説明

複数片のセラミックスるつぼおよびその製造方法

【課題】半導体結晶の元素の精製、複合化および成長、例えば、高温でシリコン等を溶解する分子線エピタキ法(MBE)において用いる一体もの、複数片のるつぼを提供する。
【解決手段】るつぼは、るつぼを作り上げる複数片を固定して接合する外側の被覆層を有する。本発明は、返り勾配を有する熱分解窒化ホウ素からなる構造を含む一体ものを製造する方法も提供し、前記方法により黒鉛マンドレルの複雑な張出し構造の必要がないようにする、または高温で焼成することにより黒鉛マンドレルの取り外しの必要がないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶の元素の精製、複合化および成長、例えば、分子線エピタキ法(MBE)エフュージョンセルまたは流出材料等に用いられるるつぼに関し、特に、一体ものを形成する複数片よりなるるつぼに関するものである。本発明はるつぼの製造方法および装置も提供する。
【背景技術】
【0002】
熱分解窒化ホウ素(pBN)等のセラミックス材料の構造、物性、純度および化学的不活性により、半導体結晶の元素の精製、複合化および成長のための魅力のある容器材料が作られる。用途および所望のるつぼ容積により、るつぼには、特許文献1に開示される直線壁面の円筒構造、特許文献2に開示される直線壁面ではあるが勾配のある壁面構造、特許文献3に開示される直線壁面に段差またはギザギザ部分を有するもの、または基体部と円錐上部との間に細い首を有する一体ものるつぼに関して特許文献4に開示されるMBEエフュージョンセル用に返り勾配のあるるつぼがあり得る。
【0003】
PBNるつぼは公知のプロセス、すなわち、まず、るつぼの所望の形状を有するマンドレルを作製し、窒化ホウ素の所望の厚さが得られるまで窒化ホウ素をマンドレルに蒸着し、最後に、マンドレルから窒化ホウ素るつぼを取り出すことにより製造される。マンドレル用材料として黒鉛が用いられるのが一般的である。直線または勾配のある壁面(下より上が大きい)を有するるつぼに関しては、熱収縮係数により黒鉛がpBNより高率で収縮するので、黒鉛マンドレルが比較的容易に滑り落ち、pBNるつぼはマンドレルから取り外すことができる。しかしながら、ギザギザのある、または曲線部、例えば、るつぼ壁面に細い部分を有するるつぼに関しては、マンドレルの上部を取り出すためには、特許文献5に開示される粉々に砕ける特殊なマンドレルを設計する必要がある。下部に関しては、るつぼを300乃至750℃で40時間加熱する追加プロセス工程によりマンドレルの下部を酸化し、黒鉛マンドレルの下部を壊して、一体もの、単一のpBNるつぼを生産する。
【0004】
本発明は、一体ものを形成する複数片からなるセラミックるつぼに関し、るつぼから複雑な黒鉛マンドレルを壊して取り出すための加熱工程を必要としない、複数片から一体ものるつぼを製造する方法に関する。
【特許文献1】米国特許第5,158,750号
【特許文献2】米国特許第5,759,646号
【特許文献3】米国特許第4,946,542号
【特許文献4】米国特許第5,932,294号
【特許文献5】米国特許第5,827,371号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
分子線エピタキ法(MBE)エフュージョンセル用途に使用できる一体もの窒化ホウ素るつぼの開発が行なわれた。るつぼは、その円周部分の周りで接合される少なくとも二つの部品でできており、熱分解窒化ホウ素または熱分解黒鉛からなる少なくとも一つの被覆層により接合部が密閉される。一実施形態では、被覆層はパターン化されて所定の形状を形成し、前記層にはるつぼの加熱に適用される直流または交流電流を受け入れる少なくとも一つの電極を形成する少なくとも二つの別々の端部が設けられる。
【0006】
本発明は、さらに、a)るつぼの少なくとも二つの部品を形成するために少なくとも二つの異なるマンドレルの表面に熱分解窒化ホウ素(pBN)を蒸着する工程と、b)pBN部品からマンドレルを取り出す工程と、c)一体ものるつぼを形成する円周部分の周りで部品を接合する工程と、d)二つの部品を密閉するために接合部の表面に熱分解窒化ホウ素または熱分解黒鉛よりなる被覆層を蒸着する工程からなる、一体ものるつぼの調製方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここで用いられる、概略を示す言葉は、関係する基本性能の変更を招かずに変え得るいかなる定量表現の修飾にも適用し得る。従って、”約”および”ほぼ”等の単数または複数の用語で修飾される値は特定の厳密な値に限定し得ないこともある。
【0008】
ここで用いられる、”るつぼ”という用語は、半導体結晶の元素の精製、複合化および成長、ならびに分子線エピタキ法(MBE)による金属およびドーパントの蒸着に用いる”器”または”容器”と同じ意味で用い得る。”複数片”という用語は、”複数部”または”複数部品”と同じ意味で用い得、本発明の一体もの(または上下続きのもの、単一体)るつぼをなす複数片を言う。
【0009】
製造プロセスの説明および図を参照して、本発明のるつぼの実施形態を以下に示す。
【0010】
るつぼの実施形態
図1Aに別々の2片からなる本発明のるつぼ10の実施形態を示す。第1片は、側壁面13を備えたほぼ円筒形状、側壁面13の一端にある閉鎖端の下部14、および円周部分51を持つ開放上部を備えた基体部12である。第2片は、円周部分41を持つ開放下部、勾配壁面の先端に外側に広がる環状リップ16を接続した返り勾配壁面15を有する円周部分を持つ開放上部またはオリフィス40を有する上部11である。一つの実施形態では、勾配壁面15は、外側に広がる環状リップ16と角度45°を形成する。
【0011】
一実施形態では、上部および下部の円周部分41および51はそれぞれ僅かに異なる直径または大きさのものであり、二つの部品が円周部分の周りでお互いに重なり合う、すなわち、円周部分41を持つ上部が円周部分51を持つ下部と図の線A−A‘まで重なり合う。別の実施形態(図示せず)では、逆のことが起こり、上部の下の部分が下部に入り込む、すなわち、下部が上部の下の部分に重なり合う。さらに、別の実施形態(図示せず)では、上部および下部の二つは大きさまたは直径がほぼ等しく、上部および下部が円周部分の周りでお互いに当接する。
【0012】
単一片の一体ものるつぼを形成するためには、熱分解黒鉛または熱分解窒化ホウ素からなるオーバーコート層が密閉のために重なり合う(または当接する)上部および下部にわたって形成され、接続部のいかなる隙間または開口部をも覆い、さらにるつぼの支えおよび構造の一体化をなす。本発明の一実施形態では、オーバーコート層は、るつぼの部分的な長さ部分(線B−B‘で定義される)に関しるつぼ本体の一部のみを覆う。
【0013】
図1Bに示す一実施形態では、上部および下部はほぼ同じ円周部分のものであり、円周部分41および51の周りでお互いに当接する位置にある。しかしながら、上部11および下部12の両方を重ね合わせるために、るつぼはさらに上部および下部の円周部分より僅かに大きい円周部分61を有する第3部18を含む。中間部18は上部および下部の接続に当り支えおよび構造の一体化をなす。オーバーコート層(図示せず)は、重なり合うまたは当接する部分のどんな隙間または開口部をも覆う。
【0014】
図1A乃至1Bに示す部品11、12および18はそれぞれの各部の縦軸に沿ってほぼ均一な所定の円周部分を有する。一実施形態(図示せず)では、当接または重ね合わせにより他の部品と接続するオリフィスにおける円周部分は、他の部品の円周部分よりも僅かに小さくても大きくても良く、部品の重ね合わせ、または他の部品の円周部分への入り込みを可能にする。図1Aに示す実施形態では、円周部分41および線A−A’で定義されるるつぼ部品は、当該部品が部品11の内表面周りにより大きい直径部を有するように、部品11の他部よりも薄肉である。この比較的大きい直径により、円周部分41を円周部分51に重ね合わせ、線AA’までリップまたは重ね合わせ部を形成する。
【0015】
図2Aおよび図2Bに示す一体ものるつぼ20の別の実施形態では、るつぼは一体ものを形成するお互いに接続される三つの部品からなる。基体部22は、側壁面および側壁面の一端にある底を持つほぼ円筒形状を有する。中間部23は部分的に円錐形のものであり、縦軸に関して角度がほぼ45.0度の返り勾配壁面または細い部分を形成する。円錐形の上部21は上方に広がる勾配壁面および環状リップよりなる。一実施形態では、壁面は縦軸から角度が約8乃至15度で外側に(横に)勾配を有する。図2Aに示す一実施形態では、環状リップは直角に外側に広がる。
【0016】
図2Bに示す実施形態では、るつぼ20には部品21、22および23の接合部間のいかなる隙間/開口部をも覆うために部分的なオーバーコート層25が設けられる。前記部分的なオーバーコート層はるつぼの支え/構造の一体化をなす。本発明の別の実施形態(図示せず)では、るつぼ20の外側がるつぼ20の構成材料と同じか異なる材料からなるオーバーコート層で完全に被覆される。
【0017】
図3に第III−V族または第II−VI族の半導体化合物の大きい単結晶の成長に使用できるるつぼ30を示す。複数部のるつぼ(最終的には一体もの形状のもの)は、るつぼの内表面の周り上部31またはその近傍で、単結晶が成長する直径がより大きい部分からなる。一実施形態における直径のより大きい部分は環状の”膨らみ”部33である。溶融した半導体材料が凝固する場合の操作において、凝固した半導体結晶の膨らみ部33により、溶融した封止材料が半導体結晶とるつぼ間に流れるのを防ぐ。図示の一体ものるつぼ30を形成するためには、膨らみ部33が上部31および下部32を接続し、オーバーコート層(図示せず)が完全にるつぼ外面を覆うか、るつぼの表面ならびに部品31、33および32の接続部の周りを部分的に覆う。オーバーコート層は複数部間のいかなる隙間をも密閉し、るつぼに対し構造の一体化をなす。
【0018】
以下、るつぼを製造する実施形態および実施例により、本発明の複数片のるつぼをさらに詳細に説明する。
【0019】
るつぼ製造方法
一実施形態および第一の工程では、上記るつぼ部品が熱分解窒化ホウ素(pBN)を構成材料として化学蒸着法(CVD)により作られる。しかしながら、この方法においては化学蒸着法により他の材料とるつぼ部品を作る他の化学品と一緒に用いても良い。
【0020】
るつぼ部品を作るためには、所望のるつぼ部品と同じ形状を有するマンドレルに窒化ホウ素が蒸着される。一実施形態では、使用されるマンドレルは、窒化ホウ素を使用する温度で溶解せず、当該温度でハロゲン化ホウ素およびアンモニアに不活性であるように黒鉛でできている。まず、マンドレルが真空蒸着炉/室内に取り付けられる。るつぼの各種部品を形成するために、複数のマンドレルを同時に炉内に取り付けることができる。炉が所望の温度に加熱された後、アンモニアおよび三塩化ホウ素等のハロゲン化ホウ素ガスが反応器に導入される。アンモニアとハロゲン化ホウ素との反応、およびこの反応により生産される窒化ホウ素の蒸着は、温度1450乃至2300℃および圧力ミリメートル未満で行われるのが一般的であることから、反応器はこの範囲内に維持される。実施形態では、反応器の温度は約1800乃至2000℃に維持される。さらに、別の実施形態では、反応器温度は1900℃に維持される。
【0021】
次工程では、反応物が反応器に気相で導入される。一実施形態では、ハロゲン化ホウ素1モル当たり、少なくとも1モルのアンモニアが使用される。第二の実施形態では、ハロゲン化ホウ素1モル当たり、2.5乃至3.5モルのアンモニアが使用される。反応器に流す反応物の流量は、反応器の特定の設計ならびに窒化ホウ素が蒸着されるマンドレルの大きさおよび形状に依存する。一実施形態では、流量は、炉の容積1.5乃至2.5cm当り、ハロゲン化ホウ素0.2乃至0.3cm/hourに設定される。第二の実施形態では、所望の流量を得るために不活性ガスが反応物ガスに混合される。
【0022】
一実施形態では、米国特許第3,986,822号に記載の多層のpBNからなるるつぼ部品が形成される。具体的には、まず、適当厚さの窒化ホウ素の第一層が生産されるまで、温度約1850乃至2300℃において所望のるつぼ部品の形状を有するマンドレルにpBNを蒸着することによりるつぼ部品が生産される。マンドレルへの窒化ホウ素の蒸着を中断し、温度を1750℃以下に下げ、その後、温度約1850乃至2300℃でBNの追加層が蒸着され、内側の第一層よりも肉厚の窒化ホウ素の外側の第二層を生産する。
【0023】
るつぼ部品の厚さは所望の最終るつぼの大きさに多少依存して変わる。一実施形態では、BNるつぼ壁面は厚さ0.03cm乃至0.23cmである。第二の実施形態では、BNるつぼ壁面は、内径2.5乃至7.6cmのるつぼに対し厚さ0.05乃至0.076cmである。第三の実施形態では、BNるつぼ壁面は厚さ0.05cm乃至0.15cmである。多層または多重壁るつぼに対しては、一実施形態では、るつぼの内壁面の厚さは外壁面の厚さの約50乃至75%である。
【0024】
適当時間後、つまり、マンドレルに所望の量/厚さの窒化ホウ素が蒸着された後、反応器中への反応物の流入を中断し、反応器を室温まで冷却する。その後、pBN部品をマンドレルから取り外しできる。必要な場合には、その部品は所望の長さ部分に切断し洗浄することができる。一実施形態では、るつぼ部品の円周(又はリップ)部分(別のるつぼ部の円周部分と連結される)は、るつぼの他の部分の円周部分内に配置されるか当接する前に、粗面化のためにサンドブラスト等の適切な方法で粗くされる。
【0025】
るつぼ部品の形成/仕上げ後、るつぼ部品は一緒に組み立てられてるつぼを形成する。複数部のるつぼの一実施形態では、上部は堅固な接合部を形成する第二の下部に当接して置かれる。第二の実施形態では、重ね合わせ長さ部分またはリップ0.25乃至1cmで上部が下部に入り込む。第三の実施形態では、上部は下部の外側に配置され、長さ部分0.25乃至1cmで下部に重ね合わせる。
【0026】
一実施形態では、二つの円周部分41および51の間および接合部において隙間の平均が0.254cm未満で重ね合わせがぴったりであるか余裕がない。第二の実施形態では、二つの部品の隙間の平均は0.0254cm未満である。第三の実施形態では、二つの円周部分の隙間の平均は0.0051cm乃至0.0102cmである。第四の実施形態では、重ね合わせ部の隙間の平均は0.005cm未満である。
【0027】
るつぼ部品が接合され、”単一”るつぼを形成した後に、るつぼの外表面の被覆層のためにるつぼ組立品が真空蒸着炉/室内に取り付けられる。被覆層は部品の隙間/接続部を密閉するために覆い、このようにして部品を固定し接合する。ここで用いる、”密閉”は、少なくとも連続して8時間にわたりるつぼが溶融金属に晒された後に、るつぼ部品の接合部には目に見える漏れ/欠陥がないことを意味する。
【0028】
一実施形態では、るつぼは、炭素質材料、耐火金属または熱分解窒化ホウ素、熱分解黒鉛、炭化ケイ素等のセラミックス材料、白金等からなる少なくとも1つの被覆層で被覆される。複数部の接続部を覆う被覆層の選択は、るつぼの最終的な用途に依存する。ガリウムおよびヒ素はPBN自身との反応性はないが、シリコンについては、るつぼ中でシリコンを溶解して真空蒸着が行われる場合に、蒸着フィルム中で窒化物に変わり得る。一実施形態では、被覆物は、熱分解窒化ホウ素または黒鉛等、分子線エピタキシ操作において用いられるように、シリコン等の材料の溶融物とほとんどまたは全く反応性のない不活性材料である。
【0029】
一実施形態では、被覆層はるつぼの全外表面を覆うオーバーコートである。別の実施形態では、オーバーコート層はるつぼの長さ部分の1/8未満の長さで別々のるつぼ部品間の接続部を覆う。第二の実施形態では、オーバーコート層は部品の接続部を覆い、さらにるつぼの長さ部分の1/4まで接続部の両側を覆う。第三の実施形態では、るつぼが一体ものの外観を有するようにオーバーコート層がるつぼの全外表面を覆う。第四の実施形態では、オーバーコート層は接合部の接続部を含むるつぼの外表面の少なくとも10%を覆う。第五の実施形態では、オーバーコート層はるつぼの外表面の少なくとも25%を覆う。
【0030】
一実施形態では、被覆層は厚さ0.005mm乃至0.025mmである。第二の実施形態では、厚さ0.015mm乃至0.020mmである。
【0031】
一実施形態では、黒鉛からなる部分または全面被覆層がるつぼ本体の外表面に設けられる。熱分解黒鉛(“PG”)は、るつぼ表面に熱分解黒鉛を蒸着するようにガス状炭化水素化合物の熱分解反応を行ない形成することができる。一実施形態では、まず、表面に平均表面粗さ2μmを付与するようにるつぼ表面全体(または被覆すべき表面)に対しサンドブラスト処理を行うことにより、PG被覆物が形成される。次に、PBN基体のこのような粗面に圧力5Torr、温度1650℃においてメタンの熱分解反応を行なうことにより、厚さ0.005mm乃至0.025mmの熱分解黒鉛(PG)の保護被膜層が形成される。PG被覆物はるつぼの表面を保護し、るつぼの連結部のいかなる隙間をも充填する/覆う。
【0032】
一実施形態では、pG被覆物はRF電流を受け入れる被覆物として使用することができるので、るつぼが加熱される。また、別の実施形態では、少なくとも一部の熱分解黒鉛被覆層(接合領域以外)が、反対側に末端を有する熱分解黒鉛の細長い連続条片の形で抵抗発熱体または電流路を形成するように、少なくとも一つのヒーターパターンの形状、例えば、渦巻き、曲がりくねった形状、螺線形、ジグザグ、連続的な迷路、螺旋状に巻かれたパターン、ぐるぐる巻き、ランダムなものまたはその組み合わせにパターン化され、直流または交流電流がヒーターパターンを通して送られ、るつぼを加熱する。実施形態では、pG被覆層はpG被覆層のないるつぼに比較して最大20%速くるつぼの被覆を容易にする役割を果たす。
【0033】
また、別の実施形態では、密閉または密封のために部品の連結部を覆うオーバーコート(または部分被覆)層に代わりまたはそれに加えて、るつぼには少なくとも部分的にるつぼの内表面を被覆する層が設けられ、るつぼ部品の接合部を密閉する。実施形態では、熱分解黒鉛の外側の被覆層に加えて内側の被覆層が設けられる。別の実施形態では、内側の被覆層(ひいては、pBNるつぼ壁面へのアンダーコート物)がるつぼの上部に設けられ、リップから下方に広がりるつぼの長さ部分の10乃至80%のいずれかを覆う。
【0034】
本発明の複数片のるつぼの用途
組立品がオーバーコート(または部分的なオーバーコート)層により一体ものるつぼを形成した後、るつぼは先行技術の一体のるつぼに適合するあらゆる用途に使用することができる。実施例には、GaAsならびに他の第III−V族および第II−VI族化合物の単結晶の液体封止チョクラルスキー法(LEC)および垂直温度勾配凝固(VGF)成長法用の容器、および分子線エピタキシ法(MBE)による高温および超高真空下での金属およびドーパントの蒸着用原料容器を含む。分子線エピタキ法の機器は、本質的には、セラミックるつぼ内の元素または化合物の蒸着によりアルミニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム等の各種元素または化合物のエピタキシャル層により半導体基板の被覆が行われる真空炉である。
【0035】
返り勾配部を有する一体ものるつぼの実施形態では、るつぼはMBE用エフュージョンセルるつぼとして用いられる。
【0036】
<<実施例>>
本発明を明らかにするために実施例をここで説明するが、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例1】
【0037】
るつぼの上部および下部を形成する中子型の存在下で、熱分解プロセスがアンモニアおよび三フッ化ホウ素の容量比3:1の混合気体を用いてCVD室内で行なわれる。厚さ1mmのPBN層を中子型の表面に形成するために、CVD法が圧力2Torr、温度1900℃で行なわれる。前記型が取り外され、図1Aに示す二つのるつぼ部品、上部および下部を形成する。上部は下部の上端にあり、一体ものを形成する。次に、pBNの二つの部品の接合部を覆うために、組み立てられたるつぼが厚さ0.50mmの熱分解黒鉛層で被覆される。
【0038】
このようにして得られた表面を密閉したPBNるつぼは、アルミニウムがるつぼ容積の30%まで投入された器として試験使用に供される。試験では、液状のアルミニウム(Al)のるつぼの上端へのオーバーフロー/漏れおよびそれによるMBE反応室の汚染を防止するために、るつぼ温度を1200℃まで慎重に上げる。この温度は、多数のAl蒸着用途の通常の操作温度、すなわち1450℃、より低い。図4は本発明のるつぼが受ける加熱サイクルを示す略図である。実験/加熱サイクル期間中、接合領域からAlの漏れは観察されない。
【0039】
最良の形態を含んで本発明を開示し、いかなる当業者でも本発明を行い使用できるようにするためにも、ここに記載した説明では実施例を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Aは、本発明に係る、上部および下部を有する複数片のるつぼの実施形態の断面図である。Bは、上片、下片および上部と下部との接合部のための中間片の3片を有する一体ものを形成する複数片のるつぼの第二の実施形態の断面図である。
【図2】Aは、本発明の複数片のるつぼの第二の実施形態の断面図である。Bは、Aの複数片のるつぼの斜視図である。
【図3】本発明の複数片のるつぼの別の実施形態の断面図である。
【図4】溶融アルミニウムが投入されている間のるつぼの実施形態の加熱サイクルを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 … るつぼ
12 … 基体部
13 … 側壁面
14 … 閉鎖端の下部
16 … 環状リップ
25 … オーバーコート層
41、51,61 … 円周部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料の結晶を製造するためのるつぼにおいて、
閉鎖端、開放端、開放端から閉鎖端に及ぶ長さ部分と、
開放端から閉鎖端に及ぶ長さ部分間にわたる円周部分と、
内表面および外表面と、を有し、
このるつぼは、接合部を形成する円周部分で接合される少なくとも二つの部品、基体部および上部を含み、
接合部を密閉して部品を固定し接合するために少なくとも内表面の一部または外表面の一部に被覆層が設けられることを特徴とするるつぼ。
【請求項2】
請求項1記載のるつぼにおいて、
前記少なくとも二つの部品の各々は、二つの部品が接合部でお互いに当接する円周部分が等しいものであることからなるるつぼ。
【請求項3】
請求項1記載のるつぼにおいて、
前記少なくとも二つの部品の各々は、二つの部品が接合部でお互いに重なり合う円周部分が異なるものであることからなるるつぼ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、熱分解窒化ホウ素または熱分解黒鉛からなるるつぼ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、るつぼの外表面を覆い、少なくとも二つの部品の接合部を密閉する厚さ0.005mm乃至0.025mmの熱分解黒鉛からなるるつぼ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、るつぼの外表面全体を被覆することからなるるつぼ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、るつぼの少なくとも二つの部品の接合部およびるつぼの少なくとも一部の外表面を被覆することからなるるつぼ。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記少なくとも二つの部品は、不活性、耐食性および半導体材料の結晶を製造する工程において熱安定性のある材料でできていることからなるるつぼ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記少なくとも二つの部品は、熱分解窒化ホウ素でできていることからなるるつぼ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、RF信号の受信に用いられ、熱分解黒鉛被覆層を有しないるつぼに比べて少なくとも10%は少ない時間で、少なくとも温度1450℃までるつぼを加熱する熱分解黒鉛の連続表面からなるるつぼ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のるつぼにおいて、
前記被覆層は、パターン化されて所定の形状を形成し、前記層にはるつぼの加熱に適用される直流または交流電流を受け入れる少なくとも一つの電極を形成する少なくとも二つの別々の端部を設けることからなるるつぼ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のるつぼにおいて、
基体部がほぼ円筒形であり、上部がほぼ円錐形であることからなるるつぼ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載のるつぼにおいて、
厚さ0.03cm乃至0.23cmのほぼ均一な肉厚を有することからなるるつぼ。
【請求項14】
少なくとも二つの部品から一体ものるつぼを作製する方法において、前記方法は:
化学気相蒸着により窒素源ガスおよびホウ素源ガスの混合気体から熱分解窒化ホウ素を、るつぼの少なくとも二つの部品の内側の空洞部に合致する外形を有する少なくとも二つの異なる黒鉛マンドレルの表面に蒸着する工程と;
黒鉛マンドレルを取り外して各々が円周部分を有する熱分解窒化ホウ素からなる少なくとも二つの部品を形成する工程と;
外表面を有するるつぼを形成する円周部分の周りで少なくとも二つの部品を接合する工程と;
化学気相蒸着により二つの部品の接合部を密閉するための接合部の表面に被覆層を蒸着する工程と、
からなる方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、熱分解黒鉛被覆層は、化学気相蒸着によりガス状炭化水素化合物から二つの部品の接合部を密閉するための少なくとも二つの部品の接合部の表面に蒸着されることからなる方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、熱分解窒化ホウ素被覆層は、化学気相蒸着により二つの部品の接合部を密閉するための少なくとも二つの部品の接合部の表面に蒸着されることからなる方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、さらに、熱分解黒鉛被覆層をパターン化して所定の形状を形成する工程と、るつぼの加熱に適用される直流または交流電流を受け入れる少なくとも一つの電極を形成する少なくとも二つの別々の端部を、パターン化された熱分解黒鉛層に設ける工程からなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−1587(P2008−1587A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−320937(P2006−320937)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】