説明

表示装置用基板及びその製造方法

【課題】 インクジェット法等の液状材料を使用する方法での機能膜の形成に際し、液状材料の未充填領域の発生及び液状材料間の混合(混色)が抑制され、表示装置の表示品位の向上が可能となった表示装置用基板及びその製造方法、並びに、それらを用いて得られるカラーフィルタ基板、薄膜トランジスタアレイ基板、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置を提供する。
【解決手段】 機能膜がバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板であって、上記機能膜の等高線パターンは、バンク内の隅部へ広がりを有する表示装置用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用基板、その製造方法、カラーフィルタ基板、薄膜トランジスタアレイ基板、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置に関する。より詳しくは、液晶テレビ等に用いられる表示装置用基板及びその製造方法、並びに、それらを用いて得られるカラーフィルタ基板、薄膜トランジスタアレイ基板、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビの市場の拡大に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加している。このカラー液晶ディスプレイの今後の普及のためには、製造コストを低減することが求められており、特に、製造コストの高いカラーフィルタ(CF)基板に対するコストダウンが要求されている。CF基板は、一般的に光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層(カラーフィルタ)が画素毎に透明基板上に多数形成された構造を有するものであり、液晶表示装置等において使用されている。このCF基板の製造コストを効果的に低減するためには、着色層の形成効率を向上することが重要であった。
【0003】
従来のCF基板における着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法等が知られている。顔料分散法は、顔料を分散させた感光性基材を透明基板上に塗布し、露光・現像により着色層をパターン形成する方法である。また、染色法は、透明基板上に塗布した染色基材を露光・現像によりパターン形成し、それを染色して着色層とする方法である。これらの製造方法は、各色ごとに塗布、露光、現像の各工程を繰り返す必要があり、プロセスの簡略化が困難である。更に、塗布工程におけるスピンコート時に材料のロス(損失)が大きくなってしまう。これら以外の着色層の形成方法としては、電着法、印刷法等が挙げられる。電着法は、透明電極を透明基板上にパターン形成し、顔料、樹脂及び電解液等を含む電解塗装液に浸漬して、各色を電着させる方法である。また、印刷法は、透明基板上に顔料を分散させた後に印刷し着色層を形成する方法である。しかしながら、電着法では、形成することができる着色層のパターン形状が限定されてしまい、印刷法では高精細パターンの形成が困難である。
【0004】
これに対し、現在、インクジェット(IJ)法を用いた着色層の形成方法が注目されている。
IJ法によりCF基板の着色層を形成する場合には、インクジェットヘッドを透明基板上で移動させながらインク(着色層材料)を吐出させて直接着色層のパターンを形成するため、インク使用量の低減(インク使用効率の向上)が可能となる。また、露光・現像工程を必要としないことから、プロセスの簡略化により製造コストを低減することも可能となる。
このようなIJ法により着色層を形成する場合、一般的には、隣接するドット間でインク(液状材料)が混合しないように、バンク(凸型構造物)がCF基板を構成する基板上に設けられる。また、インクの混合をより効果的に防止するため、通常、バンクには撥水化処理がなされる。そして、図7(a)に示すように、インク12は、インクジェットヘッドのノズルから所定の間隔で直線状に吐出され、バンク11内に着弾した液滴はドット全体に広がっていくこととなる。
【0005】
しかしながら、一般的にドットは長方形等の四角形であり、インク12の液滴は表面張力によりその形状を球形にしようとするため、バンク11内に着弾したインク12は、バンク11内で広がって行く際に、バンク11内の隅部までは均一に広がりにくい傾向がある。そのため、図7(b)に示すように、IJ法で形成された着色層13のドット角部(バンク11内の隅部)では、所望の膜厚よりも薄くなる場合が多く、ドット内で着色層13の膜厚ムラが発生していた。これが顕著な場合には、ドット角部に着色層13が形成されず、バックライト等の光源からの光が充分に着色されずに色が抜けてしまう「白抜け」といった現象が発生していた。このように、IJ法による着色層13の形成に関しては、表示装置の表示品位を向上させるうえで改善の余地があった。
【0006】
これに対して、図8(a)に示すように、バンク11内の隅部へインク12を充填させるために、バンク11内へのインク12の吐出量を増やすと、バンク11内の隅部までインク12が広がる反面、バンク11内の中央部付近のインク12の量も増えるため、図8(b)に示すように、インク12がバンク11上に乗り上げ、隣接するドット間でインク同士が混合してしまうおそれがあった。
【0007】
また、バンク内の隅部までインクを充填するため、バンク内及びバンク上にインクを吐出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法によると、ドット間を仕切るバンク上にインクを吐出するため、ドット間でインクが混合してしまうことがある。また、バンク上にインクが残ることがあり、その分のインク量がバンク内で減少し、着色層として充分な膜厚が得られないことがある。更に、バンク上でインクが固化すると、バンク上にインクが残らない場合と比較して固化したインクの膜厚の分だけバンクの膜厚が大きくなるため、液晶表示装置では、CF基板に形成された画素電極と対向基板に形成された画素電極とがリークすることがある。
【特許文献1】特許第3124718号明細書(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、インクジェット法等の液状材料を使用する方法での機能膜の形成に際し、液状材料の未充填領域の発生及び液状材料間の混合(混色)が抑制され、表示装置の表示品位の向上が可能となった表示装置用基板及びその製造方法、並びに、それらを用いて得られるカラーフィルタ基板、薄膜トランジスタアレイ基板、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、インクジェット法等の液状材料を使用する方法で機能膜を形成する場合に、白抜け等の現象を抑制して表示装置の表示品位を向上させることができる表示装置用基板について種々検討したところ、バンク内に機能膜の液状材料を吐出する際の吐出パターンに着目した。そして、バンク内の少なくとも隅部に機能膜の液状材料を吐出することにより、液状材料間の混合(混色)を抑制しつつ、液状材料をバンクの隅部まで充填し、液状材料の未充填領域の発生を抑制することができることを見いだした。すなわち、バンク内の少なくとも隅部に機能膜の液状材料を吐出することにより、機能膜の膜厚の均一性を高めることができ、機能膜の等高線パターンが、バンク内の隅部方向に広がりを有するものとなって、白抜け等の現象が抑制された表示装置用基板を実現することができることを見いだした。その結果、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、機能膜がバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板であって、上記機能膜の等高線パターンは、バンク内の隅部方向に広がりを有する表示装置用基板である。
【0011】
上記機能膜としては、インクジェット法等の液状材料を使用する塗布方法によりバンク内に形成されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、本発明の表示装置用基板が、液晶表示装置のカラーフィルタ基板として用いられる場合には、着色層が機能膜として形成され、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板として用いられる場合には、画素電極が機能膜として形成され、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の有機ELパネルとして用いられる場合には、発光層や正孔輸送層が機能膜として形成される。
【0012】
上記バンクとしては、複数の機能膜の形成領域を隔てる構造物(凸部)であれば特に限定されず、例えば、感光性樹脂等により形成される。上記機能膜がバンクにより仕切られた構造としては、例えば、ダイアゴナル配列、デルタ配列、ストライプ配列等の配列形式で機能膜の1つ1つが配置され、それらの間にバンクが配置された形態等が挙げられる。
【0013】
本発明において、上記機能膜の等高線パターンは、バンク内の隅部方向に広がりを有する。すなわち、本発明においては、バンク内の隅部に位置する等高線が2つ以上になるようにして、バンク内の機能膜の膜厚が同じ点を一定の厚さ間隔で結んで等高線を引いたときに、バンク内の隅部に位置する等高線のうち、少なくとも1組の隣接する等高線間の平均距離が、バンク内の最も中央部に位置する2つの等高線間の平均距離よりも長い形態を有していればよい。なお、上記バンク内の隅部とは、バンクのパターンを構成する各辺の中間点を隣接する辺同士で直線により結んだときに、バンク側に形成される領域のことをいい、機能膜側(内側)の内角が180°以上となる隅の近傍については含まない。例えば、四角形状のバンクのパターンが形成される場合には、隅部は4つ存在することとなり、略四角形状で4隅のうち1つに矩形の張出し部が設けられたバンクのパターンが形成される場合には、隅部は5つ存在することとなる。
【0014】
従来の表示装置用基板では、インクジェット法等の液状材料を使用する塗布方法により機能膜が形成される場合、機能膜の等高線パターンは、バンクのパターンや表面特性、及び、液状材料の液滴の着弾パターン等による規制を受けるものの、基本的には、液状材料の液滴の表面張力に起因して、バンク内の中央部を中心とした同心円状に形成される傾向があり、このためにバンク内の隅部には機能膜が充分な膜厚で形成されないこととなる。一方、本発明においては、隅部に液状材料を吐出する(着弾させる)等の方法により、バンク内の隅部における機能膜の膜厚を従来よりも厚くすることで、機能膜の等高線パターンをバンク内の隅部方向に広がりを有するものとしている。
【0015】
上記機能膜は、インク固化物により構成されたものであることが好ましい。インクジェット法により機能膜が形成されると、一般的に、バンク内の隅部で機能膜の未充填が生じるおそれがあるが、隅部に機能膜の液状材料を吐出する(着弾させる)等の方法によれば、本発明の形態を実現することが可能であり、この場合、インクジェット法を用いることでの製造上の利点を得つつ、本発明の作用効果を奏することが可能である。上記インク固化物は、インクジェット装置により吐出可能な液状材料(インク)を乾燥固化させて得られるものであれば特に限定されるものではない。
【0016】
上記バンクは、撥水性材料により形成されたものであることが好ましい。撥水性材料によりバンクが形成されると、バンク内の隅部で機能膜の未充填が生じ易くなるが、隅部に機能膜の液状材料を吐出する(着弾させる)等の方法によれば、本発明の形態を実現することが可能であり、この場合、バンクを乗り越えて液状材料が混合(混色)することを効果的に抑制しつつ、本発明の作用効果を奏することが可能である。上記撥水性材料により形成されたバンクとしては、フッ素ガスを用いたプラズマ処理により、(撥水性を有しない)表面に撥水性を付与したもの、撥水性を有する材料により形成されたもの等が好適に用いられる。プラズマ処理に用いられるフッ素ガスとしては、フッ素原子を含むガスであれば特に限定されないが、CF、SF6、CHF、C等のガス又はこれらをN、He等で希釈したガスが好適に用いられる。上記バンクの撥水性能としては、機能膜の液状材料に対し、50°以上の接触角を示すことが好ましい。
【0017】
上記バンクは、隅部が面取りされた構造を有することが好ましい。表面張力によって球形になろうとする機能膜の液状材料の液滴形状に合わせてバンクの隅部を直線や曲線で面取りすることで、膜厚不足となり易い部分を予めバンクで塞いでおくことができる。その結果、バンク内の隅部からの白抜けを防ぐことができ、本発明の表示装置用基板を用いた表示装置の表示品位を向上させることができる。面取り形状としては特に限定されず、例えば、R面取り、C面取り等が挙げられる。
【0018】
上記バンクは、遮光性材料により形成されたものであることが好ましい。これによれば、機能膜の形成領域間を隔てる遮光部材(ブラックマトリクス)としてバンクを利用することができる。遮光性材料としては、黒色顔料を含有する感光性樹脂等が挙げられる。
【0019】
本発明の表示装置用基板の構成としては、上述の構成要素を含んで形成されるものである限り、その他の構成要素を含んでいても含んでいなくてもよく、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明はまた、機能膜がバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板の製造方法であって、上記製造方法は、バンク内の少なくとも隅部に機能膜の液状材料を吐出することにより、基板上に機能膜を形成する表示装置用基板の製造方法でもある。このような本発明の製造方法によれば、バンク内の隅部まで機能膜の液状材料が広がり、隅部においても充分な機能膜の膜厚を確保することができるため、本発明の表示装置用基板を製造することが可能となり、白抜け等の現象を効果的に抑制して、表示装置の表示品位の向上を実現することができる。
【0021】
上記機能膜の液状材料としては、例えば、(1)顔料を分散媒中に分散させた着色材料、(2)銀、銅、金、パラジウム、ニッケル、それらの合金又は酸化インジウム錫(ITO)等からなる導電性微粒子を分散媒中に分散させたもの、塗布後に還元等の化学反応によって金属が生成されるもの、導電性高分子やこれを溶媒(分散媒)中に溶解(分散)させたもの等からなる電極材料、(3)有機EL用発光層材料、発光層へのキャリア注入に使用されるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等の有機半導体材料等が機能膜の種類に応じて用いられる。これらの中でも、インクジェット法による塗布に適した特性を有するものが好ましい。液状材料の吐出条件は、所望の機能膜の膜厚、液状材料の組成・特性、基板の材質等に応じて適宜調整され、特に限定されるものではない。
【0022】
上記液状材料の吐出は、インクジェット装置を用いて行われることが好ましい。この場合、液状材料の利用効率の向上及び製造プロセスの簡略化を図ることができ、表示装置用基板の製造コストを低減することができる。
上記液状材料の吐出は、バンク内の隅部における吐出量よりも中央部における吐出量を少なくした吐出パターンにより行われることが好ましい。すなわち、バンク内の隅部近傍における液状材料の液滴の着弾間隔を小さくし、中央部近傍における着弾間隔を大きくする。これによれば、液状材料が集まりやすい中央部の膜厚が厚くなり過ぎることを防止し、機能膜の膜厚をより均一にすることができる。
【0023】
本発明の表示装置用基板の製造方法は、細長形状の機能膜を形成する場合は、液状材料の吐出を機能膜の長辺側から行うことが好ましい。これによれば、液状材料の吐出を機能膜の短辺側から行う場合よりも、機能膜の短辺方向における液滴間の間隔の調整が容易であり、吐出装置の走査回数を低減することが可能となる。例えば、機能膜の長辺側(バンクの長辺側)とインクジェットヘッドとを平行に配置し、一方の長辺側から他方の長辺側へインクジェットヘッドをバンクの長辺に対して平行に保って走査すれば、吐出タイミングを制御することにより、一度の走査により、バンクの短辺方向の液滴間の間隔を調整しながら吐出することができる。一方、バンクの長辺方向の液滴間の間隔については、液状材料間の混合(混色)を抑制しつつ、液状材料をバンクの隅部まで充填するという本発明の作用効果を考慮すると、バンクの短辺方向の液滴間の間隔よりも大きくてもよく、インクジェットヘッドに形成されたノズル間の間隔を利用して一定の値とすることでの不都合も小さい。
【0024】
上記液状材料の吐出は、対向し合うバンクの二辺の一方の辺側からバンク内の途中まで吐出を行った後、他方の辺側から残りのバンク内領域に吐出を行うことにより、2回に分けて行われることが好ましい。吐出により基板上に着弾した液滴は、先に着弾した液滴と一体化したときに、先に着弾した液滴の方へ引き寄せられる傾向があるため、一方の辺側のみから1回の走査によりインクを吐出して機能膜を形成した場合には、走査を開始した側の隅部に液状材料が集まり易くなり、対向する他方の辺側の隅部の液量が少なくなる傾向がある。これに対して、上記吐出方法によれば、一方の辺側及び他方の辺側のいずれにおいても、隅部に液状材料を効果的に集めることができ、機能膜の隅部における膜厚を充分に確保して、白抜けを効果的に防止することができる。
【0025】
本発明はまた、上記表示装置用基板の製造方法を用いて製造された表示装置用基板でもある。本発明の表示装置用基板としては、機能膜が着色層であるカラーフィルタ基板、機能膜が画素電極である薄膜トランジスタアレイ基板、機能膜が発光層である有機エレクトロルミネセンスパネル等が好適である。これらの基板によれば、液状材料の未充填領域の発生及び液状材料間の混合(混色)が抑制され、表示装置の表示品位を向上することが可能である。なお、カラーフィルタ基板の場合、通常では、基板上の画素毎にそれぞれ赤色、緑色及び青色の3色の着色層(カラーフィルタ)と、各着色層同士を隔てるバンクとが設けられ、その上層に保護膜、共通電極、配向膜等が積層配置された基板構成を有する。また、薄膜トランジスタアレイ基板の場合、通常では、基板上のドット(各色に対応する副画素)毎にそれぞれ画素電極と、各画素電極同士を隔てるバンクと、各画素電極を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)とが配置された基板構成を有する。更に、有機エレクトロルミネセンス表示パネルの場合、通常では、基板上の画素毎にそれぞれ有機層と各有機層同士を隔てるバンクとが設けられ、各有機層を挟持するように一対の駆動用電極が配置された基板構成を有する。ここで、有機層は、通常では、赤色、緑色及び青色に発光する3色の発光層を含み、更に必要に応じて、電子輸送層やホール輸送層等を含んで構成されるものである。
【0026】
本発明は更に、上記カラーフィルタ基板及び/又は上記薄膜トランジスタアレイ基板を備えてなる液晶表示装置、又は、本発明の表示装置用基板を用いてなる有機エレクトロルミネセンス表示装置でもある。これらの表示装置によれば、白抜け等の現象が効果的に防止されており、表示品位を向上することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の表示装置用基板によれば、機能膜の等高線パターンが、バンク内の隅部方向へ広がりを有することから、インクジェット法等の液状材料を使用する方法での機能膜の形成に際し、バンク内の隅部における液状材料の未充填及び液状材料間の混合(混色)が抑制され、表示装置の表示品位を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に実施例を掲げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
本実施例は、液晶表示装置に使用されるカラーフィルタ基板の着色層(機能膜)を形成する場合について説明するものである。図1(a)は、実施例1における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例1で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示している。
(1)バンクの形成
着色層13の形成に先立ち、基板10上にバンク11を形成した。まず、ガラス基板10上に黒色顔料を含有する感光性アクリル樹脂を塗布し、露光・現像することにより、バンクとしてブラックマトリクス(BM)11を形成した。BM11は、略四角形状の開口部(着色層形成領域:縦150μm×横450μm)がドットマトリクスパターンで配列されるように格子状に形成されている。なお、開口部の配列は特に限定されず、例えば、デルタ配列にしてもよい。また、開口部の形状も特に限定されず、例えば、図2(a)に示すように、開口部の4隅の1つに薄膜トランジスタ(TFT)用の遮光部11aが形成されてもよいし、図2(b)に示すように、開口部の中央部に保持容量配線用の遮光部11bが形成されてもよいし、隅部が面取りされてもよい。
次に、フッ素原子を含むガスをプラズマ化させたものにより、BM11の表面処理を行った。これにより、BM11に撥インク性が付与され、一方、開口部のガラス基板10はフッ素原子で置換されないため親インク性を保持した。
【0030】
(2)着色層の形成
次に、インクジェット装置を用いて、BM11の開口部(バンク内)へ着色層の液状材料(インク)12の吐出を行った。このとき、図1(a)に示すように、BM11内の隅部にインク12を吐出するとともに、BM11の短辺方向におけるインク12の液滴間の間隔が端部から中央部に向かうほど狭くなるように、吐出タイミングを制御した。なお、インク12としては、カラー顔料をメチルカルビトール中に分散させたカラー分散液を用い、これをインクジェット装置により5plの液滴にして吐出を行った。インク12の液滴は、開口部内に合計400pl程度着弾した後、全ての液滴がつながって1つになった。その後、インク12を乾燥して固化させることにより平均厚さ1.6μm、中央部厚さ2.0μm及び隅部厚さ1.0μmの着色層13を形成した。なお、図7(a)に示す従来の吐出パターンにしたこと以外は、実施例1と同様の条件で、図7(b)に示す着色層13を形成した場合、着色層13は、平均厚さ1.6μm、中央部厚さ2.2μm、隅部厚さ0.8μmであった。
本実施例によれば、図1(b)に示すように、隅部にまでインク12が広がるため、図7(b)に示すような従来例と比較して、着色層13の等高線パターンがBM11内の隅部方向に広がりを有することとなる。これにより、BM11内の隅部にインク12が充填されずに白抜けが発生することを防止して、表示装置の表示品位の低下を防止することができた。また、図8の従来例に示したように、BM11の長手方向の中央部へ直線状にインク12の量を多くして吐出した場合と比較して、インク12の吐出される位置がBM11の中央部へいくほど中心へ寄っているため、インク12がBM11上に乗り上げて隣接する着色層13を形成するインク12と混色することを防ぎ、表示装置の表示品位の低下を防止することができた。
【0031】
また、インク12の吐出の際に、インクジェットヘッド21をBM11の短辺に対して平行(図1(a)のA方向)に走査させる場合には、BM11の短辺方向の液滴間の間隔がBM11内の中央部へ行くほど狭くなるのに対し、通常インクジェットヘッド21に設けられたノズル22間の間隔が固定されていることから、インクジェットヘッド21の走査を図1(a)のA方向に複数回行う必要がある。これに対し、本実施例においては、インクジェットヘッド21をBM11の長辺に対して平行(図1(a)のB方向)に走査させたので、吐出のタイミングを制御することにより、BM11の短辺方向の液滴間の間隔を変化させることができた。すなわち、この方法によれば、インクジェットヘッド21に設けられたノズル22間の間隔を利用して長手方向の液滴間の間隔を変化させることなく、吐出のタイミングを制御することにより、短辺方向の液滴間の間隔を変化させることができた。
なお、本発明において、吐出装置の走査方向は特に限定されるものではなく、本実施例のようにバンクの長辺に対して平行に走査させてもよいし、バンクの短辺に対して平行に走査させてもよいし、バンクの開口部に対して斜め方向に走査させてもよい。
【0032】
(実施例2)
図3(a)は、実施例2における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例2で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
本実施例においては、図3(a)に示すように、BM11内の隅部にインク12を吐出するとともに、BM11の長手方向の中央部にインク12を等間隔に1滴ずつ吐出したこと以外は、実施例1と同様にして、平均厚さ1.6μm、中央部厚さ2.0μm及び隅部厚さ1.1μmの着色層13の形成を行った。本実施例によれば、図3(b)に示すように、隅部にまでインク12が広がるため、実施例1と同様の作用効果を得ることができた。
【0033】
(実施例3)
図4(a)は、実施例3における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例3で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
本実施例においては、図4(a)に示すように、BM11内の隅部にインク12を吐出するとともに、BM11内の短辺側の端部から中央部に向かうほど吐出液滴数を減少させるように吐出したこと以外は、実施例1と同様にして、平均厚さ1.6μm、中央部厚さ2.0μm及び隅部厚さ1.1μmの着色層13の形成を行った。本実施例によれば、図4(b)に示すように、隅部にまでインク12が広がるため、実施例1と同様の作用効果を得ることができた。また、本実施例においては、インク12の吐出液滴数をBM11内の中央部へいくほど減少させることで、着色層13内の中央部の膜厚を実施例1の場合よりも薄くしたので、インク12の1滴当たりの量が開口部の面積に対して多いような場合に、BM11内の中央部と周辺部の膜厚差を効果的に減少させることができ、隣接する着色層13を形成するインク12との混色をより効果的に防ぐことができた。その結果、表示装置の表示品位をより効果的に向上することが可能となる。
【0034】
(実施例4)
図5(a)は、実施例4における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例4で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
本実施例においては、図5(a)に示すように、BM11の中央部での吐出をなくしたこと以外は、実施例3と同様にして、平均厚さ1.6μm、中央部厚さ1.9μm及び隅部厚さ1.1μmの着色層13の形成を行った。本実施例によれば、図5(b)に示すように、隅部にまでインク12が広がるため、実施例1と同様の作用効果を得ることができた。また、インク12の吐出量をBM11内の中央部へいくほど減少させることで、実施例3と同様の作用効果を得ることができた。なお、BM11内の中央部での吐出をなくしたことから、実施例3の場合よりも着色層13の中央部の膜厚を薄くすることができた。
【0035】
(実施例5)
図6(a)は、実施例5における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例5で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
本実施例においては、図6(a)に示すように、BM11内へのインク12の吐出を2回に分けて行ったこと以外は、実施例1と同様にして、平均厚さ1.6μm、中央部厚さ2.0μm及び隅部厚さ1.2μmの着色層13の形成を行った。具体的には、対向し合うBM11の二辺の一方の辺側(図6(a)のA方向)からBM11内の中央(図中に示す点線の左側領域)まで吐出を行った後、他方の辺側(図6(a)のB方向)から残りのBM11内領域(図中に示す点線の右側領域)に吐出を行った。BM11内に吐出された液滴は、先に吐出された液滴の方へ引き寄せられる傾向があるため、一方の辺側のみから1回の走査によりインク12を吐出して着色層13を形成した場合には、走査を開始した側に液滴が集まり易くなり、それと対向する辺側の液量は少なくなる傾向がある。その結果、対向する辺側の着色層13の隅部の膜厚が薄くなり、白抜けが生じるおそれがある。これに対して、本実施例では、BM11の両辺側から2回に分けてインクジェットヘッド21を走査したことから、対向する辺側の着色層13の膜厚が薄くなって白抜けが発生することを防止することができ、表示装置の表示品位の均一性を向上することができた。なお、本実施例においても、実施例4と同様にBM11内の中央部にインク12を滴下しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)は、実施例1における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例1で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。
【図2】(a)は、薄膜トランジスタ(TFT)用の遮光部が隅部に設けられたブラックマトリクスにより構成される着色層のドットマトリクスパターンを示す平面模式図であり、(b)は、TFT用の遮光部が隅部に設けられ、かつ保持容量配線用の遮光部が中央部に設けられたブラックマトリクスにより構成される着色層のドットマトリクスパターンを示す平面模式図である。
【図3】(a)は、実施例2における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例2で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。
【図4】(a)は、実施例3における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例3で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。
【図5】(a)は、実施例4における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例4で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。
【図6】(a)は、実施例5における機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、実施例5で形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。
【図7】(a)は、従来の機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、インクの乾燥後に形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
【図8】(a)は、従来の機能膜の液状材料(インク)の液滴の吐出位置を示す平面模式図であり、(b)は、インクの乾燥後に形成された着色層の膜厚を等高線パターンで示す平面模式図である。なお、図中の点線は着色層13の等高線を示す。
【符号の説明】
【0037】
10:ガラス基板
11:ブラックマトリクス(BM)
11a:BMにおけるTFT用の遮光部
11b:BMにおける保持容量配線用の遮光部
12:インク
13:着色層
21:インクジェットヘッド
22:インクジェットノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能膜がバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板であって、
該機能膜の等高線パターンは、バンク内の隅部方向に広がりを有することを特徴とする表示装置用基板。
【請求項2】
前記機能膜は、インク固化物により構成されたものであることを特徴とする請求項1記載の表示装置用基板。
【請求項3】
前記バンクは、撥水性材料により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置用基板。
【請求項4】
前記バンクは、隅部が面取りされた構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置用基板。
【請求項5】
前記バンクは、遮光性材料により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置用基板。
【請求項6】
機能膜がバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板の製造方法であって、
該製造方法は、バンク内の少なくとも隅部に機能膜の液状材料を吐出することにより、基板上に機能膜を形成することを特徴とする表示装置用基板の製造方法。
【請求項7】
前記液状材料の吐出は、インクジェット装置を用いて行われることを特徴とする請求項6記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項8】
前記液状材料の吐出は、バンク内の隅部における吐出量よりも中央部における吐出量を少なくした吐出パターンにより行われることを特徴とする請求項6又は7記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項9】
前記表示装置用基板の製造方法は、細長形状の機能膜を形成する場合に、液状材料の吐出を長辺側から行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項10】
前記液状材料の吐出は、対向し合うバンクの二辺の一方の辺側からバンク内の途中まで吐出を行った後、他方の辺側から残りのバンク内領域に吐出を行うことにより、2回に分けて行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする表示装置用基板。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか又は11に記載の表示装置用基板により構成され、機能膜が着色層であることを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか又は11に記載の表示装置用基板により構成され、機能膜が画素電極であることを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項14】
請求項12記載のカラーフィルタ基板及び/又は請求項13記載の薄膜トランジスタアレイ基板を備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか又は11に記載の表示装置用基板を用いてなることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−178208(P2006−178208A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371747(P2004−371747)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】