説明

誘導加熱調理器

【課題】受皿の水有無にかかわらず加熱調理を行うことができるグリル装置を備えること。
【解決手段】加熱制御手段11は、加熱開始から所定時間内の受皿温度検知手段10の温度変化値により水有無を検知する第1の水有無検知手段17と、受皿温度検知手段10の検知温度が所定温度1以上であれば水なしと検知する第2の水有無検知手段18とを備えた水有無検知手段16により水なしと検知すると調理物3を下方より加熱する下方加熱手段5の出力を所定出力1以下で制御することにより、受皿6に水が有るか無いかを自動的に検出し、受皿6に水が無いときには下方加熱手段5の温度が油が滴下しても発火しない温度以上にならないように制御することにより、受皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭で使用するグリル装置を有する誘導加熱調理器において、受皿の水有無に関わらずグリル庫内の発煙・発火を抑制し調理を行う誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は魚などの調理物を加熱調理するグリル装置と、グリル装置のグリル庫内に収容する調理物を載置する焼網と、調理物から滴下する油などを受ける受皿と調理物を加熱する熱源とグリル装置の開口を開閉する扉などから構成され、グリル庫内の発火を防止するため受皿に水を入れ使用し、調理中に受皿の水がなくなった場合には加熱出力を低下させて庫内温度が高くなりすぎないよう制御を行うものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の誘導加熱調理器について説明する。図6は従来の誘導加熱調理器を示すブロック図である。グリル装置101は前面を開口したグリル庫102を有し、グリル庫102内部に調理物103を上方より加熱する上方加熱手段104と、下方より加熱する下方加熱手段105が取り付けられている。
【0004】
受皿106は下方加熱手段105の下方に配置され、グリル庫102の開口を覆う扉107の開閉と連動してグリル庫102内に着脱される。調理物103を載置するための焼網108は受皿106に設置され、調理物103の載置面を下方加熱手段105の上方に配置し、受皿106と共にグリル庫102内に対し着脱される。
【0005】
操作部109は誘導加熱調理器の前面に設けられ、調理法及び調理物を選択するための選択スイッチ、加熱スタート/ストップを行う切入スイッチ、及び表示手段からなる。グリル庫102内の温度を検知する庫内温度検出手段110により庫内温度を検出し、庫内温度が所定温度になったときに上方加熱手段104、下方加熱手段105の通電を制御手段111により制御する。
【0006】
記憶手段113は調理法及び調理物の種類に対応する加熱出力パターンを記憶し、操作部109により選択された調理法および調理物に応じた加熱出力パターンを制御手段111へ伝達する。計時手段114は時間を計時するものであり、制御手段111は選択された加熱出力パターンと計時手段114の計時結果に応じて上方加熱手段104及び下方加熱手段105の出力を制御する。
【0007】
温度検知手段112は下方加熱手段105と受皿106の間に設置され、この温度検出手段112の温度上昇勾配により受皿106の水有無を判別し、受皿に水がないと判断した場合には加熱を停止または加熱出力を低下させるものであった。
【特許文献1】特開2001−74250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の誘導加熱調理器は水有を前提に調理を開始するものであり、調理開始後、途中で水がなくなった場合などに加熱出力を低下または停止させることにより発火・発煙を抑えることができるが、加熱初期から水が無い場合には調理を継続することができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受皿に水がある場合とない場合の双方において、調理を行うことができると共に途中で水がなくなった場合でも安全に調理を行うことができるグリル装置を備えた誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は、外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受皿と、前記焼網と前記受皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受皿の下方に設置され前記受皿の温度を検知する受皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段の出力と下方加熱手段の出力とを制御する加熱制御手段と、加熱開始後の前記受皿温度検知手段の検知温度により受皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、水有無検知手段には、加熱開始から所定時間内の受皿温度検知手段の温度変化値により水有無を検知する第1の水有無検知手段と、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1以上であれば水なしと検知する第2の水有無検知手段とを備え、前記加熱制御手段は、前記水有無検知手段により水なしと検知すると前記下方加熱手段の出力を所定出力1以下で制御するとしたものである。
【0011】
これによって、調理開始から終了までの間、受皿に水が有るか無いかを自動的に検出し、受皿に水が無いときには下方加熱手段の温度が所定温度(油が滴下しても発火しない温度)以上にならない所定出力1以下に制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができる。また、調理中に受皿にたまった油への引火を抑制することができる。さらに、下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の誘導加熱調理器は、受皿の水の有無に応じて下方加熱手段の加熱出力を制御することで水の有無に関わらず発火・発煙することなく加熱調理を行うことができるグリル装置を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受皿と、前記焼網と前記受皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受皿の下方に設置され前記受皿の温度を検知する受皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段の出力と下方加熱手段の出力とを制御する加熱制御手段と、加熱開始後の前記受皿温度検知手段の検知温度により受皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、水有無検知手段には、加熱開始から所定時間内の受皿温度検知手段の温度変化値により水有無を検知する第1の水有無検知手段と、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1以上であれば水なしと検知する第2の水有無検知手段とを備え、前記加熱制御手段は、前記水有無検知手段により水なしと検知すると前記下方加熱手段の出力を所定出力1以下で制御するとすることにより、調理開始から終了まで受皿に水が有るか無いかを自動的に検出し、受皿に水が無いとき(調理中に水がなくなった場合)には下方加熱手段の温度が所定温度以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受皿にたまった油への引火を抑制することができ、また下方加熱手段の上へ油が滴下した場合に発生する発煙量も抑える事ができるため受皿に水がないときにでも加熱を継続し調理を行うことができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の第1の水有無検知手段を、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度2から所定温度3まで上昇する時間により水有無を検知し、所定時間1より短ければ水あり、前記所定時間1以上であれば水なしと検知するよう構成することで、調理開始時の受皿温度検知手段の検知温度によらず温度上昇の傾きが安定した区間で水有無を検知できる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の水あり及び水なし調理シーケンスが加熱制御手段の出力を高火力により制御する高火力工程と出力を低火力により制御する低火力工程からなり、第1の水有無検知手段は高火力工程中に水有無を検知し、第2の水有無検知手段は前記第1の水有無検知手段により一旦水有無を検知した後に再度水有無を検知する構成とすることにより、調理物の表面を高火力により焼き上げる高火力工程中に受皿温度検知手段の温度変化値により水有無を判別することで、温度変化値の水あり/水なしによる差が顕著に現れ水有無を容易に検知できる。また、加熱開始初期の段階で水有無を判別することができるため水あり及び水なしに適した調理シーケンスにより調理を行うことができ安全且つおいしく仕上げることができる。さらに、第2の水有無検知手段により、調理終了までの間水有無を再判定することで、調理中に水がなくなった場合や、水を追加された場合にも水あり及び水なし調理シーケンスを選択することで安全に調理を行うことができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第3の発明の第1の水有無検知手段により水ありを検知した後、高火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフし、その後前記下方加熱手段を所定出力1以下で制御することにより、高火力工程中に熱せられた下方加熱手段の温度を低下させる期間を設けることで、水なし且つ下方加熱手段の温度が所定温度以上となる時間を極力短くすることができ、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制することができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明の第1の水有無検知手段により水ありを検知した後、低火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段を所定出力1以下で制御することで、高火力工程にて調理物表面を焼き上げた後、調理物の中まで火を通す低火力工程に一旦移行した後は下方加熱手段の温度が一定以下となっているため休止工程を設けずとも水なし且つ下方加熱手段の温度が所定温度以上となる時間が短くなり調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制しつつ、必要な火力を得ることができ、おいしく仕上げることができる。
【0018】
第6の発明は、特に、第3〜5のいずれか1つの発明の第1の水有無検知手段にて水ありを検知した後、低火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段の出力を所定時間2より短い所定時間3の間オフし、その後前記下方加熱手段を所定出力1以下で制御することにより、下方加熱手段の温度を低下させる期間を設けることで、水なし且つ下方加熱手段の温度が所定温度以上となる時間を極力短くすることができ、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制しつつ、必要な火力を得ることができ、おいしく仕上げることができる。
【0019】
第7の発明は、特に、第6の発明の下方加熱手段の出力をオフする所定時間3を低火力工程に移行してから第2の水有無検知手段により水なしと検知した時間に応じて増減される構成とすることで、下方加熱手段の温度に応じて下方加熱手段のオフ時間を増減でき、水なしと検知されるタイミングに応じて最適な下方加熱手段のオフ期間を設定することができ、水なし且つ下方加熱手段の温度が所定温度以上となる時間を短くし、且つ必要な火力を得ることができるため、調理物からでる油分が下方加熱手段に滴下しても油分が発火することを抑制しつつ、おいしく仕上げることができる。
【0020】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の第2の水有無検知手段は、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1より低い所定温度4以下、且つ庫内温度検知手段と前記受皿温度検知手段との検知温度差が所定温度差以上を検知すると水ありと判断し、加熱制御手段は、下方加熱手段の出力を水あり用の出力に制御することで、第1の水有無検知手段により水有無を検知した後、すぐに水有無を判別する際に水なしの場合でも十分庫内が温まっていないときには受皿温度が所定温度4以下である場合があるため受皿温度が温まるのを待つために庫内温度検知手段と受皿温度検知手段の検知温度差を基に水ありを判別することで、調理途中に水が追加された場合に水ありを検知することができ、下方加熱手段の出力を水あり用の出力で制御することができ、裏面の焼性能を劣化させることなくおいしく仕上げることができる。
【0021】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明の第2の水有無検知手段は、水あり/水なしのいずれかを判定すると所定時間4の間は水あり/水なしの判定を行わないようにすることで、瞬時に水がなくなったり、水が追加されたりを繰り返すような通常調理時にありえない動作を行うことを避けることができる。
【0022】
第10の発明は、特に、第3〜9のいずれか1つの発明の高火力工程から低火力工程へ工程移行するタイミングを庫内温度検知手段の検知温度が所定温度5以上、且つ第1の水有無検知手段の検知が終了後とすることで、調理物の量に応じて高火力工程の時間を増減することができ、且つ調理物が極端に少なく第1の水有無検知手段の検知時間前に火力を変更し、水有無検知を誤検知することを防ぐことができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器のブロック図を示すものである。グリル装置1は前面を開口したグリル庫2を有し、グリル庫2内部に調理物3を上方より加熱する上方加熱手段4と、下方より加熱する下方加熱手段5が取り付けられている。上方加熱手段4、および下方加熱手段5はシーズヒーターにより構成され商用電源電圧を印加されると発熱し、調理物3を加熱調理することができる。また、本実施の形態では上方加熱手段4を800W、下方加熱手段5を1000Wのヒーターとする。
【0025】
なお、本実施の形態では上方加熱手段4、および下方加熱手段5をシーズヒーターにより構成するとしたが、ハロゲンヒーターや、他の熱源を使用してもよい。また、本実施の形態では上方加熱手段4、下方加熱手段5のワットをそれぞれ800W、1000Wとしたが、ヒーターのワットは庫内の広さおよびヒーター形状に応じて変更する必要があり、これに限られるものではない。
【0026】
受皿6は下方加熱手段5の下方に配置され、グリル庫2の開口を覆う扉7の開閉と連動してグリル庫2内に着脱される。調理物3を載置するための焼網8は受皿6に設置され、調理物3の載置面を下方加熱手段5の上方に配置し、受皿6と共にグリル庫2内に対し着脱される。
【0027】
グリル庫2内の温度を検知する庫内温度検出手段9はサーミスタにより構成され庫内温度を検出することができる。また、受皿6の温度を検知する受皿温度検知手段10はサーミスタにより構成されグリル庫の下面を介して受皿6の温度を検知することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では庫内温度検知手段9、および受皿温度検知手段10をサーミスタにより構成するとしたが、白金センサや赤外線センサなどの温度検知素子を使用してもよい。
【0029】
加熱制御手段11は商用電源とヒーター間に接続されたリレーにより構成し、制御手段12の信号により上方加熱手段4、および下方加熱手段5をオン・オフする。なお、本実施の形態では加熱制御手段11をリレーにより構成するとしたが、トライアックやサイリスタといった半導体スイッチを使用してもよい。
【0030】
制御手段12はマイコンにより構成し、庫内温度検知手段9や受皿温度検知手段10により温度を検知し、操作部13により使用者が選択した動作モードに応じて加熱制御手段11を介して上方、下方加熱手段のオン・オフを制御する。
【0031】
記憶手段14は各種動作モードを記憶している。動作モードには水有無に応じて一定ワットを出力し続ける手動モードと、庫内の温度を一定に保つ温調モード、ならびに食材に応じた加熱パターン(一定ワット出力を一定時間保つ制御と庫内温度を一定に保つ温調を一定時間保つ制御の組み合わせ)により調理を行うオート調理モードとを備え、操作部13により使用者が選択したモードに応じて加熱制御手段11を制御し調理を行う。
【0032】
制御手段12は計時手段15により計時された時間を用い一定周期(本実施の形態では16秒とする)内のオン・オフ比率を変更することで上方、下方加熱手段の出力を制御する。たとえば、上方加熱手段4のオン時の出力を800Wとしたとき、平均電力を400Wに制御するためには8秒間オンし、残りの8秒間をオフする制御を行う。
【0033】
水有無検知手段16は水有無検知手段は加熱開始から所定時間内の受皿温度検知手段の温度変化値により水有無を検知する第1の水有無検知手段17と、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1以上であれば水なしと検知する第2の水有無検知手段18を備えている。
【0034】
第1の水有無検知手段17は所定時間a(本実施の形態では180秒とする)から所定時間b(本実施の形態では270秒とする)の間の受皿温度検知手段10の温度上昇値を算出し、前記温度上昇値が所定値(本実施の形態では10Kとする)以上であれば受皿6内に水が無いと判別し、前記温度上昇値が所定値未満であれば受皿6に水が有ると判別する。
【0035】
なお、本実施の形態では第1の水有無検知手段17を所定時間aから所定時間bの間の受皿温度検知手段10の温度上昇値を基に水有無を検知するとしたが、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度2(本実施の形態では50℃とする)から所定温度3(本実施の形態では60℃とする)まで上昇するのにかかる時間を基に水有無を検知し、所定時間1(本実施の形態では90秒とする)より短ければ水あり、所定時間1以上であれば水なしと検知する構成としても良い。
【0036】
第2の水有無検知手段18は第1の水有無検知手段17により水有無が検知された後動作し、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1(本実施の形態では100℃とする)以上であれば水なしと検知する。また、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度4(本実施の形態では90℃とする)以下、且つ庫内温度検知手段と受皿温度検知手段の検知温度差が所定温度差(本実施の形態では100Kとする)以上を検知すると水ありと検知する。
【0037】
また、第2の水有無検知手段18は、一旦水あり/水なしのいずれかを検知すると所定時間4(本実施の形態では60秒とする)の間は現在の水有無の検知結果を採用し、水あり/水なしの移行を行わないものとする。
【0038】
各動作モードは水有用の加熱パターンと水無用の加熱パターンを有し、水有無検知手段16の検知結果に応じて制御手段12は加熱パターンを変更することができる。水有無検知手段16により受皿6に水が無いと検知されると、制御手段12は下方加熱手段5の温度を所定温度1(本実施の形態では500℃とする)以下に保つように平均出力を所定出力1(本実施の形態では450Wとする)以下に制御する。平均出力の所定出力1はグリル庫の体積、下方加熱手段5の表面積、グリル庫内の温度などから決まる。
【0039】
下方加熱手段5の温度が500℃以上にならないように制御することにより、調理物からでる油分が下方加熱手段5に滴下しても油分が発火することを抑制することができ、調理中に受皿にたまった油への引火を抑制することができ、受皿に水がないときにも発火の危険性を抑制し調理を行うことができる。
【0040】
次に、図2を用いて操作部の説明を行う。図2は本実施の形態における操作部を表す図である。図2(a)は液晶表示部13aの表示画素を全点灯した図である。13bはポインタでありメニューSW13cを押す毎に生・姿焼、切り身、浸け焼き、鶏肉、グラタン、焼きなす、温度調節と移動し、メニューを選択することができる。図2(b)はメニューSW13cが押され、生・姿焼が選択された図である。メニューSW13cによりメニューを選択し切/入SW13dを押すことで、選択されたメニューの調理を開始することができる。また、アップ/ダウンSWである13e、13fにより設定火力を選択することができ、焼加減を選択することができる。調理中に再度切/入SW13dを押すことで加熱を停止することができる。
【0041】
メニューSW13cにより温度調節を選択したときにはアップ/ダウンSWである13e、13fにより温度を選択することができる。
【0042】
図2(c)は初期モードであり、この状態で切/入SW13dを押すことで、手動モードにて加熱を開始することができる。加熱開始後アップ/ダウンSWである13e、13fにより、強、中、弱の火力を選択することができる。
【0043】
次に、図3を用いて水有無検知手段16の動作について説明する。図3の(a)は受皿6に水がない場合の生・姿焼モードの庫内温度検知手段9の検知温度θと受皿温度検知手段10の検知温度φと、下方加熱手段5の平均出力をプロットしたグラフである。図3の(b)は受皿に水がある場合の生・姿焼モードの庫内温度検知手段9と受皿温度検知手段10の検知温度と、下方加熱手段5の平均出力をプロットしたグラフである。
【0044】
制御手段12は使用者によりメニューSW13cにより、生・姿焼モードが選択され、操作部13の切/入SW13dが押されると加熱を開始する。制御手段12は加熱制御手段11により加熱を開始する前に庫内温度検知手段9および受皿温度検知手段10の温度を検知し、所定温度a(本実施の形態では70℃とする)以下であれば下方加熱手段5の出力を1000Wにて加熱を開始する。
【0045】
切/入SW13dにより加熱が開始されると、まず高火力工程にて動作を行う。水有無検知手段16(第1の水有無検知手段17)は加熱開始から所定時間at1(180秒)時点の受皿温度検知手段10の温度Φ1と所定時間bt2(270秒)時点の受皿温度検知手段10の温度Φ2の差△φを計算し、閾値10K以上であれば水なし、未満であれば水ありと判別する。
【0046】
なお、本実施の形態では所定温度aを70℃としたが、加熱開始後t1秒からt2秒間に得られる温度上昇値△φにより水有と水無を判別することができる温度であればこれに限られるものではない。
【0047】
所定時間at1は受皿温度検知手段10の温度が上昇を始めるポイントであり、本実施の形態では加熱開始後180秒とする。これは下方加熱手段5と受皿6、受皿温度検知手段10の位置関係、下方加熱手段5の形状、受皿6の材質や厚みなどにより変化し、180秒に限られるものではない。
【0048】
高火力工程中に第1の水有無検知手段により水あり/なしを検知すると共に負荷量検知手段により調理物の負荷量を判別する。負荷量検知手段は庫内温度検知手段9の検知温度がΘ1(本実施の形態では80℃とする)からΘ2(本実施の形態では150℃とする)まで上昇するのにかかる時間T1を基に負荷量を検知する。一定火力により調理を行っている間に負荷量を検知するため安定して負荷量を検知することができる。
【0049】
なお、本実施の形態では負荷量検知手段を一定温度域の上昇にかかる時間により検知するとしたが、一定時間の温度上昇値により検知するものとしても良い。
【0050】
負荷量検知手段により負荷量が検知されると、あらかじめ記憶手段14に記憶されている(メニュー、設定火力、負荷量、水あり/なし)に応じた低火力工程の火力及び時間を選択し、調理を行う。これにより、例えば生・姿焼メニューの場合秋刀魚の尾数によらず同じ仕上がりで調理を行うことができる。
【0051】
第1の水有無検知と負荷量検知終了後、庫内温度検知手段9の検知温度θが(メニュー、設定火力、負荷量、水あり/なし)に応じた所定温度5であるΘ3以上となると高火力工程から低火力工程へ工程移行する。本実施の形態では(生・姿焼、中火力、負荷量小、水なし)の場合160℃とし、(生・姿焼、中火力、負荷量小、水あり)の場合180℃とする。
【0052】
所定温度5を(メニュー、設定火力、負荷量、水あり/なし)により変更することにより、各設定に応じた高火力により調理を行う時間を得ることができ、(メニュー、設定火力、負荷量、水あり/なし)に応じて仕上がりを一定に保つことができる。
【0053】
第1の水有無検知手段17により水なしと検知し、t3時間に庫内温度検知手段9の検知温度θがΘ3以上となり低火力工程へ移行した際に、所定時間2t4−t3(本実施の形態では2分とする)の間下方加熱手段5の出力をOFFし、下方加熱手段の温度が所定温度b(本実施の形態では500℃とする)以下になるまで冷却期間を設ける。その後、平均出力ワットを450Wへ落とし、下方加熱手段5の温度が500℃を超えないように制御する。
【0054】
なお、本実施の形態では所定出力1を450Wとしたが、下方加熱手段5の表面温度が500℃になる温度に設定できればこれに限られるものではない。また、所定時間2を2分としたが、下方加熱手段5の表面温度が500℃以下になる時間であればこれに限られるものではない。なお、下方加熱手段5の表面温度の設定値である500℃は、調理物から滴下される油が下方加熱手段5に落ち発火する温度として設定しており、調理物を載置する焼網と下方加熱手段5の位置関係により変化する。所定出力1の設定値は下方加熱手段5の表面積、形状、ワット密度により設定される。
【0055】
第1の水有無検知手段17により水ありと検知し、t3時間に庫内温度検知手段9の検知温度θがΘ3以上となり低火力工程へ移行した場合、下方加熱手段5の平均出力をあらかじめ記憶手段に記憶されている(生・姿焼、中火力、負荷量小、水あり)条件の火力(本実施の形態では700Wとする)により加熱を行う。
【0056】
次に、図4、図5を用いて第1の水有無検知手段により水有無検知が終了した後に水あり/なしが変化した場合の動作について説明する。図4は受皿に水がある状態で加熱を開始し、高火力工程中に水がなくなった場合の生・姿焼モードの庫内温度検知手段9の検知温度θと受皿温度検知手段10の検知温度φと、下方加熱手段5の平均出力をプロットしたグラフである。
【0057】
第1の水有無検知手段17により水有無検知が終了すると、第2の水有無検知手段18の検知を有効とする。高火力工程中に受皿温度検知手段10の検知温度φが所定温度1Φ3(100℃)以上となると、水なしと検知し、(生・姿焼、中火力、負荷量小、水なし)条件の所定温度5であるΘ3(160℃)を再設定し、t3時間に庫内温度検知手段9の検知温度θがΘ3以上となり低火力工程へ移行した際に、所定時間2t4−t3(2分)の間下方加熱手段5の出力をOFFし、下方加熱手段の温度が所定温度b(本実施の形態では500℃とする)以下になるまで冷却期間を設ける。その後、平均出力ワットを450Wへ落とし、下方加熱手段5の温度が500℃を超えないように制御する。
【0058】
図5の(a)、(b)は受皿に水がある状態で加熱を開始し、低火力工程中に水がなくなった場合の生・姿焼モードの庫内温度検知手段9と受皿温度検知手段10の検知温度と、下方加熱手段5の平均出力をプロットしたグラフである。
【0059】
図5の(a)、(b)において、第1の水有無検知手段17により水有無検知が終了すると、第2の水有無検知手段18の検知を有効とする。低火力工程中にt5にて受皿温度検知手段10の検知温度φが所定温度1であるΦ3(100℃)以上となると、t5−t3の時間に応じて下方加熱手段5を所定時間3であるt6−t5の間OFFする。下方加熱手段5をOFFする所定時間3は[数1]により決定する。
【0060】
【数1】

【0061】
低火力工程へ移行後5分以上経過している場合は所定時間3を設けず、5分以内の場合は最大2分(所定時間2)を超えない範囲で設定する。
【0062】
下方加熱手段5をOFFした後(OFF期間が0の場合は水なし検知後)、(生・姿焼、中火力、負荷量小、水なし)条件の下方加熱手段5の平均出力ワットを450Wへ落とし、下方加熱手段5の温度が500℃を超えないように制御する。
【0063】
なお、本実施の形態では低火力工程移行後、5分経過した後は下方加熱手段5の出力をOFFする工程を設けないとしたが、5分は下方加熱手段5の表面温度が500℃を越える時間により設定されるものであり、水あり時の下方加熱手段5の火力によるところが大きく、(メニュー、火力設定、負荷量)に応じて変更するものとし、5分に限られるものではない。
【0064】
以上のように、本実施の形態において受皿温度検知手段10の温度上昇値により受皿の水の有無を検出し、一旦水あり/なしを検知した後に水あり/なしが変化した場合にもその検知結果に応じて下方加熱手段5の出力を制御することにより、安全に調理を行うことができると共に、仕上がりよく調理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器におけるグリル装置は、受皿の水有無にかかわらず発火を抑制し加熱調理を行うことができるため、グリル装置を備えるその他の加熱調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のグリル装置を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の操作部を表す図
【図3】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のグリル庫内と受皿の温度と下方加熱手段の出力グラフ
【図4】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のグリル庫内と受皿の温度と下方加熱手段の出力グラフ
【図5】本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器のグリル庫内と受皿の温度と下方加熱手段の出力グラフ
【図6】従来の誘導加熱調理器のグリル装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0067】
1 グリル装置
2 グリル庫
4 上方加熱手段
5 下方加熱手段
6 受皿
8 焼網
9 庫内温度検知手段
10 受皿温度検知手段
11 加熱制御手段
12 制御手段
13 操作部
14 記憶手段
15 計時手段
16 水有無検知手段
17 第1の水有無検知手段
18 第2の水有無検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する本体と、前記本体内に設けた魚などの調理物を加熱調理するグリル装置とを備え、前記グリル装置には、グリル庫内に収容する前記調理物を載置するための焼網と、前記調理物から滴下する油や水分を受ける受皿と、前記焼網と前記受皿の間に設置され前記調理物を下方より加熱する下方加熱手段と、前記焼網の上方に設置され調理物を上方より加熱する上方加熱手段と、前記受皿の下方に設置され前記受皿の温度を検知する受皿温度検知手段と、前記グリル庫内の温度を検知する庫内温度検知手段とを備え、前記本体内には、前記上方加熱手段の出力と前記下方加熱手段の出力とを制御する加熱制御手段と、加熱開始後の前記受皿温度検知手段の検知温度により受皿に水があるかないかを判別する水有無検知手段と、水の有無に応じた調理シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、水有無検知手段には、加熱開始から所定時間内の受皿温度検知手段の温度変化値により水有無を検知する第1の水有無検知手段と、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1以上であれば水なしと検知する第2の水有無検知手段とを備え、前記加熱制御手段は、前記水有無検知手段により水なしと検知すると前記下方加熱手段の出力を所定出力1以下で制御する誘導加熱調理器。
【請求項2】
第1の水有無検知手段は、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度2から所定温度3まで上昇する時間により水有無を検知し、所定時間1より短ければ水あり、前記所定時間1以上であれば水なしと検知する請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
水あり及び水なし調理シーケンスは加熱制御手段の出力を高火力により制御する高火力工程と出力を低火力により制御する低火力工程からなり、第1の水有無検知手段は高火力工程中に水有無を検知し、第2の水有無検知手段は前記第1の水有無検知手段により一旦水有無を検知した後に再度水有無を検知する請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
第1の水有無検知手段により水ありを検知した後、高火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段の出力を所定時間2の間オフし、その後前記下方加熱手段を所定出力1以下で制御する請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
第1の水有無検知手段により水ありを検知した後、低火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段を所定出力1以下で制御する請求項3または4に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
第1の水有無検知手段により水ありを検知した後、低火力工程中に第2の水有無検知手段により水なしを検知した場合は、下方加熱手段の出力を所定時間2より短い所定時間3の間オフし、その後前記下方加熱手段を所定出力1以下で制御する請求項3〜5に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
下方加熱手段の出力をオフする所定時間3は低火力工程に移行してから第2の水有無検知手段により水なしと検知した時間に応じて増減される請求項6に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
第2の水有無検知手段は、受皿温度検知手段の検知温度が所定温度1より低い所定温度4以下、且つ庫内温度検知手段と前記受皿温度検知手段との検知温度差が所定温度差以上を検知すると水ありと判断し、加熱制御手段は、下方加熱手段の出力を水あり用の出力に制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
第2の水有無検知手段は、水あり/水なしのいずれかを判定すると所定時間4の間は水あり/水なしの判定を行わない請求項1〜8のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
高火力工程から低火力工程へ工程移行するタイミングを庫内温度検知手段の検知温度が所定温度5以上、且つ第1の水有無検知手段の検知が終了後とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−50487(P2009−50487A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220570(P2007−220570)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】