説明

装飾ラミネートガラス用の充填剤入りポリビニルブチラールシート材及びそれを製造する方法

本発明は、装飾中間層またはそれから得られるラミネートであり、その美的品質は、例えばカウンタートップとしてかかる用途で使用される固体表面材料に調和する。本発明の中間層は、粉砕固体表面材料から得られる、少なくとも1種類の複合充填剤材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートされたガラスに関する。さらに具体的には、本発明は、充填剤入り装飾中間層を有する装飾ラミネートガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
Corian(登録商標)、Wilsonart(登録商標)、Avonite(登録商標)などの固体表面材料、または例えば花崗岩などの石から得られる装飾カウンタートップが普及しており、これらの材料が使用される台所または他の部屋に非常に美しい外観を提供することができる。これら、および他の装飾固体表面材料は、さまざまなデザインで提供され、機能上強靭であり、表面損傷、引っかき傷、および破損に対して耐性である。さらに、これらの材料は、従来の清浄剤および洗浄剤を使用して容易に清掃することができる。
【0003】
滑らかなガラスは、これらの同じ特質の多くを有するが、ガラスは、例えば台所における通常のカウンタートップの使用で破損またはひび割れる。また、従来の装飾ガラスは脆いか、あるいは表面に印刷されたデザインは、時間が経つにつれて、かつ/または連続的な接触で損なわれる。したがって、台所のカウンタートップなどの機能的用途において従来の装飾ガラスを使用することは慣例的ではない。しかしながら、部屋または建築物における装飾固体表面のデザインと調和するようにガラスを使用することが望ましい。
【0004】
可塑化ポリビニルブチラールシート(PVB)は、例えば:自動車、オートバイ、ボートおよび飛行機を含む乗り物の風防;住宅および建築物;キャビネットおよびディスプレイケースの棚材料;およびガラスシートにおける構造強度が望まれる他の物品;などのラミネート構造の製造に使用される。多くの用途において、ラミネートは透明かつ無色であることが望ましい。他の用途では、ラミネートは装飾デザインまたは外観を提供するか、または色または色合いを有することが望ましい。画像およびソリッドカラーを有する装飾ガラスラミネートは、以前に記述されている。例えば、Sally Weberによって設計されたE.P.Foster Library(Ventura,CA)への入口およびCarnegie Library(Pittsburgh,PA)への入口。
【0005】
しかしながら、この種類の装飾ガラスラミネートは主に、中間層表面上に印刷することによって得られ、したがって、見えにくい角度から識別することができない2次元画像が提供される。2次元画像は、装飾ラミネートの美的特性の重要な側面である、視覚的効果の深さを提供するように光を拡散しない。これは特に、固体表面デザインと調和するように設計された画像の場合に当てはまる。
【0006】
装飾ガラスラミネートは様々な用途で有用であるが、装飾ガラスラミネートの使用は、調度、家具、カウンタートップ、テーブルトップ等の最終用途では一般に普及していない。装飾固体表面材料のデザインは、従来の方法を使用して、かかる用途において再現するのは難しい。
【0007】
装飾固体表面材料の美的特性に適合する能力を有する装飾ガラスラミネートを提供すると同時に、標準安全ガラスラミネートの特質を提供することが望まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、装飾中間層組成物であり、その中間層は、粒子を含有する少なくとも1種類の複合充填剤がブレンドされた熱可塑性樹脂を含有し、その充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、中間層は、(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有し、かつその少なくとも1種類の充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる。
【0009】
他の態様において、本発明は、装飾中間層を含むラミネートであり、その装飾中間層は、粒子を含有する少なくとも1種類の複合充填剤がブレンドされた熱可塑性樹脂を含有し、その充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、中間層は、(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有し、かつその少なくとも1種類の充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる。
【0010】
他の態様において、本発明は、ラミネートガラス用途に適している装飾中間層を製造する方法であって、その方法が、(a)熱硬化性ポリマーマトリックス中の鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる少なくとも1種類の複合充填剤を制御速度で押出機に供給する段階;(b)熱可塑性樹脂、複合充填剤、可塑剤、および任意の添加剤を共押出しする段階;(c)溶融シート組成物を急冷し、ラミネートガラス用途に適した寸法安定性を有する装飾中間層を得る段階であって、その中間層が:(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有する段階;を含み、複合充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、かつ少なくとも1種類の複合充填剤材料が、熱硬化性ポリマーマトリックス中の鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる。
【0011】
一実施形態において、本発明は、充填剤粒子を含有する中間層である。本発明の中間層は、ガラスラミネート物品の製造において中間層材料として有用であることが知られているいずれかの材料から得られる。例えば、中間層材料は、酸コポリマーまたはその塩、例えばエチレン/メタクリル酸コポリマーまたはその中和されたタイプである。中間層材料は、ポリウレタンポリマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ポリエステルポリマー、またはポリビニルブチラール(PVB)ポリマーであることができる。かかる中間層材料は、種々の製造元から市販されている。
【0012】
好ましくは、中間層材料は、可塑化PVBポリマー、EVAコポリマー、またはエチレン酸コポリマーまたは酸誘導体を含むコポリマーを含む。さらに好ましくは、中間層材料は、PVBを含む。PVBは、例えば、E.I.DuPont de Nemours and Company(DuPont)またはSolutia社から市販されており、本発明の実施において使用することができる。
【0013】
代替方法としては、本明細書で使用されるPVBを製造し、本明細書で使用し、本発明の中間層を得ることができる。本発明の実施において使用するのに適しているポリビニルブチラールは、PVBシート材の製造において公知のまたは従来から実施されているいずれかの方法によって製造することができる。例えば、米国特許第3,153,009号明細書には、本発明の実施で使用するのに適している、PVBを工業的に製造する方法が記述されている。本発明の実施で使用されるPVB樹脂は、酸または酸の混合物の存在下にて温度5〜100℃にて水性媒体中でPVAをブチルアルデヒドと混合することによって製造される。
【0014】
一般に、PVAとブチルアルデヒドとの比は、PVBが、ポリビニルアルコール重量%として通常示される、残留ヒドロキシル官能性を有するように選択される。残留ヒドロキシル官能性は、PVBにどのような特性が望まれるかに応じて異なる。PVB樹脂中の所望のポリビニルアルコール重量%を得るのに必要な、ブチルアルデヒドとPVAとの相対量は、PVB製造の当業者には容易に理解されよう。本発明の実施において、残留ヒドロキシルは、約14〜約30重量%の範囲である。好ましくは、残留ポリビニルアルコールの重量%は、約15〜約25である。さらに好ましくは、残留ポリビニルアルコールの重量%は、約15〜約20であり、本発明の実施において、範囲約17〜約19の残留ポリビニルアルコール重量%を有するPVB樹脂が最も好ましい。残留ポリビニルアルコール重量%は、ASTM D1396−92などの標準法に従って決定することができる。
【0015】
本発明の中間層は、複合充填剤材料を含有する。本発明の複合充填剤材料は、固体表面材料から得られる小粒子を含む、またはその小粒子から本質的になり、固体表面材料は、熱硬化性有機ポリマーマトリックス中に分散された微細鉱物充填剤の複合材である。複合充填剤材料は任意に、少なくとも1種類の顔料成分を含有する。本発明の実施で使用される複合充填剤は、中間層に、かつ中間層から得られたラミネートに装飾外観を付与する。固体表面材料中に使用される、通常使用されている鉱物充填剤としては、CaCO3(炭酸カルシウム)、シリカ、およびアルミナが挙げられる。かかる鉱物充填剤は、酸化チタンなどの酸化物も含むことができる。適切なポリマーマトリックスは好ましくは、熱硬化性ポリマーマトリックスである。熱硬化性ポリマーマトリックスは、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはエポキシ樹脂などのポリマー材料から得ることができる。好ましい実施形態において、マトリックスを形成するポリマー材料は、アルキルアクリレートであり、そのアルキル基は、炭素1〜6個を含む。特に好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスは、メチルメタクリレートから形成される。固体表面材料を製造する方法は、本発明の実施に重要ではないが、適切な方法は公知であり、様々な出版物に記述されている。例えば、固体表面材料の製造に適している方法は、米国特許出願公開第2002/0016399号明細書に記載されている。固体表面材料はさらに、顔料、他の着色剤、または固体表面材料の装飾外観に添加される他の添加剤を任意に含有する。
【0016】
複合充填剤は、本発明の実施に使用するのに適しているサイズを有する粒子に固体表面材料を形成することによって固体表面材料から得られる。大きな嵩の粒子を小さな粒子に低減するための従来の方法を本発明の実施に使用することができる。例えば、固体表面複合ポリマーを小粒子へと粉砕または微粉砕することは、本発明の実施において適している。実際の考慮すべき事項としては、充填剤粒子のサイズが、加工装置を通過することができる粒子のサイズによって制限される。押出し成形装置から粉塵フィルターを取り除くことによって、本明細書に記載の方法が容易になる。好ましくは、本明細書で使用するのに適している複合充填剤の粒子は、粒子の少なくとも約80重量%がNo.80標準ふるい上に保持される平均粒径を有する。好ましくは、複合充填剤粒子の少なくとも約85重量%がNo.80ふるい上に保持される。さらに好ましくは、複合充填剤の少なくとも約90重量%がNo.80ふるい上に保持される。
【0017】
特に好ましい実施形態において、複合充填剤粒子の少なくとも約65重量%が、No.12米国標準ふるいを通過する。本発明の特に好ましい実施形態において、複合充填剤粒子の100重量%が、No.12米国標準ふるいを通過する。
【0018】
本発明の中間層は任意に、例えば染料または顔料などの着色剤を含有する。本発明の着色剤は、PVB組成物と混合され、かつPVBから形成されるシートに色を付与する、いずれかの材料である。「着色剤」という用語は、「着色剤の混合物」も意味する。本発明の実施において有用な着色剤は、固形で、溶液として、または固液分散系として、PVB組成物に添加される。例えば、染料または顔料は、加工を容易にするために、PVBに液化状態で添加することができる。染料は一般に、PVB樹脂マトリックスに可溶性であり、色を付けるが、中間層の曇りの一因とはならない。
【0019】
中間層における複合充填剤の濃度は、所望の美的効果が達成されるように調節される。複合充填剤の濃度は、目的の用途に適切な、妥当な光透過が得られると同時に、望ましい装飾効果が得られるように選択される。中間層を含むガラスラミネートを用いた大部分の他の用途と異なり、本発明の実施では、中間層は、入射光に対して実質的に透明ではないと考えられる。透過する光の量は用途ごとに変わり、特に好ましい透過の範囲はなく、本発明の中間層またはラミネートは一般に、入射光の少なくとも約10%を透過するだろう。光透過は、かかる決定に使用される従来の方法によって決定することができる。例えば、従来の分光光度計を使用して、本発明の中間層によって透過された光%を決定することができる。
【0020】
複合充填剤は、約1.0重量%と低い濃度から約20重量%の濃度まで、本発明のPVB組成物に添加される。充填剤の濃度を変化させて、ラミネートにおける所望の装飾効果を得ることができ、したがって、本発明のすべてのラミネートについて特に好ましい範囲はない。しかしながら、特定の美的デザインに関して、複合充填剤の好ましい充填範囲が存在する。しかしながら、本発明の実施における一般的な指導では、充填剤の充填率が約1重量%未満の場合、装飾効果は実質的ではないことに留意されたい。充填率が約20重量%を超える場合には、充填率20重量%と比較して、美的効果は実質的ではなく、それより高い充填率の効果は、中間層の他の望ましい特性を損なうものである。例えば、粒径などの他の因子に応じて、本発明の実施において添加される複合充填剤の濃度は、本明細書に開示される範囲を超え、さらに、本明細書において企図される本発明の範囲内である。所望の装飾効果と中間層の機能特性とのバランスをとることは、当業者の範囲内であると考えられる。
【0021】
複合充填剤の粒径を注意深く選択し、かつ/または操作することによって、シートおよび得られるラミネートの透明度および拡散粉末を制御することができる。複合充填剤の粒径は、適切なサイズのふるいの使用など、従来の方法によって制御される。その代わりとして、所望のサイズの粒子は、複合充填剤の製造元から得ることができる。
【0022】
理論に束縛されることなく、粒径と透明度とは正の関係にあり、粒径と曇り度とは逆の関係にある。複合充填剤の所定の濃度では、粒子が大きくなるに従って、透明度が高くなり、PVBシートおよび得られるラミネートの曇り度が低くなる。粒子が小さくなるに従って、透明度が低くなり、曇り度が高くなり、シートおよび得られるラミネートによって示される拡散粉末が多くなる。透明度は、複合充填剤の充填率にも関係する。本発明の中間層の透明度は、約1〜約80%の範囲内であり、好ましくは少なくとも2%である。
【0023】
本発明の中間層シートの曇り度は、拡散粉末に関係する。特定の中間層またはラミネートの曇り度は、複合充填剤の充填率に関係し、その充填率は、設計者によって要求される美的品質を得るために変えられる。本発明の中間層組成物において、例えば、視程計などの装置で曇り度%によって測定される拡散粉末は、好ましくは約20%〜約100%の範囲である。
【0024】
特に好ましい実施形態において、本発明は、可塑剤を含有するPVB組成物である。本発明の可塑剤は、可塑化PVBシート材組成物の製造において従来から知られており、または使用されているいずれかの可塑剤から選択することができる。好ましくは、可塑剤は、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)(3GO)、テトラエチレングリコールジ−ヘプタノエート(4G7)、またはジブチルセバケート(DBS)のいずれかである。最も好ましくは、可塑剤は3GOである。
【0025】
可塑剤は、任意の量で添加されるが、好ましくは、樹脂の総乾燥重量に対して約5〜約50pph(pphは100部あたりの部)の量で添加される。本明細書で使用される「乾燥重量」とは、乾燥樹脂の重量、つまり樹脂から水が除去された後の重量を意味する。好ましくは、可塑剤は、約20〜約45pph、最も好ましくは約32〜約45pphの量で存在する。
【0026】
可塑化は、例えば米国特許第3,153,009号明細書または米国特許第5,886,075号明細書に記載の従来の方法を用いて行うことができる。
【0027】
本発明のPVB組成物の製造に界面活性剤が含まれる。PVBの製造において有用な従来の界面活性剤が、本発明の実施において有用であると考えられる。好ましい界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム(sodium cocomethyl tauride)、およびデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩が挙げられる。
【0028】
他の添加剤が、本発明の樹脂組成物中に任意に含有される。かかる添加剤の例としては、酸化防止剤、光安定剤、粘着調整剤、および/または表面張力調整剤が挙げられる。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、本発明の中間層シートを含むラミネートである。ラミネートは、ガラスまたはプラスチック材料と中間層とのいずれかの組み合わせから得られる。例えば、本発明のラミネートは、ガラスおよび本発明の中間層で構成されるか、またはラミネートは、ポリマー材料および本発明の中間層で構成されるか、またはラミネートは、ガラスまたはポリマー材料と本発明の中間層との組み合わせで構成される。本発明の中間層と共に使用するのに適しているポリマー材料は、本明細書に記載されるような用途で使用するのに適していることが分かっている、いずれかのポリマー材料である。適切なポリマーは、例えば:ポリカーボネート;アクリル酸および/またはアクリル酸エステルポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルポリマーおよびコポリマー;であり、あるいは、ポリエステルが、本明細書で使用するのに適している熱可塑性材料である。好ましくは、ラミネートは、本発明の中間層と接着された少なくとも1枚のガラスを含むガラスラミネートである。本発明のラミネートは任意に、本発明の装飾中間層と組み合わせて、他の非装飾中間層材料を含むことができる。適切な非装飾材料は、透明ラミネートにおいて中間層として従来から知られており、かつ使用されている材料であり、その例は本明細書に記載されている。本発明のラミネートは、ガラスにラミネートされたガラス(ガラス/ガラス)、ガラス/プラスチック、またはプラスチック/プラスチックのいずれかの組み合わせであることができる。硬質構造材料の多層の使用が、本明細書で企図される。例えば、金属、木材、または石材などの他の材料と、ガラスまたはプラスチック、またはガラスおよびプラスチックの他の組み合わせが、本発明の範囲内で企図される。少なくとも1つの装飾中間層と少なくとも1つの非装飾中間層とのいずれかの組み合わせであるように、装飾中間層の多層が、本発明の範囲内で企図される。本明細書に記載の装飾中間層と他の装飾中間層との組み合わせもまた、本発明の範囲内で企図される。本発明について企図される範囲外に逸脱することなく、本明細書に具体的に示されていない本発明の他の変形形態を得るために、当業者は、従来の手法において本発明の教示を利用することができる。ラミネートにおいて望まれる層の組み合わせに応じて、安定性かつ粘着性のラミネートを得るのに、接着剤層が必要とされる場合もあるし、必要とされない場合もある。いずれにしても、接着剤の使用は、本明細書に記載のラミネートの製造において従来どおりであるとみなされる。本発明のラミネートは、公知かつ従来の方法に従って組み立てられる。例えば、本発明のラミネートは、熱および圧力をかけて、ガラスシートと、本発明の中間層と、もう1つのガラスシートとを貼り合わせて、ラミネートを形成する段階を含む方法によって組み立てられる。ラミネートプロセス中にラミネートから空気を逃す通路を提供するために、ラミネート前に中間層の表面を粗くするなどの、ラミネートの質を向上するための様々な技術が従来から知られている。表面パターンの適用は任意であり、本発明のラミネートの製造で使用される熱可塑性中間層材料に依存する。
【0030】
本発明のラミネートは、装飾物品の製造において使用される。例えば、本発明のラミネートは、キャビネット、キャビネットの戸、テーブルトップ、テーブルカバー、カウンタートップ、玄関の戸、ドアパネル、シャワードア、床のタイル、天井のタイル、壁のタイル、段板、壁の汚れ止め板、器具の戸、器具のカバー、部屋の仕切り、棚材料、およびキャビネットにおける装飾ガラスとして使用される。他の例は、当業者によって企図される。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、装飾中間層を製造する方法である。本発明の装飾中間層は、少なくとも1種類の複合充填剤および可塑剤を有するPVBを共押出しすることによって得られる。押出し成形は、どの程度の可塑剤が含有されるかに、少なくとも一部応じて、範囲約175〜約245℃の温度で行われる。押出し成形シートは、約40℃以下であるが、約10℃を超える温度に急冷、または冷却される。好ましくは、シートは約25℃未満の温度に冷却され、さらに好ましくは、シートは約20℃未満の温度に冷却され、最も好ましくは、シートは約15℃未満の温度に冷却される。押出し成形シートは、保管のために巻き取られ、積み重ねられる。いずれにしても、本発明のシートを使用して、上述のラミネートを製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例および比較例は、本発明をさらに説明するために示されている。実施例は、本発明の範囲を制限することを決して意図するものではなく、特許請求の範囲に記載され、かつ/または本明細書に記載される本発明と一致しない手法で特許請求の範囲または明細書を定義するために決して使用されるものではない。
【0033】
試験方法
曇り度/透明度/透過率
曇り度は、ASTM D1003に従って決定され、入射から2.5度を超えて逸れた透過光のパーセンテージとして定義される。透明度は、入射光から2.5度未満逸れた透過光のパーセンテージとして定義される。曇り度/透明度の測定値は、Byk−Gardner Haze−gard(登録商標)Plus(HG Plus)またはHunter Lab Ultrascan(登録商標)Sphere分光光度計(Ultrascan)のいずれかを使用して得られた。
【0034】
圧縮剪断強さ
圧縮剪断強さは、ラミネートを2.54cm×2.54cmのチップ6つに切断することによって決定される。チップを45度でジグに保持し、圧縮試験装置を使用して、速度0.25cm/分でチップに力をかける。ガラス−PVB結合の凝集破壊を生じさせる力の量は、ラミネートの圧縮剪断強さである。通常の建築関係用途では、圧縮せん断接着力は少なくとも1800N/cm2(2600psi)である。
【0035】
ポンメル接着力試験(Pummel Adhesion Test)
ラミネートを最低3時間−18℃にコンディショニングする。冷却されたラミネートを金属プレート上に角度45度で保持し、ガラスが割れるまで454g(1ポンド)のハンマーで打った。試料に付いていない割れたガラスすべてを除去する。中間層上に残るガラスを1組の標準試料と視覚的に比較する。数が多いほど、中間層上に残るガラスが多く、つまり、ゼロポンメルでは、シートに残るガラスは0%であり、10ポンメルでは、中間層上に残るガラスは100%である。
【0036】
引張クリープ
引張クリープの測定は、コンディショニング(相対湿度23%/16時間)された19.05×101.6mm(0.75×4インチ)のシート材ストリップを一方の端で締め付け、もう一方の端に荷重を取り付けることによって行われる。ストリップの伸び率は、荷重69kPa(10psi)で引張クリープを決定するために30分の時点で測定される。試験温度は65℃である。
【0037】
1、3、7、および9cmにて平行線で試料に印を付けた。締め付け具を1cmのマークの箇所で取り付け、荷重を9cmのマークの箇所で取り付けた。3cmのマークと7cmのマークとの距離は、30分間の試験前および後にカセトメーターで測定される。
【0038】
引張クリープのlogは、等式1によって計算される。
等式1 引張クリープ=log[(lt−lo)/lo×100]
式中、lo=初期標点距離,cm
t=30分の時点での標点距離
【0039】
引張り強さ
引張り強さは、インストロン法によって決定される。固定クロスビームにおける「C」引張セルと共に、かつフィルムつかみ具およびクロスヘッド速度500mm/分と共に、制御雰囲気においてInstron Universal Testing Instrument Model ll23を使用して、コンディショニング(相対湿度23%/16時間)された5つのASTM D−1708−84打抜き試験片を試験した。
【0040】
引張り強さは、等式2によって計算される。
等式2 引張り強さ,psi=[L/(T×0.187)]
式中、L=破壊荷重,ポンド
T=厚さ,インチ
0.187=試料幅,インチ
【0041】
剛性
5%割線係数が、インストロン法によって決定される。固定クロスビームにおける「B」引張セルと共に、かつフィルムつかみ具およびクロスヘッド速度50mm/分と共に、制御雰囲気においてInstron Universal Testing Instrument Model ll23を使用して、コンディショニング(相対湿度23%/16時間)され、打抜かれ、計量された、19.05mm×203.2mm(0.75インチ×8.0インチ)の5つの試験片を試験した。5%割線係数(剛性)は、等式3によって計算される。









【0042】
【数1】

【0043】
実施例1
乾燥PVB樹脂、3GO可塑剤、UV光安定剤、熱安定剤の混合物に、複合充填剤KJ(65重量%がNo.12米国標準ふるいを通過することを特徴とする、粒子の混合物を有する粉砕Corian(登録商標))を添加した。2時間タンブルブレンドした後、均一なブレンドが得られた。区画1−110℃;区画2、3および4−190℃の区画温度プロファイルを有するL:D25:1の一軸スクリュー押出機(直径19.05mm)中にブレンドを供給した。得られたストランドを槽内で空気急冷し、均一性を確実に得るために、さらに2回再押出しした。最後に、押出し物をプレスして小板とし、従来の技術を用いてガラスにラミネートした。曇り度、透明度、および光透過率%をByk Gardner「haze−gard」(HG)Plusで測定した。
【0044】
実施例2〜4
異なる充填率の充填剤を各場合に使用したことを除いては、実施例1に記載の手順を繰り返した。その結果を表1に示す。
【0045】
表 1

a厚さ0.76 mmを有するシートの透過率に正規化された透過率
【0046】
実施例5〜9
粉砕Corian(登録商標)SMタイプ充填剤(粒子の100重量%がNo.12米国標準ふるいを通過する)を指定の充填率で使用したことを除いては、実施例1の手順に従った。その結果を表2にまとめる。






【0047】
表 2

a厚さ0.76 mmを有するシートの透過率に正規化された透過率
【0048】
実施例10〜13
83mm W&P二軸スクリュー押出機に、乾燥PVB樹脂;熱安定剤および紫外線安定剤を含む3GO可塑剤;およびSM充填剤を個々に、および同時に添加した。粘着調整剤(酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウムとして、3:1(重量:重量)のカリウム:マグネシウム)も添加した。押出機は、公称100cmスロットのシート押出ダイに供給し、得られたシート材は、公称厚さ0.76mmに制御された。冷却ドラム上でシートを急冷し、ロールに巻き取った。各実施例の組成を表3に示す。得られたシート材を試験し、その結果を表4に示す。
【0049】
表 3

【0050】
表 4

【0051】
実施例14
ペレット化Elvax(登録商標)3182(E.I.DuPont de Nemours and Companyから市販のEVA樹脂)およびSMタイプ充填剤を実施例1に記載される方法と同じ方法で共押出しした。共押出し樹脂を小板にプレスし、従来の方法によってガラスシートの間にラミネートした。透過率、透明度、および曇り度をByk Gardner HG Plusで測定した。その結果を表5に示す。
【0052】
実施例15
ペレット化イオノプラスト樹脂(E.I.DuPont de Nemours and Companyから市販されているエチレン/メタクリル酸コポリマー樹脂、中和前の酸約19%)およびSMタイプ充填剤を実施例1に記載される方法と同じ方法で共押出しした。押出し成形樹脂を小板にプレスし、従来の方法によってガラスシートの間にラミネートした。透過率、透明度、および曇り度をByk Gardner HG Plusで測定した。その結果を表5に示す。
【0053】
表 5

a厚さ0.76 mmを有するシートの透過率に正規化された透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾中間層組成物であって、前記中間層は、粒子を含有する少なくとも1種類の複合充填剤がブレンドされた熱可塑性樹脂を含み、前記充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、前記中間層が:(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有し、かつ前記の少なくとも1種類の複合充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる、装飾中間層組成物。
【請求項2】
前記中間層が、前記の少なくとも1種類の複合充填剤約1重量%〜約20重量%を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項3】
前記の少なくとも1種類の複合充填剤が、前記複合充填剤粒子の少なくとも約85重量%がNo.80標準ふるい上に保持される平均粒径を有する、請求項2に記載の中間層。
【請求項4】
前記の少なくとも1種類の複合充填剤が、前記複合充填剤粒子の少なくとも約90重量%がNo.80標準ふるい上に保持される平均粒径を有する、請求項3に記載の中間層。
【請求項5】
前記複合充填剤粒子の少なくとも約65重量%が、No.12米国標準ふるいを通過する、請求項4に記載の中間層。
【請求項6】
前記複合充填剤粒子の100重量%が、No.12米国標準ふるいを通過する、請求項5に記載の中間層。
【請求項7】
前記複合充填剤、前記鉱物充填剤が、CaCO3(炭酸カルシウム)、シリカ、アルミナ、および酸化チタンなどの酸化物からなる群における鉱物から選択される、請求項6に記載の中間層。
【請求項8】
前記熱硬化性ポリマーマトリックスが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群におけるポリマーから選択されるポリマーから形成される、請求項7に記載の中間層。
【請求項9】
前記熱硬化性ポリマーマトリックスが、炭素原子1〜6個を有するアルキル基を含有するアルキルアクリレートから形成される、請求項8に記載の中間層。
【請求項10】
前記熱硬化性ポリマーマトリックスが、メチルメタクリレートから形成される、請求項9に記載の中間層。
【請求項11】
少なくとも1つの装飾中間層を含むラミネートであって、前記装飾中間層は、粒子を含有する少なくとも1種類の複合充填剤がブレンドされた熱可塑性樹脂を含み、前記充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、前記中間層が:(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有し、かつ前記の少なくとも1種類の充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる、ラミネート。
【請求項12】
前記ラミネートが、少なくとも1枚のガラスシートを含む、請求項11に記載のラミネート。
【請求項13】
前記ラミネートがさらに、非装飾中間層材料である、少なくとも1つの更なるポリマー中間層を含む、請求項12に記載のラミネート。
【請求項14】
前記ラミネートが、装飾中間層の多層を含む、請求項11に記載のラミネート。
【請求項15】
ラミネートを含む物品であって、前記ラミネートが装飾中間層を含み、前記装飾中間層は、粒子を含有する少なくとも1種類の複合充填剤がブレンドされた熱可塑性樹脂を含み、前記充填剤粒子の少なくとも約80重量%が、No.80米国標準ふるい上に保持され、前記中間層が:(1)曇り度約20〜約100%を有し、(2)入射光の約10〜約90%未満を透過し、(3)透明度約1〜80%を有し、かつ前記の少なくとも1種類の充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる、物品。
【請求項16】
前記物品が、キャビネットの戸、テーブルトップ、テーブルカバー、カウンタートップ、玄関の戸、ドアパネル、シャワードア、床のタイル、天井のタイル、段板、壁のタイル、壁の汚れ止め板、器具の戸、器具のカバー、部屋の仕切り、棚材料、キャビネットである、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
(1)熱可塑性樹脂を少なくとも1種類の複合充填剤とブレンドする段階;(2)中間層材料として使用するのに適しているシートまたはフィルムとして、樹脂/複合充填剤ブレンドを押出し成形する段階;(3)前記中間層を少なくとも1つの他の透明材料とラミネートする段階;を含む、装飾ラミネートを製造する方法であって、前記複合充填剤が粒子を含有し、前記粒子の少なくとも約80重量%がNo.80米国標準ふるい上に保持され、かつ前記中間層が:(i)曇り度約20〜約100%を有し、(ii)入射光の約10〜90%未満を透過し、(iii)透明度約1〜80%を有し、かつ前記の少なくとも1種類の充填剤が、熱硬化性ポリマーマトリックス中に分散された鉱物充填剤を含有する組成物から得られる複合材料から本質的になる、方法。

【公表番号】特表2008−519102(P2008−519102A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539222(P2007−539222)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039171
【国際公開番号】WO2006/050217
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】