説明

誘電体用ガラスフリット、誘電体磁器組成物、積層セラミックキャパシタ及びその製造方法

【課題】誘電体用ガラスフリット、誘電体セラミック組成物、積層セラミックキャパシタとその製造方法を提供する。
【解決手段】誘電体用ガラスフリットであって、aSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成され、上記a+b+c+d+e+f+g+h=100で、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘電体用ガラスフリットと誘電体セラミック組成物及び積層セラミックキャパシタとその製造方法に関する。より詳しくは、リチウムボロシリケートガラスにおいて4配位ボロンの比率を高くして誘電体スラリーのゲル化を防止し、且つ積層セラミックキャパシタの誘電体層表面におけるガラスの凝集を最少化または生成自体を防止する。
【背景技術】
【0002】
最近電子製品の小型軽量化のニーズに応じて積層セラミックキャパシタの使用量が増加している。積層セラミックキャパシタは携帯電話、ノートブックコンピュータ、PDAなどの移動通信機器に広く使用されている。
【0003】
積層セラミックキャパシタは複数の誘電体層と、この複数の誘電体セラミック層間に内部電極とが積層され、積層体の両端には内部電極層と電気的に接続するよう外部電極が形成される。積層セラミックキャパシタの内部電極には高価のPdの代わりに低価のNi、Cuまたはこれらの合金が使用される。とりわけ、温度補償用積層セラミックキャパシタには抵抗と容量変化の少ないCuを内部電極に使用するといった試みが進んでいる。しかし、Cuは融点が低く、1000℃以下で低温焼成可能な誘電体セラミック組成物が開発されることが期待されている。
【0004】
低温焼成可能な温度補償用積層セラミックキャパシタに関する従来の技術としては特許文献1、特許文献3、特許文献2が挙げられる。これらの技術はCuを内部電極に使用すべく誘電体セラミックにガラスフリットを適用した技術である。
【0005】
先ず、特許文献1は誘電体セラミックがCa(Zr1−yTi)Oの主成分と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐eCaO(25≦a≦45、45≦b≦65、5≦e≦20)系ガラス0.5〜2.5重量部と Mn化合物をMnCO換算で1.0〜3.0重量部とを含んで組成される積層セラミックキャパシタに関するものである。
【0006】
特許文献3は誘電体セラミック層が(Ca1−xMg)(Zr1−yTi)Oの主成分と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLi2O‐eCaO‐iBaO(0.1≦a≦0.7、0.15≦b≦0.89、0.01≦c≦0.5、0<d≦0.4、0<i≦0.4)系ガラス0.5〜2.5重量部とMnOとを含んで組成されるものである。
【0007】
特許文献2は誘電体セラミック層がMnO:1〜5重量%、aSiO‐bB‐cLiO‐fAl‐iRO‐iRO(10≦a≦50、10≦b≦60、10≦c≦50、0<f≦10、0<I+j≦25)系ガラス:0.5〜10重量部及び残りの(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O(0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)を含んで組成される積層セラミックキャパシタに関するものである。上記ガラスにおいて、RはBa、Ca、Sr、Mn、Mg、Zn、Ti、Pb、Ceのうちのいずれか一種である。
【0008】
上記従来の技術は誘電体セラミックにガラスフリットを添加して低温焼成を実現している。しかし、ガラスフリットをセラミックスラリーに配合する場合、長時間経過するとスラリーの粘度増加によるゲル化のために量産への適用が困難であるといった問題がある。さらに、セラミックスラリーにおいてガラスの一部成分の溶出や揮発によった組成変更のためにガラスの流動性が低下し、セラミック焼結体の表面においてガラスの凝集(agglomeration)が生じてしまう欠点がある。上記積層セラミックキャパシタは耐酸性もあまり良くない。
【特許文献1】特開1999−283860号公報
【特許文献2】韓国特許出願公開第2001−0048867号明細書
【特許文献3】特開2002−356371号公報
【特許文献4】韓国特許出願公開第2003−0037351号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の技術の問題を解決するためのもので、誘電体スラリーのゲル化及び誘電体の焼成過程におけるガラスの凝集を防止し、且つ耐酸性も改善し得る誘電体用ガラスフリットを提供することが目的である。
【0010】
さらに、このガラスフリットを用いる誘電体セラミック組成物と積層セラミックキャパシタ及びその製造方法を提供することも目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を成し遂げるための本発明の誘電体用誘電体ガラスフリットは、aSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成され、上記a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。
【0012】
本発明のガラスフリットにおいて、上記aSiOが20≦a≦25で、上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足することが好ましく、より好ましくはbBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する。
【0013】
さらに、本発明のガラスフリットにおいて上記SiOが25<a≦35で、上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足することが好ましく、より好ましくは上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する。
【0014】
さらに、本発明のガラスフリットにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437を満足するものが最も好ましい。
【0015】
上記本発明の誘電体セラミック組成物は、主成分として(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。
【0016】
本発明の誘電体セラミック組成物において、上記aSiOが20≦a≦25 、上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足するものが好ましく、より好ましくはbBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する。
【0017】
さらに、本発明の誘電体セラミック組成物において上記SiOが25<a≦35、上記bBとcLiOがb/c<0.9を満足するものが好ましく、より好ましくは上記bBとcLiOが0.86≦b/c≦0.88を満足する。
【0018】
さらに、本発明の誘電体セラミック組成物において3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437を満足するものが最も好ましい。
【0019】
さらに、本発明の誘電体セラミック組成物には、主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含むことが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタは、複数の誘電体セラミック層と、この複数の誘電体セラミック層の間にはCu内部電極とが積層され、上記積層体の両端に上記内部電極層と電気的に接続するようCu外部電極が形成され、上記誘電体セラミック層が、主成分として(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。
【0021】
本発明の積層セラミックキャパシタにおいて上記aSiOが20≦a≦25 で、上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足するものが好ましく、より好ましくはbBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する。
【0022】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタにおいて上記SiOが25<a≦35で、上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足するものが好ましく、より好ましくは上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する。
【0023】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437を満足することが最も好ましい。
【0024】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタは、主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含むことが好ましい。
【0025】
本発明の積層セラミックキャパシタの誘電体層表面にはガラス凝集の大きさを最少化するかガラス凝集の生成自体を防止し得る。
【0026】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタの製造方法は、上記本発明の誘電体セラミック組成物で形成された誘電体シートの表面上にCu内部電極を形成する段階、上記Cu内部電極が形成された誘電体シートを積層し圧着した後に切断して積層体を形成する段階、上記積層体の両端に上記Cu内部電極と電気的に接続するCu外部電極ペーストを塗布する段階、上記Cu外部電極が形成された積層体を同時焼成する段階を含む。
【0027】
本発明において同時焼成とは、上記積層体の加焼及び焼成工程と外部電極の焼成とを別途でなく同時に行うことである。即ち、同時焼成は、従来の積層体の加焼及び焼成の条件において誘電体層、内部電極、外部電極を一緒に処理することを意味する。
【0028】
上記Cu外部電極ペーストはCu金属:40〜70重量%、(Ca1−x)(Zr1−yTi)O(RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、)セラミック粉末:5〜20重量%、結合剤:1.6〜5.6重量%、残りの溶剤から組成されることが好ましい。さらに、上記結合剤はエチルセルロース系結合剤であることが好ましい。上記焼成は900〜970℃において行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は誘電体スラリーのゲル化を防止し、誘電体の表層にガラスの凝集のサイズが最小化、ひいてはガラス凝集が存在せず耐酸性にも優れた誘電体用ガラスフリットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0031】
本発明者は、誘電体スラリーのゲル化はガラスから溶出するB3+とバインダーのOHとが結合して発生する事実に注目し、ガラスからB3+の溶出を抑制し得るメカニズムを究明して本発明の完成に至った。
【0032】
リチウムボロシリケートガラスはボロンの弱い結合力のためスラリー配合時溶出したり昇温時揮発する。このようにB3+が溶出すると相対的な流動性の低下によりその移動が滞積しガラスの凝集が発生するのである。
【0033】
したがって、リチウムボロシリケートのガラスにおけるボロンの結合力を強化させることが重要である。
【0034】
図1にはリチウムボロシリケートガラスにおけるボロンと酸素との結合構造を示したものである。図1(a)と図1(b)にはボロシル群、トリボレート群の3配位ボロンの基本構造が示してある。図1(c)と図1(d)にはペンタボレートとジボレート群の4配位ボロンの基本構造が示してある。
【0035】
実際、リチウムボロシリケートの場合こうした3配位ボロンと4配位ボロンが混在している。本発明者はリチウムボロンシリケートガラスにおいてSiO、B、LiOの含量に応じて4配位構造が増加しガラスの構造的特性が強化され、誘電体スラリーのゲル化及びガラス凝集現象が改善されることを明かしたのである。 とりわけ、SiOの含量によるBとLiOの比に応じて4配位ボロンの比率を著しく高められることも究明した。
【0036】
さらに、リチウムボロシリケートガラスは低温焼成のために多量のB及びLiOを添加するが、これに応じてSiOの含量が減少しガラスの耐酸性が低下してしまう。したがって、この点を補完すべくAl、ZrO、TiOを添加して耐酸性を改善することも重要である。
【0037】
こうした視点において設計された本発明のガラスフリットは、aSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成され、上記a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。これらについて具体的に説明する。
【0038】
酸化珪素(SiO)の含量は20〜35mol%が好ましい。
【0039】
酸化珪素はシリコン原子がその周囲を取り囲んだ4個の酸素原子を挟んで隣接する4個のシリコン原子と結合する構造を有する。酸化珪素はガラス網目形成酸化物(glass network‐former)であって、ガラスの軟化温度及び耐酸性を決定する最も重要な因子として作用する。酸化珪素の含量が20mol%未満であると母材からの拡散性が悪化して焼結性を低下させかねない。35mol%を超過すると軟化温度が高くなり低温焼成用焼結助剤として不適になりかねない。
【0040】
酸化ボロン(B)の含量は20〜35mol%が好ましい。
【0041】
酸化ボロンはガラス網目形成酸化物(glass network−former)として酸化珪素と置換され、ガラス転移温度、軟化温度などの温度特性を減少させる役目を果たす。このために酸化ボロンは20mol%以上添加することが好ましい。ガラス成分中酸化ボロン添加量が35mol%までは化学的耐久性及び機械的強度に大きい影響を及ぼさず軟化温度を下げる役目を果たすが、35mol%を超過するとガラスの構造を弱化させ化学的耐久性及び機械的強度の低下を招きかねない。
【0042】
酸化リチウム(LiO)の含量は20〜30mol%が好ましい。
【0043】
酸化リチウムはガラス網目修飾酸化物(glass network‐modifier)として酸化珪素あるいは酸化ボロンによるガラス網目を切り離しバッチ(batch)の溶融度を向上させる溶剤(flux)の役目を果たし、軟化点及びガラス転移温度を下げる役目を果たす。酸化リチウムの含量が20mol%未満であるとガラスの軟化温度が高くなりすぎ、30mol%を超過すると軟化温度が低すぎ、耐酸性が著しく低下する。
【0044】
酸化カリウム(KO)の含量は3〜5mol%が好ましい。
【0045】
酸化カリウムは酸化リチウムと同様にガラス網目修飾酸化物(glass network‐modifier)として酸化珪素あるいは酸化ボロンによるガラス網目を切り離しバッチ(batch)の溶融度を向上させる融剤(flux)の役目を果たし、軟化点及びガラス転移温度を下げる役目を果たす。とりわけ、酸化リチウムなどの他アルカリ酸化物と同時に投入されると構造的に相互補完される効果(混合アルカリ効果)が生じ、構造を一部強化させる役目を果たす。酸化カリウムの含量が3〜5mol%の間において適切な軟化温度を有し、酸化リチウムとの適切な構造補償効果を示す。
【0046】
酸化カルシウム(CaO)の含量は2〜12mol%が好ましい。
【0047】
酸化カルシウムは網目修飾酸化物としてアルカリ金属により弱くなったガラス構造を強化させる役目を果たす。酸化カルシウムはアルカリ土類酸化物(alkaliearthmetaloxides)として粘度に影響を及ぼし化学的耐久性を向上させる。しかし、酸化カルシウムはガラスをショートガラス(short glass)化させるといった欠点もある。酸化カルシウムは構造強化のために2mol%以上添加し、12mol%を超過すると軟化温度範囲を外れる。
【0048】
酸化アルミニウム(Al)の含量は2〜1mol%が好ましい。
【0049】
酸化アルミニウムはガラス構造内の中間酸化物(Intersticial oxides)として作用し、ガラスのロング化(long)、即ち作業温度範囲を広げ、構造を強化し、化学的耐久性を増加させ、結晶化を防止することが可能である。酸化アルミニウムの含量が2mol%未満であると構造強化効果が無く、10mol%を超過すると軟化温度範囲を外れる。
【0050】
酸化チタニウム(TiO)の含量は1〜12mol%が好ましい。
【0051】
酸化チタニウムはガラス構造内の中間酸化物(Intersticial oxides)として作用し、ガラスのロング化(long)、即ち作業温度範囲を広くし、構造を強化し、化学的耐久性を増加させ、結晶化を防止することが可能である。酸化チタニウムの含量が1mol%未満であると構造強化効果が無く、12mol%を超過すると軟化温度範囲を外れる。
【0052】
酸化ジルコニウム(ZrO)の含量は1〜7mol%であることが好ましい。
【0053】
酸化ジルコニウムはガラス構造内の中間酸化物(Intersticial oxides)として作用し、ガラスのロング化(long)、即ち作業温度範囲を広くし、構造を強化し、化学的耐久性を増加させ、結晶化を防止することが可能である。酸化ジルコニウムの含量が1mol%未満であると構造強化効果が無く、7mol%を超過すると軟化温度範囲を外れる。
【0054】
本発明による、スラリーのゲル化とガラス凝集を防止するための最適のガラス組成はSiOの含量に応じてB/LiOの比を適切に制御するものである。
【0055】
SiOの含量が20≦SiO≦25であれば、B/cLiO>0.9、より好ましくは 0.93〜1.66を満足するものである。
【0056】
さらに、SiOが25< SiO≦35であると、B/cLiO<0.9、より好ましくは0.86〜0.88を満足するものである。
【0057】
本発明のリチウムボロシリケートガラスフリットにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)との比率が3.235〜3.437を満足する場合にはガラスの凝集発生を完全に防止し得る。これを満足するガラスは本発明のガラス成分系において、SiOの含量が20≦SiO≦25である場合にB/cLiOの含量が0.93〜1.66を満足するものである。ガラスにおいて3配位ボロンと4配位ボロンの比率測定はB Solid‐NMR(Solid/Micro‐Imaging High Resolution NMR、Bruker、AVANCE 400WB、DSX‐400、Germany)を利用して測定し得る。
【0058】
本発明においてガラスフリットは0.8〜1.0μmが最も好ましい。
【0059】
本発明に応じて誘電体セラミック組成物は次のとおりである。
【0060】
誘電体スラリーのゲル化と誘電体におけるガラスの凝集を防止し耐酸性を有することが要される誘電体セラミックには本発明のガラスフリットが適用され得る。本発明のガラスフリットが適用され得る最も好ましい誘電体セラミック組成物は次のとおりである。
【0061】
主成分として(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100で、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。
【0062】
主成分は(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oのセラミック粉末として、ここでRはMg、Srから選択された1種で、xとyは0≦x≦0.1、0≦y≦0.1の条件を満足する。本発明に適用され得る主成分はCa(Zr1−yTi)O、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O、(Ca1−xMg)(Zr1−yTi)Oなどがあるが、最も好ましくはCa(Zr1−yTi)Oである。
【0063】
好ましくは、副成分として焼結促進剤の役目を果たすMn化合物を添加する。Mn化合物はMnO、MnCOなどがある。Mn化合物の含量は主成分100重量部に対して1〜5重量部が好ましい。Mn化合物の含量が1重量部未満であると焼結促進剤の役目を充分に果たせず所望の焼成温度で未焼成が生じかねなく、5重量部を超過するとグレインが大きくなりかねないので好ましくない。
【0064】
本発明の誘電体セラミック組成物には上記本発明のガラスフリットが適用される。本発明のガラスフリットにおいてSiOの含量が20≦ SiO≦25であると、B/cLiO>0.9、より好ましくは0.93〜1.66を満足するものである。さらに、SiOが25< SiO≦35であると、B/cLiO<0.9、より好ましくは0.86〜0.88を満足する。
【0065】
本発明のリチウムボロシリケートガラスフリットにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437を満足することが好ましい。
【0066】
さらに、本発明の誘電体セラミック組成物には主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含むことが好ましい。フィラーは主成分粉末とガラスフリットの間において濡れ性を向上させ微細構造を緻密にする。こうした効果を得るためにはフィラー含量が0.2重量部以上で添加されなければならず、1.0重量部を超過するとガラスの流動性を劣らせかねず好ましくない。
【0067】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタは、複数の誘電体セラミック層と、この複数の誘電体セラミック層の間にCu内部電極とが積層され、上記積層体の両端に上記内部電極層と電気的に接続するようCu外部電極が形成され、上記誘電体セラミック層が、主成分として(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する。
【0068】
本発明の誘電体セラミック組成物には上記本発明のガラスフリットが適用される。本発明のガラスフリットにおいてSiOの含量が20≦ SiO≦25である場合、B/cLiO>0.9、より好ましくは0.93〜1.66を満足する。さらに、SiO が25<SiO ≦35である場合、B/cLiO<0.9、より好ましくは0.86〜0.88を満足する。
【0069】
本発明のリチウムボロシリケートガラスフリットにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437を満足することが好ましい。
【0070】
さらに、本発明の積層セラミックキャパシタには主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含むことが好ましい。
【0071】
本発明の積層セラミックキャパシタの誘電体層表面にはガラス凝集の大きさが3μm以下と最少化するか、ガラス凝集自体が存在しない。
【0072】
本発明により積層セラミックキャパシタを製造する最も好ましい一例について説明する。
【0073】
先ず、主成分とガラスフリットと副成分である添加剤の原料粉末を用意する。主成分は、(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oが好ましい。ここで、RはMg、Srから選択された1種で、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1が好ましい。
【0074】
ガラスフリットはaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されることが好ましい。本発明のガラスフリットにおいてSiOの含量が20≦SiO≦25である場合、B/cLiO>0.9、より好ましくは0.93〜1.66を満足する。さらに、SiOが25<SiO≦35である場合、B/cLiO<0.9、より好ましくは0.86〜0.88を満足する。本発明のリチウムボロシリケートガラスフリットにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(B4)の比率が3.235〜3.437を満足することが好ましい。
【0075】
副成分としてはMn化合物が好ましく、Mn化合物としてはMnO、MnCOなどを例に挙げられる。
【0076】
用意した原料粉末を混合するが、ここで混合比は主成分100重量部に対してガラスフリット0.5〜2.5重量部、Mn化合物1〜5重量部を混合する。
【0077】
用意した誘電体粉末を配置工程においてスラリー化する。
【0078】
上記誘電体スラリーは誘電体粉末と有機バインダー、溶剤を混合したものである。有機バインダーはPVB、アクリルなどの各種バインダーから適切に選択可能で、誘電体スラリーにはさらに分散剤と加焼剤などが含まれ得る。本発明はこれに限定されるわけではない。
【0079】
次いで、上記誘電体スラリーを誘電体シートに成型する。
【0080】
上記誘電体シートに内部電極を印刷し、内部電極の印刷されたシートを積層した後積層されたシートを圧着し、圧着された積層シートを定められた形状に応じて切断して積層体を製造する。上記内部電極は、Ni、Cuまたはこれらの合金が適用され得るが、最も好ましくはCuまたはその合金が適用されることである。
【0081】
上記圧着時、圧着圧力は500〜1300kgf/cmに設定することが好ましい。 上記のように製造された積層体を研磨して隅部分を曲面とすることも可能である。
【0082】
積層体を加焼及び焼成し外部電極を塗布した後焼成することが一般である。本発明においてもこうした方法が適用され得るが、焼成しない積層体に外部電極を塗布して同時焼成する技術を適用することが好ましい。こうした同時焼成技術は上記特許文献4に詳しく記載されている。同時焼成技術は製造工程を単純化させ外部電極の接着性の面からも大変好ましい。
【0083】
外部電極ペーストは導電金属、結合剤、溶剤で組成される。さらに、ガラスフリットが適用されもするが、同時焼成を適用する場合にはガラスフリットの代わりに母材共材をさらに含むことがより好ましい。
【0084】
上記導電金属はCu、Niまたはその合金が適用されるが、本発明においてはCuまたはその合金が最も好ましい。上記Cu金属は球形とフレーク形を単独または混合で使用し得るが、混合して使用する方が好ましい。
【0085】
上記結合剤には主にアクリル系樹脂などが使用される。アクリル系樹脂の場合せん断ストレス(shear stress)変化による粘度比が大きく、外部電極の塗布厚さが乾燥後に40−50μm程と厚い。外部電極のための焼成においては焼成密度が低く外部電極の塗布厚さが薄くなるとメッキ時にメッキ液の浸透による特性の劣化が発生する。したがって、外部電極の塗布を厚くしなければならず、アクリル系樹脂結合剤はそうしたニーズに応える。しかし、外部電極の厚さが厚いと、加焼工程において外部電極と誘電体間にデラミネーション(delamination)が発生する可能性が高くなる。
【0086】
本発明の好ましい一例に応じて同時焼成を採用すると外部電極単独焼成よりは焼成時間が長くなり焼成密度が高くなる。したがって、外部電極の厚さを約20−30μmと薄くしてもメッキ時にメッキ液が浸透する虞が少なくなる。
【0087】
アクリル系樹脂結合剤は粘度比が大きいので約20−30μmレベルで塗布することが難しい。したがって、せん断ストレスの変化による粘度比が低いセルロース系結合剤を使用することが好ましい。セルロース系結合剤は外部電極を薄く均一に塗布し得る。
【0088】
本発明において最も好ましい外部電極ペーストは、Cu金属:40〜70重量%、母材共材:5〜20重量%、結合剤:1.6〜5.6重量%、残りの溶剤から組成されるもので、こうしたペースト組成は上記特許文献4に開示されている。
【0089】
母材共材とは、セラミックと金属との収縮率の差によるクラック発生などを防止すべく誘電体組成と同一または類似する組成及び物性を有する成分のことを意味する。本発明において母材共材は誘電体組成物における主成分が好ましい。即ち、母材共材は(Ca1−x)(Zr1−yTi)O(RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)のセラミック粉末である。
【0090】
上記結合剤は上記のようにセルロース系結合剤、例えばエチルセルロース結合剤が最も好ましい。上記外部電極ペーストは15,000〜40,000cps(10rpm)の粘度を有することが好ましい。
【0091】
次いで、内部電極が印刷された誘電体の積層体と外部電極を加焼して脱バインダー処理した後に焼成する。
【0092】
加焼は還元性雰囲気下において200〜600℃、好ましくは230〜350℃の温度で5時間以上、好ましくは5〜40時間、より好ましくは20〜40時間ほど行う。加焼は内部電極及び外部電極の酸化を防ぐべく還元性雰囲気において行うことが好ましく、より好ましい雰囲気として窒素雰囲気が挙げられる。
【0093】
上記焼成時の雰囲気は還元性雰囲気とし、焼成温度は870〜1000℃、好ましくは900〜970℃、焼成時間は5時間以上、好ましくは5〜20時間、より好ましくは9〜12時間とする。
【0094】
上記のように焼成後にはNiメッキ及びSn/Pbメッキを順次に施す。
【0095】
以下、本発明について実施例を基により具体的に説明する。
【実施例1】
【0096】
(1−1)ガラスの製造
表1の組成を満足するよう各元素を秤量して均一に混合した原料を白金ルツボに収め、このルツボを熱処理炉に装入して10K/minの速度で昇温し1350℃で1時間維持して原料を溶融させた。この溶融物をツインローラー(twin roller)により急冷し、フレークタイプ(flake type)のガラスに製造した。
【0097】
フレークタイプガラスを乾式及び湿式粉砕して0.8〜1.0μmの粉末に製造した。
【0098】
(1−2)ガラスの特性評価
製造されたガラスの軟化温度は軟化点測定器(Lavino Ts Tester、Orton、TSM03、USA)を利用して10K/minの昇温速度で大気雰囲気下において測定した。その結果は表1に示した。
【0099】
(1−3)ガラスの構造分析
FT‐Raman(Fourier Transform Raman、RFS‐100/S、Germany)を利用してガラスを構造分析し図2に示した。さらに、B Solid‐NMR(Solid/Micro‐Imaging High Resolution NMR、Bruker、AVANCE 400WB、DSX‐400、Germany)を利用してガラスにおける3配位ボロンと4配位ボロンの比率を観察し、その結果を図3に示した。
【0100】
(1−4)誘電体スラリーの製造
水熱合成法により合成したCaZrO、CaTiOを使用してCa(Ti0。03Zr0。97)O粉末を製造した。製造されたCa(Ti0。03Zr0。97)O 100重量部に対してMnO2重量部、上記製造されたガラスフリット2重量部を混合して誘電体粉末を用意した。上記用意した誘電体粉末と、この誘電体粉末100重量部に対して10重量部の有機バインダー(PVB樹脂)と、有機バインダーに対して40重量部の加焼剤と、有機バインダーに対して8倍の溶剤とを混合して誘電体粉末スラリーを製造した。
【0101】
(1−5)誘電体スラリーのゲル化特性評価
このスラリーに対する実験室規模のゲル化特性を評価して、その結果を図4に示した。図4には粘度経時変化を100rpmの速度で観察したものである。図5には従来材と表1のA11のガラスフリットを使用したスラリーに対して量産規模の粘度経時変化を示したものである。
【0102】
【表1】

【0103】
図2にはFT‐Ramanを利用して従来のガラス、A1、A8〜A11のガラスに対する構造分析結果が示してある。従来のガラスとA1のガラスは500、980cm−1付近において3配位ボロンに構成されたボトキシル群と770cm−1 付近において若干のペンタボレート群が観察される。それに対してA8〜A11のガラスは770及び880cm−1付近においてペンタボレート群(penta‐borate group)の主なピーク(peak)が現れている。これはボロンとリチウムの比率が適切に調和されながらボロンの配位数が3配位から4配位で変化されたことを意味する。
【0104】
図3には従来材のガラスとA8、A11のガラスに対する3配位/4配位の比の定量分析を示したものである。10〜20ppm間において3配位ボロン(BO3)のピーク、0ppm付近において4配位ボロン(BO4)のピークが観察される。A8、A11のガラスにおいて3配位/4配位の比が増加することを示している。とりわけ、A11のガラスの場合には従来のガラスより4配位比率が0.4程度増加している。
【0105】
図4は、表1のガラスを使用する誘電体スラリーに対する実験室規模(500ml)におけるゲル化程度を示す。従来のガラスフリットを使用した誘電体スラリーは6日経過後に初期粘度対比60%以上増加した。それに対して、A1〜A11のガラスフリットを使用した誘電体スラリーは6日経過後初期粘度より60%以内の範囲で増加した。
【0106】
とりわけ、SiOの含量が20〜25mol%で、BとLiOの比率(B/LiO)>0.9を満足するA6〜A11の場合は、6日経過後初期粘度より約50%以内の範囲で増加し、ゲル化防止効果が卓越していた。
【0107】
図5には従来のガラスとA11のガラスを使用する誘電体スラリーに対する量産規模の粘度変化を示す。従来材のガラスフリットを使用した誘電体スラリーは1週間経過後初期粘度より約110%以上粘度が増加した。これに対して、A11のガラスフリットを使用した誘電体スラリーの場合は、1週間経過後初期粘度より約50%程度増加した。従来材対比約60%の粘度上昇抑制効果を奏した。
【実施例2】
【0108】
実施例1の誘電体スラリーを利用して誘電体シートをドクターブレード法により製造し、Cu内部電極を印刷した。内部電極が印刷された誘電体シートを5層積層し1000kg/mmの圧力で圧着した後切断し、積層体を製造した。製造された積層体を加焼及びか焼する前に両端に表2の外部電極ペーストを塗布し同時焼成した。即ち、窒素雰囲気下300℃において25時間加焼した後、950℃において10時間焼成した。外部電極ペーストはCu金属:59重量%、Ca(Ti0。03Zr0。97)O粉末:11.8重量%、エチルセルロース結合剤:3.54重量%、残りの溶剤を含んで成る。
【0109】
焼成した積層セラミックキャパシタの誘電体層表面におけるガラス凝集の有無を目視調査する一方、ガラス凝集が発生した試片に対してはガラス凝集の平均大を測定した。その測定結果は表2に示した。表2には説明の便宜を図って表1のガラスの組成をそのまま示した。
【0110】
図6には表2の試片中において従来材とA2、A11の一部焼成試片に対する微細構造が示してある。焼成試片の微細構造はSEM(Scanning Electron Microscopy、S‐3000N、Hitachi、Japan)を利用した。
【0111】
【表2】

【0112】
従来のガラスフリットを使用した場合には6μm以上のガラス凝集が発生した。
【0113】
A1〜A3のガラスフリットを使用した試片においてはガラス凝集のサイズが減少した。A1〜A3のガラスはB/LiOの比が従来材より小さいがB+LiOの含量が従来材より少ないのでガラス凝集が少ないことが分かる。B+LiOの含量を大変少なくするとガラス凝集を除去できるものの、あまり少なすぎても低温焼成が困難になる。したがって、B+LiOの含量を減少させるよりはB/LiOの比を調節してガラス凝集を除去することが好ましい。
【0114】
A4〜A5の場合にはガラス凝集は発生しなかったが、焼成試片の微細構造に気孔(porous)が多量発生した。B/LiOの比が1以上であるが、SiO量が不足し誘電体の溶解度(solubility)充分でなく若干未焼成が発生するので緻密な微細構造とならない。
【0115】
A7〜A11の場合には、B/LiOの比が0.9を超過しながらガラス凝集が完全に消滅する。微細構造も緻密であった。
【0116】
一方、表2の従来材とA11のガラスフリットを使用した焼成試片にIn‐Ga電極を塗布した後、Capacitance Meter(Agilent、4278A)を利用して誘電率(K)と品質係数(Q)を測定し、High Resistance Meter(Agilent、4339B)を利用して絶縁抵抗(IR)及び比抵抗(R)を測定した。その結果は表3に示した。A11のガラスフリットを使用した試片については誘電体スラリーにフィラーとしてZrSiOを主成分100重量部に対して0.5重量部でさらに添加した。
【0117】
【表3】

【0118】
表3に示すように、従来材に比してほぼ同一な電気的特性を示した。密度の場合は誘電体層へのZrSiO添加効果により焼成時気孔(pore)を充填する役目を果たすことからやや増加したことが分かった。
【0119】
図7には従来材、A11ガラスフリットを使用した場合に対する試片の微細組織写真が示してある。フィラーを使用しない図7(b)に比してフィラーを使用した図7(c)の場合がより緻密なことが分かった。
【実施例3】
【0120】
実施例2の従来材とA11のガラスフリットを使用した焼成試片に対して耐酸性を評価した。耐酸性はNi及びSnメッキ液に対して評価し、その結果は図8(Niメッキ液)、図9(Snメッキ液)に示してある。
【0121】
図8、9に示すように、従来材の場合には浸食された部分がより深く、メッキ液の浸透経路が著しく観察される。A11のガラスフリットを使用した試片の場合にはメッキ液の浸透が観察されなかった。
【0122】
本発明においては説明のために多くの事項を具体的に説明しているものの、これらは本発明の例示であって本発明がこれらに限定されるわけではない。本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、類似する作用及び効果を奏するものは本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、実施例においては誘電体セラミックの主成分としてCa(Zr1−yTi)Oを使用しているが、この他にも異なるセラミック粉末が適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】リチウムボロシリケートガラスにおけるボロンの結合構造形態に対する模式図である。
【図2】リチウムボロシリケートガラスの構造分析結果に対するグラフである。
【図3】リチウムボロシリケートガラスにおいて4配位ボロンと3配位ボロンの比率を示すグラフである。
【図4】実験室規模における誘電体スラリーの粘度経時変化を示すグラフである。
【図5】量産規模における誘電体スラリーの粘度経時変化を示すグラフである。
【図6】焼成試片に対する微細構造写真である。
【図7】焼成試片の微細構造写真であって、(a)は従来のガラスフリットを使用した場合、(b)はA11のガラスフリットを使用した場合、(c)はA11のガラスフリットを使用し且つ誘電体にフィラーを使用した場合である。
【図8】Niメッキ液に対する焼成試片の耐酸性実験結果の写真である。
【図9】Snメッキ液に対する焼成試片の耐酸性実験結果の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
aSiO−bB−cLiO−dKO−eCaO−fAl−gTiO−hZrOから組成され、上記a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する誘電体用ガラスフリット。
【請求項2】
上記aSiOが20≦a≦25で、上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足する請求項1に記載の誘電体用ガラスフリット。
【請求項3】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する請求項1に記載の誘電体用ガラスフリット。
【請求項4】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足する請求項1に記載の誘電体用ガラスフリット。
【請求項5】
上記SiOが25<a≦35で、上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する請求項1に記載の誘電体用ガラスフリット。
【請求項6】
上記ガラスにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)との比率が3.235〜3.437である請求項1ないし5のいずれかに記載の誘電体用ガラスフリット。
【請求項7】
主成分として(Ca1−x)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、
上記主成分100重量部に対してaSiO−bB−cLiO−dKO−eCaO−fAl−gTiO−hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、
上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100で、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する誘電体セラミック組成物。
【請求項8】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足する請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項9】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項10】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足する請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項11】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項12】
上記ガラスにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)との比率が3.235〜3.437である請求項7ないし11中いずれか一項に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項13】
上記主成分はCa(Zr1−yTi)Oである請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項14】
上記主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部を含む請求項7に記載の誘電体セラミック組成物。
【請求項15】
複数の誘電体セラミック層と
この複数の誘電体セラミック層の間にCu内部電極とが積層され、
上記積層体の両端にはCu外部電極が上記内部電極層と電気的に接続するよう形成され、
上記誘電体セラミック層が、主成分として(Ca1―xR)(Zr1−yTi)Oを100重量部と、
上記主成分100重量部に対してaSiO‐bB‐cLiO‐dKO‐eCaO‐fAl‐gTiO‐hZrOから組成されるガラス0.5〜2.5重量部とMn化合物1.0〜5.0重量部とを含み、上記RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a+b+c+d+e+f+g+h=100、上記20≦a≦35、20≦b≦35、20≦c≦30、3≦d≦5、2≦e≦12、2≦f≦10、1≦g≦12、1≦h≦7を満足する積層セラミックキャパシタ。
【請求項16】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足する請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項17】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項18】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足する請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項19】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項20】
上記ガラスにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)との比率が3.235〜3.437である請求項15ないし19のいずれかに記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項21】
上記主成分はCa(Zr1−yTi)Oである請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項22】
上記主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含む請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項23】
上記誘電体層の表面にはガラスの凝集が存在しない請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項24】
上記外部電極の厚さは20〜30μmである請求項15に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項25】
請求項7の誘電体セラミック組成物で形成された誘電体シートの表面上にCu内部電極を形成する段階、
上記Cu内部電極が形成された誘電体シートを積層し圧着した後に切断して積層体を形成する段階、
上記積層体の両端に上記Cu内部電極と電気的に接続するようCu外部電極ペーストを塗布する段階、
上記Cu外部電極が塗布された積層体を同時焼成する段階を含んで成る積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項26】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOがb/c>0.9を満足する請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項27】
上記aSiOが20≦a≦25で且つ上記bBとcLiOが0.93≦b/c≦1.66を満足する請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項28】
上記SiOが25<a≦35で且つ上記bBとcLiOにおいてb/c<0.9を満足する請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項29】
上記SiOが25<a≦35で、上記bBとcLiOにおいて0.86≦b/c≦0.88を満足する請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項30】
上記ガラスにおいて3配位ボロン(BO3)と4配位ボロン(BO4)の比率が3.235〜3.437である請求項25ないし29のいずれかに記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項31】
上記主成分はCa(Zr1−yTi)Oである請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項32】
上記主成分100重量部に対してZrSiO、SiO、ZrO、Alの群から選択される1種以上のフィラーをさらに0.2〜1.0重量部含むことを特徴とする請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項33】
上記Cu外部電極ペーストはCu金属:40〜70重量%、(Ca1−x)(Zr1−yTi)O(RはMg、Srから選択された1種、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)セラミック粉末:5〜20重量%、結合剤:1.6〜5.6重量%、残りの溶剤を含んで組成される請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項34】
上記同時焼成は200〜600℃において5〜40時間加焼した後に900〜970℃において9〜12時間焼成する請求項25に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−290719(P2006−290719A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195608(P2005−195608)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】