説明

複合材料、複合材料膜およびこれを用いた薄膜トランジスタ

【課題】高誘電率で、かつ薄型化が可能な絶縁性複合材料、当該複合材料を成膜した複合材料膜、および当該複合材料膜をゲート絶縁膜として使用した、軽量、薄型で、柔軟性に優れ、高い飽和ドレイン電流を示す薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】体積累積分布における50%径が100nm以下で、比誘電率が50以上の粒子と、絶縁性の樹脂とを含むことを特徴とする複合材料、複合材料膜およびこれを用いた薄膜トランジスタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率化・薄型化が可能で、ゲート絶縁膜等として最適である複合材料、複合材料膜およびこれをゲート絶縁膜として用いたトランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器や薄型ディスプレイデバイスなどの発展、さらにはフレキシブルディスプレイの要求などに伴い、軽量、薄型、柔軟性に優れた有機電子デバイスの研究が活発に進められている。
【0003】
しかし、有機電子デバイスの中心となる薄膜トランジスタについては具体的なデバイス応用までには至っていない。さらに、従来のトランジスタは、シリコン基板表面に形成され、柔軟性を付与するのは困難であった。
【0004】
有機薄膜トランジスタについての研究については、そのほとんどが有機半導体材料に関するものであり、ゲート絶縁膜については酸化ケイ素あるいはポリビニルフェノールを用いた検討が為されているのみで、その研究はまだ緒についたばかりである。
【0005】
ところで、非特許文献1にあるように、有機薄膜トランジスタの特性である飽和ドレイン電流IDSは下記式より求めることができる。
【0006】
DS=μ(W・C・(V−V)/(2L)
ここで、μは電界効果移動度、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、Cはゲート絶縁層のキャパシタンス、Vはゲート電圧、Vは閾値電圧である。
【0007】
上記式より飽和ドレイン電流を向上させるためには、電界効果移動度の大きい有機半導体材料を使用することが効果的であることが分かる。また、有機薄膜トランジスタの構造としてはチャネル長を狭くし、チャネル幅を広くすることが有効である。
【0008】
一方、ゲート絶縁膜についてみると、上記式からゲート絶縁膜のキャパシタンスを高めることで、飽和ドレイン電流を向上させることができることが分かる。また、一般にゲート絶縁膜の誘電率を高めることにより、閾値電圧(V)の低減や動作電圧が低電圧化できることが知られている。
【非特許文献1】有機トランジスタの動作性向上技術(技術情報協会発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、有機樹脂の比誘電率はおおむね3〜5程度であり、樹脂自体を高誘電率化してゲート絶縁膜のキャパシタンスを上昇させようとすると、おのずと限界が生じる。一方、ゲート絶縁膜の厚みを薄くしてキャパシタンスを上昇させることも可能であるが、あまりにも薄い膜にした場合は、膜中に欠陥が生じ、リーク電流の増加や耐電圧の低下といった問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決するもので、高誘電率で、かつ薄型化が可能な絶縁材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(17)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0012】
(1)体積累積分布における50%径が100nm以下で、比誘電率が50以上の粒子と、絶縁性の樹脂とを含むことを特徴とする複合材料。
【0013】
(2)成膜後の比誘電率が5以上であることを特徴とする上記(1)に記載の複合材料。
【0014】
(3)成膜後の比誘電率が7以上であることを特徴とする上記(1)に記載の複合材料。
【0015】
(4)成膜後の体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0016】
(5)前記粒子の、体積累積分布における99%径が200nm以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0017】
(6)前記粒子が、粒度分布で異なる粒径に2つのピークを示すものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0018】
(7)前記粒子が、体積累積分布における50%径が異なり、比誘電率が50以上である同種もしくは異種の粒子を2以上混合した混合粒子であって、該混合粒子の、体積累積分布における50%径が100nm以下であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0019】
(8)前記粒子が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウムからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0020】
(9)前記粒子の含有量が、複合材料100体積部のうち20〜90体積部であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0021】
(10)前記粒子を分散させるための分散剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0022】
(11)前記絶縁性の樹脂が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の複合材料。
【0023】
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の複合材料を成膜してなり、比誘電率が5以上で、かつ体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする複合材料膜。
【0024】
(13)比誘電率が7以上であることを特徴とする上記(12)に記載の複合材料膜。
【0025】
(14)前記複合材料の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする上記(12)または(13)に記載の複合材料膜。
【0026】
(15)前記成膜は、前記複合材料を基材上に印刷または塗布することで行われることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれか1項に記載の複合材料膜。
【0027】
(16)膜厚が0.05〜10μmの範囲であることを特徴とする上記(12)〜(15)のいずれか1項に記載の複合材料膜。
【0028】
(17)上記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の複合材料膜をゲート絶縁膜として使用してなることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高誘電率で、かつ薄型化が可能な絶縁性複合材料を提供することが可能となり、さらに、当該複合材料を成膜したものをゲート絶縁膜として使用することで、軽量、薄型で、柔軟性に優れ、高い飽和ドレイン電流を示す薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の複合材料は、体積累積分布における50%径が100nm以下で、比誘電率が50以上の粒子と、絶縁性の樹脂とを含むことをその特徴とするものである。
【0031】
上記のような特性を有する粒子としては、特に限定されないが、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウムを挙げることができ、これらは単独で用いることはもちろん、体積累積分布における50%径が異なり、比誘電率が50以上である同種もしくは異種の粒子を2以上混合して用いてもよく、当該混合粒子の、体積累積分布における50%径を100nm以下とする。また、粒度分布(体積基準)において異なる粒径に2つのピークを示す粒子を用いることが好ましい。このような粒子は、例えば、異なる粒度分布を有する粒子を混合して得ることができ、これによれば、粒子を高充填化したときにも、ボイドの発生等が起こりづらくなり、複合材料膜の絶縁不良や誘電率が設計値通りに上昇しないなどの問題を防ぐことができる。
【0032】
また、粒子の、体積累積分布における99%径は200nm以下であることが好ましい。粒子の、体積累積分布における99%径が200nmより大きいと複合材料膜を形成したときに絶縁不良を引き起す可能性が高まり好ましくない。
【0033】
粒子の製造方法は所望の粒径及び誘電率を得られる方法であれば特に限定されない。例えば、ゾルゲル法などの溶液法や焼結などの固相法、炭酸ガスレーザーや火炎、プラズマを使用した熱分解法など公知の方法を例示することができる。また、これらの粒子の形状は、破砕状でも球状でもよい。
【0034】
本発明の複合材料中における粒子の含有量は、複合材料100体積部のうち20〜90体積部になるようにするのが好ましい。20体積部以下であると高誘電率化の効果が少なく、90体積部以上であるとボイドの発生等を招き、信頼性の低下や誘電率の低下等を招くため好ましくない。なお、上記「粒子の含有量」は、後述する本発明の複合材料ワニスに対する割合ではなく、成膜後には存在しない溶剤等を除く複合材料の全成分に対する割合である。また、上記粒子の含有量は、複合材料の配合成分量から求めることができる。また、成膜後に求める場合には、例えば、本発明の複合材料膜から、粒子以外の絶縁性樹脂等の成分を、電気炉などを使用して600℃程度で焼き飛ばし、その前後の質量差を算出し、これを粒子の比重により換算すればよい。
【0035】
上記絶縁性の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、従来から配線板用の絶縁材料として用いられ、ガラスクロスを基材としたプリプレグに使用されている絶縁性樹脂や、ガラスクロス基材を含まない接着フィルムあるいは銅箔付き接着フィルムに使用されている絶縁性樹脂を使用することができ、好ましくは熱硬化性樹脂である。
【0036】
上記熱硬化性樹脂としては、熱により硬化して接着作用を呈するものであればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ビストリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、けい素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂、またはこれらの種々の変性樹脂類が好適である。中でも、プリント配線板の特性上、特にビストリアジン樹脂、エポキシ樹脂が好適である。
【0037】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物を挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても構わない。中でも、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性に優れているため好ましい。
【0038】
本発明の複合材料には、必要に応じて、硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては、用いる絶縁性樹脂により適宜決定すればよく、特に限定されないが、例えば、絶縁性の樹脂がエポキシ樹脂である場合には、ジシアンジアミド、フェノール水酸基を1分子中に2個以上有する化合物である、ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールF樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、サリチルアルデヒドノボラック樹脂及びこれらのフェノール樹脂のハロゲン化物、水素化物、トリアジン構造含有物等を使用できる。これらの硬化剤は一種又は二種以上を併用してもよい。
【0039】
硬化剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、絶縁性の樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ当量に対して水酸基当量が0.5〜2.0当量の範囲となるように配合することが好ましい。また、硬化剤としてジシアンジアミドを用いる場合には絶縁性の樹脂100質量部に対して概ね2〜5質量部の範囲となるように配合することが好ましい。
【0040】
また、本発明の複合材料には、必要に応じて、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、絶縁性の樹脂がエポキシ樹脂である場合には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を使用することができる。
【0041】
硬化促進剤の配合量は、特に限定されないが、絶縁性の樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜1.0質量部の範囲であることがより好ましい。効果促進剤の量が、0.001質量部未満であると、硬化不足を生じ易く、10質量部を超えると、作製したワニスのポットライフの低下、コストの上昇を引き起こすため望ましくない。
【0042】
また、本発明の複合材料には、必要に応じて、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、上記粒子を絶縁樹脂中に均一に分散させうるものであれば特に限定されず、例えば、成分中にリン酸エステル基やカルボン酸基を一つ以上含むもの、リン酸エステル基やカルボン酸基を一つ以上含む重合物などが好適である。リン酸エステル基を含む分散剤は、ビックケミー(株)からBYK W−9010という商品名で市販されている。また、カルボン酸基を含む分散剤は、楠本化成(株)からディスパロン2150という商品名で、花王(株)からホモゲノールL−18、ホモゲノールL−1820という商品名で市販されている。
【0043】
さらに、本発明の複合材料には、上記した各成分の他に、必要に応じて従来公知のカップリング剤、イオン補足剤等を添加してもよい。
【0044】
本発明の複合材料は、溶剤を含んでいてもよい。この溶剤を含む複合材料ワニスは、複合材料膜を形成する上で好適に用いることができる。溶剤としては、絶縁性の樹脂を溶解して分散させうるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン等を使用できる。
【0045】
溶剤の配合量は、特に限定されないが、溶剤を除く複合材料成分の合計100質量部に対して1〜10000質量部の範囲であることが好ましく、5〜2000質量部の範囲であることがより好ましい。溶剤剤の量が1質量部未満であると取扱性に劣り、10000質量部を超えると作業性に劣るため望ましくない。好ましくは複合材料の25℃における粘度が50mPa・s以下となるように調整する。
【0046】
また、粒子の分散性を向上させるために、上記ワニスを作製した後、さらに、らいかい機、3本ロールミル、ビーズミル、サンドミル等により混練することが望ましい。また、超音波発振器を備えた装置によって粒子を分散させてもよい。また、混練後は、減圧下への放置、減圧下での攪拌脱泡等によりワニス中の気泡を除去することが望ましい。
【0047】
本発明の複合材料膜は、上記本発明の複合材料を成膜してなるものである。この成膜は、例えば、上記複合材料を基材上へ塗布、印刷し、乾燥するなどして行うことができる。複合材料の塗布、印刷方法としては、所望の塗付厚で複合材料を塗布、印刷することが可能な方法を適用することができ、例えば、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ、ダイコータ等の塗布方法やインクジェット印刷法、転写法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法などの印刷方法を採用することができる。また、複合材料中の溶剤除去や熱硬化性樹脂を半硬化状態にすることができる加熱乾燥装置を備えた装置を使用すると作業性が向上し、より好ましい。
【0048】
熱硬化性樹脂の硬化は、例えば溶剤を含む場合は溶剤の除去及び熱硬化性樹脂の硬化ができる方法であれば特に限定されない。所望の基材上で一段階で硬化を行う、あるいは仮の基材上で樹脂を一旦半硬化状態にした後、他の材料と接着させながら完全硬化させる工程を採用してもよい。
【0049】
本発明の複合材料膜の膜厚は、0.05〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1〜3μmの範囲であることがより好ましい。膜厚が10μmを越えると、ゲート絶縁膜に使用した際のキャパシタンスの低下を招き好ましくない。一方、0.05μm未満であると、欠陥などの発生により絶縁信頼性の低下を招き好ましくない。
【0050】
また、本発明の複合材料膜は、その比誘電率が5以上で、かつ体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることが好ましく、比誘電率が7以上で、かつ体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0051】
本発明の薄膜トランジスタは、上記本発明の複合材料もしくは本発明の複合材料膜をゲート絶縁膜として用いてなる。
【0052】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、特に限定されないが、例えば、シリコン、ガラス、樹脂シートなどの基板上に、マスクを用い所定形状のゲート電極を形成した後、その上に上記本発明の複合材料のワニスを塗布、硬化させてゲート絶縁膜を形成し、さらに、該絶縁膜全面に半導体薄膜層を形成し、当該薄膜層上にマスクを用いて所定形状のソース電極およびドレイン電極を形成することにより得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
【0054】
<複合材料ワニスの調整>
(実施例1)
絶縁性樹脂として、フェノキシ樹脂10質量部(YP−50:東都化成製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂27質量部(YD−8125:東都化成製)およびオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂13質量部(YDCN703:東都化成製)、硬化剤として、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂25質量部(LF−2882:大日本インキ工業製)、硬化促進剤として、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN:四国化成製)0.3質量部、粒子分散剤として、リン酸エステル系ポリマ(W9010:BYKケミー社製)7質量部からなる樹脂組成物に、溶媒としてメチルエチルケトンを加え、35質量%のワニスを調製した。
【0055】
得られたワニス100質量部に、粒子として、体積累積分布における50%径が50nm、99%粒径が150nm、比誘電率が1500のチタン酸バリウム(NanOxide HPB−100、TPL,Inc.製、)78質量部を混合し、ビーズミルを用いて混練し、複合材料ワニスを得た。
【0056】
(実施例2)
絶縁性樹脂として、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865:大日本インキ化学工業株式会社商品名)22.6質量部、硬化剤として、ビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170:大日本インキ化学工業株式会社商品名)12.4質量部、硬化促進剤として、2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.02質量部、溶媒として、γ-ブチロラクトン65.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして複合材料ワニスを得た。
【0057】
(実施例3)
粒子として、体積累積分布における50%径が50nm、99%粒径が150nm、比誘電率が1500のチタン酸バリウム(NanOxide HPB−100、TPL,Inc.製)62質量部と、体積累積分布における50%径が20nm、99%粒径が100nm、比誘電率が1500のチタン酸バリウム(HK020R:戸田工業製)16質量部とを混合したものを用いた以外は、実施例1と同様にして複合材料ワニスを得た。なお、当該混合粒子の体積累積分布における50%径は40nmであった。
【0058】
(比較例1)
粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして複合材料ワニスを得た。
【0059】
(比較例2)
粒子として、体積累積分布における50%径が600nm、99%粒径が1800nm、比誘電率が1500のチタン酸バリウム(HPBT−1:富士チタン工業製)78質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして複合材料ワニスを得た。
【0060】
<薄膜トランジスタの作製および評価>
3mm厚のガラス基板上に、マスクを用い幅2mm、厚み50nmのゲート電極を金蒸着により形成し、その上に上記各実施例および比較例で得た複合材料ワニスをそれぞれスピンコータにより、室温、3000rpmの条件で全面に塗布した後、これをクリーンオーブンにて100℃、10分乾燥し、さらに、175℃、60分で硬化させ、ゲート絶縁膜を形成した。このとき、ゲート絶縁膜の膜厚を蝕針式の膜厚計により測定した。また、ゲート絶縁膜の比誘電率を、当該膜の上下面に電極を形成し、LCRメーター(ヒューレットパッカード製、Multi Frequency Meter 4275A)を用いて、周波数1MHz、室温の条件で容量法により測定した。
【0061】
ついで、この絶縁膜全面に半導体材料としてペンタセン(Sigma−Aldrich)を真空蒸着装置により10−5Pa、25℃、成膜速度0.005nm/secで3時間蒸着した後、このペンタセン膜上に、マスクを用いて幅30μm、厚み40nmのソース・ドレイン電極を金蒸着により形成し、各実施例および比較例の複合材料をゲート絶縁膜として有する電界効果型の有機薄膜トランジスタを得た。模式図を図1として示す。
【0062】
上記で得た各薄膜トランジスタについて、飽和ドレイン電流、電流−電圧特性を評価した。電流−電圧特性の評価は、乾燥窒素雰囲気下、室温(25℃)において、半導体パラメトリックテストシステム(ハイソル株式会社 4200SCS)を用い、ゲート−ソース間に一定電圧(30V)をかけながら、ソース−ドレイン間の電圧値を増加させたときに、これに対応して増加するソース−ドレイン間の電流値の変化を測定することで行った。また、飽和ドレイン電流は、上記と同様にして増加するソース−ドレイン間の電流値が飽和に達したときの値を測定した。
【0063】
表1には、各ゲート絶縁膜の膜厚、比誘電率、体積固有抵抗率、各薄膜トランジスタの飽和ドレイン電流の測定結果を示す。また、電流−電圧特性の評価結果を図2に示す。なお、比較例2の複合材料を用いたゲート絶縁膜は絶縁性を発現しなかったため、飽和ドレイン電流を測定することができなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
表1および図2から、実施例1〜3のゲート絶縁膜の比誘電率および該絶縁膜を有する薄膜トランジスタの飽和ドレイン電流は、いずれも比較例のそれより高く、該薄膜トランジスタの電流−電圧特性も、比較例1より優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例において作製した薄膜トランジスタの上面図と断面図。
【図2】実施例において作製した薄膜トランジスタの電流−電圧特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0067】
1 ガラス基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 ペンタセン膜
5 ソース・ドレイン電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積累積分布における50%径が100nm以下で、比誘電率が50以上の粒子と、絶縁性の樹脂とを含むことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
成膜後の比誘電率が5以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
成膜後の比誘電率が7以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
成膜後の体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記粒子の、体積累積分布における99%径が200nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記粒子が、粒度分布で異なる粒径に2つのピークを示すものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記粒子が、体積累積分布における50%径が異なり、比誘電率が50以上である同種もしくは異種の粒子を2以上混合した混合粒子であって、該混合粒子の、体積累積分布における50%径が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記粒子が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウムからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記粒子の含有量が、複合材料100体積部のうち20〜90体積部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記粒子を分散させるための分散剤を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記絶縁性の樹脂が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合材料を成膜してなり、比誘電率が5以上で、かつ体積固有抵抗率が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする複合材料膜。
【請求項13】
比誘電率が7以上であることを特徴とする請求項12に記載の複合材料膜。
【請求項14】
前記複合材料の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の複合材料膜。
【請求項15】
前記成膜は、前記複合材料を基材上に印刷または塗布することで行われることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の複合材料膜
【請求項16】
膜厚が0.05〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の複合材料膜。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の複合材料膜をゲート絶縁膜として使用してなることを特徴とする薄膜トランジスタ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−244927(P2006−244927A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61419(P2005−61419)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】