説明

計算機システム

【課題】 メモリなどから発生するEMIノイズによる影響を低コストで低減する。
【解決手段】 計算機システムは、電子装置と記憶装置とがシリアルATAなどの通信路Lを介して接続された構成からなる。記憶装置には、メモリ11、およびハードディスクドライブ12が設けられている。メモリ11は、揮発性の半導体メモリなどからなり、データやプログラムなどを記憶するとともに、ハードディスクドライブ12における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を有する。メモリ11をアクセスする際には、CPUから出力されたメモリアドレスを、ハードディスクドライブ12の持つアドレス空間(LBA)に変換する。記憶装置のLBA分類制御部9は、そのLBAから、メモリ11へのアクセスであることを判断し、LBAが指すメモリ11のメモリ領域にあるデータを直接アクセスして読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機システムにおけるノイズ対策技術に関し、特に、メモリなどの高速動作により発生するノイズ抑制に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどに内蔵されたハードディスクドライブ(HDD)などには、ATAインタフェースが広く用いられている。このATAインタフェースにおいては、近年のハードディスクドライブの大容量化に伴い、伝送速度を向上させるためにシリアルATAが主流になりつつある。
【0003】
このシリアルATAは、ハードディスクドライブやDVD−ROM(Digital Versatile−Read Only Memory)ドライブなどの各記憶装置をパーソナルコンピュータなどのホストコントローラに対して1対1で接続し、情報を1本の伝送路を用いて1ビットずつ伝送する。
【0004】
通常、パーソナルコンピュータなどの電子機器において、制御装置(CPU:Central Processing Unit)は、HDD制御装置(たとえば、Ultla DMA(Direct Memory Access)装置など)を介してハードディスクドライブに接続されている。ハードディスクドライブとHDD制御装置とは、前述したシリアルATAなどの通信路を経由して接続されている。
【0005】
また、パーソナルコンピュータは、制御装置(CPU:Central Processing Unit)が直接アクセスすることができるメモリを備えており、このメモリは、制御装置からメモリコントローラを経て接続されている。
【0006】
これらメモリコントローラ、およびメモリは、制御装置や拡張スロットなどの基本的な電子部品が搭載されるメインボード上にそれぞれ搭載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のようなメモリ、およびハードディスクドライブの接続技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0008】
すなわち、メモリは、該メモリの高速動作に合わせた高速クロックを使う必要が生じ、メモリコントローラとの間で高速伝送が必要となるが、この高速伝送によってメモリコントローラやメモリなどを搭載するメインボードから電磁放射ノイズ、いわゆるEMI(Electro Magnetic interference)ノイズなどが放射されることになる。
【0009】
EMIノイズは、電子機器に悪影響を与えることから、厳しく規格などによって規制されることになるが、該EMIノイズを低減するために、たとえば、ハードディスクドライブにシールドを設けるなどの対策が行われており、これにより、電子機器のコスト増加、および重量増加などを招いてしまうという問題がある。また、結果として、電子機器の使用後における廃棄物の増加をもたらしている。
【0010】
本発明の目的は、メモリなどから発生するEMIノイズによる影響を、低コストで低減することのできる計算機システムを提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明は、プログラムによる演算を行う計算機と、該計算機に通信路を介して外部接続され、該計算機によって動作制御される記憶装置とを有した計算機システムであって、該記憶装置は、計算機におけるデータやプログラムを記憶する半導体メモリと、該半導体メモリよりも低速で動作する補助記憶装置とを備えたものである。
【0014】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0015】
本発明は、前記補助記憶装置がハードディスクドライブよりなるものである。
【0016】
また、本発明は、前記計算機が、半導体メモリのアクセス時に要求されたメモリアドレスを補助記憶装置のアクセス単位であるLBA(Logical Blocking Address)に変換するアドレス/LBA変換部を備え、前記記憶装置は、アドレス/LBA変換部が変換したLBAが、半導体メモリの領域であるか、補助記憶装置の領域であるかを解析し、該当する領域にアクセスし、その要求を実行するLBA分類制御部を備えたものである。
【0017】
さらに、本発明は、前記半導体メモリが、補助記憶装置における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を有するものである。
【0018】
また、本発明は、計算機と記憶装置とを接続する通信路が、シリアルATAよりなるものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
(1)計算機におけるノイズ対策を軽減することができるので、計算機システムの信頼性を確保しながらコストダウンを図ることができる。
【0021】
(2)また、半導体メモリに、補助記憶装置における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を備えることにより、計算機システムにおける部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態による計算機システムの全体構成を示すブロック図、図2は、図1の計算機システムに設けられた電子装置の構成を示すブロック図、図3は、図1の計算機システムに設けられた記憶装置の構成を示すブロック図、図4は、図1の計算機システムにおける通信路上のアドレスマップの一例を示す説明図である。
【0024】
本実施の形態において、計算機システム1は、たとえば、パーソナルコンピュータなどシステムからなる。計算機システム1は、図1に示すように、電子装置(計算機)2、および記憶装置3から構成されており、電子装置2と記憶装置3とは、シリアルATAなどの通信路Lを介して接続されている。
【0025】
電子装置2は、図2に示すように、CPU4、メモリコントローラ5、アドレス/LBA変換部6、およびHDD制御装置7などから構成されている。
【0026】
CPU4は、計算機システム1におけるすべての制御を司る。CPU4には、メモリコントローラ5が接続されており、該メモリコントローラ5には、アドレス/LBA変換部6が接続されている。
【0027】
これらメモリコントローラ5、およびアドレス/LBA変換部6は、FSB(Front Side Bus)を介して、CPU4に接続されるノースブリッジに設けられている。また、CPU4には、HDD制御装置7が接続されている。HDD制御装置7は、PCIバスを介してノースブリッジに接続されるサウスブリッジに設けられている。
【0028】
メモリコントローラ5は、メモリ(半導体メモリ)11(図3)へのアクセス要求があると、要求されたメモリアドレスに基づいて、該メモリ11のどのLBAに対応するかを算出し、該メモリ11におけるアクセス制御を司る。
【0029】
アドレス/LBA変換部6は、メモリコントローラ5のもつアドレス空間(たとえば、1Gバイト)を512バイト単位のLBAに変換する。HDD制御装置7は、CPU4から出力されるLBA、またはアドレス/LBA変換部6によって変換されたLBAを受け取り、記憶装置3に対してLBAで要求を発行する。
【0030】
記憶装置3は、図3に示すように、シリアルATAインタフェース8、LBA分類制御部9、制御装置10、メモリ11、およびハードディスクドライブ(補助記憶装置)12などから構成されている。
【0031】
記憶装置3におけるシリアルATAインタフェース8には、シリアルATAなどの通信路Lを介してHDD制御装置7が接続されている。シリアルATAインタフェース8には、LBA分類制御部9が接続されている。LBA分類制御部9には、制御装置10が接続されており、該制御装置10には、メモリ11、ならびにハードディスクドライブ12がそれぞれ接続されている。
【0032】
また、ハードディスクドライブ12は、円盤状の記憶面(ディスク)とヘッドからなるリードライトヘッド13、該リードライトヘッド13からのデータ送受信を行うリードチャネル14、ならびにリードライトヘッド13における回転動作、ヘッド位置制御動作などを行うモータドライブ15から構成されている。
【0033】
また、メモリ11は、揮発性の半導体メモリなどからなり、データやプログラムなどを記憶するとともに、ハードディスクドライブ12における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を有する。これらメモリ11、およびハードディスクドライブ12は、制御装置10によって制御が行われる。
【0034】
このように、ハードディスクドライブ12にメモリ11を設けることによって、該メモリ11が発生するEMIノイズなどの影響を低減することができるので、電子装置2におけるノイズ対策のコストを大幅に削減することができる。
【0035】
LBA分類制御部9は、シリアルATAインタフェース8を介して入力されるLBAが、メモリ11のメモリ領域であるか、ハードディスクドライブ12のメモリ領域であるかを解析し、メモリ11、またはハードディスクドライブ12に要求されたアクセス制御を行う。
【0036】
次に、本実施の形態による計算機システム1の動作について説明する。
【0037】
始めに、メモリ11におけるデータの読み出し動作について説明する。
【0038】
まず、CPU4から、メモリコントローラ5に読み出し要求があると、アドレス/LBA変換部6は、CPU4から出力されたメモリアドレス(メモリコントローラ5におけるアドレス空間)を、ハードディスクドライブ12の持つアドレス空間に変換し、読み出し要求とともにHDD制御装置7を介して出力される。
【0039】
ここで、HDD制御装置7から出力される通信路L上におけるアドレスマップについて、図4の説明図を用いて説明する。
【0040】
LBA空間は、規格上48ビットに定義されているが、非常に広大な空間であるために、すべてを使用できない量に相当している。そのために、通常では、28ビット空間=137Gバイトを1ビット拡大した29ビットとしている。
【0041】
そして、LBA空間の29ビットのうち、ハードディスクドライブ12のアドレス空間を0−28ビットまでとし(137Gバイト)、メモリ11がアクセスするアドレス空間を29ビット目が1から始まる次の137Gバイトを割り当てる。
【0042】
この取り決めによって、メモリ11へのアクセスであるか、ハードディスクドライブ12へのアクセスであるかを容易に判定することができる。
【0043】
続いて、通信路Lを介してHDD制御装置7から出力された読み出しコマンド、および読み出したいLBAが記憶装置3に入力されると、該記憶装置3のLBA分類制御部9は、入力されたLBAから、メモリ11へのアクセスであるか、ハードディスクドライブ12へのアクセスであるかを判断する。
【0044】
ここでは、LBAがメモリ11へのアクセスであるので、該LBAが指すメモリ11のメモリ領域にあるデータ(たとえば、1セクタ分=512バイト)を直接アクセスして読み出し、続いて、読み出したデータを電子装置2に出力する。
【0045】
次に、ハードディスクドライブ12におけるデータの読み出し動作について説明する。
【0046】
まず、CPU4からの読み出し要求に対して、HDD制御装置7は、ハードディスクドライブ12への読み出しコマンド、およびおよび読み出したいLBAを通信路Lを介して記憶装置3に出力する。
【0047】
記憶装置3のLBA分類制御部9は、入力されたLBAから、ハードディスクドライブ12へのアクセスであることを判断し、該LBAが指すハードディスクドライブ12のメモリ領域にあるデータをアクセスして読み出し、その読み出したデータを電子装置2に出力する。
【0048】
このとき、先読みしたデータキャッシュ領域に該当するセクタデータがあるかを検出し、メモリ11内に存在した場合にはハードディスクドライブ12へのアクセスは実施せずメモリ11から直接データを読み出し、電子装置2に出力する。
【0049】
それにより、本実施の形態によれば、高速動作を行うメモリ11を外部接続することによって、電子装置2を小型化することができる。
【0050】
また、電子装置2へのEMIノイズなどの影響を大幅に低減することが可能となり、該電子装置2におけるノイズ対策などのコストを小さくすることできる。
【0051】
さらに、メモリ11にハードディスクドライブ12における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を備えることにより、該ハードディスクドライブ12に一時記憶バッファ、またはキャッシュメモリなどのメモリ部品が不要となり、計算機システム1における部品点数を削減することができ、計算機システムのコストダウンを図ることができる。
【0052】
また、ハードディスクドライブ12においては、複数のアクセスコマンドが送られてきた場合、該ハードディスクドライブ12のディスクが機械的に回転しており、該当データがヘッド位置にくるまでの無駄時間を少なくするために、複数のコマンドを解析し、回転順路に最適化したアクセスができるようにコマンドの並べ替えを実施することになるが、この機能をより強化することによって、メモリ11へのアクセスに対して高速に応答することのできるコマンドの並べ替えを実施するようにしてもよい。
【0053】
これは、LBAにおいて、アクセス先をメモリ11、またはハードディスクドライブ12のいずれかで分離した後に、コマンドキューも分離して設置し、メモリ11のアクセスコマンドの際にメモリアクセスキューの処理を優先することによって実現することができる。
【0054】
さらに、電子装置2(図2)に新たな複数のメモリを備え、該メモリを記憶装置3(図3)に備えられたメモリ11と分離し、用途毎に利用形態を変える構成としてもよい。
【0055】
それにより、電子装置2におけるメモリアクセスの遅延時間を低減することができる。
【0056】
また、電子装置2に存在するデータへのアクセスについては、事前に発行するアルゴリズム(プリフェッチ)を採用することによって、レイテンシの増加を最小限にとどめることができる。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
たとえば、前記実施の形態では、ハードディスクドライブの領域とメモリの領域とをLBA空間によって区分する構成としたが、パーティションによって分割するようにしてもよい。
【0059】
また、ハードディスクドライブに電源保持機能(たとえば、バッテリやキャパシタなど)を備え、電源瞬断や電源停止時に、メモリのデータをハードディスクドライブに記録する構成としてもよい。
【0060】
それにより、高価な電源ユニットなどを装着しなくとも、データを失う可能性を大幅に減らすことが可能となる。
【0061】
たとえば、前記実施の形態では、パーソナルコンピュータなどの計算機システムについて記載したが、音楽用サーバ、家庭用NAS(Network Storage System)、HDDレコーダ、および自動車用音楽ビジュアル再生機などの情報記録再生装置に本発明を用いることによっても有効な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の計算機システムは、信頼性を損なうことなくEMIノイズ対策によるコストを低減する技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態による計算機システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の計算機システムに設けられた電子装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の計算機システムに設けられた記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の計算機システムにおける通信路上のアドレスマップの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 計算機システム
2 電子装置(計算機)
3 記憶装置
4 CPU
5 メモリコントローラ
6 アドレス/LBA変換部
7 HDD制御装置
8 シリアルATAインタフェース
9 LBA分類制御部
10 制御装置
11 メモリ(半導体メモリ)
12 ハードディスクドライブ(補助記憶装置)
13 リードライトヘッド
14 リードチャネル
15 モータドライブ
L 通信路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムによる演算を行う計算機と、前記計算機に通信路を介して外部接続され、前記計算機によって動作制御される記憶装置とを有した計算機システムであって、
前記記憶装置は、
前記計算機におけるデータやプログラムを記憶する半導体メモリと、前記半導体メモリよりも低速で動作する補助記憶装置とを備えたことを特徴とする計算機システム。
【請求項2】
請求項1記載の計算機システムにおいて、
前記補助記憶装置は、ハードディスクドライブであること特徴とする計算機システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の計算機システムにおいて、
前記計算機は、
前記半導体メモリのアクセス時に要求されたメモリアドレスを前記補助記憶装置のアクセス単位であるLBAに変換するアドレス/LBA変換部を備え、
前記記憶装置は、
前記アドレス/LBA変換部が変換したLBAが、前記半導体メモリの領域であるか、前記補助記憶装置の領域であるかを解析し、該当する領域にアクセスし、その要求を実行するLBA分類制御部を備えたことを特徴とする計算機システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の計算機システムにおいて、
前記半導体メモリは、前記補助記憶装置における一時記憶バッファ、もしくはキャッシュメモリ機能を有することを特徴とする計算機システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の計算機システムにおいて、
前記計算機と前記記憶装置とを接続する通信路は、シリアルATAであることを特徴とする計算機システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−164064(P2006−164064A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357125(P2004−357125)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】