説明

表面保護用粘着フィルム

【課題】例えば大面積の光学機能を有する偏光板等の光学デバイスの表面保護用として用いた際の剥離帯電が少なく、しかも優れた汚れ防止効果を有する表面保護用粘着フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムの片側面に帯電防止層およびその上に防汚層を設けるか、または防汚性と帯電防止性とを合わせ有する層を設け、反対側面に親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とを含むアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離帯電防止性に優れた表面保護用粘着フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は静電気が発生しやすいプラスチック素材を用いた偏光板の表面保護用として特に好適に用いることのできる表面保護用粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示板に用いられる偏光板を初めとする等の光学機能を有する光学フィルムは、その表面を保護する目的で表面保護フィルムが貼り付けられる場合が多い。例えば液晶表示板の場合には、偏光板の表面に、液晶セルを組み立てるまでの間偏光板の表面を保護する目的で、表面保護用粘着フィルムが貼り付けられている。従来、かかる表面保護用粘着フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)表面に、偏光板表面に剥離可能に貼り付けることができる軽剥離性の粘着剤層を設けられたものが用いられている。
【0003】
また、偏光板等の光学機能を有する光学フィルムは、粘着剤層を介して表面保護フィルムが貼り付けられ、積層した状態で打ち抜きなどの加工が施される場合がある。その際、表面保護フィルムの背面側(粘着剤層を設けた反対側)に、使用されている粘着剤が付着する場合があるので、粘着剤等の除去を容易にするために背面側に防汚層を設けることが提案されてる。また表面保護フィルムには、静電気を防止するため、帯電防止層が表面保護フィルムの背面側または粘着剤層側に設けることが提案されている。
【0004】
これらの表面保護フィルムは、実装後に表面保護の役目を終えて剥がすとき、剥離帯電を生じやすいという問題がある。従来、剥離面積が小さいために、剥離時に静電気が生じても、その帯電圧は問題を生じるほど大きくならず、得られる電子部品などの製品への影響は少なかった。しかしながら、近年ディスプレイの大型化などに起因して剥離面積も増大し、剥離時の帯電圧も高くなって電子部品などの製品が放電破壊するという問題を生じやすくなった。この問題は、上記の帯電防止層を表面保護フィルムのいずれか一方の面に帯電防止層を設けるか、または、帯電防止剤をフィルム中に添加することにより、ある程度の剥離帯電圧は抑制できるものの、その効果はいまだ不充分なものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−256115号公報
【特許文献2】特開2001−209039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みなされたもので、その目的は、各種光学フィルム、特に大面積の光学機能を有する光学フィルムの表面保護用に用いた際の剥離帯電が少なく、例えば大型ディスプレイ用の各種光学フィルムの表面保護用として用いた際、優れた剥離帯電防止と汚れ防止効果を有する表面保護用粘着フィルムを提供することにある。
【0007】
また、別の目的は、光学フィルム面に積層した場合、粘着層と光学フィルムとの間に気泡が入りがたく、また、保管中や搬送中に表面保護フィルムが光学フィルム面から剥離しがたく、さらには、積層された状態での各種製品の欠陥検査時に障害とならない表面保護用粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくとも一方の面に帯電防止層を有するフィルムの一方の面に防汚層、他方の面に粘着剤層を設け、その際粘着剤として親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤を配合したものを用いれば、優れた剥離帯電防止と汚れ防止効果とが同時に達成できることを見出し本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「ポリエステルフィルムの片側に粘着剤層、その反対側に帯電防止層およびその上に防汚層が形成されているか、または、防汚性と帯電防止性とを有する層が形成された表面保護用粘着フィルムであって、該粘着剤層が親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とを含むアクリル系粘着剤から形成されていることを特徴とする表面保護用粘着フィルム。」が提供される。
【0010】
また好ましい態様として、帯電防止剤が常温で液体のイオン系帯電防止剤であること、帯電防止剤が、下記一般式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むイオン系帯電防止剤であること、
【化1】

アクリル系ポリマーの親水性基が、−(OCHCHORであること(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)、アクリル系粘着剤がイソシアネート系架橋剤を含有すること、粘着剤層中および粘着剤層表面の異物総数が、径150μm以上の異物で0個/mであり、かつ、径70μm以上150μm未満の異物で5個/m以下であること、の少なくともひとつの要件を具備する表面保護用粘着フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面保護用粘着フィルムは、ポリエステルの片側の面に防汚層と帯電防止層を形成するか、帯電防止性と防汚性とを有する層が形成され、他方の面に親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤を含有するアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層が形成されているので、例えば大面積の光学機能を有する光学フィルムの表面保護用に用いた場合でも、該保護フィルムを剥離する際の剥離帯電が少なく、また、例えば表面保護フィルムを光学フィルムに貼り合せた後に裁断した際、裁断面からはみ出した粘着剤が保護フィルム表面に付着することを防止できるので、例えば偏光板の表面保護フィルム用として用いれば、製品の欠陥検査が精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面保護用粘着フィルムは、ポリエステルフィルムの片側の面に防汚性と帯電防止性を有する層(これらの性能を同時に有する層一つであっても、別々に有する層を防汚層が表層になるように積層したものであってもよい)を有し、反対側の面に親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とを含むアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層を有している必要がある。
【0013】
粘着剤層に用いられる、親水性基を有するアクリル系ポリマーと併用される帯電防止剤は、その種類は特に限定する必要はないが、粘着特性を損なうことがなく、しかもアクリル系ポリマー中の親水性基との相互作用により優れた帯電防止効果が得られることからカチオン系またはアニオン系のイオン系帯電防止剤が好ましく、特に窒素、硫黄またはリンのオニウム塩であるカチオン系帯電防止剤、なかでも下記一般式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むカチオン系帯電防止剤が好ましい。
【0014】
【化2】

[式(A)中、Raは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の炭化水素基を表し、RbおよびRcは、同一または異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。但し、窒素原子が2重結合を含む場合にはRcはない。]
[式(B)中、Rdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表し、Re、RfおよびRgは、同一又は異なって、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜16の炭化水素基を表す。]
[式(C)中、Rhは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の炭化水素基を表し、Ri、RjおよびRkは、同一又は異なって、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から16の炭化水素基を表す。]
【0015】
また、本発明で用いられる帯電防止剤は、常温で液体のイオン系帯電防止剤、特に上記一般式(A)〜(C)で表されるカチオン系帯電防止剤が、粘着特性を損なうことなく優れた帯電防止効果が得られるので好ましい。なお、本発明で用いられる帯電防止剤は2種以上を併用しても構わない。
【0016】
好ましく用いられるカチオン系帯電防止剤の式(A)で表されるカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどがあげられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンがあげられる。
【0017】
式(B)で表されるカチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0018】
また式(C)で表されるカチオンとしては、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0019】
一方、好ましく用いられるカチオン系帯電防止剤のアニオン成分は特に限定する必要はなく、例えばCl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)Nなどが用いられる。なかでも、フッ素原子を含むアニオン成分は、常温で液体を示す低融点のイオン系帯電防止剤が得られることから好ましく用いられる。
【0020】
本発明で特に好ましく用いられる、常温で液体のカチオン系帯電防止剤の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分とを適宜選択して組み合わせたものがあげられる。例えば、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどがあげられる。
【0021】
粘着剤層中の帯電防止剤の好ましい配合量は、後述する親水基を有するアクリル系ポリマーの種類によって変わってくるが、あまりに少ないと帯電防止効果が小さくなり、逆に多くなりすぎると被着される光学フィルムなどの汚染が増加する傾向があるので、上記一般式(A)〜(C)をカチオン成分とするカチオン系帯電防止剤の場合では、一般には親水性基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜40重量部が好ましく、0.03〜20重量部がより好ましく、0.05〜10重量部が最も好ましい。
【0022】
次に、本発明の粘着剤層を形成するに用いられるアクリル系ポリマーは、親水性基を有している必要がある。アクリル系ポリマーが親水性基を有していない場合には、上記の帯電防止剤を併用しても十分な剥離帯電低減効果が発現しないばかりか、帯電防止剤が被着体である偏光板などの光学フィルムに転写して、該光学フィルムを汚してしまうため好ましくない。
【0023】
好ましく用いられる親水性基を有するアクリル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜14であるアルキルアクリレートおよび/またはメタアクリレート(以下、(メタ)アクリレートと略称することがある)と、親水性基を有する(メタ)アクリル酸から誘導される(メタ)アクリルモノマーの共重合体をあげることができ、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーの共重合割合は20モル%以上であることが好ましく、特に40モル%以上であることが好ましい。また、共重合体の分子量は、重量平均分子量で10万以上であることが好ましい。
【0024】
ここで好ましく用いられるアルキル基の炭素数が1〜14であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等をあげることができ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、親水性基として水酸基、エーテル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリルモノマーをあげることができ、なかでも、水酸基、エーテル基、エポキシ基などを有するもの、特に、−(OCHCHORで表される水酸基やエーテル結合を有する親水性基(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)が好ましい。具体的には、エチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、テトラエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、および、これらの化合物中に存在する水酸基がエチルエーテル基で置換されたもの、さらには(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等のエポキシ基含有モノマー等をあげることができる。なかでも、−(OCHCHORで表される(但し、n=1〜5)の親水性基を有する、低重合度ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これらの親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーも、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0026】
かかる親水性基を有するアクリル系ポリマーには、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の共重合モノマーを含んでいてもよく、例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類をあげることができる。
【0027】
上記成分を含有する本発明のアクリル系粘着剤は、粘着剤層の耐熱性を向上させる観点から架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては特に制限する必要はないが、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が、適度な凝集力が得られることから好ましく、なかでもイソシアネート系架橋剤が好ましい。好ましく用いられるイソシアネート系架橋剤としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL),トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]などのイソシアネート付加物などがあげられる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
架橋剤の使用量は、用いられる架橋剤と親水性基を有するアクリル系ポリマーの種類、さらには、どのような光学フィルムの表面保護用として用いられるか、などによって適宜選択すればよいが、アクリル系粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るためには、一般的には上記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01重量部以上配合するのが好ましい。しかし、多くなりすぎると粘着剤の柔軟性や接着性が低下する場合があるので、該アクリル系ポリマー100重量部に対して15重量部以下、特に1〜5重量部の範囲とするのが好ましい。
【0029】
さらに本発明の粘着剤層には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種添加剤を使用する用途に応じて適宜添加しても構わない。
【0030】
以上の成分より形成される粘着剤層の厚みは、通常3〜200μmの範囲、好ましくは10〜100μmの範囲となるようにすればよい。粘着剤層の形成方法は特に制限されず、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法を採用すればよい。具体的には、上記の粘着剤成分を適当な溶媒に溶解・分散させた液を、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコートなどの方法から、適宜選択すればよい。
【0031】
また、本発明の表面保護用粘着フィルムを例えば偏光板などの光学フィルムの表面保護に用いる場合には、粘着剤層中および粘着剤表面の異物総数が、径150μm以上の異物で0個/mであり、かつ、70μm以上150μm未満の異物で5個/m以下であることが好ましい。異物の数がこれを超える場合には、被着体である偏光板などの光学フィルムと表面保護用粘着フィルムの粘着層との間に気泡が入ってしみになったり、搬送時に表面保護フィルムが剥離してしまう場合がある。また、偏光板等を表面保護用粘着フィルムを貼付したままで検査する場合の検査精度が低下する場合がある。
【0032】
このように異物数の少ないフィルムは、上記の粘着剤を塗布する際に、該粘着剤塗布液を1μm以上20μm以下のフィルターでろ過したものを使用すればよい。好ましく用いられるフィルターとしては、例えば不織布タイプ、糸巻きタイプ等をあげることができ、粘着剤塗液中のゲル成分および異物を効率的に捕集できるものであれば上記に制限されるものではない。また、ろ過は、1段ではなく、はじめに目の粗いフィルターを用い、次いで目の細かいフィルターを用いる2段以上のろ過を行ってもよい。なお、ろ過処理を施すことによって、粘着剤塗液を調整する際の攪拌処理により生じたエアーを粘着剤塗液から分離できるので好ましい。
【0033】
さらに、粘着剤塗液を塗布する工程のクリーン度をクラス1000以下にすることが好ましい。粘着剤塗液中の異物をなくしても、塗工後の製品の搬送工程で異物が粘着剤層表面についてしまう可能性があるので、クリーン度はできるだけ低い方が好ましい。クリーン度をクラス1000以下に保つためには、工程内に持ち込むエアーをHEPAフィルターでろ過することが好ましい。また、塗工ヘッドの周囲は別室として覆うことが、周囲からの塗液中への塵芥異物汚染を抑制できるので好ましい。
【0034】
また、塵芥は、塗工後のフィルムをスリットする際、ベースフィルムの切粉が付着することにより発生することもある。これを防止するために、スリット刃を丸刃にして一定箇所に切粉がたまらないようにしたり、スリット刃周辺を吸引して発生した切粉が表面保護用粘着フィルムに付着しないようにすることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の表面保護用粘着フィルムは、上記の粘着剤層が形成された面とは反対側の面に、帯電防止層およびその上に防汚層が形成されているか、または、防汚性と帯電防止性とを有する層が形成されている必要がある。かかる構造に積層することにより、表面保護用粘着フィルムが積層された光学フィルムを裁断した際の裁断面からはみ出す粘着剤に起因する表面汚染を抑制することができ、また、表面保護フィルムが積層された各種製品の摩擦帯電に起因するトラブルを抑制することができる。
【0036】
かかる帯電防止層は、例えば層の強度を上げるため、ポリエステルフィルムとの接着性をあげるためなど、必要に応じて熱可塑性のポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーとして併用して帯電防止剤を含む塗液を塗布することによって形成される。好ましく用いられる帯電防止剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性の帯電防止剤等の各種界面活性剤型帯電防止剤、さらには上記の如き帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤等があげられる。例えば第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有し、電離放射線により重合可能なモノマーやオリゴノマー、例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー、それらの第4級化合物等の重合性モノマーを構成成分として含む高分子型帯電防止剤が用いられる。
【0037】
また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーや、スズ、アンチモン系フィラー、酸化インジウム系フィラーをバインダーに分散したものも、帯電防止層として用いることができる。
【0038】
これらのなかでも、下記一般式で表される単位を主たる繰返し単位とするポリチオフェンからなる導電性ポリマー、特に対アニオンがスチレンスルホン酸が共重合されたポリスルホン酸から誘導されたポリアニオンである導電性ポリマーが好ましい。
【0039】
【化3】

(式中、RおよびRは、相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
【0040】
好ましく用いられるポリチオフェン系の導電性ポリマー(ポリカチオン状のポリチオフェンとアニオンとの塩)としては、例えば特開2005−88389号公報に記載の帯電防止層として用いられているポリチオフェン、特開2006−294532号公報に記載されているポリチオフェンを用いることができ、具体的には、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[チオフェン環の約1/3がカチオン化されたもの]とポリスチレンスルホン酸(スルホン酸の約半分がアニオン化されたもの)との複合体をあげることができる。
【0041】
かかる導電性ポリマーは、塗膜強度を向上させる目的で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランを併用することができ、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。
【0042】
また、本発明の帯電防止層には、該層の滑り性や耐ブロッキング性を良好なものとするため、滑剤として平均粒径が0.01〜20μmの無機や有機の微粒子を、例えば0.001〜5重量%の配合割合で含有させることができる。かかる微粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、カオリン、炭酸カルシウム等の無機微粒子、ポリスチレン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、架橋アクリル樹脂、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機微粒子等を好ましくあげることができる。この有機微粒子は、塗膜内で微粒子の状態を保つことができる樹脂であれば、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、また目的に応じた架橋度で架橋された樹脂であってもよい。
【0043】
さらに、上記微粒子以外にも界面活性剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、蛍光増白剤、可塑剤、架橋剤、有機滑剤(滑り剤)、紫外線吸収剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0044】
本発明においては、例えば上記の成分を含む塗液、好ましくは水性塗液を用いてポリエステルフィルムに塗設することにより帯電防止層を形成する。その際、塗液の固形分濃度は1〜30重量%が好ましく、特に2〜20重量%が好ましい。固形分濃度がこの範囲にあると塗液の粘度を塗布に適したものにすることができる。
【0045】
ポリエステルフィルムへの塗液の塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
【0046】
以上に説明した帯電防止層の帯電防止性は、表面固有抵抗で1×10〜1×1012Ω/□の範囲であることが好ましい。この値が1×10Ω/□未満の場合には帯電防止層がもろくなるので好ましくなく、逆に1×1012Ω/□を超える場合には帯電防止性が不足する。
【0047】
また帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmの範囲、特に0.02〜0.5μmの範囲が好ましい。厚みが0.01μm未満であると十分な帯電防止効果が得られないことがあり、他方1μmを超えると耐ブロッキング性が低下することがある。
【0048】
次に、帯電防止層の上に形成される防汚層は、汚れ防止剤(防汚剤)を含む塗液を塗布することによって形成される。かかる防汚層は、適度に低い剥離力を有しているので、例えば表面保護用粘着フィルムを貼り合せた偏光板を断裁しチップ化するときに断裁面からはみ出す粘着剤が、表面保護フィルムに接触してもフィルム表面に付着しにくくさせる効果がある。
【0049】
ここで用いられる汚れ防止剤としては特に限定する必要はないが、例えば長鎖のアルキル側鎖を有するポリマーが好ましく、炭素数12以上、特に16〜20のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーが好ましい。アルキルアクリレートのアルキル鎖の炭素数が12未満では十分な汚れ防止効果が得られないことがある。
【0050】
また長鎖のアルキル側鎖を有する別のポリマーとしては、例えばポリビニルアルコールまたはポリエチレンイミンを塩素化アルキロイルまたはアルキルイソシアネートで長鎖アルキル化した共重合体、具体的には、ポリビニルアルコールとオクタデシルイソシアネートとの反応によって得られるポリビニル−N−オクタデシルカルバメートや、ポリエチレンイミンとオクタデシルイソシアネートとの反応によって得られるポリエチレンイミン−N−オクタデシルカルバメートなどがあげられる。
【0051】
さらに別の汚れ防止剤としては、離形フィルム用などに通常使用されているシリコーン系やフッ素系の離形剤をあげることができる。
【0052】
かかる汚れ防止剤を含む防汚層には、層の強度、帯電防止層又はポリエステルフィルムへの密着性、耐水性、耐溶剤性、ブロッキング性などの向上のためにバインダーとして熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂などの熱可塑性樹脂および/または熱硬化性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などの高分子を含有させることが好ましく、さらに架橋剤として、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ化合物、ポリイソシアネートから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが特に好ましい。
【0053】
防汚層を形成する際の塗液の濃度、塗布方式および塗布条件などの塗布方法は、帯電防止層の塗布方法と同じ方法で実施することができる。
防汚層の厚みは0.01〜1μmの範囲、特に0.03〜0.5μmの範囲が好ましい。厚みが0.01μm未満の場合にはと十分な汚れ防止効果が得られないことがあり、他方1μmを超える層は、過剰品質であり不経済である。
【0054】
また、防汚層の剥離力は、20〜400g/25mmの範囲、特に30〜150g/25mmの範囲であることが好ましい。
なお、ここでいう剥離力は、粘着テープ(日東電工株式会社製、品番;31B)を測定面に貼り付け、300mm/分の速度で180度の角度で剥離するときの力で表される。
【0055】
本発明においては、上記のようにポリエステルフィルムの片面に帯電防止層およびその上に防汚層を設ける替わりに、ポリエステルフィルムの片面に帯電防止剤および防汚剤を同時に含有する層を形成してもよい。この場合には、ポリエステルフィルムに、帯電防止層を設けるための塗液中に前述した汚れ防止剤を含有する溶液または分散液を混合させ、これを同様の方法で塗布すればよい。その際、帯電防止剤と防汚剤との混合割合は、両者の総重量を基準として防汚剤が10〜90重量%、特に20〜70重量%の範囲が帯電防止性と防汚性とを両立させるために好ましい。
【0056】
帯電防止剤と防汚剤とを含有する層は、前記帯電防止層を形成する方法と同様の方法で形成することができる。その際、厚みも0.01〜1μmの範囲、特に0.02〜0.5μmの範囲であることが好ましい。厚みが0.01μm未満の場合には、十分な帯電防止効果と汚れ防止効果が得られないことがあり、他方1μmを超える場合には、耐ブロッキング性が低下することがある。
【0057】
次に、本発明で用いられるポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどからなるフィルムがあげられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。また、ポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよい。ポリエステルフィルムの厚みについても特に制限されるものではないが、10〜200μmの範囲、特に20〜50μmの範囲が適当である。
【0058】
以上に説明した本発明の表面保護用粘着フィルムは、例えば偏光板や画像表面装置の表面に貼付することにより、これらを検査したり搬送する際に表面にキズがつくことを防止し、また、表面に粘着剤が付着するのを防止する。さらには、表面保護を必要としなくなって剥離する際の剥離帯電が少ないので、静電気放電に起因するデバイスの破壊等のトラブル発生を抑制することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0060】
(1)表面固有抵抗値
タケダ理研社製固有抵抗測定器を使用し、測定温度23℃、測定湿度65%RHの雰囲気で、印加電圧100Vで1分後の表面固有抵抗値を測定した。なお、表面固有抵抗値としては、1×1012Ω/□未満が好ましい。
【0061】
(2)防汚性
表面保護用粘着フィルムを偏光板に積層し、16インチディスプレイ用の寸法に裁断し、これを積み重ねた後に偏光板の異物検査を行い、裁断面からはみ出した粘着剤が原因で異物とカウントされた数の全異物数に対する割合を計算し、下記の基準で評価した。
○:1%未満
△:1%以上20%未満
×:20%以上
【0062】
(3)剥離帯電特性
幅70mm、長さ100mmのサイズにカットしたクリア偏光板のセパレーターを剥離した後、あらかじめ除電しておいた厚み1mm、幅70mm、長さ100mmのガラス板にハンドローラーにて貼り合わせて被着体を作製した。偏光板表面保護フィルムを幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、あらかじめ除電しておいたクリア偏光板表面に片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着する。23℃×50%RHの環境下に一日放置した後、30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度10m/minとなるように剥離する。このときに発生する偏光板表面の電位を高さ100mmの位置に固定してある電位測定機[春日電機(株)社製、KSD−0103]にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
○:0.1kV以下
△:0.2kV未満
×:0.2kV以上
【0063】
(4)異物個数の測定
表面保護用粘着フィルムをA4サイズの偏光板に貼り付ける。貼り付けた偏光板保護フィルム全範囲をクロスニコル法にて目視検査して異物検査を行う。検査はサンプル枚数30枚について行い、その結果を用い、1平方メートル当たりの異物に換算する。
○:150μm以上の異物がなく、150μm未満で75μm以上の異物が1個以下
△:150μm以上の異物がなく、150μm未満で75μm以上の異物が5個以下
×:150μm以上の異物があるもしくは、150μm未満で75μm以上の異物が6個以上
【0064】
[実施例1]
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(数平均分子量が12,600、チオフェン環の1/3がカチオン化)15重量部にポリスチレンスルホン酸(数平均分子量が38,700、スルホン酸の40モル%がアニオン化)を25重量部混合した帯電防止剤(導電性ポリマー:M1)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸54モル%、イソフタル酸37モル%、アジピン酸5モル%および5−Naスルホイソフタル酸4モル%、グリコール成分としてエチレングリコール92モル%、ジエチレングリコール5モル%、1,4−ブタンジオール3モル%を用いて得られた共重合ポリエステル樹脂[M2](Tg59℃、数平均分子量20,660)、ならびに脂肪族系のノニオン系界面活性剤[M3]からなる組成物(重量比;M1/M2/M3=30/70/10)の5重量%水性塗液をグラビアコーターで塗布した。次いで、140℃で乾燥して帯電防止層の厚みが0.12μmの積層フィルムを作成した。
【0065】
この帯電防止層の上に、防汚層として、ポリエチレンイミンオクタデシルカルバメート(日本触媒株式会社製、RP−20)20部(固形分重量部)、ポリエステル樹脂(日立化成工業株式会社製、エスペル1510)60部(固形分重量部)、およびメラミン樹脂(三和ケミカル株式会社製、ニカラックNS−11)20部(固形分重量部)を混合して得られた塗工液を、グラビアコーターを用いて塗布し、150℃、30秒間塗膜を乾燥・硬化させ、厚み0.3μmの汚れ防止層を設けた。
【0066】
次いで、この帯電防止層および防汚層を設けた面とは反対側の面に、以下のごとくして粘着剤層を設けた。すなわち、親水性基を持つアクリル成分として、アクリル酸2エチルヘキシルを50モルとアクリル酸ジエチレングリコールエステル50モルとを共重合させた重量平均分子量40万のアクリルポリマーをトルエンで40%に希釈し、これに架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートをアクリルポリマー100重量部に対して2重量部添加し、さらに帯電防止剤として常温で液体であり1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオンとカウンターイオンとしての6フッ化リンとからなるカチオン系帯電防止剤を2重量部添加してアクリル系粘着剤を得た。この粘着剤を、加圧脱泡したのち、20μmの目開きの糸巻きフィルターおよび10μmの糸巻きフィルターの2段でろ過した後、塗工ヘッド周りを別室に隔離した場所でグラビアコーターを用いて塗布し、100℃、2分間塗膜を乾燥・硬化させ、厚み15μmの粘着剤層を設け、表面保護用粘着フィルムを作成した。さらに、この表面保護用粘着フィルムを規定サイズにスリットした。この時切粉防止としてスリット刃に吸引装置を設けて切粉が表面保護フィルムにつかないようにした。この時工程内はHEPAフィルターで集塵されたエアーが供給されておりクリーン度は塗工ヘッド周辺はクラス100、それ以外の工程はクラス1000であった。この表面保護用粘着フィルムの特性を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
粘着剤層に用いた帯電防止剤に替えて、常温で液体の1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンとカウンターイオンとしての6フッ化リンからなる帯電防止剤を2重量部添加する以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
親水性基を有するアクリルポリマーとして、アクリル酸2エチルヘキシル50モルと、アクリル酸エチレングリコールエステル50モルとを共重合させた重量平均分子量40万のアクリルポリマーを使用する以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
親水性基を有するアクリルポリマーとして、アクリル酸2エチルヘキシルを50モル、アクリル酸グリシジルを50モル共重合させて得た重量平均分子量40万のアクリルポリマーを使用する以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例5、6]
親水性基を有するアクリルポリマーとして、アクリル酸2エチルヘキシルと、アクリル酸ジエチレングリコールエステルの共重合割合を表1に示すように変更する以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
粘着剤層に帯電防止剤を添加しない以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
親水性基を有するアクリルポリマーに替えて、アクリル酸2エチルヘキシルが100モルである親水性基を有していないアクリルポリマーを用いる以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例7]
粘着剤層を塗工形成前に塗液をフィルターでろ過しない以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例8]
HEPAフィルターを使用せずに空調を実施したこと以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例9]
粘着剤層に用いた帯電防止剤に替えて、カチオン性の界面活性剤である、ジアルキルアンモニウム クロライド(ライオン株式会社製アーカード20-75I)帯電防止剤を2重量部添加する以外は全て実施例1と同様にして表面保護用粘着フィルムを得た。この評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
以上に説明した本発明の表面保護用粘着フィルムは、粘着層として親水性基を有するアクリル系ポリマー中に帯電防止剤、特にイオン性の帯電防止剤を含有させたものから形成されているので、粘着性を損なうことなく剥離帯電が抑制されている。したがって、例えば偏光板を初め、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表面保護用として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの片側に粘着剤層、その反対側に帯電防止層およびその上に防汚層が形成されているか、または、防汚性と帯電防止性とを有する層が形成された表面保護用粘着フィルムであって、該粘着剤層が親水性基を有するアクリル系ポリマーと帯電防止剤とを含むアクリル系粘着剤から形成されていることを特徴とする表面保護用粘着フィルム。
【請求項2】
帯電防止剤が常温で液体のイオン系帯電防止剤である請求項1記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項3】
帯電防止剤が、下記一般式(A)〜(C)で表されるカチオンの少なくとも1種を含むイオン系帯電防止剤である請求項1または2に記載の表面保護用粘着フィルム。
【化1】

【請求項4】
親水性基を有するアクリル系ポリマーの親水性基が、−(OCHCHORである請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
(但し、Rは水素原子、炭化水素基またはアシル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【請求項5】
アクリル系粘着剤がイソシアネート系架橋剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項6】
粘着剤層中および粘着剤層表面の異物総数が、径150μm以上の異物で0個/mであり、かつ、径70μm以上150μm未満の異物で5個/m以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項7】
偏光板の表面保護用として用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項8】
偏光板に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる表面保護フィルム付偏光板。
【請求項9】
画像表示装置に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用粘着フィルムが貼付されてなる画像表示装置。

【公開番号】特開2008−207356(P2008−207356A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43670(P2007−43670)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】