説明

計測装置

【課題】管状披検体内壁の全周観察・計測時に側方視野を持つ光切断計測装置の視野方向を容易に選択操作可能とすることで、管状被検体内壁の傷部分の観察や計測の操作性を著しく改善した光切断法を用いた計測装置を提供する。
【解決手段】
挿入部の挿入方向軸に対して前方視野を有するように装着された直視撮像手段と、挿入方向軸に対して挿入方向軸の周りを回転可能とした側方の視野をもつ光切断法計測ヘッド部を有し、回転する光切断法計測ヘッド部の視野方向を検出し視野方向を画像として、直視撮像モジュールによる画像内に重畳して表示し、回転方向を制御することで光切断法計測ヘッド部の視野方向を選択可能とした光切断法を用いた計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器内部やパイプ等の管状被検体の内壁等の計測に適した、挿入方向軸に対して側方の計測視野を持つ光切断法を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で立体形状を計測する技術としては光切断法を用いた計測装置が広く用いられている。
光切断法による計測装置は、図1に示すように光学パターン111を投影する光学パターン投影手段102と、光学パターン投影手段102の光軸108に対して所定の角度θずれた光軸109を持って装着された撮像手段103より構成される光切断法計測ヘッド部104を有し、計測対象部101に光学パターンを投影し、計測対象部101と投影された光学パターン105を前記撮像手段103で撮像し映像信号処理部116で映像信号処理を行うと共に、計測信号処理部117で画像形状の計測信号処理を行い対象物の画像と計測処理結果をモニター118に表示するのが一般的である。
【0003】
光学パターン投影手段102は、光学パターン111を投影する投影レンズ110と光学パターンを照明する発光ダイオード112より構成されており、撮像手段103は撮像レンズ113とCCDのような固体撮像素子114を含んで構成されている。
【0004】
計測対象部101が基準面106より凸状の部分107を有している場合は、光学パターン投影手段102に装着されている直線状の光学パターンは対象物の凸状の形状に沿った線状パターン105(鎖線で示す)のように投影される。光学パターン投影手段102の光軸108から角度θ傾いた光軸109を持つ撮像手段103によって撮像された線状パターン画像は、計測対象部が基準面と同一面の場合は図2(A)のように直線状になるが、凸部の部分は図2(B)のように上方にdずれた形の画像としての計測信号になる。このずれ量dを検出して計測信号処理部117で計測信号の演算処理することで、凸部の高さがわかる。また対象物が凹状の形状をしている場合には、下方にdずれた形の画像となる。
【0005】
このような光切断法計測ヘッド部を内視鏡のような細長い筒状挿入部の先端部に装着して、パイプ等の管内壁を観察、計測するには図3に示すような挿入軸方向に対して側方の計測視野を持った構造が提示されている。(特開昭62−73223、特開平3−73133)
概略構成を説明すると、パイプ等の管状被検体301内壁の検査対象部(傷部分)302を計測する場合には、筒状挿入部の挿入軸方向305に対して側方視野を持つように配置された、光学パターン投影手段102と撮像手段103で構成される光切断法計測ヘッド部104が筒状挿入部の先端部303に装着されている。光学パターン投影手段102と撮像手段103の構成は図1の場合と同じなので細部は省略するが、撮像手段103の周辺には検査対象部を照明するLED(発光ダイオード)304が装着されている。この場合計測ヘッド部は検査対象部302をほぼ正面から捉えるので、画像歪も少なく計測に適した構造となっている。なお以下の説明でも光学パターン投影手段102と撮像手段103等同一の機能部品の符号は極力同じ符号を用いることにする。
【0006】
しかし、管状被検体内壁の傷部分はどこにあるかを予め判断できないので、挿入された筒状挿入部を管状被検体内部で回転しながら前後させ傷部分を発見する操作が必要となるので、操作上の自由度が制約され傷部分を発見し計測するには時間がかかるという欠点を有していた。
【0007】
本出願人は先に内視鏡自体を回転せず、内視鏡先端部に装着された側方視野を持つ撮像手段のみを回転し、管状披検体の内壁の任意方向を観察可能な構造の内視鏡を提案している(特願2008−103411)。このような構造を光切断法を用いた計測装置に適用することで、著しく操作性を改善することが可能であり、また計測時間を短縮することが可能になる。
【特許文献1】特開昭62−73223号公報
【特許文献2】特開平3−73133号公報
【特許文献3】特願2008−103411号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、管状披検体内壁の全周観察・計測時に側方視野を持つ光切断計測装置の視野方向を容易に選択操作可能とすることで、管状被検体内壁の傷部分の観察や計測の操作性を著しく改善した光切断法を用いた計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、挿入部の先端に、挿入方向軸に対して前方視野を有するように装着された撮像レンズと固体撮像素子を含んだ直視撮像手段と、挿入方向軸に対して挿入方向軸の周りを回転可能とする回転部材に側方視野を有するように装着された光学パターン投影手段と、光学パターン投影手段の光軸に対して離れた位置から所定の角度の光軸を持って装着された撮像レンズと固体撮像素子を含んだ撮像手段より構成される光切断法計測ヘッド部と、前記回転部材の回転位置を検出する回転位置検出手段と、回転位置検出手段の信号を回転位置画像として表示する回転位置画像信号発生手段を有し、前記直視撮手段による画像内に前記回転位置画像を重畳して表示することで、光切断法を用いた計測手段の視野方向を直視撮像手段による画像内に表示することを特徴とした光切断法を用いた計測装置を提案する。
【0010】
さらに詳細に説明すると、本発明による光切断法を用いた計測装置は挿入軸に対して前方方向を撮像する直視撮像手段と側方視野を持った光切断法を用いた計測手段を持ち、直視撮像手段の後方に光切断法計測ヘッド部が挿入軸に対して回転できるよう配置されるが、直視撮像モジュールによる画像は光切断法を用いた計測装置の挿入時の被検体前方の状況を判断するのに有用であるだけでなく、前方視野内に傷等の観察物を見つけた時に、側方視野を持つ光切断法計測ヘッド部の視野方向が同一画面内に表示されるように構成されており、容易に光切断法を用いた計測装置の視野方向を計測対象部に合致させる操作が可能となるので光切断法を用いた計測装置の操作性を向上させ計測時間を短縮することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明による光切断法を用いた計測装置は、装置の挿入部自体を回転することなく360度の円周方向に広がる管状披検体の内壁の任意方向の計測視野を簡単な操作で選択可能なので、その利用価値は非常に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお実施例の説明で使用する図面は本発明を容易に把握、理解できるよう本発明と直接関係ない機構等の具体的な詳細は省略して示し、同一の機能部品の符号は極力同じものを使用する。
【実施例1】
【0013】
図4は本発明の光切断法を用いた計測装置の挿入部の先端部構成を示す一実施例の断面図である。
光切断法を用いた計測装置の先端部401は筒状の挿入部本体402と、挿入軸の周りを回転可能な回転部材403、回転部材支持軸404、前面パネル405より構成されており、回転部材支持軸404は回転部材403の中心部に設けられた回転軸穴に回転部材が回転可能な状態で挿入され、挿入部本体にねじ部406で固定されており、前面パネル405は図示していないネジ部材で回転支持軸404に固定されている。
【0014】
直視撮像手段407は前面パネル405に装着されており、少なくとも撮像レンズ408とCMOSやCCDのような固体撮像素子409を含めて構成され、信号処理手段は挿入部の外に設けられるのが一般的である。なお前面の撮像範囲を照明するLED(発光ダイオード)410が直視撮像手段409の外周に装着されている。
【0015】
光切断法計測ヘッド部104は、図3で示した場合と同じように被検体に光学パターンを投影する光学パターン投影部102と、撮像レンズと固体撮像素子を含んだ撮像手段103より構成されており、回転部材403に挿入軸に対して側方視野を持つように装着されている。撮像手段103は、少なくとも対物レンズとCMOSやCCDのような固体撮像素子を含めて構成され、信号処理手段は挿入部の外に設けられるのが一般的であるのは直視撮像手段の場合と同じである。なお撮像手段103の撮像範囲を照明するLED304が撮像手段103の外周に装着されている。
【0016】
また、対物レンズと固体撮像素子を含んだ撮像手段は、固体撮像素子駆動回路、信号処理回路、その周辺回路を撮像モジュールが実用化されているので、この様な撮像モジュールを使うことも可能である。
【0017】
回転部材403の後端部には内側にギアー411が設けられており、挿入部本体402に装着されたモーター412の回転軸先端に装着されたギアー413と連結され、回転部材403はモーター412によって駆動される。
【0018】
また、光切断法計測ヘッド部104は回転部材403に装着されているので、回転部材403の回転位置で光切断法計測ヘッド部104の視野方向が変わる。回転部材403の回転位置を検出する手段はいろいろあるが、この実施例ではポテンショメーターを装着した例を示している。図中414は回転位置検出手段(ポテンショメーター)を示しており、その回転軸の先端にはギアー415が装着され、光切断法計測ヘッド部が装着されている回転部材403の後端部に設けられたギアー411に連結されている。
【0019】
図5にモーター412を駆動する駆動手段を示す。501モーメンタリ動作の2極双投スイッチで、図中上方に示された方向にスイッチのレバーを倒したとき、モーター412の端子502には電源504のプラス端子が接続され、モーター402の他の端子503には電源503のマイナス端子が接続される。また、図中下方に示された方向にスイッチのレバーを倒したとき、モーター402の端子502には電源504のマイナス端子が接続され、モーター402の他の端子503には電源504のプラス端子が接続される。なおスイチのレバーをフリーにすると、スイチ501はオフの状態に戻る。
【0020】
このように、モーメンタリ動作の2極双投スイッチ501を用いることで、スイッチ501のレバー操作でモーター402の回転方向を右回り、左回りと変えることができ、また容易に回転を止めることができるが、光切断法計測ヘッド部等からのケーブルの保護のため、回転の範囲は360度以内に制限するのが望ましい。なお、この2極双投スイッチは光切断法を用いた計測装置の操作部内に組込まれるのが使用上好ましい。
【0021】
図6は本発明による光切断法を用いた計測装置の基本構成を示す。光切断法を用いた計測装置の先端部に装着された直視撮像手段407は、光切断法を用いた計測装置の筒状挿入部の挿入方向の前方視野にある披検体を撮像し、映像信号処理部601で映像信号に処理される。直視撮像手段407の後方に配置され、光切断法を用いた計測装置の挿入方向に対して側方視野を持つ光学パターン投影手段102と撮像手段103より構成される光切断法計測ヘッド部104は、光切断法を用いた計測装置の先端部に組み込まれた回転可能な回転部材403に装着され、検査対象部と投影された光学パターンを撮像手段103で撮像し映像信号処理部116で映像信号処理を行うと共に、計測信号処理部117で計測信号処理を行い対象物の画像と計測処理結果をモニター118に表示する。
【0022】
図6中、414は回転部材403の位置を検出する回転位置検出手段で、回転部材403はモーター412で回転駆動される。回転位置検出手段414よりの位置信号は、回転位置画像信号発生手段602で画像化するための位置信号に変換している。この画像化された位置表示信号は画像重畳手段603によって、直視撮像手段408による前方視野画像に重畳して前方視野画像表示用モニター604に表示される。なお図中606は光学パターン投影手段102に組込まれたLEDの駆動電源を示し、504は図5で説明したモーター駆動手段を示している。
【0023】
図7(A)は、本発明による光切断法を用いた計測装置で管状被検体(パイプ)701の内部管壁を観察している状態を示したもので、図7(B)は図7(A)における前方視野の画像を示している。光切断法を用いた計測装置の直視撮像手段407による画像は、管壁aの位置は、図7(B)の外周円(a)で、管壁bの位置は図7(B)の点線の円(b)で、管壁cの位置は図7(B)の小円(c)704で表示される。パイプ701の内部管壁にある傷状物702が管壁bの位置の円周上にあるとすれば直視撮像手段による画像として認識できる。
【0024】
直視撮像手段407による前方視野内に傷状物702が観察された場合、直視撮像デバイスによる画像を表示するモニターの画像上に、光切断法計測ヘッド部104の視野方向が位置表示パターン(マーカー)703で表示されると、マーカー703が傷状物702と重なるように光切断法計測ヘッド部104の回転方向を制御し、挿入部を前方にLだけ進めることで容易に傷状物702を光切断計測ヘッド部104の視野内に捕捉することが出来、画像としてモニター上に表示可能となる。
【0025】
この様子を図8で更に詳しく説明する。直視撮像手段407で撮像したパイプ701の内部管壁画像(ハッチングで示す)と、画像化された回転位置表示パターン703(マーカー)は合成した画像としてモニター605上に図8(A)のように表示される。ここで、702は管壁の傷状物、703は光切断法計測ヘッド部104の回転位置表示のマーカーを表している。ここで中心部の円形704はパイプ先端の開口を示している。
【0026】
ここで管壁の傷状物702を球形状の凹面とすると、光切断法計測ヘッド部104の視野方向の中心は傷状物702より後方にあるので(図7参照)、光切断法計測ヘッド部を前方にLだけ挿入すると、光切断法計測ヘッド部104からの画像は、モニター118上に図8(B)のように管壁の傷状物702と傷状物の深さ形状を示す光学パターン投影手段102による投影パターン708が同時に表示される。
【0027】
この傷状物702を計測する場合には、計測信号処理部を介して計測用モニター上に示された投影パターン708の任意の一点709を選択し、基準面に投影された基準パターン線710の延長上の架空線711(点線で表示)よりからのずれ量dを計測信号処理部によって算出することができる。
【0028】
以上の説明では、光学投影パターンを1本の直線の場合を説明したが、光学投影パターンを複数本で形成すると、傷の形状がより明確に把握できる。
【0029】
このように、光切断法計測ヘッド部の視野方向を側方視にし、直視撮像手段と組み合わせることで直視撮像手段の画像内に、側方視野を持つ立体撮像モジュールの視野方向を表示することが可能となり、管状被検体の管壁等内部の傷等が容易に発見でき、前記傷等が管壁のどの方向にあっても、光切断法を用いた計測装置の挿入部自体を回転せずに常に正面視した画像を容易に得ることが出来るので、利用しやすい光切断法を用いた計測装置が提供可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による光切断法を用いた計測装置は、装置挿入部の挿入軸方向に対して側方の視野と直視方向の視野を持つことで、管状被検体の検査対象部を簡単に検出可能なので、これまで使用されなかった計測技術を広く普及させる効果があり、計測ヘッド部を小型にすることで医用内視鏡にも利用可能であり、産業用、医用の広い分野での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】光切断法を用いた計測装置の基本構成図。
【図2】光切断法による計測状態の説明図。
【図3】挿入軸に対して側方の計測視野を持つ計測ヘッド部の基本構成図。
【図4】本発明による光切断法を用いた計測装置挿入部の先端部構成を示す説明図。
【図5】計測ヘッド部を回転させるモーターの駆動手段の説明図。
【図6】本発明による光切断法を用いた計測装置の基本構成を示す説明図。
【図7】本発明による光切断法を用いた計測装置でパイプ内部管壁を観察する状態を示す説明図。
【図8】本発明による光切断法を用いた計測装置で得られる計測画面の説明図。
【符号の説明】
【0032】
101 計測対象部
102 光学パターン投影手段
103 撮像手段
104 光切断法計測ヘッド部
110 投影レンズ
111 光学パターン
112、304、410 LED(発光ダイオード)
113、408 撮像レンズ
114、409 固体撮像素子
116、601 映像信号処理部
117 計測信号処理部
118、604 モニター
301 管状被検体
302 検査対象部
303 挿入部の先端部
402 挿入部本体
403 回転部材
404 回転部材支持軸
405 前面パネル
407 直視撮像手段
412 モーター
414 回転位置検出手段(ポテンショメーター)
501 2極双投スイッチ
502 電源
602 回転位置画像信号発生手段
603 画像重畳手段
702 傷状物
703 位置表示パターン(マーカー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に、挿入方向軸に対して前方視野を有するように装着された撮像レンズと固体撮像素子を含んだ直視撮像手段と、挿入方向軸に対して挿入方向軸の周りを回転可能とする回転部材に側方視野を有するように装着された光学パターン投影手段と、光学パターン投影手段の光軸に対して離れた位置から所定の角度の光軸を持って装着された撮像レンズと固体撮像素子を含んだ撮像手段より構成される光切断法計測ヘッド部と、前記回転部材の回転位置を検出する回転位置検出手段と、回転位置検出手段の信号を回転位置画像として表示する回転位置画像信号発生手段を有し、前記直視撮手段による画像内に前記回転位置画像を重畳して表示することで、光切断法を用いた計測手段の視野方向を直視撮像手段による画像内に表示することを特徴とした光切断法を用いた計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101625(P2010−101625A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270452(P2008−270452)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(502085628)有限会社 アイシステムズ (15)
【出願人】(597105153)株式会社メディア・テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】