説明

被処理体の熱処理装置及び熱処理方法

【課題】アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出できる被処理体の熱処理装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wに対して熱処理を施すための熱処理部を有する熱処理装置において、被処理体と温測用被処理体58a〜58eとを収容する処理容器8と、加熱手段12と、処理容器内へロードされる保持手段22と、ガス導入手段40と、測定用電波を送信する送信用アンテナと、弾性波素子より発せられる温度に応じた周波数の電波を受ける受信用アンテナと、受信用アンテナで受けた電波に基づいて温測用被処理体の温度を求める温度分析部70と、加熱手段を制御する温度制御部50とを備え、送信用アンテナと受信用アンテナとを前記熱処理部に設けられた導電性部材にそれぞれ兼用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に熱処理を施すための熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、IC等の半導体集積回路を形成するためには、シリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、エッチング処理、酸化拡散処理、アニール処理等の各種の処理を繰り返し行っている。この場合、成膜処理に代表される熱処理を半導体に対して施すには、ウエハに対する温度管理が重要な要素の1つとなっている。すなわち、ウエハ表面に形成される薄膜の成膜速度や、この膜厚の面間及び面内均一性を高く維持するためには高い精度でウエハの温度を管理することが求められる。
【0003】
例えば熱処理装置として一度に複数枚のウエハに対して処理を施すことができる縦型の熱処理装置を例にとって説明すると、縦型の処理容器内へ多段に支持された半導体ウエハをロード(搬入)し、この処理容器の外周に設けた加熱手段によってウエハを加熱して昇温し、温度を安定化して成膜ガスを流し、成膜を施すようになっている。この場合、熱処理容器内や処理容器の外側に熱電対が設けてあり、この熱電対から得られた温度に基づいて上記加熱手段の電力を制御することにより、ウエハを所定の温度に維持するようになっている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
また、処理容器自体が十分に長くて例えば50〜150枚程度のウエハを収容できることから、処理容器内の温度制御を行うに際しては、きめ細かな精度の高い温度制御を行うために処理容器内を上下方向に複数の加熱ゾーンに分割し、この加熱ゾーン毎に個別に温度制御を行うようにしている。この場合、成膜処理時における半導体ウエハ自体の適切な温度は、実験用のダミーウエハ自体に熱電対を設け、この熱電対によるダミーウエハの実際の温度と上記処理容器の内外に設けた熱電対との相関関係を予め実験的に調べておき、製品ウエハに対する熱処理時には上記相関関係を参照しつつ温度制御を行うようになっている。
【0005】
また熱処理中の半導体ウエハの温度分布を測定するために、ウエハ表面に表面弾性波素子を備えた複数の温度センサを分散させて配置するようにし、別途配置したアンテナから高周波信号を温度センサに送信して、この高周波信号に応答して温度センサから送り返されてくる温度に依存した高周波信号を受信して温度分布を求めるようにした技術も提案されている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−25577号公報
【特許文献2】特開2000−77346号公報
【特許文献3】特開2007−171047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1、2に開示された上述したような熱処理装置における温度制御方法にあっては、温度測定対象物であるウエハと熱電対とは直接的に接触していないので、製品ウエハの実際の温度と熱電対による測定値との相関関係は常時一定ではなく、特に成膜処理が繰り返し行われて処理容器の内壁面等に不要な付着物が付着したり、或いはガス流量やプロセス圧力等を変更したり、更には電圧変動等が生じたりすると、上述した相関関係からのズレが大きくなり過ぎてしまってウエハ温度を適正に制御できなくなる恐れが生ずる、といった問題があった。
【0008】
また、ウエハの昇降温度時にもウエハの温度制御を行いたい要求もあるが、このような場合に、上記した熱電対では、実際のウエハ温度と熱電対による測定値との差が一層大きくなり、上記した要求に応えることが困難になる、といった問題があった。
上記した問題点を解決するためにウエハ自体に熱電対を設けることも考えられるが、有線であることからウエハの回転、移載に追従できず、また熱電対に起因する金属汚染等の問題もあるため、採用することはできない。
【0009】
また、枚葉式の処理装置に関して、特開2004−140167号公報等に開示されているように、水晶振動子を用いて温度に応じた電磁波を受信してウエハ温度を求めることも考えられるが、水晶の耐熱性はせいぜい300℃程度であり、その温度以上の熱処理装置では用いることができない。
【0010】
また、特許文献3に開示されたような技術にあっては、アンテナ自体を別途設けなければならないばかりか、このアンテナをチャンバ内へ設ける必要があり、半導体ウエハに対して金属汚染等が生ずる問題も発生する。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、例えばランガサイト基板素子やランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等よりなる弾性波素子を用いると共にアンテナとして装置構成部材を兼用することによってこの弾性波素子から発信した電波に基づいて温度を求めるようにし、これにより、アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出でき、精度の高い温度制御を行うことが可能な被処理体の熱処理装置及び熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、半導体ウエハの温度測定について鋭意研究した結果、ランガサイトやランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等を用いた弾性波素子は、電気的刺激により発生した弾性波の音波に基づいて発信が生じて電波が発生し、これを受信することにより、ウエハ温度をワイヤレスで直接的に測定することができる、という知見及び抵抗加熱ヒータ等の導電部材をアンテナとして兼用することができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0013】
請求項1に係る発明は、複数の被処理体に対して熱処理を施すための熱処理部を有する熱処理装置において、前記複数の被処理体と弾性波素子を有する温測用被処理体とを収容することができる排気可能になされた処理容器と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記複数の被処理体と前記温測用被処理体とを保持して前記処理容器内へロード及びアンロードされる保持手段と、前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、前記弾性波素子に向けて測定用電波を送信するために高周波ラインを介して送信器に接続された送信用アンテナと、前記弾性波素子より発せられる温度に応じた周波数の電波を受けるために高周波ラインを介して受信器に接続された受信用アンテナと、前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析部と、前記加熱手段を制御する温度制御部と、を備え、前記送信用アンテナと受信用アンテナとを前記熱処理部に設けられた導電性部材にそれぞれ兼用させるように構成したことを特徴とする被処理体の熱処理装置である。
【0014】
このように、熱処理装置の熱処理部の構成部材である導電性部材、例えば加熱手段や保持手段やガス導入手段を、送信用アンテナや受信用アンテナとして兼用するようにし、更に、例えばランガサイト基板素子やランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等よりなる弾性波素子を用いることによってこの弾性波素子から発信した電波を受信してこれに基づいて温度を求めるようにし、これにより、アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0015】
また被処理体を昇降温する場合にも、この温度を直接的に測定することができるので、例えば昇温速度や降温速度を正確に制御でき、もって昇降温制御を適正に行うことができる。更には、処理容器の内壁面に膜が付着しても、正確な被処理体の温度を求めることができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、前記高周波ラインには、高周波成分は通すが低周波成分及び直流成分をカットする高周波フィルタ部が介設されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記加熱手段は、加熱電源と、該加熱電源に給電ラインを介して接続された抵抗加熱ヒータとを有していることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3記載の発明において、前記処理容器内を温度制御用の複数の加熱ゾーンに分割するために前記抵抗加熱ヒータはそれぞれ個別に供給電力の制御が可能になされた複数のゾーン加熱ヒータに区分されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4記載の発明において、前記抵抗加熱ヒータは、前記隣り合うゾーン加熱ヒータ間において電気的に導通状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4記載の発明において、前記ゾーン加熱ヒータは、前記隣り合う加熱ゾーン間において電気的に絶縁状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記導電性部材とは、前記抵抗加熱ヒータであることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記給電ラインには、加熱電力は通すが、高周波成分はカットする電力フィルタ部が介設されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項7又は8記載の発明において、前記温度制御部は、前記加熱手段に供給する加熱電力と前記送信器から送出する測定用電波の電力とを時分割的に送出するように制御することを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記保持手段は導電性材料よりなり、前記導電性部材とは前記保持手段であることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記ガス導入手段は導電性材料よりなり、前記導電性部材とは前記ガス導入手段であることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項10又は11記載の発明において、前記導電性材料は半導体よりなることを特徴とする。
【0021】
請求項13の発明は、請求項12記載の発明において、前記半導体は、ポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料よりなることを特徴とする。
【0022】
請求項14に係る発明は、複数の被処理体に対して熱処理を施すための熱処理装置において、前記複数の被処理体と弾性波素子を有する温測用被処理体とを収容することができる排気可能になされた処理容器と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記複数の被処理体と前記温測用被処理体とを保持して前記処理容器内へロード及びアンロードされる保持手段と、前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、前記弾性波素子に向けて測定用電波を送信するために高周波ラインを介して送信器に接続された送信用アンテナと、前記弾性波素子より発せられる温度に応じた周波数の電波を受けるために高周波ラインを介して受信器に接続された受信用アンテナと、前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析部と、前記処理容器内及び/又は前記加熱手段に設けられた温度測定手段と、前記加熱手段を制御する温度制御部と、を備え、前記送信用アンテナと前記受信用アンテナとを、前記温度測定手段に設けられた導電性部材にそれぞれ兼用させるように構成したことを特徴とする被処理体の熱処理装置である。
【0023】
このように、熱処理装置の熱処理部の構成部材である温度測定手段に設けた導電性部材を、送信用アンテナや受信用アンテナとして兼用するようにし、更に、例えばランガサイト基板素子やランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等よりなる弾性波素子を用いることによってこの弾性波素子から発信した電波を受信してこれに基づいて温度を求めるようにし、これにより、アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0024】
また被処理体を昇降温する場合にも、この温度を直接的に測定することができるので、例えば昇温速度や降温速度を正確に制御でき、もって昇降温制御を適正に行うことができる。更には、処理容器の内壁面に膜が付着しても、正確な被処理体の温度を求めることができる。
【0025】
請求項15の発明は、請求項14記載の発明において、前記高周波ラインには、高周波成分は通すが低周波成分及び直流成分をカットする高周波フィルタ部が介設されていることを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項14又は15記載の発明において、前記加熱手段は、加熱電源と、該加熱電源に給電ラインを介して接続された抵抗加熱ヒータとを有していることを特徴とする。
【0026】
請求項17の発明は、請求項16記載の発明において、前記処理容器内を温度制御用の複数の加熱ゾーンに分割するために前記抵抗加熱ヒータはそれぞれ個別に供給電力の制御が可能になされた複数のゾーン加熱ヒータに区分されていることを特徴とする。
請求項18の発明は、請求項17記載の発明において、前記抵抗加熱ヒータは、前記隣り合うゾーン加熱ヒータ間において電気的に導通状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項19の発明は、請求項17記載の発明において、前記ゾーン加熱ヒータは、前記隣り合う加熱ゾーン間において電気的に絶縁状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする。
請求項20の発明は、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の発明において、前記給電ラインには、加熱電力は通すが、高周波成分はカットする電力フィルタ部が介設されていることを特徴とする。
請求項21の発明は、請求項14乃至20のいずれか一項に記載の発明において、前記温度測定手段は、熱電対を有しており、該熱電対が前記送信用アンテナ及び/又は前記受信用アンテナとして兼用されることを特徴とする。
【0028】
請求項22の発明は、請求項21記載の発明において、前記熱電対に接続されている熱電対ラインには、直流成分は通すが高周波電力はカットする直流フィルタ部が介設されていることを特徴とする。
【0029】
請求項23の発明は、請求項14乃至19のいずれか一項に記載の発明において、前記温度測定手段は、前記熱電対を収容して保護する導電性材料で作成された保護管を有しており、該保護管が前記送信用アンテナ及び/又は前記受信用アンテナとして兼用されることを特徴とする。
請求項24の発明は、請求項23に記載の発明において、前記導電性材料は、半導体よりなることを特徴とする。
請求項25の発明は、請求項24に記載の発明において、前記半導体は、ポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料よりなることを特徴とする。
【0030】
請求項26の発明は、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の発明において、前記温測用被処理体には、複数の弾性波素子が設けられると共に、前記複数の弾性波素子の周波数帯域は互いに異なるように設定されていることを特徴とする。
請求項27の発明は、請求項26に記載の発明において、前記弾性波素子は、少なくとも前記温測用被処理体の中心部と周辺部とに設けられることを特徴とする。
【0031】
請求項28の発明は、請求項4乃至13及び17乃至26のいずれか一項に記載の発明において、前記温測用被処理体は前記加熱ゾーン毎に対応して保持されることを特徴とする。
請求項29の発明は、請求項28に記載の発明において、前記温測用被処理体の弾性波素子の周波数帯域は前記加熱ゾーン毎に互いに異なるように設定されていることを特徴とする。
【0032】
請求項30の発明は、請求項1乃至29のいずれか一項に記載の発明において、前記送信用アンテナと受信用アンテナは、送受信用アンテナとして一体化されていることを特徴とする。
【0033】
請求項31の発明は、請求項1乃至30のいずれか一項に記載の発明において、前記処理容器には、前記被処理体の熱処理を補助するために高周波電力によってプラズマを発生させるプラズマ発生手段が設けられており、前記測定用電波の周波数帯域は、前記高周波電力の周波数とは異なるように設定されていることを特徴とする。
請求項32の発明は、請求項1乃至31のいずれか一項に記載の発明において、前記処理容器には、前記被処理体の熱処理を補助するために高周波電力によってプラズマを発生させるプラズマ発生手段が設けられており、前記測定用電波の送信時及び受信時には一時的にプラズマの発生を停止することを特徴とする。
請求項33の発明は、請求項1乃至32のいずれか一項に記載の発明において、前記弾性波素子は、表面弾性波素子もしくはバルク弾性波素子もしくは境界弾性波素子のいずれかから選択されることを特徴とする。
【0034】
請求項34の発明は、請求項1乃至33のいずれか一項に記載の発明において、前記弾性波素子は、ランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム(LTGA)、水晶(SiO )、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム:KNaC )、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O 、ニオブ酸リチウム(LiNbO )、タンタル酸リチウム(LiTaO )、リチウムテトラボレート(Li )、ランガサイト(La Ga SiO14)、窒化アルミニウム、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される1の材料の基板素子であることを特徴とする。
【0035】
請求項35の発明は、請求項1乃至34のいずれか一項に記載の発明において、前記温度制御部は、前記温度分析部からの出力もしくは前記温度測定手段からの出力もしくは予め記憶された熱モデルからの出力のいずれか1つもしくは複数を組み合わせて前記加熱手段を制御することを特徴とする。
請求項36の発明は、請求項1乃至35のいずれか一項に記載の発明において、前記温度分析部からの出力を記憶手段に記憶することを特徴とする。
請求項37の発明は、請求項1乃至36のいずれか一項に記載の発明において、前記温度分析部からの出力を表示する表示部を有することを特徴とする。
請求項38に係る発明は、弾性波素子を有する温測用被処理体を含む複数の被処理体を保持する保持手段を、処理容器内へ導入して前記被処理体を加熱手段で加熱することにより熱処理を施すようにした被処理体の熱処理方法において、前記処理容器に設けた送信用アンテナから測定用電波を送信する送信工程と、前記測定用電波を受けた前記温測用被処理体の弾性波素子が発する電波を前記処理容器に設けた受信用アンテナで受ける受信工程と、前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析工程と、前記加熱手段を制御する温度制御工程と、を有することを特徴とする被処理体の熱処理方法である。
【0036】
請求項39の発明は、請求項38記載の発明において、前記処理容器内は温度制御用に複数の加熱ゾーンに分割されており、前記温測用被処理体は前記加熱ゾーン毎に対応して保持されると共に、前記温測用被処理体の弾性波素子の周波数帯域は前記加熱ゾーン毎に互いに異なるように設定されていることを特徴とする。
請求項40の発明は、請求項38又は39記載の発明において、前記処理容器内及び/又は前記加熱手段には温度測定用の熱電対がそれぞれ設けられており、前記温度制御工程では、前記温測用被処理体の温度測定値に加えて前記熱電対からの測定値も参照して前記加熱手段の制御を行うことを特徴とする。
【0037】
請求項41の発明は、請求項38乃至40のいずれか一項に記載の発明において、前記熱処理は高周波電力によって発生されたプラズマにより処理されるプラズマ処理工程を含み、前記測定用電波は前記高周波電力の周波数とは異なるように設定されていることを特徴とする。
請求項42に係る発明は、請求項1乃至37のいずれか一項に記載の熱処理装置を用いて被処理体に熱処理を施すに際して、請求項38乃至41のいずれか一項に記載の熱処理方法を実行するように前記熱処理装置を制御するコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶する記憶媒体である。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る被処理体の熱処理装置及び熱処理方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1乃至13及び26乃至42に係る発明によれば、熱処理装置の構成部材である加熱手段や保持手段やガス導入手段を、送信用アンテナや受信用アンテナとして兼用するようにし、更に、例えばランガサイト基板素子やランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等よりなる弾性波素子を用いることによってこの弾性波素子から発信した電波を受信してこれに基づいて温度を求めるようにし、これにより、アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0039】
また被処理体を昇降温する場合にも、この温度を直接的に測定することができるので、例えば昇温速度や降温速度を正確に制御でき、もって昇降温制御を適正に行うことができる。更には、処理容器の内壁面に膜が付着しても、正確な被処理体の温度を求めることができる。
【0040】
請求項14乃至25に係る発明によれば、熱処理装置の構成部材である温度測定手段を、送信用アンテナや受信用アンテナとして兼用するようにし、更に、例えばランガサイト基板素子やランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム等よりなる弾性波素子を用いることによってこの弾性波素子から発信した電波を受信してこれに基づいて温度を求めるようにし、これにより、アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体の温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0041】
また被処理体を昇降温する場合にも、この温度を直接的に測定することができるので、例えば昇温速度や降温速度を正確に制御でき、もって昇降温制御を適正に行うことができる。更には、処理容器の内壁面に膜が付着しても、正確な被処理体の温度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明に係る被処理体の熱処理装置及び熱処理方法の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
<第1実施形態>
図1は本発明に係る熱処理装置の第1実施形態を示す断面構成図、図2は弾性波素子を設けた温測用被処理体を示す図、図3は熱処理装置の温度制御系を示す系統図、図4は本発明の熱処理方法の一例を示すフローチャート、図5は弾性波素子の動作原理を説明するための動作原理図である。ここでは送信用アンテナと受信用アンテナとを一体化して兼用した送受信アンテナを用いた場合を例にとって説明する。
【0043】
また、ここでは縦型の熱処理装置を例にとって説明する。図示するようにこの熱処理装置2は、筒体状の石英製の内筒4とその外側に同心円状に配置した有天井の筒体状の石英製の外筒6とよりなる2重管構造の処理容器8を有している。この処理容器8の外周は、抵抗加熱ヒータ10を有する加熱手段12により覆われており、処理容器8内に収容される被処理体を加熱するようになっている。この処理容器8(内部を含む)と上記加熱手段12とにより熱処理部9を形成している。
【0044】
この加熱手段12は円筒体状になされており、処理容器8の側面の略全域を囲むようになっている。更に、この処理容器8の外周には天井部を含めてその側面側の全体を覆うようにして断熱材14が設けられている。そして、この断熱材14の内側面に上記加熱手段12が取り付けられている。ここで上記抵抗加熱ヒータ10が導電性部材よりなり、送信用アンテナと受信用アンテナとに兼用されることになるが、この点は後述する。
【0045】
上記処理容器8の加熱領域は高さ方向において温度制御用に複数、ここでは5つの加熱ゾーン16a、16b、16c、16d、16eに区画されており、この各加熱ゾーン16a〜16eに対応させて、上記加熱手段12の抵抗加熱ヒータ10は5つのゾーン加熱ヒータ10a、10b、10c、10d、10eに区分されて、それぞれ個別に制御可能になされている。この加熱ゾーン数は特に限定されない。ここでは上記ゾーン加熱ヒータ10a〜10eは、隣り合う加熱ゾーン16a〜16e間において電気的に接続されて導通状態になっている。
【0046】
そして、上記各ゾーン加熱ヒータ10a〜10e毎に給電ライン19が延びており、この各給電ライン19には加熱電源21a、21b、21c、21d、21eが接続されて、上記加熱手段12が構成されている。この加熱電源21a〜21eには、サイリスタ等よりなるスイッチング素子が含まれており、位相制御やゼロクロス制御等を行うことにより、出力電力を個別に制御できるようになっている。また、この各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eには、この温度を測定するために第1の温度測定手段17としてヒータ用熱電対17a〜17eがそれぞれ設けられている。
【0047】
上記処理容器8の下端は、例えばステンレススチール製の筒体状のマニホールド18によって支持されており、上記内筒4の下端部は、上記マニホールド18の内壁に取り付けた支持リング20上に支持されている。尚、このマニホールド18を石英等により形成し、これを上記処理容器8側と一体成型するようにしてもよい。また、このマニホールド18の下方からは複数枚の被処理体としての半導体ウエハWを載置した保持手段としての石英製のウエハボート22が昇降可能に挿脱自在(ロード及びアンロード)になされている。例えば半導体ウエハWとしては直径が300mmのサイズが用いられるが、この寸法は特には限定されない。
【0048】
このウエハボート22は、石英製の保温筒24を介して回転テーブル26上に載置されており、この回転テーブル26は、マニホールド18の下端開口部を開閉する蓋部28を貫通する回転軸30の上端で支持される。そして、この回転軸30の貫通部には、例えば磁性流体シール32が介設され、この回転軸30を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部28の周辺部とマニホールド18の下端部には、例えばOリング等よりなるシール部材34が介設されており、容器内のシール性を保持している。
【0049】
上記した回転軸30は、例えばボートエレベータ等の昇降機構36に支持されたアーム38の先端に取り付けられており、ウエハボート22及び蓋部28等を一体的に昇降できるようになされている。
【0050】
上記マニホールド18の側部には、ガス導入手段40が設けられる。具体的には、このガス導入手段40は、上記マニホールド18を貫通させたガスノズル42を有しており、必要なガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。このガスノズル42は、例えば石英よりなり、処理容器8の長手方向、すなわち高さ方向に沿って延びており、ウエハボート22の高さ全体をカバーするようになっている。
【0051】
そして、このガスノズル42には、例えば等ピッチで多数のガス孔42aが形成されており、各ガス孔42aより上記ガスを噴出するようになっている。ここではガスノズル42は代表として1本しか記載していないが、実際には、使用ガス種に応じて複数本設けられる。また、このマニホールド18の側壁には、内筒4と外筒6との間から処理容器8内の雰囲気を排出する排気口44が設けられており、この排気口44には、図示しない例えば真空ポンプや圧力調整弁等を介設した真空排気系(図示せず)が接続されている。
【0052】
また、内筒4とウエハボート22との間には、上記各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eに対応させて第2の温度測定手段46として5つの内部熱電対46a〜46eが設けられており、各内部熱電対46a〜46eは、1つの例えば石英製の保護管48内に収容された状態になっている。そして、この保護管48の下端は、屈曲されて上記マニホールド18を気密に貫通して支持されている。上記各熱電対17a〜17d、46a〜46eの検出値は、例えばコンピュータ等よりなる温度制御部50へ入力されており、後述するようにプロセス時にはこの検出値に基づいて加熱手段12の各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eへの供給電力を個別的に制御する際に補助的に用いるようになっている。
【0053】
そして、前述したように上記加熱手段12を形成する抵抗加熱ヒータ10が、本発明の特徴とする送受信用アンテナ52として兼用されている。抵抗加熱ヒータ10は、一般的にはCr−Fe−Al等の合金、モリブデンシリサイド、カーボンワイヤ等の導電性部材よりなり、従って、この抵抗加熱ヒータ10に高周波電流を流すことにより電波を放射することができるので、上述のように送受信用アンテナ52として用いることができる。
【0054】
ここで、本発明においては、上記ウエハボート22には製品ウエハとなる半導体ウエハWの外にダミーウエハや本発明の特徴となる弾性波素子を有する温測用被処理体として温側用ウエハが保持されている。ここで弾性波素子としては、表面弾性波素子とバルク弾性波素子のどちらの弾性波素子も用いることができる。具体的には、ここでは各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eに対応させて5つの温測用ウエハ58a、58b、58c、58d、58eが保持されている。上記各温測用ウエハ58a〜58eは、上記各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eを制御できる最適な位置に保持されており、上記抵抗加熱ヒータ10と兼用される送受信用アンテナ52からの電波が届くように設定されている。
【0055】
そして、上記各温測用ウエハ58a〜58e上には、それぞれ弾性波素子60a、60b、60c、60d、60e(図3参照)が設けられており、上記送受信用アンテナ52から各弾性波素子60a〜60eに対して電波を発すると共に、各弾性波素子60a〜60eから送り返されてきた電波を受信できるようになっている。この場合、図3(A)は温測用ウエハの側面図を示し、図3(B)はその斜視を示しているが、図3(C)に示すように、弾性波素子60a〜60eを、温測用ウエハ58a〜58e内に埋め込むようにしてもよい。
【0056】
この埋め込みの方法は特に問わず、2枚の非常に薄いウエハ部材間に上記弾性波素子60a〜60eを挟み込むようにして埋め込んでもよいし、温測用ウエハの表面から埋め込み穴を形成し、この中に弾性波素子を収容して埋め込むようにしてもよい。尚、上記弾性波素子60a〜60eとして、例えば表面弾性波素子としてはランガサイト(La Ga SiO14)を用いたランガサイト基板素子が用いられ、バルク弾性波素子としてはランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム(以下「LTGA」とも称す)が用いられる。この場合、上記弾性波素子60a〜60eの周波数帯域は、互いの混信を防ぐ上から各加熱ゾーン毎に異なるように設定する。
【0057】
ここで抵抗加熱ヒータ10を送受信用アンテナ52として兼用している温度制御系について図3も参照して説明する。図3にも示しているように、各加熱ゾーン16a〜16e(図1参照)に対応するゾーン加熱ヒータ10a〜10eは、前述したように直列に接続されており、各接続点及び上下端からはそれぞれ給電ライン19が引き出されている。そして、隣り合う給電ライン19間にそれぞれ加熱電源21a〜21eが接続されており、対応する各加熱ゾーン16a〜16e(図1参照)のゾーン加熱ヒータ10a〜10eにそれぞれ個別に制御可能に加熱電力を供給するようになっている。
【0058】
そして、このようになされた抵抗加熱ヒータ10の給電ライン19の一箇所に、図3中では最下端の加熱ゾーンの給電ラインに高周波ライン62を介して、送信器と受信器とを結合してなる送受信器64を接続している。これにより、上述したように、抵抗加熱ヒータ10全体が送受信用アンテナ52として構成されることになる。
【0059】
すなわち、上記送受信器64から送出される高周波により上記送受信用アンテナ52からは各温測用ウエハ58a〜58eに向けて測定用電波が送信され、各温測用ウエハ58a〜58eに設けた弾性波素子60a〜60eから送り返される電波を上記送受信用アンテナ52で受信するようになっている。ここでは、送信器と受信器とが一体化されて送受信器64となっているが、上記送受信用アンテナ52を送信用アンテナと受信用アンテナに分離してもよく、この場合には、この送受信器64も送信器と受信器とに分離されることになる。
【0060】
ここで上記各弾性波素子60a〜60eは互いに異なる周波数に反応するように調整されており、従って、送受信器64の測定用電波は上記異なる周波数の領域を全てカバーするように一定の時間内で一定の周波数帯域に亘って順次掃引して送信するようになっている。
【0061】
そして、上記高周波ライン62の途中には、高周波成分は通すが低周波成分及び直流成分をカットする高周波フィルタ部66が介設されており、加熱電源21aからの加熱電力が送受信器64内へ侵入することを防止するようになっている。上記高周波電力は、例えば50或いは60Hzの商用周波数よりなり、上記高周波フィルタ部66は例えばコンデンサにより形成される。また、上記各給電ライン19の途中には、加熱電力は通すが高周波成分をカットする電力フィルタ部68がそれぞれ設けられており、各加熱電源21a〜21e側へ高周波電力が侵入することを防止するようになっている。この電力フィルタ部68は、例えばコイルにより形成される。
【0062】
そして、上記送受信器64は温度分析部70に接続されており、上記送受信用アンテナ52で受けた電波に基づいて各温側用ウエハ58a〜58eの温度を、すなわち加熱ゾーン毎の温度をそれぞれ求めるようになっている。そして、この温度分析部70で求めた各加熱ゾーンの温度に基づいて、上記温度制御部50は上記各加熱電源21a〜21eへ温度制御信号を出力して各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eを個別に独立して制御するようになっている。
【0063】
また、上記ヒータ用熱電対17a〜17e及び内部熱電対46a〜46eはそれぞれ熱電対ライン72及び熱電対ライン74を介して上記温度制御部50に接続されており、上記各熱電対17a〜17e、46a〜46eの各温度測定値も参照して、上記温度制御部を補助するようになっている。尚、これらの内部熱電対46a〜46e及び/又はヒータ用熱電対17a〜17eを省略するようにしてもよい。
【0064】
ここで図1に戻って、以上のように形成された熱処理装置2の全体の動作は、例えばコンピュータ等よりなる制御手段80により制御されるようになっている。この制御手段80には、ディスプレイ等の表示部83が接続されており、必要な情報、例えば上記温度分析部70で求めた温度を表示するようになっている。上記制御手段80は上記温度制御部50を支配下におくと共に、この動作を行うコンピュータのプログラムはフレキシブルディスクやCD(CompactDisc)やハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体82に記憶されている。具体的には、この制御手段80からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度やプロセス圧力の制御等が行われる。また、この記憶媒体82には、上記温度分析部70からの出力(温度)を記憶できるようになっている。
【0065】
次に、以上のように構成された熱処理装置を用いて行う熱処理方法について図4も参照して説明する。図4は本発明の熱処理方法の一例を示すフローチャートである。
まず、実際の成膜等の熱処理プロセスを行うに先立って、上記各加熱ゾーンに対応する弾性波素子60a〜60eが発生する周波数の電波より検出される温度と、各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eへ供給する電力との相関関係を予め求めて装置の温度制御部50に記憶しておく。また、上記各熱電対17a〜17e、46a〜46eも用いる場合には、これらの温度検出値と上記弾性波素子60a〜60eの電波から得られる温度との相関関係も予め求めておく。
【0066】
次に、半導体ウエハWに対して実際の成膜処理等の熱処理を行なう時には、まず、ウエハがアンロード状態で熱処理装置2が下方のローディングエリア内で待機状態の時には、処理容器8はプロセス温度、或いはそれよりも低い温度に維持されており、常温の多数枚のウエハWをウエハボート22に載置した状態で処理容器8内にその下方より上昇させてロードし、蓋部28でマニホールド18の下端開口部を閉じることにより容器内を密閉する。上記ウエハボート22には、製品ウエハWの外に、上記各加熱ゾーン16a〜16eに対応させた位置に温測用ウエハ58a〜58eが支持されている。
【0067】
そして、処理容器8内を所定のプロセス圧に維持すると共に、各熱電対17a〜17e、46a〜46eからそれぞれ温度が検出され、また各弾性波素子60a〜60eからの電波によりウエハ温度が検出されて、図3に示す温度制御系の動作により各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eへの投入電力が増大してウエハ温度が上昇し、所定のプロセス温度に安定的に維持される。その後、所定の成膜用の処理ガスをガス導入手段40のガスノズル42から処理容器8内に導入する。
【0068】
処理ガスは、上述のようにガスノズル42の各ガス孔42aから内筒4内に導入された後にこの中を回転されているウエハWと接触しつつ成膜反応して、天井部から内筒4と外筒6との間の間隙を流下して、排気口44から容器外へ排出される。プロセス中における温度制御は、各弾性波素子60a〜60eより発せられる電波により各加熱ゾーン毎のウエハ温度が求められ、予め定められた目標温度になるように、例えばPID制御でもって各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eへの供給電力を制御することによって行なわれる。
【0069】
ここで図5も参照して上記弾性波素子60a〜60eの動作原理について説明する。図5(A)は弾性波素子の内の表面弾性波素子の動作原理を示し、図5(B)は弾性波素子の内のバルク弾性波素子の動作原理を示す。図5(A)に示すように、この表面弾性波素子60Aは、例えば特開2000−114920号公報や特開2003−298383号公報や特開2004−140167号公報等に開示されているようなランガサイト基板素子よりなり、このランガサイト基板素子は四角形状の圧電機能を有するランガサイト基板84を有している。このランガサイト基板84の大きさは例えば10mm×15mm×0.5mm程度の大きさである。このランガサイト基板84の表面には一対の櫛歯状の電極86a、86bが形成されると共に、各電極86a、86bには、アンテナ88a、88bが設けられている。
【0070】
そして、送受信器90より、ランガサイト基板86の固有振動数に相当する所定の高周波電波を送信信号として飛ばして、上記櫛歯状の電極86a、86bに高周波電圧が印加されると、ランガサイト基板84のピエゾ効果によって表面弾性波が励振され、この時、ランガサイト基板84の温度に応じて寸法が変化するので、上記表面弾性波がランガサイト基板素子上を伝わり、温度に応じた時間経過後に、これが今度は逆にアンテナ88a、88bから電波となって出力されることになる。
【0071】
従って、上記出力された電波を送受信器90より受信してこの受信信号と先の送信信号との時間差Δtを分析することにより、上記ランガサイト基板84の温度を検出することができる。すなわち、ワイヤレスの温度検出素子として用いることができる。このような原理を、上記各弾性波素子60a〜60eに適用している。
【0072】
また図5(B)に示すように、LTGAに代表されるバルク弾性波素子60Bの場合にも、コイル92に接続された一対の電極94a、94bにバルク弾性波素子60Bを挟み込んで形成する。
【0073】
この場合にも、送受信器90よりバルク弾性波素子60Bの固有振動数に相当する所定の高周波電波の周辺周波数をスイープさせて送信信号として飛ばして、バルク弾性波素子60B側から出力される温度に応じた共振周波数の出力信号を受信する。そして、この受信信号の周波数を分析することによりバルク弾性波素子60Bの温度を検出することができる。このような原理を、上記各弾性波素子60a〜60eに適用している。
【0074】
ここで上記各電極86a、86bのピッチや単結晶からの切り出し角度や切り出し厚さ等を変えることにより、素子の周波数帯域を変化させることができる。ここでは前述したように、上記各弾性波素子60a〜60eは互いに異なる周波数帯域にそれぞれ設定されており、素子60aはf1、例えば10MHzを中心とする周波数帯域に、素子60bはf2、例えば20MHzを中心とする周波数帯域に、素子60cはf3、例えば30MHzを中心とする周波数帯域に、素子60dはf4、例えば40MHzを中心とする周波数帯域に、素子60eはf5、例えば50MHzを中心とする周波数帯域に、それぞれ設定されており、互いに混信が生じないようにしている。また、上記バルク弾性素子の他に、境界弾性波素子も本発明に適用することができる。
【0075】
さて、実際の温度制御においては、まず、送受信器64から抵抗加熱ヒータ10よりなる送受信用アンテナ52に対して送信電力を供給して、送受信用アンテナ52からランガサイト基板(表面弾性波素子の場合)、或いはLTGA基板(バルク弾性波素子の場合)の固有振動数に相当する測定用電波を送信する(S1)。この場合、測定用電波の周波数を上記f1〜f5の範囲内を十分にカバーするような一定の周波数帯域に亘って一定の時間で掃引する。すると、上記測定用電波を受信した各温測用ウエハ58a〜58eの弾性波素子60a〜60eでは、その時の温測用ウエハ58a〜58eの温度に応じた共振が発生してこの共振信号を放射することになる(S2)。この時の電波の発生原理は、先に図5を参照して説明した通りである。
【0076】
そして、この時発生した電波は、送受信用アンテナ52で受信されて送受信器64側へ伝搬されることになる(S3)。そして、この受信された電波は温度分析部66にて分析されて、各温測用ウエハ58a〜58eの温度、すなわち各加熱ゾーン16a〜16eのウエハWの温度が直接的に求められることになる(S4)。
【0077】
そして、温度制御部50は、上記求められた温度に基づいて各加熱電源21a〜21eを介して各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eを個別に独立して制御して目標温度となるようにする(S5)。これにより、ウエハ温度(温測用ウエハ温度)を直接的に測定して検出することができ、従って、精度の高い温度制御を行うことができる。そして、上記した一連の制御動作は、予め定められたプロセス時間が経過するまで(S6のYES)、繰り返し行われることになる(S6のNO)。尚、この場合、上記温度制御部50は、上記温度分析部70からの出力、もしくは温度測定手段17、46からの出力、もしくは予め記憶された熱モデル(例えば記憶媒体82に記憶)からの出力のいずれか1つ、もしくは複数を組み合わせて上記加熱手段12を制御するようにしてもよい。
【0078】
このように、熱処理装置2の構成部材の1つである加熱手段12の抵抗加熱ヒータ10を送受信用アンテナ52として兼用させるようにし、例えばランガサイト基板素子やLTGA基板素子等よりなる弾性波素子60a〜60eを用いることによってこの弾性波素子60a〜60eから発信した電波を受信してこれに基づいて温度を求めるようにし、これにより、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0079】
また被処理体Wを昇降温する場合にも、この温度を直接的に測定することができるので、例えば昇温速度や降温速度を正確に制御でき、もって昇降温制御を適正に行うことができる。更には、処理容器8の内壁面に膜が付着しても、正確な被処理体Wの温度を求めることができる。
【0080】
また、抵抗加熱ヒータ10を送受信用アンテナ52として兼用しているので、各加熱電源21a〜21eに高周波電流が侵入する恐れが生ずるが、この送受信用アンテナ52に接続された各給電ライン19の途中には電力フィルタ部68が介設されているので、ここで高周波電流をカットすることができ、この結果、各加熱電源21a〜21eに高周波電流が流入することを阻止することができる。
【0081】
また逆に、給電ライン19に高周波ライン62を接続した結果、加熱電源21aの加熱電力が送受信器64側へ流入する恐れがあるが、この場合には上記高周波ライン62の途中には高周波フィルタ部66が介設されているので、ここで商用周波数の加熱電力や直流成分をカットすることができ、この結果、送受信器64へ加熱電力が侵入することを阻止することができる。
【0082】
尚、実際の温度制御では、より精度の高い制御を行うために、上記温度分析部70で求めた温度に加え、ヒータ用熱電対17a〜17e及び/又は内部熱電対46a〜46eでの各測定値もそれぞれ参照して温度制御を行うのが好ましい。
【0083】
また、熱電対17a〜17e及び/又は内部熱電対46a〜46eを設けておけば、ウエハがアンロードされて処理容器8内が空になったアイドリング時でも処理容器8の温度を適正な温度に予備加熱することができる。
【0084】
<第2実施形態>
次に本発明の熱処理装置の第2実施形態について説明する。図6は本発明の熱処理装置の第2実施形態における温度制御系を示す系統図である。尚、図1乃至図5に記載された構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0085】
先の第1実施形態の場合には加熱手段12の抵抗加熱ヒータ10に関しては、加熱ゾーンの各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eは隣同士が電気的に接続されて導通状態になされていたが、加熱手段12の種類によっては、図6に示すように各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eがそれぞれ完全に分割されて隣同士が電気的に絶縁状態になされている場合もある。このような加熱手段では、各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eの両端が、それぞれ個別に2本の給電ライン19により対応する加熱電源21a〜21eに接続されている。
【0086】
このような熱処理装置に対して、本発明を適用する場合には、送受信器64から延びる高周波ライン62を複数に分岐させて、これらを上記各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eに接続される給電ライン19に対して並列に接続する。これにより各ゾーン加熱ヒータ10a〜10eを送受信用アンテナ52と兼用させる。そして、分岐された各高周波ライン62の途中に、それぞれ高周波フィルタ部66を介設することにより、測定用電波の高周波電力は通すがヒータ用の電力はカットしてこれが送受信器64側に侵入することを防止している。
【0087】
また、全ての給電ライン19の途中には、それぞれ電力フィルタ部68を介設することにより、ヒータ用の電力は通すが測定用電波の高周波電力が各電源21a〜21e側に侵入することを防止している。
【0088】
この場合にも、抵抗加熱ヒータ10を送受信用アンテナ52と兼用させるようにしたので、送受信器64からの測定用電波の高周波電力が各高周波ライン62を介してゾーン加熱ヒータ10a〜10eに供給されて、これらより測定用電波が放射されることになる。従って、この第2実施形態の場合にも、第1実施形態と同様な作用効果を発揮することができる。すなわち、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0089】
<第3実施形態乃至第6実施形態>
次に本発明の熱処理装置の第3〜第6実施形態について説明する。先の第1及び第2実施形態では、熱処理装置の構成部材の1つである加熱手段12の抵抗加熱ヒータ10を送受信用アンテナ52と兼用させるようにしたが、これに限定されず、他の構成部材、例えば保持手段であるウエハボート22、ガス導入手段40のガスノズル42、熱電対を用いた温度測定手段17、46を送受信用アンテナとして兼用させるようにしてもよい。
【0090】
図7は本発明の熱処理装置の第3実施形態においてウエハボートを送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図、図8は本発明の熱処理装置の第4実施形態においてガス導入手段のガスノズルを送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図、図9は本発明の熱処理装置の第5実施形態において熱電対の保護管を送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図、図10は本発明の熱処理装置の第6実施形態において熱電対を送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図である。尚、図1乃至図5に記載された構成部分と同一構成部分については、同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0091】
まず、図7に示すように、第3実施形態の場合には、保持手段であるウエハボート22を送受信用アンテナ52と兼用させている。通常、上記ウエハボート22は絶縁材である石英により形成されるが、ここでは半導体ウエハWに対して汚染を生ずることがない導電性材料により形成されている。この導電性材料としては、半導体、例えばポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料を用いることができる。
【0092】
この場合には、保温筒24及び回転テーブル26も例えばSiCのような導電性材料により形成する。そして、例えば導電性材料であるステンレススチールよりなる回転軸30に、送受信器64から延びる高周波ライン62の先端に設けたスリップリング100を介して電気的に接続する。これにより、測定用電波の高周波電力をウエハボート22に供給できるので、上記ウエハボート22の全体を送受信用アンテナ52と兼用することができる。
【0093】
この場合にも、第1実施形態と同様な作用効果を発揮することができ、従って、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0094】
また図8に示すように、第4実施形態の場合には、ガス導入手段40の一部であるガスノズル42を送受信用アンテナ52と兼用させている。通常、上記ガスノズル42は絶縁材である石英により形成されるが、ここでは半導体ウエハWに対して汚染を生ずることがない導電性材料により形成されている。この導電性材料としては、半導体、例えばポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料を用いることができる。ここでは送受信器64から延びる高周波ライン62を導電性材料よりなるガスノズル42の基端部に電気的に接続する。
【0095】
これにより、測定用電波の高周波電力を導電性材料よりなるガスノズル42に供給できるので、上記ガスノズル42の全体を送受信用アンテナ42と兼用することができる。この場合にも、第1実施形態と同様な作用効果を発揮することができ、従って、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0096】
また図9に示すように、第5実施形態の場合には、第2の温度測定手段46の一部である保護管48を送受信用アンテナ52と兼用させている。通常、熱電対46a〜46eを収容する上記保護管48は絶縁材である石英により形成されるが、ここでは半導体ウエハWに対して汚染を生ずることがない導電性材料により形成されている。この導電性材料としては、半導体、例えばポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料を用いることができる。ここでは送受信器64から延びる高周波ライン62を導電性材料よりなる保護管48の基端部に電気的に接続する。
【0097】
これにより、測定用電波の高周波電力を導電性材料よりなる保護管48に供給できるので、上記保護管48の全体を送受信用アンテナ42と兼用することができる。この場合にも、第1実施形態と同様な作用効果を発揮することができ、従って、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。
【0098】
また図10に示すように、第6実施形態の場合には、第2の温度測定手段46の一部である熱電対46a〜46eを送受信用アンテナ52と兼用させている。通常、上記熱電対46a〜46eは導電性材料により形成されているので、これをそのまま送受信用アンテナ52と兼用させる。ここでは送受信器64から延びる高周波ライン62を熱電対ライン74へ接続している。そして、高周波ライン62に、高周波電力は通すが熱電対の直流成分をカットする高周波フィルタ部66を介設し、更に熱電対ライン74に直流成分は通すが高周波電力をカットする電力フィルタ部68を介設する。
【0099】
これにより、測定用電波の高周波電力を導電性材料よりなる熱電対46a〜46eに供給できるので、上記熱電対46a〜46eの全体を送受信用アンテナ42と兼用することができる。この場合にも、第1実施形態と同様な作用効果を発揮することができ、従って、送受信用アンテナを別途設ける必要がなく、しかも金属汚染等を生ずることなくワイヤレスで且つリアルタイムで被処理体(半導体ウエハ)W、すなわち温測用ウエハ58a〜58eの温度を精度良く正確に検出できるので、精度の高い温度制御を行うことができる。この場合、上記熱電対46a〜46eに替えて第1の温度測定手段17の各熱電対17a〜17eを送受信用アンテナ42と兼用するようにしてもよい。
【0100】
尚、熱処理装置として、ウエハに対する熱処理を補助するために高周波電力によってプラズマを発生させるプラズマ発生手段を処理容器8に設けるようにした熱処理装置(例えば特開2006−270016号公報)にも本発明を適用することができる。この場合には、ノイズの発生を防止するために上記測定用電波の各周波数帯域を、上記高周波電力の周波数、例えば13.56MHzや400kHzとは異なるように設定する。
【0101】
また、上記プラズマ発生手段を設けた熱処理装置ではプラズマに起因するノイズが発生したり、或いは加熱電源21a〜21eの電力制御に伴ってノイズが発生したりする場合がある。このようなノイズが温度測定に悪影響を及ぼすことを防止するために、加熱手段12に供給する電力及び/又はプラズマ形成の電力と送受信器(送信器)64から出力する測定用電波の電力とを時分割的に送出するように制御するのがよい。図11はこのような加熱手段への供給電力(プラズマ形成の電力も含む)と測定用波長の電力のタイミングチャートの一例を示す図である。
【0102】
図11に示すように、加熱手段12(図1参照)へ電力(プラズマ形成の電力も含む)を供給する期間T1と、測定用電波の電力を供給する期間T2とを交互に繰り返し行うようにして時分割制御を行う。このような時分割制御は、制御手段80(図1参照)が温度制御部50と送受信器64とをコントロールすることにより行うことができる。
【0103】
上記期間T1、T2の長さは、使用電力の大きさ等に応じて適宜選択する。このような時分割制御を行うことにより、温度測定時にノイズが混入することを確実に防止することができるので、ウエハ温度を更に精度良く検出することができる。
【0104】
また上記各実施形態では、熱処理装置の各構成部材を1つずつ送受信用アンテナ52として兼用した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、先に説明した各構成部材の内の任意の2つの構成部材を組み合わせて用いてもよい。例えば抵抗加熱ヒータ10を送信用アンテナと兼用し、ガスノズル42を受信用アンテナと兼用させるようにしてもよい。
【0105】
更に、以上の各実施形態では、温測用ウエハ58a〜58eにそれぞれ1つの弾性波素子を設けた場合について説明したが、これに限定されず、1枚の温測用ウエハに複数の弾性波素子を設けるようにしてもよい。図12はこのような温測用ウエハの変形実施形態を示す図である。図12(A)は第1の変形実施形態を示す断面図、図12(B)は第2の変形実施形態を示す平面図である。図12(A)に示す第1の変形実施形態の場合は、ここでは温測用ウエハ58xを上下2つに分割し、その中心部と周辺部とに2つの弾性波素子60x、60yを埋め込み、分割したウエハを接合している。
【0106】
これにより、上記2つの弾性波素子60x、60yは温測用ウエハ58x内に埋め込まれた状態となり、この弾性波素子60x、60yに起因するコンタミネーションが発生することを防止することができる。
【0107】
このように、2つの弾性波素子60x、60yを1枚の温測用ウエハ58x内に埋め込んだ場合には、混信を防ぐために両弾性波素子60x、60yの周波数帯域が互いに異なるように設定する。また図12(B)に示す第2の変形実施形態の場合は、温測用ウエハ58xの表面の中心と周辺部とに複数、具体的には5つの弾性波素子60f、60g、60h、60i、60jを設けた場合を示している。尚、これらの弾性波素子60f、60g、60h、60i、60jを温測用ウエハ58x内に埋め込んでもよい。この場合には、ウエハの面内温度の分布を測定することができる。この場合には、混信を防止するために各弾性波素子60f、60g、60h、60i、60jの周波数帯域を互いに異なるように設定するのが好ましい。
【0108】
一般的に、成膜プロセスによっては、このプロセス時、或いは昇降温時に、ウエハ面内で温度勾配を形成した方が好ましい状況もあり、そのような場合には、上述のように温測用ウエハ58xの中央部と周辺部とに弾性波素子60f〜60j、60x、60yを設定しておけば、ウエハ面内において適正な且つ正確な温度勾配を形成するように制御することもできる。尚、上述したような温測用ウエハ58a〜58e、58xは、装置内に別途の予備の温測用ウエハを予め用意しておき、劣化した時等に必要に応じて、或いは定期的に自動的に交換できるようにしておけばよい。
【0109】
また本実施形態では、内筒4と外筒6とよりなる2重管式の処理容器8を例にとって説明したが、これに限定されず、単管式の処理容器にも本発明を適用することができる。また処理容器8に関しても、縦型の処理容器に限定されず、横型の処理容器に対しても本発明を適用することができる。
【0110】
更に、ここでは熱処理として、成膜処理を例にとって説明したが、これに限定されず、酸化拡散処理、アニール処理、エッチング処理、改質処理、プラズマを用いたプラズマ処理等に対しても本発明を適用することができる。また、プラズマを用いた場合には前述したように、ノイズの発生を防止するためにプラズマ発生用の高周波電力の周波数と測定用電波の周波数帯域とは異ならせるのが好ましい。
【0111】
また、上記弾性波素子としては、ランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム(LTGA)、水晶(SiO )、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム:KNaC )、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O 、ニオブ酸リチウム(LiNbO )、タンタル酸リチウム(LiTaO )、リチウムテトラボレート(Li )、ランガサイト(La Ga SiO14)、窒化アルミニウム、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される1の材料の基板素子を用いることができる。また、上記材料の内、複数の材料を組み合わせてなる境界弾性波素子も本発明に適用することができる。
【0112】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板、太陽電池基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る熱処理装置の第1実施形態を示す断面構成図である。
【図2】弾性波素子を設けた温測用被処理体を示す図である。
【図3】熱処理装置の温度制御系を示す系統図である。
【図4】本発明の熱処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】弾性波素子の動作原理を説明するための動作原理図である。
【図6】本発明の熱処理装置の第2実施形態における温度制御系を示す系統図である。
【図7】本発明の熱処理装置の第3実施形態においてウエハボートを送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図である。
【図8】本発明の熱処理装置の第4実施形態においてガス導入手段のガスノズルを送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図である。
【図9】本発明の熱処理装置の第5実施形態において熱電対の保護管を送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図である。
【図10】本発明の熱処理装置の第6実施形態において熱電対を送受信用アンテナとして兼用した時の状態を示す図である。
【図11】加熱手段への供給電力(プラズマ形成の電力も含む)と測定用波長の電力のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図12】温測用ウエハの変形実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
2 熱処理装置
8 処理容器
9 熱処理部
10 抵抗加熱ヒータ
10a〜10e ゾーン加熱ヒータ
12 加熱手段
16a〜16e 加熱ゾーン
17 第1の温度測定手段
17a〜17e ヒータ用熱電対
19 給電ライン
21a〜21e 加熱電源
22 ウエハボート(保持手段)
40 ガス導入手段
42 ガスノズル
46 第2の温度測定手段
46a〜46e 内部熱電対
48 保護管
50 温度制御部
52 送受信用アンテナ
58a〜58e 温測用ウエハ(温度測定用被処理体)
60a〜60e 弾性波素子
60A 表面弾性波素子
60B バルク弾性波素子
62 高周波ライン
64 送受信器
66 高周波フィルタ部
68 電力フィルタ部
70 温度分析部
72,74 熱電対ライン
80 制御手段
82 記憶媒体
83 表示部
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理体に対して熱処理を施すための熱処理部を有する熱処理装置において、
前記複数の被処理体と弾性波素子を有する温測用被処理体とを収容することができる排気可能になされた処理容器と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記複数の被処理体と前記温測用被処理体とを保持して前記処理容器内へロード及びアンロードされる保持手段と、
前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、
前記弾性波素子に向けて測定用電波を送信するために高周波ラインを介して送信器に接続された送信用アンテナと、
前記弾性波素子より発せられる温度に応じた周波数の電波を受けるために高周波ラインを介して受信器に接続された受信用アンテナと、
前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析部と、
前記加熱手段を制御する温度制御部と、
を備え、前記送信用アンテナと受信用アンテナとを、前記熱処理部に設けられた導電性部材にそれぞれ兼用させるように構成したことを特徴とする被処理体の熱処理装置。
【請求項2】
前記高周波ラインには、高周波成分は通すが低周波成分及び直流成分をカットする高周波フィルタ部が介設されていることを特徴とする請求項1記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、加熱電源と、該加熱電源に給電ラインを介して接続された抵抗加熱ヒータとを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項4】
前記処理容器内を温度制御用の複数の加熱ゾーンに分割するために前記抵抗加熱ヒータはそれぞれ個別に供給電力の制御が可能になされた複数のゾーン加熱ヒータに区分されていることを特徴とする請求項3記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項5】
前記抵抗加熱ヒータは、前記隣り合うゾーン加熱ヒータ間において電気的に導通状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする請求項4記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項6】
前記ゾーン加熱ヒータは、前記隣り合う加熱ゾーン間において電気的に絶縁状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする請求項4記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項7】
前記導電性部材とは、前記抵抗加熱ヒータであることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項8】
前記給電ラインには、加熱電力は通すが、高周波成分はカットする電力フィルタ部が介設されていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項9】
前記温度制御部は、前記抵抗加熱ヒータに供給する加熱電力と前記送信器から送出する測定用電波の電力とを時分割的に送出するように制御することを特徴とする請求項8記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項10】
前記保持手段は導電性材料よりなり、前記導電性部材とは前記保持手段であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項11】
前記ガス導入手段は導電性材料よりなり、前記導電性部材とは前記ガス導入手段であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項12】
前記導電性材料は半導体よりなることを特徴とする請求項10又は11記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項13】
前記半導体は、ポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料よりなることを特徴とする請求項12記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項14】
複数の被処理体に対して熱処理を施すための熱処理装置において、
前記複数の被処理体と弾性波素子を有する温測用被処理体とを収容することができる排気可能になされた処理容器と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記複数の被処理体と前記温測用被処理体とを保持して前記処理容器内へロード及びアンロードされる保持手段と、
前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、
前記弾性波素子に向けて測定用電波を送信するために高周波ラインを介して送信器に接続された送信用アンテナと、
前記弾性波素子より発せられる温度に応じた周波数の電波を受けるために高周波ラインを介して受信器に接続された受信用アンテナと、
前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析部と、
前記処理容器内及び/又は前記加熱手段に設けられた温度測定手段と、
前記加熱手段を制御する温度制御部と、
を備え、前記送信用アンテナと前記受信用アンテナとを、前記温度測定手段に設けられた導電性部材にそれぞれ兼用させるように構成したことを特徴とする被処理体の熱処理装置。
【請求項15】
前記高周波ラインには、高周波成分は通すが低周波成分及び直流成分をカットする高周波フィルタ部が介設されていることを特徴とする請求項14記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項16】
前記加熱手段は、加熱電源と、該加熱電源に給電ラインを介して接続された抵抗加熱ヒータとを有していることを特徴とする請求項14又は15記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項17】
前記処理容器内を温度制御用の複数の加熱ゾーンに分割するために前記抵抗加熱ヒータはそれぞれ個別に供給電力の制御が可能になされた複数のゾーン加熱ヒータに区分されていることを特徴とする請求項16記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項18】
前記抵抗加熱ヒータは、前記隣り合うゾーン加熱ヒータ間において電気的に導通状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする請求項17記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項19】
前記ゾーン加熱ヒータは、前記隣り合う加熱ゾーン間において電気的に絶縁状態になされていると共に、各加熱ゾーンのゾーン加熱ヒータ毎に給電ラインが設けられていることを特徴とする請求項17記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項20】
前記給電ラインには、加熱電力は通すが、高周波成分はカットする電力フィルタ部が介設されていることを特徴とする請求項16乃至19のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項21】
前記温度測定手段は、熱電対を有しており、該熱電対が前記送信用アンテナ及び/又は前記受信用アンテナとして兼用されることを特徴とする請求項14乃至20のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項22】
前記熱電対に接続されている熱電対ラインには、直流成分は通すが高周波電力はカットする直流フィルタ部が介設されていることを特徴とする請求項21記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項23】
前記温度測定手段は、前記熱電対を収容して保護する導電性材料で作成された保護管を有しており、該保護管が前記送信用アンテナ及び/又は前記受信用アンテナとして兼用されることを特徴とする請求項14乃至19のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項24】
前記導電性材料は、半導体よりなることを特徴とする請求項23記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項25】
前記半導体は、ポリシリコン、単結晶シリコン、SiC、SiGe、GaN、ZnO、AlN、GaAsよりなる群より選択される1の材料よりなることを特徴とする請求項24記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項26】
前記温測用被処理体には、複数の弾性波素子が設けられると共に、前記複数の弾性波素子の周波数帯域は互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項27】
前記弾性波素子は、少なくとも前記温測用被処理体の中心部と周辺部とに設けられることを特徴とする請求項26記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項28】
前記温測用被処理体は前記加熱ゾーン毎に対応して保持されることを特徴とする請求項4乃至13及び17乃至26のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項29】
前記温測用被処理体の弾性波素子の周波数帯域は前記加熱ゾーン毎に互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項28記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項30】
前記送信用アンテナと受信用アンテナは、送受信用アンテナとして一体化されていることを特徴とする請求項1乃至29のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項31】
前記処理容器には、前記被処理体の熱処理を補助するために高周波電力によってプラズマを発生させるプラズマ発生手段が設けられており、前記測定用電波の周波数帯域は、前記高周波電力の周波数とは異なるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至30のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項32】
前記処理容器には、前記被処理体の熱処理を補助するために高周波電力によってプラズマを発生させるプラズマ発生手段が設けられており、前記測定用電波の送信時及び受信時には一時的にプラズマの発生を停止することを特徴とする請求項1乃至31のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項33】
前記弾性波素子は、表面弾性波素子もしくはバルク弾性波素子もしくは境界弾性波素子のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1乃至32のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項34】
前記弾性波素子は、ランタンタンタル酸ガリウムアルミニウム(LTGA)、水晶(SiO )、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム:KNaC )、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O 、ニオブ酸リチウム(LiNbO )、タンタル酸リチウム(LiTaO )、リチウムテトラボレート(Li )、ランガサイト(La Ga SiO14)、窒化アルミニウム、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される1の材料の基板素子であることを特徴とする請求項1乃至33のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項35】
前記温度制御部は、前記温度分析部からの出力もしくは前記温度測定手段からの出力もしくは予め記憶された熱モデルからの出力のいずれか1つもしくは複数を組み合わせて前記加熱手段を制御することを特徴とする請求項1乃至34のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項36】
前記温度分析部からの出力を記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1乃至35のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項37】
前記温度分析部からの出力を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1乃至36のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理装置。
【請求項38】
弾性波素子を有する温測用被処理体を含む複数の被処理体を保持する保持手段を、処理容器内へ導入して前記被処理体を加熱手段で加熱することにより熱処理を施すようにした被処理体の熱処理方法において、
前記処理容器に設けた送信用アンテナから測定用電波を送信する送信工程と、
前記測定用電波を受けた前記温測用被処理体の弾性波素子が発する電波を前記処理容器に設けた受信用アンテナで受ける受信工程と、
前記受信用アンテナで受けた電波に基づいて前記温測用被処理体の温度を求める温度分析工程と、
前記求めた温度に基づいて前記加熱手段を制御する温度制御工程と、
を有することを特徴とする被処理体の熱処理方法。
【請求項39】
前記処理容器内は温度制御用に複数の加熱ゾーンに分割されており、前記温測用被処理体は前記加熱ゾーン毎に対応して保持されると共に、前記温測用被処理体の弾性波素子の周波数帯域は前記加熱ゾーン毎に互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項38記載の被処理体の熱処理方法。
【請求項40】
前記処理容器内及び/又は前記加熱手段には温度測定用の熱電対がそれぞれ設けられており、
前記温度制御工程では、前記温測用被処理体の温度測定値に加えて前記熱電対からの測定値も参照して前記加熱手段の制御を行うことを特徴とする請求項38又は39記載の被処理体の熱処理方法。
【請求項41】
前記熱処理は高周波電力によって発生されたプラズマにより処理されるプラズマ処理工程を含み、前記測定用電波は前記高周波電力の周波数とは異なるように設定されていることを特徴とする請求項38乃至40のいずれか一項に記載の被処理体の熱処理方法。
【請求項42】
請求項1乃至37のいずれか一項に記載の熱処理装置を用いて被処理体に熱処理を施すに際して、
請求項38乃至41のいずれか一項に記載の熱処理方法を実行するように前記熱処理装置を制御するコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶する記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−302213(P2009−302213A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153552(P2008−153552)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】