
【0021】
このような表皮一体発泡成形用の表皮材10は、図1に示すように、表生地11と、軟質ポリウレタンフォーム12と、染み出し防止性および通気性を備える不織布13とを接着して構成することができる。
【0022】
表生地11としては、ヘッドレスト20としての風合いや感触および通気性を考慮して繊維を編織した布地や不織布などが用いられるほか、天然皮革や合成皮革など従来から一般的に使用されている素材が用いられる。
【0023】
軟質ポリウレタンフォーム12は、この表生地11の裏面側に接着され、表生地11の風合いや伸縮性などが内部に注入発泡されて一体とされる発泡樹脂によって損なわれないようにするものである。軟質ポリウレタンフォーム12は、一般に表皮一体発泡成形用に用いられているものが使用できるが、好ましくは密度が18〜60Kg/m3(さらに好ましくは35〜55Kg/m)、硬度が90〜500N(さらに好ましくは350〜450N)である。またその厚さは、成形品の種類や材質によっても異なるが、例えば1mm〜15mm程度とされる。
【0024】
この軟質ポリウレタンフォーム12の裏面側には、軟質ポリウレタンフォーム12や表生地11への液状の発泡樹脂の浸透を防止するため、染み出し防止性を有するとともに、発泡樹脂の注入発泡にともなって発生する気体(ガス)による気泡が残ることを防止するため、通気性を有する必要があり、しかも発泡樹脂との接触により熱変形しない耐熱性を有するものが必要であり、ここでは、不織布13を用いることで、染み出し防止性と通気性を確保するようにしている。
このような染み出し防止性および通気性を備える不織布13としては、染み出し防止性を表す物性として、耐水圧を用い、耐水圧(JIS−L1092)が450mmHO(mmAq)以上であること、および通気性を表す物性として通気度を用い、通気度(JIS−L1096)が0.1〜20cc/cm/sであること、さらに、これら耐水圧よび通気度を決定する物性としてポアサイズを用い、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく測定)の平均が0.1〜20μmであることが必要である。また、上記不織布の耐水圧は、好ましくは500mmHO以上、更に好ましくは550mmHO以上である。また、上記不織布の通気度は好ましくは5〜15cm/sである。また、上記不織布のポアサイズは好ましくは、5〜15μmである。
【0025】
不織布13の耐水圧が450mmHO(mmAq)未満であると、その内側の軟質ウレタンフォーム12に液状の発泡樹脂が浸透して染み出してしまう。
また、不織布13の通気度が0.1cc/cm/s未満であると、発泡樹脂から発生する気体(ガス)が抜けずに巣穴が発生するおそれがあり、通気度が20cc/cm/sを超えて大きいと、空気などの気体(ガス)が抜け過ぎて成形体が膨らまなくなるおそれがある。
さらに、不織布13のポアサイズによって通気度および耐水圧がある程度定まるが、平均ポアサイズが20μmを超えて大きいと、通気度および耐水圧を上記の範囲に保つことができなくなる。なお、このポアサイズは、表皮材10として用いる場合にこれらの値であれば良く、不織布をエンボスやカレンダーなどの後工程で加工を施す場合には、これらの加工によってポアサイズを調整することができ、調整後、液状の発泡樹脂を充填する前の状態で上記の値を確保できれば良い。
【0026】
このような耐水圧、通気度、ポアサイズの不織布13を用いることで、表生地11、軟質ポリウレタンフォーム12、不織布13により表皮材10を構成し、立体成形した内部空間に液状の発泡樹脂を注入して発泡樹脂と一体となった表皮一体発泡成形体を成形することで、液状の発泡樹脂が軟質ポリウレタンフォーム12に浸透して染み出し、硬くなることもなく、発泡樹脂からの気体(ガス)が抜けずに巣穴が発生し、表生地11にしわが発生することもなく、所望の製品を得ることができるとともに、発泡樹脂の注入で表皮材10が膨らまずに成形不能となることもない。
【0027】
また、不織布13の平均繊維径が、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜5μmである。繊維径は、不織布13のポアサイズを決定する要素の1つであり、平均繊維径を10μmを超えて大きくすると、ポアサイズが大きくなって上記のポアサイズの範囲にすることができなくなる。また、平均繊維径が0.1μm未満の不織布は、その生産性が極端に落ちる。
なお、不織布13の繊維径が大きくてもエンボスやカレンダーなどの後加工によりポアサイズを上記の範囲内にすることもできる。
【0028】
さらに、不織布13の目付が、30〜70g/mであることが好ましい。
不織布13の目付が30g/m未満であると、不織布として必要な物性を得ることができず、70g/mを超えて大きくなると、硬くなり成形不良となる。
この不織布13の目付は、表皮一体発泡成形体としての製品によっても好ましい範囲が異なるが、例えばヘッドレストの場合には、30〜50g/mの範囲が好ましく、アームレストの場合には、40〜70g/mの範囲が好ましい。
なお、不織布13の目付が同じでも繊維径などにより物性は異なるが、その場合でも上記ポアサイズを満たす必要がある。
【0029】
なお、不織布の製造方法は、特に限定するものでないが、メルトブロー製法が好ましい。例えば不織布の製法として一般なスパンボンド法、スパンレース法等であると、製法上細い繊維径のものを採取するのが困難である。その為、適宜な耐水圧・通気度・ポアサイズのものを得ようとすると、高目付になり剛性が高く硬くなる傾向にある。これに対しメルトブロー製法によれば、溶融状態の樹脂を紡糸する際に高速高温空気で噴射、開繊して、ベルト又は金網上に集積して不織布の形態とするので、極細の繊維径にすることが容易である。この為、低目付で柔軟な状態で適宜な耐水圧・通気度・ポアサイズのものを得ることが出来る。
【0030】
このような不織布13を構成する合成樹脂としては、特に問わないが、不織布が柔軟なことで表皮材の表面に折れ皺(角)が出にくくなり、外観上好ましいことから、例えば熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でもスチレン系熱可塑性エラストマーが更に好ましく、例えばSEPS(スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、SIS(スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体)、SBPS(スチレンブチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)などを挙げることができるほか、耐水性および通気性を兼ね備え、ポアサイズが上記範囲となる合成樹脂を用いることができる。
【0031】
また、表皮材の裏面は摩擦抵抗が少ないことが好ましい。表皮材の裏面を構成する不織布が摩擦抵抗の少ない樹脂からなることにより、ミシン縫製の際の滑り性が向上し、作業効率を向上することが出来る。この時の摩擦抵抗の低い樹脂の種類としては特に制限は無いが、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。その中でも、メルトブロー製法により不織布化が容易なのは、ポリブチレンテレフタレート・ポリプロピレンであり、更に他の層との接着性が高いのはポリプロピレンである。熱溶融しやすい樹脂はメルトブロー製法、他の層との熱接着性などで有利である一方、溶融による通気度の低下や硬化を抑制、制御する観点からは熱溶融しにくい樹脂、例えば変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂などが有利である。不織布全体が硬くなると、表面に折れ皺(角)が発生する原因になる。メルトブロー性、接着性、溶融性の制御などのバランスからポリブチレンテレフタレートを選択するのが最も好ましい。また少なくともポリウレタンフォームと接する部分において不織布はポリウレタンフォームと良好に接着することが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。ポリウレタンフォームと不織布との接着性を改善するために接着剤などを用いることもできるが、通気性を保持する観点から不織布の熱接着が好ましい。
【0032】
また、不織布13としては、上記樹脂によるものを単層で用いるほか、他の合成樹脂を積層して不織布を構成するようにしても良い。この場合、ポリウレタンフォームに接する第1の不織布層は、ポリウレタンフォームと親和性が高い樹脂からなることが好ましく、同様に該第1の不織布層と積層する第2の不織布層との親和性が高い樹脂からなることが好ましい。熱接着する場合は溶融による通気性の阻害を生じないように例えば目付を30〜70g/mとすることが望ましい。接着性と通気性を調節するために空隙率を調節する方法を取ることもできる。不織布の柔軟性を得るために柔軟性の高い不織布からなる柔軟層を設けることが好ましく、これは例えば熱可塑性エラストマーなどからなること不織布が用いられ、柔軟性の効果を充分得るには不織布全体の目付けの50%以上を該柔軟層とすることが望ましい。柔軟層を前記第1の不織布層としても良いが、ポリウレタンフォームと親和性の高い第1の不織布層の上に該柔軟層を設けることで熱接着の際の通気度制御などの観点から好ましい。また該第1の不織布層と柔軟層の間に接着性を高めるために更に間に別の不織布を積層しても良い。柔軟層を形成する柔軟な不織布は膠着感が高い場合があるが、更に滑り性が高く、該柔軟層との親和性の高い不織布を積層し、表皮材の裏面とすることでミシン縫製の作業性を向上できる。表皮材の裏面を形成する層として用いられる不織布は、例えば目付を30〜70g/mにすることが好ましく、材料としては前記裏面を構成するのに有利な樹脂が用いられる。該裏面層と柔軟層の接着性を高めるために更に間に別の不織布を積層しても良い。以上のことから、複層で不織布を構成する場合、例えば、ポリウレタンフォームと親和性の高い第1層、柔軟層からなる第2層、裏面を構成する滑り性の良い層からなる第3層をこの順に積層した構造とすることが好ましい。
【0033】
このように、不織布を複層構造とする場合、全体として耐水圧450mmHO以上であって通気度0.1〜20cc/cm/sであり、平均ポアサイズが0.1〜20μmの範囲であれば、その層構成はいかなるものであってもよい。積層方法としては、接着剤を活用する方法と熱エンボス法が上げられるが、熱エンボス法がより好ましい。熱エンボス法で積層する事により、不織布の摩擦抵抗値を下げる事が出来、滑り性の向上が図れる。これによりミシン縫製の作業性を向上させる事が出来る。この時の熱エンボスの圧着面積は2〜50%が好ましく、50%を超えると、風合いが硬くなり表皮に折れ皺(角)が出る原因になる。2%以下であると摩擦抵抗値を下げる効果がない。
【0034】
実施例では、具体的な不織布13として、例えば図1中に拡大して示すように、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)の表裏面(両方面)に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を設けた3層13a,13b,13bの不織布が用いられ、その厚さ(JIS−L1096)は0.2〜0.4mm程度、好ましくは0.3mm程度のものが使用され、通気度(JIS−L1096)は18cc/cm/秒程度、耐水圧を500mmHO程度、ポアサイズが平均15.8μmのものを使用した。
【0035】
表生地11と軟質ポリウレタンフォーム12と不織布13を積層して表皮材10を成形する方法としては、接着剤を使用する方法、ホットメルトフィルムを使用する方法、高周波ウェルダによる方法、フレームラミネートによる方法等があるが、表生地11や軟質ポリウレタンフォーム12の風合いを損ねることがなく、乾燥工程が不要であり、接着速度も速く生産性に優れるためフレームラミネートによる方法が好適である。
【0036】
このような耐熱性および通気性を有し、染み出し防止性を有する不織布13を裏面に接着した表皮材10は、成形体として例えば、図3に示すように、車両用のヘッドレスト20の外形に対応する形状に立体的に縫製され、その内部に補強材や支柱などのインサート部品21が装着されて成形装置30の発泡型31に取り付けられ、これら装着されたインサート部品21と表皮材10の裏面の不織布13との内部空間に液状の発泡樹脂が注入ノズル32から注入され、表皮材10と発泡した発泡樹脂とが一体となった表皮一体発泡成形体の製品であるヘッドレスト20となる(図2参照)。なお、この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材10は、表皮一体発泡成形体の表皮の一部分において使用されても構わない。例えば、液状の発泡樹脂が直接あたる部分にのみこの発明の表皮一体発泡成形用の表皮材10使用することも可能である。
【0037】
こうして表皮一体発泡成形法で成形した成形体であるヘッドレスト20では、不織布13によって注入された液状やクリーム状の発泡樹脂が軟質ポリウレタンフォーム12や表生地11に浸透して染み出すことが防止されて硬くなることもなく、注入した液状などの発泡樹脂が不織布13に衝突する場合でも圧力や熱などで不織布13の通気性が変化することもなく、例えガスなどの気体が生じても不織布13を通過させて排出することができ、巣穴の発生を防止することができる。
【0038】
さらに、この表皮材10では、従来の合成樹脂フィルムに微小通気孔を設ける場合のような通気孔の加工工程の必要がなく、成形が容易であり、工程を短縮することができる。
【0039】
また、ウレタンフィルムなどに比べて滑り易くミシンによる縫製が容易にできるとともに、表皮材10とするため表生地11、軟質ポリウレタンフォーム12とラミネートする場合にも不織布13を送り出しやすく、しかも耐熱性に優れるため、例えばフレームラミネート法でラミネートする場合にも変形することもなく表皮材10の成形も容易となる。
【実施例】
【0040】
以下、この発明の実施例について、比較例とともに説明するが、本発明は、この実施例に限定するものでない。
【0041】
<評価サンプルの形成>
各実施例、比較例において評価サンプルは次のようにして作成した。厚さ5mm、硬度35N(JIS K6400−2)の軟質ポリウレタンフォームと不織布をフレームラミネート法により積層した。これを縦300mm横200mmの長方形に2枚切り出し、3方を工業用ミシンにて、ポリエステル糸を使用して、不織布が内側になるように縫製した袋状の評価サンプルを作成した。すなわち評価サンプルは表生地のない表皮材のごとき構造である。なお不織布が2層であるものは第1層、第2層、の順に積層した構造であり、3層であるものは第1層、第2層、第3層の順に積層した構造であり、それぞれ該第1層を軟質ポリウレタンフォームと接するように積層した。また熱エンボス処理を施したものはいずれも、丸ドット形状で、熱圧着部分の圧着面積は面全体面積(600cm)の3%とした。
なお、この評価サンプルの内部に発泡樹脂(ポリエーテルポリオール100重量部、ポリイソシアネートとしてTDI−80とポリメリックMDIの混合物70重量部、反応性の触媒としてジメチルエタノールアミン(2−ジメチルアミノエタノール、DMEA)2.5重量部、非反応性の触媒としてトリエチレンジアミン(TEDA)1.0重量部、発泡剤として水3.5質量部及び整泡剤としてシリコーンオイル1重量部の混合物)を注入ノズルから注入し発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
【0042】
<評価方法>
この実施例では、不織布による発泡樹脂の染み出し防止性および発泡樹脂からのガスの発生による巣穴の発生、ミシン性、耐剥離性を評価した。その評価方法は以下のとおりである。
<染み出し防止性>
表皮材の上部開口からポリウレタンの原液を注入し、硬化後に、底部縫製部からの高さ2cmから5cmの範囲における注入ウレタンフォームの染み出し状態を目視で評価するとともに、この部分の軟質ポリウレタンフォームを剥がして、ゴム硬度計で6箇所の硬度を測定して硬度の平均を求め、元の軟質ポリウレタンフォームの硬度との変化から染み出し防止性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
〇:注入ウレタンフォームが表皮材の表面まで浸透しておらず、表面硬度の変化が10N未満
×:注入ウレタンフォームが表皮材の表面まで浸透しており、表面硬度の変化が10N以上
<巣穴の発生>
上記評価サンプルの断面を観察し、表皮材と注入ウレタンフォームの界面における巣穴(空隙)の発生の有無を目視で判断した。
〇:巣穴(空隙)の発生がない
×:巣穴(空隙)が観察される
<ミシン送り性>
上記評価サンプルを縫製する際のミシン送り性について評価した。
〇:不織布がスムーズに送れ、縫い目が直線である
△:不織布が若干引っかかるが、縫い目は直線である
×:不織布がスムーズに送れず、縫い目が揃わない
<耐剥離性>
上記表皮材のポリウレタンフォームと不織布の剥離強力について評価した。
○:不織布を強く引っ張っても界面がポリウレタンフォームに接着している。
△:不織布を軽く引っ張ってもポリウレタンフォームに接着しているが、
強く引っ張ると界面が剥がれる。
×:不織布を軽く引っ張るとポリウレタンフォームから剥がれる。
なお、不織布を引っ張った際に界面よりも先にポリウレタンフォームまたは不織布が材料破壊したものは〇とした。
【0043】
(実施例1)
評価サンプル:目付が25g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(第2層)(SEPS、平均繊維径4.5μm)の片面に目付が20g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布(第1層)を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が12.5cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が529mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は12.1μmであった。
この不織布から得られた評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入し発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は37Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性は、若干引っかかるが、縫い目は直線であった。更に耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0044】
(実施例2)
評価サンプル:目付が35g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の片面に目付が30g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が6.6cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が620mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は8.6μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は36Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性は、若干引っかかるが、縫い目は直線であった。更に耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0045】
(実施例3)
評価サンプル:目付が70g/mのポリプロピレンレン樹脂メルトブローン不織布(PP、平均繊維径3.0μm)の単層を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が11.7cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が918mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は10.4μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は43Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はほとんどなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性も良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。更に耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0046】
(実施例4)
評価サンプル:目付が15g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の片面に、目付が25g/mで同一樹脂のスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が18.4cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が560mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は14.8μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は44Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はほとんどなく、軟質ポリウレタンフォームの感触が残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性は、若干引っかかるが、縫い目は直線であった。耐剥離性は、中程度であった(表1参照)。
【0047】
(実施例5)
評価サンプル:目付が65g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が15.4cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が600mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は13.3μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は39Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はほとんどなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性は、若干引っかかるが、縫い目は直線であった。耐剥離性は、中程度であった(表1参照)。
【0048】
(実施例6)
評価サンプル:目付が20g/mのポリブチレンテレフタレートからなるメルトブローン不織布(PBT、平均繊維径3.5μm)の片面に目付が25g/mのスチレン系エラストマー樹脂(SEPS、平均繊維径4.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が12.5cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が529mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は12.1μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は35Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性も良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、中程度であった(表1参照)。
【0049】
(実施例7)
評価サンプル:目付が20g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の両面に目付が10g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した3層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が16.2cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が495mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は12.6μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は36Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はなく、軟質ポリウレタンフォームの感触がそのまま残り、気泡による巣穴の発生もなかった。また、ミシン送り性も良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。更に耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0050】
(比較例1)
評価サンプル:目付が10g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の片面に、目付が10g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が50.0cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が370mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は19.6μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は46Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面に発泡樹脂が浸透し、軟質ポリウレタンフォームの感触が失われて硬くなった。また、通気度が高く評価サンプルが膨らみにくかった。なお、ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0051】
(比較例2)
評価サンプル:目付が15g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径4.5μm)の片面に、目付が10g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が33.0cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が426mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は17.1μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は46Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面への発泡樹脂の浸透があり、軟質ポリウレタンフォームの感触が相当失われた。なお、気泡による巣穴の発生もなく、ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0052】
(比較例3)
評価サンプル:目付が10g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)100%からなるメルトブローン不織布の片面に、目付が30g/mで同一樹脂ポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布を熱エンボスにて熱圧着した2層積層体の不織布を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が15.3cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が325mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は13.5μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は48Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面に発泡樹脂が浸透し、軟質ポリウレタンフォームの感触が失われて硬くなった。なお、気泡による巣穴の発生もなく、ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0053】
(比較例4)
評価サンプル:目付が40g/mのポリブチレンテレフタレート(PBT、平均繊維径3.5μm)からなるメルトブローン不織布の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が20.8cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が254mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は14.5μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は47Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面への発泡樹脂の浸透があり、軟質ポリウレタンフォームの感触が相当失われた。なお、気泡による巣穴の発生もなく、ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0054】
(比較例5)
評価サンプル:目付が40g/mのポリプロピレンレン樹脂メルトブローン不織布(PP、平均繊維径3.0μm)の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が32.6cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が568mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は19.0μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。この際、通気度が高く評価サンプルが膨らみにくかった。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は46Nで、表面硬度の変化が10N以上であった。ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。なお、気泡による巣穴の発生はなかった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0055】
(比較例6)
評価サンプル:目付が45g/mのスチレン系エラストマー樹脂メルトブローン不織布(SEPS、平均繊維径3.0μm)の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が45.3cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が395mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は22.8μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は47Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面に発泡樹脂が浸透し、軟質ポリウレタンフォームの感触が失われて硬くなった。また、通気度が高く評価サンプルが膨らみにくかった。ミシン送り性は、若干引っかかるが、縫い目は直線であった。耐剥離性は、中程度であった(表1参照)。
【0056】
(比較例7)
評価サンプル:目付が50g/mのポリウレタン樹脂メルトブローン不織布(PU、平均繊維径5.0μm)の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が51.5cc/cm/s、耐水圧(JIS−L1092)が383mmHOであり、ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)の平均値は26.4μmであった。
この不織布から得た評価サンプルの内部に発泡樹脂を注入ノズルから注入して発泡させ、硬化させることで評価サンプルと一体の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は50Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面に発泡樹脂が浸透し、軟質ポリウレタンフォームの感触が失われて硬くなった。また、巣穴が発生し通気度が高く評価サンプルが膨らみにくく、ミシン送り性も悪く、成形性が劣った。また耐剥離性は低かった(表1参照)。
【0057】
(比較例8)
評価サンプル:不織布の代わりに目付が50g/mのポリウレタン樹脂フィルム(PU)を用いた。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は36Nで、表面硬度の変化が10N未満であり、表面への発泡樹脂の浸透はなかったが、巣穴が発生した。また、ミシン送り性も悪く、成形性が劣った。また耐剥離性は、低かった(表1参照)。
【0058】
(比較例9)
評価サンプル:目付が80g/mのポリエチレンテレフタレート樹脂スパンレース不織布(PET、平均繊維径15.0μm)の単層品を用いた。
この不織布の各測定値は、表1に示したように、通気度(JIS−L1096)が240.0cc/cm/sであった。なお、耐水圧(JIS−L1092)および平均ポアサイズ(ASTMF‐361‐80のバルブポイント法に基づく 多孔質材料自動細孔測定装置 パームポロメーター POROUS MATERIALS,INC.製 による)については測定不能であった。
得られた発泡成形体の表面硬度(JIS K6400−2)の平均は70Nで、表面硬度の変化が10N以上であり、表面に発泡樹脂が浸透し、軟質ポリウレタンフォームの感触が失われて非常に硬くなった。また、通気度が高く評価サンプルが膨らみにくかった。なお、気泡による巣穴の発生はなく、ミシン送り性は良く、スムーズに送れ、縫い目が直線であった。耐剥離性は、高かった(表1参照)。
【0059】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材の一実施の形態にかかる断面図である。
【図2】この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材の一実施の形態にかかる成形体の一例の車両用のヘッドレストの概略斜視図である。
【図3】この発明の表皮一体発泡成形用の表皮材の一実施の形態にかかる成形体の一例の車両用のヘッドレストの成形工程の概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 表皮材
11 表生地
12 軟質ポリウレタンフォーム
13 不織布
20 ヘッドレスト(成形体)
21 インサート部品
30 成形装置
31 発泡型
32 注入ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の外形状に縫製され内部に液状の発泡樹脂を注入して発泡させ一体とする表皮一体発泡成形用の表皮材であって、
成形体の外側に配置される表生地と、この表生地の内側に接着されるポリウレタンフォームと、このポリウレタンフォームの内側に接着され染み出し防止性および通気性を有する不織布とからなり、
この不織布の前記染み出し防止性が、耐水圧450mmHO以上であるとともに、前記通気性が、通気度0.1〜20cc/cm/sであり、平均ポアサイズが0.1〜20μmであることを特徴とする表皮一体発泡成形用の表皮材。
【請求項2】
前記不織布の平均繊維径が、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の表皮一体発泡成形用の表皮材。
【請求項3】
前記不織布の目付が、30〜70g/mであることを特徴とする請求項1または2記載の表皮一体発泡成形用の表皮材。
【請求項4】
前記不織布がメルトブロー製法により得られた不織布であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の表皮一体発泡成形用の表皮材。
【請求項5】
前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の単層またはこれに他の樹脂からなる不織布を積層した複数層で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表皮一体発泡成形用の表皮材。
【請求項6】
前記不織布が、熱可塑性エラストマー樹脂からなる不織布の少なくとも一方面または両方面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる不織布を熱接着してなる2層または3層の積層体で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表皮一体発泡成形用の表皮材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−154350(P2009−154350A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333690(P2007−333690)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)
【Fターム(参考)】