説明

被検査体の検査装置

【課題】被検査体の検査精度を向上させる。
【解決手段】
基板検査システムにおいて、撮像ユニット24内に設けられたラインセンサは、走査ライン上の映像を走査する。基板搬送機構は、ラインセンサによって基板2の映像が走査されるときに、ラインセンサに対して基板2を移動させる。回転機構は、撮像ユニット24を初期位置から回転させることにより基板2の搬送方向に対する走査ラインの角度を変更する。ラインセンサは、初期位置における第1主走査ラインL1に対して走査角度θをもった第2主走査ラインL2上の映像を走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査装置に関し、特に撮像して得られた被検査体の画像を利用して被検査体を検査する被検査体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる機器に電子基板が実装されるようになっている。これらの電子基板が実装される機器においては、小型化や薄型化および低価格化が常に課題とされており、このため、高集積度設計が広く行われている。この高集積度設計を実現する要素の一つとして高密度実装技術が挙げられる。この高密度実装のポイントは製造技術および検査技術にあり、この部品実装後のプリント基板(以下「基板」という)の検査として、プリント基板を撮像することにより得られる画像を利用する検査技術が知られている。このような検査技術として、例えば基板を水平面上で所定角度回転させた状態で基板のX線透過画像を撮像するX線検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−162370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板に実装される部品は益々高精細化が進められている。このような高精細の部品の実装状態を精度良く検査するため、撮像する画像の更なる高解像度化が求められている。しかしながら、高解像度で撮像可能な撮像素子は高価であり、また、要求される解像度の撮像素子を得ることが困難な場合も生じ得る。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体の検査精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の被検査体の検査装置は、被検査体の映像を走査するラインセンサと、ラインセンサによって被検査体の映像が走査されるときに、被検査体とラインセンサとを相対的に移動させる移動手段と、を備える。ラインセンサは、被検査体における、被検査体の移動方向と垂直な方向に対して所定の角度をもった走査ライン上の映像を走査する。
【0006】
この態様によれば、被検査体の移動方向と垂直な方向における解像度を高めることができる。このため、ラインセンサから出力された画像を利用して被検査体の検査を実施するときの検査精度を向上させることができる。
【0007】
被検査体の移動方向に対する走査ラインの角度を変更する走査方向変更手段と、を備えてもよい。この態様によれば、被検査体の移動方向に対する走査ラインの角度を変更することで、被検査体の移動方向と垂直な方向における解像度を変更することができる。このため、例えばユーザの要求に応じた解像度を実現することが可能となる。
【0008】
移動手段は、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度に応じて、走査ラインの移動方向における間隔を変更してもよい。この態様によれば、被検査体の移動方向と垂直な方向における高解像度化に合わせて、被検査体の移動方向における解像度も高めることができる。
【0009】
移動手段は、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度をθ、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度が90度のときの走査ラインの移動方向における間隔をLとして、走査ラインの移動方向における間隔をL*cosθに変更してもよい。この態様によれば、被検査体の移動方向における解像度を、被検査体の移動方向と垂直な方向における解像度に合わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る被検査体の検査装置によれば、被検査体の検査精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板検査システム10の構成を示す図である。基板検査システム10は、基板搬送機構12、撮像システム14、および後述する画像処理部、スレーブPC、マスターPCなどを有している。基板搬送機構12は、支持プレート18および2本の搬送レール20を有している。搬送レール20は、支持プレート18により支持される。
【0013】
搬送レール20はモータ(図示せず)を駆動することにより基板2を搬送する搬送ベルト(図示せず)を有し、搬送ベルトに載置された基板2を基板搬送機構12の略中央まで搬送する。搬送レール20の上方であって検査テーブルの略中央には、基板2の搬送を検知する光センサなどの搬送センサ(図示せず)が設けられている。この搬送センサが基板2の端面や基板2に設けられた検知孔を検知すると、基板検査システム10は、基板2が基板搬送機構12の略中央に搬送されたと判定し、搬送レール20による基板2の搬送を停止させる。
【0014】
基板搬送機構12の下方には、搬送レール20の延在方向と直行する方向に延在するボールネジ22が設けられている。ボールネジ22は、搬送モータ(図示せず)によって駆動される。ボールネジ22が回転することにより、支持プレート18と共に基板搬送機構12が、搬送レール20の延在方向と垂直な方向に移動される。基板検査システム10は、搬送レール20によって搬送された基板2をこうして撮像システム14の下方に搬送する。
【0015】
所定の位置まで基板2が移動すると、基板検査システム10は、搬送モータを逆転させてボールネジ22を逆回転させ、もとの位置まで基板搬送機構12を移動させる。基板検査システム10は、このように移動された基板2を搬送レール20によって次の工程へと搬送する。次に検査を行う基板がある場合は、再び搬送レール20によって次の検査対象となる基板2を基板搬送機構12の略中央まで搬送し、上述の動作を繰り返す。なお、本図手前側の搬送レール20には、搬送レール20上の載置された基板2を上方から押圧して基板2の形状を矯正するクランプが設けられている。基板搬送機構12の略中央に搬送された基板2は、このクランプによりゆがみが矯正された状態で撮像システム14へ搬送される。
【0016】
撮像システム14は、撮像ユニット24および回転機構26を有する。撮像ユニット24は、基板2へ光を照射すると共に基板2を撮像し、画像データを生成する。回転機構26はユニット回転モータ(図示せず)および減速機構(図示せず)を有しており、ユニット回転モータが作動することにより減速機構を介して基板2の被検査面と垂直な軸を中心に撮像ユニット24を回転させる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る撮像ユニット24の内部の構成を示す斜視図である。撮像ユニット24は、第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34を有する。なお、撮像ユニット24は、撮像時に基板2に光を照射する照明ユニットも有しているが、照明ユニットの構成は公知であるため説明を省略する。第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34は同様に構成され、各々が支持プレート36上にラインセンサ38、レンズ39、テレセントリックレンズ40、およびミラー42を備える。なお、コストダウンなどのために第3走査ユニット34が削除され、第1走査ユニット30および第2走査ユニット32によって撮像ユニット24が構成されてもよい。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係る撮像ユニット24の構成を模式的に表した図である。図3において、基板2は左側から右側へと搬送されている間に撮像ユニット24によって基板2の撮像処理が実施される。以下、図3の右方向を第1方向、図3の左方向を第2方向として説明する。なお、撮像ユニット24は、基板2が第2方向に搬送されている間に基板2の撮像処理を実施してもよい。
【0019】
第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34の各々のラインセンサ38は、ミラー42によって反射され、テレセントリックレンズ40、およびレンズ39を通過した基板2の走査ライン上の映像を走査する。このとき、各々のラインセンサ38は、同一の走査ライン上の映像を走査する。これにより、走査ラインに光を照射するタイミングで各々のラインセンサ38が同時に走査することができ、効率的に画像データを取得することが可能となる。
【0020】
以下、この走査ラインが基板2の搬送方向と垂直に向くときの撮像ユニット24の位置を「初期位置」として説明する。また、「走査する」は、対象物の映像を示す光の量をラインセンサ38内の受光素子が電気信号に変換して出力する動作をいう。また、「撮像する」は、一走査単位を走査することをいう。一走査単位とは、例えば基板の一方の端部から他方の端部までの1回の一方向の走査や1回の往復の走査など、ラインセンサ38の走査の単位をいう。
【0021】
第1走査ユニット30のラインセンサ38は、基板2の被検査面を垂直に見た映像を走査する。第2走査ユニット32のラインセンサ38は、被検査面と垂直な方向から第1角度αだけ第1方向側に傾いた角度で基板2の被検査面を見た映像を走査する。第3走査ユニット34のラインセンサ38は、被検査面と垂直な方向から第2角度βだけ第2方向側に傾いた角度で基板2の被検査面を見た映像を走査する。第1の実施形態では、第1角度αと第2角度βは同一の角度(第1の実施形態ではともに10度)に設定されている。ただし、第1角度αと第2角度βとが異なる角度に設定されていてもよい。
【0022】
なお、第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34の各々のラインセンサ38が異なる走査ライン上の映像を走査してもよい。この場合、各々のラインセンサ38は相互に平行な走査ライン上の映像を走査してもよい。
【0023】
図4は、第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34の主光線の光路を示す図である。なお、図4においてミラー42による主光線の反射の図示は省略している。
【0024】
ラインセンサ38は、テレセントリックレンズ40を介して基板2の映像を走査する。テレセントリックレンズ40は、基板2からの反射光をレンズ光軸に対して平行に集光する。このため、テレセントリックレンズ40と基板2との間では、主光線は光軸に対して平行、すなわち画角が実質的にゼロ度となる。テレセントリックレンズ40を使用した場合、画角がゼロ度であるため、被写体の像が光軸中心にあっても光軸から離れた周辺位置にあっても視差による影響を受けず、原理的には視差による歪みのない画像を撮影することができる。視差による歪みがある画像を利用して基板2に実装された部品の高さを算出しようとすると、視差による歪みを考慮した複雑な計算工程を経る必要があり、また、精度の高い算出結果を期待することも困難である。このように視差による歪みのないステレオ画像を利用することにより、シンプルな計算工程によって基板2に実装された部品などの高さを正確に算出することが可能となる。
【0025】
図5は、初期位置にあるときの撮像ユニット24と、回転機構26により初期位置から回転された位置にあるときの撮像ユニット24とを示す上面図である。図5において、撮像ユニット24が初期位置にあるときに第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34が走査する走査ラインを第1主走査ラインL1とする。また、撮像ユニット24が初期位置から回転したときの走査ラインを第2主走査ラインL2とする。第1主走査ラインL1と第2主走査ラインL2とがなす角度は、撮像ユニット24が初期位置から回転した角度となる。以下、この角度を走査角度θとする。このように回転機構26は、基板2の搬送方向と基板2上の走査ラインとの角度を変更する走査方向変更手段として機能する。撮像ユニット24を回転させることにより、基板2の搬送方向と直行する方向(以下、「基板幅方向」という)の解像度が1/cosθだけ向上し、高精細な画像を得ることが可能となる。
【0026】
図6は、第1の実施形態に係る基板検査システム10の機能ブロック図である。図6に示すように、基板検査システム10は、基板搬送機構12および撮像システム14の他に、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、第3スレーブPC58、マスターPC70、およびディスプレイ86を有する。なお図4において第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、第3スレーブPC58、およびマスターPC70は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0027】
第1走査ユニット30のラインセンサ38によって撮像され生成された画像データは、画像処理部52によって画像処理が施された後、第1スレーブPC54に出力される。第2走査ユニット32のラインセンサ38によって撮像され生成された画像データは、画像処理部52によって画像処理が施された後、第2スレーブPC56に出力される。第3走査ユニット34のラインセンサ38によって撮像され生成された画像データは、画像処理部52によって画像処理が施された後、第3スレーブPC58に出力される。
【0028】
第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58の各々は、メモリ60、解析部62、記憶部64、および送受信部66を有する。メモリ60は、受信した画像データを保持する。
【0029】
解析部62は、メモリ60に保持された画像データを解析し、まず基準データを取得する。ここで基準データとは、例えば基板2に設けられた、基板2の位置を示す認識マークの位置データ、基板2に設けられたバーコードなどの識別マークを解析することにより得られる基板2シリアルナンバーや製造年月日などの識別データ、別々のラインセンサ38にまたがって撮像された部品の画像、その他、基板2の検査に必要なデータをいう。
【0030】
また、解析部62は、メモリ60に保持された画像データを解析し、さらに取得した基準データを利用して、基板2に実装される各部品やハンダ個所の位置を示す位置情報データを取得する。記憶部64はハードディスクにより構成されており、基板検査に利用される判定基準データが予め格納されている。解析部62は、記憶部64に格納された判定基準データを利用して、平面画像で検査可能な範囲で基板2の部品の実装状態を検査する。なお、部品の実装状態とは、被検査体としての基板2に実装される素子など部品の有無、位置、適正な部品か等だけではなく、ハンダの有無、ハンダの量、ブリッジの有無等を含む。
【0031】
記憶部64は、検査結果を検査結果データとして保持する。第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58は、それぞれ送受信部66およびハブ68を介して、基準データ、位置情報データ、および検査結果データをマスターPC70に送信する。このとき第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58は、各々が受信した基板2の画像もマスターPC70に送信する。
【0032】
マスターPC70は、送受信部72、搬送制御部74、回転制御部76、撮像制御部78、記憶部80、判定部82、および表示制御部84を有する。送受信部72は、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58から基準データ、位置情報データ、および検査結果データを受信する。記憶部80はハードディスクにより構成されており、受信したこれらのデータは記憶部80に格納される。
【0033】
基板2を第1方向および第2方向に搬送する搬送モータ50は、マスターPC70に接続されている。搬送制御部74は、搬送モータ50に駆動信号を供給することにより搬送モータ50を作動させて基板搬送機構12を移動させることにより、基板2を第1方向および第2方向に移動させる。したがって搬送制御部74および基板搬送機構12は、基板2を移動させる移動手段として機能する。
【0034】
回転機構26内に設けられたユニット回転モータは、マスターPC70に接続されている。回転制御部76は、ユニット回転モータに供給する駆動信号を制御することにより、撮像ユニット24の回転角度を制御する。
【0035】
第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34の各々のラインセンサ38はマスターPC70に接続されている。撮像制御部78は、照明ユニットが基板2に光を照射するタイミングで基板2の映像を走査するよう、ラインセンサ38の各々の撮像を制御する。
【0036】
判定部82は、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58から受信した基準データおよび位置情報データを利用して、基板2に実装される部品の高さを算出する。このため、判定部82は高さ算出部として機能する。
【0037】
具体的には、第1走査ユニット30、第2走査ユニット32、および第3走査ユニット34は、それぞれ異なる視点で見た基板2の被検査面を走査するため、被検査面の高さがゼロの平面を基準とすると、高さがある部分はそれぞれの走査ユニットにより得られる画像の位置が異なることになる。第2走査ユニット32および第3走査ユニット34が走査するときの斜めの視点の角度は予め決まっているため、判定部82は、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58の各々から受信した位置情報データが示す部品位置の各々のずれ量に基づいて、基板2に実装される部品の高さを算出する。記憶部80には、基板2の被検査面の部品などの高さに関する検査基準データが予め格納されている。判定部82は、記憶部80に格納された検査基準データを利用して、例えば検査基準データが示す正常範囲の高さに各部品の高さが入っているか否かを判定する異常判定を実施する。これにより、例えば電子部品の足と基板との間に異物が挟まっているかなどを検出することが可能となる。なお、判定部82が、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58から受信した画像を利用して、基準データや位置情報データを取得してもよい。
【0038】
表示制御部84は、異常判定の結果を含む判定部82による基板2の検査結果、および受信した検査結果データが示す基板2の検査結果をディスプレイ86に表示させる。このとき表示制御部84は、例えば第1スレーブPC54から受信した、基板2を鉛直上方から見た画像を異常がある部品の位置を明示してディスプレイ86に表示させてもよい。
【0039】
図7は、第1の実施形態に係る基板検査システム10の基板検査処理の工程を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、基板検査システム10に設けられたスタートボタンがユーザによって押されたときに開始する。
【0040】
ユーザはマウスやキーボードなどの入力装置を用いてマスターPC70に走査角度θを入力することができる。ユーザによって入力された走査角度θを示す情報は、マスターPC70のRAMに格納される。スタートボタンがユーザによって押されると、回転制御部76は、RAMを参照することにより、ユーザによって走査角度θが入力されたか否かを判定する(S10)。走査角度θが入力されている場合(S10のY)、回転制御部76は、回転機構26のユニット回転モータに駆動信号を供給して、初期位置から走査角度θだけ撮像ユニット24を回転させる(S12)。走査角度θの入力がない場合(S10のN)、回転制御部76はS12の処理をスキップする。
【0041】
なお、ユーザは、マウスやキーボードなどの入力装置を用いてマスターPC70に、基板2に対して走査ラインの向く方向を変化させるか否かを選択することができてもよい。ユーザによって走査ラインの向く方向を変化させるよう選択された場合、その旨を示す情報はマスターPC70のRAMに格納される。スタートボタンがユーザによって押されると回転制御部76はRAMを参照し、ユーザによって走査ラインの向く方向を変化させるよう選択されているか否かを判定する。選択されている場合、回転制御部76は、初期位置から45度だけ撮像ユニット24を回転させ、基板2に対する走査ラインの向く方向を45度変化させる。これにより、基板2の幅方向または長さ方向に並んで実装された部品の間など、検査の死角となる範囲を低減させることができる。
【0042】
次に撮像制御部78は、基板撮像処理を実施する(S14)。基板撮像処理では、搬送制御部74は基板2を第1方向に搬送し、撮像制御部78は、基板2が第1方向に搬送されているときにラインセンサ38に基板2の撮像を開始させる。このとき搬送制御部74は、RAMを参照して、搬送方向における各走査ラインの間隔がL*cosθになるよう基板2を搬送する。ここでLは、基板2が初期位置にあるときの基板2の被検査面における各走査ラインの間隔を示す。これにより、基板2が初期位置にあるときに比べ、搬送方向の解像度を1/cosθに高めることができる。走査角度θが設けられている場合、基板幅方向における解像度は上述したように1/cosθとなる。このように搬送速度を調整することにより、搬送方向の解像度を基板幅方向の解像度に合わせることができる。
【0043】
基板撮像処理が終了すると、第1スレーブPC54、第2スレーブPC56、および第3スレーブPC58の各々の解析部62は、取得した画像データを解析して、上述のように位置情報データなどを取得する。送受信部66は取得した位置情報データなどをマスターPC70に送信する(S16)。判定部82は、受信した位置情報データなどを利用して基板2の被検査面上の各部品の高さを算出し(S18)、それに基づいて基板2の異常判定を実施する(S20)。異常判定が終了すると、表示制御部84は、基板2の検査結果をディスプレイ86に表示し(S22)、本フローチャートにおける処理を終了する。
【0044】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る撮像ユニット100を示す図である。第2の実施形態に係る基板検査システムの構成は、撮像ユニット24に代えて撮像ユニット100が設けられている以外は、第1の実施形態に係る基板検査システム10と同様である。したがって、第2の実施形態では、回転機構26は基板2の被検査面と垂直な軸を中心に撮像ユニット100を回転させる。
【0045】
撮像ユニット100は、第1走査ユニット102、第2走査ユニット104、および第3走査ユニット106を有する。第1走査ユニット102、第2走査ユニット104、および第3走査ユニット106の各々は、ラインセンサ108およびレンズアレイ110を有する。なお、コストダウンなどのために第3走査ユニット106が削除され、第1走査ユニット102および第2走査ユニット104によって撮像ユニット100が構成されてもよい。
【0046】
第1走査ユニット102、第2走査ユニット104、および第3走査ユニット106の各々のラインセンサ108は、基板2の被検査面における同一の走査ライン上の映像を走査する。第2の実施形態においても、この走査ラインが基板2の搬送方向と垂直に向くときの撮像ユニット100の位置を「初期位置」とする。なお、第1走査ユニット102、第2走査ユニット104、および第3走査ユニット106の各々のラインセンサ108が異なる走査ライン上の映像を走査してもよい。この場合、各々のラインセンサ38は相互に平行な走査ライン上の映像を走査してもよい。
【0047】
第1走査ユニット102のラインセンサ108は、被検査面を垂直に見た映像を走査する。第2走査ユニット104のラインセンサ108は、被検査面と垂直な方向から第1角度αだけ第1方向側に傾いた角度から見た基板2の映像を走査する。第3走査ユニット106のラインセンサ108は、被検査面と垂直な方向から第2角度βだけ第2方向側に傾いた角度で見た基板2の映像を走査する。第2の実施形態では、第1角度αと第2角度βは同一の角度(第2の実施形態ではともに10度)に設定されている。ただし、第1角度αと第2角度βとが異なる角度に設定されていてもよい。
【0048】
図9は、第1走査ユニット102を搬送方向に見た図である。なお、第2走査ユニット104および第3走査ユニット106の構成は第1走査ユニット102と同様であるため、第1走査ユニット102の構成を説明することにより第2走査ユニット104および第3走査ユニット106の構成の説明は省略する。
【0049】
レンズアレイ110はいわゆる等倍光学系であり、超小型のロッドレンズを配列したロッドレンズアレイとして構成される。なお、ロッドレンズアレイの構成は公知であるため説明を省略する。ラインセンサ108は、受光素子が基板2の幅方向全域に対応する長さに一列に配列されて構成される。ラインセンサ108は、レンズアレイ110を介して基板2の被検査面の映像を走査する。
【0050】
等倍光学系もまた、基板2からの反射光をレンズ光軸に対して実質的に平行に集光する。このため、このように等倍光学系を採用することにより、ラインセンサ108によって取得される基板2の画像の視差による影響を大幅に低減させることができる。第2の実施形態では、第1走査ユニット102、第2走査ユニット104、および第3走査ユニット106のすべてに等倍光学系が採用されているため、異なる角度から走査した画像を、視差による影響の少ない状態で取得することができる。このため、基板2の被検査面の立体形状を高速かつ高精度に把握することが可能となる。
【0051】
なお、レンズアレイ110としてセルフォック(登録商標)レンズアレイ(SLA)が採用されてもよい。このようなレンズアレイは焦点距離が非常に短いため、レンズアレイを基板2の検査面から5〜10ミリメートルの至近距離まで近づけて設置する必要がある。そのため、背の高い部品が搭載された基板2の検査には使うことができない。また、このようなレンズアレイを使うと隣のレンズによる像による干渉があり、解像度は40〜50ミクロン(マイクロメートル)が限界となる。
【0052】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0053】
ある変形例では、ユーザは、基板2の被検査面の高さの検査を実施するか否かをマウスやキーボードなどを用いてマスターPC70に入力することができる。基板2の被検査面の高さの検査を実施しない基板検査がユーザによって選択された場合、第1の実施形態では、撮像制御部78は、第2走査ユニット32および第3走査ユニット34によって基板2を撮像せず、第1走査ユニット30によってのみ基板2を撮像する。第2の実施形態では、撮像制御部78は、第2走査ユニット104および第3走査ユニット106によって基板2を撮像せず、第1走査ユニット102によってのみ基板2を撮像する。このように基板2の被検査面の高さの検査をユーザによって選択可能とすることにより、第2スレーブPC56、第3スレーブPC58、およびマスターPC70における検査処理の負荷を軽減させることができる。
【0054】
また、このように第1走査ユニット30によってのみ基板2を撮像する場合においても、ユーザによって走査角度θが入力された場合、第1の実施形態では回転制御部76は撮像ユニット24を、第2の実施形態では撮像ユニット100を走査角度θだけ回転させる。これにより、撮像ユニット24または撮像ユニット100が初期位置のまま基板2を撮像するときよりも高い解像度で基板2を撮像することができる。
【0055】
ある別の変形例では、搬送レール20上にターンテーブルが設けられる。ターンテーブルはモータが作動することにより回転するよう構成されている。ユーザによってマスターPC70に走査角度θが入力された後スタートボタンが押されると、回転制御部76は、このモータを作動させてターンテーブルを走査角度θだけ回転させる。このように撮像ユニット24や撮像ユニット100を回転させる代わりに基板2を回転させることによっても、走査角度θを変更することができる。
【0056】
ある別の変形例では、撮像ユニット24または撮像ユニット100は、走査角度θがゼロ以上の値になる位置で固定されている。このとき、走査角度θは45度であってもよい。このように基板2の搬送方向に対して走査ラインの向く方向を予め傾けて固定しておくことにより、撮像ユニット24または撮像ユニット100を回転させるための機構のコストや、撮像ユニット24または撮像ユニット100を回転させる時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態に係る基板検査システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る撮像ユニットの内部の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る撮像ユニットの構成を模式的に表した図である。
【図4】第1走査ユニット、第2走査ユニット、および第3走査ユニットの主光線の光路を示す図である。
【図5】初期位置にあるときの撮像ユニットと、回転機構により初期位置から回転された位置にあるときの撮像ユニットとを示す上面図である。
【図6】第1の実施形態に係る基板検査システムの機能ブロック図である。
【図7】第1の実施形態に係る基板検査システムの基板検査処理の工程を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係る撮像ユニットを示す図である。
【図9】第1走査ユニットを搬送方向に見た図である。
【符号の説明】
【0058】
10 基板検査システム、 14 撮像システム、 24 撮像ユニット、 26 回転機構、 30 第1走査ユニット、 32 第2走査ユニット、 34 第3走査ユニット、 38 ラインセンサ、 40 テレセントリックレンズ、 70 マスターPC、 74 搬送制御部、 76 回転制御部、 78 撮像制御部、 100 撮像ユニット、 102 第1走査ユニット、 104 第2走査ユニット、 106 第3走査ユニット、 108 ラインセンサ、 110 レンズアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の映像を走査するラインセンサと、
前記ラインセンサによって被検査体の映像が走査されるときに、被検査体と前記ラインセンサとを相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記ラインセンサは、被検査体における、被検査体の移動方向と垂直な方向に対して所定の角度をもった走査ライン上の映像を走査することを特徴とする被検査体の検査装置。
【請求項2】
被検査体の移動方向に対する走査ラインの角度を変更する走査方向変更手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の被検査体の検査装置。
【請求項3】
前記移動手段は、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度に応じて、走査ラインの移動方向における間隔を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の被検査体の検査装置。
【請求項4】
前記移動手段は、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度をθ、被検査体の移動方向と走査ラインとの角度が90度のときの走査ラインの移動方向における間隔をLとして、走査ラインの移動方向における間隔をL*cosθに変更することを特徴とする請求項3に記載の被検査体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−168580(P2009−168580A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6224(P2008−6224)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】