説明

誘導結合型アンテナユニット及びプラズマ処理装置

【課題】真空容器に着脱が容易で真空容器内に高密度な放電プラズマを生成する誘導結合型アンテナユニットを提供する。また、これらの誘導結合型アンテナユニットを複数個用いた任意の面積で生産性の高いプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】本誘導結合型アンテナユニットは、誘電体筐体11と、該筐体の蓋体12と、該蓋体に装着したU字形のアンテナ導体14とからなり、該アンテナ導体のU字形部分が前記筐体内に収容され、一体化された構造とする。アンテナ導体として金属パイプを採用し、そのU字形部分に細孔15を設け、前記筐体内に冷却ガスを噴射させてアンテナ導体及び誘電体筐体を冷却できる構成とする。該アンテナユニットをプラズマ処理装置の真空容器壁に設けた開口部に容易に着脱できる構造とする。また、当該誘導結合型アンテナユニットを複数個配列して任意の処理面積を有する生産性の高いプラズマ処理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合型高周波アンテナ及び該高周波アンテナを用いたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやアモルファス太陽電池などが著しく大型化するのに伴い、これらのデバイスに用いられるガラス基板サイズも非常に大きくなり、基板表面を処理するプラズマ処理装置も大型化してきた。放電プラズマを用いて基板表面に所望の薄膜を形成する、或いは基板表面をエッチング処理する等のプラズマ処理装置として複数の小型アンテナを真空容器周辺に分散して配置し、各小型アンテナに高周波電流を流して発生する電磁界を用いて放電プラズマを発生させる誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式が開発されている。
【0003】
一般的に、ICP は容量結合プラズマ(CCP:Capacitive Coupled Plasma) に較べて低ガス圧力下でも高密度で、電子温度が低く、イオンエネルギーの小さいプラズマが得られる技術として知られている。複数の小型アンテナを分散して配置したICP方式のプラズマ生成装置が特許文献1に開示されている。このプラズマ生成装置は、真空容器の壁面に設けられた開口部にコの字形又はU字形の誘導結合型アンテナを配置するものである。
【0004】
真空容器内部にアンテナ導体を導入する内部アンテナ方式のプラズマ処理装置では、アンテナ導体と放電プラズマとの間に静電界が発生する。一般に、内部アンテナ方式ではプラズマに対してアンテナ自体に負の直流自己バイアス電圧が発生する。このバイアス電圧によってプラズマ中のイオンが加速されてアンテナ導体に入射し、アンテナ導体自身がスパッターされる。
【0005】
例えば、アンテナ導体が銅であれば、スパッターされた銅原子や銅イオンが放電プラズマ中に混入して、真空容器の内壁や被処理基板表面に付着し、堆積する。薄膜を形成する場合であれば、薄膜中に不純物として混入する等の課題がある。この不純物の混入を防止するため、アンテナ導体の外周を石英等の誘電体パイプで覆うことが一般に行われている。例えば、特許文献2では、直径6mmの銅パイプアンテナ導体の外周に内径15mmの石英パイプで絶縁被覆を施した技術が開示されている。
【0006】
しかし、真空容器内にアンテナ導体を導入する前記方式では、高周波電流によるアンテナ導体及び前記誘電体パイプの温度上昇が激しく、アンテナ導体及び誘電体パイプの温度上昇を抑制するため、冷却する必要があった。アンテナ導体をパイプ状として冷却水を循環する方法が採用されているが、誘電体パイプの冷却は行われていないため、高周波電力を大きくすると、前記誘電体パイプは600℃以上に加熱される等の課題があった。
【0007】
また、前記アンテナ導体パイプの導入端部は真空シールしながら給排水管との接続、高周波電力給電端子、或いは接地端子との電気的な接続などを合わせ持つため、構成が複雑となるのみならず、アンテナの脱着、保守点検等に時間を要するなどの課題があった。更に、コの字形又はU字形のアンテナ導体に合わせてアンテナ導体の外周を石英等の絶縁材料パイプで覆う加工は煩雑で、高価であるという課題があった。前記構造では、機械的衝撃或いは熱的応力により絶縁材料パイプが破損し易い等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−228354号公報
【特許文献2】特開平11−317299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記困難な課題に鑑み、真空容器壁に穿孔された開口部に容易に脱着でき、保守点検が容易にできる誘導結合型アンテナユニット(以下、ICPアンテナユニットと略記する)を安価に提供することを目的としている。また、高密度の放電プラズマを効率よく、安定に発生させることを目的としている。更に、当該ICPアンテナユニットを複数個用いることによって、任意の大きさの放電プラズマ処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は高周波放電プラズマ処理装置に使用される誘導結合型高周波アンテナを開発する過程で発明されたもので、前記困難な課題を解決できたものである。本発明は、誘電体筐体と、コの字形又はU字形等の誘導結合型アンテナ導体(以下、ICPアンテナ導体と略記する)と、該ICPアンテナ導体を取り付けた蓋体とが一体化されたICPアンテナユニットであることを特徴とする。前記ICPアンテナ導体の給電側導入部及び接地側導入部は前記蓋体に貫通装着、又はフィードスルーを介して装着され、ICPアンテナ導体のコの字形部分又はU字形部分が前記誘電体筐体内に収容されていることを特徴とする。本発明によるICPアンテナユニットは高周波プラズマ処理装置等の真空容器壁に穿孔された開口部に着脱できる構成とする。
【0011】
前記ICPアンテナ導体の給電側導入部を前記蓋体の長手方向の一方の端部に、接地側導入部を他方の端部に配置し、前記ICPアンテナ導体のコの字形部分又はU字形部分が前記誘電体筐体内の底板にほぼ平行に設置する。
【0012】
本発明によれば、前記ICPアンテナのアンテナ導体部分の形状はコの字形、U字形、N字形又はM字形とすることができ、その形状が作る平面が前記誘電体筐体内の底板又は側板にほぼ平行に配置されていることを特徴とする。前記形状のICPアンテナ導体の全長は給電する高周波の4分の1波長以下であることが望ましい。また、前記誘導結合型アンテナ導体のコの字形又はU字形部分が作る長方形の長辺に対する短辺(アンテナ導体の平行部分の間隔)の比が0.05乃至0.5であることが好ましい。
【0013】
前記誘電体筐体は金属酸化物、窒化物、炭化物、又はフッ化物等、高周波電界に対して誘電体損失の小さい誘電体材料で構成されることが望ましい。好適な誘電体材料としては石英、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素又は炭化硅素などである。また、前記誘電体筐体は、その開口部周辺に鍔部を設け、該鍔部と前記蓋体とがシール部材を挟持して固定され、一体化された構成とする。
【0014】
前記高周波アンテナ導体を金属パイプ、例えば銅パイプとし、前記誘電体筐体内に収容されている部分に多数個の細孔を設け、該細孔から誘電体筐体内に冷却ガスを噴出させてICPアンテナ導体及び誘電体筐体を冷却する構造とする。ICPアンテナ導体パイプに設けた前記細孔は前記誘電体筐体内壁面に冷却ガスをほぼ均一に吹き付けるように細孔の位置、方向を決めることが望ましい。前記アンテナ導体は電気伝導率及び熱伝導率の高い金属導電体が好ましく、銅パイプやアルミニウムパイプを使用することができる。
【0015】
前記蓋体には排気口を設け、該排気口と前記アンテナ導体パイプとを熱交換器及びポンプを介してフレキシブルチューブで連結する。冷却ガスを循環させすることよって、ICP
アンテナ導体及び前記誘電体筐体を冷却する。冷却ガスは空気でもよいが、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスであることが望ましい。
【0016】
更に、本発明によるICPアンテナユニットをプラズマ処理装置の真空容器壁に設けた開口部に真空シール部材を挟持して装着することによって、真空容器内を所定の真空度に維持することができ、ICPアンテナユニットの脱着及び保守点検等が容易なプラズマ処理装置を提供することができる。
【0017】
前記ICPアンテナ導体の一端は整合器を介して高周波電源に接続し、他端は接地する。必要に応じて、コンデンサを介して接地することができる。ICPアンテナ導体の一端に高周波電力を給電してICPアンテナ導体に高周波電流を流すことによって、真空容器内に原料ガスの放電プラズマを発生させることができる。高周波電力としては、13.56MHzの高周波電力を給電することができるが、この周波数に限定されるものではない。
【0018】
更に、本発明によれば、前記真空容器壁の一部、例えば、天板に一定間隔で複数の開口部を設け、各開口部に前記ICPアンテナユニットを装着して各ICPアンテナ導体に高周波電力を給電すれば、真空容器内の大面積にわたって均一な放電プラズマを発生させることができる。また、各ICPアンテナユニットに給電する高周波電力を制御することによって放電プラズマの密度分布を調整、均一化するこができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プラズマ処理装置に着脱が容易で、保守点検が容易なICPアンテナユニットを安価に提供することができる。また、高密度の放電プラズマを効率よく、安定に発生させることができる。更に、複数個のICPアンテナユニットを用いることによって、任意の大きさのプラズマ処理装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のICPアンテナユニットを説明するための断面模式図である。
【図2】高周波電力と放電プラズマ密度の関係を示す図である。
【図3】ICPアンテナ導体の形状の平面概略図である。
【図4】本実施例3で採用したICPアンテナユニットの主要部断面概略図である。
【図5】複数個のICPアンテナユニットを装着した実施例4を説明するための、平面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるICPアンテナユニットの好適な形態は、誘電体製の筐体と、該筐体の蓋体と、該蓋体に取り付けたコの字形又はU字形等のICPアンテナ導体とからなり、該アンテナ導体のコの字形部分又はU字形部分が前記筐体内に収容された構造とする。前記ICPアンテナ導体は前記蓋体に貫通して装着するか、又はフィードスルーを介して装着する。ICPアンテナ導体として、例えば銅パイプを採用し、そのコの字形部分又はU字形部分に細孔を設け、前記筐体内に冷却ガスを噴射させ、ICPアンテナ導体及び誘電体筐体を冷却できる構造とする。
【0022】
本発明によるICPアンテナユニットはプラズマ処理装置等の真空容器壁に穿孔された開口部に真空シール部材を挟持して装着して使用する。前記ICPアンテナ導体の一方の給電端子は高周波電源に接続し、他方の端子は直接又はコンデンサを介して接地する。更に,前記高周波プラズマ処理装置等の真空容器壁に複数の開口部を設け、各開口部に真空シール部材を挟持して本発明によるICPアンテナユニットを装着することによって任意の面積の放電プラズマを発生させることができる。
【実施例1】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
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は、本発明を実施するために好適に利用可能なICPアンテナユニットを示す概略断面図である。このICPアンテナユニットは、誘電体筐体11と蓋体12及び該蓋体に取り付けたコの字形のICPアンテナ導体14で構成した。アンテナ導体14には外径6.4mmの銅パイプを採用し、フィードスルー16を介して前記蓋体12に取り付けた。蓋体とフィードスルー16及びフィードスルーとICPアンテナ導体14は真空シール部材21を介して装着し、ガス漏れが起こらないように構成した。
【0024】
前記誘電体筐体は直方体形状で、その内法寸法は、短辺1.8cm、長辺13cm、深さ5cmとした。前記ICPアンテナ導体14の平坦部14aの長さは10cmとし、アンテナ導体と誘電体筐体内底板(誘電体窓部17)との間隔は0.6cmとなるように調整した。
【0025】
ICPアンテナ導体14の前記誘電体筐体内に存在するコの字形部分には多数の細孔15を設けた。該細孔は前記誘電体筐体の内壁面に冷却ガスをほぼ均一に噴射するように開けた。前記蓋体には排気口18を設け、該排気口とICPアンテナ導体パイプとの間は熱交換器(図示せず)とポンプ(図示せず)をフレキシブルチューブ22で連結した。前記冷却ガスはアンテナ導体パイプの両端から導入し、前記蓋体に設けた排気口から回収した。
【0026】
本実施例で開示した上記ICPアンテナユニットを真空容器の天板23の開口部24に真空シール部材21を介挿して装着し、ICPアンテナ導体14の一方の給電端子19は整合器(図示せず)を介して高周波電源20に接続し、もう一方の給電端子は接地した。真空容器内にガス圧力1パスカルのアルゴンと水素の混合ガスを導入し、周波数13.56MHz、出力1kWの高周波電力を供給して真空容器内に放電プラズマを発生させた。
【0027】
放電プラズマは真空容器内に充満し、誘電体筐体11の窓部17面から10cm離れた真空容器内のプラズマ密度は1.2×1011/cmであった。図2に示すように、プラズマ密度は高周波電力にほぼ比例して増加する。また、ICPアンテナ導体面からの距離にほぼ反比例して減少することが明らかになった。
【0028】
本実施例では、前記冷却ガスとして窒素ガスを循環させることによって、ICPアンテナ導体及び誘電体筐体の温度を80℃以下に保持することができた。冷却ガスとしては大気を循環することも可能であり、大気を循環する場合は、熱交換器は不要で前記ICPアンテナ導体パイプから導入して前記蓋体に設けた排気口18から排気することによって冷却することができる。
【実施例2】
【0029】
本発明に係る第2実施例で用いたICPアンテナユニットのICPアンテナ導体の概略平面図を図3に示す。図3(a)に示すICPアンテナ導体は実施例1で採用したものであり、実施例2で採用したICPアンテナ導体は図3(b)に示す形状のものである。ICPアンテナ導体の給電側導入部27と接地側導入部28を蓋体12の一方の端部に取り付け、前記ICPアンテナ導体のU字形部分は導入部分に対してほぼ直角に折り曲げられ、該U字形部分の囲む面が前記誘電体筐体内部13の底板(誘電体窓部17)にほぼ平行になるように構成した。前記アンテナ導体14のU字形部分の長さは10cm、その間隔は3cmとした。
【0030】
本実施例で用いたU字形アンテナ導体の場合、アンテナ導体の平行な部分は高周波電流が相互に逆方向に流れるため、発生する磁力線はアンテナ導体の平行部分で囲まれる面に垂
直に発生し、その磁界強度は実施例1の場合の約2倍になる。従って、比較的小さな高周波電力で放電プラズマを発生させることができ、また、放電が起こり難い低いガス圧領域、例えば0.5パスカル以下でも放電プラズマを安定に発生させることができる効果がある。
【0031】
図3(b)に示す形状のICPアンテナ導体を用いた前記ICPアンテナユニットを前記真空容器の天板23の開口部24に真空シール部材21を挟持して装着し、ICPアンテナ導体14の一方の給電端子19に整合器(図示せず)を介して高周波電源20を接続し、もう一方の給電端子は接地した。実施例1と同条件で放電プラズマを発生させた。誘電体筐体11の窓部17面から10cm離れた真空容器内のプラズマ密度は1.8×1011/cmであった。
【0032】
本発明によれば、ICPアンテナ導体はコの字形とU字形に限られるものではなく、図3(c)に示すように、N字形やS字形等とすることができる。一般に、円形のICPアンテナ導体が用いられる。円形アンテナの場合、半径をr、電流をIとするとき、中心部に発生する磁界の強さHは次式で表される。
=I/2r
一方、本発明によるU字形ICPアンテナ導体の平行部分の間隔をdとすると、中心部の磁界の強さH11は次式、
11=2I/πd
で表される。U字形アンテナにすると、磁界の強さは円形アンテナの(4r/πd)倍になる。アンテナ導体の平行部分の間隔に反比例するため、間隔を狭くすることによって誘導磁界の強さを大きくすることができる。本実施例では、同じ長さのアンテナ導体を用いた場合、円形アンテナの約1.7倍の磁界強度が得られた。なお、前記ICPアンテナ導体のU字形部分が囲む長方形の長辺の長さLに対する平行部分の間隔dの比d/Lは特に限定されるものではないが、0.05乃至0.5であることが望ましい。
【実施例3】
【0033】
第3の実施例で採用したICPアンテナユニットの主要部断面概略図を図4に示す。ICPアンテナ導体14は、外径6.4mmの銅パイプを図4に示すような形状に整形加工したものを用いた。該ICPアンテナ導体の給電側導入部27と接地側導入部28を前記蓋体12のほぼ中央部に設け、前記ICPアンテナ導体のU字形部分の囲む面が誘電体筐体11の長辺側板とほぼ平行になるように装着した。ICPアンテナ導体14と誘電体筐体11の側板との間隔は5mmとした。
【0034】
本実施例では、蓋体12を絶縁体材料で作製し、フィードスルーを省略した。ICPアンテナ導体14は蓋体12にガスシール部材21を介して直接取り付けた。前記ICPアンテナ導体のU字形部分の周辺に多数の細孔を設け、冷却ガスを噴出させてアンテナ導体及び誘電体筐体を冷却した。冷却ガスは蓋体12に設けた排気口18から回収した。
【0035】
前記実施例1と同様にICPアンテナユニットを真空容器23の開口部24に装着した。アンテナ導体のU字形部分が真空容器の内壁面より内側に突出するように装着した。一方の給電端子19に整合器(図示せず)を介して高周波電源20を接続し、他方の給電端子は接地した。真空容器内にガス圧力0.5パスカルのアルゴンと水素の混合ガスを導入し、周波数13.56MHz、出力1kWの高周波電力を供給して真空容器内に放電プラズマを発生させた。
【0036】
放電プラズマは真空容器内に充満し、誘電体筐体11の窓部17面から10cm離れた真空容器内のプラズマ密度は2.2×1011/cmであった。実施例2の場合は、ICPアンテナ導体のU字形部分が囲む面が真空容器の内壁面に平行であるため、発生する電
磁界の片面の電力しか活用できなかったが、本実施例では、ICPアンテナ導体が囲む面の両側の誘導電磁界を活用することができる。また、アンテナ導体が発生する磁力線は真空容器の内壁面にほぼ平行に発生する。従って、プラズマ中の電子は当該磁力線に束縛されて真空容器表面への散逸が抑制されるため、真空容器内に高密度の安定した放電プラズマを発生させることができる。
【実施例4】
【0037】
複数個のICPアンテナユニットを使用した実施例について説明する。真空容器の一部である天板に2個の前記ICPアンテナユニットを装着した実施例について、ICPアンテナ導体の配置平面図を図5に示す。本実施例では、1組2個のICPアンテナユニットで構成し、両アンテナユニットは所定間隔で配置してある。両方のICPアンテナ導体14の給電端子は給電バー25で連結し、該給電バー25の中心部に高周波電力給電点を設けた。また、接地側給電端子も同様に連結し、その中心部に給電点を設けて接地した。
【0038】
給電点と両アンテナの給電端子までの距離はほぼ同一とし、給電点から見た高周波電力に対する両ICPアンテナユニットのインピーダンスが等価になるように給電点の位置を調整した。真空容器内にガス圧力0.5パスカルのアルゴンと水素の混合ガスを導入し、周波数13.56MHz、出力1kWの高周波電力を前記給電点に給電して真空容器内に放電プラズマを励起した。
【0039】
本実施例では、2個の各ICPアンテナユニットとも真空容器内にほぼ同様な放電プラズマを発生させることができた。天板面からある距離におけるプラズマ密度分布は各アンテナユニットの間隔、放電ガス圧力、高周波電力等によって変化するが、一様なプラズマ密度分布を得る条件は設計事項であって、任意の面積の放電プラズマを発生させることが可能である。
【0040】
上記実施例では、1組2個のICPアンテナユニットについて説明したが、2個に限定されるものではなく、3個、4個でもよい。更に、複数個のICPアンテナユニットからなる複数組を配置することによって、大面積の放電プラズマを発生させることができ、量産性に優れたプラズマ処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0041】
11・・誘電体筐体、12・・蓋体、13・・筐体内部、14・・アンテナ導体、15・・ガス噴出口、16・・フィードスルー、17・・誘電体窓部、18・・排気口、19・・給電端子、20・・高周波電源、21・・真空シール部材、22・・ガスチューブ、23・・真空容器、24・・開口部、25・・給電バー、26・・鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置等の真空容器の壁面に設けられた開口部に気密を保って装着される誘導結合型アンテナユニットであって、コの字形又はU字形等の誘導結合型アンテナを収容する誘電体筐体と蓋体とからなり、前記コの字形又はU字形等の誘導結合型アンテナ導体が前記蓋体に貫通して取り付けられ、又はフィードスルーを介して取り付けられ、前記誘導結合型アンテナのコの字形部分又はU字形部分が前記誘電体筐体内に収容されている構造であることを特徴とする誘導結合型アンテナユニット。
【請求項2】
前記誘導結合型アンテナの給電側導入部分及び接地側導入部分が前記長方形蓋体の長手方向の両端部にあり、前記コの字形又はU字形等のアンテナ導体部分が前記誘電体筐体内の底板にほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項3】
前記誘導結合型アンテナのアンテナ導体部分の形状がコの字形、U字形、N字形又はM字形等であって、その全長は給電する高周波の4分の1波長以下であり、前記形状が作る面が前記誘電体筐体内の底板又は側板にほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項4】
前記誘導結合型アンテナ導体のコの字形又はU字形部分が囲む長方形の長辺に対する短辺の比が0.05乃至0.5であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項5】
前記誘電体筐体の材質が金属酸化物、窒化物、炭化物、又はフッ化物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項6】
前記誘電体筐体の材質が石英、アルミナ、ジルコニア、イットリア、窒化珪素又は炭化硅素であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項7】
前記誘電体筐体は、その開口部周辺に鍔部を有し、該鍔部と前記蓋体とがシール部材を挟持して固定され、一体化されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項8】
前記誘導結合型アンテナ導体が金属パイプであって、前記誘電体筐体内に収容されている部分に多数個の細孔が設けられ、該細孔から冷却ガスを前記誘電体筐体内に噴出させてアンテナ導体及び誘電体筐体を冷却できる構造であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項9】
前記誘導結合型アンテナ導体パイプに設けた細孔が前記誘電体筐体内壁面に冷却ガスをほぼ均一に吹き付けるように穿孔されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項10】
前記誘導結合型アンテナ導体パイプと前記蓋体に設けた排気口とを熱交換器及びポンプを介してフレキシブルチューブで連結し、前記冷却ガスをアンテナ導体パイプから導入し、前記排気口から回収することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項11】
前記冷却ガスがアルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニット。
【請求項12】
誘導結合型アンテナを具備したプラズマ処理装置であって、その真空容器の容器壁に請求項1から11のいずれかに記載の誘導結合型アンテナユニットを装着したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記誘導結合型アンテナユニットが真空容器壁に設けられた開口部に真空シール部材を挟持して装着されていることを特徴とする請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記真空容器壁に複数の開口部が設けられ、各開口部に請求項1から11のいずれかに記載のアンテナユニットを装着したことを特徴とする請求項12及び13に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−225296(P2010−225296A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68029(P2009−68029)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505402581)株式会社イー・エム・ディー (16)
【Fターム(参考)】