説明

誘導加熱装置、発振器

【課題】それぞれ固有の共振点を有する共振回路により、簡易な構成で被加熱物を誘導加熱することができる誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】被加熱物に対向して設けられた加熱コイルLA、LB、LCを含む共振回路を複数回路具備し、各共振回路がそれぞれ固有の共振点を有する装置であって、すべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路31と、所要の共振特性に応じた周波数の信号を掃引発振回路31から各共振回路に供給させる制御回路34とを有し、いずれかの共振点で被加熱物を誘導加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数の信号を負荷に供給する発振器、及びこの発振器を応用した超音波洗浄装置や誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子のインピーダンスが周囲の周波数に対して極小となる周波数(以下、f|Z|minという。)の信号により超音波振動子から超音波を発生させて洗浄を行う超音波洗浄装置が知られている。
【0003】
図6は、従来のこの種の超音波洗浄装置の概略的な構成図であり、洗浄漕61内の超音波による音圧分布の様子を簡単に説明したものである。本来、音は縦波(疎密波)であるが、ここでは分かり易くするために横波で音圧表記してある。洗浄漕61の底面には超音波振動子62が接合されており、洗浄液63が洗浄漕61内に充分満たされている。この状態で、超音波発振器64により超音波振動子62から単一周波数の超音波60を発振させ、この超音波60により洗浄液63を振動させて被洗浄物65を洗浄する。
【0004】
超音波60は、洗浄漕61の底面から液面に向かって伝搬し、液面でほぼ100%反射する。反射波は入射波とは逆位相となり、進行しない波(定在波)を発生させる。音波の腹の部分は密となるために音圧が大きく、大きな洗浄効果を得ることができる。一方、音波の節の部分は疎となるために音圧が小さく、充分な洗浄効果を得ることができない。このため、超音波発振器64により発生する超音波60の波長に対して無視できない大きさの被洗浄物65が投入された場合は、洗浄ムラが発生することになる。例えば、図6に示すように、被洗浄物65が音波の腹の部分と節の部分とにまたがって存在する程に大きい場合、被洗浄物65の音波の腹の部分にあたる箇所は洗浄が進み、音波の節の部分にあたる箇所は洗浄が進まず、洗浄ムラが発生する。このような洗浄ムラを防止するための手法として、従来、掃引発振による洗浄方法とマルチ発振による洗浄方法とが知られている。
【0005】
掃引発振による洗浄方法では、基本となる発振周波数を中心に周波数変調等により洗浄
液漕内の超音波の波長(周波数)を変化させ、超音波が疎あるいは密となる箇所をずらす。この方法では、安価且つ簡単に洗浄ムラを防止できる利点がある。しかし、一般に超音波振動子のQ(Quality Factor)は極めて高いため、基本となる発振周波数に対して±5%程度の変化しか望めず、それ以上の周波数で掃引発振を行うと平均出力が低下する。この場合は、洗浄効果のある超音波自体を発振させることができず、洗浄ムラの完全な防止が期待できない。
【0006】
マルチ発振による洗浄方法は、1つの洗浄漕にf|Z|minの異なる2以上の超音波振動子を接合し、各々の超音波振動子に対して最適なf|Z|minの周波数の信号を発振する発振器を複数台接続することにより、洗浄漕内で2以上の周波数の超音波を同時に発生させる方法である。この方法は、掃引発振による方法に比べて洗浄ムラを防止する効果は格段に高い。しかし、超音波振動子及び発振器共に複数台用意する必要があるためにコスト的に割高になり、設備が巨大化する等の理由により、あまり普及していない。
【0007】
このような問題は、複数の加熱コイルを有する誘導加熱装置においても同様に存在する。すなわち、複数の加熱コイルを有する誘導加熱装置で各加熱コイルに高周波信号を供給する場合は、複数台の発振器が必要となる。発振器を1台にすることもできるが、この場合は、図7に示すように各加熱コイルLA、LB、LCと発振器71との間に切換回路72を設け、発振器71から各加熱コイルLA、LB、LCへの経路を時分割で切り換える必要がある。しかし、このような方式では、大電力回路を切り換えることになるために切換回路72が大型化してしまい、これが超音波洗浄装置の場合と同様、装置の巨大化を招き、コストアップの要因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、超音波振動子や加熱コイル等のように、固有の共振点を有する負荷を1又は複数接続する装置において、装置構成の巨大化を防止することができる仕組みを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の誘導加熱装置は、被加熱物に対向して設けられた加熱コイルを含む共振回路を複数回路具備し、各共振回路がそれぞれ固有の共振点を有する装置であって、すべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、所要の共振特性に応じた周波数の信号を前記掃引発振回路から各共振回路に供給させる制御回路とを有し、いずれかの共振点で前記被加熱物を誘導加熱することを特徴とする。このように構成される誘導加熱装置は、掃引発振回路から複数の共振点周波数のいずれかの信号が出力されるので、装置構成が簡略化される。なお、誘導加熱装置の場合の固有の共振点は、通常は、単一の共振点となる。
【0010】
本発明の他の誘導加熱装置は、被加熱物に対向して設けられた加熱コイルを含む共振回路を複数回路具備し、各共振回路がそれぞれ固有の共振点を有する装置であって、すべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、各共振回路によるインピーダンスの変化を検出するモニタ回路と、このモニタ回路による検出結果に基づいて前記掃引発振回路から各共振回路へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、複数の共振点でシーケンシャルに前記被加熱物を誘導加熱することを特徴とする。好ましい実施の形態では、前記制御回路が、前記モニタ回路の検出値が低下して第1基準値に達したときに前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、検出値が第1基準値未満となり第1基準値より小さい第2基準値に達したときに前記掃引発振回路を前記第1速度よりも低速の第2速度で掃引させるように構成される。第2基準値に達したときに前記掃引発振回路の発振周波数を固定させるようにしても良い。
【0011】
本発明の発振器は、それぞれ固有の共振点を有する複数の負荷との接続手段と、接続される負荷のすべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、各負荷の実効出力値を検出するモニタ回路と、前記掃引発振回路から各負荷へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、前記制御回路は、前記モニタ回路による検出値が所定の基準値より大きくなる領域では前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、前記基準値より小さくなる領域では第1速度よりも低速となる第2速度で掃引させるように構成されたものである。
【0012】
本発明の他の発振器は、それぞれ固有の共振点を有する複数の負荷との接続手段と、接続される負荷のすべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、各負荷の共振特性を検出するモニタ回路と、前記掃引発振回路から各負荷へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、前記制御回路は、前記モニタ回路の検出値が低下して第1基準値に達したときに前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、検出値が第1基準値未満となり第1基準値より小さい第2基準値に達したときに前記掃引発振回路を前記第1速度よりも低速の第2速度で掃引させるとともに、第2基準値に達したときの前記掃引発振回路の発振周波数を固定させるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、掃引速度が負荷に応じて変化するので、任意の条件下で所定の周波数の信号が必要となる装置に対して装置規模を巨大化することなく、当該信号を随時供給できるようになる。例えば、複数の共振点をもつ超音波振動子を用いた超音波洗浄装置に対して、共振点近辺で掃引速度を遅くして発振信号を供給することにより、複数の周波数の超音波による高効率の洗浄が可能となり、洗浄ムラを防止できる。また、異なる周波数特性を持つ複数の加熱コイルに高周波信号を供給する場合に、各々の加熱コイルの共振点近辺で掃引速度を遅くして発振信号を供給することにより、効率的な誘導加熱が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一般的な超音波振動子のインピーダンス特性図。
【図2】第1実施形態の超音波洗浄装置に用いられる発振器の構成図。
【図3】第2実施形態の誘導加熱装置の概略的な構成図。
【図4】第2実施形態の誘導加熱装置におけるインピーダンス特性図。
【図5】第2実施形態の誘導加熱装置における掃引速度の変化を示す説明図。
【図6】従来の超音波洗浄装置の概略的な構成図。
【図7】従来の切換器を利用する誘導加熱装置の概略的な構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、一般的な超音波振動子における周波数対インピーダンスの特性(共振特性)を示した図であり、縦軸は超音波振動子のインピーダンス、横軸は超音波振動子の発振周波数を表す。超音波振動子では、ある周波数範囲において、部分的な周波数領域毎のインピーダンスが極小となる点(以下、「共振点」という。)が1又は複数存在する。この共振点がいくつになるか、どの周波数で共振点になるかは、超音波振動子に固有のものである。図1の例では、一つの超音波振動子において、一定の周波数範囲の中でインピーダンスが最小となる共振点Dの他に、共振点A、B、C、Eが複数存在する。この実施形態では、この超音波振動子の共振特性を利用するために複数の共振点A〜Eのすべてを含む周波数範囲で掃引発振を行う(図1のf1〜f2の周波数で掃引発振する。掃引発振は、f1の周波数からf2の周波数の方向で行う。)掃引発振回路を用いた超音波洗浄装置例を挙げる。便宜上、図6に示したものと同一の構成要素については、図6に示した符号をそのまま使用する。
【0016】
図2は、超音波洗浄装置に用いられる発振器の構成図である。この超音波発振器20は、掃引発振回路21、超音波振動子62のインピーダンスを検出するモニタ回路22、しきい値の設定を行う設定回路23、検出したインピーダンス値を記憶する記憶回路24、及び検出したインピーダンス値に基づいて掃引発振回路21の動作を制御する制御回路25を含んで構成される。
【0017】
掃引発振回路21は、超音波振動子62に動作信号を供給するものである。この信号の周波数、すなわち発振周波数は掃引発振を行うために可変であり、その掃引速度は、制御回路25からの指示によって制御されるようになっている。このような掃引発振回路21を用いることにより、複数の洗浄効果のある周波数の超音波60を任意に発生することができ、マルチ発振による超音波洗浄と同様の効果を得ることができる。つまり、掃引発振回路21を、洗浄ムラを防止する上で充分となる周波数帯域で掃引発振させ、発振周波数が、超音波振動子62の各共振点A〜Eを通過するようにすることで、洗浄効果のある複数の周波数の超音波の中から最適なものを適宜超音波振動子62から発生させることができる。なお、後述するように、複数の共振点でシーケンシャルに超音波60を発生させるようにすることもできる。
【0018】
モニタ回路22は、超音波振動子62のインピーダンスを常に検出しており、その検出結果を制御回路25に送る。設定回路23は、充分に洗浄効果が期待できる実効出力値のしきい値として、超音波振動子62のインピーダンスのしきい値を設定する。このしきい値が、掃引発振回路21の掃引速度を変更する基準となる。例えば、モニタ回路22により検出した超音波振動子62のインピーダンスがしきい値より大きくなる周波数領域、つまり実効出力が小さく洗浄効果が低い領域では、掃引発振回路21は、高速で掃引する。逆に、インピーダンスがしきい値より小さくなる周波数領域、つまり実効出力が大きく洗浄効果が高い領域では、掃引発振回路21は低速で掃引を行う。このようにして、掃引発振回路21の掃引速度を変更する。しきい値の設定によっては、特定の共振点のみで超音波60を継続して発生させるようにすることも可能である。
【0019】
記憶回路24は、モニタ回路22により検出した超音波振動子62のインピーダンス値を直接あるいは制御回路25を通じて記憶する。制御回路25は、掃引発振回路21を制御するものである。具体的には、モニタ回路22により検出されたインピーダンスと設定回路23により設定されたしきい値とを比較し、その比較結果から掃引発振回路21の掃引速度を決定する。
【0020】
以上のように構成される発振器20において、図1のような共振特性を持つ超音波振動子62を用いてシーケンシャルに超音波を発生させる手順は、以下のようになる。図1のf1の周波数ではモニタ回路22で検出する超音波振動子62のインピーダンスがしきい値以上であるため、制御回路25は、掃引発振回路21に高速での掃引発振を指示する。そして、共振点Aの近傍で、インピーダンス値がしきい値以下になると、制御回路25はこれを検出して、掃引発振回路21に低速掃引を行うように指示を出す。これにより、掃引発振回路21は、低速で掃引発振する。共振点Aを過ぎ、再びインピーダンス値がしきい値以上になると、制御回路25は、インピーダンス値がしきい値以上になったことを検出し、掃引発振回路21に高速掃引を行うように指示を出す。これにより、掃引発振回路21は高速で掃引発振し、次の共振点Bに向かう。
【0021】
共振点Bの近傍でインピーダンス値がしきい値以下になると、制御回路25は、これを検出し、掃引発振回路21に再び低速掃引を指示する。これにより、掃引発振回路21は低速で掃引発振するようになる。以下、制御回路25により超音波振動子62のインピーダンスがしきい値以上又は以下になると、これを検知し、検知結果により掃引発振回路21の掃引速度を変化させる。つまり、共振点D、Eの近傍で、共振点A、Bの近傍と同様に低速で掃引する。この発振周波数の信号が供給されることにより、超音波振動子62が超音波60を発生する。
【0022】
このようにして、複数の周波数の超音波を発生させて超音波洗浄を行うことにより、超音波洗浄装置の規模を大きくすることなく、短時間に、洗浄ムラを防止しながら被洗浄物65の洗浄を行うことができる。
【0023】
制御回路25は、記憶回路24に記憶されたインピーダンス特性から、インピーダンスが最小になる周波数に掃引発振回路21の発振周波数を固定して用いるようにしてもよい。例えば図1の共振特性を持つ超音波振動子62の場合、掃引発振回路21の発振周波数を、超音波振動子62から最大実効が得られるf|Z|minである共振点Dに達したときの掃引速度をゼロ値またはゼロ値に近い速度にしても良い。このようにすれば、従来の単一周波数と同様の洗浄が行えるようになる。これは、被洗浄物65が超音波60の波長に対して十分小さく、洗浄ムラが発生しないような場合に有効である。さらに、記憶された共振特性から、予め複数の洗浄効果の高い周波数を選択し、選択した周波数の信号のみを時分割に発振させるようにしても、やはり高い洗浄効果が得られる。
【0024】
<第2実施形態>
第2実施形態は、本発明の発振器を誘導加熱装置に適用した場合の例を示すものである。
【0025】
この誘導加熱装置の概略的な構成例を図3に示す。この誘導加熱装置30は、共振コンデンサCAと加熱コイルLA、共振コンデンサCBと加熱コイルLB、共振コンデンサCCと加熱コイルLCを含む各直列共振回路と一つの発振器OSCとを並列に接続して成る掃引発振回路31を有している。誘導加熱装置30は、また、掃引発振回路31を制御するために、第1実施形態に示したものと同様のモニタ回路32、設定回路33及び制御回路34が備えられる。
【0026】
モニタ回路32は、各直列共振回路のインピーダンスを検出し、検出値を制御回路34に送る。設定回路33は、検出されたインピーダンスとの比較対照となる設定値及びしきい値、発振周波数を固定させる時間等を定め、これらを制御回路34に送出する。制御回路34は、モニタ回路32により検出されたインピーダンスと設定回路33により設定された値とを比較し、比較結果により掃引発振回路31の掃引速度を制御する。
【0027】
掃引発振回路31は、図4のf1とf2との間の周波数範囲で掃引発振するようになっている。図4は、誘導加熱装置のインピーダンス特性を示した図であり、縦軸はインピーダンス、横軸は周波数を表している。誘導加熱装置のインピーダンス特性は、3個の加熱コイルLA、LB、LCの各々の共振特性により決まる。図4の例では、各加熱コイルLA、LB、LCの共振点A、B、Cが示されている。また、掃引発振回路31の掃引速度を変更する基準となるしきい値、及びしきい値よりも低インピーダンスの設定値が示されている。本実施形態では、インピーダンスがしきい値以上の範囲では周波数をしきい値になるまでスキップさせる(周波数切換)。そして、インピーダンスがしきい値以下になったときは高速掃引発振させ、さらにインピーダンスが設定値に達したときは低速掃引発振またはそのときの周波数を固定させる(掃引速度“0”)。図5は、発振回路における発振周波数と発振時間との関係を示す図であり、図4と対応する関係にある。
【0028】
直列共振回路の場合、発振周波数の関係はf1>f2となる。第1実施形態と同様に、モニタ回路32及び制御回路34により、しきい値よりインピーダンス値が高い領域では掃引速度を高速にし、しきい値よりインピーダンス値が低い領域では掃引速度を低速にする。なお、共振点以下の周波数になると、直列共振回路が容量性領域となるために半導体発振素子にストレスが加わる。そのため、しきい値から共振点までは低速掃引を行い、共振点を過ぎたら高速掃引を行うほうが好ましい。共振点A、B、Cは、モニタ回路32により検出し、制御回路34で検知する。しきい値よりも小さい値を別途設定して掃引速度を決めてもよい。
【0029】
以上の構成及びインピーダンス特性を持つ誘導加熱装置では、以下のような手順で、掃引発振速度を制御して加熱コイルLA、LB、LCを加熱する。掃引発振回路31は、時間0で周波数f1から掃引発振を始める。周波数f1では、インピーダンスがしきい値以上であるため、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数をインピーダンスが最初にしきい値と等しくなる周波数にスキップさせる。インピーダンスと設定値とが等しい周波数SAになると、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数(共振点A)をその周波数SAに固定させる。周波数を固定する時間は、図5に示されるように、インピーダンスが最初に設定値に達した時点tA1から次に設定値に達した時点tA2まで時間tAである。
【0030】
時間tAが経過すると、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数をインピーダンスが次のしきい値と等しくなる周波数LAまでスキップさせ、周波数LAから高速掃引させる。発振周波数が再びインピーダンスと設定値と等しい周波数SBに達すると、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数(共振点B)をその周波数SBに固定させる。周波数を固定する時間は、その周波数領域においてインピーダンスが最初に設定値に達した時点tB1から次に設定値に達した時点tB2まで時間tBである。
【0031】
時間tBが経過すると、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数をインピーダンスがしきい値と等しくなる周波数LBまでスキップさせる。周波数LBまでスキップする。引き続き高速掃引させ、発振周波数が再びインピーダンスと設定値と等しい周波数SCに達すると、制御回路34は掃引発振回路31の発振周波数を周波数SCに固定させる。周波数を固定する時間は、その周波数領域においてインピーダンスが最初に設定値に達した時点tC1から次に設定値に達した時点tC2まで時間tCである。
【0032】
時間tCが経過すると、制御回路34は、掃引発振回路31の発振周波数をインピーダンスがしきい値と等しくなる周波数LCまでスキップさせ、引き続き周波数f2まで高速掃引させる。
【0033】
このようにして、掃引速度を制御しながら掃引発振回路31を発振させて加熱コイルLA、LB、LCを逐次加熱する。加熱コイルLA、LB、LCには、共振点A、B、Cの近傍の周波数で掃引速度が遅くなった信号が、あるいは共振点よりわずかに高い周波数で固定された周波数の信号が供給される。そのために加熱コイルLA、LB、LCは、1台の発振器により、容易に、時分割によって高効率で加熱されるようになり、装置構成の巨大化が回避される。第2実施形態では、しきい値を境に周波数をスキップするようにしたが、この領域でも高速掃引を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
20 超音波発振器
21、31 掃引発振回路
22、32 モニタ回路
23、33 設定回路
24 記憶回路
25、34 制御回路
30 誘導加熱装置用発振器
CA、CB、CC 共振コンデンサ
LA、LB、LC 加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物に対向して設けられた加熱コイルを含む共振回路を複数回路具備し、各共振回路がそれぞれ固有の共振点を有する装置であって、
すべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、
所要の共振特性に応じた周波数の信号を前記掃引発振回路から各共振回路に供給させる制御回路とを有し、
いずれかの共振点で前記被加熱物を誘導加熱することを特徴とする、
誘導加熱装置。
【請求項2】
被加熱物に対向して設けられた加熱コイルを含む共振回路を複数回路具備し、各共振回路がそれぞれ固有の共振点を有する装置であって、
すべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、
各共振回路によるインピーダンスの変化を検出するモニタ回路と、
このモニタ回路による検出結果に基づいて前記掃引発振回路から各共振回路へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、
複数の共振点でシーケンシャルに前記被加熱物を誘導加熱することを特徴とする、
誘導加熱装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記モニタ回路の検出値が低下して第1基準値に達したときに前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、検出値が第1基準値未満となり第1基準値より小さい第2基準値に達したときに前記掃引発振回路を前記第1速度よりも低速の第2速度で掃引させるように構成される、
請求項2記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記検出値が第2基準値に達したときに前記掃引発振回路の発振周波数を固定させるように構成される、
請求項3記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
それぞれ固有の共振点を有する複数の負荷との接続手段と、
接続される負荷のすべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、
各負荷の実効出力値を検出するモニタ回路と、
前記掃引発振回路から各負荷へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、
前記制御回路は、前記モニタ回路による検出値が所定の基準値より大きくなる領域では前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、前記基準値より小さくなる領域では第1速度よりも低速となる第2速度で掃引させるように構成されている、
発振器。
【請求項6】
それぞれ固有の共振点を有する複数の負荷との接続手段と、
接続される負荷のすべての共振点を含む周波数範囲の信号を掃引発振する掃引発振回路と、
各負荷の共振特性を検出するモニタ回路と、
前記掃引発振回路から各負荷へ供給される信号の掃引速度を変化させる制御回路とを有し、
前記制御回路は、前記モニタ回路の検出値が低下して第1基準値に達したときに前記掃引発振回路に第1速度で掃引させ、検出値が第1基準値未満となり第1基準値より小さい第2基準値に達したときに前記掃引発振回路を前記第1速度よりも低速の第2速度で掃引させるとともに、第2基準値に達したときの前記掃引発振回路の発振周波数を固定させるように構成される、
発振器。
【請求項7】
前記モニタ回路による検出値を記憶する記憶回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記記憶回路に記憶された検出値に基づいて前記変化させるべき掃引速度を決定するように構成されていることを特徴とする、
請求項5又は6記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−170429(P2009−170429A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108948(P2009−108948)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【分割の表示】特願平11−311613の分割
【原出願日】平成11年11月1日(1999.11.1)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】