説明

複合材料の改善

隙間に熱硬化性樹脂を含む充填一方向導電性繊維の構造層と、熱硬化性樹脂を含み、一方向導電性繊維を本質的に含まない樹脂の第1の外層とを含むプリプレグであって、高温下で硬化させるとき、充填一方向導電性繊維の硬化構造層、及び内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂の第1の外層を含む硬化複合材料を生ずる、上記プリプレグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ねて、積層物を形成し、その後に硬化したとき、落雷により引き起こされる損傷に対する改善された抵抗性を特に有する複合材料を形成する、繊維及び樹脂マトリックスを含むプリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、特に、非常に低い材料密度で優れた機械的特性を備えている点で、従来の構造材料と比べて十分に実証された利点を有する。結果として、そのような材料の使用は、ますます広範になりつつあり、それらの応用分野は、「産業」、「スポーツ」、「レジャー」から高性能の航空宇宙用材料にまで及んでいる。
【0003】
エポキシ樹脂などの樹脂を含浸させた繊維配置物を含むプリプレグは、そのような複合材料の製造に広く用いられている。一般的に、そのようなプリプレグの多数の層を所望の通りに「積みあげ」、得られる積層物を、一般的に高温への曝露により硬化させて、硬化複合積層物を製造する。
【0004】
一般的な複合材料は、複数のプリプレグ繊維層、例えば、樹脂層をインターリーフ(interleaf)として挿入した炭素繊維の積層物から形成されている。炭素繊維はある程度の電気伝導性を有するが、インターリーフ層の存在は、これが積層物の面における複合材料においてのみ主として示されることを意味する。積層物の表面に直角な方向、いわゆるz方向の電気伝導率は低い。
【0005】
当業者は、均一な層状積層物を製造するための、樹脂の境界が明瞭な層によって分離された、繊維の境界が明瞭な層を有するそのようなインターリーフ積層物に対する強い選好がある。そのような境界を明瞭に限定した層は、改善された機械的特性、特に耐衝撃性を備えていると考えられている。
【0006】
z方向の導電性の欠如は、落雷などの電磁的危険に対する複合積層物の脆弱性に寄与することが一般的に認められている。落雷は、かなり広範であり得る複合材料の損傷を引き起こし得るものであり、飛行中の航空機に起こった場合に壊滅的になる可能性がある。したがって、これは、そのような複合材料製の航空宇宙構造物についての特有な問題である。
【0007】
複合材料の重量を増加させることを代償とした導電性元素の添加を一般的に含む、そのような複合材料に落雷防御をもたらすための広範囲の技術及び方法が、従来技術において提案された。
【0008】
国際公開第2008/056123号において、隣接する繊維層と接触し、z方向の電気経路を作るように、中空導電性粒子を樹脂インターリーフ層に加えることによる落雷抵抗の改善がなされた。しかし、これは、複雑な加工方法をしばしば必要とし、疲労特性を低減させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、軽量であり、優れた機械的特性を有する導電性複合材料の必要性が、当技術分野において依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本発明は、隙間に熱硬化性樹脂を含む充填された一方向導電性繊維の構造層と、一方向導電性繊維を本質的に含まない熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の外層とを含み、高温下で硬化したとき、充填一方向性導電性繊維の硬化構造層、及び内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂の第1の外層を含む硬化複合材料を生ずる、プリプレグに関する。
【0011】
他の態様において、本発明は、隙間に熱硬化性樹脂を含む充填された一方向性導電性繊維の構造層と、熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の外層とを含み、高温下で硬化したとき、充填一方向導電性繊維の硬化構造層、及び内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂の第1の外層を含む硬化複合材料を生ずる、プリプレグに関する。
【0012】
本発明は、例示として、以下の図面を参照して解説するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来技術のインターリーフ硬化積層物の断面画像である。
【図2】図2は、図1の画像の拡大画像である。
【図3】図3は、本発明による硬化積層物の断面の画像である。
【図4】図4は、本発明による他の硬化積層物の断面の画像である。
【図5】図5は、図3の画像の拡大画像である。
【図6】図6は、図4の画像の拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の外層における導電性繊維の存在は、複数のそのようなプリプレグを一緒に積み重ねたとき、樹脂インターリーフ層(resin interleaf layers)によって分離された複数の導電性繊維の層を含むプリプレグスタックを生じさせ、次に硬化して硬化複合積層物を形成し、z方向の非常により大きい導電率が得られるという効果を有する。これは、繊維層間の電気的接触を可能にするインターリーフ層内に分散した繊維による橋かけ効果のためであると考えられる。
【0015】
さらに、第1の外層により形成されている樹脂インターリーフは、導電性の一方向繊維の分散体が存在するにもかかわらず、繊維を含まないインターリーフに関連する機械的性能上の利点を備えている。
【0016】
したがって、第2の態様において、本発明は、内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂の層によって分離された一方向導電性繊維の複数の層を含む硬化複合積層物に関する。
【0017】
任意の範囲又は量を指定する際に、任意の特定のより高い値を、任意の特定のより低い値と関連付けることができることに注意すべきである。
【0018】
「一方向導電性繊維を本質的に含まない」という用語は、樹脂層が1容積%未満の一方向導電性繊維を含むことを意味すると解釈することができる。しかし、他の物質が所望の通りに樹脂層に存在し得ることを注意すべきである。
【0019】
一般的に繊維の配向は、例えば、隣接一方向繊維層における繊維が隣接繊維層間の角度を示すいわゆる0/90配置で互いに垂直であるように配置することにより、積層物を通して変化する。0/+45/−45/90のような他の配置は、多くの他の配置の間でもちろん可能である。
【0020】
追加の成分は、所望の通り、且つ意図する応用例に応じて積層物に加えることができる。
【0021】
好都合なことに、第1の外層における導電性一方向繊維は、未硬化プリプレグにおける充填一方向導電性繊維の構造層の集団(population)からのものである。
【0022】
繊維の均一な層が繊維を含まない樹脂の均一な層によって分離されているべきであるという当技術分野における一般的理解に反して、例えば、硬化時にインターリーフ層内への繊維の移動を可能にすること又は促進することにより、導電性複合材料に伝統的な均一なインターリーフ複合材料の機械的性能を与えることができることが、見いだされた。
【0023】
内部に分散した一方向繊維を含む樹脂層を有する硬化複合材料は、その製造中のプリプレグの充填繊維の崩壊の制御により製造することができることが、理解される。崩壊の制御は、異なる構造層として残存するのではなく、選りすぐりの繊維の第1の外層内への移動をもたらす。これは、樹脂の粘度が硬化が始まる前に劇的に低下し、物質が最適な条件下で移動することができる、熱硬化過程の初期段階に起こると考えられる。
【0024】
したがって、一方向導電性繊維の位置を効果的に再配置することにより、追加の材料を含める必要がなく、積層物の重量を必ずしも増加させずに導電性のかなりの改善を達成することができる。
【0025】
粒子材料が樹脂に含まれるように未硬化プリプレグを調製することにより、それが充填一方向導電性繊維の構造内に押し込められ、そのような崩壊の制御をもたらすことも見いだされた。硬化時に、温度が上昇し、樹脂が最初に低粘度になるとき、粒子材料が可動性になり、充填繊維に以前に押し込められた粒子が充填繊維から出る傾向を持ち、いくつかの繊維を第1の外層、又はインターリーフ層に引き込む。
【0026】
したがって、好ましくは、プリプレグは、第1の外層と第1の外層に隣接する構造層の領域内とにある粒子材料を含む。一般的に、2〜70重量%が構造層にあり、残り、好ましくは5〜40重量%が第1の外層にある。
【0027】
同様に、硬化複合積層物は、好ましくはインターリーフ層にある粒子材料を含む。一般的に、粒子材料の少なくとも70重量%がインターリーフ層にある。
【0028】
したがって、インターリーフ層は、一般的に樹脂の連続相を含み、粒子材料及び導電性繊維の両方がその中に分散している。
【0029】
一方向繊維の直径に近い平均粒径を有する粒子材料は、充填一方向繊維に侵入(貫入)し、押し込むのに特に有効であることが見いだされた。粒子材料が小さすぎる場合、粒子材料は、繊維の崩壊を引き起こすことなく、間隙中に流れ、大きすぎる場合、繊維を破壊することができず、単にろ過され、繊維の表面に蓄積する。したがって、好ましくは、プリプレグにおける粒子材料の平均粒径と充填一方向繊維の平均直径との比は、4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2、より好ましくは1.5:1〜1:1.5である。
【0030】
球状粒子が充填繊維により効率的に侵入することが見いだされた。したがって、粒子材料は、好ましくは、0.6より大きい、好ましくは0.7より大きい、より好ましくは0.8より大きい球形度(sphericity)を有する。
【0031】
粒子材料は、一般的に総樹脂含量に対して3〜40重量%、好ましくは10〜30重量%のレベルで存在する。
【0032】
粒子材料は、様々な材料から製造することができるが、改善された靱性や導電性などの付加的な有用な機能を備えていることが好ましい。適切な材料としては、ポリアミド6、ポリアミド6/12、ポリアミド12、フェノール樹脂などの樹脂若しくはガラスビーズから形成されている粒子上の導電性コーティング、銀、炭素粒子及び/又は微粒子及びその他のものなどのコーティングなどが挙げられる。
【0033】
好ましい実施形態において、プリプレグは、第1の外層により形成されていないプリプレグの面を形成する第2の外層を含む。第2の外層は、通常、第1の外層と同じ組成であり、好ましくは第1の外層と同じ厚さでもある。この実施形態において、複数のそのようなプリプレグが積み重ねられている場合、第1及び第2の外層が結合して、インターリーフ層になる。
【0034】
本発明により製造される硬化複合積層物は、著しく低い電気抵抗を有し、3mmの厚さの積層物は、下記の試験方法によりz方向で測定したとき、5Ω未満、好ましくは2Ω未満、1Ω未満の電気抵抗を有し、或いは0.5Ω未満でさえも可能である。インターリーフ層に導電性繊維を含まない同様の複合材料、例えば、繊維及び樹脂の境界の明瞭な層(well−defined layers)を有する秩序だった積層物は、はるかに大きい電気抵抗を有することがあり得る。
【0035】
いったん形成されたならば、硬化複合積層物のインターリーフ層は、一般的に構造繊維層よりはるかに薄い。例えば、硬化複合積層物における構造層の全体の厚さとインターリーフ層の全体の厚さとの比は、10:1〜3:1である。
【0036】
硬化時に、多くの構造繊維が充填繊維からインターリーフ層内に移動するが、一般的に移動する繊維は少数であるため、これは、構造層の厚さに重要な影響を及ぼさない。したがって、プリプレグにおける充填繊維の厚さと、第1及び存在するならば第2の外層の厚さとの比も10:1〜3:1である。
【0037】
硬化時の繊維の移動を考慮すると、プリプレグにおける充填繊維と第1の外層との間の物理的境界は、硬化積層物における導電性繊維層とインターリーフ層との間の物理的境界より明瞭に画定される。
【0038】
したがって、上述のことを考慮して、硬化積層物における層が未硬化プリプレグにおける層によって定められると推測することができる。例えば、プリプレグが220μmの厚さの繊維層とそれぞれ20μmの第1及び第2の外層とを含む場合、得られる積層物におけるインターリーフ層は、ここに40μmの厚さであると定められる。厚さの少量の寸法の膨張又は収縮が硬化時に起こり得る。したがって、上の推測で、これを比例の点から考慮に入れなければならない。
【0039】
導電率の有意な増加を得るために、ごく少量の導電性一方向繊維がインターリーフ層内に移動する必要があることが、見いだされた。さらにインターリーフ層内の多すぎる繊維は、インターリーフ層にそのインターリーフ特性を失わせ、機械的強度の低下をもたらし得る。したがって、好ましくはインターリーフ層は、1〜50容積%、好ましくは1〜40%、より好ましくは5〜30%、最も好ましくは10〜20%の導電性一方向繊維を含む。
【0040】
構造層又はインターリーフ層の樹脂は、熱硬化性樹脂を含み、フェノールホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)、ビスマレミドの樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾキサジン樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル、シアン酸エステル樹脂又はそれらの混合物などの当技術分野で通常公知のものから選択することができる。エポキシ樹脂が特に好ましい。硬化剤及び場合によって促進剤を所望の通り含めることができる。
【0041】
好ましい実施形態において、構造層における樹脂は、インターリーフ層におけるものと同じ組成である。
【0042】
導電性繊維は、電気伝導性である複合材料に用いるのに適するいかなる繊維であってもよい。好ましい繊維は、炭素繊維である。
【0043】
一般的に構造層における繊維は、3〜20μm、好ましくは5〜12μmの範囲内の直径を有する円形又はほぼ円形の横断面を有する。インターリーフ層における繊維は、構造層におけるものと同じ集団からのものであることが好ましいので、一般的に3〜20μm、好ましくは3〜12μmの範囲内の直径も有する。
【0044】
上述のように、プリプレグの崩壊性(disrupted nature:分裂性)は、第1の外層又はインターリーフ層内への導電性繊維のその後の移動に極めて重要であると考えられる。
【0045】
崩壊(disruption:分裂、乱れ)を達成する有効な方法は、充填繊維の隙間に入る樹脂が第1の外層を形成する同じ樹脂であるプリプレグの製造方法を用いることによるものであることが見いだされた。
【0046】
したがって、他の態様において、本発明は、一方向導電性繊維の層を連続的に供給すること、繊維の第1の面と熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の層とを接触させること、及び樹脂が繊維の隙間に入るように十分に繊維と樹脂を一緒に圧縮することを含み、且つ、樹脂が一方向導電性繊維を本質的に含まない樹脂の第1の外層から出るように樹脂が十分な量で存在する、本明細書で定義したプリプレグの製造の方法に関する。
【0047】
好ましくは、熱硬化性樹脂を含む樹脂の第2の層を、一般的に第1の層と同時に繊維の第2の面と接触させ、樹脂が繊維の隙間に入るように樹脂の第1及び第2の層を繊維と一緒に圧縮する。そのような方法は、繊維の各面を1つの樹脂層と接触させるが、最終的なプリプレグにおけるすべての樹脂が1段階で含浸されるので、一段階法であるとみなされる。
【0048】
粒子材料は、第1及び存在する場合には第2の樹脂層の内部に分散させることが極めて望ましい。圧縮により、樹脂が隙間に強制的に入り、そして、粒子材料が繊維の構造に押し込まれて、繊維の外側部分にそれら自体を埋め込んでいるいくつかの粒子によりその構造を崩壊させるような粒子材料の部分的なろ過が起こる。
【0049】
公知のインターリーフプリプレグは、一般的に二段階法で製造される。第1段階で繊維を隙間に入る樹脂と接触させ、それに続いて粒子材料、一般的に強化粒子を含む他の樹脂と接触させる。この第2のステップは、粒子材料を含む樹脂を単に固着させて均一な層状プリプレグを製造することを意図している。この二段階法は、繊維と樹脂の境界の明瞭な層を有する秩序だった積層物を製造することができるため、従来技術において望ましいとみなされている。
【0050】
樹脂の含浸を、樹脂及び繊維を1つ又は複数の含浸ローラー上に通すことにより行い、導電性繊維及び樹脂にかける圧力が導電性繊維層の幅1cm当たり40kgを超えない場合に、優れた結果が得られることが見いだされた。
【0051】
当技術分野で通常である高い含浸圧力は、一段階法に適用する場合、高すぎる程度の崩壊を引き起こすと考えられる。したがって、所望の崩壊制御は、一段階含浸法と関連する低圧力との組合せによって生じ得る。
【0052】
樹脂の含浸は、樹脂及び繊維を様々な方法で配置することができるローラー上に通すことを、一般的に包含する。2つの主な配置は、単純な「ニップ」及び「Sラップ」(“S−wrap”)配置である。
【0053】
Sラップ段階は、両方がシート状の樹脂及び繊維が、Sラップローラーとして公知の「S」字の形状の2つの独立した回転ローラーの周りを通るものである。代わりとなるローラー配置は、樹脂及び繊維が、2つの隣接する回転ローラーの間のピンチポイントを通る時に、一緒に締め付けられる、又は挟まれる、広く用いられている「ニップ」などである。
【0054】
Sラップは、十分な崩壊ももたらすと同時に、繊維の隙間への樹脂の信頼でき、かつ再現性のある含浸のための理想的な条件を備えていると理解される。
【0055】
しかし、例えば、隣接するローラー間のギャップを調節することによって圧力が低く維持されるならば、ニップ段階も可能である。
【0056】
大きい圧力は、理論上は優れた樹脂の含浸をもたらすが、本発明による一段階法でのプリプレグの結果に有害であり得ることが見いだされた。樹脂の含浸が信頼できず、要求される許容範囲外となり得ることが見いだされた。
【0057】
したがって、導電性繊維及び樹脂にかかる圧力は、好ましくは導電性繊維層の幅1cm当たり40kgを超えない、より好ましくは1cm当たり35kgを超えない、さらに好ましくは1cm当たり30kgを超えない。
【0058】
樹脂の繊維内への含浸の後に、しばしば、冷却段階、並びに積層、スリッティング(slitting)及び分離などのさらなる処理段階が存在する。
【0059】
樹脂の繊維内への含浸を促進するために、樹脂の粘度が低下するように、これを高温、例えば、60〜150℃、好ましくは100〜130℃で行うことが通常である。これは、樹脂及び繊維を含浸の前に、例えば赤外線ヒーターに通すことによって、所望の温度に加熱することにより、最も好都合に達成される。上述のように、含浸の後に、形成されたプリプレグの粘着性を低減させるために、一般的に冷却ステップが存在する。この冷却ステップは、含浸段階の終了を識別するために用いることができる。
【0060】
直径が200〜400mm、より好ましくは220〜350mm、最も好ましくは240〜300mmのSラップローラーは、繊維構造の所望の崩壊を達成するための最適な条件を備えていることが見いだされた。
【0061】
Sラップローラーを構成する2つのローラーも、250〜500mm、好ましくは280〜360mm、最も好ましくは300〜340mm、例えば、320mmのそれらの中心間のギャップが得られるように間隔をあけることが好ましい。
【0062】
Sラップローラーの2つの隣接する対は、200〜1200mm、好ましくは300〜900mm、最も好ましくは700〜900mm、例えば、800mmの各ローラーの中心の間を離すことが好ましい。
【0063】
含浸ローラーは、様々な方法で回転してよい。それらは、自由に回転又は駆動されてよい。
【0064】
含浸ローラーは、一般的に金属外装を有するが、様々な材料から製造することができる。クロム処理ローラーが好ましいことがわかった。
【0065】
樹脂の取扱いを改善するために、それを紙などの裏当て材(backing material)上に担持させることが標準的である。次に、樹脂が繊維と接触し、裏当て材が樹脂及び繊維接触部分の外側の所定の位置に残存するように、樹脂を一般的にロールから供給する。樹脂の一様な含浸を達成するために、その後の含浸工程中、裏当て材が圧力をかける有用な外側材料となる。
【0066】
裏当て材が圧縮性である場合、繊維層上に含浸工程によって生ずる力が減少することが見いだされた。これは、圧縮性の紙が含浸時に最初に圧縮された状態になり、その後でのみ含浸工程による力が繊維に伝達されるためであると考えられる。したがって、非圧縮性紙は含浸時に樹脂及び繊維に作用する力を増大させ、それにより、繊維のより大きい崩壊と樹脂のより良好な含浸をもたらすので、非圧縮性紙が好ましい。圧縮性の適切な尺度は、圧縮性比(compressibility ratio)と呼ばれる、紙の厚さとその材料密度との比である。0.001kg−1−2未満の圧縮性比を有する裏当て紙が好ましいことが見いだされた。
【0067】
例えば、圧縮係数0.00083を有するグラシンベース(glassine−based)の、カレンダ処理又はスーパーカレンダ処理の差厚(differential)シリコーン被覆剥離紙は、0.00127の圧縮係数を有するカレンダ処理又はスーパーカレンダ処理されていない他の紙と比べて有効に機能する。グラシンベースのスーパーカレンダ処理紙は、Mondi及びLaufenbergなどの多くの供給元から市販されている。
【実施例】
【0068】
本発明のプリプレグは、樹脂の混合、薄膜化及びプリプレグに関する標準操作法に従って製造した。樹脂は、液体及び粉末成分を最初に混合し、次いで、硬化剤及び通常直径が8ミクロンの強化ポリイミド6粒子であるさらなる粉末成分と再び混合する、ホットメルト法で混合した。2バッチの粒子を用い、第1のものは、高球形度を有するAlchimica製のMicropan 777PA6であり、第2のものは、Arkema製で、低球形度を有すOrgosol 1002であった。比較例については、高球形度を有していたArkema製の20ミクロンの粒子を用いた。
【0069】
硬化剤及び強化粒子は、過熱なしに、また過度の樹脂の前進(advancement)又は発熱反応の危険を冒すことなく、混合容器から樹脂を傾斜(デカント)するための「流動性粘度」(“flowable viscosity”)をもたせるための高せん断及び適切な温度(80℃)を用いて、第1段階の混合物を形成するように混合した。この混合ステップは、回分法又は例えば、連続混合及びコーティング装置への熱樹脂の供給用の2軸押出機を用いた連続混合法で完了させることができる。
【0070】
この実施例において、回分式混合工程を完了したとき、完全に混合された樹脂製剤を混合容器から逆ロール薄膜形成機(reverse roll filming machine)上のコーティングバス中に傾斜した。当薄膜形成法は、ホットメルト逆ロール樹脂コーティングの実施のための典型的なものであった。メーターロール及びアプリケータロールを工程温度(85℃)に加熱し、コーティングギャップをそれらの間に設定した。公称69gm−2(g/m)の樹脂のコーティングが、Laufenberg又はMondiなどの供給業者により産業で一般的に用いられているようなスーパーカレンダ処理グラシンベースの両面剥離紙に被覆されるようにライン速度、コーティングギャップ及びアプリケータロール速度を制御した。薄膜のロールをこのコート重量で作り、次いで、使用するためにプリプレグラインに搬送した。
【0071】
プリプレグラインは、樹脂の種類が国際公開第2008/040963号のバッチ1349及び1351に用いられている通りであるプリプレグを製造するように設定した。プリプレグ中の樹脂の公称量は、34重量%であり、これは、各層が公称69gm−2で、合計138gm−2の2層の被覆薄膜を用いることにより達成される。プリプレグの繊維面積重量等級は、プリプレグ製品中268gm−2繊維である。繊維等級タイプは、IMA(Hexcelによる)であり、サイズタイプは、1本のIMA炭素繊維トウ(tow)における直径約6ミクロンの12000公称本数の炭素フィラメントを有するIMA繊維と同様である。
【0072】
炭素繊維タイプIMAは、公称0.445gm−1の単位長当たりの質量を有する。当産業界で周知の計算を用いると、IMA 12k炭素繊維トウの370個のスプールが炭素繊維クリール装置に装着され、各トウがプリプレグラインに通された。これにより、約615mmの幅及び公称268gm−2の炭素繊維織物が形成された。2つの被覆樹脂薄膜を、1つの樹脂層が炭素繊維織物の上面に貼り付けられ、1つの樹脂薄膜が炭素繊維織物の下面に樹脂層を貼り付けるように、プリプレグ装置に装着する。これは、プリプレグ加工への一般的な一段階アプローチである。
【0073】
樹脂/繊維/樹脂層、すなわち「プリプレグ織物」をプリプレグラインを経てSラップに送った。含浸帯域をこの樹脂系に適する温度(120℃)に加熱し、プリプレグ織物がこの熱含浸帯域内に保持されていた時間中に樹脂流が実現するように、ライン速度を制御した。
【0074】
プリプレグ工程は、間隙のない厚い積層構造を得るための所望のレベルでの繊維ウエットアウト(含浸)をプリプレグに施すために、炭素繊維トウ張力(くし状部における120〜160g/トウの侵入張力)、温度(120℃)、Sラップによる圧力及び速度(5m/分)を制御するようにするものでもあった。1つの薄膜コーティング剥離紙は保持し、1つのコーティング剥離紙をプレインポリエチレン保護紙に置き換えて、プリプレグをコアに巻いた。
【0075】
次いで、プリプレグを用いて、そのようなプリプレグに一般的な硬化サイクルで硬化させた300mm x 300mmの12層0°90°積層物を製造した。これは、2℃/分の加熱速度で、180℃で2時間硬化させ、次に環境温度に冷却するものであり、すべて約6バールの圧力下である。
【0076】
次いで、この積層物を約38mm x 38mmの8枚の正方形が得られるように切断した。次に、硬化積層物のこれらの正方形の縁をリニッシング(linishing)機で滑らかにして、完全にきれいで、一様な縁と約36mm x 36mmの最終直径を得た。次に、正方形の積層物試料を下記のように抵抗について測定した。測定には、積層物の両面に導電性の層(金スパッター)を施した厚さ3mmで、約36mm x 36mmの硬化複合物を含める。次いで、抵抗をオーム単位で測定する。
【0077】
積層物を、下記の手順に従って衝撃後圧縮(CAI)特性についても試験した。抵抗及びCAI試験の結果を下の表1に示す。比較例Aは、本発明の範囲外である。
【0078】
複合積層物の抵抗試験方法
サイズが300mm x 300mm x 3mmのパネルを、オートクレーブ硬化により調製する。パネルの組合せ(layup)は、0/90である。次いで、36mm x 36mmである試験に供する試料(一般的に3〜4個)をパネルから切り出す。試料の正方形の面は、研磨して(例えば、リニッシャー(Linisher)装置で)、炭素繊維を露出させるべきである。硬化時に剥離層を用いる場合には、これは必要ではない。過剰な研磨は、これが最初の層を越えて侵入するので、避けるべきである。次いで、正方形の面をスパッターにより電気伝導性金属、一般的に金の薄層で被覆する。試料の側面の金又は金属はすべて、試験前に研磨によって除去すべきである。低い接触抵抗を保証するために金属コーティングが必要である。
【0079】
抵抗を測定するために、電圧と電流の両方を変化させることができる電源(TTi EL302Pプログラマブル30V/2A電源ユニット、Thurlby Thandar Instruments、Cambridge、UK)を用いる。試料を電源の電極(スズめっき銅ブレイド(tinned copper braids))と接触させ、クランプを用いて所定の位置に保持する(誤った結果を示すので、電極が互いに接触したり、他の金属表面に接触したりしないことを確認する)。1つのブレイドから他のブレイドへの電気経路を妨げるために、クランプが非導電性コーティング又は層を有することを確認すること。1アンペアの電流を流し、電圧を記録する。次に、オームの法則を用いて、抵抗を計算することができる(V/I)。切断試料のそれぞれについて試験を行って、値の範囲を得る。試験の信頼性を保証するために、各試料を2回試験する。
【0080】
衝撃後圧縮(CAI)試験方法
室温における衝撃後圧縮(CAI)試験は、航空宇宙用複合材料の試験の技術分野に精通している者に周知の試験プロトコールに従って実施した。この試験に関する準拠した特定の試験方法は、AITM 1−0010であった。
【0081】
圧縮測定は、ISO7500−1のクラス1に対して、また関連する荷重範囲において1%以内の精度に較正した試験機を用いて行った。試験は、23℃±2℃で行った。
【0082】
厚さが約4mmの準等方性積層物を、EN2565方法Bに従って調製した。衝撃を加える前に検出可能な欠陥がないことを保証するために、パネルを非破壊試験(Cスキャン)により検査した。
【0083】
試料に、EN2760に準拠したRm=2000MPaの鋼鉄又は同等の硬度の鋼鉄材料製の半球形衝撃体を用いて衝撃を加えた。インデンターチップ(indentor tip)は、16±0.5mmの直径及び粗度がRa<0.8mmで、8±0.25mmの半球半径を有していた。
【0084】
被衝撃試料上のインデント深さは、直径3mmで、0.01mm以内に較正した半球形アダプター付きの深さゲージを用いて測定した。深さ測定は、衝撃を加えてから30分以内に行った。
【0085】
インデント深さ、層間剥離及び残留圧縮強度に対する衝撃エネルギーの影響を、少なくとも1mmから有意により低いインデント深さまでのインデント深さを示す試料にわたって測定することができるように選択した様々なエネルギーにわたって、試料に衝撃を与えた。
【0086】
層間剥離の部分をCスキャンを用いて通常の方法で測定した。衝撃付与及び測定の後に、ガイドへの荷重の伝達を最小限にするように設計された座屈防止(antibuckling)サイドガイドを装着した圧縮用具を用いて、試料に破損するまで荷重を印加することによって残留圧縮強度を測定した。
【0087】
圧縮印加用具の較正には、ひずみゲージ及び適切な自動ひずみ記録装置を用いるものとする。CAIのBVID 1mmは、1mmの深さのインデントをもたらすと経験的に決定されたエネルギーで衝撃付与した試料における3回ずつの測定値として測定した。
【表1】

【0088】
本発明によりプリプレグ中の繊維を崩壊させることによって、機械的強度に影響を与えずに導電率の劇的な増加がもたらされることがわかる。
【0089】
図を参照すると、図1に、従来技術のインターリーフ複合積層物の横断面の画像を示す。繊維の均一な層に樹脂の均一な層がインターリーフとして挿入されていることを確認することができる。図2に、樹脂及び強化粒子を含むが、繊維を含まないインターリーフ層を明瞭に示す図1の拡大画像を示す。
【0090】
図3に、本発明による複合積層物の横断面の画像を示す。積層物がページに垂直な方向に通っている一方向繊維10及びページに水平な方向に通っている一方向繊維12の層を含んでいることを、明瞭に確認することができる。強化粒子と一方向繊維が分散している樹脂の連続相を含むインターリーフ層14が、繊維層10、12を引き離している。繊維層10、12が硬化時に一部がインターリーフ層内に移動するように崩壊したことを、確認することができる。図4に、本発明による他の複合積層物の画像を示す。
【0091】
図5に、本発明による例4による硬化積層物のインターリーフ層の拡大画像を示す。ページに垂直な方向に通っている一方向繊維20を、ページに水平な方向の一方向繊維22とともに確認することができる。Xの方向の直線の下の領域は、未硬化プリプレグにおける繊維と樹脂との境界が明瞭な接触面を参照することにより、インターリーフ層であると定義される。強化粒子24がいくつかの一方向繊維20とともに連続樹脂内に分散している状態を、確認することができる。インターリーフ中の少量の導電性繊維によってさえも、驚くほどに高い導電率が達成される。
【0092】
図6に、本発明による例1による他の硬化積層物のインターリーフ層の拡大画像を示す。図5の場合と同様に、直線の上のY方向の繊維層と直線の下のX方向のインターリーフ層との区別は、対応する未硬化プリプレグに存在する境界が明瞭な接触面の位置を参照することによって行われる。この場合、強化粒子26は、一方向繊維20の直径と同じ粒径を有することを確認することができる。インターリーフ層は、強化粒子26と一方向繊維20の両方の分散体を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間に熱硬化性樹脂を含む充填一方向導電性繊維の構造層と、熱硬化性樹脂を含み、一方向導電性繊維を本質的に含まない樹脂の第1の外層とを含むプリプレグであって、高温下で硬化させるとき、充填一方向導電性繊維の硬化構造層及び内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂の第1の外層を含む硬化複合材料を生ずる、上記プリプレグ。
【請求項2】
第1の外層中の導電性一方向繊維が、プリプレグにおける充填一方向導電性繊維の構造層の集団からのものである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
第1の外層内、及び第1の外層に隣接する構造層の領域内に位置する粒子材料を含む、請求項1又は請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
プリプレグにおける粒子材料の平均粒径と充填一方向繊維の平均直径との比が4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは1.5:1〜1:1.5である、請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
粒子材料が0.6を超える球形度を有する、請求項3又は請求項4に記載のプリプレグ。
【請求項6】
粒子材料が総樹脂含量に対して3〜40重量%のレベルで一般的に存在する、請求項3から5までのいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
第1の外層により形成されないプリプレグの面を形成している、一方向導電性繊維を本質的に含まない樹脂の第2の外層を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
プリプレグにおける充填繊維の厚さと、第1の外層及び存在する場合第2の外層の厚さとの比が10:1〜3:1である、請求項1から7までのいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
構造層における樹脂が第1の外層における樹脂と同じ組成である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
内部に分散した一方向導電性繊維を含む硬化樹脂のインターリーフ層によって分離されている一方向導電性繊維の複数の層を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の複数のプリプレグを含む積層物を高温下で硬化させることにより得られる硬化複合積層物。
【請求項11】
少なくとも70重量%がインターリーフ層に存在する粒子材料を含む、請求項10に記載の硬化複合物。
【請求項12】
インターリーフ層が、1〜50容積%の導電性一方向繊維、好ましくは1〜40容積%、より好ましくは5〜30%、最も好ましくは10〜20%を含む、請求項10又は請求項11に記載の硬化複合物。
【請求項13】
一方向導電性繊維の層を連続的に供給すること、繊維の第1の面と熱硬化性樹脂を含む樹脂の第1の層とを接触させること、及び樹脂と繊維を一緒に圧縮することを含み、且つ、樹脂が繊維の隙間に入り、一方向導電性繊維を本質的に含まない樹脂の第1の外層から出るように、樹脂が十分な量で存在する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のプリプレグの製造の方法。
【請求項14】
熱硬化性樹脂を含む樹脂の第2の層を、一般的に第1の層と同時に、繊維の第2の面と接触させ、樹脂が繊維の隙間に入るように樹脂の第1及び第2の層を繊維と一緒に圧縮する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
粒子材料を第1の樹脂層及び存在する場合第2の樹脂層内に分散させ、圧縮により、樹脂が隙間に強制的に入り、そして、粒子材料が繊維の構造に押し込まれて、繊維の外側部分にそれら自体を埋め込んでいるいくつかの粒子によりその構造を崩壊させるような粒子材料の部分的なろ過が起こる、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
導電性繊維の層が所定の幅を有し、1つ又は複数の含浸ロール上に通すことにより樹脂及び繊維を圧縮し、導電性繊維及び樹脂にかける圧力が導電性繊維の幅1センチメートル当たり40kgを超えない、請求項13から15までのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530838(P2012−530838A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516864(P2012−516864)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051051
【国際公開番号】WO2010/150021
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(504132032)ヘクセル コンポジット、リミテッド (20)
【Fターム(参考)】