複合機能レンズ及び複合機能レンズを用いた光デバイス
【課題】 年々、光デバイスに対するコストダウンへの要求が高まっている。従来は、光ファイバからの出射光をコリメート光にするコリメートレンズと、該コリメートレンズから出射されるコリメート光の波面成分のうち一方の波面成分だけを集光する線集光レンズと偏光分離素子および電気光学素子から構成される構造であったが部品点数が多いことから部品コストが高く、さらに部品点数が多いため組立コストも高いため、部品点数の削減によるコストダウンが課題になっている。
【解決手段】 上記課題を解決するため、本発明のレンズは、コリメートレンズと線集光レンズとを一体成形又は貼り合せにより作成し従来2点あった部品点数を1点に削減することにより、部品コストおよび組立コストの両面からコストダウンを実現する。
【解決手段】 上記課題を解決するため、本発明のレンズは、コリメートレンズと線集光レンズとを一体成形又は貼り合せにより作成し従来2点あった部品点数を1点に削減することにより、部品コストおよび組立コストの両面からコストダウンを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線集光機能とコリメート機能とを併せ持ち小型かつ低価格な複合機能レンズ及び複合機能レンズを用いた光コンポーネントおよび光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信においては、FTTHの普及によりユーザ数が増加しており、その影響からネットワークが複雑化している。複雑化したネットワーク内では光信号強度変化が頻繁に生じているため、光信号強度を制御する光デバイスは大規模、小規模ネットワークでともに重要な光デバイスに位置づけられている。
【0003】
従来は、光ファイバからの出射光をコリメート光にするコリメートレンズと、該コリメートレンズから出射されるコリメート光の波面成分のうち一方の波面成分だけを集光する線集光レンズと偏光分離素子および電気光学素子から構成される光減衰量可変デバイスが存在していた。
【特許文献】PCT/JP2005/008900
【発明の開示】
【本発明が解決しようとしている課題】
【0004】
年々、光デバイスに対するコストダウンへの要求が高まっている。上記PCT/JP2005/008900で記載されている発明の構造では部品点数が多いことから部品コストが高く、さらに部品点数が多いため組立コストも高いため、部品点数の削減によるコストダウンが課題になっている。
【0005】
本発明は、以上のような実情を鑑み、コリメートレンズと線集光レンズとを複合させ部品点数を減らし部品コストを削減すること、および部品点数削減により組立コスト削減することにより大幅なコストダウン行なうための複合機能レンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のレンズは、単レンズにより、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、従来2点あった部品点数を1点に削減することにより、部品コストおよび組立コストの両面からコストダウンを実現する。
【0007】
請求項1に記載の複合機能レンズは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合レンズである。
【0008】
ここで、「光線波面」、「光線波面の少なくとも一方向」および「光線波面における前記方向と垂直な方向」に関して説明する。図1では、光軸、すなわち光線の進む方向をZ軸とした軸設定をしている。光線波面は、光軸に垂直な面であることから、図1における、XY平面で規定される。この場合、光線波面の少なくとも一方向とは、XY平面内の任意の方向で設定できる。集光される方向をX軸方向とした場合、コリメート化される方向は集光される方向と垂直な方向であるY軸方向となる。
【0009】
請求項2に記載の複合機能レンズは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、前記一方向集光機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほぼ全部が前記コリメート機能を有する部分を通過し、前記コリメート機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほとんど全部が前記集光機能を有する部分を通過する複合機能レンズである。ほとんど全部とは、損失の許容範囲という意味であり、トータル強度90%以上とする。
【0010】
請求項3記載の複合機能レンズは、前記複合機能レンズにおける光線入力面または出力面いずれか一方の面に、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能、および、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。
【0011】
請求項4記載の複合機能レンズは、少なくとも、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能のいずれかの機能がGRINレンズを用いた請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。「GRINレンズ」は一般的なGRaded INdexレンズであり、屈折率が面内で均一ではなく分布を持っているレンズのことをいう。
【0012】
請求項5記載の複合機能レンズは、平凸コリメートレンズと平凸線集光レンズの互いの平面部を貼り合わせて一体形成された請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。
【0013】
請求項6に記載の光コンポーネントは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含むこ光コンポーネントである。本明細書で「機能性光素子」とは光が素子を通過する際に偏光、波長、強度、方向等、特性に変化を与え、さらに電界、電流、磁界、光などの外部信号により前記変化の大きさを可変する素子のことをいう。又、「集光点付近」とは複合機能レンズの集光位置を中心とした、複合機能レンズから集光位置までの距離の±30%以内の範囲とする。
【0014】
請求項7に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含む請求項6に記載の光コンポーネントである。
【0015】
請求項8に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子と前記反射素子が一体化している請求項7に記載の光コンポーネントである。一体化とは、密着している状態であり、機能性素子の一面に形成された反射膜もこの形態に含まれる。
【0016】
請求項9に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子である請求項6から8のいずれかに記載の光コンポーネントである。本明細書で「偏光可変素子」とは光が素子を通過する際に偏光状態に変化を与え、さらに電界、電流、磁界、光などの外部信号により前記変化の大きさを可変する素子のことをいう。
【0017】
請求項10に記載の光コンポーネントは、前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子である請求項9に記載の光コンポーネントである。本明細書で「電気光学素子」とは電圧を印可することにより、通過する光の偏光の変化を可変する素子のことをいう。
【0018】
請求項11に記載の光デバイスは、過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含む光コンポーネントと、入力ファイバと、入力光の偏光特性に変化を与える少なくともひとつの偏光素子とを含む光デバイスである。本明細書では、偏光素子とは、入力光の偏光状態を変える波長板、または、特定の偏光のみを透過する偏光子、または、入力光を直交する2本の光線に分離する偏光分離素子など、入力光の偏光状態に変化を与える素子のことをいう。
【0019】
請求項12に記載の光デバイスは、前記偏光素子が偏光分離素子である請求項10に記載の光デバイスである。本明細書で「偏光分離素子」とは偏光が直交する二つの光線に分離する素子のことをいう。
【0020】
請求項13に記載の光デバイスは、前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含む請求項11または請求項12のいずれかに記載の光デバイスである。
【0021】
請求項14に記載の光デバイスは、前記機能性光素子と前記反射素子が一体化している請求項13に記載の光デバイスである。
【0022】
請求項15に記載の光デバイスは、前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子である請求項11から請求項14のいずれかに記載の光デバイスである。
【0023】
請求項16に記載の光デバイスは、前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子である請求項15に記載の光デバイスである。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、複合機能レンズを用いることにより、部品点数を減らし部品コストを削減すること、および部品点数削減により組立コスト削減することにより大幅なコストダウンを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
【0026】
図2は、本発明にかかる第一の実施形態を示す構成図である。図2上図は複合レンズを上面から見た断面図であり、図2下図は側面から見た断面図である。上図のY−Z断面図でのレンズ形状は左側から入射された光をコリメートにし出射するレンズ形状をしている。下図のX−Z断面図でのレンズ形状は左側から入射される光を集光し出射するレンズ形状をしている。Y−Z断面でのレンズ半径が2[mm]、X−Z断面のレンズ半径を0.85[mm]とすることにより、Y−Z断面では焦点距離4mmのコリメートレンズ、X−Z断面では1:1の共焦点レンズを併せ持つ複合レンズとして実現可能である。
【0027】
図3,図4は、本発明にかかる第二の実施形態を示す構成図である。図3は複合レンズを上面から見た断面図であり、図4は側面から見た断面図である。コリメート機能を実現する平凸コリメートレンズと、光線波面の一方向を集光する集光機能を実現する平凸集光レンズの互いの平面を貼り合わせることにより、構成されている。透過光線は、本実施例のレンズを透過することにより、前記コリメート機能と前記一方向を集光する機能を付与される必要があるため、平凸コリメートレンズと平凸集光レンズの有効エリアはほぼ一致していることが求められる。本実施例は、2つのレンズの貼り合わせにより形成しているが、一つの母材を成形や研磨により作製することも可能である。
【0028】
また、上記第一の実施例および第二実施例では、界面での屈折を利用した成形レンズで形成されているが、これらの成形レンズをGRINレンズでも置き換えることは可能である。
【0029】
図5、図6は、本発明にかかる第三の実施形態を示す構成図である。第一の実施形態、または、第二の実施形態である複合レンズに、一対の電極82に挟まれたPLZTから形成される機能性光素子を組み合わせた構成で、出力光の偏光状態を電極82に印加する電圧により可変する光コンポーネントである。図5は光コンポーネントを上面から見た断面図であり、図6は側面から見た断面図である。
【0030】
図6に示すように、PLZT素子8の最小電極間部分に反射膜9を形成し、反射膜と複合レンズ4の集光点とを一致させる配置としている。電極間距離が小さいほど、効率的に電界を印加できるため、複合レンズの集光点付近にPLZT素子8を配置する構造により、低電圧化が実現されている。
【0031】
一方で、図5で示すYZ方向では、コリメート状態で反射されている。従って、反射光が再び複合レンズ4を透過しても、反射角度を選ぶことにより、入力と異なる光路を選択することができる。後述のような、光ファイバインターフェイスの光デバイスを形成する場合、入力と出力の位置がずれることにより、入出力で別々の光ファイバを使用できるようになる。入出力を同一のファイバにする場合、入出力光を分離するための光デバイスが必要となるため、入出力で別々の光ファイバとすることはコストダウン効果となる。
【0032】
次に、第三の実施形態における動作原理について説明する。
【0033】
PLZTは、電圧印加方向とそれと垂直な方向で位相差が生じることにより偏光を可変する機能を持たせることができる。位相差は少なくとも0°から180°まで変化することが必要となるため、できるだけ電気光学効果の大きいことが好ましい。
[化1](Pb1−x,Lax)(Zry,Tiz)1−x/4O3で表記されるPLZTの組成のうち、(x、y、z)=(9,65,35)程度が適した組成となる。
【0034】
入力光線波長をλ、印加電圧をV、PLZTの屈折率をn、PLZTのカー定数をR、電極間距離をd、PLZT素子長をLとすると、PLZT素子透過前後における電界と平行な偏光成分、それと垂直な偏光成分間の位相差は下記のように表すことができる。
【数1】
λ=1.55μm、n=2.5、R=8×10−16(m/V)2、電極間距離広口部d1を60μm、狭口部d2を30μmとし、PLZT素子長Lを1mmとした場合の、電界と平行な偏光成分、それと垂直な偏光成分間の位相差と印加電圧の関係を図7に示す。位相差が180°となる半波長電圧は、16V程度となる。
【0035】
図8、図9は、本発明にかかる第四の実施形態を示す構成図である。図8はデバイスを上面から見た断面図であり、図9は側面から見た断面図である。本実施形態は、出力光強度を印加電圧の大きさにより可変する光デバイスである。2芯フェルール3で固定された入力ファイバ1および出力ファイバ2、コリメートレンズ及び一方向のみを集光する集光レンズの二つの機能を有する複合機能レンズ4、偏光分離素子として機能するくさび型複屈折性結晶素子5、一対の電極82に挟まれたPLZT81で構成され、偏光可変素子として機能する電気光学素子8、PLZTに蒸着された反射素子として機能する全反射膜9から構成されている。くさび型複屈折性結晶素子5材料としてはルチルを使用しているが、同様の機能を有する素子であれば材料は限定しない。本実施例では、偏光可変素子として、一対の電極82に挟まれたPLZT81を使用しているが、偏光を可変できる素子であればPLZTや電気光学素子に限定されるものではない。また、使用している複合機能レンズの入射面、出射面形状は平面、球面、非球面などが考えられ、GRINレンズでも置き換えることは可能である。
【0036】
次に、上記の第四の実施形態における、入力ファイバ1から出力ファイバ2に至る光路および透過光強度可変の原理について説明する。入力ファイバ1を出射した光線は、複合機能レンズ4により図8におけるY方向がコリメート光になり、図9におけるX方向は集光された光となる。この光はくさび型複屈折性結晶素子5に入射して、X方向に対し45°回転した直線偏光A(常光)と直線偏光Aに対して直交している直線偏光B(異常光)に偏光分離される。
偏光分離された2本の直線A,Bは電極82に挟まれたPLZT81で構成される電気光学素子8に入射する。電気光学素子8は一面に反射防止膜(ARコート)を施し、その反対の面に高反射膜(HRコート)を施す。従って、ARコート面から電気光学素子8に入力した光線はHRコート面9で反射されて、電気光学素子8を往復して、再びARコート面から出射する。なお、HRコートの代わりにARコートを施し、別体のHR素子を直近に配置してもよい。電気光学素子8を出射した2本の光線は電気光学素子8に印加する電圧に応じて、偏光状態を変化させる。2本の光線はくさび型複屈折性結晶素子5を再び透過することにより、くさび型複屈折性結晶素子5における光線Aの中の異常光成分(A1)および光線Bの中の常光成分(B2)が再度、複合機能レンズ4により出射光ファイバに結合するよう集光される。
【0037】
次に、図10を用いて、半波長電圧を印加した場合の光線の偏光状態の挙動について説明する。くさび型複屈折性結晶素子を透過し偏光分離した直線偏光A、Bは電気光学素子8を往復することによりX方向とY方向の成分が180°の位相差を生じるため、入力時とは90°回転した直線偏光となる。電気光学素子8を出射した光線Aが、くさび型複屈折性結晶素子において異常光屈折を受け(A1)、光線Bは常光屈折を受ける(B2)。複合機能レンズ4と出力光ファイバ2はA1とB2を結合する位置に設置されているため、光線A1、光線B2はいずれも結合する。
【0038】
また次に、図11を用いて、電圧を印加しない時の光線の偏光状態の挙動について説明する。電圧が印加されていない状態では、PLZT81は複屈折性を持たないため、入出力光の偏光状態は変化しない。従って、くさび型複屈折性結晶素子5を透過した光線Aは、くさび型複屈折性結晶素子5において常光屈折を受け(A2)、光線Bは異常光屈折を受ける(B1)。複合機能レンズ4と出力光ファイバ2はA1とB2を結合する位置に設置されているため、光線A2、光線B1はいずれも結合しないOFF状態となる。
【0039】
印加電圧が0Vと半波長電圧の間の場合は、印加電圧に応じて、結合成分である光線A1と非結合成分である光線A2との強度比、および結合成分である光線B2と非結合成分である光線B1との強度比が変化するため、光線の出力ファイバ2への透過量を変えることができる。本実施例の光デバイスに電圧を印加したときの透過光量の変化を図12に示す。半波長電圧において、透過光量は最大となっているため、0〜16Vで電圧を自由に変化することにより本実施例の光デバイスは可変光減衰器として機能させることが可能となる。また、16Vの電圧をON/OFFすることにより、光シャッターとして機能することも可能である。さらには、0〜16Vにおける適当な電圧で、ON/OFFを繰り返し、信号を形成することにより強度変調器として機能させることもできる。
【0040】
また、くさび型複屈折性結晶素子5と電気光学結晶8の間に偏光変換素子7としてλ/4板を挿入し、電気光学結晶に入射前と後で位相差を180°与えることにより0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなるような、電圧−透過光強度特性となる。
【0041】
さらに第五の実施形態を、図13,図14に示す。図13はデバイスを上面から見た断面図であり、図14は側面から見た断面図である。偏光分離を、くさび型複屈折性結晶素子5で行う代わりに、平行平板型複屈折性結晶素子6で行う。平行平板型複屈折性結晶素子6の配置は、くさび型複屈折性結晶素子5の時とは異なり、2芯フェルール3と複合レンズ4の間となる。偏光変換素子7は平行平板型複屈折性結晶素子6と反射膜9の間に挿入する必要があり、第二の実施形態と同様に0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなるような、電圧−透過光強度特性となる。
【0042】
また、さらに第五の実施形態を、図15,図16に示す。図15はデバイスを上面から見た断面図であり、図16は側面から見た断面図である。第一の実施実施形態の2芯フェルールを1芯フェルール11にし、反射膜を無くし左右対称に折り返した構造である。電圧−透過光強度特性は第二の実施形態と同様に0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなる。ここで、くさび型複屈折性結晶素子5と電気光学素子8の間に偏光変換素子7としてλ/4板を挿入すれば、電圧−透過光強度特性は逆となり、0V時に透過光強度が最小、電圧印加に従って透過光強度が大きくなる。
【0043】
また、さらに第六の実施形態を、図17,図18に示す。図17はデバイスを上面から見た断面図であり、図18は側面から見た断面図である。第四の実施実施形態の2芯フェルールを1芯フェルール11にし、反射膜を無くし左右対称に折り返した構造である。電圧−透過光強度特性は第四の実施形態と逆となり0V時に透過光強度が最小となり、電圧印加に従って透過光強度が大きくなる。
【0044】
また、上記第一から第六の実施形態では、複合機能レンズの機能のうちコリメートレンズとして機能する焦点距離は4mm、集光レンズとして機能する線集光レンズの焦点距離は5mmとしている。また、入力ファイバ1、出力ファイバ2はともに、シングルモードファイバとするが、マルチモードファイバや偏波保持ファイバとすることも可能である。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲における変形による実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、可変光減衰器や光シャッター、光変調器が実現できるため、光通信機器として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 光線波面、集光方向の説明面図である。
【図2】 本発明の第一の実施形態としての複合レンズの構成を示す上面図および側面図である。
【図3】 本発明の第二の実施形態としての複合レンズの構成を示す上面図である。
【図4】 本発明の第二の実施形態としての複合レンズの構成を示す側面図である。
【図5】 本発明の第三の実施形態としての光コンポーネントの構成を示す上面図である。
【図6】 本発明の第三の実施形態としての光コンポーネントの構成を示す側面図である。
【図7】 第三の実施形態の光コンポーネントに係る印加電圧(V)に対する位相差(degree)の関係を示す図である。
【図8】 本発明の第四の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図9】 本発明の第四の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図10】 第四の実施形態の光デバイスをONにした場合の、透過する光線の偏光状態を示す原理説明図である。
【図11】 第四の実施形態の光デバイスをOFFにした場合の、透過する光線の偏光状態を示す原理説明図である。
【図12】 第四の実施形態の光デバイスの印加電圧(V)に対する透過強度(dB)を示す図である。
【図13】 本発明の第五の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図14】 本発明の第五の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図15】 本発明の第六の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図16】 本発明の第六の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図17】 本発明の第七の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図18】 本発明の第七の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 入力ファイバ
2 出力ファイバ
3 2芯フェルール
4 複合機能レンズ
5 くさび型複屈折性結晶素子
6 平行平板型複屈折性結晶素子
7 偏光変換素子
8 電気光学素子
81 PLZT
82 電極
9 反射膜
10 電源
11 1芯フェルール
【技術分野】
【0001】
本発明は、線集光機能とコリメート機能とを併せ持ち小型かつ低価格な複合機能レンズ及び複合機能レンズを用いた光コンポーネントおよび光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信においては、FTTHの普及によりユーザ数が増加しており、その影響からネットワークが複雑化している。複雑化したネットワーク内では光信号強度変化が頻繁に生じているため、光信号強度を制御する光デバイスは大規模、小規模ネットワークでともに重要な光デバイスに位置づけられている。
【0003】
従来は、光ファイバからの出射光をコリメート光にするコリメートレンズと、該コリメートレンズから出射されるコリメート光の波面成分のうち一方の波面成分だけを集光する線集光レンズと偏光分離素子および電気光学素子から構成される光減衰量可変デバイスが存在していた。
【特許文献】PCT/JP2005/008900
【発明の開示】
【本発明が解決しようとしている課題】
【0004】
年々、光デバイスに対するコストダウンへの要求が高まっている。上記PCT/JP2005/008900で記載されている発明の構造では部品点数が多いことから部品コストが高く、さらに部品点数が多いため組立コストも高いため、部品点数の削減によるコストダウンが課題になっている。
【0005】
本発明は、以上のような実情を鑑み、コリメートレンズと線集光レンズとを複合させ部品点数を減らし部品コストを削減すること、および部品点数削減により組立コスト削減することにより大幅なコストダウン行なうための複合機能レンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のレンズは、単レンズにより、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、従来2点あった部品点数を1点に削減することにより、部品コストおよび組立コストの両面からコストダウンを実現する。
【0007】
請求項1に記載の複合機能レンズは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合レンズである。
【0008】
ここで、「光線波面」、「光線波面の少なくとも一方向」および「光線波面における前記方向と垂直な方向」に関して説明する。図1では、光軸、すなわち光線の進む方向をZ軸とした軸設定をしている。光線波面は、光軸に垂直な面であることから、図1における、XY平面で規定される。この場合、光線波面の少なくとも一方向とは、XY平面内の任意の方向で設定できる。集光される方向をX軸方向とした場合、コリメート化される方向は集光される方向と垂直な方向であるY軸方向となる。
【0009】
請求項2に記載の複合機能レンズは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、前記一方向集光機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほぼ全部が前記コリメート機能を有する部分を通過し、前記コリメート機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほとんど全部が前記集光機能を有する部分を通過する複合機能レンズである。ほとんど全部とは、損失の許容範囲という意味であり、トータル強度90%以上とする。
【0010】
請求項3記載の複合機能レンズは、前記複合機能レンズにおける光線入力面または出力面いずれか一方の面に、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能、および、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。
【0011】
請求項4記載の複合機能レンズは、少なくとも、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能のいずれかの機能がGRINレンズを用いた請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。「GRINレンズ」は一般的なGRaded INdexレンズであり、屈折率が面内で均一ではなく分布を持っているレンズのことをいう。
【0012】
請求項5記載の複合機能レンズは、平凸コリメートレンズと平凸線集光レンズの互いの平面部を貼り合わせて一体形成された請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズである。
【0013】
請求項6に記載の光コンポーネントは、透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含むこ光コンポーネントである。本明細書で「機能性光素子」とは光が素子を通過する際に偏光、波長、強度、方向等、特性に変化を与え、さらに電界、電流、磁界、光などの外部信号により前記変化の大きさを可変する素子のことをいう。又、「集光点付近」とは複合機能レンズの集光位置を中心とした、複合機能レンズから集光位置までの距離の±30%以内の範囲とする。
【0014】
請求項7に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含む請求項6に記載の光コンポーネントである。
【0015】
請求項8に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子と前記反射素子が一体化している請求項7に記載の光コンポーネントである。一体化とは、密着している状態であり、機能性素子の一面に形成された反射膜もこの形態に含まれる。
【0016】
請求項9に記載の光コンポーネントは、前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子である請求項6から8のいずれかに記載の光コンポーネントである。本明細書で「偏光可変素子」とは光が素子を通過する際に偏光状態に変化を与え、さらに電界、電流、磁界、光などの外部信号により前記変化の大きさを可変する素子のことをいう。
【0017】
請求項10に記載の光コンポーネントは、前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子である請求項9に記載の光コンポーネントである。本明細書で「電気光学素子」とは電圧を印可することにより、通過する光の偏光の変化を可変する素子のことをいう。
【0018】
請求項11に記載の光デバイスは、過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含む光コンポーネントと、入力ファイバと、入力光の偏光特性に変化を与える少なくともひとつの偏光素子とを含む光デバイスである。本明細書では、偏光素子とは、入力光の偏光状態を変える波長板、または、特定の偏光のみを透過する偏光子、または、入力光を直交する2本の光線に分離する偏光分離素子など、入力光の偏光状態に変化を与える素子のことをいう。
【0019】
請求項12に記載の光デバイスは、前記偏光素子が偏光分離素子である請求項10に記載の光デバイスである。本明細書で「偏光分離素子」とは偏光が直交する二つの光線に分離する素子のことをいう。
【0020】
請求項13に記載の光デバイスは、前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含む請求項11または請求項12のいずれかに記載の光デバイスである。
【0021】
請求項14に記載の光デバイスは、前記機能性光素子と前記反射素子が一体化している請求項13に記載の光デバイスである。
【0022】
請求項15に記載の光デバイスは、前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子である請求項11から請求項14のいずれかに記載の光デバイスである。
【0023】
請求項16に記載の光デバイスは、前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子である請求項15に記載の光デバイスである。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、複合機能レンズを用いることにより、部品点数を減らし部品コストを削減すること、および部品点数削減により組立コスト削減することにより大幅なコストダウンを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
【0026】
図2は、本発明にかかる第一の実施形態を示す構成図である。図2上図は複合レンズを上面から見た断面図であり、図2下図は側面から見た断面図である。上図のY−Z断面図でのレンズ形状は左側から入射された光をコリメートにし出射するレンズ形状をしている。下図のX−Z断面図でのレンズ形状は左側から入射される光を集光し出射するレンズ形状をしている。Y−Z断面でのレンズ半径が2[mm]、X−Z断面のレンズ半径を0.85[mm]とすることにより、Y−Z断面では焦点距離4mmのコリメートレンズ、X−Z断面では1:1の共焦点レンズを併せ持つ複合レンズとして実現可能である。
【0027】
図3,図4は、本発明にかかる第二の実施形態を示す構成図である。図3は複合レンズを上面から見た断面図であり、図4は側面から見た断面図である。コリメート機能を実現する平凸コリメートレンズと、光線波面の一方向を集光する集光機能を実現する平凸集光レンズの互いの平面を貼り合わせることにより、構成されている。透過光線は、本実施例のレンズを透過することにより、前記コリメート機能と前記一方向を集光する機能を付与される必要があるため、平凸コリメートレンズと平凸集光レンズの有効エリアはほぼ一致していることが求められる。本実施例は、2つのレンズの貼り合わせにより形成しているが、一つの母材を成形や研磨により作製することも可能である。
【0028】
また、上記第一の実施例および第二実施例では、界面での屈折を利用した成形レンズで形成されているが、これらの成形レンズをGRINレンズでも置き換えることは可能である。
【0029】
図5、図6は、本発明にかかる第三の実施形態を示す構成図である。第一の実施形態、または、第二の実施形態である複合レンズに、一対の電極82に挟まれたPLZTから形成される機能性光素子を組み合わせた構成で、出力光の偏光状態を電極82に印加する電圧により可変する光コンポーネントである。図5は光コンポーネントを上面から見た断面図であり、図6は側面から見た断面図である。
【0030】
図6に示すように、PLZT素子8の最小電極間部分に反射膜9を形成し、反射膜と複合レンズ4の集光点とを一致させる配置としている。電極間距離が小さいほど、効率的に電界を印加できるため、複合レンズの集光点付近にPLZT素子8を配置する構造により、低電圧化が実現されている。
【0031】
一方で、図5で示すYZ方向では、コリメート状態で反射されている。従って、反射光が再び複合レンズ4を透過しても、反射角度を選ぶことにより、入力と異なる光路を選択することができる。後述のような、光ファイバインターフェイスの光デバイスを形成する場合、入力と出力の位置がずれることにより、入出力で別々の光ファイバを使用できるようになる。入出力を同一のファイバにする場合、入出力光を分離するための光デバイスが必要となるため、入出力で別々の光ファイバとすることはコストダウン効果となる。
【0032】
次に、第三の実施形態における動作原理について説明する。
【0033】
PLZTは、電圧印加方向とそれと垂直な方向で位相差が生じることにより偏光を可変する機能を持たせることができる。位相差は少なくとも0°から180°まで変化することが必要となるため、できるだけ電気光学効果の大きいことが好ましい。
[化1](Pb1−x,Lax)(Zry,Tiz)1−x/4O3で表記されるPLZTの組成のうち、(x、y、z)=(9,65,35)程度が適した組成となる。
【0034】
入力光線波長をλ、印加電圧をV、PLZTの屈折率をn、PLZTのカー定数をR、電極間距離をd、PLZT素子長をLとすると、PLZT素子透過前後における電界と平行な偏光成分、それと垂直な偏光成分間の位相差は下記のように表すことができる。
【数1】
λ=1.55μm、n=2.5、R=8×10−16(m/V)2、電極間距離広口部d1を60μm、狭口部d2を30μmとし、PLZT素子長Lを1mmとした場合の、電界と平行な偏光成分、それと垂直な偏光成分間の位相差と印加電圧の関係を図7に示す。位相差が180°となる半波長電圧は、16V程度となる。
【0035】
図8、図9は、本発明にかかる第四の実施形態を示す構成図である。図8はデバイスを上面から見た断面図であり、図9は側面から見た断面図である。本実施形態は、出力光強度を印加電圧の大きさにより可変する光デバイスである。2芯フェルール3で固定された入力ファイバ1および出力ファイバ2、コリメートレンズ及び一方向のみを集光する集光レンズの二つの機能を有する複合機能レンズ4、偏光分離素子として機能するくさび型複屈折性結晶素子5、一対の電極82に挟まれたPLZT81で構成され、偏光可変素子として機能する電気光学素子8、PLZTに蒸着された反射素子として機能する全反射膜9から構成されている。くさび型複屈折性結晶素子5材料としてはルチルを使用しているが、同様の機能を有する素子であれば材料は限定しない。本実施例では、偏光可変素子として、一対の電極82に挟まれたPLZT81を使用しているが、偏光を可変できる素子であればPLZTや電気光学素子に限定されるものではない。また、使用している複合機能レンズの入射面、出射面形状は平面、球面、非球面などが考えられ、GRINレンズでも置き換えることは可能である。
【0036】
次に、上記の第四の実施形態における、入力ファイバ1から出力ファイバ2に至る光路および透過光強度可変の原理について説明する。入力ファイバ1を出射した光線は、複合機能レンズ4により図8におけるY方向がコリメート光になり、図9におけるX方向は集光された光となる。この光はくさび型複屈折性結晶素子5に入射して、X方向に対し45°回転した直線偏光A(常光)と直線偏光Aに対して直交している直線偏光B(異常光)に偏光分離される。
偏光分離された2本の直線A,Bは電極82に挟まれたPLZT81で構成される電気光学素子8に入射する。電気光学素子8は一面に反射防止膜(ARコート)を施し、その反対の面に高反射膜(HRコート)を施す。従って、ARコート面から電気光学素子8に入力した光線はHRコート面9で反射されて、電気光学素子8を往復して、再びARコート面から出射する。なお、HRコートの代わりにARコートを施し、別体のHR素子を直近に配置してもよい。電気光学素子8を出射した2本の光線は電気光学素子8に印加する電圧に応じて、偏光状態を変化させる。2本の光線はくさび型複屈折性結晶素子5を再び透過することにより、くさび型複屈折性結晶素子5における光線Aの中の異常光成分(A1)および光線Bの中の常光成分(B2)が再度、複合機能レンズ4により出射光ファイバに結合するよう集光される。
【0037】
次に、図10を用いて、半波長電圧を印加した場合の光線の偏光状態の挙動について説明する。くさび型複屈折性結晶素子を透過し偏光分離した直線偏光A、Bは電気光学素子8を往復することによりX方向とY方向の成分が180°の位相差を生じるため、入力時とは90°回転した直線偏光となる。電気光学素子8を出射した光線Aが、くさび型複屈折性結晶素子において異常光屈折を受け(A1)、光線Bは常光屈折を受ける(B2)。複合機能レンズ4と出力光ファイバ2はA1とB2を結合する位置に設置されているため、光線A1、光線B2はいずれも結合する。
【0038】
また次に、図11を用いて、電圧を印加しない時の光線の偏光状態の挙動について説明する。電圧が印加されていない状態では、PLZT81は複屈折性を持たないため、入出力光の偏光状態は変化しない。従って、くさび型複屈折性結晶素子5を透過した光線Aは、くさび型複屈折性結晶素子5において常光屈折を受け(A2)、光線Bは異常光屈折を受ける(B1)。複合機能レンズ4と出力光ファイバ2はA1とB2を結合する位置に設置されているため、光線A2、光線B1はいずれも結合しないOFF状態となる。
【0039】
印加電圧が0Vと半波長電圧の間の場合は、印加電圧に応じて、結合成分である光線A1と非結合成分である光線A2との強度比、および結合成分である光線B2と非結合成分である光線B1との強度比が変化するため、光線の出力ファイバ2への透過量を変えることができる。本実施例の光デバイスに電圧を印加したときの透過光量の変化を図12に示す。半波長電圧において、透過光量は最大となっているため、0〜16Vで電圧を自由に変化することにより本実施例の光デバイスは可変光減衰器として機能させることが可能となる。また、16Vの電圧をON/OFFすることにより、光シャッターとして機能することも可能である。さらには、0〜16Vにおける適当な電圧で、ON/OFFを繰り返し、信号を形成することにより強度変調器として機能させることもできる。
【0040】
また、くさび型複屈折性結晶素子5と電気光学結晶8の間に偏光変換素子7としてλ/4板を挿入し、電気光学結晶に入射前と後で位相差を180°与えることにより0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなるような、電圧−透過光強度特性となる。
【0041】
さらに第五の実施形態を、図13,図14に示す。図13はデバイスを上面から見た断面図であり、図14は側面から見た断面図である。偏光分離を、くさび型複屈折性結晶素子5で行う代わりに、平行平板型複屈折性結晶素子6で行う。平行平板型複屈折性結晶素子6の配置は、くさび型複屈折性結晶素子5の時とは異なり、2芯フェルール3と複合レンズ4の間となる。偏光変換素子7は平行平板型複屈折性結晶素子6と反射膜9の間に挿入する必要があり、第二の実施形態と同様に0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなるような、電圧−透過光強度特性となる。
【0042】
また、さらに第五の実施形態を、図15,図16に示す。図15はデバイスを上面から見た断面図であり、図16は側面から見た断面図である。第一の実施実施形態の2芯フェルールを1芯フェルール11にし、反射膜を無くし左右対称に折り返した構造である。電圧−透過光強度特性は第二の実施形態と同様に0V時に透過光強度が最大となり、電圧印加に従って透過光強度が小さくなる。ここで、くさび型複屈折性結晶素子5と電気光学素子8の間に偏光変換素子7としてλ/4板を挿入すれば、電圧−透過光強度特性は逆となり、0V時に透過光強度が最小、電圧印加に従って透過光強度が大きくなる。
【0043】
また、さらに第六の実施形態を、図17,図18に示す。図17はデバイスを上面から見た断面図であり、図18は側面から見た断面図である。第四の実施実施形態の2芯フェルールを1芯フェルール11にし、反射膜を無くし左右対称に折り返した構造である。電圧−透過光強度特性は第四の実施形態と逆となり0V時に透過光強度が最小となり、電圧印加に従って透過光強度が大きくなる。
【0044】
また、上記第一から第六の実施形態では、複合機能レンズの機能のうちコリメートレンズとして機能する焦点距離は4mm、集光レンズとして機能する線集光レンズの焦点距離は5mmとしている。また、入力ファイバ1、出力ファイバ2はともに、シングルモードファイバとするが、マルチモードファイバや偏波保持ファイバとすることも可能である。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲における変形による実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、可変光減衰器や光シャッター、光変調器が実現できるため、光通信機器として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 光線波面、集光方向の説明面図である。
【図2】 本発明の第一の実施形態としての複合レンズの構成を示す上面図および側面図である。
【図3】 本発明の第二の実施形態としての複合レンズの構成を示す上面図である。
【図4】 本発明の第二の実施形態としての複合レンズの構成を示す側面図である。
【図5】 本発明の第三の実施形態としての光コンポーネントの構成を示す上面図である。
【図6】 本発明の第三の実施形態としての光コンポーネントの構成を示す側面図である。
【図7】 第三の実施形態の光コンポーネントに係る印加電圧(V)に対する位相差(degree)の関係を示す図である。
【図8】 本発明の第四の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図9】 本発明の第四の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図10】 第四の実施形態の光デバイスをONにした場合の、透過する光線の偏光状態を示す原理説明図である。
【図11】 第四の実施形態の光デバイスをOFFにした場合の、透過する光線の偏光状態を示す原理説明図である。
【図12】 第四の実施形態の光デバイスの印加電圧(V)に対する透過強度(dB)を示す図である。
【図13】 本発明の第五の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図14】 本発明の第五の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図15】 本発明の第六の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図16】 本発明の第六の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【図17】 本発明の第七の実施形態としての光デバイスの構成を示す上面図である。
【図18】 本発明の第七の実施形態としての光デバイスの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 入力ファイバ
2 出力ファイバ
3 2芯フェルール
4 複合機能レンズ
5 くさび型複屈折性結晶素子
6 平行平板型複屈折性結晶素子
7 偏光変換素子
8 電気光学素子
81 PLZT
82 電極
9 反射膜
10 電源
11 1芯フェルール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有することを特徴とする複合機能レンズ。
【請求項2】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、前記一方向集光機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほぼ全部が前記コリメート機能を有する部分を通過し、前記コリメート機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほとんど全部が前記集光機能を有する部分を通過することを特徴とする複合機能レンズ。
【請求項3】
光線入力面または出力面いずれか一方の面に、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能、および、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項4】
少なくとも、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能のいずれかの機能がGRINレンズを用いたものであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項5】
平凸コリメートレンズと平凸線集光レンズの互いの平面部を貼り合わせて一体形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項6】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含むことを特徴とする光コンポーネント。
【請求項7】
前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含むことを特徴とする請求項6に記載の光コンポーネント。
【請求項8】
前記機能性光素子と前記反射素子が一体化していることを特徴とする請求項7に記載の光コンポーネント。
【請求項9】
前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子であることを特徴とした請求項6から8のいずれかに記載の光コンポーネント。
【請求項10】
前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子であることを特徴とする請求項9に記載の光コンポーネント。
【請求項11】
過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含む光コンポーネントと、入力ファイバと、入力光の偏光状態に変化を与える少なくともひとつの偏光素子とを含むことを特徴とする光デバイス。
【請求項12】
前記偏光素子が偏光分離素子であることを特徴とする請求項11に記載の光デバイス。
【請求項13】
前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含むことを特徴とする請求項11または請求項12のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項14】
前記機能性光素子と前記反射素子が一体化していることを特徴とする請求項13に記載の光デバイス。
【請求項15】
前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子であることを特徴とした請求項11から請求項14のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項16】
前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子であることを特徴とする請求項15に記載の光デバイス。
【請求項1】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有することを特徴とする複合機能レンズ。
【請求項2】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有し、前記一方向集光機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほぼ全部が前記コリメート機能を有する部分を通過し、前記コリメート機能を有する部分を通過する光の全部あるいはほとんど全部が前記集光機能を有する部分を通過することを特徴とする複合機能レンズ。
【請求項3】
光線入力面または出力面いずれか一方の面に、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能、および、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項4】
少なくとも、前記透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能と、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能のいずれかの機能がGRINレンズを用いたものであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項5】
平凸コリメートレンズと平凸線集光レンズの互いの平面部を貼り合わせて一体形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合機能レンズ。
【請求項6】
透過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含むことを特徴とする光コンポーネント。
【請求項7】
前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含むことを特徴とする請求項6に記載の光コンポーネント。
【請求項8】
前記機能性光素子と前記反射素子が一体化していることを特徴とする請求項7に記載の光コンポーネント。
【請求項9】
前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子であることを特徴とした請求項6から8のいずれかに記載の光コンポーネント。
【請求項10】
前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子であることを特徴とする請求項9に記載の光コンポーネント。
【請求項11】
過光線波面の少なくとも一方向を集光する機能を有し、前記透過光線波面における前記方向と垂直な方向にはコリメート化する機能を有する複合機能レンズと、前記複合機能レンズの集光点付近に設置された機能性光素子とを含む光コンポーネントと、入力ファイバと、入力光の偏光状態に変化を与える少なくともひとつの偏光素子とを含むことを特徴とする光デバイス。
【請求項12】
前記偏光素子が偏光分離素子であることを特徴とする請求項11に記載の光デバイス。
【請求項13】
前記機能性光素子に対して前記複合機能レンズが配置された位置の反対側に配置され、前記機能性光素子を出力した光を反射して再び前記機能性光素子に入力するように設置された反射素子を含むことを特徴とする請求項11または請求項12のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項14】
前記機能性光素子と前記反射素子が一体化していることを特徴とする請求項13に記載の光デバイス。
【請求項15】
前記機能性光素子が透過光線の偏光状態を変化させる偏光可変素子であることを特徴とした請求項11から請求項14のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項16】
前記偏光可変素子が対向する電極に挟まれた電気光学素子であることを特徴とする請求項15に記載の光デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−292965(P2008−292965A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163144(P2007−163144)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】
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