説明

表面処理用治具

【課題】 本発明は、処理液の浸入防止が必要な被処理体の非処理領域を気密に保持する手段を備え、気密保持の確認を超音波を利用して行うことにより、被処理体にダメージを与えることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができるようにした表面処理用治具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表面処理用治具は、表面処理用の治具において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材と、該カバー部材と被処理体の非処理領域の周囲の間をシールするシール部材とを設け、カバー部材で覆われた内部空間に超音波発生装置を設けることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、半導体製造装置の防着板および真空配管等の被処理体の洗浄処理、メッキ処理、または、アルマイト処理等の表面処理において、処理液が浸入しては問題となる被処理体の非処理領域を気密に保持するための表面処理用治具に関し、特に、気密状態の確認が行えるようにした表面処理用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再使用される部品を清掃する際に、マスキング領域の面加工を必要とすることなく、マスキングした非洗浄領域への洗浄液の浸入を防止して、所望の清掃領域の汚れ等を除去する清掃装置において、被清掃部材の非洗浄領域を覆うマスキング部材と、前記マスキング部材の外周部の前記被清掃部材に接触するシール部と、前記マスキング部材の外周部の前記シール部を前記被清掃部材に密着させて、前記マスキング部材によって覆われた空間を密封するための加圧手段と、前記マスキング部材によって覆われた密封空間に所定の気体を送り込み、密封空間内を所定の圧力に保持する送風手段と、前記被清掃部材を洗浄する洗浄手段と、を有し、前記マスキング部材によって覆われた密封空間内の圧力を外部の圧力より高い状態に保持して、前記被清掃部材の前記マスキング部材に覆われていない洗浄領域を洗浄するようにした清掃装置が知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
また、電気メッキをする際の部分メッキ治具に関し、中空筒状のシール保持具の内周の端部に形成された溝内にシール材を嵌め込んでなる部分電気メッキマスキング治具であって、上記中空筒状のシール保持具内にワークを挿入した状態でメッキ液に浸漬して部分メッキを施すものにおいて、上記シール保持具の溝内に、シール材を嵌め込み、シール材を上記ワークの外周に圧接することでメッキ部と非メッキ部の境界をシールするようにした部分電気メッキマスキング治具が知られている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0003】
これら特許文献1および2に記載の従来技術において、マスキング部材あるいはマスキング治具(以下、これらを総称して単に「治具」と呼ぶ。)の取り付け確認は、実際に、治具の取り付けられた再使用部品あるいはワーク(以下、これらを総称して単に「被処理体」と呼ぶ。)を水等の液体に漬けて気泡の発生がないことにより適切に治具が取り付けられていることを確認していた。
一方、治具の取り付けにおいては、治具を取り付ける際にシール部位に異物等が噛み込まれること、シール部材の付け忘れ、取り付け方法の不良等の問題があった。
また、従来技術においては完全に気密であると確認した上で水に漬けることはできないため、漏れていないことを願うことしかできないものであった。ポカミスや検査ミスは極力少なくすることは出来てもゼロにすることはできないという問題があり、万一、気密が確保されない状態で水等に漬けてしまった場合、被処理体の破損による製作・交換の必要性が生じ、装置全体の運転休止という状態にもなり、大きな問題であった。
【0004】
また、Heリーク試験機のような大型な装置を使用してリーク検査を行う方法等もあるが、処理直前で検査を行うには設備的に大掛かりになり実用的ではなかった。
さらに、内部にガス等を加圧して封入し、治具からの漏れを石鹸水等で泡の発生がないことを確認するような方法では、被処理体が内圧に耐えられずに変形してしまうような構造物の場合には使用できないものであった。
【特許文献1】特開平11−128866号公報
【特許文献2】特開平7−243082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、洗浄処理、メッキ処理、または、アルマイト処理等の表面処理において、処理液の浸入防止が必要な被処理体の非処理領域を気密に保持する手段を備え、気密保持の確認を超音波を利用して行うことにより、被処理体にダメージを与えることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができるようにした表面処理用治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の表面処理用治具は、第1に、表面処理用の治具において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材と、該カバー部材と被処理体の非処理領域の周囲の間をシールするシール部材とを設け、カバー部材で覆われた内部空間に超音波発生装置を設けることを特徴としている。
このように、超音波を利用してシール部材の気密性を確認するため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。
【0007】
また、本発明の表面処理用治具は、第2に、第1の特徴において、表面処理が洗浄処理であることを特徴としている。
また、本発明の表面処理用治具は、第3に、第1の特徴において、表面処理がメッキ処理またはアルマイト処理であることを特徴としている。
本発明の表面処理用治具は、表面処理が洗浄処理、メッキ処理またはアルマイト処理のいずれの場合にも適用できるものである。
【0008】
また、本発明の表面処理用治具は、第4に、第1ないし第3のいずれかの特徴において、非処理領域が被処理体に設けられる電気部品の露出部分であることを特徴としている。
本発明の表面処理用治具は、被処理体に電気部品の露出部分が存在する場合にも、露出部分から処理液が浸入して電気部品を破損するような恐れのない状態でシール部材の気密性を確認できる。
【0009】
また、本発明の表面処理用治具は、第5に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を非処理領域の周囲を囲繞する縦壁と該縦壁で囲まれた上部を覆う天井壁とから形成し、該縦壁と天井壁とで形成する内部空間に超音波発生装置を設け、縦壁の非処理領域の周囲に面する端面にシール部材を装着し、該シール部材装着位置の内側または外側に位置して縦壁を貫通するように複数のボルト孔を形成するとともに該複数のボルト孔に対応して非処理領域の周囲に複数のねじ孔を形成し、複数のボルトによりカバー部材を被処理体に装着することを特徴としている。
このため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。 また、被処理体の非処理領域の周囲の表面形状が平板状をなしている場合はもちろん、球面形状でも適用可能であり、また、表面形状が円筒面のような曲面形状、あるいは、凹凸形状、段差形状の場合にもカバー部材の縦壁およびシール部材の形状を表面形状に合うように変更するだけで適用可能であり、種々の形状の被処理体に対応できる柔軟性を有している。
さらに、カバー部材の形状が簡単で、被処理体への着脱もカバー部材の側からボルトを脱着するだけで簡単にできる。
【0010】
また、本発明の表面処理用治具は、第6に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を非処理領域の周囲を囲繞する縦壁と該縦壁の上部を覆う天井壁とから形成し、該縦壁と天井壁とで形成する内部空間に超音波発生装置を設け、縦壁の非処理領域の周囲に面する端面にシール部材を装着し、該シール部材装着位置の外側に位置して縦壁に複数のねじ孔を形成するとともに該複数のねじ孔に対応して非処理領域の周囲に複数のボルト孔を形成し、複数のボルトによりカバー部材を被処理体に装着することを特徴としている。
このため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。 また、被処理体の非処理領域の周囲の表面形状が平板状をなしている場合はもちろん、球面形状でも適用可能であり、また、表面形状が円筒面のような曲面形状、あるいは、凹凸形状、段差形状の場合にもカバー部材の縦壁およびシール部材の形状を表面形状に合うように変更するだけで適用可能であり、種々の形状の被処理体に対応できる柔軟性を有している。
さらに、カバー部材の形状が簡単で、被処理体への着脱も被処理体の側からボルトを脱着するだけで簡単にできる。
【0011】
また、本発明の表面処理用治具は、第7に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を管状の被処理体の端面フランジと係合するとともに開口を閉止する閉止フランジ形状に形成し、カバー部材の内壁に超音波発生装置を設け、被処理体の端面フランジとカバー部材との間にシール部材を装着し、被処理体の端面フランジとカバー部材とを締め付け部材により締付けることを特徴としている。
このため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。 また、被処理体が端面フランジを備えた管状形状であって、非処理領域が管状体の内面である場合にも適用できる。
さらに、カバー部材の形状が閉止フランジ形状であることから簡単であり、被処理体への着脱もクランプのような締め付け部材により簡単にできる。
【0012】
また、本発明の表面処理用治具は、第8に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を、管状の被処理体の端面にシール部材を介して係合する中空筒を突出させたフランジと、該フランジにシール部材を介して係合するとともに開口を閉止するようにした閉止フランジと、中空筒に外嵌されて被処理体の端部の雄ねじ部と係合する雌ねじ部を備えたキャップとより形成し、フランジと閉止フランジとの内部空間に超音波発生装置を設けることを特徴としている。
このため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。 また、被処理体が雄ねじを備えた管状形状であって非処理領域が管状体の内面である場合にも適用できる。
さらに、カバー部材の被処理体への着脱も、キャップの回動により簡単にできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表面処理用治具は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)超音波を利用してシール部材の気密性を確認するため、被処理体を検査用液体中に浸漬させることなく、簡便にかつ確実に気密保持の確認ができる。また、万一、シール部に漏れが確認された場合でも、非処理領域に検査用液体が浸入するようなことがないため被処理体にダメージを与えることがなく、シール部の再点検および補修作業で済むため、気密性の確認作業を短時間で行うことができる。
(2)表面処理が洗浄処理、メッキ処理またはアルマイト処理のいずれの場合にも適用できる。
(3)被処理体に電気部品の露出部分が存在する場合にも、露出部分から処理液が浸入して電気部品を破損するような恐れのない状態でシール部材の気密性を確認できる。
【0014】
(4)本発明の上記第5の特徴によれば、特に、被処理体の非処理領域の周囲の表面形状が平板状をなしている場合はもちろん、球面形状でも適用可能であり、また、表面形状が円筒面のような曲面形状、あるいは、凹凸形状、段差形状の場合にもカバー部材の縦壁およびシール部材の形状を表面形状に合うように変更するだけで適用可能であり、種々の形状の被処理体に対応できる柔軟性を有している。
さらに、カバー部材の形状が簡単で、被処理体への着脱もカバー部材の側からボルトを脱着するだけで簡単にできる。
(5)本発明の上記第6の特徴によれば、特に、被処理体への着脱も被処理体の側からボルトを脱着するだけで簡単にできる。
(6)本発明の上記第7の特徴によれば、特に、被処理体が端面フランジを備えた管状形状であって、非処理領域が管状体の内面である場合にも適用できる。
また、カバー部材の形状が閉止フランジ形状であることから簡単であり、被処理体への着脱もクランプのような締め付け部材により簡単にできる。
(7)本発明の上記第8の特徴によれば、特に、被処理体が雄ねじを備えた管状形状であって非処理領域が管状体の内面である場合にも適用できる。
また、カバー部材の被処理体への着脱も、キャップの回動により簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る表面処理用治具を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0016】
図1は、本発明の表面処理に係る被処理体の一例を説明する斜視図である。
図1に示された被処理体は、半導体基板にスパッタ処理、真空蒸着処理あるいはプラズマエッチング処理等を施す際に真空処理で生じる飛散物が真空チャンバの内壁に付着することを防止する防着板の一例であり、本例の防着板1は、サセプタに載置された半導体ウェーハを覆うように略円筒形をしており、上部平面部2と側面部3とからなり、内部空間に半導体ウェーハが収容されて所定の処理がなされるものである。
防着板1の上部平面部2は、開口4が形成され、真空チャンバの内壁を加熱するためのヒータ5が埋設されている。ヒータ5は、上部平面部2に設けられたリード線取出口6を介してヒータ5に接続するリード線7により所定温度に加熱される。防着板1の側面部3には、半導体ウェーハの搬送口8が設けられている。
【0017】
上記の防着板1を用いて真空処理を行った場合、真空処理で生じる飛散物は主に防着板1の側面部3の内面に付着する。このため、防着板1を真空チャンバから取り外して定期的に洗浄する必要がある。この洗浄は、防着板1全体を水に漬ける等して行われるが、その際、リード線取出口6に水が浸入するのを防止しなければならない。
【0018】
図1に示した例では、被処理体の処理は洗浄であるが、被処理体の処理がメッキ処理あるいはアルマイト処理においても、図1で説明したと同様、処理液が被処理体の一部に浸入するのを防止する処置が必要となる。
また、図1に示した例では、被処理体の非処理領域であるリード線取出口6の周囲は平板状をなしているので平板状部分に対応できる表面処理用治具が必要であるが、この他、管状体の内面を非処理領域とし、外面を表面処理する場合には管の端部形状に対応できる表面処理用治具が必要となる。
以下、種々の実施の形態について説明する。
【0019】
〔実施の形態1〕
図2は、本発明に係る表面処理用治具の実施の形態1を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は組立前の状態を示す断面図である。
図2においては、説明の便宜上、被処理体10の非処理領域sの周囲の表面形状が平板状をなしている場合を代表して説明するが、非処理領域の周囲の表面形状が、球面形状でも適用可能であり、また、円筒面のような曲面形状、あるいは、凹凸形状、段差形状の場合にも基本構造を変えることなく対応可能である。
【0020】
図2において、被処理体10の非処理領域sを覆うカバー部材11は、金属材料から形成され、非処理領域sの周囲を囲繞する縦壁12と該縦壁12で囲まれた上部を覆う天井壁13とから構成される。縦壁12の非処理領域sの周囲に面する端面にシール部材を構成するOリング14を装着するためのOリング溝15が全周にわたって形成され、該Oリング溝15の位置の内側に位置して縦壁12を貫通するように2本のボルト孔16が形成されている。シール部材としては、Oリングに限らず、処理液に対応して、適宜変更されるものであり、例えば、C型シール、メタルガスケット等の形状を使用することができる。
【0021】
カバー部材11の2本のボルト孔16に対応して被処理体10の非処理領域sの周囲に2本のねじ孔17が形成される。ボルト孔16を貫通してねじ孔17に螺合するように形成されたボルト18は、カバー部材11の上方から挿入されてカバー部材11を被処理体10に固定するものであり、その際、Oリング溝15に装着されるOリング14を被処理体10の非処理領域sの周囲に圧着させて、カバー部材11の縦壁12の端面と被処理体10の非処理領域sの周囲との間をシールする。非処理領域の周囲の表面形状が円筒面、凹凸形状、あるいは、段差形状してる場合は、縦壁12をそれらの表面形状に沿う形状
とすればよい。
本例では、ボルト18を2本使用する場合について説明しているが、カバー部材11の形状あるいは大きさにより3本以上使用しても良いことはもちろんである。
ボルト18の頭部19の下面にも、シール溝20が形成され、該シール溝20にシール部材を構成するOリング21が装着され、ボルト18の頭部19の下面とカバー部材11の上面との間をシールするようになっている。
【0022】
本例の場合、ねじ孔17が被処理領域sに貫通するように設けられる関係上、非処理領域sをシールするためにはねじ孔17の外側をシール線とする必要があるため、Oリング溝15の位置はボルト孔16の外側に設定されており、また、ボルト18の頭部19の下面とカバー部材11の上面との間をシールする必要があるもので、ねじ孔17が被処理体10を貫通しないように設けることが可能である場合には、ねじ孔17の内側をシール線とし、Oリング溝15の位置をボルト孔16の内側に設定することも可能であり、また、ボルト18の頭部19の下面とカバー部材11の上面との間をシールする必要もない。
【0023】
カバー部材11の縦壁12と天井壁13とで形成する内部空間には超音波発生装置22が設けられる。図2の例では、超音波発生装置22は天井壁13の内壁にボルト等の固定手段で固定されているが、これに限定されることなく、縦壁12の内壁に固定しても良く、また、天井壁13から吊支するようにしてもよい。さらに、カバー部材11に固定することなく、内部空間に載置しておいても良い。カバー部材11の縦壁12と天井壁13の厚さは、約2〜10mm程度に形成されるため、シール部に漏れがない限り、超音波発生装置22からの超音波が外部に漏れることはない。
【0024】
超音波発生装置22は、原理的には圧電セラミック等に代表される公知の振動子を有した超音波発信器を備えており、20〜100kHzの周波数の超音波を発生させるものが用いられる。超音波発生装置22のサイズとしては、カバー部材11のサイズに関係するが、例えば、50mm以下に構成することが望ましい。その際、超音波発生装置22の電気回路構成は、基本的に公知の回路と同じ構成でよいが、電源としてボタン電池、角電池等の小型電池を使用するなどすると超音波発生装置22の小型化を図ることができる。
【0025】
超音波検出器23は、カバー部材11の縦壁12の端面と被処理体10の非処理領域sの周囲との間、あるいは、ボルト18の頭部19の下面とカバー部材11の上面との間のシール部から漏れる超音波、すなわち、予め定められた帯域の周波数の超音波を検出し、漏れありの場合、ランプ24等に漏れ信号を出力するようになっている。超音波検出器23としては、公知のものが使用可能である。
【0026】
図2(a)(b)に示すように、カバー部材11の内部空間に超音波発生装置22を装着し、ボルト18によりOリング14を被処理体10の非処理領域sの周囲に圧着させて、カバー部材11の縦壁12の端面と被処理体10の非処理領域sの周囲との間をシールした状態でカバー部材11を被処理体10に固定し、超音波発生装置22により超音波を発信させる。この状態で、カバー部材11の縦壁12の端面と被処理体10の非処理領域sの周囲との間、あるいは、ボルト18の頭部19の下面とカバー部材11の上面との間のシール部に沿って超音波検出器23を移動させ、シール部の漏れを検知する。
なお、被処理体10の非処理領域sの周囲にカバー部材11を固定する前に、超音波検出器23にて、超音波発生装置22がONされて超音波が発信されていることを確認したほうが良い。また、非処理領域s以外の気密を事前に確認しておくと漏れの特定箇所がシール部に限定できるため有効である。
【0027】
漏れ検知において、万一、漏れが検知された場合は、シール部に異物等が噛み込まれていないか、シール部材の付け忘れはないか、あるいは、シール部材の取り付け方法に不良はないか、等を確認し、再度、漏れ検知を行う。
このように、表面処理の被処理体を処理液に漬ける前に、非処理領域に対する気密の確認ができるため、被処理体の不用意な破損等を防止することができる。
【0028】
〔実施の形態2〕
図3は、本発明に係る表面処理用治具の実施の形態2を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は組立前の状態を示す断面図であって、その構成上、図2に示した実施の形態1と異なる点は、下記のとおりである。
なお、図2に示したと同じ符号は同じ部材を示しており、その説明は省略する。
図3において、ボルト18’は、被処理体10の下方から挿入されてカバー部材11を固定するものであり、被処理体10にボルト孔16’が、また、カバー部材11に盲形式のねじ孔17’が形成されている。本例では、ボルト孔16’が被処理領域sの外側に設けられているため、シール部材としてOリング14’を装着するOリング溝15’を、ボルト孔16’の内側に形成することができ、ボルト孔16’の内側がシール線となる。このため、ボルト18’と被処理体10との間をシールする必要はなく、図2に示したOリング21を設ける必要はない。
【0029】
〔実施の形態3〕
図4は、本発明に係る表面処理用治具の実施の形態3を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。なお、図2に示したと同じ符号は同じ部材を示しており、その説明は省略する。
【0030】
図4において、被処理体30は管状部材であって、管状部材の内面が非処理領域sである。
被処理体30の非処理領域sを覆うカバー部材31は、被処理体30の端面フランジ32と係合するとともに開口を閉塞する閉止フランジ形状に形成されている。被処理体30の端面フランジ32とカバー部材31のフランジ33との間にはシール部材であるOリング34が装着される。Oリング34を内側から支持するため、該Oリング34の内周面に支持リング35が添設されている。
【0031】
カバー部材31の内壁に超音波発生装置22をボルト等の固定手段で固定する。
被処理体30の端面フランジ32とカバー部材31のフランジ33とを締め付け具36により締め付け、同時にOリング34を圧縮し気密に固定する。
締め付け具36は、例えば金属材料から形成されるクランプで、図4に示すように、両フランジ32、33が係合可能な溝37を内周側に備えた半円形状の2つのクランプレバー38、39と、該クランプレバー38、39をそれらの一端において回動自在に支持する支持ピン40と、クランプレバー38、39の他端を締め付けるボルト41とからなり、クランプレバー38、39の溝37に両フランジ32、33の外端を嵌合させた状態でボルト41を締め付けることにより、両フランジ32、33の外端を溝37に食い込ませて締め付け固定するものである。
【0032】
図4に示すように、カバー部材31の内壁に超音波発生装置22を装着し、被処理体30の端面フランジ32とカバー部材31のフランジ33との間にOリング34を装着した状態でクランプレバー38、39により両フランジ32、33を締め付け、
被処理体30の非処理領域sをシールした状態で、カバー部材31に固定した超音波発生装置22により超音波を発信させる。この状態で、カバー部材31のフランジ33と被処理体30の端面フランジ32との間のOリング34のシール部に沿って超音波検出器23を移動させ、シール部の漏れを検知する。
【0033】
漏れ検知において、万一、漏れが検知された場合は、シール部に異物等が噛み込まれていないか、シール部材の付け忘れはないか、あるいは、シール部材の取り付け方法に不良はないか、等を確認し、再度、漏れ検知を行う。
このように、表面処理の被処理体を処理液に漬ける前に、非処理領域に対する気密の確認ができるため、被処理体の不用意な破損等を防止することができる。
【0034】
〔実施の形態4〕
図5は、本発明に係る表面処理用治具の実施の形態4を説明するもので、(a)は表面処理用治具を被処理体に装着する前の状態を示す正面断面図、(b)は表面処理用治具と被処理体との係合状態を示す要部の正面図である。なお、図2に示したと同じ符号は同じ部材を示しており、その説明は省略する。
【0035】
図5において、被処理体50は管状部材であって、管状部材の内面が非処理領域sである。被処理体50の端部外面には、図5(a)に示すように、雄ねじ部51が形成されており、接続相手とねじ結合できるようになっている。
被処理体50の非処理領域sを覆うカバー部材67は、被処理体50の端面52にシール部材を構成するメタルパッキン53を介して係合する端面54を備えた中空筒55を突出させたフランジ56と、該フランジ56にシール部材を構成するメタルパッキン57を介して係合するとともに開口を閉止するように形成された閉止フランジ58と、中空筒55に外嵌されて被処理体50の端部の雄ねじ部51と係合する雌ねじ部59を備えたキャップ60とより構成されている。
【0036】
フランジ56および閉止フランジ58には、図5(a)に示すように、それぞれ、凹部63、64が形成され、これら凹部63、64により内部空間65を形成している。この内部空間65には超音波発生装置22が配設されている。また、中空筒55の内部通路66は内部空間65に連通している。
フランジ56および閉止フランジ58には、ねじ孔61が形成され、ボルト62によりフランジ56および閉止フランジ58が締め付けられてメタルパッキン57を圧縮し、両フランジ56、58間を気密にシールする。また、キャップ60を締め付けると、被処理体50の端面52と中空筒55の端面54が締め付けられてメタルパッキン53を圧縮し、両端面52、54間を気密にシールする。
したがって、超音波で漏れを検知する箇所は両フランジ56、58間と両端面52、54間である。
【0037】
図5(a)に示すように、内部空間65に超音波発生装置22を配設し、両フランジ56、58間にメタルパッキン57を装着した状態でボルト62を締め付け、また、被処理体50の端面52と中空筒55の端面54との間にメタルパッキン53を装着した状態でキャップ60を締め付け、被処理体50の非処理領域sをシールした状態で、超音波発生装置22により超音波を発信させる。この状態で、両フランジ56、58間と、被処理体50の端面52と中空筒55の端面54との間とのシール部に沿って超音波検出器23を移動させ、シール部の漏れを検知する。
漏れ検知において、万一、漏れが検知された場合は、実施の形態1ないし3と同様の処置を行う。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の表面処理に係る被処理体の一例を説明する斜視図である。
【図2】本発明に係る表面処理用治具の実施の形態1を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は組立前の状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る表面処理用治具の実施の形態2を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は組立前の状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る表面処理用治具の実施の形態3を説明するもので、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】本発明に係る表面処理用治具の実施の形態4を説明するもので、(a)は表面処理用治具を被処理体に装着する前の状態を示す正面断面図、(b)は表面処理用治具と被処理体との係合状態を示す要部の正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 防着板
2 上部平面部
3 側面部
4 開口
5 ヒータ
6 リード線取出口
7 リード線
8 搬送口
10 被処理体
11 カバー部材
12 縦壁
13 天井壁
14、14’ Oリング14
15、15’ Oリング溝
16、16’ ボルト孔
17、17’ ねじ孔
18、18’ ボルト
19 頭部
20 シール溝
21 Oリング
22 超音波発生装置
23 超音波検出器
24 ランプ
30 被処理体
31 カバー部材
32 端面フランジ
33 フランジ
34 Oリング
35 支持リング
36 締め付け具
37 溝
38 クランプレバー
39 クランプレバー
40 支持ピン
41 ボルト
50 被処理体
51 雄ねじ部
52 端面
53 メタルパッキン
54 端面
55 中空筒
56 フランジ
57 メタルパッキン
58 フランジ
59 雌ねじ部
60 キャップ
61 ねじ孔
62 ボルト
63 凹部
64 凹部
65 内部空間
66 内部通路
67 カバー部材

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理用の治具において、被処理体の非処理領域を覆うカバー部材と、該カバー部材と被処理体の非処理領域の周囲の間をシールするシール部材とを設け、カバー部材で覆われた内部空間に超音波発生装置を設けることを特徴とする表面処理用治具。
【請求項2】
表面処理が洗浄処理であることを特徴とする請求項1記載の表面処理用治具。
【請求項3】
表面処理がメッキ処理またはアルマイト処理であることを特徴とする請求項1記載の表面処理用治具。
【請求項4】
非処理領域が被処理体に設けられる電気部品の露出部分であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
【請求項5】
被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を非処理領域の周囲を囲繞する縦壁と該縦壁で囲まれた上部を覆う天井壁とから形成し、該縦壁と天井壁とで形成する内部空間に超音波発生装置を設け、縦壁の非処理領域の周囲に面する端面にシール部材を装着し、該シール部材装着位置の内側または外側に位置して縦壁を貫通するように複数のボルト孔を形成するとともに該複数のボルト孔に対応して非処理領域の周囲に複数のねじ孔を形成し、複数のボルトによりカバー部材を被処理体に装着することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
【請求項6】
被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を非処理領域の周囲を囲繞する縦壁と該縦壁の上部を覆う天井壁とから形成し、該縦壁と天井壁とで形成する内部空間に超音波発生装置を設け、縦壁の非処理領域の周囲に面する端面にシール部材を装着し、該シール部材装着位置の外側に位置して縦壁に複数のねじ孔を形成するとともに該複数のねじ孔に対応して非処理領域の周囲に複数のボルト孔を形成し、複数のボルトによりカバー部材を被処理体に装着することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
【請求項7】
被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を管状の被処理体の端面フランジと係合するとともに開口を閉止する閉止フランジ形状に形成し、カバー部材の内壁に超音波発生装置を設け、被処理体の端面フランジとカバー部材との間にシール部材を装着し、被処理体の端面フランジとカバー部材とを締め付け部材により締付けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
【請求項8】
被処理体の非処理領域を覆うカバー部材を、管状の被処理体の端面にシール部材を介して係合する中空筒を突出させたフランジと、該フランジにシール部材を介して係合するとともに開口を閉止するようにした閉止フランジと、中空筒に外嵌されて被処理体の端部の雄ねじ部と係合する雌ねじ部を備えたキャップとより形成し、フランジと閉止フランジとの内部空間に超音波発生装置を設けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理用治具。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−42328(P2010−42328A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206304(P2008−206304)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】