説明

複合型蒸し器

【課題】複合型蒸し器の利便性を拡大する。
【解決手段】複合型蒸し器10’’は底面14、壁部15、16、18、20、及び前側の扉22により外方と区切られている調理スペースを備える。調理スペース12には蒸気発生器が付加されると共に、壁部15、16、18、20のうち少なくとも一に配置された第1の加熱装置28が付加される。底面14には第2の加熱装置30が備えられている。両方の加熱装置28、30は調理スペース12の外部に配置される。底面14は、第2の加熱装置30を備える調理領域32として構成される。壁部15、16、18、20は、それぞれ第1の加熱装置28を備える加熱領域31として構成されている。調理領域32は調理スペース12から引出し可能である。これにより、調理領域32が調理スペース12の内部又は外部にあるときに、調理領域32上で食品を調理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面、壁部、及び前側の扉により外方と区切られている調理スペースと、蒸気発生器と、壁部のうち少なくとも1つに配置された第1の加熱装置と、底面に配置された第2の加熱装置とを備える複合型蒸し器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この形式の公知の複合型蒸し器(特許文献1)は、熱風及び/又は蒸気による調理を可能にするものである。複合型蒸し器は、一般に、スチーム調理器とオーブンの組み合わせである。その内部では天火で焼くか、又は蒸気で調理するかのいずれかが行われる。また調理対象の食品を単に蒸すこともでき、この場合には例えば100℃の水が繰り返し噴射される。従来の複合型蒸し器では、このような噴射される水は第1の加熱装置によって蒸発する。第1の加熱装置は、調理スペース内でその壁面に取り付けられており、調理の際に生成される蒸気を調理スペース内で循環させる送風機を取り囲んでいる。
一般に複合型蒸し器では、調理物の直接的な加熱が容易でないため、ピザ、フラムクーヘン、ゲミューゼクーヘンといった特定の調理物を、満足のいくように調理することができない。したがって従来の複合型蒸し器は、ピザ等でも十分に調理できるな装備を有している。このため従来の複合型蒸し器は、調理スペース内に挿入可能な耐火石を有している。耐火石は、調理スペースに配置された第2の加熱装置で加熱可能としている。加えて従来の複合型蒸し器では、調理スペースに空気誘導板を備えており、この空気誘導板によって、第1の加熱装置と送風機とが配置されたベンチレータ室を隔離している。
このように、従来の複合型蒸し器の調理スペースには、調理スペースの装備品を互いに制限あるいは干渉し、その洗浄を困難にする多くの障害物が存在することになる。そのうえ、従来の複合型蒸し器で耐火石を熱するために利用される第2の加熱装置は、複合型蒸し器では調理する食品をこんがり焼けないという課題の解決には適していない。というのは、飲食業の分野で複合型蒸し器を使用する場合、調理する食品を乾いた状態で加熱するため、フライパンで食品に火を通すことが行われているが、続いて食品に差し水をしなくてはならず、このとき食品は例えば200〜250℃の比較的高い温度まで加熱される。差し水工程では大量の湯気が生成されるので、湯気を排気すると共に外部へ排出しなければならない。もしくは複合型蒸し器の扉を開いて外に出してから吸い出さなくてはならない。このような目的のために、煙霧排出フードと複合型蒸し器の組み合わせが既に存在している(特許文献2参照)。複合型蒸し器自体の内部で肉を焼くことができ、さらに蒸気で調理を完了することができるならば、好都合なはずであるが、このような複合型蒸し器は、出願人の知る限りこれまでに存在しない。
【0003】
一方で他の公知のオーブン(特許文献3)は、オーブン室内に配置された加熱装置を含む。この加熱装置は同じくオーブン室内での障害物となっており、レンガを放射熱で加熱する目的のみで設けられている。すなわち、この従来のオーブンによって、上述した従来の複合型蒸し器と同様、ピザ等でも焼けるようにするという問題を解決することが意図されている。
【特許文献1】ドイツ実用新案出願公開第20105820U1号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/042307号パンフレット
【特許文献3】ドイツ特許出願効果第3602398A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、複合型蒸し器の利用範囲をより一層拡大することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
このような問題点は、本発明によれば、冒頭に述べた形式の複合型蒸し器において、両方の加熱装置が調理スペースの外部に配置されており、底面に第2の加熱装置を備える調理領域として構成することで解決できる。
【0006】
本発明に係る複合型蒸し器では、両方の加熱装置が調理スペースの外部に配置されているので、調理スペース内部で障害物になることがない。底面を調理領域として構成することで、焼く食品を入れたフライパンを調理領域に載置することが可能となる。また、焼き終わってから調理領域のスイッチを切り、焼かれた食品をゆっくりと調理完了させるための低温調理器具として複合型蒸し器を作動させたり、迅速に調理完了させるための高温調理器具として作動させることもできる。さらに調理完了のために、焼かれた食品を入れたフライパンを調理領域の上方で間隔をおきながら調理スペースの差込板に載せて、焼き終わった調理領域のスイッチを切る代わりに、調理スペースの加熱に利用することもできる。
フライパンは、底面の上方で差込棚の上に載る多層材料からなるGN(飲食業用)容器であってもよい。これに加えて、蒸気で調理完了を促進するために、蒸気発生器のスイッチを入れることができる。本発明に係る複合型蒸し器では、冒頭に説明した公知の複合型蒸し器とは異なり、調理スペース内に送風機を必要としない。スイッチの入っている調理領域から上昇してくる熱が、調理スペースの内部で十分な対流を生成するからである。すなわち、本発明に係る複合型蒸し器の調理スペースには送風機の形態の障害物がない。ただ、調理スペースの外部に送風機を設け、その吐出部を調理スペースに接続する構成を排除するものではない。このことは蒸気発生器についても当てはまり、蒸気発生器も送風機と同様に調理スペースの外部に配置して、蒸気出口側で調理スペースに接続することもできる。
【0007】
本発明に係る複合型蒸し器の主要な利点は、複合型蒸し器及び/又はオーブンとして利用できるばかりでなく、これに加えてレンジ又はグリルプレートとしても利用できる点にある。複合型蒸し器の調理スペースの底面を、レンジの調理領域と同じように食品の料理のために利用可能だからである。したがって本発明に係る複合型蒸し器の利便性は、従来技術に比べて大幅に拡張されている。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の対象となっている。
【0009】
本発明に係る複合型蒸し器の一の実施形態において、調理領域が調理スペースから引出し状に引出し可能とすると、レンジとしての更なる利便性を向上させ一層快適に活用することができる。特に扉を開けて調理領域を引き出すことで、複合型蒸し器を完全なレンジに早変わりさせることができる。しかも、これによって別個のオーブン、別個のスチーム調理器具、及び別個の調理領域がキッチンに不要となるので、これらを一通り揃える必要がない上整理も簡単となり、例えば単身者世帯にとって極めて有益となる。
【0010】
本発明に係る複合型蒸し器の別の実施形態において、調理領域がCeran(登録商標)製等の調理領域であると、複合型蒸し器の調理スペースの底面を市販の調理領域を用いて簡単に実現できる。
【0011】
本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、調理領域が金属多層材料からなるプレートを有すると、Ceran製等の調理領域としての調理領域の構成に比べ、追加の利点が得られる。レンジ又はグリルのための公知の多目的作業プレートのような構造(ドイツ実用新案登録公開第20215979U1号明細書)、あるいは公知の誘導式グリルプレートのような構造(ドイツ特許出願公開第10120500B4号明細書)を有する金属多層プレートは、それ自体で加熱できるので、調理スペースの熱源として利用できる。また、それ自体の温度は第2の加熱装置の作動時に上昇するものではないが、放射加熱装置から放出される熱が調理スペース内へ入ることができるCeran製調理領域とは異なっている。調理領域を形成するプレートの金属多層材料は、放射熱源又は誘導式の加熱装置によってそれ自体として加熱可能であり、これにより、それ自体が熱源として機能する。さらに、金属多層材料からなるプレートはそれ自体をグリルプレートとして利用できる。
【0012】
本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、第2の加熱装置が放射加熱装置及び/又は電磁誘導加熱装置であると、調理スペースの底面を形成する調理領域の所望の利用目的に応じて、第2の加熱装置の適切な構成を選択することができる。例えばCeran製の領域に電磁誘導加熱装置を設けると、調理領域上に載置された電磁誘導可能な調理器具しか加熱することができないことになる。加えてCeran面を調理スペースのための熱源として利用したいときは、第2の加熱装置を放射兼誘導加熱装置として構成する。
これに対して、調理スペースの底面を形成する調理領域が金属多層材料からなるプレートを有している場合は、第2の加熱装置は放射加熱装置又は電磁誘導加熱装置とできる。また、第2の加熱装置を放射兼誘導加熱装置として構成することも可能となる。
【0013】
本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、調理領域が複数の調理面を有しており、第2の加熱装置が、これらの調理面に個別に付属する複数の加熱器を含んでいると、調理スペースの底面を形成する調理領域は、これをレンジのように利用して、食品を料理するときに複数の調理器具を同時に使用できる環境を提供する。本実施形態の好都合な変形例は、調理スペースから引出しのように引出し可能な調理領域としての調理領域の構成を含む。調理領域がCeran製プレートを有しているとき、又は金属多層材料製プレートを有しているとき、同じく電磁誘導能力のある金属多層材料製調理器具を好都合に利用できる。このような用途に適した多層容器は公知である(国際公開第2006/072459号パンフレット)。この容器がGN容器として構成されていれば、金属多層材料製の公知の容器を使用することがさらに有利となる。さらに、調理領域が複数の調理面を有する本実施形態に係る複合型蒸し器の他の利点としては、複数の食品を同時に調理スペース内で焼くことができ、あるいは一般に下準備のため加熱することができ、次いで、この場合にはオーブン及び/又はスチーム調理器具として作動する複合型蒸し器で、これらの食品を一緒に調理完了させることができる点が挙げられる。
【0014】
本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、調理スペースに廃蒸気及び廃気の出口を設けると、上述した特許文献2に係る煙霧排出フードを本発明に係る複合型蒸し器と組み合わせることができ、好適である。その場合、このような煙霧排出フードを備える本発明の複合型蒸し器は、特に調理領域を引出しのように調理スペースから引き出すことでレンジとしても利用可能であり、特に好ましい。それは、食品を料理するときに発生する湯気が、廃蒸気及び廃気の出口を介して煙霧排出フードへ吸い出され、そこで清浄化されてから、複合型蒸し器の周辺へ再び放出できるからである。このような換気器具として構成された複合型蒸し器は部屋の中心に設置することができる。すなわち、本発明に係る複合型蒸し器のさらに他の好適な実施形態として、複合型蒸し器の上方において廃蒸気及び廃気の出口に接続された煙霧排出フードを備えることができる。
【0015】
煙霧排出フードが出口に接続されていないときは、調理スペースの廃蒸気及び廃気の出口を屋外へ通じさせることもできる。ただこの構成は、エネルギーの面からは換気式の解決法よりも劣る。なぜなら後者の場は合、空気は清浄化されるだけであり、あらためて加熱する必要がないからである。
【0016】
さらに本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、壁部のうち少なくとも1つが第1の加熱装置を備える加熱領域として構成されていると、底面の調理領域によって生成される対流を強めて、調理スペースをいっそう簡単かつ迅速に適切な温度にすることができる。そのために、少なくとも1つ又は2つの側壁が、第1の加熱装置を備える加熱領域として各々構成されることが好ましい。あるいはこれに代えて、もしくはこれに加えて、調理スペースの上壁も第1の加熱装置を備える加熱領域として構成することもできる。これにより、この加熱領域をグリルとしても利用でき、よって追加のグリル棒を省略できるという更なる利点を有する。オーブンで通常利用可能な追加のグリル棒は、オーブンの後壁にある対応する差込口に差し込まなくてはならないが、このような追加の差込グリル棒を省略できる。このことは、本発明に係る複合型蒸し器でもグリルの可能性は存在するものの、グリルの存在によって追加の差込グリル棒やその差込口といった何らかの障害物を調理スペースに設置せずともよいという別の利点とも結びついている。このように本発明の複合型蒸し器では、調理スペースがどの側でも全面的に平滑な内面を有しており、にも拘わらず従来の複合型蒸し器で得られる利点を享受できると共に、これに加えて底面にある調理領域を調理領域又はレンジプレートとして利用できるという可能性も提供する。
【0017】
本発明に係る複合型蒸し器の別の実施形態において、加熱領域がCeran等からなるプレート又は金属多層材料からなるプレートを有しておれば、第2の加熱装置との関連で上述したように、加熱領域に付属する第1の加熱装置を利用目的に応じて最適なものを選択できる。
【0018】
本発明に係る複合型蒸し器の別の実施形態において、第1の加熱装置が放射加熱装置及び/又は電磁誘導加熱装置であれば、第2の加熱装置との関連で説明したように、加熱装置として最適なものを選択できる。
【0019】
本発明に係る複合型蒸し器の別の実施形態においては、調理スペースの外部に配置され、壁部のうちの1つにある開口部を介して吸込側及び吐出側で調理スペースに接続された送風機を設けることができる。この送風機によって、対流により引き起される調理スペース内での空気循環及び/又は蒸気循環を必要に応じて強めることができる。送風機は、壁部の内の一に設けた開口部を介して、吸込側と吐出側で調理スペースに接続されているに過ぎない。すなわち全体としては調理スペースの外部に配置されているので、送風機によって調理スペースに障害乃至干渉が生じることもない。特に調理スペース内で、冒頭に挙げた特許文献1に記載される従来技術とは異なり、空気案内板によってベンチレータ室を他の調理スペースから区切る必要がない。したがって、上に述べた本発明の実施形態で送風機を使用した場合でも、調理スペースの内部はいかなる障害物もない状態に維持される。
【0020】
このことは、本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態として、蒸気発生器が調理スペースの外部に配置されており、蒸気出口側で調理スペースに接続されている構成にも当てはまる。というのも、この場合にも調理スペース内部はどのような障害も無い状態に維持されているからである。
【0021】
本発明に係る複合型蒸し器の他の実施形態において、金属多層材料の内部又は表面に、キュリー温度を温度制御のために利用可能な少なくとも1つの強磁性層がローラ塗布されている場合は、この温度よりも上側では熱エネルギーが強磁性を破壊して強磁性材料が常磁性の挙動を示す現象を利用できるという利点が得られる。このことは、強磁性材料がこの温度よりも上側では磁性を失い、それによって多層材料が過熱されることがないという形で具現する。これにより、多層材料を通じての調理室内の温度制御を可能にする。さらにこのことによって、多層材料からなるプレートに、水を充填可能な凹部を蒸気発生器として設けることで活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
図1は、全体として符号10が付された、本発明に係る複合型蒸し器の第1の実施形態を示している。複合型蒸し器10は、第1の実施形態及び以下に説明する各実施形態では、いわゆる複合型蒸し器、すなわちスチーム調理器とオーブンの組み合わせである。複合型蒸し器10は、底面14と、2つの側壁15及び16(後者は図4でのみ図示されている)と、後壁18と、上壁20と、前側の扉22とによって外部と区切られた調理スペース12を構成している。なお蒸気発生器24及び選択的に付加される送風機26は、図4にのみ図示されているので、これらについては図4に示す複合型蒸し器10’’に係る第3の実施形態の説明において詳述する。
複合型蒸し器において、底面14は通常、連続する底面である。例えば冒頭に述べた従来技術では、ピザを焼くためにその上に第2の加熱装置が調理スペース内部に配置されている。しかしながらここで説明する複合型蒸し器10では、このような従来技術と異なり、底面14は、ここでは符号30が付されている第2の加熱装置を備える調理領域32として構成されている。厳密に言うと、ここで説明している本発明に係る複合型蒸し器10の第1の実施形態では、調理領域32は底面14に挿入されており、これによって実質的に底面を形成し、調理スペース12を下方を区切るという底面の機能を果たしている。さらに調理領域32の上で、図示しない調理器具に入れた食品を従来式のレンジと同様の手法で調理することができる。すなわち、例えば肉をこんがり焼くことができる。このようなことは、スチーム調理器で蒸気によって実現することは不可能である。
第2の加熱装置30は、調理領域32の下側に配置されているので、調理スペース12の外部に位置している。図1では符号で図示するに過ぎない第2の加熱装置30は、例えば加熱コイルのような放射発熱体、又は電磁誘導コイルのような誘導式の加熱装置とできる。一方、調理領域32がCeran製等の調理領域であるとき、第2の加熱装置30は放射加熱装置及び/又は誘導加熱装置として構成される。複合型蒸し器10の底面壁は、図1では断熱性の壁として示されており、これに調理領域32が第2の加熱装置30と共に挿入されている。その他の壁部も、同様に断熱性である。
【0024】
第1の実施形態に係る複合型蒸し器10では、互いに向かい合う両方の側壁15及び16(上述の通り側壁16は図1では図示されず、図4に図示される。)、並びに後壁18も、それぞれ第1の加熱装置28を備える加熱領域31として、底面14と同様の構造を有している。第4の側壁は存在しておらず、扉22によって閉塞可能な調理スペース12へのアクセス開口部が構成されている。このように、冒頭に述べた従来技術とは異なり、側壁15、16及び後壁18も連続する壁部であり、第1の加熱装置はこれらの壁部の背面、すなわち調理スペース12の外部にそれぞれ配置されている。各々の加熱領域31はCeran等からなるプレート又は金属多層材料からなるプレートを有する。このプレートがそれぞれ壁部に挿入されて、調理スペースを側面で区切るという壁部の役割を果たしている。加えて、いずれかの第1の加熱装置を調理スペースの内部に配置する必要を無くしつつ、調理スペースの加熱を可能としている。
調理領域32のプレート又は各々の加熱領域31のプレートを構成する金属多層材料は、上述した従来技術と同様のものが利用できる。このような多層材料は通常、例えばアルミニウムのような熱伝導性の優れた材料で形成された厚い中間層を、これよりも遙かに薄いステンレス鋼で形成された2つの被覆層で狭着して構成される。両方の被覆層の内一方はフェライト鋼で形成できる。すなわち、良好に磁化可能な素材を利用できる。他方の被覆層は、オーステナイト鋼材で形成できる。すなわち、磁化が僅かしか可能でない素材を利用できる。あるいは、一方の被覆層又は両方の被覆層を、強磁性の鋼材で構成してもよい。
【0025】
調理領域32は、複数の調理面(図4において符号32a及び32bで示す)を有している。この場合、第2の加熱装置30は複数の加熱器(図4に符号30a及び30bで示す)を含んでおり、この内各々1つが調理面の内の一方に付加されている。ここで複合型蒸し器は、扉22を開けるとまずレンジとして利用することができる(その場合加熱領域31のスイッチはオフ状態とされる)。次いで扉22を閉じると、複合型蒸し器10をオーブン及び/又はスチーム複合型蒸し器として作動させることができる(この場合加熱領域31と蒸気発生器24(図1に図示せず)のスイッチをオンとする)。
【0026】
図1に示す複合型蒸し器10では、調理領域32及び加熱領域31で発生され上昇する熱が調理スペース12の内部で十分な対流を生成する。これにより、従来の複合型蒸し器の調理スペースに必要な送風機26を省略できる。
【0027】
図2は、符号10’が付された本発明の第2の実施形態に係る複合型蒸し器を示している。この複合型蒸し器10’では、第1の実施形態に比べて、加熱領域31が調理スペースの上壁20に追加挿入されている。上壁20にある加熱領域31は、壁部15、16及び18の加熱領域31と同様の構造を有するか、又は底面14の調理領域32と同様の構造を有している。したがって、この複合型蒸し器10’では調理スペース12内の上部の加熱を追加的に利用でき、これによって従来技術で通常設けられている差込式グリルを不要とできる。さらに、上壁20の加熱領域31は調理スペース内の均一な加熱を改善することができる。このことは、複合型蒸し器がオーブンとして作動するときに特に有利となる。調理領域32は、図1に示す複合型蒸し器10の場合も、図2に示す複合型蒸し器10’の場合も、電磁誘導可能な多層プレートからなる電磁誘導式グリルプレートで構成できる。このような多層プレートは、多層材料に上述した構造を利用できる。なお、電磁誘導式グリルプレートはいずれの観点からも、上述したドイツ特許出願公開第10120500B4号明細書で開示される構成を利用できる。
【0028】
図3は、本発明の第3の実施形態として、全体として符号10’’が付された複合型蒸し器を示している。この複合型蒸し器10’’では図3に示すように、調理領域32は、調理スペース12からスライド式に引き出し可能な調理領域として構成されている。図4は複合型蒸し器10’’の前面を示しており、図面を見やすくするために調理スペース12の扉22は図示していない。複合型蒸し器10’’の場合も、調理領域32が底面を形成し、すなわち調理スペース12の下側の区切りを形成している。図3に示す位置への調理領域32の引出し可能な構成は、調理領域32をレンジとして使用するときに、複合型蒸し器10’’の利用者の作業を容易にする。上述した2つの実施形態と同様に、調理領域32は複数の調理面を有することができ、2つの加熱装置30は、調理面に個別に付加した複数の加熱器を有することができる。図3と図4に示す実施例では、第2の加熱装置30は2つの加熱器30a及び30bを含んでいる。底面14は、前方に向かって扉22側に開放した凹部を有しており、調理領域を調理スペース12の外部でレンジとして使用しないときには、この凹部へ調理領域32を挿入して収納できる。
【0029】
図3と図4に示す複合型蒸し器10’’では、調理スペースは廃蒸気及び廃気のための出口を有している。さらに複合型蒸し器の上方には、出口40に繋がれた、全体として符号42が付されている煙霧排出フードが配置されている。煙霧排出フード42は、上述した特許文献2に開示されている構造と同様の構造を有することができる。このような構造の煙霧排出フードの詳細については、ここで具体的に説明しないが、扉22の上方にある吸出し開口部44(図3に図示)と、吸込フィルタ構造と、独自の吸引ファンと、調理スペース12から出口40を介して吸い出される、もしくは開口部44を介して取り込まれる湯気を脱水するための凝縮熱交換器と、出口40への接続部と、好ましくは煙霧排出フード42の直近へと通じる出口開口部46(図3及び図4で出口接続管として図示)とを含んでいる。排気通路は、吸込フィルタ構造の上流側に通じているバイパス通路に連通されており、凝縮熱交換器には、吸引ファンによって生成される空気流が供給される。このような構造は、煙霧排出フードから出口開口部46を介して外に出る空気に、油脂の液滴を含めた粒子が含まれないよう保証する。吸込フィルタ構造の上流側へと通じるバイパス通路は、出口40を介して煙霧排出フード42へ達する複合型蒸し器10’’からの排気から、まず粒子(油脂液滴を含む)が取り除かれ、それから濃縮熱交換器に到達して、出口開口部46を介して煙霧排出フード42から排出されることを保証する。したがって煙霧排出フード42の内部が油脂で汚れることがなく、望ましくない粒子で周囲が汚染されることもない。
吸引通路には、吸込フィルタ構造の下流側にプラズマモジュールを配置することもできる。このようなプラズマモジュールの排気処理によって、特に臭気分子のような気体状の最小の有機性炭素化合物を環境に適合させるよう除去できる。この技術は空気を消毒する役目も同時に果たす。このような種類の空気清浄化は、刊行物としては例えばドイツ特許出願公開第10312309A1号明細書や欧州特許出願公開第1249265B1号明細書等で開示される。調理領域32が引き出されてレンジとして動作させるとき、調理スペース12は、食品を料理するときに生じる湯気を吸い出して、清浄化された循環空気として再び複合型蒸し器10’’の周囲の空間へ排出するために、調理スペースに連通された煙霧排出フード42と共に使用することができる。このとき、食品を料理するときに生じる湯気は、吸出し開口部44を介して煙霧排出フード42に追加的に取り込まれる。
【0030】
複合型蒸し器の第1及び第2の実施形態において、調理スペースで生じる対流を一層強めたい場合には、側壁16の背後に送風機26をさらに追加することができる。この側壁の背後には、蒸気発生器24も設けられている。送風機26は、側壁16の開口部27ないし27aを介して、吸込側と吐出側で調理スペース12に連通している。同様に、調理スペース12の外部に配置された蒸気発生器24も、蒸気出口側で調理スペースに連通している。
【0031】
さらに調理領域32又は各々の加熱領域31の金属多層材料の内部あるいは表面に、キュリー温度を温度制御のために利用可能な少なくとも一の強磁性層を、ローラ塗布することもできる。キュリー温度は例えば260℃である。キュリー温度は強磁性体が強磁性を示す上限温度であり、この温度を超えると金属多層材料がその磁性を失って誘導性を示すことを意味している。例えば、調理領域32又は加熱領域31の過熱が起こらないようにするために、上記特性を温度制御に利用できる。適当な強磁性材料の一としては、Arcelorグループに属するImphys Alloys社のPHYTHERM 260という名称の軟磁性の鉄・ニッケル・クロム合金であり、これは電磁誘導式調理器のために開発されたものである。
【0032】
図4の実施例で側壁16の背後に配置、図示されている蒸気発生器24は、金属多層材料からなるプレートを有する調理領域32の場合には、水供給部につながれた、又は必要に応じて手作業で水を充填可能な、当該プレートに設けた窪み(図示せず)で置き換えることも可能である。
【0033】
調理スペース12の壁部15、16、18、20には、従来のオーブンと同じく差込棚が設けられている。差込棚は、差込板を選択した高さに配置できる。差込板の上に、調理する食品をそのまま、あるいは調理容器に入れて載置する。このような差込棚は図示していない。調理スペース12から引出し式に引き出される調理領域のために、図3と図4では、調理領域32外側の周囲縁を案内するガイドである溝48〜50が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る複合型蒸し器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る複合型蒸し器の第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る複合型蒸し器の第3の実施形態を示す断面図である。
【図4】見易くするため調理スペースの扉を省略した図3の複合型蒸し器を示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
10…第1の実施形態に係る複合型蒸し器
10’…第2の実施形態に係る複合型蒸し器
10’’…第3の実施形態に係る複合型蒸し器
12…調理スペース
14…底面
15、16…側壁
18…後壁
20…上壁
22…前側の扉
24…蒸気発生器
26…送風機
27、27a…開口部
28…第1の加熱装置
30…第2の加熱装置
30a、30b…複数の加熱器
31…加熱領域
32…調理領域
32a、32b…複数の調理面
40…廃蒸気及び廃気の出口
42…煙霧排出フード
44…吸出し開口部
46…出口開口部
48〜50…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面(14)、壁部(15,16)、及び前側の扉(22)により外方と区切られている調理スペース(12)と、
蒸気発生器(24)と、
壁部(15,16)のうち少なくとも1つに配置された第1の加熱装置(28)と、
底面に配置された第2の加熱装置(30)と
を備える複合型蒸し器において、
両加熱装置(28,30)は、前記調理スペース(12)の外部に配置されており、
底面(14)は、前記第2の加熱装置(30)を備える調理領域(32)として構成されてなることを特徴とする複合型蒸し器。
【請求項2】
前記調理領域(32)は、調理スペース(12)から引出し状に引出し可能としたことを特徴とする請求項1に記載の複合型蒸し器。
【請求項3】
前記調理領域(32)は、ガラスセラミック製の調理領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合型蒸し器。
【請求項4】
前記調理領域(32)は、金属多層材料からなるプレートを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合型蒸し器。
【請求項5】
前記第2の加熱装置(30)は、放射加熱装置及び/又は電磁誘導加熱装置であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項6】
前記調理領域(32)は、複数の調理面(32a、32b)を有しており、
前記第2の加熱装置(30)は、これらの調理面(32a、32b)に個別に付属する複数の加熱器(30a,30b)を含んでいることを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項7】
前記調理スペース(12)は、廃蒸気及び廃気の出口(40)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項8】
複合型蒸し器(10'')の上方に配置され、前記出口(40)に接続された煙霧排出フード(42)を有していることを特徴とする請求項7に記載の複合型蒸し器。
【請求項9】
壁部(15,16,18,20)のうち少なくとも一は、前記第1の加熱装置(28)を備える加熱区域(31)として構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項10】
前記加熱区域(31)は、ガラスセラミック製のプレート又は金属多層材料からなるプレートを有していることを特徴とする請求項9に記載の複合型蒸し器。
【請求項11】
前記第1の加熱装置(28)は、放射加熱装置及び/又は電磁誘導加熱装置であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項12】
前記調理スペース(12)の外部に配置され、壁部(15,16)のいずれか一(16)にある開口部(27,27a)を介して吸込側と吐出側で調理スペース(12)に接続された送風機(26)を有していることを特徴とする請求項1から11のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項13】
前記蒸気発生器(24)は、前記調理スペース(12)の外部に配置されると共に、蒸気出口側で前記調理スペース(12)に接続されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一に記載の複合型蒸し器。
【請求項14】
金属多層材料の内部又は表面に、キュリー温度を温度制御に利用可能な少なくとも1つの強磁性層がローラ塗布されていることを特徴とする請求項4又は10に記載の複合型蒸し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−60248(P2010−60248A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229163(P2008−229163)
【出願日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【出願人】(501489317)
【氏名又は名称原語表記】MAIER, Max
【Fターム(参考)】