説明

表示装置、プログラムおよび情報記憶媒体

【課題】 意図しない輝度の平坦化の発生をより適切に防止することが可能な表示装置等を提供すること。
【解決手段】 プロジェクター100が、プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、第1の特徴情報を生成する特徴情報生成部120と、プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、第2の特徴情報を生成する特徴情報生成部140と、輝度伸張を行う輝度伸張部150を含み、輝度伸張部150が、前記第2の特徴情報に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部152と、前記第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、前記第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて前記第2の仮伸張係数または前記第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部154と、前記適用伸張係数に基づき、前記プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部156を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、プログラムおよび情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、入力画像の輝度に応じて調光と輝度伸張を行うことにより、表示される画像のコントラストを向上させることができる。しかし、調光と輝度伸張を行うことにより、表示される画像にいわゆる白とび(高階調部分における輝度の平坦化)が発生する場合がある。このような問題を解決する手法として、特開2005−257761号公報では、表示画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号から単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、当該画像パラメータに基づいて調光処理に係る調光制御パラメータを決定し、当該調光制御パラメータに基づいて調光処理を行わせる調光制御手段と、画像パラメータ抽出手段で抽出された画像パラメータに基づいて伸張処理に係る伸張制御パラメータを決定し、当該伸張制御パラメータに基づいて伸張処理を行う伸張処理手段とを備え、伸張処理手段が、入力した画像信号の最大階調が伸張処理後、出力可能な最大階調より低い階調となるように伸張制御パラメータを決定し、伸張処理を行う表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−257761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、画像パラメータに基づいて調光制御パラメータを決定するためには、画像全体を検索しなければならず、当該調光制御パラメータを利用できるのは次の画像(フレーム)になってしまう。このため、連続した画像が大きく変化した場合、不適切な調光制御が行われてしまう可能性がある。また、処理遅延防止のために新たにフレームメモリーを設ける手法も考えられるが、当該手法の場合、画像処理のリアルタイム性が損なわれ、製造費用も増加してしまう。
【0005】
また、一般的に、表示装置は、入力画像信号がインターレース信号の場合に当該インターレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換部を有している。IP変換部は、画像信号の種別を判定するため、複数フレーム分の画像信号を記憶可能なフレームメモリーを有している。この場合、IP変換部に入力される前の画像信号を計測することにより、IP変換部の出力後の画像信号を推測する手法が考えられる。しかし、画像信号の種別は多様であり、当該種別によってプログレッシブ変換で用いられるフレーム数が変化するため、表示装置がIP変換部に入力される前の画像信号を計測してIP変換部の出力後の画像信号を推測することによって白とびを防止することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、輝度伸張を行う場合に、意図しない輝度の平坦化の発生をより適切に防止することが可能な表示装置、プログラムおよび情報記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクターは、プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第1の特徴情報を生成する第1の特徴情報生成部と、プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第2の特徴情報を生成する第2の特徴情報生成部と、輝度伸張を行う輝度伸張部と、を含み、前記輝度伸張部は、前記第2の特徴情報の少なくとも一部に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部と、前記第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、前記第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて前記第2の仮伸張係数または前記第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部と、前記適用伸張係数に基づき、前記プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、コンピューターを、プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第1の特徴情報を生成する第1の特徴情報生成部と、プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第2の特徴情報を生成する第2の特徴情報生成部と、輝度伸張を行う輝度伸張部として機能させ、前記輝度伸張部は、前記第2の特徴情報の少なくとも一部に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部と、前記第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、前記第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて前記第2の仮伸張係数または前記第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部と、前記適用伸張係数に基づき、前記プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る情報記憶媒体は、コンピューターにより読み取り可能なプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、上記プログラムを記憶したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、表示装置等は、プログレッシブ変換の前後の特徴情報を用いることにより、画像処理のリアルタイム性を損なうことなく、意図しない輝度の平坦化の発生をより適切に防止することができる。
【0011】
また、前記伸張係数決定部は、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きいかどうかを判定する判定部と、前記第1の明るさ値と前記第2の明るさ値との差分値を演算する差分値演算部と、前記差分値と、伸張係数補正値データとに基づき、0より大きく1以下の伸張係数補正値を生成する伸張係数補正値生成部と、前記第2の仮伸張係数と、前記伸張係数補正値とを乗算することにより、前記調整伸張係数を生成する調整伸張係数生成部と、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きい場合に前記調整伸張係数を前記適用伸張係数として決定し、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きくない場合に前記第2の仮伸張係数を前記適用伸張係数として決定する適用伸張係数決定部と、を含んでもよい。
【0012】
これによれば、表示装置等は、プログレッシブ変換の前後の明るさ値を比較することにより、画像の明るさの時間的な変化を把握することができ、当該変化に応じて輝度伸張を行うことができる。
【0013】
また、前記仮伸張係数生成部は、前記第1の特徴情報の少なくとも一部に基づく第1の仮伸張係数を生成し、前記伸張係数決定部は、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きいかどうかを判定する判定部と、前記第1の仮伸張係数と前記第2の仮伸張係数との平均値を演算する平均値演算部と、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きい場合に前記平均値を前記適用伸張係数として決定し、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きくない場合に前記第2の仮伸張係数を前記適用伸張係数として決定する適用伸張係数決定部と、を含んでもよい。
【0014】
これによれば、表示装置等は、プログレッシブ変換の前後の明るさ値を比較することにより、画像の明るさの時間的な変化を把握することができる上、当該変化が急激な場合であっても平均値を用いることにより、過度な輝度伸張を抑制することができる。
【0015】
また、前記第2の特徴情報生成部は、前記第2の特徴情報として、少なくとも白ピーク値を示す情報と、APLを示す情報とを生成してもよい。
【0016】
これによれば、表示装置等は、白ピーク値とAPLを用いることにより、画像の明るさに応じて適切な伸張を行うことができる。
【0017】
また、前記仮伸張係数生成部は、前記白ピーク値と、前記APLと、前記白ピーク値、前記APLおよび前記第2の仮伸張係数とが対応付けられた伸張係数生成用データとに基づき、前記第2の仮伸張係数を生成してもよい。
【0018】
これによれば、表示装置等は、白ピーク値とAPLから仮伸張係数を決定することにより、画像の明るさに応じて適切な伸張を行うことができる。
【0019】
また、前記表示装置は、前記第2の特徴情報または前記適用伸張係数に基づき、調光を行う調光部を含んでもよい。
【0020】
これによれば、表示装置等は、輝度伸張と調光を行うことにより、適切な明るさの画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施例におけるプロジェクターの機能ブロック図である。
【図2】第1の実施例における伸張係数決定部の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施例における画像の投写手順を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施例における伸張処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施例における伸張係数生成用データの模式図である。
【図6】第1の実施例における伸張係数生成用データで4点定義されている場合の模式図である。
【図7】第1の実施例における伸張係数生成用データで3点定義されている場合の模式図である。
【図8】第1の実施例における伸張係数補正用データの模式図である。
【図9】第1の実施例における調光処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施例におけるプロジェクターの機能ブロック図である。
【図11】第2の実施例における伸張係数決定部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をプロジェクターに適用した実施例について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施例は、特許請求の範囲に記載された発明の内容を何ら限定するものではない。また、以下の実施例に示す構成のすべてが、特許請求の範囲に記載された発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0023】
(第1の実施例)
図1は、第1の実施例におけるプロジェクター100の機能ブロック図である。プロジェクター100は、画像信号(例えば、RGB信号等の動画像信号等)を入力する画像信号入力部110と、プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、当該画像信号で表される画像の明るさに関する第1の特徴情報を生成する特徴情報生成部(第1の特徴情報生成部)120と、プログレッシブ変換(IP変換)を行うIP変換部130と、プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、当該画像信号で表される画像の明るさに関する第2の特徴情報を生成する特徴情報生成部(第2の特徴情報生成部)140を含んで構成されている。
【0024】
また、プロジェクター100は、輝度伸張を行う輝度伸張部150と、調光部192を有する投写部190と、調光部192を制御する調光処理部160を含んで構成されている。また、調光処理部160は、調光係数を生成する調光係数生成部162と、調光係数に応じて調光部192を制御する調光制御部164を含んで構成されている。
【0025】
また、輝度伸張部150は、第2の特徴情報の少なくとも一部に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部152と、第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて第2の仮伸張係数または当該第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部154と、当該適用伸張係数に基づき、プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部156を含んで構成されている。
【0026】
ここで、伸張係数決定部154についてより詳細に説明する。図2は、第1の実施例における伸張係数決定部154の機能ブロック図である。伸張係数決定部154は、第1の明るさ値が第2の明るさ値よりも大きいかどうかを判定する判定部181と、第1の明るさ値と第2の明るさ値との差分値を演算する差分値演算部182と、当該差分値と、伸張係数補正値データに基づき、0より大きく1以下の伸張係数補正値を生成する伸張係数補正値生成部183と、第2の仮伸張係数と、伸張係数補正値を乗算することにより、調整伸張係数を生成する調整伸張係数生成部184と、第1の明るさ値が第2の明るさ値よりも大きい場合に調整伸張係数を適用伸張係数として決定し、第1の明るさ値が第2の明るさ値よりも大きくない場合に第2の仮伸張係数を適用伸張係数として決定する適用伸張係数決定部188を含んで構成されている。
【0027】
なお、プロジェクター100は、これらの各部の機能を、以下のハードウェアを用いて実装してもよい。例えば、プロジェクター100は、画像信号入力部110は、画像入力端子、コンバーター等、特徴情報生成部120、140は画像処理回路等、IP変換部130は画像処理回路、RAM等、輝度伸張部150、調光処理部160はCPU、RAM、画像処理回路等、投写部190はランプ、液晶パネル、液晶駆動回路、レンズ等、調光部192はランプ電源部(電力制御によってランプの輝度を調整する機能を有する。)、遮光板(出力光線を遮る機能を有する。)、液晶ライトバルブ(出力光線を遮る機能を有する。)等を用いて実装してもよい。
【0028】
また、プロジェクター100は、特徴情報生成部120等の処理を情報記憶媒体200に記憶されたプログラムを読み取って実行してもよい。このような情報記憶媒体200としては、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、ROM、RAM、HDD等を適用できる。
【0029】
次に、これらの各部を用いた画像の投写手順について説明する。図3は、第1の実施例における画像の投写手順を示すフローチャートである。特徴情報生成部120は、画像信号入力部110からの画像信号に基づき、第1の特徴情報を生成する(ステップS1)。
【0030】
なお、特徴情報は、例えば、輝度ヒストグラム(画像全体または画像内の所定領域における最低階調から最高階調までの階調レベルごとの度数を示すデータ)、白ピーク値WP(画像全体または画像内の所定領域における画素のうち最も高い輝度値を有する画素の輝度値)、APL(Average Picture Level)等である。また、処理単位は、1画素であってもよいし、複数画素であってもよい。例えば、特徴情報生成部120は、16×16の画素ブロックを1つの処理単位とし、16×16画素における輝度値の平均値を当該画素ブロックにおける輝度値として処理してもよい。
【0031】
また、輝度値は、例えば、R信号値、G信号値、B信号値のうちの最大値であってもよいし、各信号値に係数を掛けて合計した値(例えば、0.299R+0.587G+0.144B、0.2126R+0.7152G+0.722B等)であってもよい。
【0032】
IP変換部130は、画像信号入力部110からの画像信号に対してIP変換(プログレッシブ変換)を行う(ステップS2)。特徴情報生成部140は、プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、第2の特徴情報を生成する(ステップS3)。
【0033】
なお、第2の特徴情報は第1の特徴情報と同様の情報である。また、例えば、第2の特徴情報が第nフレームの画像の特徴を示す情報である場合、第1の特徴情報は、第n+1フレーム、第n+2フレームといった少なくとも1フレーム遅延した画像の特徴を示す情報である。
【0034】
プロジェクター100は、第2の特徴情報の生成後、伸張処理と調光処理を実行する(ステップS4)。まず、伸張処理手順について説明する。
【0035】
図4は、第1の実施例における伸張処理手順を示すフローチャートである。仮伸張係数生成部152は、第2の特徴情報で表される第2の白ピーク値WPと、第2の特徴情報で表される第2のAPLと、白ピーク値およびAPLと仮伸張係数が対応付けられた伸張係数生成用データ(例えば、2次元ルックアップテーブル等)を用いて仮伸張係数Kgtを生成する(ステップS11)。
【0036】
図5は、第1の実施例における伸張係数生成用データの模式図である。また、図6は、第1の実施例における伸張係数生成用データで4点定義されている場合の模式図である。また、図7は、第1の実施例における伸張係数生成用データで3点定義されている場合の模式図である。
【0037】
なお、図5において、丸の部分が、値が定義されている部分である。また、n1〜n7の値は1〜1022の任意の整数であり、例えば、n1=511、n2=551、n3=596、n4=649、n5=715、n6=793、n7=894である。また、図3において、右下に値が定義されていないのは、平均値(APL)が最大値(白ピーク値)を超えることはないからである。
【0038】
例えば、APLが540、白ピーク値が550の場合、4点定義されている間の部分になる。この場合、仮伸張係数生成部152は、図6に示すように、仮伸張係数Kgtを、(kg1*S1+kg2*S2+kg3*S3+kg4*S4)/(S1+S2+S3+S4)を演算して求める。また、例えば、APLが400、白ピーク値が500の場合、3点定義されている間の部分になる。この場合、仮伸張係数生成部152は、図7に示すように、仮伸張係数Kgtを、(kg1*S1+kg2*S2+kg3*S3)/(S1+S2+S3)を演算して求める。
【0039】
このように、仮伸張係数生成部152は、伸張係数生成用データで定義されていない値であっても補間演算を行って仮伸張係数Kgtを求めることができる。
【0040】
伸張係数決定部154内の判定部181は、第1の特徴情報で表される第1の白ピーク値(第1の明るさ値)が第2の特徴情報で表される第2の白ピーク値(第2の明るさ値)よりも大きいかどうかを判定する(ステップS12)。第1の白ピーク値が第2の白ピーク値よりも大きいということは画像が明るくなり、白とびが発生しやすいということを意味する。
【0041】
第1の白ピーク値が第2の白ピーク値よりも大きい場合、差分値演算部182は、第1の白ピーク値と第2の白ピーク値との差分値Dwpを演算し、伸張係数補正値生成部183は、差分値Dwpと、当該差分値と伸張係数補正値とが対応付けられた伸張係数補正用データに基づき、伸張係数補正値Cを生成する(ステップS13)。
【0042】
図8は、第1の実施例における伸張係数補正用データの模式図である。図8に示すように、伸張係数補正値Cは0より大きく1以下の値である。また、例えば、差分値DwpがD1(0より大きい値)以下の場合は伸張係数補正値Cは1であり、差分値DwpがD1より大きくD2より小さい場合は伸張係数補正値Cは低下し、差分値DwpがD2以上の場合は伸張係数補正値Cは下限値C0になる。
【0043】
調整伸張係数生成部184は、調整伸張係数としてKgt*Cを生成し、適用伸張係数決定部188は、適用伸張係数Kgとして当該Kgt*Cを適用する(ステップS14)。すなわち、この場合、Cは0より大きく1以下の値であるため、KgはKgt以下の値になる。
【0044】
一方、第1の白ピーク値が第2の白ピーク値よりも大きくない場合、すなわち、第1の白ピーク値が第2の白ピーク値以下の場合、画像は暗くなるため、白とびは発生しにくい。この場合、適用伸張係数決定部188は、適用伸張係数Kgとして仮伸張係数Kgtをそのまま適用する(ステップS15)。
【0045】
伸張処理部156は、適用伸張係数Kgに基づき、プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する(ステップS16)。例えば、伸張処理部156は、R’=(1+Kg/256)R、G’=(1+Kg/256)G、B’=(1+Kg/256)Bを演算して伸張処理を実行してもよい。ここで、R’、G’、B’は伸張後のRGBそれぞれの画像信号値であり、R、G、Bは伸張前のRGBそれぞれの画像信号値である。
【0046】
次に、調光処理手順について説明する。図9は、第1の実施例における調光処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
調光係数生成部162は、上述した輝度伸張処理手順における輝度係数の生成手順と同様に、第2の白ピーク値と、第2のAPLと、調光係数生成用データに基づき、調光係数Klを生成する(ステップS21)。
【0048】
調光制御部164は、開口率A=Kl/255を演算する(ステップS22)。そして、調光制御部164は、開口率Aで調光部192を制御する(ステップS23)。例えば、開口率Aが1(開口率100%)の時が最も明るく、開口率Aが0の時が最も暗くなる。
【0049】
以上のような伸張・調光処理(ステップS4)の終了後、輝度伸張部150は、輝度伸張後の画像信号を投写部190に出力して画像を生成し、投写部190は輝度伸張と調光の行われた状態で画像を投写する(ステップS5)。プロジェクター100は、電源オフ等によって処理を終了すべきかどうかを判定し(ステップS6)、処理を終了すべきでない場合は上述したステップS1〜S6の処理を繰り返し実行する。
【0050】
以上のように、本実施例によれば、プロジェクター100は、プログレッシブ変換の前後の特徴情報を用いることにより、画像処理のリアルタイム性を損なうことなく、白とび等の意図しない輝度の平坦化の発生をより適切に防止することができる。
【0051】
また、本実施例によれば、プロジェクター100は、プログレッシブ変換の前後の明るさ値を比較することにより、画像の明るさの時間的な変化を把握することができ、当該変化に応じて輝度伸張を行うことができる。
【0052】
また、本実施例によれば、プロジェクター100は、白ピーク値とAPLを用いることにより、画像の明るさに応じて適切な伸張を行うことができ、白ピーク値とAPLから伸張係数を決定することにより、画像の明るさに応じて適切な伸張を行うことができる。
【0053】
また、本実施例によれば、プロジェクター100は、輝度伸張と調光を行うことにより、適切な明るさで高いコントラストの画像を表示することができる。
【0054】
(第2の実施例)
第1の実施例では、特徴情報生成部120における白ピーク値が特徴情報生成部140における白ピーク値よりも大きい場合に伸張係数補正値データを用いて仮伸張係数を低下させたが、この場合に仮伸張係数の平均値を適用してもよい。
【0055】
図10は、第2の実施例におけるプロジェクター101の機能ブロック図である。プロジェクター101は、輝度伸張部151に含まれる仮伸張係数生成部153と伸張係数決定部155が第1の実施例の構成と相違している。なお、プロジェクター101は、第1の実施例と同様に情報記憶媒体201から読み取ったプログラムを実行することによって仮伸張係数生成部153等として機能してもよい。
【0056】
仮伸張係数生成部153は、特徴情報生成部140による第2の特徴情報に応じて第2の仮伸張係数を生成するだけでなく、特徴情報生成部120による第1の特徴情報に応じて第1の仮伸張係数を生成する。なお、仮伸張係数の生成方法は第1の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0057】
図11は、第2の実施例における伸張係数決定部155の機能ブロック図である。伸張係数決定部155は、上述した判定部181と、第1の仮伸張係数と第2の仮伸張係数との平均値を演算する平均値演算部185と、適用伸張係数決定部189を含んで構成されている。
【0058】
適用伸張係数決定部189は、特徴情報生成部120における白ピーク値が特徴情報生成部140における白ピーク値よりも大きい場合、平均値演算部185によって演算された平均値を適用伸張係数として決定し、そうでない場合、第2の仮伸張係数を適用伸張係数として決定する。
【0059】
以上のように、本実施例によれば、プロジェクター101は、第1の実施例と同様の作用効果を奏し、プログレッシブ変換の前後の明るさ値を比較することにより、画像の明るさの時間的な変化を把握することができる上、当該変化が急激な場合であっても平均値を用いることにより、過度な輝度伸張を抑制することができる。
【0060】
(その他の実施例)
なお、本発明の適用は上述した実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施例では、判定部181は、白ピーク値を用いているが、APLを用いて明るさの比較を行ってもよい。
【0061】
また、調光処理部160は、輝度伸張部150、151と同様の調光処理を実行してもよい。すなわち、第1の白ピーク値が第2の白ピーク値よりも大きい場合、調光処理部160は、調光部192の開口率が低下するように調光処理を実行してもよい。
【0062】
また、調光係数生成部162は、第2の特徴情報等に基づく第2の調光係数だけでなく、第1の特徴情報等に基づく第1の調光係数も生成し、調光制御部164は、第1の白ピーク値が第2の白ピーク値よりも大きい場合、第1の調光係数と第2の調光係数の平均値を用いて調光を行ってもよい。
【0063】
また、調光係数生成部162は、伸張係数と同様の手法によって調光係数を生成したが、伸張係数生成部152によって生成された伸張係数に基づいて調光係数を生成してもよい。例えば、調光係数生成部162は、(1+適用伸張係数/255)-2.2を適用調光係数として演算してもよい。
【0064】
また、上述した調光は必須ではなく、輝度伸張のみが行われる場合にも本発明は有効である。例えば、輝度伸張のみが行われる場合、調光処理部160および調光部192は不要である。
【0065】
また、特徴情報の生成対象は、画像全体には限定されず、例えば、画像の周辺部分の画素、画像の上下部分の画素、画像の左右部分の画素、画像の下部分の画素等を除いた画像の中央ブロックであってもよい。例えば、特徴情報生成部120、140は、画像の下部分の画素を除くことにより、字幕と合成された画像であっても当該字幕の影響を受けることなく、画像の特徴を示す特徴情報を生成することができる。
【0066】
また、プロジェクター100、101以外のテレビ、液晶モニター等のIP変換部を有する表示装置に本発明を適用してもよい。また、プロジェクター100、101は、液晶プロジェクター(透過型、LCOS等の反射型)には限定されず、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたプロジェクター等であってもよい。なお、DMDは米国テキサス・インスツルメンツ社の商標である。また、プロジェクター100、101の機能を複数の装置(例えば、PCとプロジェクター等)に分散して実装してもよい。
【符号の説明】
【0067】
100、101 プロジェクター(表示装置)、110 画像信号入力部、120 特徴情報生成部(第1の特徴情報生成部)、130 IP変換部、140 特徴情報生成部(第2の特徴情報生成部)、150、151 輝度伸張部、152、153 仮伸張係数生成部、154、155 伸張係数決定部、156 伸張処理部、160 調光処理部、162 調光係数生成部、164 調光制御部、181 判定部、182 差分値演算部、183 伸張係数補正値生成部、184 調整伸張係数生成部、185 平均値演算部、188、189 適用伸張係数決定部、190 投写部、192 調光部、200、201 情報記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第1の特徴情報を生成する第1の特徴情報生成部と、
プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第2の特徴情報を生成する第2の特徴情報生成部と、
輝度伸張を行う輝度伸張部と、
を含み、
前記輝度伸張部は、
前記第2の特徴情報の少なくとも一部に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部と、
前記第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、前記第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて前記第2の仮伸張係数または前記第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部と、
前記適用伸張係数に基づき、前記プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部と、
を含む、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記伸張係数決定部は、
前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きいかどうかを判定する判定部と、
前記第1の明るさ値と前記第2の明るさ値との差分値を演算する差分値演算部と、
前記差分値と、伸張係数補正値データとに基づき、0より大きく1以下の伸張係数補正値を生成する伸張係数補正値生成部と、
前記第2の仮伸張係数と、前記伸張係数補正値とを乗算することにより、前記調整伸張係数を生成する調整伸張係数生成部と、
前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きい場合に前記調整伸張係数を前記適用伸張係数として決定し、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きくない場合に前記第2の仮伸張係数を前記適用伸張係数として決定する適用伸張係数決定部と、
を含む、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記仮伸張係数生成部は、前記第1の特徴情報の少なくとも一部に基づく第1の仮伸張係数を生成し、
前記伸張係数決定部は、
前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きいかどうかを判定する判定部と、
前記第1の仮伸張係数と前記第2の仮伸張係数との平均値を演算する平均値演算部と、
前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きい場合に前記平均値を前記適用伸張係数として決定し、前記第1の明るさ値が前記第2の明るさ値よりも大きくない場合に前記第2の仮伸張係数を前記適用伸張係数として決定する適用伸張係数決定部と、
を含む、
表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置において、
前記第2の特徴情報生成部は、前記第2の特徴情報として、少なくとも白ピーク値を示す情報と、APLを示す情報とを生成する、
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置において、
前記仮伸張係数生成部は、前記白ピーク値と、前記APLと、前記白ピーク値、前記APLおよび前記第2の仮伸張係数とが対応付けられた伸張係数生成用データとに基づき、前記第2の仮伸張係数を生成する、
表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置において、
前記第2の特徴情報または前記適用伸張係数に基づき、調光を行う調光部を含む、
表示装置。
【請求項7】
コンピューターを、
プログレッシブ変換前の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第1の特徴情報を生成する第1の特徴情報生成部と、
プログレッシブ変換後の画像信号に基づき、画像の明るさに関する第2の特徴情報を生成する第2の特徴情報生成部と、
輝度伸張を行う輝度伸張部として機能させ、
前記輝度伸張部は、
前記第2の特徴情報の少なくとも一部に基づく第2の仮伸張係数を生成する仮伸張係数生成部と、
前記第1の特徴情報に含まれる第1の明るさ値と、前記第2の特徴情報に含まれる第2の明るさ値との相違に応じて前記第2の仮伸張係数または前記第2の仮伸張係数に基づく調整伸張係数を適用伸張係数として決定する伸張係数決定部と、
前記適用伸張係数に基づき、前記プログレッシブ変換後の画像信号に対して伸張処理を実行する伸張処理部と、
を含む、
プログラム。
【請求項8】
コンピューターにより読み取り可能なプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、
請求項7に記載のプログラムを記憶した情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−210722(P2010−210722A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54410(P2009−54410)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】