説明

表面実装型圧電振動デバイス

【課題】 容器内部に封止材の溶融ガスを吸着し、製品特性に悪影響を及ぼすことがない、より信頼性の高い表面圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電素子31を収納し、上面外周端部にメタライズ層11dが形成されたセラミックのベース1と、当該ベースのメタライズ層の上部に搭載され、金属母材2aとろう材層2bの少なくとも2層からなる金属製のキャップ2とをろう接して気密封止してなる表面実装型圧電振動デバイスであって、前記キャップとベースとが少なくともろう接されてなる領域に、ゲッター材が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等に用いられる水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器などの表面実装型圧電振動デバイスに関し、特に、セラミック製のベースと、ろう材が形成された金属製のキャップとを溶接により気密封止してなる表面実装型圧電振動デバイスを改良するものである。
【背景技術】
【0002】
気密封止を必要とする表面実装型圧電振動デバイスの例として、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等があげられる。これら各製品はいずれも水晶振動片の表面に金属薄膜電極を形成し、この金属薄膜電極を外気から保護するため、気密封止されている。
【0003】
これら圧電振動デバイスは部品の表面実装化の要求から、セラミック材料からなる容器内に気密的に収納する構成が増加している。例えば、特許文献1には、電子部品を収納する断面が逆凹形のベース(セラミックケース)とろう材が形成された金属キャップとからなり、これらをビーム溶接により気密的に封止したセラミック材料からなる容器構成が開示されている。このような構成を採用することで、従来のシーム溶接の容器で必要であった合金リングを使わない構成が得られ、容器の小型化と容器作成工数の削減を達成している。また、このような小型表面実装型圧電振動デバイスでは、圧電振動素子の電気的特性を確保するために、不活性ガス雰囲気中あるいは真空雰囲気中で封止作業が実施される。
【特許文献1】特開平9−246415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記キャップに形成されたろう材を溶接して気密封止する場合、封止時に発生する溶融ガスが、容器内部に残存することにより、製品特性に悪影響を及ぼすことがあった。特に、真空雰囲気中において気密封止される圧電振動デバイスであって、屈曲系の振動モードで励振してなる音叉型振動子では、前記溶融ガスの影響で真空度が悪くなると、CI値特性等に対して顕著な悪影響を及ぼすので、本来の製品特性を確保することが困難な場合があり、良否にばらつきが生じる問題点があった。
【0005】
本発明はこれらの観点を鑑みてなされたものであり、容器内部に封止材の溶融ガスを吸着し、製品特性に悪影響を及ぼすことがない、より信頼性の高い表面圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1による表面実装型圧電振動デバイスは、圧電素子を収納し、上面外周端部にメタライズ層が形成されたセラミックのベースと、当該ベースのメタライズ層の上部に搭載され、金属母材とろう材層の少なくとも2層からなる金属製のキャップとをろう接して気密封止してなる表面実装型圧電振動デバイスであって、前記キャップとベースとが少なくともろう接されてなる領域に、ゲッター材が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に示すように、前記キャップのろう材層に、ゲッター材が含有されてなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に示すように、前記キャップのろう材層、または前記ベースのメタライズ層の少なくとも一方の上面にゲッター材のコーティング膜が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に示すように、前記ゲッター材のコーティング膜が、キャップのみに形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に示すように、前記ゲッター材が、Mg、Ba、Zrからなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に示すように、前記ベースと前記キャップを真空雰囲気中でろう接して気密封止してなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に示すように、前記圧電素子は導電性接合材により前記ベースに固着されてなり、前記ゲッター材の活性化温度は、前記導電性接合材のガス分解温度よりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ろう接されてなる領域に密接してゲッター材が形成されているので、ろう材を溶融させる場合にゲッター材も同時に溶融され、当該ゲッター材が活性化して、封止時に発生するろう材等の溶融ガスを前記ゲッター材に効率よく吸着することができる。従って、容器内部に当該溶融ガスを残存させることがなくなるので、製品特性に悪影響を及ぼすことがなく、製品歩留まりも向上する。より信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスを提供することができる。
【0014】
本発明の特許請求項2によれば、上述の作用効果に加えて、キャップのろう材層に、ゲッター材が含有させているので、キャップのろう材が溶融することで、キャップとベースの接合すると同時に溶融ガスを吸着することができる。つまり、ろう材層に封止するための機能と溶融ガス吸着するための機能を併せ持たせることができる。また、ろう材にゲッター材を含有させているので、溶融ガスが発生するキャップとベースのろう接されてなる領域に、極めて容易かつ効率的にゲッター材を配置させることができる。さらに、キャップとして小割切断する前のウェハ状態の金属母材にゲッター材を含有させたろう材層を形成することができるので、極めて容易かつ安価に製造できる。
【0015】
本発明の特許請求項3によれば、上述の作用効果に加えて、キャップのろう材層、または前記ベースのメタライズ層の少なくとも一方の上面にゲッター材のコーティング膜が形成させているので、キャップのろう材が溶融することで、キャップとベースの接合すると同時にゲッター材のコーティング膜が溶融することで、溶融ガスを吸着することができる。特に、コーティング膜により、ゲッター材を表面層に配置できるので、ガス吸着効果が高められる。また、キャップのろう材層、または前記ベースのメタライズ層の少なくとも一方の上面にゲッター材のコーティング膜が形成させているので、溶融ガスが発生するキャップとベースのろう接されてなる領域に、極めて容易かつ効率的にゲッター材を配置させることができる。
【0016】
本発明の特許請求項4によれば、上述の作用効果に加えて、前記ゲッター材のコーティング膜が、キャップ側のみに形成されてなることで、キャップとして小割切断する前のろう材層が形成されたウェハ状態の金属母材の上面にゲッター材のコーティング膜を形成することができるので、極めて容易かつ安価に製造できる。
【0017】
本発明の特許請求項5によれば、上述の作用効果に加えて、Mg、Ba、Zrを含有させたキャップのろう材層、あるいは前記キャップのろう材層やベースのメタライズ層の上面にMg、Ba、Zrからなるコーティング膜を形成することで、封止時に発生する溶融ガスを効率よく吸着するゲッター材が得られる。
【0018】
本発明の特許請求項6によれば、上述の作用効果に加えて、前記ベースと前記キャップを真空雰囲気中でろう接して気密封止してなることで、ろう接されてなる領域に密接して形成されたゲッター材が、封止時に発生する溶融ガスを効率よく吸着することができ、容器内部に当該溶融ガスを残存させず、かつ内部真空度を悪化させることがなくなるので、圧電振動デバイスのCI値を悪化させることがない。
【0019】
本発明の特許請求項7によれば、上述の作用効果に加えて、前記圧電素子は導電性接合材により前記ベースに固着されてなり、前記ゲッター材の活性化温度は、前記導電性接合材のガス分解温度よりも低いので、導電性接合材からガスを一切発生させない状態で、ゲッター材のみを活性化させることができる。つまり、ゲッター材の活性化温度で熱処理を行うことで、導電性接合材からガスを発生させることなく、ゲッター材のみを活性化させ、より容器内部に当該溶融ガスを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による第1の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図1は第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の断面図であり、図2は第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の封止状態を示した断面図である。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有する平面矩形状のベース1と、当該ベースの中に収納される圧電素子である水晶振動片3と、ベースの開口部に接合されるキャップ2とからなる。
【0021】
ベース1は、例えばアルミナセラミック材料からなり、矩形平板形状のベース基体1aと、中央部分が大きく穿設されるとともに外形サイズが上記ベース基体1aとほぼ等しい枠体1b、1c、1dとからなり、さらに上記枠体1dの上面にはタングステンやモリブデンなどからなるメタライズ層11dが形成され、これら各層が積層されて一体的に焼成されている。上記焼成成形後、枠体1dのメタライズの上面には、図示していないが、例えばニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成している。つまり、ベース1は、断面でみて凹形の電子素子収納部10を有した形態となっており、凹形周囲の堤部11上に周状のメタライズ層11dが形成されている。このベース外周の4角には、図示していないが、上下にキャスタレーションと連結電極が形成されており、当該連結電極は、枠体1bの上面に形成された電極パッド12,13(13については図示せず)、およびベース底面に形成された端子電極(図示せず)へとそれぞれ電気的に延出されている。なお、これらの端子電極、連結電極、電極パッドは、上記メタライズ層11dと同様に、タングステン、モリブデン等のメタライズ層を、ベースと一体的に焼成して形成し、当該メタライズ層の上部にニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成して構成されている。
【0022】
上記電極パッドの上部には圧電素子である例えば音叉型水晶振動片3が搭載されている。水晶振動片3には一対の励振電極(図示せず)が形成され、例えば水晶振動片3に接してクロム、金の順で電極が形成されている。各励振電極は上記ベースの各々の電極パッドに引き出されており、当該電極パッドに励振電極が形成された水晶振動片3が、例えばシリコーン系の導電性樹脂接着剤やはんだなどの導電性接合材Dにより導電接合され、片持ち保持されている。
【0023】
ベースを気密封止する金属製のキャップ2は平板形状であり、コバールからなる金属母材2aに対してより軟質の銀ろうなどのろう材層2bが圧延などの手法によりクラッド化されており、かつ上記金属母材2a側からろう材層2b側に向かってプレス打ち抜きすることで形成している。このろう材層2bには、Mg、あるいはBa等からなるゲッター材が含有されている。これらは、ろう材の融点を上昇させないように含有させるのが好ましい。
【0024】
上記ベースとキャップは、図示していないが、治具によりキャップの位置決めと加重を行いながら、真空雰囲気の加工室で気密封止作業(溶接)が行われる。加工室では、真空雰囲気とされているので、ガスは容器内から加工室の外部に排出される。このように容器の内部にガスを残存させず、真空にした状態で、加工室で封止加工を行う。封止加工は、例えば、電子ビームBによる溶接が行われ、図2に示すように、キャップ外周端部近傍に沿って周状にろう材を溶融(ろう接)させ気密封止を行う。以上により表面実装型の水晶振動子の完成となる。
【0025】
つまり、本発明の第1の実施形態によれば、電子ビ−ムで溶融されるキャップのろう材にゲッター材が含有され、キャップの全面にろう材層2bが形成されているので、封止時にろう材の溶融とともにゲッター材が活性化され、発生する溶融ガスを効率よく吸着することができる。加えて、上記水晶振動片3が導電性接合材Dにより導電接合されてなる領域はキャップとベースとがろう接されてなる領域に近接しており、封止部分で溶融したゲッター材が近くに存在しているので、封止時の熱等によって、上記導電性接合材Dからガスが発生することがあっても、これらのガスも吸着することができる。従って、容器内部に当該ろう材の溶融ガスや導電性接合材の発生ガスを残存させず、かつ内部真空度を悪化させることが一切なくなるので、音叉型水晶振動子のCI値を悪化させることがない。
【0026】
なお、ビーム溶接の場合、金属キャップの構成として、ニッケルからなる金属材と、コバールからなる金属材と、銀ろうなどのろう材層、ニッケルからなるメッキ層が順次積層されたもの、あるいはニッケルからなる金属材と、コバールからなる金属材と、銀ろうなどのろう材層が順次積層されたものであっても、あるいはニッケルからなる金属材と、コバールからなる金属材と、銅からなる金属材と、銀ろうなどのろう材層が順次積層されたものであっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0027】
次に、本発明による第2の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図3は第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の断面図であり、図4は第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の封止状態を示した断面図である。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有する平面矩形状のベース1と、当該ベースの中に収納される圧電振動板である水晶振動片3と、ベースの開口部に接合されるキャップ2とからなる。上記実施形態と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛している。
【0028】
ベース1は、例えばアルミナセラミック材料からなり、矩形平板形状のベース基体1aと、中央部分が大きく穿設されるとともに外形サイズが上記ベース基体1aとほぼ等しい枠体1eとからなり、上記枠体1eの上面にはタングステンやモリブデンなどからなるメタライズ層11eが形成され、これら各層が積層されて一体的に焼成されている。上記焼成成形後、枠体1eのメタライズの上面には、図示していないが、例えばニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成している。つまり、ベース1は、断面でみて凹形の電子素子収納部10を有した形態となっており、凹形周囲の堤部11上に周状のメタライズ層11eが形成されている。このベース外周の4角には、図示していないが、上下にキャスタレーションと連結電極が形成されており、当該連結電極は、ベース内部の底面に形成された電極パッド12,13(13については図示せず)、およびベース底面に形成された端子電極(図示せず)へとそれぞれ電気的に延出されている。なお、これらの端子電極、連結電極、電極パッドは、上記メタライズ層11eと同様に、タングステン、モリブデン等のメタライズ層を、ベースと一体的に焼成して形成し、当該メタライズ層の上部にニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成して構成されている。
【0029】
上記電極パッドの上部には圧電振動素子である例えばATカットの矩形水晶振動片31が搭載されている。水晶振動片31には一対の励振電極(図示せず)が形成され、例えば水晶振動片31に接してクロム、金、またはクロム、銀、クロムの順で電極が形成されている。各励振電極は上記ベースの各々の電極パッドに引き出されており、当該電極パッドに励振電極が形成された水晶振動片31が、例えばシリコーン系の導電性樹脂接着剤などの導電性接合材Dにより導電接合され、片持ち保持されている。
【0030】
ベースを気密封止する金属製のキャップ2は平板形状であり、ニッケルからなる金属材2dと、コバールからなる金属材2aと、銅からなる金属材2cと、銀ろうなどのろう材層2bが順次積層され、圧延などの手法によりクラッド化されており、かつ上記ニッケル金属材2d側からろう材層2b側に向かってプレス打ち抜きすることで形成している。このろう材層2bには、Mg、あるいはBa等からなるゲッター材が含有されている。
【0031】
上記ベースとキャップは、図示していないが、治具によりキャップの位置決めを行いながら、真空雰囲気の加工室で気密封止作業(溶接)が行われる。加工室では、真空雰囲気とされているので、ガスは容器内から加工室の外部に排出される。このように容器の内部にガスを残存させず、真空にした状態で、加工室で封止加工を行う。封止加工は、例えば、シーム封止による溶接が行われ、図4に示すように、一対のシームローラRを、キャップ外周端部近傍に沿って接触させながら転動させて大電流を流し、ろう材を溶融(ろう接)させ気密封止を行う。以上により表面実装型の水晶振動子の完成となる。
【0032】
つまり、本発明の第2の実施形態によれば、シーム溶接により溶融されるキャップのろう材にゲッター材が含有され、キャップの全面にろう材層2bが形成されているので、封止時にろう材の溶融とともにゲッター材が活性化され、発生する溶融ガスを効率よく吸着することができる。加えて、上記水晶振動片31が導電性接合材Dにより導電接合されてなる領域はキャップとベースとがろう接されてなる領域に近接しており、封止部分で溶融したゲッター材が近くに存在しているので、封止時の熱等によって、上記導電性接合材Dからガスが発生することがあっても、これらのガスも吸着することができる。従って、容器内部に当該ろう材の溶融ガスや導電性接合材の発生ガスを残存させず、かつ内部真空度を悪化させることが一切なくなるので、音叉型水晶振動子のCI値を悪化させることがない。
【0033】
なお、シーム溶接の場合、金属キャップの構成として、ニッケルからなる金属材と、コバールからなる金属材と、ニッケルからなる金属材と、銀ろうなどのろう材層が順次積層されたもの、あるいはニッケルからなる金属材と、コバールからなる金属材と、銀ろうなどのろう材層が順次積層されたものであっても、本実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、凹形周囲の堤部上に周状のメタライズ層のみが形成されたものを例にしているが、メタライズ層の上部にコバールなどの封止用金属リングが形成された物にも適用できる。
【0034】
次に、本発明による第3の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図とともに説明する。図5は第3の実施形態を示す表面実装型水晶振動子のキャップ部分の拡大図であり、図6は第3の他の実施形態を示す表面実装型水晶振動子のキャップ部分の拡大図である。上記実施形態と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛している。
【0035】
第3の実施形態では、ゲッター材をろう材層に含有させることによって形成するのではなく、ろう材層2bの上面にMg、Ba、あるいはZr等からなるゲッター材層2e(コーティング層)を形成している。すなわち、図5に示すように、コバールからなる金属母材2aに対してより軟質の銀ろうなどのろう材層2bが圧延などの手法によりクラッド化しており、その上面から封止領域にのみ、蒸着法やスパッタリング法等によりゲッター材層2eを形成し、かつ上記金属母材2a側からゲッター材層2e側に向かってプレス打ち抜きすることで形成している。なお、封止領域のみのパターン形成は、機械的マスクやエッチングなどにより行うことができる。また、図6に示すように、ニッケルからなる金属材2dと、コバールからなる金属材2aと、銅からなる金属材2cと、銀ろうなどのろう材層2bが順次積層され、圧延などの手法によりクラッド化しており、その上面から少なくとも封止面全面に、蒸着法やスパッタリング法等によりゲッター材層2fを形成し、かつ上記ニッケル金属材2d側からゲッター材層2f側に向かってプレス打ち抜きすることで形成している。なお、このゲッタ材層2fはキャップ封止面全面に形成されている。
【0036】
本発明の第3の実施形態によれば、電子ビ−ムやシーム溶接で溶融されるキャップのろう材層の上面にゲッター材層が形成されているので、封止時にろう材の溶融とともにゲッター材が活性化され、発生する溶融ガスを効率よく吸着することができる。従って、容器内部に当該ろう材の溶融ガスや導電性接合材の発生ガスを残存させず、かつ内部真空度を悪化させることが一切なくなるので、音叉型水晶振動子のCI値を悪化させることがない。
【0037】
また、第3の実施形態では、図示しない導電性接合材Dのガス分解温度よりも、前記ゲッター材層2e、あるいはゲッター材層2fの活性化温度を低く設定している。例えば、シリコーン系の導電性樹脂接着剤の場合は300°以下、はんだの場合ははんだ溶融温度以下でゲッター材層2fの活性化温度を設定している。このため、このような設定温度で、熱処理工程を行うことで、導電性接合材Dからガスは一切発生しない状態で、ゲッター材のみを活性化させ、より容器内部に当該溶融ガスを除去することができる。特に、図6の構成では、導電性接合材Dのガス分解温度よりも低い温度で活性化するゲッター材層2fをキャップ封止面全体に形成しているので、封止工程後、前記ゲッター材の活性化する温度で熱処理を行うことができる。これにより、導電性接合材Dからガスを発生させることなく、ゲッター材層2fのみを活性化させ、容器内部に残存した封止溶融ガスを除去することができ、より効率的に内部真空度を向上させることができる。
【0038】
次に、本発明による第4の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図とともに説明する。図7は第4の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の断面図である。上記実施形態と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛している。
【0039】
第4の実施形態では、キャップのろう材層の上面にゲッター材層を形成するのではなく、ベースのメタライズ層11eの上面にMg、あるいはBa等からなるゲッター材層11gを形成している。すなわち、図7に示すように、ベース1は、例えばアルミナセラミック材料からなり、矩形平板形状のベース基体1aと、中央部分が大きく穿設されるとともに外形サイズが上記ベース基体1aとほぼ等しい枠体1eとからなり、上記枠体1eの上面にはタングステンやモリブデンなどからなるメタライズ層11eが形成され、これら各層が積層されて一体的に焼成されている。上記焼成成形後、枠体1dのメタライズの上面には、図示していないが、例えばニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキ、さらにその上部に、蒸着法やスパッタリング法等によりゲッター材層11gを形成している。
【0040】
本発明の第4の実施形態によれば、電子ビ−ムやシーム溶接で溶融されるキャップのろう材層に対応するベースのメタライズ層の上面にゲッター材層が形成されているので、特別なパターン形成することなく、封止されるパッケージの外周部分のみにゲッター材層を形成することができる。このため、封止時に発生する溶融ガスを効率よく吸着することができ、容器内部に当該溶融ガスを残存させず、かつ内部真空度を悪化させることがなくなるので、音叉型水晶振動子のCI値を悪化させることがない。
【0041】
上記各実施形態は、単独形態で実施するだけでなく、それぞれの形態の一部を選択的に組み合わせて実施することも可能である。なお、上記実施形態では、溶接の手法として、電子ビームやシーム溶接を例にしているが、イオンビーム、レーザビームなどの他のビーム溶接や他のろう接でもよく、真空雰囲気に限らず、不活性ガス雰囲気で封止してもよい。また、ろう材として銀ろうを例にしているが、金スズろう、鉛フリーはんだ等の公知のろう材でもよく、公知のメッキ材の一部を溶融させてろう材としてもよい。ゲッター材として、Mg、Ba、あるいは、Zrに限らず、他の公知の材料を用いることも可能である。また、圧電振動板として音叉型水晶振動片、ATカット水晶振動片を例にしているが、圧電フィルタ素子、SAW(弾性表面波)素子等の圧電振動デバイス素子、もしくは他の電子部品素子であってもよい。さらに、上記実施形態では、表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器、弾性表面波デバイス、もしくは半導体デバイスなど電子機器等に用いられる他の表面実装型の電子部品用容器にも適用できる。
【0042】
本発明は、その精神または収容な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の断面図。
【図2】第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の封止状態を示した断面図。
【図3】第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の断面図。
【図4】第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の封止状態を示した断面図。
【図5】第3の実施形態を示す表面実装型水晶振動子のキャップ部分の拡大図。
【図6】第3の他の実施形態を示す表面実装型水晶振動子のキャップ部分の拡大図。
【図7】第4の実施形態を示す表面実装型水晶振動子のキャップ部分の拡大図。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース
2 キャップ
3 水晶振動片(圧電素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を収納し、上面外周端部にメタライズ層が形成されたセラミックのベースと、当該ベースのメタライズ層の上部に搭載され、金属母材とろう材層の少なくとも2層からなる金属製のキャップとをろう接して気密封止してなる表面実装型圧電振動デバイスであって、
前記キャップとベースとが少なくともろう接されてなる領域に、ゲッター材が形成されてなることを特徴とする表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記キャップのろう材層に、ゲッター材が含有されてなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記キャップのろう材層、または前記ベースのメタライズ層の少なくとも一方の上面にゲッター材のコーティング膜が形成されてなることを特徴とする特許請求項1、または2記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記ゲッター材のコーティング膜が、キャップのみに形成されてなることを特徴とする特許請求項3記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記ゲッター材が、Mg、Ba、Zrからなることを特徴とする特許請求項1〜4のうちいずれか1項記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記ベースと前記キャップを真空雰囲気中でろう接して気密封止してなることを特徴とする特許請求項1〜5のうちいずれか1項記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記圧電素子は導電性接合材により前記ベースに固着されてなり、前記ゲッター材の活性化温度は、前記導電性接合材のガス分解温度よりも低いことを特徴とする特許請求項1〜6のうちいずれか1項記載の表面実装型圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−86585(P2006−86585A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266796(P2004−266796)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】