説明

誘導加熱調理器

【課題】受け皿に水がある場合とない場合の双方において、加熱調理を行うことができるグリル装置を備えること。
【解決手段】グリル庫2の前方に設けた開口部22を正面として、グリル庫2内の左右水平方向の幅をW1とすると受け皿温度検知手段10は1/2W1の位置に設け、本体23前後方向の幅をW2とすると受け皿温度検知手段10は1/2W2の位置に設けることにより、製品23が傾いた場合に最も傾きの影響を受けにくい部分に受け皿温度検知手段10を配置することができ、精度よく水ありなしを判別することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭で使用するグリル装置を有する誘導加熱調理器において、受け皿の水の有無に関わらずグリル庫内の発煙・発火を抑制し調理を行う誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は魚などの調理物を加熱調理するグリル装置と、グリル装置のグリル庫内に収容する調理物を載置する焼き網と、調理物から滴下する油などを受ける受け皿と調理物を加熱する熱源とグリル装置の開口を開閉する扉などから構成され、グリル庫内の発火を防止するため受け皿に水を入れ使用し、調理中に受け皿の水がなくなった場合には加熱出力を低下させて庫内温度が高くなりすぎないよう制御を行うものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の誘導加熱調理器について説明する。図7は従来の誘導加熱調理器を示すブロック図である。グリル装置101は前面を開口したグリル庫102を有し、グリル庫102内部に調理物103を上方より加熱する上方加熱手段104と、下方より加熱する下方加熱手段105が取り付けられている。
【0004】
受け皿106は下方加熱手段105の下方に配置され、グリル庫102の開口を覆う扉107の開閉と連動してグリル庫102内に着脱される。調理物を載置するための焼き網108は受け皿106に設置され、調理物103の載置面を下方加熱手段105の上方に配置し、受け皿106と共にグリル庫102内に対し着脱される。
【0005】
操作部109は誘導加熱調理器の前面に設けられ、調理法及び調理物を選択するための選択スイッチ、加熱スタート/ストップを行う切入スイッチ、及び表示手段からなる。グリル庫102内の温度を検知する庫内温度検出手段110により庫内温度を検出し、庫内温度が所定温度になったときに上方加熱手段104、下方加熱手段105の通電を制御手段111により制御する。
【0006】
記憶手段113は調理法及び調理物の種類に対応する加熱出力パターンを記憶し、操作部109により選択された調理法および調理物に応じた加熱出力パターンを制御手段111へ伝達する。計時手段114は時間を計時するものであり、制御手段111は選択された加熱出力パターンと計時手段114の計時結果に応じて上方加熱手段104及び下方加熱手段105の出力を制御する。
【0007】
温度検知手段112は下方加熱手段105と受け皿106の間に設置され、この温度検知手段112の温度上昇勾配により受け皿106の水ありなしを判別し、受け皿に水がないと判断した場合には加熱を停止または加熱出力を低下させる。
【特許文献1】特開2001−74250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の誘導加熱調理器は水ありを前提に調理を開始するものであり、調理開始後、途中で水がなくなった場合などに加熱出力を低下または停止させることにより発火・発煙を抑えることができるが、加熱初期から水がない場合には調理を継続することができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受け皿に水がある場合とない場合の双方において、加熱調理を行うことができるグリル装置を備えた誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱装置は、外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置と、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され前記調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段、下方加熱手段の出力を制御する加熱制御手段と、前記受け皿の水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する調理シーケンス記憶手段と、加熱開始から所定時間毎の前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きを記憶する傾き記憶手段と、前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが所定値以上は水なし、所定値未満は水ありと判別する水有無判別手段とを備え、前記グリル庫の前方に設けた開口部を正面として、グリル庫内左右水平方向の中心で、本体前後水平方向の中心に前記受け皿温度検知手段を配置したものである。これによって、受け皿に水があるかないかを自動的に検出し、水の有無に応じて最適な調理を実行することができる。
【0011】
また、例えば、受け皿に水がないときには下方加熱手段の温度が所定温度(油が滴下しても発火しない温度)以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができる。
【0012】
また、水有無に応じた調理シーケンスを記憶しておくことにより、水有無に応じた加熱パターンを自動選択できるため水の有無により庫内温度・加熱出力が変動しても調理性能を落とさずに調理を行うことができる。
【0013】
また、加熱開始から所定時間毎に更新しながら受け皿温度検知手段の検知温度の傾きを記憶するため調理シーケンスの最初から最終まで水の有無の情報を検知し、判別しているので調理途中での電圧変動や水の途中での乾燥なども検知することができ安全性も高い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の誘導加熱調理器は、受け皿の水の有無に応じて最適な調理を実行し、また、下方加熱手段の加熱出力を制御することで水の有無に関わらず発火・発煙することなく加熱調理を行うことができるグリル装置を備えた誘導加熱調理器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され前記調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記上方加熱手段、下方加熱手段の出力を制御する加熱制御手段と、前記受け皿の水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する調理シーケンス記憶手段と、加熱開始から所定時間毎の前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きを記憶する傾き記憶手段と、前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが所定値以上は水なし、所定値未満は水ありと判別する水有無判別手段とを備え、前記グリル庫の前方に設けた開口部を正面として、グリル庫内左右水平方向の中心で、本体前後水平方向の中心に前記受け皿温度検知手段を配置したことにより、本体を設置あるいは載置した状態が傾いていたとしても、受け皿温度検知手段を本体の傾きの影響が最も少ない位置に配置しているので、受け皿に水があるかないかを自動的に検出し、水の有無に応じて最適な調理を実行するとともに、例えば受け皿に水がないときには下方加熱手段の温度が所定温度以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受け皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。また、加熱開始から所定時間毎に更新しながら受け皿温度検知手段の検知温度の傾きを記憶するため、調理シーケンスの最初から最終まで水の有無の情報を検知し、判別しているので調理途中での電圧変動や水の途中での乾燥なども検知することができ安全性も高い。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の受け皿温度検知手段を、受け皿との位置関係において所定の隙間を設けるとすることにより、より精度よく水ありなしを判別するものである。受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが所定値以上は水なし、所定値未満は水ありと判別する水有無判別手段を備えるが、この判別の閾値をどう設定するかが大きな課題となる。受け皿は調理物を出し入れするために摺動可能に載置されるため、左右上下において摺動用の隙間を設けて設計される。つまり、受け皿のセット状態での受け皿温度検知手段との位置関係は不安定になりやすく、ものづくりのばらつきもある。受け皿温度検知手段と受け皿が接触したり、隙間が生じたりという状況が起こりうるわけで、接触した場合は、受け皿の温度が熱伝導により伝わり、受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが極端に高くなる。逆に隙間が生じた場合は、空気を介しての対流伝達だけになり、受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが低くなり、水ありなし判別するための閾値を決めることはできない。したがって、本発明に示すように受け皿温度検知手段は、受け皿との位置関係において所定の隙間を設けることにより、安定した判別の閾値を決定することで精度よく水ありなしを判別することが可能となる。
【0017】
第3の発明は、第1または第2の発明の受け皿を、受け皿温度検知手段と対向する底面位置において、その他の底面部と比して所定の高さの凸形状とすることで、水あり時に、何らかの理由で調理の途中に蒸発によって水がなくなった場合でも受け皿温度検知手段と対向する底面位置を凸形状とすることでその部分が一番早くに水がなくなるため、いち早く温度上昇し、水なしと判別できるため、下方加熱手段の温度が所定温度以上にならないように制御するとすることにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため途中で受け皿に水がなくなったときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置のブロック図を示すものである。グリル装置1は前面を開口したグリル庫2を有し、グリル庫2内部に調理物3を上方より加熱する上方加熱手段4と、下方より加熱する下方加熱手段5が取り付けられている。上方加熱手段4、および下方加熱手段5はシーズヒーターにより構成され商用電源電圧を印加されると発熱し、調理物3を加熱調理することができる。また、本実施の形態では上方加熱手段4を800W、下方加熱手段5を1000Wのヒーターとする。
【0020】
なお、本実施の形態では上方加熱手段4、および下方加熱手段5をシーズヒーターにより構成するとしたが、ハロゲンヒーターや、他の熱源を使用してもよい。また、本実施の形態では上方加熱手段4、下方加熱手段5のワットをそれぞれ800W、1000Wとしたが、ヒーターのワットは庫内の広さおよびヒーター形状に応じて変更する必要があり、これに限られるものではない。
【0021】
受け皿6は下方加熱手段5の下方に配置され、グリル庫2の開口を覆う扉7の開閉と連動してグリル庫2内に着脱される。調理物を載置するための焼き網8は受け皿6に設置され、調理物3の載置面を下方加熱手段5の上方に配置し、受け皿6と共にグリル庫2内に対し着脱される。
【0022】
グリル庫2内の温度を検知する庫内温度検出手段9はサーミスタにより構成され庫内温度を検出することができる。また、受け皿6の温度を検知する受け皿温度検知手段10はサーミスタにより構成されグリル庫の下面を介して受け皿6の温度を検知することができる。
【0023】
なお、本実施の形態では庫内温度検知手段9、および受け皿温度検知手段10をサーミスタにより構成するとしたが、白金センサや赤外線センサなどの温度検知素子を使用してもよい。
【0024】
加熱制御手段11は商用電源とヒーター間に接続されたリレーにより構成し、制御手段12の信号により上方加熱手段4、および下方加熱手段5をオン・オフする。なお、本実施の形態では加熱制御手段11をリレーにより構成するとしたが、トライアックやサイリスタといったスイッチを使用してもよい。
【0025】
制御手段12はマイコンにより構成し、庫内温度検知手段9や受け皿温度検知手段10により温度を検知し、操作部13により使用者が選択した動作モードに応じて加熱制御手段11を介して上方、下方加熱手段のオン・オフを制御する。
【0026】
調理シーケンス記憶手段14は各種動作モードを記憶している。動作モードには一定ワットを出力し続ける手動モードと、庫内の温度を一定に保つ温調モード、ならびに食材に応じた加熱パターン(一定ワット出力を一定時間保つ制御と庫内温度を一定に保つ温調を一定時間保つ制御の組み合わせ)により調理を行うオート調理モードを備え、操作部13により使用者が選択したモードに応じて加熱制御手段11を制御し調理を行う。
【0027】
制御手段12は計時手段15により計時された時間を用い一定周期(本実施の形態では16秒とする)内のオン・オフ比率を変更することで上方、下方加熱手段の出力を制御する。たとえば、上方加熱手段4のオン時の出力を800Wとしたとき、平均電力を400Wに制御するためには8秒間オンし、残りの8秒間をオフする制御を行う。
【0028】
水有無判別手段16は加熱開始から所定時間(本実施の形態では90秒とする)の間の受け皿温度検知手段10の温度上昇値を毎秒毎に算出し、傾き記憶手段19に記憶する。受け皿温度検知手段10の温度上昇値が所定値(本実施の形態では10Kとする)以上であれば受け皿6内に水がないと判別し、所定値未満であれば受け皿6に水があると判別する。
【0029】
調理シーケンス記憶手段14に記憶された各動作モードは水有用の加熱パターンと水無用の加熱パターンを有し、水有無判別手段16の判別結果に応じて制御手段12は加熱パターンを変更することができる。水有無判別手段16により受け皿6に水がないと判別されると、制御手段12は下方加熱手段5の温度を所定温度(本実施の形態では500℃とする)以下に保つように平均出力を所定値(本実施の形態では400Wとする)以下に制御する。平均出力の所定値はグリル庫の体積、下方加熱手段5の表面積、グリル庫内の温度などから決まる。
【0030】
下方加熱手段5の温度が500℃以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段5に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、受け皿に水がないときにも発火の危険性を抑制し調理を行うことができる。
【0031】
電流検知手段17はカレントトランスと分圧抵抗からなり、下方加熱手段5に流れ電流を電圧に変換し制御手段12のAD変換ポートへ接続することで、制御手段12は下方加熱手段5に流れる電流を検知することができる。また、電圧検知手段18は商用電源の電圧を分圧抵抗により分圧し制御手段12のAD変換ポートへ接続することで、制御手段12は電源電圧を検知することができる。
【0032】
制御手段12は電流検知手段17と電圧検知手段18の入力値から下方加熱手段5の出力ワットを算出し、あらかじめ調理シーケンス記憶手段14に記憶しておいた下方加熱手段5の標準出力値(本実施の形態では1000Wとする)に対するずれを計算し、加熱パターンに応じた出力のオン・オフ比率を標準出力値に対するずれを加味して計算することによりシーズヒーターのばらつきや入力電圧の変動を補正することができるため正確に下方加熱手段5の出力を制御することができる。
【0033】
たとえば、加熱パターンによる目標出力が500Wの場合に、電流電圧検知により下方加熱手段5のオン時の出力が1050Wであることがわかると、標準出力値1000Wとの比率1000/1050=0.952を求め、オン時間500/1000×16=8秒に0.952を乗算しオン時間を7.62秒とすることで目標出力を得ることができる。
【0034】
また、判別値変更手段20は、水有無判別手段16にて水の有無を判別する閾値を変更する手段であり、加熱開始判断手段21は制御手段12から加熱制御手段11にて加熱開始を実行するかを判断する手段である。
【0035】
次に、図2を用いて水有無判別手段16の動作について説明する。図2の(a)は受け皿6に水がある場合と水がない場合の受け皿温度検知手段10の温度をプロットしたグラフである。図2の(b)、(c)は水ありおよび、水なし時の下方加熱手段の出力ワットをプロットしたグラフである。
【0036】
操作部13により使用者が選択した動作モードを制御手段12が判断して加熱を開始する。制御手段12は加熱制御手段11により下方加熱手段5の出力を1000Wにて加熱を開始する。
【0037】
水有無判別手段16は、加熱開始t0から所定時間t1(90秒)の受け皿温度検知手段10の温度上昇値ΔT(T1−T0)を毎秒毎に算出し、傾き記憶手段19に記憶する。傾き記憶手段19に記憶した温度上昇値ΔTが所定値(10K)以上になれば水なし、所定値(10K)未満であれば水ありと判別する。判別されると図3(b)に示すように制御手段12により調理シーケンス記憶手段14に記憶された水なしのシーケンスが実行され、例えば加熱制御手段11にて平均出力ワットを400Wへ落とし、下方加熱手段5の温度が500℃を超えないように制御をする。一方で、水あり時には平均出力を1000Wに保つように制御をする。
【0038】
なお、所定時間t1を90秒としたが、下方加熱手段5と受け皿6、受け皿温度検知手段10の位置関係、下方加熱手段5の形状、受け皿6の材質や厚み、庫内の体積などにより変化し、90秒に限られるものではない。また、温度上昇値ΔTの所定値を10Kとしたが所定時間t1と同様に10Kに限られるものではない。
【0039】
以上のように、本実施の形態において受け皿温度検知手段10の温度上昇値ΔTにより受け皿6の水の有無を判別し、その判別結果に応じて下方加熱手段5の出力を制御することにより、受け皿6に水がない場合に下方加熱手段5の温度を油が滴下しても発火しない温度以上にならないように制御することで、調理物3からでる油分が下方加熱手段5に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿6にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段5の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受け皿6に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。また、加熱開始t0から所定時間t1毎に更新しながら受け皿温度検知手段10の検知温度の傾きを記憶するため、調理シーケンスの最初から最終まで水の有無の情報を検知し、判別しているので調理途中での電圧変動や水の途中での乾燥なども検知することができ安全性も高い。
【0040】
図3は、グリル庫内左右水平方向の中心を示す概略図である。グリル庫2の前方に設けた開口部22を正面として、グリル庫2内の左右水平方向の幅をW1とすると受け皿温度検知手段10は1/2W1の位置に設けたことを示す。
【0041】
図4は、本体前後水平方向の中心を示す概略図である。本体23前後方向の幅をW2とすると受け皿温度検知手段10は1/2W2の位置に設けたことを示す。
【0042】
ここで、本体23の設置もしくは載置の状態は必ずしも水平ではなく前後左右にわずかながら傾きを持つものである。当然のことながら製品23自身も、ものづくりのばらつきなどにより必ずしも水平ではない。この場合、水ありで調理する場合に入れた受け皿6の水の表面は水平であり、極端に傾いた場合は受け皿6の底面部が露出する可能性もある。水あり調理で入れる水の量は、だいたい150〜250cc(約コップ一杯分)が一般的であり、極力少なめで、ちょうど一回分の調理に相当する量を設定するものである。この理由としては、受け皿6に入れる水も加熱中は調理物3と同様の負荷であり、庫内温度を上昇させるための加熱出力がより必要となり、経済性を損ねるとともに、庫内温度の立ち上がりも遅くなり、調理時間が長く、調理の出来栄えも悪くなる。したがって、極力水の量は少なめに設定するが、受け皿温度検知手段10の位置と製品23の傾きによっては、水があるのに水なしと判断したり、加熱途中に大半の水がなくなったにもかかわらず、たまたま、受け皿温度検知手段10の位置に相当する受け皿6の上に水が残存し、水ありで加熱しつづけたりと、水有り無しの判別を間違えてしまうことがある。しかしながら、図3および図4に示す位置に受け皿温度検知手段10を設けることで、製品23が傾いた場合、図3は左右方向において、図4は前後方向において最も傾きの影響を受けにくい(水が残存しにくい)部分であり、精度よく水ありなしを判別することが可能となる。
【0043】
図5(a)は、受け皿温度検知手段で検知した温度上昇値と受け皿と受け皿温度検知手段の隙間の関係を示すグラフであり、図5(b)は、その詳細図を示すものである。受け皿6は調理物3を出し入れするために摺動可能に載置されるため、左右上下において摺動用の隙間を設けて設計される。つまり、受け皿6のセット状態での受け皿温度検知手段10との位置関係は不安定になりやすく、ものづくりのばらつきもある。受け皿温度検知手段10と受け皿6が接触したり、隙間が生じたりという状況が起こりうるわけで、接触した場合は、図5(a)に示すように受け皿6の温度が熱伝導により伝わり、受け皿温度検知手段10の温度上昇が極端に高くなる。逆に隙間が生じた場合は、空気を介しての対流伝達だけになり、受け皿温度検知手段10の温度上昇は低くなり、水ありなし判別するための閾値を決めることはできない。しかしながら図5(a)に示すように隙間が開いた状態では多少隙間が大きくなっても温度上昇の変動は少なく安定している。したがって、図5(b)に示すように、受け皿温度検知手段10は、受け皿6との位置関係において所定の隙間Zを設けることにより、安定した判別の閾値を決定することで精度よく水ありなしを判別することが可能となる。隙間Zはバラツキを考慮して0.5〜1.5mm程度が妥当である。
【0044】
図6は、受け皿の底面位置において凸形状を設けた概略図である。受け皿6は、受け皿温度検知手段10と対向する底面位置において、その他の底面部と比して所定の高さの凸形状とすることで、水あり時に、何らかの理由で調理の途中に蒸発によって水がなくなった場合でも受け皿温度検知手段10と対向する底面位置を凸形状とすることでその部分が一番早くに水がなくなるため、いち早く温度上昇し、水なしと判別できるため、下方加熱手段5の温度が所定温度以上にならないように制御することにより、調理物3からでる油分が下方加熱手段5に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿6にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段5の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため途中で受け皿6に水がなくなったときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器におけるグリル装置は、受け皿の水ありなしにかかわらず発火を抑制し加熱調理を行うことができるため、グリル装置を備えるその他の加熱調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1におけるグリル装置を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における受け皿温度と下方加熱手段のワットグラフ
【図3】本発明の実施の形態1におけるグリル庫内左右水平方向の中心を示す概略図
【図4】本発明の実施の形態1における本体前後水平方向の中心を示す概略図
【図5】本発明の実施の形態1における温度上昇値と受け皿と受け皿温度検知手段の隙間の関係を示すグラフとその詳細図
【図6】本発明の実施の形態1における受け皿の底面位置において凸形状を設けた概略図
【図7】従来例のグリル装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0047】
1 グリル装置
2 グリル庫
3 調理物
4 上方加熱手段
5 下方加熱手段
6 受け皿
8 焼き網
9 庫内温度検知手段
10 受け皿温度検知手段
11 加熱制御手段
14 調理シーケンス記憶手段
16 水有無判別手段
19 傾き記憶手段
20 判別値変更手段
21 加熱開始判断手段
22 開口部
23 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され前記調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段、下方加熱手段の出力を制御する加熱制御手段と、前記受け皿の水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する調理シーケンス記憶手段と、加熱開始から所定時間毎の前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きを記憶する傾き記憶手段と、前記受け皿温度検知手段の検知温度の傾きが所定値以上は水なし、所定値未満は水ありと判別する水有無判別手段とを備え、前記グリル庫の前方に設けた開口部を正面として、グリル庫内左右水平方向の中心で、本体前後水平方向の中心に前記受け皿温度検知手段を配置したことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
受け皿温度検知手段は、受け皿との位置関係において所定の隙間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
受け皿は、受け皿温度検知手段と対向する底面位置において、その他の底面部と比して所定の高さの凸形状としたことを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284262(P2008−284262A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133721(P2007−133721)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】