説明

誘導加熱調理器

【課題】受け皿の水有無にかかわらず加熱調理を行うことができるグリル装置を備えること。
【解決手段】外郭を構成する本体と、本体内に設けた調理物3を加熱調理するグリル装置1とを備え、本体内には、上方加熱手段4と下方加熱手段5の出力を加熱制御手段11を介して制御する制御手段12と、加熱開始後の受け皿温度検知手段10の検知温度により受け皿6に水があるかないかを判別する水有無検知手段16と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段14とを備え、制御手段12は、所定時間1経過するまで下方加熱手段5の出力を所定出力1以上となるように制御し、水有無検知手段16が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、下方加熱手段5を所定出力2以下となるように制御するとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭で使用するグリル装置を有し、受け皿の水有無に関わらずグリル庫内の発煙・発火を抑制し調理を行う誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は魚などの調理物を加熱調理するグリル装置と、グリル装置のグリル庫内に収容する調理物を載置する焼き網と、調理物から滴下する油などを受ける受け皿と調理物を加熱する熱源とグリル装置の開口を開閉する扉などから構成され、グリル庫内の発火を防止するため受け皿に水を入れて使用し、調理中に受け皿の水がなくなった場合には加熱出力を低下させて庫内温度が高くなりすぎないよう制御を行うものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の誘導加熱調理器について説明する。図6は従来の誘導加熱調理器を示すブロック図である。グリル装置101は前面を開口したグリル庫102を有し、グリル庫102内部に調理物103を上方より加熱する上方加熱手段104と、下方より加熱する下方加熱手段105が取り付けられている。
【0004】
受け皿106は下方加熱手段105の下方に配置され、グリル庫102の開口を覆う扉107の開閉と連動してグリル庫102内に着脱される。調理物を載置するための焼き網108は受け皿106に設置され、調理物103の載置面を下方加熱手段105の上方に配置し、受け皿106と共にグリル庫102内に対し着脱される。
【0005】
操作部109は誘導加熱調理器の前面に設けられ、調理法及び調理物を選択するための選択スイッチ、加熱スタート/ストップを行う切入スイッチ、及び表示手段からなる。グリル庫102内の温度を検知する庫内温度検出手段110により庫内温度を検出し、庫内温度が所定温度になったときに上方加熱手段104、下方加熱手段105の通電を制御手段111により制御する。
【0006】
記憶手段113は調理法及び調理物の種類に対応する加熱出力パターンを記憶し、操作部109により選択された調理法および調理物に応じた加熱出力パターンを制御手段111へ伝達する。計時手段114は時間を計時するものであり、制御手段111は選択された加熱出力パターンと計時手段114の計時結果に応じて上方加熱手段104及び下方加熱手段105の出力を制御する。
【0007】
温度検知手段112は下方加熱手段105と受け皿106の間に設置され、この温度検出手段112の温度上昇勾配により受け皿106の水有無を判別し、受け皿に水がないと判断した場合には加熱を停止または加熱出力を低下させる。
【特許文献1】特開2001−74250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の誘導加熱調理器は水有を前提に調理を開始するものであり、調理開始後、途中で水がなくなった場合などに加熱出力を低下または停止させることにより発火・発煙を抑えることができるが、加熱初期から水が無い場合には調理を継続することができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受け皿に水がある場合とない場合の双方において、加熱調理を行うことができるグリル装置を備えた誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は、外郭を構成する本体と、本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段と下方加熱手段の出力を加熱制御手段を介して制御する制御手段と、加熱開始後の前記受け皿温度検知手段の検知温度により受け皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、所定時間1経過するまで前記下方加熱手段の出力を所定出力1以上となるように制御し、前記水有無検知手段が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、前記下方加熱手段を所定出力2以下となるように制御するとしたものである。
【0011】
これによって、調理物の焼き色をつけるために必要な火力を加熱開始から所定時間1の間出力することができる。また、受け皿に水が有るか無いかを自動的に検出するために必要な火力を所定時間1の間出力することができる。さらに、受け皿に水が無いときには下方加熱手段の表面温度を油が滴下しても着火しない温度以上にならないように所定出力2以下となるように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が着火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受け皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【0012】
また、水有無に応じた調理シーケンスを記憶しておくことにより、水有無に応じた加熱パターンを自動選択できるため水の有無により加熱出力が変動しても調理性能を落とさずに調理を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の誘導加熱調理器は、受け皿の水の有無に応じて下方加熱手段の加熱出力を制御することで水の有無に関わらず発火・発煙することなく加熱調理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、外郭を構成する本体と、本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段と前記下方加熱手段の出力を加熱制御手段を介して制御する制御手段と、加熱開始後の受け皿温度検知手段の検知温度により受け皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、所定時間1経過するまで前記下方加熱手段の出力を所定出力1以上となるように制御し、前記水有無検知手段が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、前記下方加熱手段を所定出力2以下となるように制御することにより、受け皿に水が有るか無いかを自動的に検出し、受け皿に水が無いときには下方加熱手段の温度が所定温度以上にならないように制御することができ、調理物の裏面に焼色を入れるために必要な火力(所定出力1)と時間(所定時間1)を確保し、裏面の焼色を入れることができた後には、下方加熱手段に調理物の油分が滴下しても着火することのない温度(所定出力2にて制御を行うことで温度を一定以下に保つ)に下方加熱手段を制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が着火することを抑制することができる。また、下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受け皿に水がないときにでも、加熱を継続し調理を行うことができる。
【0015】
第2の発明は、外郭を構成する本体と、本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段と前記下方加熱手段の出力を加熱制御手段を介して制御する制御手段と、加熱開始後の前記受け皿温度検知手段の検知温度により受け皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、加熱開始から前記庫内温度検知手段が所定温度1以上となるまで前記下方加熱手段を所定出力1以上となるように制御し、前記水有無検知手段が水なしと検知し、かつ前記庫内温度検知手段が所定温度1以上となると、前記下方加熱手段の出力を所定出力2以下となるように制御することにより、庫内温度にて高出力の加熱時間を制御することにより受け皿の温度を油の引火点よりも低く抑えることができるため発煙、発火の恐れなく高出力にて調理をおこなうことができる。また、調理物の量が多い場合には高出力の時間が延びるため必要な焼きを入れることができ、調理物の量が少ない場合には早めに高出力の時間を短くすることで発煙、発火の危険性を低くすることができる。これらにより、加熱開始直後は高出力にて調理を行い調理物の表面に焼きをいれることができるため美味しく調理することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段を加熱開始から所定時間1経過、且つ加熱開始から庫内温度検知手段が所定温度1以上となるまで下方加熱手段の出力を所定出力1以上となるように制御するとすることにより、水有無判定に必要な時間高出力にて下方加熱手段の出力を制御することができ、調理物が少量の場合にも焼き色を入れるために必要最小限の時間(所定時間1)高出力にて加熱を行うことができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の制御手段を水有無検知手段が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフする構成とすることにより、水なしと判断した後に早く下方加熱手段の温度を低下させることで、発煙、発火の危険性を抑制することができる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれかに1つの発明の制御手段を水有無検知手段が水なしと検知し、かつ庫内温度検知手段が所定温度1以上となると、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフする構成とすることにより、水なしと判断した後に早く下方加熱手段の温度を低下させることで、発煙、発火の危険性を抑制することができる。
【0019】
第6の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明の制御手段を所定時間2の間下方加熱手段の出力をオフし、所定時間2経過後、下方加熱手段の出力を所定出力2以下となるように制御する構成とすることにより、水なしと判断した後に早く下方加熱手段の温度を低下させることで、発煙、発火の危険性を抑制することができ、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができる。また、下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受け皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。グリル装置1は前面を開口したグリル庫2を有し、グリル庫2内部に調理物3を上方より加熱する上方加熱手段4と、下方より加熱する下方加熱手段5が取り付けられている。上方加熱手段4、および下方加熱手段5はシーズヒーターにより構成され商用電源電圧を印加されると発熱し、調理物3を加熱調理することができる。また、本実施の形態では上方加熱手段4を800W、下方加熱手段5を1000Wのヒーターとする。
【0022】
なお、本実施の形態では上方加熱手段4、および下方加熱手段5をシーズヒーターにより構成するとしたが、ハロゲンヒーターや、他の熱源を使用してもよい。また、本実施の形態では上方加熱手段4、下方加熱手段5のワットをそれぞれ800W、1000Wとしたが、ヒーターのワットは庫内の広さおよびヒーター形状に応じて変更する必要があり、これに限られるものではない。
【0023】
受け皿6は下方加熱手段5の下方に配置され、グリル庫2の開口を覆う扉7の開閉と連動してグリル庫2内に着脱される。調理物を載置するための焼き網8は受け皿6に設置され、調理物3の載置面を下方加熱手段5の上方に配置し、受け皿6と共にグリル庫2内に対し着脱される。
【0024】
グリル庫2内の温度を検知する庫内温度検出手段9はサーミスタにより構成され庫内温度を検出することができる。また、受け皿6の温度を検知する受け皿温度検知手段10はサーミスタにより構成されグリル庫の下面を介して受け皿6の温度を検知することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では庫内温度検知手段9、および受け皿温度検知手段10をサーミスタにより構成するとしたが、白金センサや赤外線センサなどの温度検知素子を使用してもよい。
【0026】
加熱制御手段11は商用電源とヒーター間に接続されたリレーにより構成し、制御手段12の信号により上方加熱手段4、および下方加熱手段5をオン・オフする。なお、本実施の形態では加熱制御手段11をリレーにより構成するとしたが、トライアックやサイリスタといったスイッチを使用してもよい。
【0027】
制御手段12はマイコンにより構成し、庫内温度検知手段9や受け皿温度検知手段10により温度を検知し、操作部13により使用者が選択した動作モードに応じて加熱制御手段11を介して上方、下方加熱手段のオン・オフを制御する。
【0028】
記憶手段14は各種動作モードを記憶している。動作モードには一定ワットを出力し続ける手動モードと、庫内の温度を一定に保つ温調モード、ならびに食材に応じた加熱パターン(一定ワット出力を一定時間保つ制御と庫内温度を一定に保つ温調を一定時間保つ制御の組み合わせ)により調理を行うオート調理モードを備え、操作部13により使用者が選択したモードに応じて加熱制御手段11を制御し調理を行う。
【0029】
制御手段12は計時手段15により計時された時間を用い一定周期(本実施の形態では16秒とする)内のオン・オフ比率を変更することで上方、下方加熱手段の出力を制御する。たとえば、上方加熱手段4のオン時の出力を800Wとしたとき、平均電力を400Wに制御するためには8秒間オンし、残りの8秒間をオフする制御を行う。
【0030】
水有無検知手段16は加熱開始からの経過時間である所定時間3(本実施の形態では180秒とする)から所定時間4(本実施の形態では270秒とする)の間の受け皿温度検知手段10の温度上昇値を算出し、前記温度上昇値が所定値(本実施の形態では10Kとする)以上であれば受け皿6内に水が無いと判別し、前記温度上昇値が所定値未満であれば受け皿6に水が有ると判別する。
【0031】
各動作モードは水有用の加熱パターンと水無用の加熱パターンを有し、水有無検知手段16の検知結果に応じて制御手段12は加熱パターンを変更することができる。水有無検知手段16により受け皿6に水が無いと検知されると、制御手段12は下方加熱手段5の温度を所定温度2(本実施の形態では500℃とする)以下に保つように平均出力を所定出力2(本実施の形態では400Wとする)以下に制御する。
【0032】
なお、下方加熱手段5の平均出力の所定出力2はグリル庫の体積、下方加熱手段5の表面積、グリル庫内の温度などから決まる。
【0033】
なお、本実施の形態では所定温度2を500℃としたが、下方加熱手段5の表面積、断面形状などにより、下方加熱手段5の表面上に調理物の油が滴下され着火しない温度は異なり、これに限られるものではない。
【0034】
下方加熱手段5の温度が所定温度2以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段5に滴下しても油分が着火することを抑制することができ、調理中に受け皿にたまった油への引火を抑制することができ、受け皿に水がないときにも発火の危険性を抑制し調理を行うことができる。
【0035】
次に、図2を用いて操作部の説明を行う。図2は本実施の形態における操作部を表す図である。図2(a)は液晶表示部13aの表示画素を全点灯した図である。13bは選択されているメニューを指し示すポインタでありメニューSW13cを押す毎に生姿、切り身、浸け焼き、鶏肉、グラタン、焼きなす、温度調節と移動し、メニューを選択することができる。図2(b)はメニューSW13cが押され、生姿が選択された図である。メニューSW13cによりメニューを選択し切/入SW13dを押すことで、選択されたメニューの調理を開始することができる。調理中に再度切/入SW13dを押すことで加熱を停止することができる。
【0036】
メニューSW13cにより温度調節を選択したときにはアップ/ダウンSWである13e、13fにより温度を選択することができる。
【0037】
図2(c)は初期モードであり、この状態で切/入SW13dを押すことで、手動モードにて加熱を開始することができる。加熱開始後アップ/ダウンSWである13e、13fにより、強、中、弱の火力を選択することができる。
【0038】
次に、図3を用いて水有無検知手段16の動作について説明する。図3の(a)は受け皿6に水が有る場合と無い場合の受け皿温度検知手段10の温度をプロットしたグラフである。図3の(b)、(c)は水有および無時の下方加熱手段の出力ワットをプロットしたグラフである。
【0039】
制御手段12は使用者により操作部13の切/入SW13dが押されると下方加熱手段5の出力を1000Wにて加熱を開始する。
【0040】
受け皿水有無検知手段16は加熱開始から所定時間1であるt1(180秒)時点の受け皿温度検知手段10の温度T1と所定時間2であるt2(270秒)時点の温度T2の差ΔTを計算し、閾値10K以上であれば水無、未満であれば水有と判別する。水無時には図3(b)に示すように平均出力ワットを400Wへ落とし、下方加熱手段5の温度が500℃を超えないように制御する。一方で、水有時には平均出力を1000Wに保つ。
【0041】
所定時間1であるt1は受け皿温度検知手段10の温度が上昇を始めるポイントであり、本実施の形態では加熱開始後180秒とする。これは下方加熱手段5と受け皿6、受け皿温度検知手段10の位置関係、下方加熱手段5の形状、受け皿6の材質や厚みなどにより変化し、180秒に限られるものではない。
【0042】
なお、本実施の形態ではΔTの閾値を10Kとしたが、下方加熱手段5の出力、受皿6の材質、厚み、グリル庫2の材質、厚み、受皿温度検知手段10の取り付け方法などにより、異なるものであり、これに限られるものではない。
【0043】
次に、図4を用いてオート調理モード(生姿メニュー)の加熱動作について説明する。図4は受け皿に水がない場合の生姿メニュー調理時の受皿表面温度、庫内温度検知手段の検知温度、受皿温度検知手段の検知温度、下方加熱手段の平均出力、下方加熱手段の表面温度をプロットしたグラフである。
【0044】
制御手段12は使用者により、オート調理の生姿メニューを選択され、操作部13の切/入SW13dが押されると、下方加熱手段5の出力を所定出力1(本実施の形態では所定出力1を1000Wとする)にて加熱を開始する。
【0045】
加熱開始後t1〜t2間の受皿温度検知手段10の検知温度の上昇値ΔTを計算し、所定値以上であるため水有無検知手段16は水無しであると検知する。
【0046】
水有無検知手段16により水無しであると検知し、加熱開始から所定時間1t3(本実施の形態では所定時間1を5分とする)経過すると、下方加熱手段5は所定時間2(本実施の形態では所定時間2を2分とする)の間加熱をオフする。所定時間1の間に高火力を出力することで裏面の焼色を一定以上つけることができ、所定時間1経過後下方加熱手段5の出力オフすることで、一旦所定温度2以上になった下方加熱手段5の温度を所定温度2以下に下げることができる。
【0047】
所定時間2の間下方加熱手段5の出力をオフすることにより、下方加熱手段5の温度を所定時間1以降所定温度2以下に保つことができるため、発煙・発火を抑制し調理を行うことができる。
【0048】
なお、本実施の形態では所定時間1を5分としたが、グリル庫の容積、下方加熱手段5の出力、下方加熱手段5と焼き網8の距離により異なるものであり、これに限られるものではない。
【0049】
また、本実施の形態では所定時間2を2分としたが、下方加熱手段5のワット密度、グリル庫2の容積などにより異なるものであり、これに限られるものではない。
【0050】
また、本実施の形態では所定時間2の間下方加熱手段をオフするとしたが、所定時間1経過後下方加熱手段5の表面温度を所定温度2以下に保つことができるのであれば、これに限られるものではない。
【0051】
所定時間1は下方加熱手段5の表面温度が所定温度2を超えている間(下方加熱手段5を所定出力1以上で制御している間)に、受皿表面温度が所定温度3(本実施の形態では、所定温度3を250℃とする)を越えない加熱時間である。
【0052】
下方加熱手段5の表面に調理物の油が滴下し、着火したとしても、受皿表面の温度を油の引火温度以下に保つことで、着火した油が受皿へ落ちた時でも受皿上に溜まった油への引火を抑制することができる。
【0053】
所定時間1まで高火力により調理し、調理物の裏面に焼色をつけることができ、また、焼色をつけた後は下方加熱手段5の温度を所定温度2以下に制御することにより、受け皿に水がない場合でも発煙・発火を抑制し、調理を行うことができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態において水有無検知手段16により受け皿に水がないと検知した場合には、調理物の裏面に焼色を付けるのに必要な時間下方加熱手段5を高火力で制御し、その後発火・発煙を抑制するために低火力で制御することにより、調理物の裏面に焼色をつけつつ、発火・発煙を抑制し、調理を行うことができる。
【0055】
(実施の形態2)
次に、図5を用いて本実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同じ構成、機能については同じ符号を用い説明を省略する。図5受け皿に水がない場合の生姿メニュー調理時の受皿表面温度、庫内温度検知手段9の検知温度、受皿温度検知手段の検知温度、下方加熱手段の平均出力、下方加熱手段の表面温度をプロットしたグラフである。
【0056】
水有無検知手段16により水無しであると検知し、加熱開始から庫内温度検知手段9の温度が所定温度1であるθ1(本実施の形態ではθ1を150℃とする)を検知すると下方加熱手段5は所定時間2(本実施の形態では所定時間2を2分とする)の間加熱をオフする。
【0057】
θ1は庫内温度検知手段9の検知温度と受皿表面の温度の相関をとり、受皿表面温度が250℃を越えない温度に設定する。なお、本実施の形態ではθ1を150℃としたが、グリル庫2の容積、庫内温度検知手段9の設置場所、上方加熱手段4、下方加熱手段5の位置関係などにより異なり、これに限られるものではない。
【0058】
下方加熱手段5を高火力にて制御する時間をθ1により定めることで、調理物の量に応じて時間が変化し、調理物の量が多い場合には高火力時間が長くなり、少ない場合に短くなるため、調理物の量に応じて必要な焼色を付けることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態において水有無検知手段16により受け皿に水がないと検知した場合には、受皿の表面温度が油の引火温度以下である間下方加熱手段5を高火力で制御し、その後発火・発煙を抑制するために低火力で制御することにより、調理物の裏面に焼色をつけつつ、発火・発煙を抑制し、調理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器におけるグリル装置は、受け皿の水有無にかかわらず発火を抑制し加熱調理を行うことができるため、グリル装置を備えるその他の加熱調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のグリル装置を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の操作部を表す図
【図3】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の受け皿温度と下方加熱手段のワットグラフ
【図4】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の各部温度と下方加熱手段のワットグラフ
【図5】本発明の実施の形態2における誘導加熱調理器の各部温度と下方加熱手段のワットグラフ
【図6】従来の誘導加熱調理器のグリル装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0062】
1 グリル装置
2 グリル庫
4 上方加熱手段
5 下方加熱手段
6 受け皿
8 焼き網
10 受け皿温度検知手段
11 加熱制御手段
12 制御手段
13 操作部
14 記憶手段
15 計時手段
16 水有無検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する本体と、本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段と前記下方加熱手段の出力を加熱制御手段を介して制御する制御手段と、加熱開始後の前記受け皿温度検知手段の検知温度により受け皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、所定時間1経過するまで前記下方加熱手段の出力を所定出力1以上となるように制御し、前記水有無検知手段が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、前記下方加熱手段を所定出力2以下となるように制御する誘導加熱調理器。
【請求項2】
外郭を構成する本体と、本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼き網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受け皿と、前記焼き網と前記受け皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼き網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受け皿の下方に設置され前記受け皿の温度を検知する受け皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段と前記下方加熱手段の出力を加熱制御手段を介して制御する制御手段と、加熱開始後の前記受け皿温度検知手段の検知温度により受け皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、加熱開始から前記庫内温度検知手段が所定温度1以上となるまで下方加熱手段を所定出力1以上となるように制御し、前記水有無検知手段が水なしと検知し、かつ前記庫内温度検知手段が所定温度1以上となると、前記下方加熱手段の出力を所定出力2以下となるように制御する誘導加熱調理器。
【請求項3】
制御手段は、加熱開始から所定時間1経過、且つ加熱開始から庫内温度検知手段が所定温度1以上となるまで下方加熱手段の出力を所定出力1以上となるように制御する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
制御手段は、水有無検知手段が水なしと検知し、かつ加熱開始から所定時間1経過後、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
制御手段は、水有無検知手段が水なしと検知し、かつ庫内温度検知手段が所定温度1以上となると、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフする請求項1〜4のいずれかに記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
制御手段は、所定時間2の間下方加熱手段の出力をオフし、所定時間2経過後、下方加熱手段の出力を所定出力2以下となるように制御する請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−307247(P2008−307247A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158263(P2007−158263)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】