表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置
【課題】 表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置に関し、欠陥検査の検知精度の向上を図るために位相シフトを用いつつ検査時間を低減する。
【解決手段】 互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成し、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射し、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得し、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する。
【解決手段】 互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成し、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射し、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得し、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置に関し、携帯電話などの筐体の滑らかな単一色塗装面上のブツ(paint coat prticle)・キズ等の凹凸欠陥を精度良く検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話など小型機器のデザインが流麗化し、複雑な表面形状を持つようになったため、より緻密に塗装面のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査する必要性が増大している。しかし、携帯電話などの筐体検査の多くは目視検査に頼っているのが現状である。そのため、検査コストの低減と検査結果の定量性の観点から、自動検査への要望が増大していた。
【0003】
対象表面のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査する方法として、従来の技術としては明暗照明を用いる方法があったので、図8を参照して説明する。図8は、従来の明暗照明を用いた凹凸欠陥の検査方法の一例の説明図である。図8(a)に示すように、明暗パターン23をスクリーン24に投影し、これを滑らかな検査対象物の試料21に映し込み、その反射像をカメラ25で撮像する。
【0004】
図8(b)の上部に示すように、滑らかな表面、即ち、正常面の場合には、投影パターンが映り込んだ画像が撮像される。一方、試料21の表面上にブツ等の凹凸欠陥22がある異常面の場合には、図8(b)の下部に示すように周りの明暗パターンが映り込み、正常面とは違った明るさ変化を示すことにより顕著化する。この現象を利用して、滑らかな表面上のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査していた。
【0005】
検査性能の向上のためには、明暗パターンに正弦波状の明るさ変化を持つ照明パターンを使い、位相を変えて投影した映り込み像を撮像し、位相シフトを使うことも提案されている。
【0006】
図9は、従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の撮像画像の説明図であり、時間毎にπ/2だけ位相をずらした正弦波状の明るさ変化を持つ照明パターンを照射すると、撮像画像毎に同じ凹凸欠陥が異なった状態で検出される。
【0007】
図10は、従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の反射光の明るさ変化の説明図であり、正常面の場合にはある一点の時間毎、即ち、撮像画像毎に明るさI1〜I4は、π/2ずつずれる。即ち、
I1=A+Bcos(φ)
I2=A+Bcos(φ+π/2)
I3=A+Bcos(φ+π)
I4=A+Bcos(φ+3π/2)
となる。
【0008】
ここで、位相シフト演算を行ってある一点のビジビリティγを、
γ=B/A=2{(I4−I2)2+(I1−I3)2}1/2/(I1+I2+I3+I4)
として求める。
【0009】
一方、ブツ欠陥によるある一点の明るさの変化I’1〜I’4は,
I’1=A’+B’cos(φ’)
I’2=A’+B’cos(φ’+π/2)
I’3=A’+B’cos(φ’+π)
I’4=A’+B’cos(φ’+3π/2)
となる。
【0010】
ここで、位相シフト演算を行ってブツ欠陥によるある一点の明るさビジビリティγ’を、
γ’=B’/A’=2{(I’4−I’2)2+(I’1−I’3)2}1/2/(I’1+I’2+I’3+I’4)
として求める。
【0011】
このように、照明パターンの位相をシフトさせることにより、ブツ等の凹凸欠陥に対しては、欠陥位置による検出感度の不均一性を低減して、より安定して欠陥を検知することができる。
【0012】
方向性を持つキズ等の凹凸欠陥には、図9に示した位相をシフトさせたストライプパターンを複数方向用意して、それらのパターンを切り替えて検査をすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−099726号公報
【特許文献2】特開2009−264800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、照明パターンの位相をシフトさせる場合には、位相を変えるため複数枚の撮像を行う必要があり、検査時間が増大するという問題がある。また、方向性を有する凹凸欠陥の場合には複数方向のパターンを用いるため、パターン切換え回数の数だけ検査時間が増大するという問題もある。
【0015】
したがって、本発明は、欠陥検査の検知精度の向上を図るために位相シフトを用いつつ検査時間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
開示する一観点からは、互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程とを有することを特徴とする表面欠陥検査方法が提供される。
【0017】
また、開示する別の観点からは、互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段とを有することを特徴とする表面欠陥検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
開示の表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置によれば、欠陥検査の検知精度の向上を図るために位相シフトを用いつつ検査時間を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法に用いる表面欠陥検査装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における各単色カラー明暗パターンの説明図である。
【図4】本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図5】本発明の実施例2の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図6】本発明の実施例3の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図7】本発明の実施例4の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図8】従来の明暗照明を用いた凹凸欠陥の検査方法の一例の説明図である。
【図9】従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の撮像画像の説明図である。
【図10】従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の反射光の明るさ変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法を説明する。図1は、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法の説明図であり、ここでは、合成照明パターンの作成方法の一例を説明する。図1(a)乃至図1(c)はそれぞれ互いに波長が異なった複数の照明明暗パターンの説明図であり、ここでは、正弦波状の輝度分布の位相を互いにずらした例として示している。
【0021】
典型的には、赤、緑、青の三原色の輝度方向の位相差が2π/3(rad)になるように各照明明暗パターンを作成する。なお、波長(色)の数は任意であり、2色でも良いし、或いは、分光光源やLEDの単色光を用いる場合には4色以上でも良く、好適には各色の輝度方向の位相差を2π/n(nは色の数)とする。但し、赤、緑、青の三原色はカラー液晶プロジェクタで作成できるので最も簡単である。図1(d)は、図1(a)乃至図1(c)の明暗パターンを重ね合わせた合成照明パターンであり、謂所虹色の帯が周期的に配列したパターンとなる。
【0022】
但し、このような一方向の周期的パターンでは、方向性のある凹凸欠陥の検出精度が高くないので、パターン平面内で位相シフト方向に対して交差する方向、典型的には直交する方向に正弦波状に変調して検出精度を高めるようにしても良い。
【0023】
或いは、図1(a)乃至図1(c)に示した明暗パターンを互いに回転させて重ね合わせて合成照明パターンを作成しても良い。例えば、2色を重ね合わせる場合には互いに直交するように重ね合わせ、3色を重ね合わせる場合には120°ずつずらして回転させて重ね合わせれば良い。但し、回転して重ね合わせる場合には、各波長の輝度分布の変化は正弦波状である必要はなく、矩形パルス状に変化する明暗パターンでも良い。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法に用いる表面欠陥検査装置の概念的構成図である。試料2を載置する試料ステージ1と、試料2に合成照明パターンを照射するカラー照明光源4と、合成照明パターンを合成する照明コントローラ5と、試料2からの反射像を撮像するカラー撮像手段6と、撮像手段コントローラ7を備えている。また、これらの各部材は、制御手段8で制御され、試料ステージ1はステージコントローラ9でX−Yの移動が制御される。
【0025】
カラー撮像手段6で撮像された画像は、制御手段8において、各波長毎に分解して、従来のモノクロ明暗パターンと同様な手法で試料2の表面の凹凸欠陥3の判別を行い、判定結果は、出力手段10から出力する。なお、カラー照明光源4及び照明コントローラ5としては、典型的にはカラー液晶プロジェクタを用い、また、カラー撮像手段6としては、CCDカメラ等のカラー撮像装置を用いる。
【0026】
また、制御手段8は、典型的にはパーソナルコンピュータ或いは特別に作製したCPUを備えた制御機器である。なお、図1(d)に示した合成照明パターンを用いる場合には、一括撮像した位相画像をRGB画像に分解し、3ステップの従来と同様の位相シフト演算を行う。また、方向性を有する凹凸欠陥に対応するように、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調した場合には、画素単位毎に位相シフト演算を行う。
【0027】
このように、複数の波長の明暗パターンをパターン平面上で位相シフト或いは回転させて合成した合成照明パターンを用いているので、欠陥検査に必要な複数枚の画像を一括して撮像することができる。これによって、検査精度の向上と検査時間の維持との両立が可能になる。
【実施例1】
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法を説明する。図3は、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における各単色カラー明暗パターンの説明図であり、図3(a)乃至図3(c)は、それぞれ赤(R)、緑(G)及び青(B)の単色光源を用いたカラー明暗パターンにおける輝度分布図である。各単色カラー明暗パターンは互いに2π/3(rad)だけ位相がずれた正弦波となっている。
【0029】
図4は、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図であり、図4(a)は、図3(a)乃至図3(b)の各RGBの単色カラー明暗パターンを重ね合わせた合成照明パターンである。この合成照明パターンは、所謂帯状の虹パターンが周期的に繰り返したパターンとなっている。
【0030】
図4(b)は各色毎の輝度分布を示したもので、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった状態になっている。また、図4(a)において×で示した位置におけるRGBの相対輝度I1,I2,I3は図4(b)の破線で示した位置の輝度となる。
【0031】
このような合成照明パターンを用いて表面欠陥検査を行う場合には、図2を参照すると、まず、図示していないハンドラ等から検査対象となる試料2を試料ステージ1上に載置する。載置したことが制御手段8に出力されると、制御手段8は必要に応じてステージコントローラ9により試料ステージ1を動かし、試料2がカラー撮像手段6の視野内に入るよう調整を行うことにより測定準備を行う。
【0032】
測定準備には、カラー撮像手段6の視野内の欠陥箇所が合成照明パターンの照明により映り込むことによって鮮鋭化されるよう、合成照明パターンの照明位置を調整しておく。また、この時、映り込みパターンが正反射条件でカラー撮像手段6に入るように対象を傾けることや、必要であればカラー撮像手段6の撮像面も傾けることも含まれる。
【0033】
測定準備が整ったことが制御手段8に出力されると、制御手段8は照明コントローラ5により、合成照明パターンを試料2に向けて照射し、撮像手段コントローラ7を制御して、RGB画像を一括して取り込む。得られた撮像データは撮像手段コントローラ7を経由して、制御手段8内のメモリに蓄積される。撮像データがメモリに蓄積されたことが制御手段8に出力されると、撮像画像を各RGB画像毎に分解し、各画素についてビジビリティγを算出する。なお、分解された各RGB画像は、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図3(a)乃至図3(c)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。
【0034】
同時に制御手段8はステージコントローラ9を制御して、次の検査位置まで試料ステージ1を駆動する。制御手段8は撮像データからたとえば図10に示した方法を用いて欠陥箇所を検出し、その検査結果を適宜出力手段10に出力する。制御手段8は測定箇所が無くなるまで上述の動作を繰り返す。
【0035】
撮像した画像をRGB画像に分解して凹凸欠陥を検出する場合には、図4におけるI1,I2,I3の位置における明るさは、位相差α=2π/3であるので、
I1=A+Bcos(φ−2π/3)
I2=A+Bcos(φ)
I3=A+Bcos(φ+2π/3)
となるので、ビジビリティγは、
γ=B/A
={{[1−cos(α)](I1−I3)}2+[sin(α)(2I2−I1−I3)]2}1/2/[I1+I3−2I2cos(α)]sin(α)
となる。
【0036】
このように、本発明の実施例1においては、ブツ等の欠陥について欠陥位置による検出感度の不均一性を低減するために位相シフトを用いる際に、色分割を利用しているので、検査時間の増大を回避することができる。これによって、携帯電話などの筐体の単一色塗装面の凹凸欠陥を効率良く検査でき、検査精度の向上と検査時間の高速化に寄与するところが大きい。
【実施例2】
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の実施例2の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例2は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、実施例1における合成照明パターンをパターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調したものであり、その他の構成及び操作方法等は上記の実施例1と同様である。
【0038】
図5は、本発明の実施例2の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図5(a)に示すように、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった周期的な帯状の虹パターンが、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向(図においては縦方向)に正弦波状に褶曲したパターンになっている。
【0039】
図5(b)は各色毎の輝度分布を示したもので、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった状態になっている。また、図4(b)の場合と同様に、図5(a)において×で示した位置におけるRGBの相対輝度I1,I2,I3は、図5(b)の破線で示した位置の輝度となる。
【0040】
このように、本発明の実施例2においては、一方向の輝度分布だけではなく、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調しているので、方向性を有する凹凸欠陥を検査する場合に照射パターンの切換えが不要になる。
【実施例3】
【0041】
次に、図6を参照して、本発明の実施例3の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例3は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、2色の単色カラー明暗パターンを用いるとともに、一方の単色カラー明暗パターンを他方の単色カラー明暗パターンに対して回転して重ねわせて合成照明パターンを作成するものである。
【0042】
図6は、本発明の実施例3の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図6(a)及び図6(b)は合成前の単色カラー明暗パターンであり、ここでは、赤と緑の単色カラー明暗パターンを互いに直交する方向に回転させた状態を示している。但し、作図の都合上、赤と緑は密度の異なったドットで表わし、暗部は白抜きで表わしている。
【0043】
図6(c)は、図6(a)及び図6(b)を合成した合成照明パターンであり、目視的には、直交している格子状のパターンとともに、それに対して45°傾斜した碁盤の目状のパターンが見られる。
【0044】
この場合、分解された各単色画像は、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図6(a)及び図6(b)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。異常面の場合には、分解した単色画像それぞれから取得できる欠陥の論理和を蓄積する。
【0045】
このように、本発明の実施例3においては、2色の単色カラー明暗パターンを回転させて重ね合わせているので、照射パターン切換を要することなく、方向依存性のあるキズを精度良く検出することができる。
【実施例4】
【0046】
次に、図7を参照して、本発明の実施例4の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例3は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、RGB3色の単色カラー明暗パターンを用いるとともに、一方の単色カラー明暗パターンを他の2つの単色カラー明暗パターンに対して回転して重ねわせて合成照明パターンを作成するものである。
【0047】
図7は、本発明の実施例4の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図7(a)乃至図7(c)は合成前の単色カラー明暗パターンであり、ここでは、RGBの単色カラー明暗パターンを互いに120°或いは60°回転させた状態を示している。但し、ここでも作図の都合上、赤と緑と青は密度の異なったドットで表わし、暗部は白抜きで表わしている。
【0048】
図7(d)は、図7(a)乃至図7(c)を合成した合成照明パターンであり、目視的には、互いに60°で交わる3本の直線からなるパターンとともに、菱形状のパターンが見られる。
【0049】
この場合、分解された各単色画像も、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図7(a)乃至図7(c)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。異常面の場合には、分解した3つの単色画像それぞれから取得できる欠陥の論理和を蓄積する。
【0050】
このように、本発明の実施例4においては、RGBの単色カラー明暗パターンを回転させて重ね合わせているので、照射パターン切換を要することなく、多方向に方向依存性のあるキズを精度良く検出することができる。
【0051】
ここで、実施例1乃至実施例4を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程と
を有することを特徴とする表面欠陥検査方法。
(付記2)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記3)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させるとともに、前記第1の方向と異なった第2の方向に正弦波状に変化させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記撮像した画像の画素毎に前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記4)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる2つの波長をパターン平面上で直交方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記5)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長をパターン平面上で3方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記6)
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段と
を有することを特徴とする表面欠陥検査装置。
(付記7)
前記照射手段が、カラー液晶プロジェクタであり、
前記撮像手段が、カラー撮像素子である
ことを特徴とする付記6に記載の表面欠陥検査装置。
【符号の説明】
【0052】
1 試料ステージ
2 試料
3 凹凸欠陥
4 カラー照明光源
5 照明コントローラ
6 カラー撮像手段
7 撮像手段コントローラ
8 制御手段
9 ステージコントローラ
10 出力手段
21 試料
22 凹凸欠陥
23 明暗パターン
24 スクリーン
25 カメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置に関し、携帯電話などの筐体の滑らかな単一色塗装面上のブツ(paint coat prticle)・キズ等の凹凸欠陥を精度良く検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話など小型機器のデザインが流麗化し、複雑な表面形状を持つようになったため、より緻密に塗装面のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査する必要性が増大している。しかし、携帯電話などの筐体検査の多くは目視検査に頼っているのが現状である。そのため、検査コストの低減と検査結果の定量性の観点から、自動検査への要望が増大していた。
【0003】
対象表面のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査する方法として、従来の技術としては明暗照明を用いる方法があったので、図8を参照して説明する。図8は、従来の明暗照明を用いた凹凸欠陥の検査方法の一例の説明図である。図8(a)に示すように、明暗パターン23をスクリーン24に投影し、これを滑らかな検査対象物の試料21に映し込み、その反射像をカメラ25で撮像する。
【0004】
図8(b)の上部に示すように、滑らかな表面、即ち、正常面の場合には、投影パターンが映り込んだ画像が撮像される。一方、試料21の表面上にブツ等の凹凸欠陥22がある異常面の場合には、図8(b)の下部に示すように周りの明暗パターンが映り込み、正常面とは違った明るさ変化を示すことにより顕著化する。この現象を利用して、滑らかな表面上のブツ・キズ等の凹凸欠陥を検査していた。
【0005】
検査性能の向上のためには、明暗パターンに正弦波状の明るさ変化を持つ照明パターンを使い、位相を変えて投影した映り込み像を撮像し、位相シフトを使うことも提案されている。
【0006】
図9は、従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の撮像画像の説明図であり、時間毎にπ/2だけ位相をずらした正弦波状の明るさ変化を持つ照明パターンを照射すると、撮像画像毎に同じ凹凸欠陥が異なった状態で検出される。
【0007】
図10は、従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の反射光の明るさ変化の説明図であり、正常面の場合にはある一点の時間毎、即ち、撮像画像毎に明るさI1〜I4は、π/2ずつずれる。即ち、
I1=A+Bcos(φ)
I2=A+Bcos(φ+π/2)
I3=A+Bcos(φ+π)
I4=A+Bcos(φ+3π/2)
となる。
【0008】
ここで、位相シフト演算を行ってある一点のビジビリティγを、
γ=B/A=2{(I4−I2)2+(I1−I3)2}1/2/(I1+I2+I3+I4)
として求める。
【0009】
一方、ブツ欠陥によるある一点の明るさの変化I’1〜I’4は,
I’1=A’+B’cos(φ’)
I’2=A’+B’cos(φ’+π/2)
I’3=A’+B’cos(φ’+π)
I’4=A’+B’cos(φ’+3π/2)
となる。
【0010】
ここで、位相シフト演算を行ってブツ欠陥によるある一点の明るさビジビリティγ’を、
γ’=B’/A’=2{(I’4−I’2)2+(I’1−I’3)2}1/2/(I’1+I’2+I’3+I’4)
として求める。
【0011】
このように、照明パターンの位相をシフトさせることにより、ブツ等の凹凸欠陥に対しては、欠陥位置による検出感度の不均一性を低減して、より安定して欠陥を検知することができる。
【0012】
方向性を持つキズ等の凹凸欠陥には、図9に示した位相をシフトさせたストライプパターンを複数方向用意して、それらのパターンを切り替えて検査をすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−099726号公報
【特許文献2】特開2009−264800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、照明パターンの位相をシフトさせる場合には、位相を変えるため複数枚の撮像を行う必要があり、検査時間が増大するという問題がある。また、方向性を有する凹凸欠陥の場合には複数方向のパターンを用いるため、パターン切換え回数の数だけ検査時間が増大するという問題もある。
【0015】
したがって、本発明は、欠陥検査の検知精度の向上を図るために位相シフトを用いつつ検査時間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
開示する一観点からは、互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程とを有することを特徴とする表面欠陥検査方法が提供される。
【0017】
また、開示する別の観点からは、互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段とを有することを特徴とする表面欠陥検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
開示の表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置によれば、欠陥検査の検知精度の向上を図るために位相シフトを用いつつ検査時間を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法に用いる表面欠陥検査装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における各単色カラー明暗パターンの説明図である。
【図4】本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図5】本発明の実施例2の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図6】本発明の実施例3の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図7】本発明の実施例4の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。
【図8】従来の明暗照明を用いた凹凸欠陥の検査方法の一例の説明図である。
【図9】従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の撮像画像の説明図である。
【図10】従来の位相シフト明暗パターンを用いた場合の反射光の明るさ変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法を説明する。図1は、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法の説明図であり、ここでは、合成照明パターンの作成方法の一例を説明する。図1(a)乃至図1(c)はそれぞれ互いに波長が異なった複数の照明明暗パターンの説明図であり、ここでは、正弦波状の輝度分布の位相を互いにずらした例として示している。
【0021】
典型的には、赤、緑、青の三原色の輝度方向の位相差が2π/3(rad)になるように各照明明暗パターンを作成する。なお、波長(色)の数は任意であり、2色でも良いし、或いは、分光光源やLEDの単色光を用いる場合には4色以上でも良く、好適には各色の輝度方向の位相差を2π/n(nは色の数)とする。但し、赤、緑、青の三原色はカラー液晶プロジェクタで作成できるので最も簡単である。図1(d)は、図1(a)乃至図1(c)の明暗パターンを重ね合わせた合成照明パターンであり、謂所虹色の帯が周期的に配列したパターンとなる。
【0022】
但し、このような一方向の周期的パターンでは、方向性のある凹凸欠陥の検出精度が高くないので、パターン平面内で位相シフト方向に対して交差する方向、典型的には直交する方向に正弦波状に変調して検出精度を高めるようにしても良い。
【0023】
或いは、図1(a)乃至図1(c)に示した明暗パターンを互いに回転させて重ね合わせて合成照明パターンを作成しても良い。例えば、2色を重ね合わせる場合には互いに直交するように重ね合わせ、3色を重ね合わせる場合には120°ずつずらして回転させて重ね合わせれば良い。但し、回転して重ね合わせる場合には、各波長の輝度分布の変化は正弦波状である必要はなく、矩形パルス状に変化する明暗パターンでも良い。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態の表面欠陥検査方法に用いる表面欠陥検査装置の概念的構成図である。試料2を載置する試料ステージ1と、試料2に合成照明パターンを照射するカラー照明光源4と、合成照明パターンを合成する照明コントローラ5と、試料2からの反射像を撮像するカラー撮像手段6と、撮像手段コントローラ7を備えている。また、これらの各部材は、制御手段8で制御され、試料ステージ1はステージコントローラ9でX−Yの移動が制御される。
【0025】
カラー撮像手段6で撮像された画像は、制御手段8において、各波長毎に分解して、従来のモノクロ明暗パターンと同様な手法で試料2の表面の凹凸欠陥3の判別を行い、判定結果は、出力手段10から出力する。なお、カラー照明光源4及び照明コントローラ5としては、典型的にはカラー液晶プロジェクタを用い、また、カラー撮像手段6としては、CCDカメラ等のカラー撮像装置を用いる。
【0026】
また、制御手段8は、典型的にはパーソナルコンピュータ或いは特別に作製したCPUを備えた制御機器である。なお、図1(d)に示した合成照明パターンを用いる場合には、一括撮像した位相画像をRGB画像に分解し、3ステップの従来と同様の位相シフト演算を行う。また、方向性を有する凹凸欠陥に対応するように、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調した場合には、画素単位毎に位相シフト演算を行う。
【0027】
このように、複数の波長の明暗パターンをパターン平面上で位相シフト或いは回転させて合成した合成照明パターンを用いているので、欠陥検査に必要な複数枚の画像を一括して撮像することができる。これによって、検査精度の向上と検査時間の維持との両立が可能になる。
【実施例1】
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法を説明する。図3は、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における各単色カラー明暗パターンの説明図であり、図3(a)乃至図3(c)は、それぞれ赤(R)、緑(G)及び青(B)の単色光源を用いたカラー明暗パターンにおける輝度分布図である。各単色カラー明暗パターンは互いに2π/3(rad)だけ位相がずれた正弦波となっている。
【0029】
図4は、本発明の実施例1の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図であり、図4(a)は、図3(a)乃至図3(b)の各RGBの単色カラー明暗パターンを重ね合わせた合成照明パターンである。この合成照明パターンは、所謂帯状の虹パターンが周期的に繰り返したパターンとなっている。
【0030】
図4(b)は各色毎の輝度分布を示したもので、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった状態になっている。また、図4(a)において×で示した位置におけるRGBの相対輝度I1,I2,I3は図4(b)の破線で示した位置の輝度となる。
【0031】
このような合成照明パターンを用いて表面欠陥検査を行う場合には、図2を参照すると、まず、図示していないハンドラ等から検査対象となる試料2を試料ステージ1上に載置する。載置したことが制御手段8に出力されると、制御手段8は必要に応じてステージコントローラ9により試料ステージ1を動かし、試料2がカラー撮像手段6の視野内に入るよう調整を行うことにより測定準備を行う。
【0032】
測定準備には、カラー撮像手段6の視野内の欠陥箇所が合成照明パターンの照明により映り込むことによって鮮鋭化されるよう、合成照明パターンの照明位置を調整しておく。また、この時、映り込みパターンが正反射条件でカラー撮像手段6に入るように対象を傾けることや、必要であればカラー撮像手段6の撮像面も傾けることも含まれる。
【0033】
測定準備が整ったことが制御手段8に出力されると、制御手段8は照明コントローラ5により、合成照明パターンを試料2に向けて照射し、撮像手段コントローラ7を制御して、RGB画像を一括して取り込む。得られた撮像データは撮像手段コントローラ7を経由して、制御手段8内のメモリに蓄積される。撮像データがメモリに蓄積されたことが制御手段8に出力されると、撮像画像を各RGB画像毎に分解し、各画素についてビジビリティγを算出する。なお、分解された各RGB画像は、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図3(a)乃至図3(c)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。
【0034】
同時に制御手段8はステージコントローラ9を制御して、次の検査位置まで試料ステージ1を駆動する。制御手段8は撮像データからたとえば図10に示した方法を用いて欠陥箇所を検出し、その検査結果を適宜出力手段10に出力する。制御手段8は測定箇所が無くなるまで上述の動作を繰り返す。
【0035】
撮像した画像をRGB画像に分解して凹凸欠陥を検出する場合には、図4におけるI1,I2,I3の位置における明るさは、位相差α=2π/3であるので、
I1=A+Bcos(φ−2π/3)
I2=A+Bcos(φ)
I3=A+Bcos(φ+2π/3)
となるので、ビジビリティγは、
γ=B/A
={{[1−cos(α)](I1−I3)}2+[sin(α)(2I2−I1−I3)]2}1/2/[I1+I3−2I2cos(α)]sin(α)
となる。
【0036】
このように、本発明の実施例1においては、ブツ等の欠陥について欠陥位置による検出感度の不均一性を低減するために位相シフトを用いる際に、色分割を利用しているので、検査時間の増大を回避することができる。これによって、携帯電話などの筐体の単一色塗装面の凹凸欠陥を効率良く検査でき、検査精度の向上と検査時間の高速化に寄与するところが大きい。
【実施例2】
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の実施例2の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例2は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、実施例1における合成照明パターンをパターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調したものであり、その他の構成及び操作方法等は上記の実施例1と同様である。
【0038】
図5は、本発明の実施例2の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図5(a)に示すように、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった周期的な帯状の虹パターンが、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向(図においては縦方向)に正弦波状に褶曲したパターンになっている。
【0039】
図5(b)は各色毎の輝度分布を示したもので、3つの色に対応する正弦波が2π/3(rad)だけ位相がずれて重なった状態になっている。また、図4(b)の場合と同様に、図5(a)において×で示した位置におけるRGBの相対輝度I1,I2,I3は、図5(b)の破線で示した位置の輝度となる。
【0040】
このように、本発明の実施例2においては、一方向の輝度分布だけではなく、パターン平面内で位相シフト方向に対して直交する方向に正弦波状に変調しているので、方向性を有する凹凸欠陥を検査する場合に照射パターンの切換えが不要になる。
【実施例3】
【0041】
次に、図6を参照して、本発明の実施例3の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例3は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、2色の単色カラー明暗パターンを用いるとともに、一方の単色カラー明暗パターンを他方の単色カラー明暗パターンに対して回転して重ねわせて合成照明パターンを作成するものである。
【0042】
図6は、本発明の実施例3の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図6(a)及び図6(b)は合成前の単色カラー明暗パターンであり、ここでは、赤と緑の単色カラー明暗パターンを互いに直交する方向に回転させた状態を示している。但し、作図の都合上、赤と緑は密度の異なったドットで表わし、暗部は白抜きで表わしている。
【0043】
図6(c)は、図6(a)及び図6(b)を合成した合成照明パターンであり、目視的には、直交している格子状のパターンとともに、それに対して45°傾斜した碁盤の目状のパターンが見られる。
【0044】
この場合、分解された各単色画像は、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図6(a)及び図6(b)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。異常面の場合には、分解した単色画像それぞれから取得できる欠陥の論理和を蓄積する。
【0045】
このように、本発明の実施例3においては、2色の単色カラー明暗パターンを回転させて重ね合わせているので、照射パターン切換を要することなく、方向依存性のあるキズを精度良く検出することができる。
【実施例4】
【0046】
次に、図7を参照して、本発明の実施例4の表面欠陥検査方法を説明する。この実施例3は方向性のある凹凸欠陥の検出精度を高めるために、RGB3色の単色カラー明暗パターンを用いるとともに、一方の単色カラー明暗パターンを他の2つの単色カラー明暗パターンに対して回転して重ねわせて合成照明パターンを作成するものである。
【0047】
図7は、本発明の実施例4の表面欠陥検査方法における合成照明パターンの説明図である。図7(a)乃至図7(c)は合成前の単色カラー明暗パターンであり、ここでは、RGBの単色カラー明暗パターンを互いに120°或いは60°回転させた状態を示している。但し、ここでも作図の都合上、赤と緑と青は密度の異なったドットで表わし、暗部は白抜きで表わしている。
【0048】
図7(d)は、図7(a)乃至図7(c)を合成した合成照明パターンであり、目視的には、互いに60°で交わる3本の直線からなるパターンとともに、菱形状のパターンが見られる。
【0049】
この場合、分解された各単色画像も、試料1の表面が欠陥のない正常面である場合には、図7(a)乃至図7(c)に示した、重ね合わせる前の単色カラー明暗パターンに対応した単色カラー明暗パターンとなる。異常面の場合には、分解した3つの単色画像それぞれから取得できる欠陥の論理和を蓄積する。
【0050】
このように、本発明の実施例4においては、RGBの単色カラー明暗パターンを回転させて重ね合わせているので、照射パターン切換を要することなく、多方向に方向依存性のあるキズを精度良く検出することができる。
【0051】
ここで、実施例1乃至実施例4を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程と
を有することを特徴とする表面欠陥検査方法。
(付記2)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記3)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させるとともに、前記第1の方向と異なった第2の方向に正弦波状に変化させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記撮像した画像の画素毎に前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記4)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる2つの波長をパターン平面上で直交方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記5)
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長をパターン平面上で3方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする付記1に記載の欠陥検査方法。
(付記6)
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段と
を有することを特徴とする表面欠陥検査装置。
(付記7)
前記照射手段が、カラー液晶プロジェクタであり、
前記撮像手段が、カラー撮像素子である
ことを特徴とする付記6に記載の表面欠陥検査装置。
【符号の説明】
【0052】
1 試料ステージ
2 試料
3 凹凸欠陥
4 カラー照明光源
5 照明コントローラ
6 カラー撮像手段
7 撮像手段コントローラ
8 制御手段
9 ステージコントローラ
10 出力手段
21 試料
22 凹凸欠陥
23 明暗パターン
24 スクリーン
25 カメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程と
を有することを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項2】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させるとともに、前記第1の方向と異なった第2の方向に正弦波状に変化させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記撮像した画像の画素毎に前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長をパターン平面上で3方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段と
を有することを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項1】
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンをパターン平面上で互いに変調させて合成照明パターンを合成する工程と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する工程と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する工程と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する工程と
を有することを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項2】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長間で、第1の方向の輝度変化に対する位相が2π/3ずつ違うように正弦波状に変調させるとともに、前記第1の方向と異なった第2の方向に正弦波状に変化させて合成する工程であり、
前記凹凸欠陥を判別する工程が、前記撮像した画像の画素毎に前記各波長毎の輝度値を用いた位相シフト演算を行った結果に基づいて凹凸部を欠陥として判別する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記合成照明パターンを合成する工程が、互いに異なる3つの波長をパターン平面上で3方向に変調させて合成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
互いに異なった複数の波長をそれぞれ独立に変調した明暗パターンを互いにずらして合成照明パターンを合成する照明パターン合成手段と、
前記合成した合成照明パターンを検査対象物に照射する照射手段と、
前記検査対象物からの前記合成照明パターンの反射パターンを撮像して波長毎の画像を一括して取得する撮像手段と、
前記撮像した画像を波長毎に分解して前記検査対象物の表面の凹凸欠陥を判別する制御手段と
を有することを特徴とする表面欠陥検査装置。
【図2】
【図3】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図3】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−113657(P2013−113657A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258766(P2011−258766)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]