説明

複合成形品の製造方法

【課題】軽量、薄肉、高剛性で、かつ表面外観に優れたものであり、これらの特性が要求される用途に適した複合成形品を提供する。
【解決手段】硬質部材層と軟質部材層とを含み、サンドイッチ構造を有する積層板を金型に挿入し、前記積層板の端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材をアウトサート成形する複合成形品の製造方法であって、金型挿入前の積層板の厚みt1と、前記積層板が挿入される前記金型の積層板厚み方向に対する空隙距離t0とが、t1/t0=1.03〜1.3であることを特徴とする複合成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉・軽量、高剛性でかつ良外観の要求される用途に適した複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂射出成形品は、優れた機械的性質と形状の自由度から、産業界で広く利用されており、その機械的特性をさらに向上させるために、ガラス繊維、炭素繊維などの強化繊維を使用した材料も提案されている。
【0003】
近年、携帯を目的としたノートパソコン、携帯電話、玩具などは、薄肉・軽量化や、高剛性要求がますます高くなってきている。しかし、強化繊維の添加量を増やして機械特性を高める方法には限界があるため、例えば一方向に連続な強化繊維を含む樹脂シート成形品と熱可塑性樹脂を一体化して、高剛性、軽量化と形状の自由度を合わせ持つ成形品が提案されていた(例えば特許文献1)。また、さらなる軽量化を目的として強化繊維を含む樹脂シートと軽量層を組み合わせたサンドイッチ積層板の周囲に樹脂部材を配した複合成形品が提案されていた(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−272134号公報
【特許文献2】特開2007−38519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で得られた成形品は、剛性の高い成形品を得ることができるが、特許文献1のような積層部材と熱可塑性樹脂を重ねた成形品では、肉厚が大きくなる課題があった。一方、特許文献2のような積層部材の周囲に樹脂部材を配した成形品の場合は、異種材料の接合部において、射出成形時のバリ発生、さらに段差を無くすことが困難で良好な成形品外観が得られない課題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、薄肉・軽量化を実現するとともに、高剛性かつ良好な成形品外観を得ることができるものであり、これらの特性が要求される用途に適した複合成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)硬質部材層と軟質部材層とを含み、サンドイッチ構造を有する積層板を金型に挿入し、前記積層板の端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材をアウトサート成形する複合成形品の製造方法であって、金型挿入前の積層板の厚みt1と、前記積層板が挿入される前記金型の積層板厚み方向に対する空隙距離t0とが、t1/t0=1.03〜1.3であることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【0007】
(2)前記硬質部材層が、強化繊維を含んだシートを含む前記(1)に記載の複合成形品の製造方法。
【0008】
(3)前記硬質部材層に含まれるシートが、マトリックスとしてエポキシ樹脂を主成分とする樹脂シートである前記(1)または(2)に記載の複合成形品の製造方法。
【0009】
(4)前記軟質部材層が、発泡材および/または樹脂シートから構成されている前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【0010】
(5)前記積層板の厚みが1〜3mmである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【0011】
(6)前記軟質部材層の厚みが、金型挿入前の積層板の厚みt1の50%〜80%であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【0012】
(7)前記樹脂部材が熱可塑性樹脂である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【0013】
(8)前記樹脂部材が強化繊維を含む熱可塑性樹脂で成形されている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【0014】
(9)前記強化繊維が炭素繊維である前記(8)に記載の複合成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複合成形品は、薄肉・軽量、高剛性で、良好な表面外観を得ることができ、これらの特性を有するパソコン、ディスプレイや携帯情報端末などの電気・電子機器の筐体を製造するのに適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の複合成形品1は、硬質部材層2aと軟質部材層2bからなるサンドイッチ構造を有する積層板2を予め金型11の積層板厚み方向に対する空隙距離t0より厚く作製し、金型11に挿入後、型締め力により必要厚みまで薄肉化した上で、前記積層板2の板端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材3をアウトサート成形するものである。複合成形品1の面板部分には軽量高剛性なサンドイッチ構造を有する積層板2を配し、周囲の比較的複雑な形状を必要とする部分に、形状自由度の高い樹脂部材3を接合部の平滑性を保ったまま配することにより、薄肉・軽量、高剛性でかつ外観に優れた複合成形品1を得ることができる。
【0017】
ここで、板端部周囲とは、板の断面が露出している部分をいい、板の外周部および、板の内部に切りかかれた部分の内周部のいずれも含むものとする。
【0018】
本複合成形品1に用いる積層板2のサンドイッチ構造は、硬質部材層2aと軟質部材層2bとから構成される。硬質部材層2aは、剛性を確保するために必要であり、軟質部材層2bは、かかる組合せのサンドイッチ構造とすることにより、後述するような厚み調整を達成するために必要となるものである。すなわち、積層板2の厚みを射出成形の金型内で薄肉化するためには、射出成形の型締め工程において型締め力によって積層板2が薄肉方向に可変であり、金型11の積層板厚み方向に対する空隙距離t0と均一に同一厚みとなることで、アウトサート成形される熱可塑性樹脂部材3の接合部の表面平滑性が得られるものである。
【0019】
本発明に用いる積層板2の厚みt1は、アウトサート成形を行うために挿入される金型11の積層板厚み方向に対する空隙距離t0より厚いことが必要である。金型11の積層板厚み方向に対する空隙距離t0は、積層板2を挿入するアウトサート成形用の金型11のキャビティーを形成する2枚のプレート、すなわち、金型プレート1(可動側)12および金型プレート2(固定側)13によって形成される空隙において、積層板2が挿入された際に積層板2の板厚に相当する空隙の距離を指す。具体的にはt1/t0=1.03〜1.3にするのが好ましい。より好ましくは、t1/t0=1.05〜1.25である。積層板2の板厚t1が空隙距離t0に対して厚すぎると、射出成形時に金型11が完全に閉まらずアウトサートした樹脂部材のバリが発生する、あるいはひどい場合は金型11が破損することもある。逆に、積層板2の板厚t1が空隙距離t0に対して薄すぎる場合は、接合部の表面平滑性が悪くなる等、本発明の効果が十分に得られない。
【0020】
かかる嵌合構造を形成するためのサンドイッチ構造としては、硬質部材層2aと軟質部材層2bのいずれが中央層となってもよい。かかる態様のうち、より効果的に積層板2の剛性を確保するためには、軟質部材層2bを中央層に、硬質部材層2aを両外層に構成することが好ましい。材料力学上、曲げ剛性は、表層に近い層の剛性が中央層に近い層の剛性に比べて極めて大きく影響するため、表層は硬質部材層2aで、中央層は発泡材や軽量樹脂シート等の軟質部材層2bで構成することで積層板2の軽量化を図りつつ、剛性も確保することができる。
【0021】
硬質部材層2aとしては、強化繊維を含んだシートが好ましく用いられる。強化繊維としては、例えばアルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。なかでも、比強度、比剛性、軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好ましく、比強度・比弾性率に優れる点でポリアクリロニトリル系炭素繊維を少なくとも含むことが好ましい。また、硬質部材層2aに用いられる強化繊維を含んだシートは、強化繊維を含む複数の層から構成されるものであっても良い。また、強化繊維が、連続強化繊維であれば、より高い強度・剛性を得られることから好ましい。
【0022】
連続強化繊維を含んだシートとは、10mm以上の長さの連続した強化繊維がシート内(またはシートを構成する強化繊維を含む層内)に配列されているシートであって、必ずしもシート(または、シートを構成する強化繊維を含む層)全体にわたって連続している必要はなく、途中で分断されていても特に問題はない。具体的な連続強化繊維の形態としては、フィラメント、織物(クロス)、一方向引き揃え(UD)、組み物(ブレイド)等が例示できるが、プロセス面の観点から、クロス、UDが好適に使用される。また、これらの形態は単独で使用しても、2種以上の形態を併用してもよい。なかでも、マルチフィラメントが一方向に引きそろえられたものが、より効率良く強度・剛性を得られることから好ましい。
【0023】
硬質部材層2aに含まれるシートのマトリックス層には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などを用いることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、EVA樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアニルエーテエルニトリル樹脂、ポリベンゾイミダール樹脂などがある。これら熱可塑性樹脂は、単独で使用しても良く、あるいは混合物でも、また共重合体であっても良い。混合物の場合には、相溶化剤が併用されていても良い。さらに、特定の機能を付加することを目的に、例えば、難燃剤として、臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤あるいは赤燐、リン酸エステルなどを配合しても良い。
【0025】
熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂があげられる。さらに、特定の機能を付加することを目的に、例えば、難燃剤として、臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤あるいは赤燐、リン酸エステルなどを配合しても良い。
【0026】
これらのなかでも、積層板2の剛性、強度に優れることから、マトリックス層には熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、とりわけエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂が成形品の力学特性の観点からより好ましい。更に耐衝撃性向上等のために、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂および/またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。
【0027】
また、マトリックス層の別の好ましい態様として、チタン、マグネシウム、アルミ等の金属を用いることも可能である。
【0028】
硬質部材層2aとして、強化繊維を含んだシートを用いる場合、強化繊維の割合は、成形性、力学特性の観点から20〜90体積%が好ましく、30〜80体積%がより好ましい。なお、体積%の測定はマトリックスが樹脂の場合はJIS K 7075(1991)に記載されている方法で測定する。マトリックス層が金属の場合、アルミ等の比較的融点が低い金属は金属部分を溶融濾過し、繊維量を測定して算出するが、融点が高い金属は断面写真観察により繊維量を測定して算出する。
【0029】
硬質部材層2aの別の好ましい態様として、チタン、マグネシウム、アルミ等の金属シートが挙げられるがこれらに限定するものではなく、剛性、比重、薄肉性、コスト等の観点から積層板2の要求特性に応じ適宜選定しても良い。
【0030】
軟質部材層2bとしては、発泡材、樹脂シート等が好ましく使用できる。このうち発泡材を使用すると軽量な積層板2が得られるために好ましく、さらには、軟質部材層2bとして発泡材を中央層とし、硬質部材層2aがその両面に配された構造のサンドイッチ構造とすると、軽量かつ高剛性な面板が得られることからより好ましい。
【0031】
積層板2の厚みは1〜3mmにするのが好ましい。薄すぎる場合は、射出成形時に厚みを均一に減らすのが困難になり、厚すぎる場合は、近年のノートパソコン等の携帯用電子機器の軽量、薄肉化要求を満たさなくなる点で好ましくない。その中で軟質部材層2bの厚みは、金型11で圧縮する前の積層板2の厚みt1に対して50〜80%が好ましい。軟質部材層2bの厚みが薄すぎる場合は、射出成形時に厚みを減らすのが困難になり、金型が完全に閉まらないことからバリが発生し、成形品の後処理(バリ取り)工程が必要になる。あるいは連続成形が困難になる場合がある。逆に、軟質部材層2bの厚みが厚すぎる場合は、硬質部材層2aが薄くなり必要な積層板2の剛性が得られない。このように、金型挿入前の積層板2の厚みt1と積層板が挿入される前記金型の積層板厚み方向に対する空隙距離t0との比率に加えて、積層板2の厚みと、金型で圧縮する前の積層板2の板厚t1に対する積層板2を構成する軟質部材層2bの厚みの比率をそれぞれ規定することにより、剛性を維持しつつ軽量・薄肉な積層板を実現することができるのである。また、このような厚みの比率を規定することにより、後述するアウトサート成形用の樹脂部材3が軟質部材層2bに凸状に食い込みやすくなり、強固な結合状態を実現することができるものである。
【0032】
積層板2の製造方法としては、プレス成形、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、真空バック成形法、加圧成形法、オートクレーブ成形法、トランスファー成形法などの熱硬化樹脂を使用した方法、およびプレス成形、スタンピング成形法などの熱可塑性樹脂を使用した方法などが挙げられる。とりわけ、プロセス性、力学特性の観点から真空バック成形法、プレス成形法、トランスファー成形法などが好適に用いられる。
【0033】
アウトサート成形用の樹脂部材3に使用される熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、EVA樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアニルエーテエルニトリル樹脂、ポリベンゾイミダール樹脂などがある。なかでも、射出成形品の各種機械特性を考慮した場合、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが好ましく、より好ましくは、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂である。これら熱可塑性樹脂は、単独で使用しても良く、あるいは混合物でも、また共重合体であっても良い。混合物の場合には、相溶化剤が併用されていても良い。さらに、特定の機能を付加することを目的に、例えば、難燃剤として、臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤あるいは赤燐、リン酸エステルなどを配合しても良い。
【0034】
また、複合成形品1の高強度・高剛性化を図るため、強化繊維を含有させた熱可塑性樹脂を樹脂部材3として用いることも好ましい。強化繊維としては、例えばアルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。なかでも、比強度、比剛性、軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好ましく、比強度・比弾性率に優れる点でポリアクリロニトリル系炭素繊維を少なくとも含むことが好ましい。
【0035】
さらに、樹脂部材3には、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、リン系以外の難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0036】
また、積層板2に樹脂部材3をアウトサートする方法としては、一般的な射出成形法が用いられ、金型11の型締力によって積層板2を所定の空隙距離t0と同一厚みにすることができる。本発明の成形品を得るための射出成形機は、特に限定されるものではなく、インライン式、プリプラ式いずれでも良く、スクリュータイプにおいても汎用スクリューであっても特殊なミキシングピースを備えたものであっても良い。さらには、射出圧縮機構や種々の付帯機構を備えたものであっても良い。
【0037】
本発明の複合成形品1の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体及びトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、自動車や航空機の電装部材、内部部品などが挙げられる。
【0038】
とりわけ、本発明の複合成形品1はその優れた薄肉性、成形性、高剛性、良外観を活かして、電気、電子機器用筐体や外部部材用に好適であり、さらには薄肉で広い投影面積を必要とするノート型パソコンや携帯情報端末などの筐体として好適である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例によって、本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
積層板2の軟質部材層2bとして、中央層に発泡材(ポリプロピレン樹脂)を配し、硬質部材層2aとしてその上下面に炭素繊維一方向プリプレグ(UD PP)P3052S(東レ(株)製 炭素繊維T700S(強度4900MPa、弾性率230GPa、炭素繊維含有率67重量%、ベースレジン:エポキシ樹脂)を繊維配列方向がほぼ直交するように各2層積層したものをプレス成形(金型温度130℃、圧力1MPa、硬化時間120分)して厚み1.1mmのサンドイッチ積層板2を製造した。軟質部材層2bの厚みは0.7mmであった。この積層板2を300mm×230mmのサイズに加工後、空隙距離t0が1.0mmの金型11内部に積層板2をセットし、型締めを行って前記積層板の厚みを1.0mmにした後、樹脂部材として長繊維ペレット TLP1146(東レ(株)製 炭素繊維含有量20%、ベースレジン:ポリアミド6)を連続的に射出成形して複合成形品1を20枚製造した。その結果、射出成形時に樹脂バリも無く、いずれの成形品も積層板2と樹脂部材3の接合部が平滑な複合成形品が得られた。
(実施例2〜8)
中央層の発泡剤(ポリプロピレン)と上下面の炭素繊維一方向プリプレグの厚みを変更して、その他同条件で積層板2をプレス成形し、加工、各々20枚のアウトサート成形を連続で実施した。成形前の積層板2と軟質部材層2bの厚みと金型11の空隙距離t0は表1の通りである。その結果、軟質部材層の厚みが積層板厚みの50%以上となる場合(実施例2、3、5〜7)は実施例1同様に良好な成形性と成形品外観を得た。実施例4および8は、型締めによる積層板の板厚の比率t1/t0が適正な範囲であっても、軟質部材層の厚みが積層板厚みの47%しかないため、接合部段差は3μ以下の良好な外観が得られたものの、成形時にわずかなバリが発生した。後加工でバリを除去した後は、製品として使用することができた。
(比較例1)
中央層の発泡剤(ポリプロピレン)と上下面の炭素繊維一方向プリプレグの厚みを表1の通り変更して、その他は実施例1と同条件で積層板2をプレス成形し、加工、各々20枚のアウトサート成形を連続で実施した。空隙距離t0と同一厚みの積層板2を使用して20枚射出成形した結果、途中から複合成形品1に樹脂バリが発生し、一度発生したバリは収まらなかった。さらに積層板2と樹脂部材3の接合部に各々段差が発生し、良好な外観を得ることができなかった。
(比較例2)
中央層の発泡剤(ポリプロピレン)と上下面の炭素繊維一方向プリプレグの厚みを表1の通り変更して、積層板厚みt1/空隙距離t0が1.40となるように積層板2を射出成形しようとしたところ、連続成形の金型11が完全に閉まらず、大きなバリが発生したため、金型11の破壊を懸念して成形を途中で中断した。
【0040】
各々の評価結果を併せて表1に示した。表1の通り、本発明によれば、薄肉、軽量で、高剛性な複合成形品1を得ることができた。一方、比較例1,2では、良好な複合成形品1を得ることができなかった。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明による複合成形品は、ノート型パソコンや携帯端末などの電気・電子機器筐体用途に限らず、その優れた薄肉性、軽量性、高剛性、良外観性を活かして、自動車部品用途等にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の複合成形品を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の複合成形品を製造するための金型の概略断面図である。
【図3】図2において、積層板が挿入された状態を示す金型の概略断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 複合成形品
2 積層板
2a 硬質部材層
2b 軟質部材層
3 樹脂部材
11 金型
12 金型プレート1(可動側)
13 金型プレート2(固定側)
14 アウトサート樹脂流路
15 金型キャビティー
15a 金型キャビティー(アウトサート部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質部材層と軟質部材層とを含み、サンドイッチ構造を有する積層板を金型に挿入し、前記積層板の端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材をアウトサート成形する複合成形品の製造方法であって、金型挿入前の積層板の厚みt1と、前記積層板が挿入される前記金型の積層板厚み方向に対する空隙距離t0とが、t1/t0=1.03〜1.3であることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記硬質部材層が、強化繊維を含んだシートを含む請求項1に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記硬質部材層に含まれるシートが、マトリックスとしてエポキシ樹脂を主成分とする樹脂シートである請求項1または2に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記軟質部材層が、発泡材および/または樹脂シートから構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項5】
前記積層板の厚みが1〜3mmである請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項6】
前記軟質部材層の厚みが、金型挿入前の積層板の厚みt1の50%〜80%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂部材が熱可塑性樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂部材が強化繊維を含む熱可塑性樹脂で成形されている請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項9】
前記強化繊維が炭素繊維である請求項8に記載の複合成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−173027(P2009−173027A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329465(P2008−329465)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】