説明

覚醒度判定装置

【課題】覚醒度の誤判定を防止して判定精度の向上を図った覚醒度判定装置を提供する。
【解決手段】車両の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得し、取得された周辺環境情報に基づいて、覚醒度判定の基準となるまぶたの基準開度を補正する。このように、車両の周辺環境に応じて基準開度を補正することで、運転者が注視して、覚醒度が高いにも関わらず目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、覚醒度を推定する技術では、まぶたの動きや開眼時間等が推定の重要な要素となっている。例えば特許文献1に記載の眼の状態検出装置は、予め設定された目の開度の基準値と撮像された顔画像の目の開度とを比較して開眼状態を判定している。また、運転者の眼の回りの濃度情報から、運転者が眩しさを感じて目を細めていると推定された場合には、開度の基準値を変更し、開眼状態を判定している。
【特許文献1】特開2000−198369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の従来技術では、例えば視界不良時において運転者が注視して無意識に目を細めた場合には、運転者の覚醒度が低いと誤判定してしまうおそれがあり、判定精度の向上が求められている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、覚醒度の誤判定を防止して判定精度の向上を図った覚醒度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による覚醒度判定装置は、乗物の運転を行う運転者のまぶた開度を検出し、検出されたまぶた開度と基準開度とを比較して、運転者の覚醒度を判定する覚醒度判定装置において、乗物の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得手段と、取得された周辺環境情報に基づいて、基準開度を補正する基準開度補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
このような覚醒度判定装置によれば、乗物の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得し、取得された周辺環境情報に基づいて、覚醒度判定の基準となるまぶたの基準開度を補正することができる。このように、乗物の周辺環境に応じて基準開度を補正することで、運転者が注視して、覚醒度が高いにも関わらず目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することが防止される。
【0007】
また、周辺環境情報取得手段は、周辺環境情報として、乗物の周辺の気象情報を取得することが好ましい。これにより、降雨・濃霧といった気象情報に基づいて基準開度を補正することで、運転者が降雨・濃霧により注視して目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することが防止される。
【0008】
また、基準開度補正手段は、周辺環境情報に基づいて、運転者の視界を判定し、運転者の視界が狭い場合に、視界が広い場合と比較して、基準開度を小さく補正することが好ましい。これにより、視界不良時に運転者が注視して目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することが防止される。
【0009】
また、周辺環境情報取得手段は、周辺環境情報として乗物の周辺画像を取得する周辺画像取得手段を有し、基準開度補正手段は、取得された周辺画像に基づいて、運転者の視界を判定することが好ましい。これにより、他車両や白線といった乗物の周辺画像に基づいて基準開度を補正することで、運転者が注視して目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することが防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転者が注視して、覚醒度が高いにも関わらず目を細めている場合に、運転者の覚醒度が低いと誤判定することを防止して、判定精度の向上が図られた覚醒度判定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る覚醒度判定装置の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明の実施形態に係る覚醒度判定装置を示すブロック構成図である。
【0012】
図1に示す覚醒度判定装置1は、車両(乗物)に搭載され、運転者のまぶた開度を検出し、検出されたまぶた開度と基準開度とを比較して、運転者の覚醒度を判定するものであり、顔画像撮像カメラ3、顔画像処理ECU5、覚醒度判定ECU7、及び警報装置17を備えている。
【0013】
さらに、覚醒度判定装置1は、ミリ波レーダ15、周辺画像撮像カメラ9、周辺画像処理ECU11、及びインフラ情報取得部13を備え、車両の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得して、取得された周辺環境情報に基づいて、基準開度を補正することができる。そして、これらのミリ波レーダ15、周辺画像撮像カメラ9、周辺画像処理ECU11、及びインフラ情報取得部13が、本発明の周辺環境情報取得手段として機能するものであり、周辺画像撮像カメラ9及び周辺画像処理ECU11が、本発明の周辺画像取得手段として機能するものである。
【0014】
また、顔画像処理ECU5、覚醒度判定ECU7、及び周辺画像処理ECU11は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。これらの各ECU5,7,11は、例えばCAN(Control Area Network)等の通信回路によって接続され、相互にデータ交換が可能とされている。
【0015】
顔画像撮像カメラ3は、例えばコラムカバー上に設置され、運転者の顔画像を取得するものである。顔画像撮像カメラ3は、例えば、近赤外線カメラであり、近赤外線投射装置(不図示)から照射した近赤外線が運転者の顔に反射した反射光を受光することによって、運転者の顔を撮像する。また、顔画像撮像カメラ3は、顔画像処理ECU5と電気的に接続され、取得した画像信号を顔画像処理ECU5に送信する。
【0016】
顔画像処理ECU5は、顔画像撮像カメラ3から入力した画像信号に基づいて、画像処理を行い、運転者の顔画像を認識する。また、顔画像処理ECU5は、認識した顔画像に基づいて、運転者のまぶたの開度(以下、「まぶた開度」という。)を検出する。顔画像処理ECU5は、検出したまぶた開度に関する情報を覚醒度判定ECU7に送信する。
【0017】
ミリ波レーダ15は、ミリ波を利用して自車両周辺の対象物(例えば、他車両)を検出するレーダである。ミリ波レーダ15は、例えば自車両の前面に設けられ、自車両の前方を走行する他車両を検出する。ミリ波レーダ15は、覚醒度判定ECU7と電気的に接続され、他車両の位置情報(方位及び距離に関する情報)及び相対速度に関する情報を覚醒度判定ECU7に送信する。
【0018】
周辺画像撮像カメラ9は、例えば車両の車室前方中央に設置され、フロントガラス越しに自車両前方の周辺画像を取得するものである。周辺画像撮像カメラ9では、例えば、自車両の前方を走行する他車両の画像、自車両が走行する路面の画像を周辺画像として取得する。周辺画像撮像カメラ9は、周辺画像処理ECU11と電気的に接続され、取得した画像信号を周辺画像処理ECU11に送信する。
【0019】
周辺画像処理ECU11では、記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、信号処理部27、及び周辺環境認識部29が構成される。
【0020】
信号処理部27は、周辺画像撮像カメラ9から入力した画像信号に基づいて、画像処理を行い、周辺画像を認識する。周辺環境認識部29は、信号処理部27によって認識された周辺画像に基づいて、周辺環境情報を認識する。具体的には、周辺環境認識部29では、周辺環境情報として、自車両の前方の他車両、自車両が走行する走行レーンの両端を区画する道路区画線(道路に描かれた白線、黄色線や道路上に配置、または埋め込まれたブロック等があるが、以下、「白線」という。)を認識する。また、周辺環境認識部29は、周辺環境情報として、気象情報を認識することができ、例えば、豪雨などの雨天状態、濃霧状態、積雪状態を認識することができる。そして、周辺画像処理ECU11は、認識した周辺環境情報を覚醒度判定ECU7に送信する。
【0021】
インフラ情報取得部13は、気象情報を含む車両周辺の周辺環境情報を取得するものであり、例えば光ビーコンが用いられる。インフラ情報取得部13には、例えば光ビーコンアンテナといったインフラ情報取得アンテナ13Aが接続されている。インフラ情報取得部13は、インフラ情報取得アンテナ13Aによって、例えば交差点の手前の所定位置に設置されている路側通信装置から近赤外線によって気象情報等を受信する。インフラ情報取得部13は、取得した周辺環境情報を覚醒度判定ECU7に送信する。
【0022】
覚醒度判定ECU7では、記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、基準開度設定部19、基準開度補正部21、覚醒度判定部23が構成される。
【0023】
基準開度設定部19は、顔画像処理ECU5において検出されたまぶた開度に基づいて、覚醒度判定の基準となるまぶたの基準開度を設定する。基準開度設定部19は、運転開始時(例えば、イグニッションON時)に撮像された運転者の顔画像から検出されたまぶた開度に基づいて、基準開度を設定する。基準開度の設定の方法としては、例えば一定時間のまぶたの動きを検出し、その検出されたまぶたの動きから統計的に最大開度を算出する。
【0024】
基準開度補正部21は、インフラ情報取得部13及び周辺画像撮像カメラ9によって取得された車両周辺の周辺環境情報に基づいて、基準開度を補正する。基準開度補正部21は、周辺環境情報に基づいて、運転者の視界を推定(判定)し、視界不良環境であるか否かを判定する。基準開度補正部21では、視界不良環境である場合に、基準開度を小さく補正する。
【0025】
基準開度補正部21は、例えばインフラ情報取得部13によって取得された気象情報(例えば大雨、濃霧、積雪等の情報)に基づいて、運転者の視界を推定し、視界不良環境であると判定された場合(視界が狭い場合)に、通常時(視界が広い場合)と比較して、基準開度を小さく補正する。また、基準開度補正部21は、例えばミリ波レーダ15によって検出された他車両が、周辺画像撮像カメラ9によって撮像された画像において認識できない場合、或いは、ナビゲーション情報等により位置が特定されており、本来検出されるべき白線が、周辺画像撮像カメラ9で撮像された画像において認識できない場合に、基準開度を小さく補正する。
【0026】
覚醒度判定部23は、画像処理ECU5によって検出されたまぶた開度に基づいて、まぶた開度値を算出する。覚醒度判定23は、まぶた開度値として、基準開度に対する割合を算出する。また、覚醒度判定部23は、算出されたまぶた開度値に基づいて、運転者の覚醒度を判定する。覚醒度判定部23は、算出されたまぶた開度値が閾値(例えば30%)以下である場合には、運転者の覚醒度が低いと判定する。
【0027】
警報装置17は、覚醒度判定部23によって運転者の覚醒度が低いと判定された場合に、運転者に対して警告を行うものである。警報装置17としては、例えばブサーや振動を用いて警告を行うものが挙げられる。
【0028】
次に、このように構成された覚醒度判定装置1の動作について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る覚醒度判定装置で実行される動作手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、顔画像撮像カメラ3によって、運転者の顔画像の撮影を行う(S1)。撮影された顔画像に関する信号は、顔画像処理ECU5に送信される。続いて、顔画像処理ECU5は、顔画像撮像カメラ3から信号を入力して画像処理を行い、運転者の顔画像を認識する(S2)。そして、顔画像処理ECU5は、顔画像に基づいて、まぶた開度の検出を行う(S3)。検出されたまぶた開度に関する情報は、覚醒度判定ECU7に送信される。
【0030】
次に、覚醒度判定ECU7は、運転開始時(エンジン始動時)であるか否かの判定を行う(S4)。運転開始時であると判定された場合には、ステップ5に進み、運転開始時ではないと判定された場合には、ステップ6に進む。すなわち、運転開始時のみステップ5に進み、それ以降は、ステップ6に進む。
【0031】
ステップ5では、覚醒度判定ECU7が、顔画像処理ECU5からまぶた開度に関する情報を入力して、基準開度の設定を行い、処理を終了する。
【0032】
一方、ステップ6では、覚醒度判定ECU7は、周辺画像撮像カメラ9、インフラ情報取得部13、及びミリ波レーダ15によって取得された周辺環境情報を入力する。
【0033】
続くステップ7では、覚醒度判定ECU7は、入力された周辺環境情報に基づいて、視界不良環境であるか否かの判定を行う。例えば、ミリ波レーダ15によって検出された他車両が、周辺画像から認識されない場合には、視界不良環境と判定する。また、本来検出されるべき白線が、周辺画像から認識されない場合には、視界不良環境と判定する。また、インフラ情報取得部13によって、取得された気象情報に基づいて、視界不良環境であるか否かを判定してもよい。そして、視界が不良であると判定された場合には、ステップ8に進む。一方、視界が不良であると判定されなかった場合には、ステップ9に進む。
【0034】
ステップ8では、覚醒度判定ECU7は基準開度の補正を行う。ここでは、通常時と比較して、基準開度が小さくなるように補正を行う。雨天や積雪時など視界不良環境では、運転者が無意識に前方を凝視して目を細めるため、基準開度を小さくすることで、周辺環境に応じた基準開度の補正を行う。
【0035】
次に、ステップ9では、覚醒度判定ECU7は、顔画像処理ECU5によって検出されたまぶた開度に基づいて、まぶた開度値を算出する。ここでは、まぶた開度と基準開度との比較を行い、基準開度に対するまぶた開度の割合をまぶた開度値として算出する。
【0036】
続く、ステップ10では、覚醒度判定ECU7は、算出されたまぶた開度値に基づいて、覚醒度判定を行う。ここでは、まぶた開度値が判定閾値以下である場合に、覚醒度が低いと判定する。覚醒度が低いと判定された場合には、覚醒度判定ECU7は、警報装置17に信号を送信し、運転者に警告を行う。
【0037】
このような覚醒度判定装置1では、取得された周辺環境情報に基づいて、視界不良環境であるか否かを判定し、視界不良環境であると判定された場合には、車両の周辺環境に応じて基準開度を小さく補正することができる。大雨、積雪、濃霧等の視界不良環境において車両を運転する場合、運転者は、無意識のうちに目を凝らす特性がある。このように、視界不良時に基準開度を通常時より小さく補正することで、運転者が眠気と無関係に目を細めている場合に、覚醒度が低いと誤判定することが防止される。
【0038】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、周辺画像撮像カメラ9、インフラ情報取得部13、及びミリ波レーダ15を備える構成としているが、周辺環境情報取得手段は、少なくとも1つ備えていればよい。また、周辺環境取得手段は、その他のセンサ等でもよく、例えばレインセンサによって取得された降水情報等を含む周辺環境情報に基づいて、基準開度を補正する構成としてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、周辺環境情報に基づいて、視界不良環境であるか否かを判定し、視界不良環境であると判定された場合に、基準開度の補正を行っているが、視界不良環境であるか否かにかかわらず、運転者が注視して目を細めていると判定できる場合に、基準開度の補正を行ってもよい。例えば、周辺環境情報として、先行車の位置情報を取得し、運転者が先行車を注視していると判定できる場合に、基準開度を補正する構成としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、基準開度の設定タイミングを運転開始時としているが、その他のタイミングにおいて基準開度の設定を行ってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、乗物を自動車として説明しているが、例えば船舶、飛行機等その他の乗物でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る覚醒度判定装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る覚醒度判定装置で実行される動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1…覚醒度判定装置、9…周辺画像撮像カメラ(周辺環境情報取得手段、周辺画像取得手段)、13…インフラ情報取得部(周辺環境情報取得手段)、15…ミリ波レーダ(周辺環境情報取得手段)、11…周辺画像処理ECU(周辺環境情報取得手段、周辺画像取得手段)、21…基準開度補正部(基準開度補正手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の運転を行う運転者のまぶた開度を検出し、検出されたまぶた開度と基準開度とを比較して、前記運転者の覚醒度を判定する覚醒度判定装置において、
前記乗物の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得手段と、
取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記基準開度を補正する基準開度補正手段と、
を備えることを特徴とする覚醒度判定装置。
【請求項2】
前記周辺環境情報取得手段は、前記周辺環境情報として、前記乗物の周辺の気象情報を取得することを特徴とする請求項1記載の覚醒度判定装置。
【請求項3】
前記基準開度補正手段は、前記周辺環境情報に基づいて、前記運転者の視界を判定し、前記運転者の視界が狭い場合に、前記視界が広い場合と比較して、前記基準開度を小さく補正することを特徴とする請求項1又は2記載の覚醒度判定装置。
【請求項4】
前記周辺環境情報取得手段は、前記周辺環境情報として前記乗物の周辺画像を取得する周辺画像取得手段を有し、
前記基準開度補正手段は、取得された周辺画像に基づいて、前記運転者の視界を判定することを特徴とする請求項3記載の覚醒度判定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−29537(P2010−29537A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196661(P2008−196661)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】