説明

試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法及び自動分析装置

【課題】試薬ボトル移送時の試薬の液揺れを容易に制御できる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法および自動分析装置を提供すること。
【解決手段】試薬を収容した試薬ボトル25を保持するホルダを有し、ホルダを移動させることによって所望の試薬ボトル25を、試薬の吸引を行うプローブの吸引位置に移送する自動分析装置1の試薬保冷庫24において、吸引位置との距離を固定して配列されたホルダを、径方向に直線移動させて吸引位置に移送させる移送ステップと、吸引位置に移送された試薬ボトル25内の試薬を、プローブによって吸引する試薬吸引ステップとを含む試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法によって、所望の試薬ボトル25のみを一方向に動かすことで、試薬ボトル25内の液揺れを容易に制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学等の分析を自動で行う自動分析装置の試薬保冷庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生化学分析等の分析を自動で行う自動分析装置が広く知られている。自動分析装置は、測定機構と制御機構とを有している。測定機構は、反応テーブルおよび試薬保冷庫を有し、反応テーブルは、内部に測光部を備え、試薬保冷庫には、検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルが収納してある。また、反応テーブルには、反応容器が収容してあり、試薬ボトルから試薬を分注する一方、検体容器から検体を分注する。その後、測光部が、反応容器において反応させた検液(試薬と検体とからなる混合液)を測定する。制御機構は、測定された測定値から検体の分析を行う。
【0003】
ここで、試薬保冷庫は、内部に設けられたテーブル上に試薬ボトルを収容するホルダを有し、ホルダによって試薬ボトルが等間隔に配列される。試薬保冷庫の蓋は、分注プローブが挿入可能な開口部を有し、テーブルが回転することで所望の試薬ボトルを開口部下方まで移送して試薬がプローブによって吸引される。また、試薬保冷庫内は、内部を循環する冷却媒体によって保冷庫内の温度を低温に保っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−280851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す試薬保冷庫において、テーブルの回転によって試薬ボトルを移送すると、回転による遠心力および転向力によって試薬が波立つうえ、試薬ボトルの位置によって変わる回転距離によって、液揺れに対する制御が複雑化していた。さらに、遠心力と転向力とは力の向きが異なるため、干渉によって波の高さが高くなってしまうこともあり、制御に困難を要していた。また、試薬ボトルを保持するテーブルが回転するため、使用しない試薬ボトル内の試薬も液揺れを起こしていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試薬ボトル移送時の試薬の液揺れを容易に制御できる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法および自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法は、試薬を収容した試薬ボトルを保持するホルダを有し、該ホルダを移動させることによって所望の試薬ボトルを、前記試薬の吸引を行うプローブの吸引位置に移送する試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法において、前記吸引位置との距離を固定して配列された前記ホルダを、径方向に直線移動させて前記吸引位置に移送させる移送ステップと、前記吸引位置に移送された前記試薬ボトル内の試薬を、前記プローブによって吸引する試薬吸引ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法は、上記の発明において、前記移送ステップは、所定の速度プロファイルによって各ホルダを移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法は、上記の発明において、前記吸引位置は、前記ホルダの配列位置によって決定される円弧中心又は半径上であり、前記移送ステップは、前記ホルダが内径方向に移動することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法は、上記の発明において、前記ホルダは、前記吸引位置に対して点対称に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法は、上記の発明において、前記ホルダは、円環状に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、試薬を収容した試薬ボトルを保持するホルダを有し、該ホルダを移動させることによって所望の試薬ボトルを、前記試薬の吸引を行うプローブの吸引位置に移送する試薬保冷庫を備えた自動分析装置において、前記吸引位置に向かう距離を固定して配列され、径方向に移動可能なホルダと、前記ホルダを径方向に直線移動させて、前記試薬ボトルを前記吸引位置下方に移送させる移送手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記移送手段は、所定の速度プロファイルによって各ホルダを移動させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ホルダは、前記吸引位置に対して点対称に配置されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ホルダは、円環状に配置されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記移送手段は、前記ホルダの底面から鉛直下方に延びた支柱と、前記支柱を把持し、モータと連結された径方向の直線部を持つベルトと、を備え、モータの回転によるベルトの駆動によって、前記ホルダを径方向に移動させて、前記試薬ボトルを移送することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ホルダの外径方向側面に凹部または凸部を有するホルダ側嵌合部を設け、前記移送手段は、径方向と鉛直に配置され、前記ホルダ側嵌合部に対応して設けられた該ホルダ側嵌合部と脱着可能な支柱側嵌合部を有する支柱と、前記支柱を支持し、長手方向が径方向に向いた棒状の磁性材と、モータと連結し、前記磁性材を収容可能な空間を径方向に設けて、前記磁性材の一部を予め収容した電磁石と、を備え、通電して磁場を形成した前記電磁石が、前記磁性材を内径方向に引き付けることによって前記ホルダ側嵌合部と前記支柱側嵌合部とが嵌合し、前記支柱が前記ホルダを径方向中心側に押すことによって、前記試薬ボトルを移送することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記電磁石は、前記空間の内径側側壁に、径方向に伸縮可能な弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ホルダの径外周側の側面と前記試薬保冷庫側壁との間は、弾性部材によって連結されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ホルダを保持するテーブルが、径方向内側に向けて高くなるように傾斜し、前記ホルダは、上部平面が水平であって、底部が前記テーブルの角度に対応して傾斜をもつことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、試薬ボトルの移送を径方向に直線移動するようにしたので、試薬の液揺れの制御を容易にするという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について、血液や尿等の液体検体を反応容器に分注して検体を分析する自動分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器10にそれぞれ分注し、分注した反応容器10内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、反応容器10は、容量が数μL〜数mLと微量な容器であり、測光部28の光源から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、たとえば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器10は、側壁と底壁とによって液体を保持する液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する。
【0024】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部21、検体分注機構22、反応テーブル23、試薬保冷庫24、試薬分注機構26、攪拌部27、測光部28および洗浄部29を備える。
【0025】
検体移送部21は、血液等の液体検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック21bを備える。検体移送部21上の所定位置に移送された検体容器21a内の検体は、検体分注機構22によって、反応テーブル23上に配列して搬送される反応容器10に分注される。
【0026】
検体分注機構22は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム22aを備える。このアーム22aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なう検体プローブが取り付けられている。検体分注機構22は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構22は、上述した検体移送部21上の所定の検体吸引位置に移送された検体容器21aの中から、検体プローブによって検体を吸引し、アーム22aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル23上の所定の検体吐出位置に搬送された反応容器10に検体を吐出して分注を行なう。
【0027】
反応テーブル23は、反応容器10への検体や試薬の分注、反応容器10の攪拌、測光、洗浄を行なうために反応容器10を所定の位置まで移送する。この反応テーブル23は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル23の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル23の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽とがそれぞれ設けられている。
【0028】
試薬保冷庫24は、反応容器10内に分注される試薬が収容された試薬ボトル25を複数収納できる。試薬保冷庫24には、複数のホルダが等間隔で配置されており、各ホルダには試薬ボトル25が着脱自在に収納される。試薬保冷庫24は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、所望の試薬ボトル25を試薬分注機構26による試薬吸引位置まで移送する。試薬保冷庫24の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬保冷庫24の下方には、保冷庫が設けられている。このため、試薬保冷庫24内に試薬ボトル25が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬ボトル25内に収容された試薬を冷却し、試薬ボトル25内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0029】
試薬分注機構26は、検体分注機構22と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬プローブが先端部に取り付けられたアーム26aを備える。アーム26aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構26は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。試薬分注機構26は、試薬保冷庫24上の所定の試薬吸引位置に移動された試薬ボトル25内の試薬をプローブによって吸引し、アーム26aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル23上の所定の試薬吐出位置に搬送された反応容器10に試薬を吐出して分注する。攪拌部27は、反応容器10に分注された検体と試薬との攪拌を行ない、反応を促進させる。
【0030】
測光部28は、たとえば、所定の測光位置に搬送された反応容器10に光源から分析光(340〜800nm)を照射し、反応容器10内の液体を透過した光を分光し、PDA等の受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。また、測光部28は、測定した各吸光度を制御部31に出力する。
【0031】
洗浄部29は、洗浄プローブによって、測光部28による測定が終了した反応容器10内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了した反応容器10を洗浄する。
【0032】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部33、分析部34、記憶部35、送受信部36および出力部37を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0033】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。また、制御部31は、移送制御部32を有する。移送制御部32は、試薬の分注を行う場合に、所望の試薬を収容した試薬ボトル25を試薬吸引位置まで移送する制御を行う。
【0034】
入力部33は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部34は、測光部28によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。
【0035】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0036】
送受信部36は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。出力部37は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部37は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置に検体の分析結果を含む諸情報を出力してもよい。
【0037】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器10に対して、検体分注機構22が検体容器21a中の検体を分注し、試薬分注機構26が試薬ボトル25中の試薬を分注した後、測光部28が検体と試薬とを反応させた反応液の分光強度測定を行ない、この測定結果を分析部34が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行なわれる。また、洗浄部29が測光部28による測定が終了した後に搬送される反応容器10を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行なわれる。
【0038】
つぎに、図2,3を用いて、自動分析装置1の試薬保冷庫24を説明する。図2は、本実施の形態1にかかる試薬保冷庫24を上方から見た平面図である。図2に示す試薬保冷庫24は、円筒状であって、側壁241の径と比して若干小さい径を持つ円盤状の試薬テーブル242を有する。また、試薬テーブル242の上面には、試薬ボトル25を載置するホルダ243が設けられる。さらに、ホルダ243下方の試薬テーブル242には、径方向に柱状の孔を形成したボトル移送レーン245が設けられている。ホルダ243は、ボトル移送レーン245に沿って径方向に移動して、試薬ボトル25を径方向に移送させる。また、側壁241で形成される円の中心の上方に、プローブ挿入口244が設けられている。
【0039】
図3は、図2に示す試薬保冷庫24の側面図である。図3において、ホルダ243底面には、鉛直下方に延びる柱状の支柱42が設けられており、支柱42は、ボトル移送レーン245を貫通して試薬テーブル242下方に延びている。支柱42の下方端部は、モータ41に接続されたプーリ411及び試薬テーブル242に接続されたプーリ412によって咬持された、ベルト413に把持されている。なお、プーリ412と、プーリ412を支持する支柱との間に図示しないベアリングを設け、プーリ412の回転が試薬テーブル242に伝達しないようになっている。
【0040】
ここで、試薬ボトル25は、移送制御部32によってモータ41を駆動させることでベルト413が駆動し、ベルト413に把持されている支柱42が径方向に直線移動することで移送できる。移送制御部32は、予め設定された速度プロファイルによってモータ41を駆動させることによって、試薬ボトル25の開口部251が、蓋247に設けられたプローブ挿入口244の鉛直下方に配置されるように制御する。なお、支柱42が移動する範囲は、ベルト413がプーリ411,412によって形成する一方の直線部上であり、支柱42がこの直線部を移動することで、試薬ボトル25にかかる力が一方向のみとなる。上述した機構をホルダ毎に設け、移送制御部32が制御することによって、所望の試薬ボトルのみを径方向に移送してかかる力を一方向にすることが可能となる。また、各モータ41を同一の速度プロファイルで駆動させることで、各ベルト413の駆動速度が一定となり、各試薬ボトルにかかる力も一定となるため、制御が容易となる。
【0041】
実施の形態1では、ベルトに把持された支柱の移動によって、試薬ボトルを径方向に移送し、試薬ボトルにかかる力を一方向のみにすることが可能となる。さらに、試薬ボトルを保持するホルダは、円環状に配置されるため、各ホルダからの試薬ボトル移送距離も等しく、液揺れに対する制御が容易となる。また、試薬ボトルを個別に移送するため、従来の回転移送のように、使用しない試薬ボトルに液揺れが生じないため、制御を一層容易にすることができる。
【0042】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2にかかる試薬保冷庫について、図4〜6を参照して説明する。図4は、図1に示す自動分析装置1の試薬保冷庫24を下方から見た平面図である。また、図5,6は、図4に示す試薬保冷庫24の側面図である。実施の形態2にかかる試薬保冷庫24は、試薬テーブル242の中心下部にソレノイド43と、支柱42を支持し、一部がソレノイド43内部に収納されているプランジャ44とを有する。
【0043】
図4,5に示すように、ソレノイド43は、内部にプランジャ44を径方向に収容可能な空間にコイル431を有する柱状であって、試薬テーブル242の中心を軸として回転可能である。支柱42は、ソレノイド43の回転に従って試薬テーブル242の周方向に回転する。また、移送制御部32によってソレノイド43への導電が切替制御され、ソレノイド43のコイル431内部の磁場のオンとオフとが切り替えられる。移送制御部32によって所望の試薬ボトル25を載置するホルダ243下方に回転移動されたソレノイド43に磁場がかけられると、その磁場によってプランジャ44がソレノイド43内部に引き付けられ、プランジャ44の動作に従ってプランジャ44に支持されている支柱42もボトル移送レーン245を通過して内径方向に移動する。ここで、支柱42上端部には凹状の支柱側嵌合部421が形成され、ホルダ243の外径方向の側面には凸状のホルダ側嵌合部248が形成されている。また、プランジャ44の過度の移動を防止するため、プランジャ44には鍔部441,442が設けられ、特に、鍔部442は、プランジャ44がソレノイド43内に所定量挿入されている状態を確保する。なお、プランジャ44は、帯磁性のある部材を用いることが好ましく、鍔部441,442は、弾性材等の衝撃を吸収できる部材を用いることが好ましい。また、図5に示すように、ソレノイド43の内部空間には、内径側の側壁にばね432が連結され、ばね432の他方端部には板状部材433が配置されている。
【0044】
また、図6に示すように、移送制御部32によってソレノイド43に磁場がかけられると、プランジャ44がソレノイド43に引き付けられ、支柱42も移動すると、支柱42がホルダ243を内径方向に押し入れるとともに、支柱側嵌合部421とホルダ側嵌合部248とが嵌合する。プランジャ44が鍔部441の位置までソレノイド43内に挿入されると、試薬ボトル25の開口部251がプローブ挿入口244下方に移送される。このとき、ホルダ243外周側面に設けられたホルダ側嵌合部248と、支柱42に設けられた支柱側嵌合部421とが嵌合することで、支柱42によるホルダ243の移送の安定性を向上させる。ここで、ソレノイド43の磁場によってプランジャ44がソレノイド43内部に引き付けられると、鍔部442が板状部材433を押圧し、ばね432を押し縮める。その後、分注が終了してソレノイド43への導電がオフになると、ばね432によってプランジャ44が外径方向に押し出されて、支柱42に連動してホルダ243が所定の位置に戻る。このとき、ホルダ243が外径方向の所定位置に戻るとともに、ばね432による外径方向の付勢によってホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421との嵌合が解除され、支柱42が、接触していたホルダ243から離脱する。
【0045】
なお、ホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421とは、凹凸の形状が逆転していてもよく、ホルダ側嵌合部248に凸形状または凹形状を複数設け、この凹凸形状に対応した凹形状または凸形状を支柱側嵌合部421に配置してもよい。
【0046】
また、図7は、実施の形態2にかかる試薬保冷庫の変形例1を示す側面図である。図7に示すように、側壁241とホルダ243との間は、ばね246によって連結されている。側壁241とホルダ243との間をばね246で連結させることで、プランジャ44がソレノイド43内に引き付けられた際のプランジャ44の加速を抑制して、プランジャ44がホルダ243と接触する衝撃を抑えるとともに、プローブ挿入口244下方まで移動したホルダ243の外径方向への戻りを助長して、円滑な試薬ボトルの移送を行なうことを可能とする。ここで、ホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421との嵌合は、ばね246の外径方向の力による支柱42とホルダ243との滑りを防止する程度の嵌合力でよく、容易に脱着可能な力であることが好ましい。
【0047】
また、図8は、実施の形態2にかかる試薬保冷庫の変形例2を示す側面図である。図8に示すように、試薬テーブル242は、プローブ挿入口244に対する鉛直線を軸心とする、上方に凸となる錐状に形成されている。ホルダ243には、試薬テーブル242の角度に応じて底面に傾斜が設けられている。支柱42は、ソレノイド43の磁場がオンになり、プランジャ44がソレノイド43内部に引き付けられた場合、プランジャ44に連動して径方向に移動し、ホルダ243を径方向に押すことによって試薬ボトル25を移送させる。ここで、ソレノイド43への通電がオフになると、ホルダ243は、重力によって外径方向に移動し、その支柱42の移動に従ってプランジャ44をソレノイド43から引き離す。なお、試薬テーブル242外周には、試薬ホルダ243の脱落を防止するための凸部429が設けられている。また、ホルダ243底面にローラー等、移動を円滑にする機構を設けることが好ましい。
【0048】
ここで、実施の形態2にかかるホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421とは、互いに対となる磁性をもつことが好ましい。ホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421とが磁性を持つことによって嵌合の強度が上がるため、プランジャ44がソレノイド43内から押し出された場合に、支柱42の動きに連動してホルダ243の外周方向への移動を一層円滑に行なうことが可能となる。また、ホルダ側嵌合部248と支柱側嵌合部421との磁性のオンとオフとを切り替え可能としてもよい。
【0049】
実施の形態2にかかる試薬保冷庫は、回転駆動してプランジャを引き付けるソレノイドを有するため、実施の形態1のように各ホルダに直接駆動機構を設置せずに、試薬ボトルを個々に移送することが可能となる。また、支柱を支持したプランジャがソレノイドに予め収容され、ソレノイドの回転に従って支柱も移動させることができるため、各ホルダに支柱を設ける必要がなく、構成を簡易にすることが可能となる。
【0050】
なお、実施の形態2において、ソレノイドの外径側が低くなるように傾斜をかけてもよい。外径側に傾斜をかけることで、ソレノイドへの通電をオフにした場合に、収容されているプランジャの外径方向への戻りを促進することができる。また、プランジャの移動を円滑にするために、ソレノイドの開口部下方にローラー等を設けてもよい。さらに、実施の形態1,2において、試薬テーブルに配置するホルダは、楕円状等、各ホルダがプローブ挿入口に直線移動で到達可能であれば、如何なる配置でもよい。
【0051】
また、上述した実施の形態1,2に限らず、たとえば、検体の免疫学的な分析を行う自動分析装置に対して適用することも可能である。すなわち、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる試薬保冷庫を上方から見た平面図である。
【図3】図2に示す試薬保冷庫の側面図である。
【図4】実施の形態2にかかる試薬保冷庫を下方から見た平面図である。
【図5】図4に示す試薬保冷庫の側面図である。
【図6】図4に示す試薬保冷庫の側面図である。
【図7】実施の形態2にかかる試薬保冷庫の変形例1を示す側面図である。
【図8】実施の形態2にかかる試薬保冷庫の変形例2を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
21 検体移送部
21a 検体容器
21b 検体ラック
22 検体分注機構
22a,26a アーム
23 反応テーブル
24 試薬保冷庫
241 側壁
242 試薬テーブル
243 ホルダ
244 プローブ挿入口
245 ボトル移送レーン
246,432 ばね
247 蓋
248 ホルダ側嵌合部
249 凸部
25 試薬ボトル
251 開口部
26 試薬分注機構
27 攪拌部
28 測光部
29 洗浄部
31 制御部
32 移送制御部
33 入力部
34 分析部
35 記憶部
36 送受信部
37 出力部
41 モータ
411,412 プーリ
413 ベルト
42 支柱
421 支柱側嵌合部
43 ソレノイド
431 コイル
433 板状部材
44 プランジャ
441,442 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容した試薬ボトルを保持するホルダを有し、該ホルダを移動させることによって所望の試薬ボトルを、前記試薬の吸引を行うプローブの吸引位置に移送する試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法において、
前記吸引位置との距離を固定して配列された前記ホルダを、径方向に直線移動させて前記吸引位置に移送させる移送ステップと、
前記吸引位置に移送された前記試薬ボトル内の試薬を、前記プローブによって吸引する試薬吸引ステップと、
を含むことを特徴とする試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法。
【請求項2】
前記移送ステップは、所定の速度プロファイルによって各ホルダを移動させることを特徴とする請求項1に記載の試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法。
【請求項3】
前記吸引位置は、前記ホルダの配列位置によって決定される円弧中心又は半径上であり、
前記移送ステップは、前記ホルダが内径方向に移動することを特徴とする請求項1または2に記載の試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法。
【請求項4】
前記ホルダは、前記吸引位置に対して点対称に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法。
【請求項5】
前記ホルダは、円環状に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の試薬保冷庫の試薬ボトル移送方法。
【請求項6】
試薬を収容した試薬ボトルを保持するホルダを有し、該ホルダを移動させることによって所望の試薬ボトルを、前記試薬の吸引を行うプローブの吸引位置に移送する試薬保冷庫を備えた自動分析装置において、
前記吸引位置に向かう距離を固定して配列され、径方向に移動可能なホルダと、
前記ホルダを径方向に直線移動させて、前記試薬ボトルを前記吸引位置下方に移送させる移送手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
前記移送手段は、所定の速度プロファイルによって各ホルダを移動させることを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記ホルダは、前記吸引位置に対して点対称に配置されることを特徴とする請求項6または7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記ホルダは、円環状に配置されることを特徴とする請求項6または7に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記移送手段は、
前記ホルダの底面から鉛直下方に延びた支柱と、
前記支柱を把持し、モータと連結された径方向の直線部を持つベルトと、
を備え、モータの回転によるベルトの駆動によって、前記ホルダを径方向に移動させて、前記試薬ボトルを移送することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記ホルダの外径方向側面に凹部または凸部を有するホルダ側嵌合部を設け、
前記移送手段は、
径方向と鉛直に配置され、前記ホルダ側嵌合部に対応して設けられた該ホルダ側嵌合部と脱着可能な支柱側嵌合部を有する支柱と、
前記支柱を支持し、長手方向が径方向に向いた棒状の磁性材と、
モータと連結し、前記磁性材を収容可能な空間を径方向に設けて、前記磁性材の一部を予め収容した電磁石と、
を備え、通電して磁場を形成した前記電磁石が、前記磁性材を内径方向に引き付けることによって前記ホルダ側嵌合部と前記支柱側嵌合部とが嵌合し、前記支柱が前記ホルダを径方向中心側に押すことによって、前記試薬ボトルを移送することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記電磁石は、前記空間の内径側側壁に、径方向に伸縮可能な弾性部材を設けたことを特徴とする請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記ホルダの外径方向側面と前記試薬保冷庫側壁との間は、弾性部材によって連結されていることを特徴とする請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記ホルダを保持するテーブルが、内径方向に向けて高くなるように傾斜し、
前記ホルダは、上部平面が水平であって、底部が前記テーブルの角度に対応して傾斜をもつことを特徴とする請求項11に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122188(P2010−122188A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298590(P2008−298590)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】