説明

触媒組成物およびその製造ならびにエチレン性不飽和モノマーからポリマーを製造するための使用

【課題】触媒組成物、およびその製造方法ならびにエチレン性不飽和モノマーからポリマーを製造するための使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1.5オングストロームかつ20オングストローム以下のスルースペース核間距離を有する第一金属原子M、および第二金属原子Mを含む、特定の中性金属対錯体を含む触媒組成物とその製造法が開示される。当該触媒組成物を用いたエチレン性不飽和モノマーの重合法、およびこれにより製造される付加ポリマーも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒組成物および当該触媒組成物の製造法に関する。本発明はさらに、非極性オレフィンモノマー、極性オレフィンモノマー、およびその組み合わせを含むエチレン性不飽和モノマーを触媒組成物の存在下で重合させる方法、およびこれにより製造されるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクリルポリマー市場に関して非極性オレフィンと極性オレフィンの組み合わせからポリマーを製造するためのフリーラジカル開始剤の使用は、ポリマー構造(立体規則性または結晶性、ブロック性、分子量、および分子量分布)の制御をほとんどまたは全く付与せず、従って物質の性能特性の利用可能な範囲が制限される。これらのフリーラジカルプロセスは極端な圧力を必要とするので、高い資本投資と製造費用を必要とし、もちろん安全上の問題が増大する。
【0003】
オレフィンモノマーの重合のための中性の遷移金属触媒の開発は、商業的に重要なShell高級オレフィンプロセス(SHOP)で始まり、これは、1960年代終わりから1970初期までのKeimらの業績が主因である。このプロセスは、通常、洗剤、可塑剤、滑剤および様々なファインケミカルに用いられる直鎖オリゴマーエチレン(C〜C20)を製造するためによく特定された中性ニッケル触媒、例えば触媒Wを利用する。(Keim,W.;Kowalt,F.H.;Goddard,R.;Kruger,C.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1978,17,466)
【0004】
【化1】

【0005】
最近、オレフィンモノマーの重合用中性遷移金属触媒における関心が急速に増大してきているが、これは、この触媒がそのカチオン性対応物よりも、酸素親和性が低く、極性反応メディアおよび極性モノマーに対して潜在的に良好な耐性を有するからである。例えば、触媒Yは、エステル、アルコール、水などの存在下でエチレンを重合させるNi(sal)触媒の代表例である。しかしながら、Ni(sal)触媒を用いて極性モノマー(例えば、メチルアクリレート)およびエチレンを共重合させることを試みた結果、水素がアクリレートから触媒に移動することにより触媒が不活化しただけであった。(Waltman,A.W.;Younkin,T.R.;Grubbs,R.H.Organometallics,2004,23,5121および引例)
【非特許文献1】Keim,W.;Kowalt,F.H.;Goddard,R.;Kruger,C.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1978,17,466
【非特許文献2】Waltman,A.W.;Younkin,T.R.;Grubbs,R.H.Organometallics,2004,23,5121
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは驚くべきことに、新種の中性金属対錯体を含む触媒組成物を見いだした。これらの中性金属対錯体は、エチレン性不飽和モノマーの単独重合および共重合において非常に活性である。本発明の触媒組成物を使用した触媒反応により重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、非極性オレフィンモノマー、極性オレフィンモノマー、およびその組み合わせを包含する。この新種の触媒組成物は、中性金属対錯体を含み、ここにおいて、中性金属対錯体は少なくとも一つの金属原子対を含み、金属原子対のそれぞれの金属は、独立して、4,5、または6の被占配位部位を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも1.5オングストロームかつ20オングストローム以下のスルースペース核間距離を有する第一金属原子M、および第二金属原子Mを含む中性金属対錯体を含む触媒組成物であって;
前記中性金属対錯体が式I:
【0008】
【化2】

【0009】
(式中:
は第一リガンドの組である;
は第二リガンドの組である;
は第三リガンドの組である;
は第一アニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第二アニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第一レイビルリガンドの組である;
は第二レイビルリガンドの組である;
〜Aは配位結合の組である;
a、b、h、k、m、およびpは0および1から選択される;
cは1に等しい;
1≦m+p≦2;
d+f+r+t=4、5、または6;および
e+g+s+u=4、5、または6である;
ここにおいて、
(i)d+f+r+t=4である場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、および3から選択される;fは1、2、3、および4から選択される;
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは、0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦5;1≦r+s≦5;0≦t+u≦5;および2≦f+g≦7;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦6;1≦r+s≦6;0≦t+u≦6;および2≦f+g≦8;または
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9;
(ii)d+f+r+t=5である場合、
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、3、および4から選択される;fは1、2、3、4、および5から選択される;および
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは、0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦6;1≦r+s≦6;0≦t+u≦6;および2≦f+g≦8;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9;または
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦8;1≦r+s≦8;0≦t+u≦8;および2≦f+g≦10;および
(iii)d+f+r+t=6である場合;
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、3、4、および5から選択される;fは1、2、3、4、5、および6から選択される;および
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは、0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦8;1≦r+s≦8;0≦t+u≦8;および2≦f+g≦10;または
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦9;1≦r+s≦9;0≦t+u≦9;および2≦f+g≦11とする)である触媒組成物に関する。
【0010】
本発明のもう一つ別の態様は、中性金属対錯体を製造する方法であって:
(I)式II:
【0011】
【化3】

【0012】
は第一リガンドの組である;
は第一のアニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第一レイビルリガンドの組である;
Xはアニオン性対イオンの組である;
、A、Aは配位結合の組である;
a、h、m、およびiは0および1から選択される;
n=0、1、2、または3;n=0の場合、i=0;n=1、2,または3の場合、i=1;
d+r+t=4、5、または6;
ただし、
(i)d+r+t=4の場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、および4から選択される;
rおよびtは0、1、2、および3から選択される;
(ii)d+r+t=5の場合、
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、4、および5から選択される
rおよびtは0、1、2、3、および4から選択される;または
(iii)d+r+t=6の場合、
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、4、5、および6から選択される;
rおよびtは0、1、2、3、4、および5から選択されるとする)
の第一前駆錯体を提供し;
(II)式III:
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、
は第二リガンドの組である;
は第二アニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第二レイビルリガンドの組である;
Yはカチオン性対イオンの組である;
、A、Aは配位結合の組である;
b、k、p、およびjは0および1から選択される;
n=0、1、2、または3;および
e+s+u=4、5、または6;
ただし、
(i)e+s+u=4の場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、および4から選択される;
sおよびuは0、1、2、および3から選択される;
(ii)e+s+u=5の場合、
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、4、および5から選択される;
sおよびuは0、1、2、3、および4から選択される;または
(iii)e+s+u=6の場合、
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、4、5、および6から選択される;
sおよびuは0、1、2、3、4、および5から選択されるとする;
ここにおいて、1≦m+p≦2;w=n;j=iである)
の第二前駆錯体を提供し;
(III)前記第一前駆体を前記第二前駆体と接触させて、前記中性金属対錯体を形成することを含む方法に関する。
本発明のさらに別の態様は、付加ポリマーを製造する方法であって:
(a)(i)請求項1記載の触媒組成物;および
(ii)エチレン性不飽和モノマーを組み合わせ;並びに
(b)前記エチレン性不飽和モノマーを前記触媒組成物の存在下で重合させて、前記付加ポリマーを形成することを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書において使用される以下の用語は以下の定義を有する:
【0016】
「範囲」。本明細書の範囲の開示は、下限と上限の形態をとる。1以上の下限と、独立して1以上の上限が存在し得る。所定の範囲は、1つの下限と1つの上限を選択することにより規定される。選択された下限と上限は次いで特定の範囲の境界を規定する。このようにして規定することができる全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能であり、このことは任意の下限を任意の上限と組み合わせて、ある範囲を表すことができることを意味する。
【0017】
「触媒組成物」とは、少なくとも一つの「中性金属対錯体」を含む組成物であり、ここにおいて中性金属対錯体は、少なくとも一つの「金属原子対」(「金属対」と交換可能である)を含む。各金属原子対は、記号「M」で表される一つの「第一金属原子」(金属原子M)および記号「M」で表される一つの「第二金属原子」(金属原子M)を含む。
【0018】
中性金属対錯体の金属原子対に関して「スルースペース(through−space)核間金属原子対距離」(本明細書においては互換的に「スルースペース核間距離」と称する)とは、金属原子対の第一金属原子Mの核と、当該対の第二金属原子Mの核の間の距離である。このスルースペース核間距離は、結合に沿って測った距離である「スルーボンド核間距離」と等しいか、またはこれより小さい。例えば、金属原子対のMとMの間に金属−金属結合が存在する場合、スルースペース核間距離と金属−金属スルーボンド距離は同じである。この金属原子対がMとMの間の架橋部分として第三のリガンドも有する場合、第三のリガンドの結合に沿ったMからMまでの距離はスルースペース距離よりも大きくなるであろう。
【0019】
中性金属対錯体の金属対の「スルースペース核間金属原子対距離」は、コンピューター化学の分野において通常の知識を有する者に公知の量子化学計算法を用いて決定することができる。例えば、本発明に関する使用について適当な量子化学計算法としては、密度関数法、例えばJaguar(商標)ソフトウェア、バージョン5.0が挙げられる。所定の中性金属対錯体について、コンピューター化学の分野において通常の知識を有する者は、承認された化学結合則、「LACVP基底系」および「B3LYP関数」を使用して、当該中性金属対錯体の金属対の金属−金属原子間距離(すなわち、スルースペース核間金属原子対距離)を計算することができる。Jaguar(商標)ソフトウェア、バージョン5.0を使用すると、中性金属対錯体の構造が、適当な原子結合性を有する構造を出発点として使用して、幾何学的に最適化される。当該錯体の金属対の金属−金属原子間距離(すなわち、スルースペース核間金属対距離)を次いで幾何学的に最適化された構造の原子直交座標から決定することができる。Jaguar(商標)ソフトウェア、バージョン5.0およびJaguar5.0操作マニュアル(2003年1月)はSchrodinger,L.L.C.,120 West 45th Street,32nd Floor,New York、NY10036から入手可能である。
【0020】
金属原子対の第一金属原子および第二金属原子はさらに、エチレン性不飽和モノマーの重合中に「協同性」を示し、ここにおいて協同性とは、第一金属原子が第二金属原子のエチレン性不飽和モノマーを重合させる能力にプラスの影響を及ぼすか、または第二金属原子が第一金属原子のエチレン性不飽和モノマーを重合させる能力にプラスの影響を及ぼすか、またはその両方を意味する。いかなる特定の理論にも限定されることを望まないが、金属原子対の2つの金属が協同性を示す場合、この協同性は、例えば、当該対の金属が、当該対の他の金属もしくは挿入するエチレン性不飽和モノマー、または金属原子対から成長する任意のポリマー鎖の部分、あるいは金属原子対と関連する、電子、立体、または他の空間的環境を有利に変更する形態をとることができると考えられる。ある具体例において、一つのエチレン性不飽和モノマーは、当該金属原子対により触媒される挿入重合によりポリマー中に組み入れられる間に、金属原子対の構成要素のそれぞれと、逐次的または同時のいずれかで結合するようになるか、さもなくば関連することができる。
【0021】
「配位結合」は、第一金属原子Mの「配位部位」と以下:第一リガンド;架橋部分;第一アニオン性ヒドロカルビル基(radical);第一レイビルリガンド;あるいは金属原子M;のうちの任意の1つとの間の結合であり得る。「配位結合」は、第二金属原子Mの「配位部位」と以下:第二リガンド;架橋部分;第二アニオン性ヒドロカルビル基;第二レイビルリガンド;あるいは金属原子M;のうちの任意の1つとの間の結合でもあり得る。配位結合の組は、記号「A」で表され、「中性金属対錯体式」(下記参照)における結合の位置を示す上付き文字と、配位結合の数を示す下付き文字を有する。
【0022】
「リガンド」なる用語は、有機金属化学におけるその通常の意味を有する。「リガンド」は1以上の「ドナー部位」を有する部分であり、ここにおいて「ドナー部位」とは、金属原子上の占有されていない(すなわち電子不足の)「配位部位」に電子密度を供与することにより、金属原子と「配位結合」を形成することができる電子リッチな部位(例えば孤立電子対)である。ドナー部位は、当該金属原子上の「当該配位部位を占有する」と言われる。あるいは、リガンドは金属原子と「配位的に結合する」と言われる。リガンドと金属原子間に1以上の配位結合が存在する場合、当該リガンドと当該金属原子はどちらもこれらの配位結合のそれぞれに「関与する」と言われる。
【0023】
「中性電子ドナーリガンド」は、その閉殻電子構造において金属原子から除去された(すなわち、1以上の配位結合が破壊された)場合に、中性の電荷を有する任意のリガンドである。例えば、トリフェニルホスフィンは中性電子ドナーリガンドである。
【0024】
「一座配位(monodentate)リガンド」とは、一つの「ドナー部位」を有するリガンドである。例えば、トリフェニルホスフィンは一座配位リガンドであり、そのリン孤立電子対は、金属原子と配位作用することができる(すなわち金属原子の配位部位を占有することができる)ドナー部位である。
【0025】
「二座配位(bidentate)リガンド」とは、2つのドナー部位を有するリガンドである。例えば、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンは二座配位リガンドである。二座配位リガンドの2つのドナー部位のそれぞれは、同じ金属原子に対して配位結合を形成することができる。あるいは、二座配位リガンドの一つのドナー部位は一つの金属原子と配位結合を形成することができ、一方、同じ二座配位リガンドの他のドナー部位は異なる金属原子と配位結合を形成することができる。
【0026】
「多座配位(multi−dentate)リガンド」は2以上のドナー部位を有し、そのそれぞれが金属原子と配位することができる。例えば、ペンタメチルジエチレントリアミンは3つのかかるドナー部位を有する多座配位リガンドである。ただし、立体的および電子的要因などの事項が許容する限り、多座配位リガンドのドナー部位のそれぞれは同じ金属原子と配位結合を形成することができる。あるいは、多座配位リガンドの少なくとも一つのドナー部位は一つの金属原子と配位結合を形成することができ、一方、同じ多座配位リガンドの少なくとも一つの他のドナー部位は異なる金属原子と配位結合を形成することができ、これらの2つの金属原子のそれぞれは同じ金属原子対にあるか、または1以上の金属原子対を含有する錯体の2つの異なる金属原子対にあることができる。「二座配位リガンド」は「多座配位リガンド」の特別な場合である。
【0027】
さらに、リガンドのドナー部位の全部より少ない数が配位結合に実際に関与することが可能である。したがって、任意のリガンドについて、当該リガンドの「ドナー部位の有効数」は、配位結合に実際に関与するドナー部位の数に等しい。「有効な一座配位リガンド」は、配位結合に関与するドナー部位を合計1つ有するリガンドである。同様に、たとえば「有効な二座配位」、「有効な三座配位」、「有効な四座配位」、「有効な五座配位」、および「有効な六座配位」リガンドは、配位結合に関与するドナー部位をそれぞれ2、3、4、5、および6つ有する。さらなる例として、ペンタメチルジエチレントリアミンは、ドナー部位として3のアミン孤立電子対を有し、従って三座配位リガンドである。このトリアミンのアミン孤立電子対の2つのみが金属原子対の一つの金属、または二つの金属との配位結合に関与する場合、トリアミンは当該金属原子対に関して有効な二座配位である。これらの電子対の1つのみが金属との配位結合に関与する場合、トリアミンは有効な一座配位である。さらなる例として、アリルアニオンはそのη−アリル形態において有効な一座配位であるが、そのη−アリル形態において有効な二座配位である。
【0028】
「第一のリガンド」は、金属原子対の金属原子Mとの1以上の配位結合に関与することができるが、同じ金属原子対の金属原子Mとの配位結合に同時に関与しない任意のリガンドであり得る。
【0029】
「第二のリガンド」は、金属原子対の金属原子Mとの1以上の配位結合に関与することができるが、同じ金属原子対の金属原子Mとの配位結合に同時に関与しない任意のリガンドであり得る。
【0030】
本発明の「第三のリガンド」は、同じ金属原子対の金属原子Mと金属原子Mのそれぞれとの少なくとも一つの配位結合に同時に関与することができる任意のリガンドであり得る。
【0031】
「レイビル中性電子ドナーリガンド」は金属原子(たとえば、MまたはM)と強力に結合せず、これらから容易に置換される任意の中性電子ドナーリガンドである。「レイビル中性電子ドナーリガンド」および「レイビルリガンド」なる用語は本発明において互換的に用いられる。
【0032】
「第一レイビルリガンド」とは、金属原子Mとの配位結合に関与することができるが、同時に金属原子Mとの配位結合に関与しないレイビルリガンドである。
【0033】
「第二レイビルリガンド」とは、金属原子Mとの配位結合に関与することができるが、同時に金属原子Mとの配位結合に関与しないレイビルリガンドである。
【0034】
アニオン性リガンドは、その閉殻電子構造において金属原子(たとえば、MまたはM)から除去された場合に、負の電荷を有する任意のリガンドである。
【0035】
本明細書において用いられる「多(金属対)カップリング部分」は、互換的に「ペアカップリング部分」とも称し、一つの錯体の少なくとも二つの金属原子対のそれぞれとの少なくとも一つの配位結合において同時に関与することができる任意の多座配位部分である。「ペアカップリング部分」は、1以上のこれらのドナー部位が一つの金属対との配位結合に関与し、同時に1以上のその他のドナー部位が別の金属対との配位結合に関与することを可能にする制約(例えば、立体的制約、電子的制約、またはその両者)を有する複数のドナー部位を含む。いかなる特定の理論にも限定されることを望まないが、同じペアカップリング部分との1以上の配位結合に同時に関与することができる金属対の数は、例えば:ペアカップリング部分の立体的制約;ペアカップリング部分のドナー部位の電子的制約;金属原子対との間で、同じ錯体中に複数の金属原子対がある場合には、その金属原子対内での金属原子MおよびMの電子的および空間的特徴;それぞれの金属原子対の金属原子MもしくはMのいずれかとの1つの配位結合もしくは両方の配位結合に同時に関与する、任意の他の第一リガンド、第二リガンド、架橋部分、第一アニオン性ヒドロカルビル含有基、第二アニオン性ヒドロカルビル含有基、第一レイビルリガンド、第二レイビルリガンドの立体的および電子的特徴;ペアカップリング部分と金属対のモル比;およびドナー部位のアクセシビリティー(例えば、ペアカップリング部分は、いくつかのドナー部位が金属原子対に接近できない多孔性ポリマー構造であり得る)等の事項により支配されると考えられる。さらに、一つのペアカップリング部分と配位結合する可能性のあり得る金属原子対の最大数は、当該ペアカップリング部分上のドナー部位の数に等しい。しかしながら前記の1以上の制約は一つのペアカップリング部分に実際に結合する金属原子対の数を最大値より少ない数に制限するように介在する場合がある。一つのペアカップリング部分が一つの金属対の金属原子MおよびMの一方または双方との複数の配位結合に関与し得る場合もあり得る。ペアカップリング部分の大きさに関して特に制限はない。例えば、ペアカップリング部分は、ドナー部位を有するマクロレティキュラー樹脂(後記参照)、クラウンエーテル、または他の複数のドナー部位を有するマクロ構造である場合がある。「ペアカップリング部分」は以下の任意のものであってよい:第一リガンド、第二リガンド、第三リガンド、第一レイビルリガンド、第二レイビルリガンド、第一ヒドロカルビルラジカル、第二ヒドロカルビルラジカル、またはその組み合わせ。2以上の金属原子対が本発明の中性金属対錯体中に存在する場合:金属原子Mはすべて同一であり得(例えば、全部Niである);金属原子Mはすべて同一であり得;金属原子Mは対ごとに異なっていてもよく(例えば、1つはNiであり、もう一つはPdである);金属原子Mは対ごとに異なっていてもよい。
【0036】
「中性金属対錯体」は、次の「中性金属対錯体式」(式I):
【0037】
【化5】

【0038】
により表される錯体であり、次の記号および下付き文字は中性金属対錯体式において次の意味を有する:
【0039】
記号「M」および「M」は、それぞれ、金属原子対の第一金属原子および金属原子対の第二金属原子を表す。
【0040】
記号「L」は、「第一リガンドの組」を表し、ここにおいて「第一リガンド」とは、金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mと配位結合しないリガンドである。この第一リガンドの組は互換的に「L組」と称し得る。「L」の中性金属対錯体式下付き文字「a」は、整数0または1のいずれかに等しい。「a」=1の場合、L組は、1以上の第一リガンドを包含する。「a」=0である場合、L組は「空」である。リガンド組が空である場合、当該リガンド組はリガンドを含まない。たとえば、「a」=0である場合、L組は第一リガンドを含有しない。
【0041】
記号「L」は、「第二リガンドの組」を表し、ここにおいて「第二リガンド」とは、金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mと配位結合しないリガンドである。この第二リガンドの組は互換的に「L組」と称し得る。「L」の中性金属対錯体式下付き文字「b」は0または1のいずれかに等しい。「b」=1である場合、L組は1以上の第二リガンドを包含する。「b」=0である場合、L組は空である。
【0042】
記号「L」は、「架橋部分の組」を表す。「架橋部分」は、同じ金属原子対の金属原子Mおよび金属原子Mの両方と配位結合する部分である。金属−金属結合は、当該部分が結合自体である架橋部分の特別な場合であり、金属−金属結合の2つの金属原子以外の他の原子を含まない。この架橋部分の組は、互換的に「L組」と称し得る。「L」の中性金属対錯体式下付き文字「c」は、中性金属対錯体式において1に等しく、このことはL組が1以上の架橋部分を含むことを意味する。
【0043】
記号「R」は金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mと配位結合しない「第一アニオン性ヒドロカルビル含有基の組」を表す。この第一アニオン性ヒドロカルビル含有基の組は、互換的に「R組」と称し得る。本明細書において、「第一ヒドロカルビル基」なる用語は、「第一アニオン性ヒドロカルビル含有基」なる用語と互換的に用いられる。「R」の中性金属対錯体式下付き文字「m」は、0または1のいずれかに等しい。「m」=1である場合、R組は、1以上の第一ヒドロカルビル基を包含する。「m」=0である場合、Rは空である。
【0044】
記号「R」は、金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mと配位結合しない「第二アニオン性ヒドロカルビル含有基の組」を表す。この第二アニオン性ヒドロカルビル含有基の組は、互換的に「R組」と称し得る。本明細書において、「第二ヒドロカルビル基」なる用語は、「第二アニオン性ヒドロカルビル含有基」なる用語と互換的に用いられる。「R」の下付き文字「p」は、整数0または1のいずれかに等しい。下付き文字「p」=1である場合、R組は1以上の第二ヒドロカルビル基を含む。下付き文字「p」=0である場合、R組は空である。RおよびR組の一方が空である場合、他方の組は少なくとも一つのアニオン性ヒドロカルビル含有基を含有しなければならないという関係は、次の関係式により表される:1≦m+p≦2。
【0045】
ヒドロカルビル基が、同じ金属原子対の第一金属原子Mおよび第二金属原子Mのそれぞれの少なくとも一つの配位結合に同時に関与することも可能である。この場合は、本明細書においては「第三のアニオン性ヒドロカルビル含有基」、あるいは「第三のヒドロカルビル基」として記載される。「第三のヒドロカルビル基」は、「架橋部分」Lの特別な場合である。
【0046】
「アニオン性ヒドロカルビル含有基」(互換的に「ヒドロカルビル基」)は、その閉殻電子構造において金属原子(例えば、MまたはM)から除去された場合に負の電荷を有する任意のヒドロカルビル基である。これらが双方とも存在する本発明の任意の錯体において、第一ヒドロカルビル基と第二ヒドロカルビル基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。R組が1より多い第一ヒドロカルビル基を含有する場合、これらの第一ヒドロカルビル基は全て同一であってもよいし、または1以上が当該R組の少なくとも1つの他の第一ヒドロカルビル基と異なっていてもよい。R組が1より多い第二ヒドロカルビル基を含有する場合、これらの第二ヒドロカルビル基は全て同じであってもよいし、または1以上が当該R組の少なくとも一つの他の第二ヒドロカルビル基と異なっていてもよい。
【0047】
記号「S」は「第一レイビルリガンドの組」を表し、ここにおいて「第一レイビルリガンド」は金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mとは配位結合しないレイビルリガンドである。この第一レイビルリガンドの組は、互換的に「S組」とも称し得る。「S」の中性金属対錯体式下付き文字「h」は0または1のいずれかに等しい。「h」=1である場合、S組は1以上の第一レイビルリガンドを含む。「h」=0である場合、S組は空である。レイビルリガンドの組が空である場合、レイビルリガンドの組はリガンドを含有しない。例えば、「h」=0である場合、S組は空である。S組が1より多い第一レイビルリガンドを含有する場合、これらの第一レイビルリガンドは全て同じであってもよいし、あるいは1以上がS組の少なくとも一つの他の第一レイビルリガンドと異なっていてもよい。
【0048】
記号「S」は「第二レイビルリガンドの組」を表し、ここにおいて「第二レイビルリガンド」は金属原子Mと配位結合するが、金属原子Mとは配位結合しないレイビルリガンドである。この第二レイビルリガンドの組は、互換的に「S組」とも称し得る。「S」の中性金属対錯体式の下付き文字「k」は0または1のいずれかに等しい。「k」=1である場合、S組は1以上の第二レイビルリガンドを含む。「k」=0である場合、S組は空である。S組が1より多い第二レイビルリガンドを含有する場合、これらの第二レイビルリガンドは全て同じであってもよいし、あるいは1以上がS組の少なくとも一つの他の第二レイビルリガンドと異なっていてもよい。これらが双方とも存在する本発明の任意の中性金属対錯体において、第一レイビルリガンドと第二レイビルリガンドは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
レイビルリガンドが同じ金属原子対の第一金属原子Mおよび第二金属原子Mのそれぞれの少なくとも一つの配位結合に同時に関与することも可能である。この場合は本明細書においては「第三レイビルリガンド」として記載される。「第三レイビルリガンド」は「架橋部分」Lの特別な場合である。
【0050】
記号「A」は、中性金属対錯体の、L組の任意の第一リガンドと金属原子対の第一金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0051】
記号「A」は、中性金属対錯体の、L組の任意の第二リガンドと金属原子対の第二金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0052】
記号「A」は、中性金属対錯体の、L組の任意の架橋部分と金属原子対の第一金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0053】
記号「A」は、中性金属対錯体の、L組の任意の架橋部分と金属原子対の第二金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0054】
記号「A」は、中性金属対錯体の、R組の任意の第一ヒドロカルビル基と金属原子対の第一金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0055】
記号「A」は、中性金属対錯体の、R組の任意の第二ヒドロカルビル基と金属原子対の第二金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0056】
記号「A」は、中性金属対錯体の、S組の任意の第一レイビルリガンドと金属原子対の第一金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0057】
記号「A」は、中性金属対錯体の、S組の任意の第二レイビルリガンドと金属原子対の第二金属原子Mの間の配位結合の組を表す。
【0058】
記号「A」で表される任意の配位結合の組は、互換的に「A組」とも称され得る。例えば、記号「A」で表される配位結合の組は、互換的に「A組」とも称され得る。
【0059】
、L、R、R、S、およびS組のいずれかが空である場合、この組と直接関連する任意の配位結合を表す記号「A」の中性金属対錯体式下付き文字は0に等しい。例えば、L組が空である場合、「L」の「a」は0に等しく、「A」の「d」も0に等しい。中性金属対錯体式下付文字「a」、「b」、「h」、「k」、「m」、および「p」のいずれかが0と等しい場合、対応する中性金属対錯体式下付き文字「d」、「e」、「t」、「u」、「r」、および「s」はそれぞれ0に等しい。
【0060】
、L、L、R、R、S、およびS組のいずれかが占有されている、すなわちその組の少なくとも一つの構成要素を含有する場合、この組の構成要素と直接関連する任意の配位結合を表す記号「A」の中性金属対錯体式下付き文字は少なくとも1に等しい。すなわち、占有されているL、L、L、R、R、S、およびS組のいずれかについて、対応する中性金属対錯体式下付き文字d、e、f、g、r、s、t、またはuはそれぞれ少なくとも1に等しい。例えば、「中性金属対錯体」のL組が占有されている場合、「L」の「a」は1に等しく、「A」の「d」は少なくとも1に等しい。さらに、L、L、L、R、R、S、およびS組のいずれかが占有され、この組の構成要素と直接関連する配位結合を表す記号「A」の中性金属対錯体式下付文字が少なくとも2に等しい場合、当該下付き文字により示される複数の配位結合はすべて当該組の一つの構成要素から生じるか、あるいは当該組の1より多い構成要素から生じる。例えば、「A」の「e」が整数3に等しい場合、L組は1、2、または3の第二のリガンドを含有し得る。この例において、L組は以下の組み合わせのいずれかを含有し得る:3つの有効な一座配位第二リガンド(前記参照);1つの有効な一座配位第二リガンドおよび一つの有効な二座配位第二リガンド;または1つの有効な三座配位第二リガンド。
【0061】
中性金属対錯体の金属原子対の第一金属原子Mと第二金属原子M間に「金属−金属結合」が存在する場合、金属−金属結合の存在は、下付き文字「f」および「g」の両方を1まで増加させることにより中性金属対錯体式において示される。金属−金属結合のこの特定の場合において、A結合およびA結合の組み合わせは、架橋部分において原子が存在しないので、一つの単結合を表す、すなわち金属原子Mと金属原子Mの間の結合の電子雲が架橋部分である。
【0062】
「L]組の「架橋部分」は第三のリガンド、架橋レイビルリガンド、架橋アニオン性ヒドロカルビル基、架橋半レイビルリガンド、または金属−金属結合であり得る。
【0063】
「中性金属対錯体式の下付き文字」は正の整数または0のいずれかである値を有する。中性金属対錯体式の下付き文字は以下の定義を有する:a、b、h、k、m、およびpは0または1から独立して選択され;cは1に等しく;1≦m+p≦2;d+f+r+t=4,5,または6;e+g+s+u=4、5、または6である。
ここにおいて、
i)d+f+r+t=4である場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、および3から選択される;fは1、2、3、および4から選択される;
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦5;1≦r+s≦5;0≦t+u≦5;および2≦f+g≦7である;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦6;1≦r+s≦6;0≦t+u≦6;および2≦f+g≦8である;あるいは
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9である;
(ii)d+f+r+t=5である場合;
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、3、および4から選択される;fは1、2、3、4、および5から選択される;
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦6;1≦r+s≦6;0≦t+u≦6;および2≦f+g≦8である;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9である;あるいは
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦8;1≦r+s≦8;0≦t+u≦8;および2≦f+g≦10である;
(iii)d+f+r+t=6である場合;
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;d、r、およびtは0、1、2、3、4、および5から選択される;fは1、2、3、4、5、および6から選択される;
e+g+s+u=4である場合、Mは、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、および3から選択される;gは1、2、3、および4から選択される;0≦d+e≦7;1≦r+s≦7;0≦t+u≦7;および2≦f+g≦9である;
e+g+s+u=5である場合、Mは、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、および4から選択される;gは1、2、3、4、および5から選択される;0≦d+e≦8;1≦r+s≦8;0≦t+u≦8;および2≦f+g≦10である;あるいは
e+g+s+u=6である場合、Mは、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;e、s、およびuは0、1、2、3、4、および5から選択される;gは1、2、3、4、5、および6から選択される;0≦d+e≦9;1≦r+s≦9;0≦t+u≦9;および2≦f+g≦11である。
【0064】
本発明の「第一前駆錯体」は、第一前記錯体式II:
【0065】
【化6】

【0066】
(式中:
は第一リガンドの組である;
は第一のアニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第一レイビルリガンドの組である;
Xはアニオン性対イオンの組である;
、A、Aは配位結合の組である;
a、h、m、およびiは独立して0および1から選択される;
n=0、1、2、または3;n=0の場合、i=0;n=1、2,または3の場合、i=1;
d+r+t=4、5、または6;
ただし、
(i)d+r+t=4の場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、および4から選択される;
rおよびtは0、1、2、および3から選択される;
(ii)d+r+t=5の場合、
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、4、および5から選択される
rおよびtは0、1、2、3、および4から選択される;または
(iii)d+r+t=6の場合、
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
dは0、1、2、3、4、5、および6から選択される;
rおよびtは0、1、2、3、4、および5から選択されるとする)
の錯体である。
【0067】
本発明の「第二前駆錯体」は、第二前駆錯体式III:
【0068】
【化7】

【0069】
(式中、
は第二リガンドの組である;
は第二アニオン性ヒドロカルビル含有基の組である;
は第二レイビルリガンドの組である;
Yはカチオン性対イオンの組である;
、A、Aは配位結合の組である;
b、k、p、およびjは0および1から独立して選択される;
n=0、1、2、または3;および
e+s+u=4、5、または6;
ただし、
(i)e+s+u=4の場合、
は、ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、および4から選択される;
sおよびuは0、1、2、および3から選択される;
(ii)e+s+u=5の場合、
は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、4、および5から選択される;
sおよびuは0、1、2、3、および4から選択される;または
(iii)e+s+u=6の場合、
は、銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガンから選択される;
eは0、1、2、3、4、5、および6から選択される;
sおよびuは0、1、2、3、4、および5から選択されるとする)
の錯体である。
【0070】
第一前駆錯体と第二前駆錯体間の反応に関して、mおよびpの少なくとも1つの下付き文字は1でなければならず(すなわち、1≦m+p≦2)、このことは、少なくとも1つのアニオン性ヒドロカルビル基が存在しなければならないことを示す。
【0071】
記号「X」は「アニオン性対イオンの組」を表し、ここにおいて「アニオン性対イオン」は、金属原子Mと弱く結合するが、金属原子Mと配位結合しないアニオンである。アニオン性対イオンのこの組は、交換可能に「X組」と称される。「X」の下付き文字「i」は0または1のいずれかに等しい。「i」=1である場合、X組は1以上のアニオン性対イオンを含む。「i」=0である場合、X組は空である。
【0072】
記号「Y」は「カチオン性対イオンの組を表し、ここにおいて「カチオン性対イオン」は金属原子Mと弱く結合するが、金属原子Mと配位結合しないカチオンである。カチオン性対イオンのこの組は、交換可能に「Y組」と称される。「Y」の下付き文字「j」は0または1である。「j」=1である場合、Y組は1以上のカチオン性対イオンを含む。「j」=0である場合、Y組は空である。
【0073】
さらに、Xn−およびYw+の上付き文字nおよびwはそれぞれ等しくなければならず、中性金属対錯体を形成する反応により、中性金属対錯体の電荷が0になる。下つき文字jは下付き文字iと等しくなければならない。例えば、第一および第二前駆錯体がどちらも中性である場合(w=n=0)、アニオン性またはカチオン性対イオンはなく、従って、両対イオン組XおよびYは空であり(j=i=0)、第一および第二前駆錯体がどちらも荷電している場合(w=n=1、2、または3)、X組において少なくとも1つのアニオン性対イオンがあり、Y組において少なくとも1つのカチオン性対イオンがあり、従ってj=i=1である。
【0074】
「第一前駆錯体式」の記号「M」、「R」、「L」、および「S」はそれぞれ「中性金属対錯体式」の記号「M」、「R」、「L」、および「S」と同じ意味を有する。
【0075】
「第二前駆錯体式」の記号「M」、「R」、「L」、および「S」はそれぞれ「中性金属対錯体式」の記号「M」、「R」、「L」、および「S」と同じ意味を有する。
【0076】
「第一前駆錯体式」の記号「A」、「A」、および「A」はそれぞれ「中性金属対錯体式」の記号「A」、「A」、および「A」と同じ意味を有する。
【0077】
「第二前駆錯体式」の記号「A」、「A」、および「A」はそれぞれ「中性金属対錯体式」の記号「A」、「A」、および「A」と同じ意味を有する。
【0078】
「エチレン性不飽和モノマー」なる用語は、1以上の炭素−炭素二重結合を有し、かつ挿入付加重合が可能な分子を意味する。「モノエチレン性不飽和モノマー」なる用語は、挿入付加重合が可能な1つの炭素−炭素二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーを意味する。「多エチレン性不飽和モノマー」なる用語は、挿入付加重合が可能な2以上の炭素−炭素二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーを意味する。
【0079】
「非極性オレフィンモノマー」(あるいは「非極性オレフィン」)なる用語は、排他的に水素および炭素原子からなるエチレン性不飽和モノマーを意味する。本発明の非極性オレフィンモノマーは、本発明の中性金属対錯体を用いて重合することができ、「ポリ(非極性オレフィン)」または「ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]」を形成する任意の非極性オレフィンモノマーである。
【0080】
「極性オレフィンモノマー」(あるいは「極性オレフィン」)なる用語は、炭素または水素以外の少なくとも一つの原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味する。本発明の極性オレフィンモノマーは、本発明の中性金属対錯体を用いて重合することができ、「ポリ(極性オレフィン)」または「ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]」を形成する任意の非極性オレフィンモノマーである。
【0081】
「(メタ)アクリル」なる用語は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を意味する。例えば、「ブチル(メタ)アクリレート」とは、「ブチルアクリレート」と「ブチルメタクリレート」の両方を意味する。「(メタ)アクリル」型モノマーは、本発明の「極性オレフィンモノマー」の例である。
【0082】
「付加ポリマー」は、付加重合により製造することができるポリマーであり、ポリ(非極性オレフィン)、ポリ(極性オレフィン)、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0083】
「ポリ(非極性オレフィン)」は1以上の非極性オレフィンモノマーを重合単位として含むポリマーである。従って、「ポリ(非極性オレフィン)」はホモポリマーまたはコポリマーであることができ、コポリマーは、例えばランダム、交互、またはブロックコポリマーであることができる。
【0084】
「ポリ(極性オレフィン)」は重合単位として1以上の極性オレフィンモノマーを含むポリマーである。従って、「ポリ(極性オレフィン)」はホモポリマーまたはコポリマーであることができ、コポリマーは、例えばランダム、交互、またはブロックコポリマーであることができる。
【0085】
「ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]」は重合単位として1以上の非極性オレフィンモノマーと1以上の極性オレフィンモノマーを含むコポリマーであり、当該コポリマーは、例えばランダム、交互、またはブロックコポリマーであることができる。本発明の付加ポリマーは:ポリ(非極性オレフィン)、ポリ(極性オレフィン)、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーである。
【0086】
次の式は、ポリマー鎖の集合の分子量「重量平均分子量」、「Mw」および「数平均分子量」、「Mn」を説明する。これらは:
【0087】
=Σ(W)/ΣW=Σ(N)/ΣN
=ΣW/Σ(W)=Σ(N)/ΣN
【0088】
(式中:
=分布のi番目の成分のモル質量
=分布のi番目の成分の重量
=i番目の成分の鎖の数)
のように定義され、総和は分布における成分全てに及ぶ。MおよびMは典型的にはゲル透過クロマトグラフィーにより測定されるMWDから計算される(実験の項を参照)。「M/M」の値は「MWD多分散性」と称する。
【0089】
ポリマー粒子の集合について決定される「平均粒子サイズ」は、決定法(例えば、DCPまたはBI−90、以下に記載)によって多少変わるが、「重量平均粒子サイズ」、「dw」(これも以下に記載)とほぼ、または全く同じである。
【0090】
本明細書において、「粒子サイズ分布」および頭文字「PSD」なる用語は互換的に用いられる。本明細書において用いられる場合、「PSD多分散性」は、本発明の複数のポリマー粒子についての粒子サイズの分布を説明するものである。PSD多分散性は、重量平均粒子サイズdおよび数平均粒子サイズdから、式:
【0091】
PSD多分散性=(d)/(d
(式中、d=Σn/Σn
=Σn/Σn
【0092】
(式中、nは粒子サイズdを有する粒子の数である))
にしたがって計算される。
【0093】
「単分散性」分布(本発明においてはMWDまたはPSD)とは、多分散性がちょうど1である分布を意味する。
【0094】
「超臨界流体」(「SCF」)は、その臨界温度および臨界圧(すなわち、その「臨界点」)を超えた物質である。二酸化炭素については、臨界温度は31℃であり、臨界圧は1070psiである。流体の臨界点以上では、さらに圧縮しても液体の形成は起こらない(Chem.Rev.,1999,99,pp.565−602参照)。
【0095】
本発明の中性金属対錯体の各金属原子対は、記号「M」により表される1つの「第一金属原子」(金属原子M)と記号「M」により表される1つの「第二金属原子」(金属原子M)を含む。中性金属対錯体の第一および第二金属原子は、独立して:4つの被占配位部位;5つの被占配位部位;または6つの被占配位部位を有することができる。中性金属対錯体の第一または第二金属原子が4つの被占配位部位を有する場合、当該金属原子は:ニッケル、パラジウム、銅、鉄、コバルト、ロジウム、クロム、およびマンガン;ニッケル、パラジウム、銅、鉄およびコバルト;またはニッケルおよびパラジウムから選択される金属原子である。中性金属対錯体の第一または第二金属原子が5つの被占配位部位を有する場合、当該金属原子は:鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガン;または鉄、コバルト、およびクロムから選択される金属原子である。中性金属対錯体の第一または第二金属原子が6つの被占配位部位を有する場合、当該金属原子は:銅、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、クロム、およびマンガン;または銅、鉄、コバルト、およびクロムから選択される金属原子である。
【0096】
本発明の中性金属対錯体は、本発明の第一および第二前駆錯体から製造されるので、中性金属対錯体のMは、当該中性金属対錯体が製造される第一前駆錯体のMと同じであり、中性金属対錯体のMは、これが製造される第二前駆錯体のMと同一であるということになる。
【0097】
本発明の触媒組成物の任意の触媒錯体中に存在する全M型金属原子とM型金属原子の合計に基づいた、本発明の中性金属対錯体において存在する第一金属原子Mと第二金属原子Mの合計モル百分率は、MとMの合計モル数に基づいて少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%であり;100%以下、99%以下、または97%以下である。
【0098】
本発明の金属原子対の「スルースペース核間距離」は:少なくとも1.5オングストローム(1Å=0.0001ミクロン)、少なくとも2Å、少なくとも3Å、または少なくとも4Åであり;20Å以下、15Å以下、10Å以下、または6Å以下である。
【0099】
任意の所定の中性金属対錯体、または前駆錯体におけるリガンドについて存在する制約(例えば、電子的、立体的、および他の空間的制約)によって、一座配位または多座配位リガンドが、対応する金属原子対の金属原子(リガンド組LについてはM;リガンド組LについてはM)との少なくとも一つの配位結合に関与することが可能な限り、任意の一座配位または多座配位リガンドが、本発明のL組の第一リガンドまたはL組の第二リガンドとなることができる。
【0100】
組およびL組が占有されている場合、それぞれがこれらの組の構成要素である第一および第二リガンドは、所定の組(すなわち、L、L)内で同一または異なるリガンドであってもよく、L組のリガンドはL組のリガンドと同一であってもよいし、異なっていてもよい。第一リガンドおよび第二リガンドは、独立して、次のリガンドタイプの非網羅的リストから選択することができ、ここにおいて14、15、16、および17族から選択される少なくとも一つの原子が本発明の少なくとも一つの配位結合に関与する。
【0101】
任意の特定の中性金属対錯体におけるリガンドについて得られる制約(例えば、電子的、立体的、および他の空間的制約)によって、多座配位リガンドが当該中性金属対錯体の金属原子対の金属のそれぞれとの少なくとも一つの配位結合に同時に関与することが可能な限り、任意の多座配位リガンドが本発明のL組の第三リガンドとなることができる。ただし、第三リガンドは3,3’−ビサリチルアルジミンでない。
【0102】
同様に、本明細書に記載されるレイビルリガンド、半レイビルリガンド、アニオン性ヒドロカルビル含有基、アニオン性対イオン、カチオン性対イオン、スカベンジャー、希釈剤、およびモノマータイプのリスト、ならびに具体例は、例示的であって、非網羅的である。さらに、所定のレイビルリガンド、半レイビルリガンド、またはアニオン性ヒドロカルビル含有基が本発明の特定の中性金属対錯体または前駆錯体の金属原子対の一方、または両方の金属原子と配位結合を形成することができる能力は、レイビルリガンド、半レイビルリガンド、またはアニオン性ヒドロカルビル含有基について存在する制約(例えば、電子的、立体的、および他の空間的制約)に依存する。
【0103】
一座および多座配位リガンドが構造的または化学名により本明細書において示される場合、その用法は、上付文字を伴ってもしくは伴わずに、大文字「R」により示される「R基」としてのリガンド上の1以上の置換基の表示からなり得る。かかる表記法は、有機金属化学および化学一般の分野において一般的であり、リガンドの置換基を記載するために本明細書において使用されるが、本明細書においてこれらの「R基」表記は、本発明の中性金属対錯体、または前駆錯体のRおよびR組を意味しないと理解される。同様に、例えばレイビルリガンドの置換基、または半レイビルリガンドの置換基、またはエチレン性不飽和モノマーの置換基を記載するために本明細書において使用されるR基表記は、本発明のR組およびR組を意味しないと理解される。
【0104】
代表的な中性電子ドナーリガンドとしては、アミン、ピリジン、有機リン含有化合物、ならびに式:E(Rのアルシンおよびスチビンが挙げられ、ここで式中、Eはヒ素またはアンチモンであり、Rは独立して、水素、直鎖および分岐鎖C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、直鎖および分岐鎖C−C10アルコキシ、アリル、直鎖および分岐鎖C−C10アルケニル、C−C12アリール、C−C12アリールオキシ、C−C12アリールスルフィド(例えば、PhS)、C−C18アルアルキル、環状エーテルおよびチオエーテル、トリ(直鎖および分岐鎖C−C10アルキル)シリル、トリ(C−Cアリール)シリル、トリ(直鎖および分岐鎖C−C10アルコキシ)シリル、トリアリールオキシシリル、トリ(直鎖および分岐鎖C−C10アルキル)シロキシ、およびトリ(C−C12アリール)シロキシから選択され、前記置換基の各々は任意に、直鎖または分岐鎖C−Cアルキル、直鎖または分岐鎖C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、およびそれらの組み合わせで置換することができる。
【0105】
代表的なピリジンとしては、ピリジン、ルチジン(2,3−;2,4−;2,5−;2,6−;3,4−;および3,5−置換ルチジンを包含する)、ピコリン(2−、3−、または4−置換ピコリンを包含する)、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、および2,4−ジ−t−ブチルピリジンが挙げられる。
【0106】
代表的なアルシンとしては、トリフェニルアルシン、トリエチルアルシン、およびトリエトキシシリルアルシンが挙げられる。
【0107】
代表的なスチビンとしては、トリフェニルスチビンおよびトリチオフェニルスチビンが挙げられる。
【0108】
適当なアミンリガンドは、式N(Rのアミンから選択することができ、ここにおいて、Rは独立して、水素、直鎖および分岐鎖C−C20アルキル、直鎖および分岐鎖C−C20ハロアルキル、置換および非置換C−C20シクロアルキル、置換および非置換C−C18アリール、ならびに置換および非置換C−C18アルアルキルを表す。置換されている場合、シクロアルキル、アリールおよびアルアルキル基は、一置換または多置換することができ、ここにおいて置換基は、水素、直鎖および分岐鎖C−C12アルキル、直鎖および分岐鎖C−Cハロアルキル、直鎖および分岐鎖C−Cアルコキシ、C−C12アリール、ならびに塩素、臭素、およびフッ素から選択されるハロゲンから独立して選択される。
【0109】
有機リン含有リガンドとしては、ホスフィン、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイトおよび式;P(R)g[X’(R3−gのリン含有化合物が挙げられ、式中、X’は酸素、窒素、またはケイ素であり、Rは前記定義の通りであり、各R置換基は他と独立し、gは0、1、2、または3であり、hは1、2、または3である(ただし、X’がケイ素原子である場合、hは3であり、X’が酸素原子である場合、hは1であり、X’が窒素原子である場合、hは2であるとする)。gが0であり、X’が酸素である場合、Rのうちの任意の2つまたは3つはこれらが結合している酸素原子と一緒になって、環状部分を形成することができる。gが3である場合、Rのうちの任意の2つはこれらが結合しているリン原子と一緒になってホスファサイクルを表すことができる。
【0110】
ホスフィンリガンドの例としては、これらに限定されるわけではないが、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、およびトリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィンが挙げられる。
【0111】
ホスファイトリガンドの例としては、トリエチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、およびトリ(ヘキサフルオロイソプロピル)ホスファイトが挙げられる。
【0112】
ホスフィナイトリガンドの例としては、メチルジフェニルホスフィナイトおよびエチルジフェニルホスフィナイトが挙げられる。
【0113】
ホスホナイトリガンドの例としては、ジフェニルフェニルホスホナイトおよびジエチルフェニルホスホナイトが挙げられる。
【0114】
本発明の多座配位リガンドとしては、14、15、16、および17族原子から選択される同一または異なるドナー原子を含有する多座配位リガンドが挙げられる。14、15、16、および17族原子から選択されるこれらのドナー原子と共有結合する置換基は、本発明の一座配位リガンドの14、15、16、および17族原子と結合する任意のものであり得る。
【0115】
本発明の二座配位ホスフィンリガンドの例としては、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチ、および1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが挙げられる。
【0116】
本発明において有用なさらなる中性電子リガンドは米国特許第6,455,650号に開示されている。
【0117】
本発明についての使用に適したN−ヘテロサイクリックカルベンリガンドとしては、米国特許出願公開番号US2005/0043494A1に開示されているものを包含する飽和および不飽和、置換および非置換イミダゾリジンカルベンが挙げられる。
【0118】
架橋部分として適したさらなる部分としては、メチレン、アルキレン、ハライド、およびシュードハライドが挙げられる。メチレン(すなわち、CR)およびアルキレン(すなわち、(CR、n=1〜24)は、独立して、C1−C20アルキルまたは分岐鎖アルキル、単および多環アリールであるR基を有していてもよい。さらに、これらのメチレンおよびアルキレンの任意の炭素は、官能基でさらに置換することができる。ハライドおよびシュードハライドは第一リガンド、第二リガンド、または架橋部分であってもよい。適当なハライドとしては、例えばフルオリド、クロリド、ブロミド、およびヨージドが挙げられる。適当なシュードハライドとしては、例えばシアニド、イソシアニド、アルコキシド、チオアルコキシド、アミン、およびホスファイドが挙げられる。ヒドリドはさらに橋架け部分であってもよい。これらおよび他の適当な橋かけ部分は、Gavrilova,A.L.;Bosnich,B.Chem.Rev.2004,104,349および米国特許出願公開番号US2005/0043494A1に開示されている。
【0119】
半レイビルリガンドは、少なくとも2つの異なる種類のドナー部位を含有し、ここにおいて少なくとも1つのドナー部位は、本発明の第一、第二、および第三リガンドのドナー部位のような「非レイビルドナー部位」として作用することができ、少なくとも1つのドナー部位は、本発明の第一および第二レイビルリガンドのドナー部位のような「レイビルドナー部位」として作用することができる。典型的には、レイビルドナー部位は、金属との配位結合から、例えばレイビルリガンドのドナー部位(例えば、溶媒分子)により、およびエチレン性不飽和モノマーにより容易に置換される。従って、半レイビルリガンドのレイビルドナー部位は、強配位リガンド、例えば本発明の第一、第二、および第三リガンドにより容易に置換されるということになる。対照的に、非レイビルドナー部位は金属との配位結合から置換することが困難である。従って、半レイビルリガンドが本発明の中性金属対錯体または前駆錯体の金属対と結合する場合、任意の中性金属対錯体式または前駆錯体式の下付き文字の形式は次の通りである:半レイビルリガンドが金属原子対の1つの金属原子と結合する場合、当該半レイビルリガンドの任意のドナー部位(レイビルまたは非レイビル)により形成される任意の配位結合は第一または第二リガンドの配位結合として処理され;半レイビルリガンドが金属原子対の両金属原子と結合する場合、当該半レイビルリガンドの任意のドナー部位(レイビルまたは非レイビル)により形成される任意の配位結合は橋架け部分の配位結合として処理される。半レイビルリガンドのさらなる説明は:Braunstein,P.;Naud,F.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,680;Slone,C.S.;Weinberger,D.A.;Mirkin,C.A.Prog.Inorg.Chem.1999,48,233において見いだすことができ、本発明の半レイビルリガンドはここに記載されているものを包含する。
【0120】
本発明の半レイビルリガンドが任意の半レイビルリガンドであってもよいということを有機金属化学の分野において通常の知識を有する者は認識するであろう。例示の目的で、半レイビルホスフィンリガンドの非網羅的リストを記載する。他の14、15、16、および17族原子を含有するリガンドについて同様のリストが存在する。半レイビルホスフィンリガンドとは、金属原子と弱く錯体を形成することができるさらなる複素原子置換基(たとえば、酸素または硫黄)を含有するホスフィンリガンドを意味する。本発明の半レイビルホスフィンリガンドとしては、式P(R24Qにより表される半レイビルホスフィンリガンドが含まれ、式中、R24は独立して直鎖および分岐鎖(C−C12)アルキル、シクロアルキルおよび(C−C14)アリールおよび置換アリールを表し、Qは、リン、酸素、および硫黄から選択される複素原子ならびにそれらの組み合わせを含有する有機基部分を表す。Q置換基の例は、これらに限定されないが、−ジベンゾチオフェン、オルト−アルコキシフェニル、オルト−アルコキシカルボニルフェニル−を包含し、ここにおいて、アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖(C−C)アルコキシ;−(CHS(=O)C、−(CHSC、−(CHP(=O)(C、−(CHP(=S)(Cが挙げられ、式中qは2または3である。この種類の半リガンドから除外されるリガンドの例としては、強力にキレートを形成するリガンド、例えば、ジホスフィン類、例えばジフェニルホスフィノエタンおよびジフェニルホスフィノプロパンである。
【0121】
本発明のレイビル中性電子ドナーリガンド(すなわちレイビルリガンド)の非網羅的リストとしては、溶媒、例えば塩化メチレン、CHCl、ClCHCHCl、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、および極性モノマー、ならびに本明細書における希釈剤のリストにおいて見いだされるものが代表例である任意の他の希釈剤が挙げられ、これらは金属原子配位部位に対して電子密度を供与し、配位結合を形成することができる。さらに、例えば、ジオキサン、クラウンエーテル、他のポリエーテル、およびシクロデキストリンなどの分子は、金属原子対の金属原子間を架橋することができるレイビルリガンドの代表例であり、ここにおいて金属原子対間に電子的、立体的、および空間的制約がなされる。有機金属化学分野における当業者は、レイビルリガンドが金属原子対の一方または両方の金属原子との配位結合に関与することができることを理解するであろう。あるいは、レイビルリガンドは、ある場合には本発明の任意の中性金属対錯体または前駆錯体を取り囲むことができる溶媒和域(solvation sphere)の一部としてさらに緩く会合することができる。当該分野の一般的方法にしたがって、溶媒和域のこれらのさらに緩く会合した分子は、中性金属対錯体式または前駆錯体式において明らかには示されない。
【0122】
アニオン性ヒドロカルビル含有基は、本発明の中性金属対錯体のRおよびR組の構成要素であり、それぞれ本発明の第一または第二前駆錯体の構成要素であり得る。RおよびRは独立して、アニオン性ヒドロカルビル含有リガンドのタイプおよびアニオン性ヒドロカルビル含有リガンドの特定例についての以下の非網羅的リストから選択することができる。
【0123】
第一および第二アニオン性ヒドロカルビル含有基としては、これらに限定されるわけではないが、水素、直鎖および分岐鎖C1−C20アルキル、C5−C10シクロアルキル、直鎖および分岐鎖C2−C20アルケニル、C6−C15シクロアルケニル、アリルおよびメタリルリガンド、クロチルリガンド、またはそのカノニカル型、C6−C30アリール、C6−C30ヘテロ原子含有アリール、およびC7−C30アルアルキルが挙げられ、前記基のそれぞれはヒドロカルビル含有および/または複素原子置換基で任意に置換されることができ、好ましくは直鎖または分岐鎖C1−C5アルキル、直鎖または分岐鎖C1−C5ハロアルキル、直鎖または分岐鎖C2−C5アルケニルおよびハロアルケニル、ハロゲン、硫黄、酸素、窒素、リンおよびフェニル(任意に直鎖または分岐鎖C1−5アルキル、直鎖または分岐鎖C1−5ハロアルキル、およびハロゲンで置換されていてもよい)から選択されるヒドロカルビル含有および/または複素原子置換基で任意に置換することができる。RおよびRはまた、式R”C(O)O、R”C(O)、CHC(O)R”、R”C(O)S、R”C(S)O、R”C(S)S、R”OおよびR”Nのアニオン性含有基を表す。アニオン性ヒドロカルビル含有基のさらなる例は、米国特許第6,455,650号;米国特許出願公開番号US2005/0043494A1;Guy,R.G.;Shaw,B.L.Advances in Inorganic Chemistry and Radiochemistry,第4巻、Academic Press Inc.,New York,1962;Birmingham,J.ら、Advances in Organometallic Chemistry、第2巻、Academic Press Inc.,New York,1964;Dent,W.T.;Long,G.;Wilkinson,A.J.,J.Chem.Soc.,1964 1585;およびVolger,H.C.Rec.Trav.Chim.Pay Bas,1969 88 225に開示されている。
【0124】
アニオン性対イオンの非網羅的リストは、Hおよびその錯体、ネーキッドアルカリ金属カチオン(Li、Na、K、Rb、Cs)および同じ電荷のその錯体、アルカリ土類金属カチオン(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+)および同じ電荷のその錯体、ネーキッド遷移金属カチオン(M、M2+、M3+)および同じ電荷のその錯体、ネーキッドfブロック金属カチオン(M、M2+、M3+)および同じ電荷のその錯体、XIII族金属カチオン(M、M2+、M3+)および同じ電荷のその錯体、C(R)(R)(R(R、R、R、およびRのそれぞれは、C1−C30アルキル基またはその置換類似体、C1−C30アルケニル基またはその置換類似体、C1−C30アルキニル基またはその置換類似体、C6−C60アリール基またはその置換類似体から選択される)、Si(R)(R)(R(R、R、R、およびRのそれぞれは、C1−C30アルキル基またはその置換類似体、C1−C30アルケニル基またはその置換類似体、C1−C30アルキニル基またはその置換類似体、C6−C60アリール基またはその置換類似体から選択される)、N(R)(R)(R)(R(R、R、R、およびRのそれぞれは、C1−C30アルキル基またはその置換類似体、C1−C30アルケニル基またはその置換類似体、C1−C30アルキニル基またはその置換類似体、C6−C60アリール基またはその置換類似体から選択される)、P(R)(R)(R)(R(R、R、R、およびRのそれぞれは、C1−C30アルキル基またはその置換類似体、C1−C30アルケニル基またはその置換類似体、C1−C30アルキニル基またはその置換類似体、およびC6−C60アリール基またはその置換類似体から選択される)を包含する。
【0125】
カチオン性対イオンの非網羅的リストは、ボレート(例えば、ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート)およびアルミネート(例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート)、ボレートベンゼンアニオン(例えば、[1,4−ジヒドロ−4−メチル−1−(ペンタフルオロフェニル)]−2−ボレート)、カーボランハロカーボランアニオン、ハロゲン化アンチモンアニオン(例えば、SbF)、ハロゲン化リンアニオン(例えば、PF)、およびハロゲン化ホウ素アニオン(例えば、BF)を包含する。本発明のカチオン性対イオンは、さらに、米国特許第6,455,650号および特許出願公開番号US2005/0043494A1に開示されている弱配位アニオンを包含する。
【0126】
本発明の非極性オレフィンモノマーは、例えば、2〜12の炭素原子を有する非分岐鎖脂肪族オレフィン、4〜12の炭素原子を有する分岐鎖脂肪族オレフィン、2〜12の炭素原子を有する非分岐および分岐鎖脂肪族α−オレフィン、4〜12の炭素原子を有する共役オレフィン、8〜20の炭素を有する芳香族オレフィン、3〜12の炭素原子を有する非分岐および分岐鎖シクロオレフィン、2〜12の炭素原子を有する非分岐および分岐鎖アセチレン、およびその組み合わせを包含する。本発明の非極性オレフィンモノマーの例の非網羅的リストは、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、イソプレン、スチレン、アルファ−メチルスチレン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、アルキル置換ノルボルネン、アリール置換ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジビニルベンゼン、アセチレン、ジアセチレン、およびアルキニルベンゼンを包含する。
【0127】
本発明の極性オレフィンモノマーとしては、2〜60の炭素原子ならびに、O、N、B、Al、S、P、Si、F、Cl、Br、およびこれらの組み合わせなどの少なくとも1個の原子を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。これらの極性オレフィンモノマーとしては、例えば:C−C22直鎖または分岐鎖アルキル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、およびイソボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミドまたは置換(メタ)アクリルアミド;エポキシ含有(メタ)アクリレート、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート;スチレンまたは置換スチレン;ブタジエン;酢酸ビニルまたは他のビニルエステル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;フッ化ビニリデン;N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ(メチル)アミノエチル(メタ)アクリレート;フマレート、マレエート、シンナメートおよびクロトネートなどのα,β−不飽和カルボニル官能基を含有するモノマー;および(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。酸官能性メタクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、フマル酸、無水マレイン酸、モノメチルマレエート、およびマレイン酸が挙げられる。本発明の極性オレフィンモノマーは、フッ素含有モノマーおよびケイ素含有モノマーをはじめとする極性基を含有する任意のモノマーであってよい。極性オレフィンモノマーのさらなる非網羅的リストは、米国特許出願公開番号2005/0043494A1に開示されている。
【0128】
本発明の多エチレン性不飽和モノマーを本発明の付加ポリマー中に組み入れて、重合中、または重合後のいずれか、あるいはその両方で架橋を提供することができる。多エチレン性不飽和モノマーは、極性オレフィンまたは非極性オレフィンモノマーであってよく、エチレン性不飽和基は同一であっても、異なっていてもよい。有用な(メタ)アクリル多エチレン性不飽和モノマーとしては、これらに限定されるわけではないが、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、および1,1,1−トリメチロールプロパントリ(メチル)アクリレートが挙げられる。
【0129】
本発明の重合法において、中性金属対錯体を使用して:1以上の「非極性オレフィンモノマー」;1以上の「極性オレフィンモノマー」;または1以上の非極性オレフィンモノマーと1以上の極性オレフィンモノマーの組み合わせを重合させ、本発明の付加ポリマーを形成することができる。本発明の付加ポリマーの数平均分子量、Mn、は:少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも10000、または少なくとも20000であり;5000000以下、1000000以下、500000以下、または200000以下である。本発明の付加ポリマーのMWDの多分散性は:少なくとも1.000、少なくとも1.001、少なくとも1.01、または少なくとも1.05であり;10以下、2.5以下、1.5以下、または1.1以下である。本発明の付加ポリマーのMWDは単モード形または多モード形であり、ここにおいて多モード形は二モード形および三モード形、ならびにさらに高次のモダリティーを包含し;各モードのMWDの多分散性は前記定義の上限および下限を有することができる。
【0130】
本発明の「ポリ(非極性オレフィン)」は、重合単位として、本発明の中性金属対錯体の存在下で挿入付加重合できる任意の非極性オレフィンモノマーを含む任意のポリマーである。(例えば、ポリエチレン、ポリノルボルネン、および他の非極性オレフィンとのコポリマー)。
【0131】
本発明の「ポリ(極性オレフィン)」は、本発明の中性金属対錯体の存在下で挿入付加重合できる任意の極性オレフィンを重合単位として含む任意のポリマー(例えば、ポリ[(メタ)アクリレート]、ポリ[塩化ビニリデン]および関連するコポリマー)である。
【0132】
本発明の「ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]は、本発明の中性金属対錯体の存在下で挿入付加重合できる少なくとも一つの非極性オレフィンモノマーと少なくとも一つの極性オレフィンモノマーを重合単位として含む任意のポリマーである。以下は、コポリマーであるポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]の具体例の簡単な非網羅的リストである:ポリ[エチレン−コ−メチル(メタ)アクリレート]、ポリ[オクテン−コ−メチル(メタ)アクリレート]、ポリ[プロピレン−コ−(メタ)アクリレート]、ポリ[ノルボルネン−コ−(メタ)アクリレート]。実際、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]は、本発明の中性金属対錯体の存在下で挿入付加重合することができる任意の極性オレフィンおよび任意の非極性オレフィンを含み得る。本発明のポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]において重合単位として存在する極性オレフィンモノマーの非極性オレフィンモノマーに対するモル比は:少なくとも0.05:99.95、少なくとも0.5:99.5、少なくとも10:90、少なくとも20:80、または少なくとも40:60;あるいは99.95:0.05以下、99.5:0.5以下、90:10以下、80:20以下、または60:40以下である。
【0133】
本発明の付加ポリマーがコポリマーである場合、当該コポリマーは重合単位として、2、3、4、または4より多い異なるモノマーを包含することができ、異なるモノマーの数に特に制限はない。例えば、本発明の一具体例において、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]は、重合単位として、ノルボルネン、1−オクテン、およびメチルアクリレートを含むターポリマーである。
【0134】
「ポリ(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]を形成するために本発明の方法により重合される少なくとも一つの極性モノマーが(メタ)アクリレートモノマーである場合、本発明のポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]において重合単位として存在する(メタ)アクリレートモノマーの非極性オレフィンモノマーに対するモル比は:少なくとも0.05:99.95、少なくとも0.5:99.5、少なくとも10:90、少なくとも20:80、または少なくとも40:60であり;あるいは99.95:0.05以下、99.5:0.5以下、90:10以下、80:20以下、または60:40以下である。
【0135】
さらに、本発明の重合法において極性オレフィンモノマーと非極性オレフィンモノマーの両方が一緒に重合される場合、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]中に組み入れられるモノマーのモル百分率は、重合中に製造される全ポリマー中に組み入れられるモノマーの合計モル数に基づいて:少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも95であり;100以下、99以下、97以下である。
【0136】
特に、極性オレフィンモノマーと非極性オレフィンモノマーの両方が本発明の重合法において一緒に重合され、極性オレフィンモノマーの少なくとも一つが(メタ)アクリレートモノマーである場合、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]中に組み入れられるモノマーのモル百分率は、重合中に製造される全ポリマー中に組み入れられるモノマーの合計モル数に基づいて:少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも95であり;100以下、99以下、97以下である
【0137】
さらに、本発明の付加ポリマーがポリ(極性オレフィン)であり、重合単位として組み入れられる極性オレフィンモノマーの少なくとも一つが(メタ)アクリレートモノマーである場合、重合単位として存在する全ての(メタ)アクリレートモノマーの、重合単位として存在する全ての非(メタ)アクリレートモノマーに対するモル比は:少なくとも0.05:99.95、少なくとも0.5:99.5、少なくとも10:90、少なくとも20:80、または少なくとも40:60;または100:0以下、99.5:0.5以下、90:10以下、80:20以下、または60:40以下である。
【0138】
同様に、本発明の付加ポリマーがポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]であり、重合単位として組み入れられる極性オレフィンモノマーの少なくとも一つが(メタ)アクリレートモノマーである場合、重合単位として存在する全ての(メタ)アクリレートモノマーの、重合単位として存在する全ての非(メタ)アクリレートモノマーに対するモル比は少なくとも0.05:99.95、少なくとも0.5:99.5、少なくとも10:90、少なくとも20:80、または少なくとも40:60;または99.95:0.05以下、99.5:0.5以下、90:10以下、80:20以下、または60:40以下である。
【0139】
本発明の付加ポリマーが、重合単位として組み入れられた少なくとも一つの環状オレフィンを重合単位として含む場合、重合単位として存在する全ての環状オレフィンモノマーの、重合単位として存在する全ての非(環状オレフィン)モノマーに対するモル比は:少なくとも0.05:99.05、少なくとも0.5:99.5、少なくとも10:90、少なくとも20:80、または少なくとも40:60であり;または100:0以下、99.5:0.5以下、90:10以下、80:20以下、または60:40以下である。
【0140】
架橋ポリマーは、ノルボルネンおよび置換ノルボルネンモノマーを多官能性ノルボルネン型架橋性モノマーと共重合することにより製造することができる。多官能性ノルボルネン型架橋性モノマーとは、架橋性モノマーが少なくとも2つのノルボルネン型部分(ノルボルネン型二重結合)を含有することを意味し、各官能基は本発明の触媒系の存在下で重合可能である。架橋可能なモノマーとしては、縮合多環式環系および結合多環式環系が挙げられる。
【0141】
本発明の付加ポリマーの製造法は:少なくとも−100℃、少なくとも−50℃、少なくとも0℃、または少なくとも20℃であり;200℃以下、160℃以下、140℃以下、または120℃以下の反応温度で行うことができる。この方法は:少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも0.5、または少なくとも1.0であり、1000以下、100以下、10以下、5以下の圧力(大気中、すなわち、1.0の値については反応容器の内部の圧力は1.0気圧である)で行うことができる。さらに、エチレン性不飽和モノマーの本発明の中性金属対錯体に対するモル比は、少なくとも50:1、少なくとも200:1、少なくとも250:1、または少なくとも1000:1であり、5000000:1以下、2000000:1以下、500000:1以下、250000:1以下、または100000:1以下である。高圧、特に、例えば400psi以上の一定の高圧での気体状モノマーについて、エチレン性不飽和モノマーの本発明の中性金属対錯体に対するモル比は、5000000:1以上、例えば6000000:1以下、8000000:1以下、またはさらに高くてもよい。本発明の重合法において、希釈剤の量は、本発明の中性金属対錯体1ミリモルあたりの希釈剤の体積(ミリリットル)で表すと:少なくとも0.0、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100であり;10000000以下、1000000以下、100000以下、10000以下、または5000以下である。
【0142】
付加ポリマーの粒子が本発明の付加ポリマーの製造法により製造される場合、当該方法の詳細に応じて、ポリマー粒子は(ミクロンで表すと):少なくとも0.002、少なくとも0.04、少なくとも0.1、または少なくとも0.8であり;500以下、20以下、10以下、5以下、または3以下の平均粒子直径(すなわち、平均粒子サイズ)を有する。当該粒子のPSD多分散性は:少なくとも1、少なくとも1.001、少なくとも1.01、または少なくとも1.05であり;10以下、5以下、1以下、1.3以下、または1.1以下である。本発明の付加ポリマーのPSDは単モード形または多モード形であってよく、ここにおいて多モード形は二モード形および三モード形、四モード形、ならびにさらに高次のモダリティーを包含し、各粒子サイズモードについてのPSDの多分散性は前記定義のような上限および下限を有しうる。触媒重合分野における当業者は、1000ミクロン(1ミリメートル)より大きな平均粒子直径を有する粒子を製造することさえも可能であることをさらに認識するであろう。これは、例えば、溶液またはバルク重合、あるいはポリマー沈殿を伴う重合の最中またはその後の蒸発の結果として起こり得る。このようにして、一層大きなモノリシックポリマー構造を形成することができる。
【0143】
本発明の付加ポリマーの製造法は、バルクまたは希釈剤中で行うことができる。触媒組成物が重合される1以上のエチレン性不飽和モノマー中に可溶性である場合、重合をバルクで行うのが好都合でありうる。かかるバルク重合は、例えばバッチまたは連続様式において、あるいは反応射出成形または他の押出または成形をベースとした技術により行うことができる。本発明の他の具体例において、重合は希釈剤中で行われる。触媒組成物に悪影響を及ぼさず、モノマーのための溶媒となる任意の有機または水性希釈剤を用いることができる。有機溶媒の具体例は:脂肪族(非極性)炭化水素、例えばヘキサンおよびヘプタン;脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン;芳香族炭化水素、例えばトルエン;ハロゲン化(極性)炭化水素、例えば塩化メチレンおよびクロロベンゼンである。触媒組成物が分解されない重合系について、希釈剤としては水、水と混和性の溶媒、およびそれらの組み合わせであることができる。希釈剤はさらに、例えば米国特許出願公開番号US2005/0043494A1および米国特許第6632531号に開示されている任意の不安定物質、例えば、2,2−ジメチリルプロパン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエチレンプロパン(−42.1℃)、二酸化炭素、およびテトラフルオロメタン(−130℃)を包含することができ、ここにおいて、反応は超臨界条件下または超臨界条件以下で行われる。
【0144】
本発明の希釈剤は、米国特許出願公開番号US2005/0043494A1に開示されている「イオン性液体」であってもよい。イオン性液体は、Dupont,J.Chem.Rev.2002,102,3667;Kabisa,P.Prog.Poly.Sci.2004,29,3に開示されているように、室温または室温付近で流体である有機塩または塩の混合物のいずれかである。
【0145】
本発明の任意の反応を行うための所定の雰囲気の適切性は、反応物質、中間体および副生成物の当該雰囲気に対する安定性に依存する。典型的には、例えば窒素またはアルゴンをはじめとする気体が用いられる。所定の重合についての雰囲気ガスの選択は当業者には明らかであろう。
【0146】
本発明の付加ポリマーの製造において用いられる場合、本発明のモノマーおよび/または触媒組成物は希釈剤中に完全に可溶性でなくてもよく、あるいは不溶性であってさえもよい。この状態は、例えば、重合の場所が触媒組成物とエチレン性不飽和モノマーの両方により接近可能でなければならない異種系において起こる。このような場合において、モノマー、または触媒組成物の錯体を、所望の重合の場所に輸送するために、1以上の輸送剤を用いるのが有利でありうる。例えば、水性乳化重合中に、水溶性が低いかまたは非常に低いエチレン性不飽和モノマーを、水性相を横切ってポリマー粒子へ輸送するために、シクロデキストリンなどの輸送剤を有利に用いることができる。
【0147】
バルクおよび溶液重合として行われることに加えて、本反応の重合は、例えば流動床または撹拌槽リアクター中で、任意に、形成されるポリマーのサイズおよび形状を制御するためのプレポリマーの存在下で、気相において行うことができる。ポリエチレン、ポリブテン、ポリヘキセン、および関連するコポリマー(たとえば、メチルメタクリレートを含有するコポリマーを包含する)を気相重合により製造することができる。
【0148】
本発明の付加ポリマーのさらなる製造法は、これらに限定されるわけではないが、水性溶液重合、水性乳化重合、水性懸濁重合、水性ミクロエマルジョン重合、水性ミニエマルジョン、および水性逆乳化重合、水性分散重合、および水性沈殿重合を包含する当該分野において公知の任意の好適な方法であってもよい。乳化重合法の説明は、Blackley,D.C.Emulsion Polymerisation;Applied Science Publishers:London,1975;Odian,G.Principles of Polymerization;John Wiley & Sons:New York,1991;Emulsion Polymerization of Acrylic Monomers;Rohm and Haas,1967に開示されている。本発明の方法は、さらに米国特許第663231号、および公開された米国特許出願公開番号US2003/0007990に開示されている方法も包含する。
【0149】
本発明の中性金属対錯体は、担持されていない物質として好適に用いられる。別法として、本発明の任意の錯体は、反応条件下で通常固体であり、反応媒体中に実質的に不溶性である「無機固体担体」(無機担体)または「有機ポリマー固体触媒担体」(有機担体)上に担持させることができる。本明細書において用いられる場合、「担体」および「担持体」なる用語は互換的に用いられる。好適な無機担体の例は、無機酸性酸化物、例えばアルミナおよび耐火性酸化物として知られる無機物質である。好適な耐火性酸化物としては、合成成分ならびに酸処理クレーおよび類似の物質、例えば珪藻土またはモレキュラシーブとして当該分野において公知の結晶性マクロレティキュラーアルミノシリケートが挙げられる。一般に、合成触媒担体が、天然に存在する物質またはモレキュラシーブよりも好ましい。合成触媒担体の例としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−チタニア−ジルコニア、シリカ−マグネシア−アルミナ、塩化マグネシウムなどが挙げられる。有機担体としては、例えば、極性官能基または炭素−炭素二重結合の有無にかかわらずマクロレティキュラー樹脂が挙げられる。
【0150】
本発明の中性金属対錯体が担持される場合、その担体との比は重要ではない。一般に、本発明の中性金属対錯体、または前駆錯体の割合(重量%)は、触媒担体の重量に基づいて:少なくとも0.001%、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、または少なくとも1.0%であり;5%以下、10%以下、20%以下、または70%以下である。中性金属対錯体は任意の好適な方法で担体上に導入される。一つの修飾法において、あらかじめ形成された中性金属対錯体と担体を不活性希釈剤(当該中性金属対錯体の製造に使用した不活性希釈剤と同じであっても、同じでなくてもよい)中でよく接触させることにより、担持された中性金属対錯体を製造する。他の修飾法において、中性金属対錯体前駆体を触媒担体の存在下で好適な不活性希釈剤中で接触させることにより、中性金属対錯体を触媒担体担持体表面上で直接製造することができる。前記の担持体に加えて、本発明の中性金属対錯体は、公開された米国特許出願公開番号US2002/60226997、US2002/0052536、米国特許出願番号US60/383650およびUS60/440142、およびChenおよびMarks,Chem.Rev.、100,1391−1434,2000において開示された任意の担持体またはマトリックス上に担持させることができる。
【0151】
本発明の中性金属対錯体の製造法の一具体例において、第一前駆錯体と第二前駆錯体は、次の反応スキームにおいて組み合わせられる:
【0152】
【化8】

【0153】
第一前駆錯体(Mを含有)を第二前駆体(Mを含有する錯体)と接触させて、中性金属対錯体を形成する。第一前駆体は中性錯体(n=0)であるか、またはカチオン性金属錯体(n=1、2、または3)、すなわち、正の電荷を有し、カチオン性金属錯体上の電荷のバランスをとる総負電荷を有する(すなわち、もしカチオン性金属錯体についてn=2であるならば、アニオン性対イオンの組の総電荷についてn=2である)1以上のアニオン性対イオンの組を伴うものであってよい。反対に、第二前駆錯体は中性錯体(w=0)、またはアニオン性金属錯体(w=1、2、または3)、すなわち負の電荷を有し、アニオン性金属錯体上の電荷のバランスをとる総正電荷を有する1以上のカチオン性対イオンの組を伴うものであってよい(すなわち、アニオン性金属錯体についてw=2であるならば、カチオン性対イオンの組の総電荷についてw=2である)。
【0154】
第一前駆錯体と第二前駆錯体との反応の間に「スカベンジャー」が存在することがさらに望ましい場合がある。本発明のスカベンジャーは、第一前駆錯体の第一金属原子Mの配位部位から第一リガンドを除去して、配位部位を開いて、ドナーと第二前駆錯体の配位結合を形成することができるルイス酸である。スカベンジャーの例示的リストは、これらに限定されないが、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、アセチルアセトナトビス(エチレン)ロジウム、トリペンタフルオロフェニルボラン、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびその組み合わせを包含する。
【0155】
中性金属対錯体を生成する反応の温度(℃)は:少なくとも−100℃、少なくとも−50℃、少なくとも0℃、または少なくとも20℃であり;200℃以下、160℃以下、140℃以下、または120℃以下である。本発明の中性金属対錯体の製造法において、希釈剤の量(中性金属対錯体1ミリモルあたりの体積(ミリリットル)で表す)は:少なくとも0.0、少なくとも2、少なくとも5、または少なくとも10であり;1000以下、500以下、200以下、または100以下である。有用な希釈剤としては、本発明のエチレン性不飽和モノマーの重合を行うのに有用な非水性希釈剤(前出)の任意のものが挙げられる。前駆錯体も中性金属対錯体も悪影響を受けない場合、水または水混和性希釈剤を同様に使用することができる。
【0156】
本発明の中性金属対錯体の製造法の他の具体例において、前記反応スキームの任意のものを、無機担持体、有機ポリマー担持体、ペアカップリング部分、またはそれらの組み合わせの存在下で行うことができる。
【0157】
本発明の触媒組成物を用いて製造された付加ポリマーは、現在広範囲の市場区分においては得られない多数の新規生成物および市場機会を提供し、その簡単な非網羅的リストは、コーティング、自立性フィルム、プラスチック添加剤、インク、接着剤、シーラント、織物、複合材料、および電子材料を包含する。(米国特許出願公開番号US2005/0043494A1に開示されている本発明の付加ポリマーについての出願も参照)。
【実施例】
【0158】
本発明のさまざまな具体例を以下の実施例において詳細に記載する。実施例において用いられる化学物質を表Iに列挙する。
【0159】
【表1】

【0160】
一般法
実施例1〜14の重合反応を、窒素雰囲気下でドライボックス内で行う。反応を準備した後、ガラス容器を密封し、ドライボックスから取り出し、ドラフト中水浴/Variomagヒートブロックを用いて加熱する。特に記載しない限り、全ての化学物質は供給業者から購入し、さらに精製せずに使用する。活性化モレキュラシーブおよびQ−5酸素スカベンジャーを含むカラムを通すことにより、窒素を精製する。活性化モレキュラシーブ(4Å)/アルミナ/Oリムーバー(例えばQ−5)のカラムを通すことによりトルエンを精製し、活性化アルミナのカラムを通すことにより塩化メチレンを精製する。メチルアクリレート(99%)をAldrichから購入し、MEHQ阻害剤リムーバーおよび活性化モレキュラシーブ(4Å)のカラムを通すことにより精製し、窒素で0.5時間パージする。ノルボルネン(99%)をAcrosから購入し、次の2つの方法のうちの一つを用いて精製する:1)水素化カルシウムを用いて60℃で一夜乾燥し、凍結ポンプ融解を2回することにより脱気し、50℃で乾燥ガラス受器に真空輸送する;2)少量のトルエン中に溶解させて、無色透明溶液を得、これを活性化モレキュラシーブ(4Å)のカラムに通し、窒素で0.5時間パージする。このノルボルネンのトルエン溶液の濃度をH NMR分析により決定する。ヘキサフルオロイソプロパノールノルボルネンおよびクロロベンゼンをそれぞれ窒素で0.5時間スパージし、次いでアルミナとモレキュラシーブ(3Å)を含有するカラム上に通すことにより精製する。
【0161】
核磁気共鳴(NMR)分光分析
特に記載しない限り、NMRスペクトルをVarian600、Bruker DMX−400またはDRX−500分光計で23℃で記録する。Hおよび13C化学シフトをSiMeに対して記録し、残存Hおよび13C溶媒シグナルを基準にして決定する。
【0162】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いた分子量決定
ゲル透過クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られ、そのモル質量ではなく、溶液中のその流体力学的サイズにしたがってポリマー鎖の分布の構成要素を実際に分離する。系を次いで分子量および組成が既知のスタンダードで校正して、溶出時間を分子量と関連づける。GPCの技術はModern Size Exclusion Chromatography,W.W.Yau,J.J Kirkland,D.D.Bly;Wiley−Interscience,1979、およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis,J.P.Sibilia;VCH,1988,p81−84において詳細に議論されている。
【0163】
全てのサンプルをTHFまたはクロロホルム(HPLC等級)中2mg/mLの濃度で製造し、穏やかに撹拌してポリマーサンプルを完全に溶解させる。1μmPTFEフィルターを用いて全てのポリマー溶液を濾過する。2PLゲルMixed Bカラムおよび蒸発光散乱検出器(ELSD)を用いてGPC分離を行う。典型的なクロマトグラフィー条件:2PLゲルMIXED Bカラム、粒子サイズ5μm;溶離剤:THFまたはCHCl(HPLC等級)、1.0ml/分;サンプル溶液の注入体積:50μL;580〜2560000g/モル(THFまたはCHCl中0.5mg/mL)の範囲の分子量を有するPSスタンダードを使用して検量線を作成する;ELS検出、(TN=40℃、TECH=80℃、F窒素=1L/分)。
【0164】
液体クロマトグラフィー−NMR
典型的なLC−NMR実験条件:サンプルをCDCl中に溶解させて溶液(約1%)を形成し、0.2ミクロンフィルターを通して濾過する。ポリマー分離をSUPLECOSIL逆相C−18カラム(25cm×4.6mm)上で1ml/分の流速で行う。蒸発光散乱検出(ELSD)およびUV検出器を24分で95/5/0から0/0/100のアセトニトリル/水/THFの溶媒勾配で使用する。Varian UNITY INOVA600MHzNMR分光計でHLC−NMRスペクトルを得る。
【0165】
示差走査熱量測定法(DSC):
TA Instrumentsにより製造されたQ−1000シリーズDSCで変調示差走査熱量分析を行う。25mL/分の流速で、窒素の不活性雰囲気下、サンプルを流す。サンプルを−90℃から+380℃まで7℃/分の割合で、1℃の変調振幅、および40秒の期間で加熱する。
【0166】
次の中性金属対錯体を実施例において使用する:
【0167】
【化9】

【0168】
【化10】

【0169】
【化11】

【0170】
【化12】

【0171】
【化13】

【0172】
【化14】

【0173】
【化15】

【0174】
【化16】

【0175】
【化17】

【0176】
次の錯体を前記中性金属対錯体の製造において使用する:
【0177】
【化18】

【0178】
【化19】

【0179】
【化20】

【0180】
【化21】

【0181】
【化22】

【0182】
【化23】

【0183】
【化24】

【0184】
【化25】

【0185】
【化26】

【0186】
【化27】

【0187】
中性金属対錯体の製造例を以下に記載する。
【0188】
(実施例A)
中性金属対錯体Iの合成(スキーム1)
【化28】

【0189】
50mLのシュレンク(Schlenk)フラスコに錯体W(20ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を添加して透明黄色溶液を形成させる。錯体X(20ミリモル)のCHCl(5mL)中溶液をシリンジにより0℃で添加して、暗黄色溶液を形成させる。反応混合物を0℃で60分間撹拌し、次いでCHCl(約10mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置し、一夜で黄色結晶性固体を得、これを濾過により単離する。実験により黄色固体(収率82.2%)を得る。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体Iであることが示される。
【0190】
(実施例B)
中性金属対錯体IIの合成(スキーム2)
【化29】

【0191】
50mLのシュレンクフラスコに錯体E(20ミリモル)および等モル量のスカベンジャー、例えば、Ni(cod)(またはB(C、Rh(acac)(C)を装填する。CHCl(10ml)が、−40℃で添加され、透明暗黄色溶液を得る。錯体W(20ミリモル)のCHCl(5mL)中溶液をシリンジにより−40℃で添加して明黄色溶液を形成させる。反応混合物を−40℃で60分間撹拌し、次いでCHCl(約10mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率77%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体IIであることが示される。
【0192】
(実施例C)
中性金属対錯体IIIの合成(スキーム3)
【化30】

【0193】
50mLのシュレンクフラスコに錯体G(20ミリモル)およびオルト−(HO)C(ONa)(20ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体N(20ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液は最上層がペンタン層(約5mL)であり、周囲温度で一夜静置すると、黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率79.9%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体IIIであることが示される。
【0194】
(実施例D)
中性金属対錯体IVの合成(スキーム4)
【化31】

【0195】
50mLのシュレンクフラスコに錯体F(25ミリモル)およびsal−An−sal(25ミリモル)を装填する。CHCN(15mL)を周囲温度で添加し、続いて錯体FのCHCN中溶液(25ミリモル、10mL)を添加する。反応混合物を周囲温度で30分間撹拌し、次いでCHCNを真空下で除去し、これにより黄色固体を得る(収率77.8%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体IVであることが示される。
【0196】
(実施例E)
中性金属対錯体Vの合成(スキーム5)
【化32】

【0197】
50mLのシュレンクフラスコに錯体G(30ミリモル)およびNaS(30ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体Y(30ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率79.9%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体Vであることが示される。
【0198】
(実施例F)
中性金属対錯体VIの合成(スキーム6)
【化33】

【0199】
50mLのシュレンクフラスコに錯体Y(30ミリモル)およびNaS(30ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体Y(30ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率77.8%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体VIであることが示される。
【0200】
(実施例G)
中性金属対錯体VIIの合成(スキーム7)
【化34】

【0201】
50mLのシュレンクフラスコに錯体G(30ミリモル)およびNaS(30ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体B(30ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率77.1%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体VIIであることが示される。
【0202】
(実施例H)
中性金属対錯体VIIIの合成(スキーム8)
【化35】

【0203】
50mLのシュレンクフラスコに錯体Y(30ミリモル)およびNaS(30ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体B(30ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率82.2%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体VIIIであることが示される。
【0204】
(実施例I)
中性金属対錯体IXの合成(スキーム9)
【化36】

【0205】
50mLのシュレンクフラスコに錯体B(30ミリモル)およびNaS(30ミリモル)を装填する。CHCl(10mL)を周囲温度で添加して、透明淡黄色溶液を形成させる。錯体B(30ミリモル)のCHCl(15mL)中溶液をシリンジにより周囲温度で添加して黄色溶液を形成させる。反応混合物を周囲温度で60分間撹拌し、次いでCHCl(約30mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率89.8%)。NMRスペクトルにより生成物が中性金属対錯体IXであることが示される。
【0206】
(実施例J)
錯体Yの合成(スキーム10)
【化37】

【0207】
250mLのシュレンクフラスコに錯体O(100ミリモル)およびKB(C(200ミリモル)を装填する。CHCl(50mL)およびジエチルエーテル(EtO、25mL)の混合溶媒を0℃で添加して、淡黄色溶液中白色スラリーを形成させる。反応混合物を0℃で120分間撹拌する。KClを濾過により除去する。溶媒(約60mL)を真空下で除去する。濃縮溶液を−80℃で静置すると、一夜で黄色結晶性固体が生成し、これを濾過により単離する。実験により黄色固体を得る(収率91.2%)。NMRスペクトルにより生成物が錯体Yであることが示される。
【0208】
中性金属対錯体による重合の例を以下に記載する。
(実施例1)
本発明の方法に従ってノルボルネンのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
100mLのセラムボトルにトルエン(20mL)およびノルボルネン(1.13g、12ミリモル、トルエン中にあらかじめ溶解、86重量%)を添加し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体I(0.1マイクロモル)のCHCl(1mL)中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で1時間撹拌し、これを次いで周囲温度に冷却し、メタノール(50mL)でクエンチして、灰白色スラリーを得る。固体を濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×15mL)、真空下、60℃で一夜乾燥して、灰白色固体(0.95g)を得る。NMR分析により、生成物がポリノルボルネンであることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw1200000、Mn1000000、Mw/Mn1.2
【0209】
(実施例2)
本発明の方法に従ってエチレンのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(3mL)を、メカニカルスターラーを備えたスチール製圧力容器のガラスライナー(8mL容量)に装填する。圧力容器を密封し、50℃に加熱する。エチレン圧(350psig)を導入する。オーブン乾燥された気密性シリンジを用いて中性金属対錯体II(0.25mLの塩化メチレン中8マイクロモル)を圧力容器に注入する。0.75mLのトルエンをシリンジにより添加して、注入孔をリンスする。これらの反応条件下で2時間、重合を進行させる。この後、リアクターをベントし、ガラスライナーの内容物をメタノールに添加する。一夜撹拌後、沈殿したポリマーを真空濾過により集め、メタノールで洗浄する。ポリマーを60℃に加熱された真空オーブン中で一夜乾燥する。示差走査熱量分析(DSC)による融点転移は約130℃であり、融解熱(ΔH)は100J/gを越える。
【0210】
(実施例3)
本発明の方法に従ってメチルアクリレートのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(20mL)およびメチルアクリレート(8.6g、0.1モル)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体III(10マイクロモル)のCHCl(1mL)中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で4時間撹拌し、これを次いで周囲温度に冷却し、メタノール(100mL)でクエンチする。沈殿したポリマーを濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、65℃で一夜乾燥して、白色固体(1.2g)を得る。NMR分析により、生成物がポリ(メチルアクリレート)であることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw100000、Mn58000、Mw/Mn1.7。
【0211】
(実施例4)
本発明の方法に従ってスチレンのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(20mL)およびスチレン(10.4g、0.1モル)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体IV(10マイクロモル)のCHCl(1mL)中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で4時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、メタノール(100mL)でクエンチする。沈殿したポリマーを濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、65℃で一夜乾燥して、白色固体(5g)を得る。NMR分析により、生成物がポリスチレンであることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw250000、Mn125000、Mw/Mn2.0。
【0212】
(実施例5)
本発明の方法に従って酢酸ビニルのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(20mL)および酢酸ビニル(8.6g、0.1モル)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体V(10マイクロモル)のCHCl(1mL)中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で4時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、メタノール(100mL)でクエンチする。沈殿したポリマーを濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、65℃で一夜乾燥して、白色固体(2.0g)を得る。NMR分析により、生成物がポリ(酢酸ビニル)であることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw170000、Mn86000、Mw/Mn2.0。
【0213】
(実施例6)
本発明の方法に従って塩化ビニルのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(10mL)をフィッシャー・ポーター(Fischer−Porter)リアクターに装填する。−196℃での凝縮により塩化ビニル(89ミリモル、800mLガラスバルブにより測定)を添加する。リアクターを−78℃にゆっくりと温め、CHCl(1mL)中、中性金属対錯体VI(0.6マイクロモル)をシリンジによりゴム製セプタムを通して添加する。リアクターを密封し、ゆっくりと55℃に温め、この温度で反応混合物を激しく撹拌する。6時間後、リアクターを周囲温度に冷却し、過剰な圧力を解放した後、酸性化メタノール(1体積%、250mL)を含有するビーカー中に反応混合物を注いで、白色スラリーを得る。固体を濾過により集め、新鮮なメタノールで洗浄し(3×15mL)、真空下、60℃で18時間乾燥して、白色固体(4.8g)を得る。NMR分析により、生成物がポリ(塩化ビニル)であることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw220000、Mn200000、Mw/Mn1.1。
【0214】
(実施例7)
本発明の方法に従ってメチルビニルエーテルのホモポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(20mL)およびメチルビニルエーテル(5.8g、0.1モル、トルエン中にあらかじめ溶解、74重量%)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体VII(0.25マイクロモル)のCHCl(1mL)中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で4時間撹拌し、これを次いで周囲温度に冷却し、メタノール(100mL)でクエンチして、白色スラリーを得る。固体を濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、65℃で一夜乾燥して、白色固体(5.1g)を得る。NMR分析により、生成物がポリ(メチルビニルエーテル)であることが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw140000、Mn100000、Mw/Mn1.4。
【0215】
(実施例8)
本発明の方法に従って5−R−ノルボルネン(R=CHC(CFOH)およびtert−ブチルアクリレートのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(25mL)、5−R−ノルボルネン(13.7g、50ミリモル)、tert−ブチルアクリレート(6.4g、50ミリモル)を100mLセラムボトルに装填し、N下でゴム製セプタムで密封する。CHCl中の中性金属対錯体VIII(0.15マイクロモル)の溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で撹拌する。3.5時間後、反応混合物を周囲温度に冷却し、ヘキサン(250mL)でクエンチして、直ちに白色スラリーを形成させる。固体を濾過により単離し、すべての揮発性種を真空下(0.5mmHg)、60℃、一夜で除去する。残存する固体を次いでCHCl中に再溶解させ、溶液をイオン交換樹脂のカラムを通して触媒残留物を除去する。精製された溶液を集め、CHClを真空下、50℃で一夜除去すると、白色粉末(14.2g)が得られる。13C NMR実験により、生成物が55(5−R−ノルボルネン):45(tert−ブチルアクリレート)のモル比を有することが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw25000、Mn20000、Mw/Mn1.25。
【0216】
(実施例9)
本発明の方法に従ってエチレンおよびメチルアクリレートのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
メチルアクリレート(1mL)およびトルエン(3mL)をメカニカルスターラーを備えたスチール製圧力容器のガラスライナー(8mL容量)に装填する。圧力容器を密封し、50℃に加熱する。エチレン圧(350psig)を導入する。オーブン乾燥された気密性シリンジを用いて中性金属対錯体IX(0.25mLの塩化メチレン中8マイクロモル)を圧力容器に注入する。0.75mLのトルエンをシリンジにより添加して、注入孔をリンスする。これらの反応条件下で4時間、重合を進行させる。この後、リアクターをベントし、ガラスライナーの内容物をメタノールに添加する。一夜撹拌後、沈殿したポリマーを真空濾過により集め、メタノールで洗浄する。ポリマーを60℃に加熱された真空オーブン中で一夜乾燥する。H NMRにより、生成物が80(エチレン):20(メチルアクリレート)のモル比を有するコポリマーであることが示される。GPC分析は単モード形を示す;Mw80000、Mn50500、Mw/Mn1.6。
【0217】
(実施例10)
本発明の方法に従ってノルボルネンおよびメチルアクリレートのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
トルエン(20mL)、ノルボルネン(1.70g、18ミリモル、トルエン中にあらかじめ溶解、86重量%)、メチルアクリレート(1.0g、12ミリモル)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体I(0.2マイクロモル)のCHCl中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で激しく撹拌する。5時間後、反応混合物を周囲温度に冷却し、メタノール(200mL)でクエンチして、瞬時に淡黄色スラリーを形成させる。固体を濾過により単離し、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、60℃で一夜乾燥して、淡黄色固体(2.4g)を得る。NMR実験により、生成物が72(ノルボルネン):28(メチルアクリレート)のモル比を有することが示される。GPC分析は単モード形を示す:Mw60000、Mn40000、Mw/Mn1.25。
【0218】
(実施例11)
本発明の方法に従ってエチレンおよびノルボルネンのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
ノルボルネン(トルエン中79重量%溶液を2mL)およびトルエン(25mL)をメカニカルスターラーを備えたスチール製圧力容器のガラスライナー(8mL容量)に装填する。圧力容器を密封し、50℃に加熱する。エチレン圧(350psig)を導入する。オーブン乾燥された気密性シリンジを用いて中性金属対錯体II(0.25mLの塩化メチレン中8マイクロモル)を圧力容器に注入する。0.75mLのトルエンをシリンジにより添加して、注入孔をリンスする。これらの反応条件下で2時間、重合を進行させる。この後、リアクターをベントし、ガラスライナーの内容物をメタノールに添加する。一夜撹拌後、沈殿したポリマーを真空濾過により集め、メタノールで洗浄する。ポリマーを60℃に加熱された真空オーブン中で一夜乾燥する。H NMRにより、生成物が55(エチレン):45(ノルボルネン)のモル比を有するコポリマーであることが示される。GPC分析は単モード形を示す;Mw150000、Mn80000、Mw/Mn1.9。
【0219】
(実施例12)
本発明の方法に従ってノルボルネン、1−オクテンおよびメチルアクリレートのターポリマーを製造するための触媒中性金属対錯体の使用。
ノルボルネン(12ミリモル、トルエン中にあらかじめ溶解、79重量%)、メチルアクリレート(12ミリモル)、1−オクテン(30ミリモル)およびトルエン(20mL)を100mLセラムボトルに装填し、ゴム製セプタムで密封する。中性金属対錯体III(0.34マイクロモル)のCHCl中溶液をシリンジにより50℃で添加する。反応混合物を50℃で撹拌する。4時間後、反応混合物を周囲温度に冷却し、メタノール(250mL)でクエンチする。固体を濾過により集め、新鮮なメタノールで洗浄し(3×25mL)、真空下、70℃で一夜乾燥して、白色固体を(2.5g)を得る。NMR分析により、生成物が15(ノルボルネン):30(1−オクテン):55(メチルアクリレート)のモル比を有することが示される。GPC実験は単モード形を示す:Mw70000、Mn43750、Mw/Mn1.6。
【0220】
(実施例13)
本発明の方法に従ってエチレンおよびメチルメタクリレートのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
メチルメタクリレート(1mL)およびトルエン(2mL)をメカニカルスターラーを備えたスチール製圧力容器のガラスライナー(8mL容量)に装填する。圧力容器を密封し、50℃に加熱する。エチレン圧(350psig)を導入する。オーブン乾燥された気密性シリンジを用いて中性金属対錯体IV(0.25mLの塩化メチレン中8マイクロモル)を圧力容器に注入する。0.75mLのトルエンをシリンジにより添加して、注入孔をリンスする。これらの反応条件下で4時間、重合を進行させる。この後、リアクターをベントし、ガラスライナーの内容物をメタノールに添加する。一夜撹拌後、沈殿したポリマーを真空濾過により集め、メタノールで洗浄する。ポリマーを60℃に加熱された真空オーブン中で一夜乾燥する。H NMRにより、生成物が90(エチレン):10(メチルメタクリレート)のモル比を有するコポリマーであることが示される。GPC分析は単モード形を示す;Mw25000、Mn15000、Mw/Mn1.7。
【0221】
(実施例14)
本発明の方法に従ってエチレンおよびスチレンのコポリマーを製造するための中性金属対錯体の使用。
スチレン(1mL)およびトルエン(2mL)をメカニカルスターラーを備えたスチール製圧力容器のガラスライナー(8mL容量)に装填する。圧力容器を密封し、50℃に加熱する。エチレン圧(350psig)を導入する。オーブン乾燥された気密性シリンジを用いて中性金属対錯体V(0.25mLの塩化メチレン中8マイクロモル)を圧力容器に注入する。0.75mLのトルエンをシリンジにより添加して、注入孔をリンスする。これらの反応条件下で4時間、重合を進行させる。この後、リアクターをベントし、ガラスライナーの内容物をメタノールに添加する。一夜撹拌後、沈殿したポリマーを真空濾過により集め、メタノールで洗浄する。ポリマーを60℃に加熱された真空オーブン中で一夜乾燥する。H NMRにより、生成物が60(エチレン):40(スチレン)のモル比を有するコポリマーであることが示される。GPC分析は単モード形を示す;Mw95000、Mn60000、Mw/Mn1.6。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性金属対錯体を含む触媒組成物であって;
該中性金属対錯体が下記式を有する、触媒組成物。
【化1】

(式中、Arは2,6−MePhである。)
【請求項2】
付加ポリマーを製造する方法であって、
請求項1記載の触媒組成物と、
エチレン性不飽和極性オレフィンモノマーと、
エチレン性不飽和非極性オレフィンモノマーとを、20〜120℃の反応温度で組み合わせ;さらに
前記エチレン性不飽和極性オレフィンモノマーと前記エチレン性不飽和非極性オレフィンモノマーとを前記触媒組成物の存在下で重合させて、ポリ[(極性オレフィン)−(非極性オレフィン)]付加ポリマーを形成することを含む方法。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和極性オレフィンモノマーがメチルアクリレートであり、及び前記エチレン性不飽和非極性オレフィンモノマーがノルボルネンである、請求項2記載の方法。

【公開番号】特開2009−203479(P2009−203479A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−122025(P2009−122025)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【分割の表示】特願2006−146159(P2006−146159)の分割
【原出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】